JP2004340802A - マイクロ分析チップ - Google Patents

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泰秀 川口
Jun Irisawa
潤 入澤
Kazuhiko Yamada
和彦 山田
Hideo Nomoto
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Abstract

【課題】水性の微量物質を分析するのに適したマイクロ分析チップを提供すること。
【解決手段】水性検体を分析するマイクロ分析チップにおいて、マイクロ分析チップの該水性検体が接する部分が、親水性官能基を有する含フッ素ポリマー(A)により被覆されていることを特徴とするマイクロ分析チップ。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体物質や自然環境における物質等の微量化学分析等に用いられるマイクロ分析チップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療診断に必要な測定を患者近傍で行うベッドサイド診断、日々の健康チェック、ダイオキシンなど有害物質の河川や廃棄物処理場等における現場分析、及び食品中の汚染物質や残留農薬の調理、収穫、輸入時等の現場分析など、種々の分析を現場又は現場付近で迅速且つ簡便に実施することの重要性が注目されている。このような分析には、微量物質を簡便且つ低コストで行われることが要求され、適用される検出法や装置の開発が重要視されつつある。
【0003】
従来の微量物質の分析法としては、キャピラリガスクロマトグラフィー(CGC)、キャピラリ液体クロマトグラフィー(CLC)等で分離した後、質量分析計で定量する方法が広く使用されてきた。しかしながら、これらの分析装置は大きく、高価であるとともに、操作が煩雑であり、患者のベッドサイドや河川、廃棄物処理場近辺等の測定現場で使用するのには適さない。更に血液や尿等を試料とする医療診断用途の分析装置は、試料が触れる部分を使い捨てにすることが望ましい。
【0004】
これらの問題点を解決するために、従来利用されてきた分析装置を小型化し、極微量の検体と試薬を反応させて分析するμTAS(micro total analysis system)の技術を応用する検討が進んできた。μTASとは、10センチ角程度又はそれ以下の大きさのガラスやシリコンのチップ表面に溝を刻んだマイクロ分析チップを作製し、その溝中に試薬溶液や検体を流して、分離・反応を行い、微量検体の分析を行う方法である(例えば、特許文献1〜4及び非特許文献5参照)。この技術では検体量、検出に必要な試薬量、検出に用いた消耗品等の廃棄物、廃液の量がいずれも少なくなる上、検出に必要な時間も概ね短時間で済むという利点がある。これらマイクロ分析チップの基板の素材としては先にも述べたようにガラス、シリコンの他にシリコーン樹脂やPMMAなどの樹脂が用いられている。
【0005】
しかしながら、蛋白質などはガラスやシリコン基板に付着しやすいため分析することが困難であり、PMMAなどは耐酸性に問題があり、シリコーン樹脂などは撥水して液が通りづらい等の問題がある。また、フッ素樹脂も撥水性のポリテトラフルオロエチレンなどを用いているため溶液が通りづらい等の問題がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−245655号公報
【特許文献2】
特開平3−226666号公報
【特許文献3】
特開平8−233778号公報
【特許文献4】
特願平11−352445号公報
【非特許文献1】
Analytical Chem.69,2626(1997)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マイクロ分析チップにおける上記の課題を解決すべくなされたものであり、河川水、食料品、又は蛋白質、尿若しくは血液などの生体物質等、水性の微量物質を分析するのに適したマイクロ分析チップを提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題を解決すべくなされた以下の発明である。すなわち水性検体を分析するマイクロ分析チップにおいて、マイクロ分析チップの該水性検体が接する部分が、親水性官能基を有する含フッ素ポリマー(A)により被覆されていることを特徴とするマイクロ分析チップを提供する。さらに、本発明は、酸性基を有し、該酸性基の一部が酸により酸性基を発現することができるブロック化酸性基に変換されている含フッ素ポリマー(A)、と光により酸を発生する光酸発生剤(C)とを含む組成物からなる膜を、水性検体を分析するマイクロ分析チップ用の基板表面に形成し、該膜にフォトリソグラフィーの手法により該水性検体が流れる溝を形成する工程を含むことを特徴とする、水性検体を分析するマイクロ分析チップの製造方法提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のマイクロ分析チップとは、医療診断のための分析、河川などの有害物質の分析、食品などの汚染物質の分析などを目的とした、水性の検体を分析するためのマイクロ分析チップである。かかるマイクロ分析チップの基板としては、どのような材料でも採用できる。例えば、ガラス、シリコンなどの無機材料、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などの有機材料などが挙げられる。
【0010】
前記水性検体しては、血液、尿などの生体関連物質、河川水、海水、湖水などの表面水及び地下水、産業排水などの廃棄物及び該廃棄物からの水性媒体による抽出物、農林水産物及び該農林水産物からの水性媒体による抽出物、農林水産物からの加工食品及び該加工食品からの水性媒体による抽出物などが挙げられる。
【0011】
本発明のマイクロ分析チップは、前記水性検体を流すための溝が形成されている。本発明においては、少なくとも前記溝の水性検体と接触する部分が、含フッ素ポリマー(A)で被覆されている。
【0012】
本発明における含フッ素ポリマー(A)とは、炭素原子と結合するフッ素原子を有するポリマーである。全原子数に対するフッ素原子数の割合が15%〜65%である。特に、主鎖構造にフッ素原子が存在するポリマーであることが好ましい。かかるフッ素原子を有することにより、耐薬品性が良好となり、検体が酸性やアルカリ性等の腐食性を有していても、分解することがない。
【0013】
さらに、マイクロ分析チップにおける検出方法として、主に赤外線、紫外線可視光線などの光を使用することから含フッ素ポリマー(A)は透明性が良好であることが好ましい。透明性の観点から、含フッ素ポリマー(A)は非晶質ポリマーであることが好ましい。ここで、非晶質とは結晶化度が20%以下であることを意味する。また、フッ素原子を有していることから離型性にも優れているため、後述するようにマイクロ分析チップ上でモノマーを重合して、含フッ素ポリマー(A)を含む層を形成する方法を行う場合に好ましい。
【0014】
含フッ素ポリマー(A)は、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素化合物(以下、含フッ素ジエン(a)と記す。)が環化重合したモノマー単位を有するポリマーであることが好ましい。また、含フッ素ポリマー(A)が、1つの重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマー(以下、含フッ素モノマー(b)と記す。)が重合したモノマー単位を有するポリマーであることも好ましい。
【0015】
前記含フッ素ジエン(a)としては、2つ以上の重合性不飽和結合を有していれば既知のどのような含フッ素化合物でも選択することができる。また、含フッ素ジエン(a)と共重合可能な他の不飽和化合物との共重合体であっても構わない。含フッ素ジエン(a)としては、下記式(1)で表される含フッ素ジエンが好ましい。
【0016】
CF=CR−Q−CR=CR ・・・(1)
(ただし、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロシクロアルキル基を表す。また、RとRで環を形成しても、RとRで環を形成しても構わない。Qはエーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基又はエーテル性酸素原子を有していてもよいフルオロアルキレン基を表し、後述するような酸性基、ブロック化酸性基を有していてもよい。)。
【0017】
前記式(1)で表される含フッ素ジエンが環化重合すると下記式(2−1)〜(2−3)のようなモノマー単位を形成すると考えられる。
【0018】
【化1】
Figure 2004340802
【0019】
前記含フッ素モノマー(b)としては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、トリクロロフルオロエチレン等の炭素数2〜3のフルオロオレフィン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、CH=CR−COOCHCH(但し、Rは水素原子又はメチル基、Rはパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチレンなどのフルオロアルキルエチレン、脂肪族環を有する含フッ素モノマーなどが挙げられる。
【0020】
前記含フッ素モノマー(b)が重合したモノマー単位を有する含フッ素ポリマー(A)の場合、含フッ素モノマー(b)と共重合可能な他のモノマーとの共重合体であることが好ましい。異なる2種類以上の含フッ素モノマー(b)の共重合体であっても構わない。また、含フッ素モノマー(b)と含フッ素ジエン(a)との共重合体であっても構わない。
【0021】
他のモノマーとしては、含フッ素モノマー(a)と共重合可能な炭化水素系のモノマーであれば何でも構わない。例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1,4−ブタジエンなどの直鎖状又は分岐を有しているオレフィン類、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロへキセン、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどのシクロアルケン類、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル類、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類などが挙げられる。かかる他のモノマーは置換基を有していてもよい。なかでも、シクロアルケン類であることが好ましい。
【0022】
含フッ素モノマー(b)を含む含フッ素ポリマー(A)としては、TFEが重合したモノマー単位と、置換基を有していてもよいシクロアルケン類が重合したモノマー単位を有するものが好ましく、特にTFEが重合したモノマー単位と、置換基を有していてもよいノルボルネンが重合したモノマー単位を有するものが最も好ましい。
【0023】
本発明における含フッ素ポリマー(A)は、親水性官能基を有している。親水性官能基とは、親水性を有する官能基であれば何でも構わない。例えば、酸素原子を含む官能基、窒素原子を含む官能基、硫黄原子を含む官能基、リン原子を含む官能基が挙げられる。親水性官能基を有していることから、含フッ素ポリマー(A)で被覆されたマイクロ分析チップの溝に水性検体をスムーズに流すことができる。
【0024】
酸素原子を含む官能基とは水酸基、エーテル基、エステル基、ケトン基、カルボン酸基、スルホン酸基などがある。また窒素原子を含む官能基とはアミノ基、イミノ基、アミド基、ピリジニル基、シアノ基などが挙げられる。また硫黄原子を含む官能基とはチオール基、スルフィド基、チオカルボン酸基などが挙げられる。リン原子を含む官能基とはリン酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
本発明における親水性官能基としては、酸性基であることが好ましい。酸性基とは酸性を呈する官能基であり、カルボン酸基又は酸性水酸基であることが入手のし易さなどから好ましく、さらに酸性水酸基であることが最も好ましい。酸性水酸基とは、例えばアリール基の環に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)、パーフルオロアルキル基(炭素数1〜2のパーフルオロアルキル基が好ましい。)が結合した炭素原子に結合した水酸基、第3級炭素原子に結合した水酸基などがある。特に1個又は2個のパーフルオロアルキル基が結合した炭素原子に結合した水酸基が好ましい。パーフルオロアルキル基がトリフルオロメチル基の場合、たとえば、下記式(d−1)で表される2価の基における水酸基(すなわち、ヒドロキシトリフルオロメチルメチレン基の水酸基)や下記式(d−2)や下記式(d−3)で表される1価の基における水酸基(すなわち、1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル基や1−ヒドロキシ−1−メチル−2,2,2−トリフルオロエチル基の水酸基)が好ましい。
【0026】
【化2】
Figure 2004340802
【0027】
本発明における含フッ素ポリマー(A)に親水性官能基を導入する方法は、親水性官能基を有する含フッ素ジエン(a)又は親水性官能基を有する含フッ素モノマー(b)を重合する方法、親水性官能基を有する他のモノマーと含フッ素ジエン(a)又は含フッ素モノマー(b)とを共重合する方法でもよい。また、親水性官能基に変換できる前駆官能基を有する含フッ素ジエン(a)又は含フッ素モノマー(b)を含む含フッ素ポリマーを得た後、該前駆官能基を親水性官能基に変換してもよい。また、親水性官能基に変換できる前駆官能基を有する他のモノマーと含フッ素ジエン(a)又は含フッ素モノマー(b)とを共重合した後、該前駆官能基を親水性官能基に変換してもよい。
【0028】
本発明における含フッ素ポリマー(A)の酸性基の一部が、酸により酸性基を発現することができるブロック化酸性基に変換されたものであることが好ましい。酸性基の一部がブロック化酸性基に変換されたことにより、レジストとしての機能を付与することができる。すなわち、光によって酸を発生する光酸発生剤を共存させることにより、光を当てた部分だけが、ブロック化酸性基から酸性基に転換して、アルカリ水溶液に溶解するようにすることができる。この性質を利用して、マイクロ分析チップの水性検体が流れる溝を、フォトリソグラフィーの手法により形成することができる。
【0029】
酸性基がカルボン酸基やスルホン酸基の場合は、アルカノールやクロロメチルアルキルエーテルなどのブロック化剤を反応させて酸性基の水素原子をアルキル基などに置換したエステル系のブロック化酸性基が好ましい。酸性基が酸性水酸基の場合は酸性水酸基の水素原子を、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、環状エーテル基などにより置換して得られるアセタール、ケタール、エステル、エーテル系のブロック化酸性基が好ましい。
【0030】
具体的なブロック化基としては、置換基(アリール基、アルコキシ基など)を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基の具体例としては、炭素数6以下のアルキル基(tert−ブチル基(t−C)など)、全炭素数7〜20のアリール基置換アルキル基(ベンジル基、トリフェニルメチル基、p−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基など)、全炭素数8以下のアルコキシアルキル基(メトキシメチル基、(2−メトキシエトキシ)メチル基、ベンジルオキシメチル基など)が挙げられる。水酸基の水素原子を置換するのに好ましいアルコキシカルボニル基としては、全炭素数8以下のアルコキシカルボニル基があり、tert−ブトキシカルボニル基(−COO(tert−C))などが挙げられる。水酸基の水素原子を置換するのに好ましいアシル基としては、全炭素数8以下のアシル基があり、ピバロイル基、ベンゾイル基、アセチル基などが挙げられる。水酸基の水素原子を置換するのに好ましい環状エーテル基としてはテトラヒドロピラニル基(THP)などが挙げられる。
【0031】
これらブロック化基によるブロック化酸性基は、アルコール類やカルボン酸又はこれらの活性誘導体などを反応させて得る。これらの活性誘導体としては、ハロゲン化メチルアルキルエーテル、アルキルハライド、酸塩化物、酸無水物、クロル炭酸エステル類、ジアルキルジカーボネート(ジ−tert−ブチルジカーボネートなど)、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどが挙げられる。水酸基をブロック化するのに有用な試薬の具体例は、A. J. Pearson及びW. R. Roush編、Handbook of Reagents for Organic Synthesis: Activating Agents and Protecting Groups, John Wiley & Sons (1999)に記載されている。
【0032】
含フッ素ポリマー(A)の酸性基の一部がブロック化酸性基に変換されている場合のブロック化率(ブロック化基によるブロック化酸性基とブロック化されていない酸性基の合計に対するブロック化基によるブロック化酸性基の割合)は10〜99モル%が好ましく、特に10〜90モル%が好ましい。
【0033】
本発明における含フッ素ポリマー(A)は、特に、下記式(3)で表される含フッ素ジエン(a)が重合したモノマー単位を含むことが好ましい。
【0034】
CF=CR−Q−CR=CH ・・・(3)
(ただし、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Qが式(4)で表される2価の有機基である。)。
【0035】
−R−C(R)(R10)−R− ・・・(4)
(ただし、R、Rは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3以下のアルキレン基又はエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3以下のフルオロアルキレン基、Rは水素原子、フッ素原子、炭素数3以下のアルキル基又は炭素数3以下のフルオロアルキル基、R10は水酸基若しくは水酸基を有する炭素数3以下のアルキル基、エーテル基(−O−R11;R11は炭素数3以下のアルキル基、tert−ブチル基(t−C)、シクロヘキシル基、シクロペンチル基又は炭素数3以下のフルオロアルキル基)、アミノ基若しくはアミノ基を有する炭素数3以下のアルキル基、ピリジニル基若しくはピリジニル基を有する炭素数3以下のアルキル基、チオール基若しくはチオール基を有する炭素数3以下アルキル基、燐酸エステル基若しくは燐酸エステル基を有する炭素数3以下アルキル基、カルボン酸エステル基(−COO−R12、−OCO−R12;R12は炭素数3以下のアルキル基、tert−ブチル基(t−C)、シクロヘキシル基、シクロペンチル基又は炭素数3以下のフルオロアルキル基)、ブロック化酸性基、酸性基又はブロック化酸性基若しくは酸性基を有する1価有機基、を表す。)。
【0036】
前記式(3)で表される含フッ素ジエン(a)が環化重合すると下記式(5−1)〜(5−3)のようなモノマー単位を形成すると考えられる。
【0037】
【化3】
Figure 2004340802
【0038】
本発明における含フッ素ポリマー(A)の重合開始源としては、重合反応をラジカル的に進行させるものであればなんら限定されないが、例えばラジカル発生剤、光、電離放射線などが挙げられる。特にラジカル発生剤が好ましく、過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩などが例示される。重合の方法もまた特に限定されるものではなく、単量体をそのまま重合に供するいわゆるバルク重合、単量体を溶解するフッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素、その他の有機溶剤中で行う溶液重合、水性媒体中で適当な有機溶剤存在下あるいは非存在下に行う懸濁重合、水性媒体に乳化剤を添加して行う乳化重合などが例示される。
【0039】
本発明における含フッ素ポリマー(A)の分子量は、後述する溶媒に均一に溶解又は分散し、基材に均一に塗布できる限り特に限定されない。通常そのポリスチレン換算数平均分子量は1000〜500万が適当であり、好ましくは2000〜20万である。数平均分子量を1000以上とすることで、高い耐薬品性を保つことができる。また数平均分子量を500万以下とすることで、良好な塗布性が維持できる。
【0040】
本発明のマイクロ分析チップは、前記の含フッ素ポリマー(A)及び含フッ素ポリマー(A)を溶解又は分散することができる溶媒(B)含む組成物を、水性検体を分析するマイクロ分析チップの水性検体が接する部分に塗布し、溶媒(B)を揮散せしめることにより、該水性検体が接する部分を含フッ素ポリマー(A)で被覆することで製造できる。以下、この被覆方法を溶液コーティング法と記す。
【0041】
また、含フッ素ポリマー(A)を構成するモノマーを含む組成物を、直接マイクロ分析チップ上に塗布して、そこで重合せしめる方法も採用することができる。以下、このモノマーを直接使用する方法を、直接コーティング法と記す。この際、該モノマーを前記溶媒(B)に溶解又は分散させた組成物でもよい。具体的には、含フッ素ポリマー(A)を構成するモノマーをマイクロ分析チップの基板上に塗布又は基板に設置した鋳型に流した後に、光や熱により重合させて基板表面全体又は鋳型の型状に被覆したり、含フッ素ポリマー(A)のモノマーを基板に塗布した後に金型を押してプリントした状態で光や熱により重合させて基板表面を含フッ素ポリマー(A)で被覆若しくは水性検体が流れる溝のパターニングを行うことが可能である。また、逆に金型の方に含フッ素ポリマー(A)のモノマーを塗布した後に、金型を基板に押し付けた状態で光や熱により重合させて基板表面を含フッ素ポリマー(A)で被覆若しくはパターニングを行うことが可能である。光により重合させる場合は特に紫外線が望ましい。更に含フッ素ポリマー(A)は耐熱性にも優れているため基板上の一部を加熱して反応促進させることも可能である。この時の金型には石英、ガラスやシリコン、樹脂、金属などが用いられる。
【0042】
前記、含フッ素ポリマー(A)を溶解又は分散することができる溶媒(B)とは、含フッ素ポリマー(A)を溶解又は分散するものであれば特に限定されるものではない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のグリコールモノアルキルエーテルエステル類、水、フッ素系溶剤などが挙げられる。
【0043】
前記溶液コーティング法の場合、含フッ素ポリマー(A)100質量部に対し溶媒(B)50〜2000質量部が好ましい。含フッ素ポリマー(A)100質量部に対し溶媒(B)100〜1000質量部であることがさらに好ましい。また、前記直接コーティング法において、溶媒(B)を共存させる場合は、モノマー100質量部に対し溶媒(B)0.1〜2000質量部が好ましい。モノマー100質量部に対し有機溶媒(B)1〜1000質量部であることがさらに好ましい。溶媒(B)の使用量を1000質量部以下にすることで重合後の収縮を抑制することができ、重合後の塗布ムラを抑制することができる。
【0044】
前記溶液コーティング法、直接コーティング法においては、回転塗布、流し塗布、ロール塗布等の既知の種々のコーティング方法を採用することができる。なかでも均一に薄膜を形成することができることから、回転塗布(スピンコート)法が好ましく採用される。
【0045】
更に上記酸性基を有するポリマーにジアゾナフトキノンのように紫外線などの光によりアルカリ水に溶けやすくなる化合物を添加することによりレジストの機能を持たせることが可能である。
【0046】
また、光酸発生剤若しくはジアゾナフトキノンのように紫外線などの光によりアルカリ水に溶けやすくなる化合物を加えることで光リソグラフィー用のレジストとして用いることができ、その場合は基板が平坦でも基板上に任意のパターンを描くことが可能であり、それによりマイクロ分析チップとして用いることができる。本発明のコーティング剤を用いたマイクロ分析チップに用いる溶液として水溶液を使用する場合には含フッ素ポリマー(A)は酸性水酸基であることが望ましい。
【0047】
本発明における含フッ素ポリマー(A)の好ましい態様である、親水性官能基が酸性基であり、該酸性基の一部がブロック化酸性基に変換されている場合は、光照射を受けて酸を発生する光酸発生剤(C)を共存させることにより、レジスト材料として使用することができる。すなわち、含フッ素ポリマー(A)と酸発生化合物を含む膜に、光を照射(露光)すると光酸発生剤(C)は酸を発生する。この酸によって、含フッ素ポリマー(A)中に存在するブロック化酸性基が開裂(脱ブロック化)される。その結果、前記膜の露光部がアルカリ性現像液に易溶性となり、アルカリ性現像液によってポジ型のレジストパターンが形成される。
【0048】
この性質を利用して、本発明におけるマイクロ分析チップの水性検体が流れる溝をフォトリソグラフィー法によって容易に形成することができる。すなわち、マイクロ分析チップを構成する基板表面全体に、まず光酸発生剤(C)を含まない含フッ素ポリマー(A)を被覆して第1の膜を形成する。次に、第1の膜上に含フッ素ポリマー(A)と光酸発生剤(C)を含む第2の膜を形成する。こうして作成した、2層の膜が形成されたマイクロ分析チップ上に、フォトリソグラフィーの手法を応用して、所望のパターンを有するマスクにより、第2の膜に所望の溝パターンを形成することができる。第1の膜はそのまま下地として残っており、形成された溝の水性検体が接触する部分はすべて、含フッ素ポリマー(A)で被覆されている。第1の膜及び第2の膜を形成するには、含フッ素ポリマー(A)及び光酸発生剤(C)を、前記溶媒(B)に溶解又は分散して溶液組成物として、前記コーティング法を採用することが好ましい。
【0049】
このような光酸発生剤(C)としては、通常の化学増幅型レジスト材に使用されている酸発生化合物が採用可能であり、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物等を挙げることができる。これらの光酸発生剤(C)の例としては、下記のものを挙げることができる。
【0050】
オニウム塩としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルアセトメチル)チオラニウムトリフレート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフレート、ジシクロヘキシル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフレート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムトシレート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート等を挙げられる。
【0051】
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等を挙げることができる。具体例としては、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等の(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体や、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン等を挙げられる。
【0052】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらの化合物のα−ジアゾ化合物等を挙げることができる。具体例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等を挙げることができる。スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、アルキルスルホン酸イミド、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイントシレート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフレート等を挙げることができる。本発明において、光酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
前記光酸発生剤(C)は、含フッ素ポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、特に0.1〜10質量部が好ましい。光酸発生剤(C)の使用量を0.1質量部以上とすることで、充分な感度及び現像性を与えることができ、また10質量部以下とすることで、放射線に対する透明性が充分に保たれ、より正確なレジストパターンを得ることができる。
【0054】
含フッ素ポリマー(A)及び光酸発生剤(C)を、前記溶媒(B)に溶解又は分散して溶液組成物として塗布する場合は、含フッ素ポリマー(A)100質量部に対し酸発生化合物(C)0.1〜20質量部、溶媒(B)50〜2000質量部が好ましい。さらに、含フッ素ポリマー(A)100質量部に対し酸発生化合物(C)0.1〜10質量部及び有機溶媒(B)100〜1000質量部であることが好ましい。
【0055】
前記含フッ素ポリマー(A)を被覆する際は、含フッ素ポリマー(A)及び酸発生剤(C)を溶解することができる溶媒(B)を選択し、含フッ素ポリマー(A)溶液とすることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)溶液は、さらに塗布性の改善のための界面活性剤、基材との密着性を向上させるための接着助剤、組成物の保存性を高めるための保存安定剤等を目的に応じ適宜配合できる。また含フッ素ポリマー(A)溶液は、各成分を均一に混合した後0.03〜0.45μmのフィルターによってろ過して用いることが好ましい。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみに限定されるものではない。なお、THFはテトラヒドロフラン、R113はトリクロロトリフルオロエタン(有機溶媒)、PTFEはポリテトラフルオロエチレンをいう。
【0057】
[含フッ素ポリマー(A)の合成例]
(合成例1)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の10g及び酢酸メチルの23gを内容積50ccのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.24gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で6時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で12時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状構造を有する非結晶性の含フッ素ポリマー(以下、重合体1Aという)8gを得た。 重合体1Aの分子量をGPCにて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)14,200、重量平均分子量(Mw)41,300であり、Mw/Mn=2.91であった。示差熱分析法により測定したガラス転移点は、148℃あり、室温で白色粉末状であった。
【0058】
(合成例2)
脱気した撹拌機付きの内容積0.2リットルのステンレス製オートクレーブにR113を150g仕込み、TFEの14.4g、ノルボルネンの1.504g、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−4−ペンテン−2−オール(以下、AF2という)の33.28gを導入した。55℃に昇温し、tert−ブチルパーオキシピバレートの1.67gをR113に溶解した溶液8mlを圧入し、重合を開始した。55℃に達した時点での圧力は0.69MPaであった。10時間反応後圧力は0.62MPaに低下した。オートクレーブを室温まで冷却後、未反応ガスをパージし、ポリマー溶液を取り出した。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させ、洗浄後50℃にて真空乾燥を行い、6.3gの含フッ素ポリマー(以下、重合体2Aという)を得た。このポリマーの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は2,400、重量平均分子量(Mw)は3,400であり、Mw/Mnは1.42であった。
【0059】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、TFE単位/ノルボルネン単位/AF2単位=35/20/45モル%であった。
【0060】
(合成例3)
脱気した撹拌機付きの内容積0.2リットルのステンレス製オートクレーブにR113を75g仕込み、TFEの25g、ノルボルネンの10.6g、酢酸ビニルの9.7gを導入した。55℃に昇温し、tert−ブチルパーオキシピバレートの0.41gをR113に溶解した溶液8mlを圧入し、重合を開始した。55℃に達した時点での圧力は1.305MPaであった。10時間反応後圧力は0.18MPaに低下した。オートクレーブを室温まで冷却後、未反応ガスをパージし、ポリマー溶液を取り出した。得られたポリマー溶液をヘキサンに投入しポリマーを析出させ、洗浄後70℃にて真空乾燥を行い、15.4gの含フッ素ポリマー(以下、重合体3Aという)を得た。このポリマーの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は8,400、重量平均分子量(Mw)は15,900であり、Mw/Mnは1.89であった。
【0061】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、TFE単位/ノルボルネン単位/酢酸ビニル単位=39/31/30モル%であった。
【0062】
(合成例4)
パーフルオロ1,4−ペンタジエン[CF=CFCFCF=CF]8.91g、tert−ブチルビニルエーテルの8.42g、炭酸カリウムの0.14g及び酢酸メチルの23.3gを内容積50ccのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートの0.35gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(55℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、60℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状構造を有する非結晶性の含フッ素ポリマー(以下、重合体4Aという)12.5gを得た。 重合体4Aの分子量をGPCにて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)9,990、重量平均分子量(Mw)18,500であり、Mw/Mn=1.85であった。ガラス転移点は、113℃あり、室温で白色粉末状であった。
【0063】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、パーフルオロ1,4−ペンタジエン単位/tert−ブチルビニルエーテル単位=32/68モル%であった。
【0064】
(合成例5)
パーフルオロ1,4−ペンタジエン[CF=CFCFCF=CF]の8.90g、ビニルピバレートの10.8g及び酢酸メチルの23.3gを内容積50ccのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートを0.35g添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(55℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をメタノール中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、70℃で18時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状構造を有する非結晶性ポリマー(以下、重合体5Aという)11.0gを得た。 重合体5Aの分子量をGPCにて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)8,420、重量平均分子量(Mw)16,200であり、Mw/Mn=1.92であった。ガラス転移点は、91℃あり、室温で白色粉末状であった。
【0065】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、パーフルオロ1,4−ペンタジエン単位/ビニルピバレート単位=19/81モル%であった。
【0066】
(合成例6)
パーフルオロ1,4−ペンタジエン[CF=CFCFCF=CF]の8.92g、tert−ブチルビニルエーテルの6.33g、ビニレンカーボネートの1.81g、炭酸カリウムの0.13g及び酢酸メチルの23.3gを内容積50ccのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートを0.35g添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(55℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をメタノール中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、70℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状構造を有する非結晶性の含フッ素ポリマー(以下、重合体6Aという)19.3gを得た。 重合体6Aの分子量をGPCにて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)12,000、重量平均分子量(Mw)16,900であり、Mw/Mn=1.40であった。ガラス転移点は、129℃あり、室温で白色粉末状であった。
【0067】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、パーフルオロ1,4−ペンタジエン単位/tert−ブチルビニルエーテル単位/ビニレンカーボネート単位=22/40/38モル%であった。
【0068】
(合成例7)
含フッ素アクリレート[CH=CHCOOC1021]の19.6g、ノルボルネンの2.98g及びR113の22.5gを内容積50ccのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートの0.22gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(55℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、70℃で19時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状構造を有する非結晶性の含フッ素ポリマー(以下、重合体7Aという)12.2gを得た。 重合体7Aの分子量をGPCにて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)8,800、重量平均分子量(Mw)20,500であり、Mw/Mn=2.33であった。ガラス転移点は、61℃あり、室温で白色粉末状であった。
【0069】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、含フッ素アクリレート単位/ノルボルネン単位=73/27モル%であった。
【0070】
(合成例8)
脱気した撹拌機付きの内容積0.2リットルのステンレス製オートクレーブに、R113を120g仕込み、TFEの20.0g、CH=CHOCHCHC(CFOCOC(CH(以下モノマー1Bという)の48.0g、2、2,3,3−テトラフルオロー5−ノルボルネン(以下モノマー2Bという)の24.9gを導入した。40℃に昇温し、10質量%のジイソプロピルパーオキシジカーボネートのR113溶液8mlを圧入し重合を開始した。40℃に達した時点での圧力は0.095MPaであった。2時間反応後圧力は0.080MPaに低下した。オートクレーブを室温まで冷却後、未反応ガスをパージし、ポリマー溶液を取り出した。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させ、洗浄後50℃にて真空乾燥を行い、6.9gの含フッ素ポリマー(以下、重合体8Aという)を得た。
【0071】
重合体8Aの分子量をGPCにて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)9,500、重量平均分子量(Mw)20,000であり、Mw/Mn=2.11であった。
【0072】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、TFE単位/モノマー1B単位/モノマー2B単位=38/35/27(モル%)であった。
【0073】
(合成例9)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の4.5g、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH]の1.94g、tert−ブチルメタクリレートの0.066g、1,4−ジオキサンの0.69g及び酢酸メチルの16.90gを、内容積30ccのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.096gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状繰り返し単位及びtert−ブチルメタクリレートからなる繰り返し単位を有する白色粉末状の非結晶性の含フッ素ポリマー(以下、重合体9Aという)の5.6gを得た。重合体9Aの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は11,100、重量平均分子量(Mw)は32,100であり、Mw/Mnは2.89であった。ガラス転移点は150℃であった。
【0074】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/tert−ブチルメタクリレートからなるモノマー単位=71.5/26.5/2モル%であった。
【0075】
(合成例10)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の3.92g、酢酸ビニルの0.83g、1,4−ジオキサンの0.69g及び酢酸メチルの16.90gを、内容積30mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.096gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状繰り返し単位及び酢酸ビニルからなる繰り返し単位を有する白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体10Aという)の4.6gを得た。重合体10Aの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は8,300、重量平均分子量(Mw)は20,200であり、Mw/Mnは2.43であった。ガラス転移点は130℃であった。
【0076】
19F NMR及びH NMR測定により計算されたポリマー組成は、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/酢酸ビニルからなるモノマー単位=73.2/26.8モル%であった。
【0077】
(実施例1)
合成例1で合成した重合体1Aの1gをアセトンの6gに溶解させ、孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いてろ過し、コーティング剤を調整した。
ガラス基板にg線用レジストを塗布し、その上に石英板上にクロムでパターン(パターンをガラス基板に転写後の流路の大きさが流路断面1mm×1mm、流路長さ50mmになるように作製)を描いたマスクを密着させた。そのマスクを通じてg線紫外光を照射し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.38質量%)を用いて、23℃で3分間現像を行い、続けて1分間純水で洗浄した。その後、フッ化水素:フッ化アンモニウムが1:6の水溶液にてガラス表面をエッチングし、続けて3分間純水で洗浄した。レジストを市販のレジスト剥離液を用いて除去して、マイクロ分析チップを作製する。このマイクロ分析チップ基板上に、上記のコーティング剤を回転塗布し、塗布後90℃で2分間加熱処理して、本コーティング剤でコーティングしたマイクロ分析チップを作製した。この作製したマイクロ分析チップの流路(流路は流路断面1mm×1mm、流路長さ50mm)の末端から末端まで牛の血清アルブミンの30質量%水溶液の0.1gを流し、回収した該アルブミン水溶液に残っているアルブミン量を計測した。さらに、このマイクロ分析チップの耐酸性を評価した、すなわち、このマイクロ分析チップを5%の硝酸水溶液に30分浸漬させて、コーティング膜の変化を観察し、変化が認められた場合は×、変化が認められない場合は○とした。また、水に対する接触角(水に対する静的接触角は上記コーティング剤をガラス基板上に塗布、乾燥し、接触角計AST Products社製のVCA−3000を用いて、液適法にて測定した)を測定し、上記評価結果とあわせて表1に示す。
【0078】
(実施例2〜8)
実施例1の重合体1Aの代わりに、重合体2A〜8Aを用いた以外は、実施例1と同様に操作してマイクロ分析チップを作製し、実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
(実施例9)
パターン(流路は流路断面1mm×1mm、流路長さ50mm)を描いた石英基板を石英製の容器にパターン面を上にして入れ、1、1、2、3、3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の10gを流し込み、上から石英版で蓋をした。この時パターンを描いた石英基板と石英版の間に気泡が生じないようにし、上部から紫外線(水銀灯)を照射し、重合を開始させた。重合後、石英製容器をひっくり返し、コーティングされた石英版を取り出し、チップとして用いた。その後、実施例1と同様の評価を行った。
【0080】
(実施例10)
合成例9で合成した重合体9Aの1gとトリメチルスルホニウムトリフレートの0.05gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの10gに溶解させ、孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いてろ過し、レジスト組成物を製造した。
ヘキサメチルジシラザンで処理したシリコン基板上に、合成例10で合成した重合体10Aの1gをアセトンの10gに溶解したものを回転塗布し、120℃で10分間乾燥した。次に上記のレジスト組成物を回転塗布し、塗布後80℃で2分間加熱処理して、膜厚1.5μmのレジスト膜を形成した。窒素置換した露光実験装置内に、上記のレジスト膜を形成した基板を入れ、その上に石英板上にクロムでパターン(パターンをシリコン基板に転写後の流路の大きさが流路断面1mm×1mm、流路長さ50mmになるように作製)を描いたマスクを密着させた。そのマスクを通じてg線紫外光を照射し、その後100℃で2分間露光後ベークを行った。現像はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.38質量%)を用いて、23℃で3分間行い、続けて1分間純水で洗浄した。これをチップとして用いた。その後、実施例1と同様の評価を行った。
【0081】
(比較例1)
実施例1において、コーティング剤を回転塗布する以外は、実施例1と同様の操作を行い、重合体1Aがコートされていないマイクロ分析チップを作製し、実施例1と同様に評価した。
【0082】
(比較例2)
比較例1で作製したマイクロ分析チップ基板上に、室温硬化性のシリコーン樹脂を回転塗布し、塗布後室温にて風乾して、シリコーン樹脂でコーティングしたマイクロ分析チップを作製した。その後、実施例1と同様の評価を行った。
【0083】
(比較例3)
実施例1の重合体1Aの代わりにPMMAの1gを用いる以外は実施例1と同様に操作し、PMMAでコートしたマイクロ分析チップを作製した。その後、実施例1と同様の評価を行った。
【0084】
(比較例4)
PTFEのバルク材(50mm×20mm×10mm(縦×横×高さ))に流路(流路断面1mm×1mm、流路長さ50mm)を切削により作製したものをチップとして用いた。その後、実施例1と同様の評価を行った。
【0085】
【表1】
Figure 2004340802
【0086】
【発明の効果】
本発明のマイクロ分析チップは、簡便に蛋白質の吸着を抑制し、耐薬品性及び親水性を同時に改善することができるため、血液中などの蛋白質解析及び水性媒体中の有害物質分析などに有効なマイクロ分析チップである。

Claims (6)

  1. 水性検体を分析するマイクロ分析チップにおいて、マイクロ分析チップの該水性検体が接する部分が、親水性官能基を有する含フッ素ポリマー(A)により被覆されていることを特徴とするマイクロ分析チップ。
  2. 前記親水性官能基が酸性基である請求項1に記載のマイクロ分析チップ。
  3. 前記酸性基が、酸性水酸基である請求項2に記載のマイクロ分析チップ。
  4. 前記含フッ素ポリマー(A)が非晶質ポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロ分析チップ。
  5. 前記含フッ素ポリマー(A)の酸性基の一部が、酸により酸性基を発現することができるブロック化酸性基に変換されたものである請求項2〜4のいずれかに記載のマイクロ分析チップ。
  6. 請求項5に記載の含フッ素ポリマー(A)と光により酸を発生する光酸発生剤(C)とを含む組成物からなる膜を、水性検体を分析するマイクロ分析チップ用の基板表面に形成し、該膜にフォトリソグラフィーの手法により該水性検体が流れる溝を形成する工程を含むことを特徴とする、水性検体を分析するマイクロ分析チップの製造方法。
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