JP2004346392A - ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熔解法によってインゴットを大型化する際にクラックを発生させず、半導体メモリーのキャパシタ用電極、磁気ヘッドや磁気ディスクなどの製膜時にパーティクルの発生を抑えることができ、膜厚分布を小さくしうる高純度ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法の提供。
【解決手段】ルテニウム原料に、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWから選ばれる1種以上の金属元素を添加し、混合する工程と、得られた混合物を熔解炉に装入し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解させ、該金属元素を合計で50〜100重量ppm含有したインゴットを作製する工程とを含むことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法などによって提供。
【選択図】 なし
【解決手段】ルテニウム原料に、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWから選ばれる1種以上の金属元素を添加し、混合する工程と、得られた混合物を熔解炉に装入し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解させ、該金属元素を合計で50〜100重量ppm含有したインゴットを作製する工程とを含むことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法などによって提供。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法に関し、さらに詳しくは、熔解法によってインゴットを大型化する際にクラックを発生させず、半導体メモリーのキャパシタ用電極、磁気ヘッドや磁気ディスクなどでルテニウム製膜時にパーティクルの発生を抑えることができ、膜厚分布を小さくしうる高純度ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体メモリーのキャパシタ用電極をはじめ、巨大磁気抵抗効果(GMR)やトンネル磁気抵抗効果(TMR)などを用いた磁気ヘッドや、反強磁性結合(AFC:Antiferromagnetic coupled)メディアを記録層に用いた磁気ディスクには、その構成要素となる非磁性中間膜材料としてルテニウムが用いられている。これら用途に用いられるルテニウム膜は、高純度ルテニウムスパッタリングターゲットを使用し、スパッタリング法により製膜される。
【0003】
また、半導体デバイスの高集積化にともなうチップサイズの大型化や歩留まり向上のため、使用されるSiウエハーの大型化が進んでいる。Siウエハーの大型化に伴って、非磁性中間膜を始めとしてデバイスを構成する薄膜を形成するためのスパッタリングターゲットにも大型化が求められてきている。
さらに、磁気ヘッドの分野でも、歩留まり向上、コスト低減のため基板の大型化が求められており、この基板の大型化に伴って薄膜形成用のスパッタリングターゲットも同様に大型化が要請されるようになった。
デバイスの高集積化・高密度化が進むにつれ、各種材料の純度が見直され、ルテニウムスパッタリングターゲット(以下、スパッタリングターゲット、或いは単にターゲットともいう)にもさらなる高純度化が求められている。
【0004】
ところで、従来のルテニウムスパッタリングターゲットは、ホットプレス、プラズマ焼結やHIP(熱間等方プレス)等を用いる粉末冶金法で製造されてきたが、粉末冶金法で作製されたスパッタリングターゲットには、ガス元素が多量に含有され、密度も100%にはならないという欠点があった。このため、この粉末冶金法で作製したスパッタリングターゲットを用いて製膜すると、パーティクルと呼ばれる数ミクロンのゴミが発生しやすいことも知られている。
【0005】
そこで、ターゲットの高純度化・高密度化を図るため、ルテニウム粉末にアルカリ金属などを添加、混合してホットプレスし、得られた成形体の表面を電子ビーム溶解などで溶解する方法(例えば、特許文献1参照)、ホットプレス成形体の一部分を電子ビーム熔解又はアーク熔解処理する方法(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、これらの方法によれば、ホットプレス成形体の表面にルテニウム熔解層を形成させるために、表面は高純度化するものの、それ以外の部分は低純度の状態であり、表面部分しかターゲットとして利用できずロスが大きいという問題があった。
【0007】
さらに、得られた溶解ルテニウムターゲットには酸素が含まれており、これが半導体回路素子のキャパシタ用電極としての金属ルテニウム膜の特性に大きく影響することから、ホットプレスにより作製した焼結体を高真空雰囲気で電子ビーム熔解することにより、酸素を低減させてルテニウムスパッタリングターゲットを作製する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法では、高真空雰囲気にするための真空装置が必要となり、装置全体を大型化してしまうという課題があった。
【0008】
一方、電子ビーム熔解法でルテニウム原料を熔解しようとすると、熔解の際に発生したガスがインゴットに残留し、内部で生じる気泡が欠陥を形成するという問題があった。そのために本出願人は、炉内圧を特定範囲に調節し、水素プラズマアーク熔解法でルテニウム原料を熔解することにより、内部欠陥のない高純度のルテニウムスパッタリングターゲットを作製する方法を提案した(特許文献4参照)。
【0009】
ところで、熔解法で作製したルテニウムスパッタリングターゲットを観察すると、ルテニウムは20〜30mm程度の大きな結晶粒を含む多結晶体となっている。そのため、通常、粗大粒で構成されたインゴットの粒径を微細化するのに、塑性加工により鋳造組織を破壊し、再結晶化することが行われる。
【0010】
しかしながら、ルテニウムは、室温付近での伸びが小さく、脆いため冷間では加工できない。また、大気中で加熱すると、500℃を超えた時点でインゴット表面の酸化が始まり、粒界が酸化すると酸化による膨張のためクラックが発生する。更に大気中で加熱すると、1000℃以上で毒性を持つRuO4が発生すると言われている。
その他にも、ルテニウムは、結晶面によって異なるスパッタ率を持つため、20〜30mmの大きな結晶粒で構成されたルテニウムスパッタリングターゲットを用いて製膜すると、形成される薄膜の膜厚分布が大きくなるという問題点を持っていた。
【0011】
このようなことから、クラックを発生させずにインゴットを大型化でき、歩留まりよく、膜厚が均一なスパッタ膜が形成できるルテニウムスパッタリングターゲットの出現が切望されていた。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−311641号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−302462号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2000−178722号公報(段落番号0005、0009)
【特許文献4】
特開2002−105631号公報(段落番号0009)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熔解法によってインゴットを大型化する際にクラックを発生させず、半導体メモリーのキャパシタ用電極、磁気ヘッドや磁気ディスクなどのルテニウム製膜時にパーティクルの発生を抑えることができ、膜厚分布を小さくしうる高純度ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ルテニウム原料に対し、特定の金属元素を特定量添加してから熔解炉に装入し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解すれば、ルテニウムの結晶粒径が小さいインゴットを得ることができ、これから切り出した板材を熔接する際に割れが生じなくなり、大型で高純度なルテニウムスパッタリングターゲットが得られることを見出し、また、かかる方法で得られたターゲットは、添加した金属元素以外の元素含有量が少なく実質的にルテニウムからなり、これを用いれば成膜時のパーティクルの発生が抑制され、膜厚分布が小さくなるなど優れたスパッタリング性能が発揮されることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ルテニウム原料に、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWから選ばれる1種以上の金属元素を添加し、混合する工程と、得られた混合物を熔解炉に装入し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解させ、該金属元素を合計で50〜100重量ppm含有したインゴットを作製する工程とを含むことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プラズマアーク熔解は、不活性ガスに1〜50体積%の水素を混合したガス雰囲気下で行うことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、さらに、得られたインゴットを所定のサイズの板材に加工し、この板材を複数枚接合することを含むことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0018】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、板材の接合は、電子ビーム熔接により行うことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0019】
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の方法により得られ、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下であることを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットが提供される。
【0020】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、実質的にルテニウムからなり、アルカリ(土類)金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、添加した金属元素及び白金族元素を除く遷移金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、放射性同位体元素のいずれの含有量も1重量ppb以下で、ガス成分元素の含有量が合計で30重量ppm以下であり、不可避的不純物として白金族元素を含んでなるルテニウムスパッタリングターゲットが提供される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法、それにより得られるターゲットについて詳細に説明する。
【0022】
1.ルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法
本発明のルテニウムスパッタリングターゲットは、(1)ルテニウム原料を用意し、これに特定の金属元素を添加し、混合する工程、(2)この混合物を熔解炉に装入し、水素プラズマアーク熔解して、インゴットを作製する工程を含み、次いで(3)得られたインゴットを板材に加工し、最後に(4)複数枚の板材を接合し、(5)これを所定のサイズに切断、研磨・加工することで製造される。
【0023】
(1)ルテニウム原料の調製(金属元素の添加)
先ず、ルテニウム原料を用意し、これに特定の金属元素(以下、添加剤ともいう)を混合する。
【0024】
添加剤は、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWの金属元素から選択される少なくとも1種である。これらは、いずれもルテニウムの結晶粒径を小さくする効果をもつ金属元素である。このうち、好ましいのは、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Cr、又はMoであり、なかでもSi又はZrが好ましい。これらの金属元素は金属元素そのものであることが望ましいが、酸化物、窒化物、水酸化物、ハロゲン化物などの金属化合物であってもよい。
【0025】
一般に高純度金属中に固溶した不純物元素は、結晶粒径を小さくする効果を持つとされているが、本発明者らの実験によると、ルテニウムは、融点が2250℃と高いため、ルテニウムの融点近傍で高い蒸気圧を持つ元素、例えば、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Geなどは所定の濃度の合金を得ることが難しく、濃度の分布を持ちやすいことが分かった。またPt、Ir、Os、Rhなど白金族元素は、ルテニウムの融点近傍で蒸気圧は低いが、結晶粒径を小さくする効果は見られなかった。
【0026】
添加剤の量は、合金化したインゴット中のSi、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWの元素の合計含有量が50〜100重量ppm、好ましくは60〜80重量ppmになるようにする。
添加した金属元素のインゴット中の合計含有量が50重量ppm未満では、結晶粒径を5mm以下まで小さくする効果が顕著でなく、金属元素の濃度が高いと完全に固溶できなくなって部分的に析出して粒径が均一でなくなる。また半導体などでは、不純物を嫌うため固溶させる金属元素の濃度は100重量ppmを超えないことが望ましい。TaやWが多量に含まれると、スパッタリング中に異常放電が増加するという問題がある。
【0027】
ルテニウム原料としては、通常市販されている純度3N程度のものでよく、特に高純度化したものを用いる必要はない。原料中に混入していたアルカリ(土類)金属元素などは、それらの大半がルテニウムの熔解とともに除去されるからである。
ただし、純度3N以上の粉末を用い、これを後述する水素プラズマアーク熔解法で、または電子ビーム熔解や真空プラズマ熔解で高純度化した原料(ルテニウムインゴット)とすることが更に好ましい。ルテニウムインゴットは、熔解条件を最適化して得られたものでも粒径10mm〜30mm程度のルテニウム粗大粒から構成されている。
【0028】
そこで、ルテニウム粗大粒で構成されたインゴットの粒径を微細化するには、塑性加工により鋳造組織を破壊し、再結晶化することが行われる。しかしながらルテニウムは室温付近での伸びが小さく、脆いため冷間では加工できない。また、大気中で加熱すると500℃を超えるとインゴット表面で酸化が始まり、粒界が酸化すると酸化による膨張のためクラックが発生する。更に大気中で加熱すると1000℃以上で毒性ガス(RuO4)が発生すると言われている。
【0029】
ルテニウム原料と添加剤(金属元素)との混合手段は、特に限定されない。ルテニウムインゴットを原料とする場合は、予めインゴットを直径10mm程度以下のサイズ(チップ)に粉砕しておくことが望ましい。その後、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機で混合される。
なお、得られた混合物が粉末状の場合は、プレスやホットプレスなどで塊状(成形体)にしておけば、プラズマ作動ガスにより粉末が飛散するのを抑制でき、生産効率が向上する。
【0030】
(2)水素プラズマアーク熔解による合金化
次に、得られたルテニウム粉末(成形体)を、熔解炉に装入し、少なくとも水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解して、ルテニウムインゴットとする。
【0031】
プラズマアーク熔解には、プラズマ作動ガスとしてアルゴンなどの不活性ガスを使用できる。プラズマ作動ガスに対しては水素を1〜50体積%、好ましくは5〜40体積%添加する。水素が1体積%未満では、熔解装置の電極材からの不純物の混入を抑制できず、50体積%を越えるとアークが不安定となり、熔解装置を破損するなどの問題があり好ましくない。
【0032】
プラズマアーク熔解中は、炉内圧を1.33×103〜2×105Pa(10Torr〜2atm)に調整することが好ましい。特に好ましい炉内圧力は、2×104〜1×105Paである。
所要時間は、ルテニウム原料の純度、量(インゴットのサイズ)、投入電力(アーク出力)などによっても異なるが、30〜90分の間で適宜選定できる。
【0033】
このように、水素を含有するガス雰囲気下でルテニウム原料をプラズマアーク熔解するため、インゴットへの不純物の混入を大幅に低減しうる。この理由は、まだ完全には解明されていないが、ガス雰囲気に水素が存在しない場合には良好な結果が得られないことから、水素が重要な役割を果たしているものと考えられる。
【0034】
また、1.33×103〜2×105Paの炉内圧でルテニウムを熔解させることから、従来のような中真空領域(1.33×10−1〜13.3Pa)で行う真空プラズマ熔解法に比して、蒸発損失が極めて少なく、ルテニウムスパッタリングターゲットを高い歩留りの下に製造することができる。
【0035】
本発明では、熔解後のルテニウム合金インゴットを600℃になるまで、300〜400℃/min、好ましくは320〜380℃/minの条件で冷却する。600℃から室温までの冷却条件は、クラックなどの発生に影響を与えないので特に制限はない。
【0036】
インゴットの大きさは、特に限定されるわけではないが、直径30〜150mm程度とすることが好ましい。直径が30mm未満では、大型のターゲットを製造するのに多くの工程を必要とし効率的ではなく、一方、150mmを超える大きなものにすると板材にするときにクラックが発生しやすい。
【0037】
得られたインゴットには必要以上に水素が取り込まれる可能性があるので、引き続き、真空中又は不活性ガス中で、800℃以上かつルテニウムの融点(2250℃)よりも低い温度でインゴットを熱処理することが好ましい。この熱処理により、インゴット中の水素含有量は低減する。
【0038】
熱処理方法としては、インゴットを炉内に置き、ガスを置換できる一般的な電気炉により加熱する方法などが採用できる。熱処理は、例えば1000〜1400℃の温度範囲で行うのが好適である。1000℃であれば10〜60分間必要であるが、1400℃であれば、5〜50分間かけて熱処理すればよい。このように高温で熱処理することで、インゴットを脱水素できる。また、これにより板材を接合する際に、その割れを生じ難くすることができる。
【0039】
本発明において実際的な方法は、高純度化ルテニウム粉末又は高純度化ルテニウムインゴットのチップに、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wのいずれかの金属元素を特定量だけ添加、混合して、熔解炉に装入し、水素プラズマアーク熔解により合金化する。これにより得られた合金インゴット中のSi、Zrなど添加金属元素を分析し、その合計含有量が50重量ppm以上100重量ppm以下でなければ、その範囲内になるように、チップの数を調整し、ルテニウム粉末又は金属元素を適量混ぜて、再度プラズマアーク熔解を行うようにすればよい。
以上により、プラズマアーク熔解を繰り返せば、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W及び白金族元素以外の遷移金属元素、アルカリ(土類)金属元素、放射性同位体元素やガス成分元素などの不純物が極低濃度域まで低減され高純度、かつルテニウムの結晶粒径も5mm以下になったルテニウムインゴットが得られる。
【0040】
(3)板材の作製
次に、得られたルテニウムインゴットを、放電加工や機械加工などによって所定サイズの板材とする。放電加工や機械加工は、公知の手段であって、特別な装置や条件が要求されるわけではない。板の形状は、接合の容易さ等を考慮して正方形、正六角形の多角形とすることが好ましい。
【0041】
前記の熔解工程で最後にインゴットを熱処理しなかった場合、800℃以上かつルテニウムの融点以下の処理温度で熱処理して、板材を脱水素することが好ましい。既に、インゴット作製段階で熱処理してあっても、ここで再度熱処理を行えば、さらに大きな効果を期待することができる。熱処理は、インゴットを炉内に置き、プラズマ作動ガスをアルゴンとした熱プラズマにより加熱する方法などが採用できる。板材は薄いために、インゴットの場合よりもやや低温で板材を熱処理する方が好ましいであろう。
板材は800〜1200℃で熱処理するのが好適である。800℃であれば10〜60分間必要であるが、1200℃であれば5〜50分間だけ熱処理すればよい。これによって、装置からの不純物混入を抑制しながらインゴットを脱水素でき、また、板材を接合する際に、一層その割れが生じ難くなる。
【0042】
(4)板材の接合
大型化したターゲットを作製する場合は、得られた所定サイズの板材を複数枚突き合わせて接合する。
【0043】
多角形のルテニウム板を2枚以上、互いの側面が接触するように突き合わせる。板材は、既に正方形、正六角形の多角形に切断しているため、複数の板を容易に突き合わせることができる。
接合手段は、特に制限されないが、接合部への不純物混入を抑制するためには、電子ビーム熔接、或いは水素を含有するガス雰囲気下でのプラズマアーク熔接又はアーク熔接のいずれかによることが好適である。熔接幅をなるべく狭くするには電子ビーム熔接によることが好ましい。電子ビーム熔接は、公知の手段であって、条件などは特に限定されない。
【0044】
本発明では、板材の接合に上記の電子ビーム熔接を採用することが望ましいが、その他に、(i)圧縮接合法、(ii)黒鉛製ケースを用いた接合方法などによることもできる。
【0045】
(i)圧縮接合
この方法では、少なくとも2枚のルテニウム板の端面を表面粗度Rmaxが20μm以下になるように研削加工し、研削加工されたルテニウム板を互いの端面が接触するように突き合せ、突き合せたルテニウム板を圧縮接合装置の冶具に設置する。
【0046】
圧縮接合装置としては、ホットプレス装置などが使用される。また、インゴットを圧縮する冶具としては、1100℃以上でルテニウムと反応しない黒鉛を用いることが好ましい。
そして、引き続き、10−1Pa以下、より好ましくは2×10−2Pa以下の真空中、又は純度4N以上の不活性ガス雰囲気中で、1100℃以上の温度に加熱、対向する端面を1MPa以上の面圧で圧縮し、ルテニウム板を接合する。
【0047】
真空度が10−1Pa未満では、加熱中にルテニウムインゴット表面の酸化が起こる。RuO2は1000℃以上で分解するが、粒界部が酸化するとその部分が膨張して体積変化を起こすため、粒界が脆くなり接合時に割れやすくなる。
また、純度が4Nより悪いと、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中でも酸素により加熱中にルテニウム板表面の酸化が起こるので好ましくない。
【0048】
加熱温度は、1100℃以上でルテニウムの融点(2250℃)以下、特に1200℃〜1900℃が好ましい。1100℃未満では、接合強度が不足し、1900℃を超えると、黒鉛を用いた場合、ルテニウム中へ炭素が拡散するため、保持時間を短くするなどの考慮が必要となる。
【0049】
面圧は、1MPa(10kg/cm2)〜30MPa、好ましくは2MPa〜20MPaで接合することが望ましい。面圧が1MPa未満では拡散接合は起きるが、加熱中に発生する応力で接合面が動くなどの問題が発生して実際的ではない。一方、面圧が20MPaを超えるとルテニウム板が変形するか、結晶の配向によって変形抵抗が違うため形状が変化するなどの問題が生じ、また、黒鉛が割れる、黒鉛にルテニウムがめり込む等の問題が生じる。
圧縮接合に要する時間は、加熱温度、面圧などの条件にもよるが、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間とする。0.5時間未満では接合強度が十分ではなく、5時間を超えるとルテニウム板にクラックが発生しやすい。
【0050】
(ii)黒鉛製ケースを用いた接合
この方法では、突合わせたルテニウム板の外周面に黒鉛製ブロックを配置し固定し、ルテニウム板と黒鉛製ブロックを収容した黒鉛製ケースを熱処理炉に装入する。そして、熱処理炉中、10−1Pa以下の真空中、または純度4N以上の不活性ガス雰囲気中で、ルテニウム板に面圧を加えることなく1100℃以上の温度に加熱する。
【0051】
加熱温度は、上記の圧縮接合の場合と同じく、1100℃以上でルテニウムの融点(2250℃)以下、特に1200℃〜1900℃が好ましい。
この温度条件で黒鉛製ケースを加熱し、ルテニウム板に対して面圧をかけないで所定の時間保持すればよい。加熱によって、ルテニウムが熱膨張するので、面圧をかけなくとも黒鉛製ブロックとの間でルテニウム板の接合部が1MPa(10kg/cm2)〜26MPa、好ましくは2MPa〜20MPaに加圧される。
【0052】
接合に要する時間は、加熱温度、雰囲気ガスなどの条件にもよるが、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間とする。0.5時間未満では接合強度が十分ではなく、5時間を超えると生産効率が低下する。
【0053】
上記のいずれかの方法で多角形の板材サイズを拡大できるわけであるが、これら接合工程を単位工程として、必要な回数だけ繰り返せば容易に大型のターゲットを製造することができる。
【0054】
以上により得られたルテニウム板は、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下であるだけでなく、熔解工程で装置電極材からの不純物混入が抑制されるため高純度であり、透過X線写真、探傷剤や超音波探傷によっても、割れなどの内部欠陥が検出されないほど高品質なものとなる。
【0055】
2.ルテニウムスパッタリングターゲット
本発明の高純度ルテニウムスパッタリングターゲットは、上記の方法で得られた大型の正方形板を円形に切断し、先端の四方に位置する部分を切り落とし、表面を平坦に研磨したものである。
【0056】
ルテニウムスパッタリングターゲットは、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下であり、水素プラズマアーク熔解によって高純度化されるため、添加剤以外の不純物の含有量が極めて低減されている。
すなわち、実質的にルテニウムからなり、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、或いはカルシウムなどのアルカリ(土類)金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄或いは銅などの遷移金属元素(白金族元素以外)の含有量が0.1重量ppm以下で、放射性同位体元素(U又はTh)のいずれの含有量も1重量ppb以下で、ガス成分元素(H、O、N又はSから選ばれる1種以上)の含有量が合計で30重量ppm以下であり、不可避的不純物として白金族元素が含まれた高純度なターゲットである。
【0057】
また、接合工程で黒鉛製の容器やブロックなどを用いる場合、炭素の混入が避けられないものの、炭素(C)は10ppm以下、特に5ppm以下であることが好ましい。 上記アルカリ(土類)金属元素、添加金属元素や白金族元素以外の遷移金属元素のいずれかが1重量ppmを越えると、良好なスパッタ膜を得られないことがある。
【0058】
本発明のターゲットは、透過X線写真、探傷剤や超音波探傷によっても、割れなどの内部欠陥が検出されず、優れたスパッタ性能を有する。
【0059】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示すが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜10)
まず、ルテニウム原料に各種金属元素を添加し、この混合物を水素プラズマアーク熔解し、得られたインゴットを切断し、所定のサイズのチップを切り出した。次に、このチップの所定数をルテニウム原料と混合し、前記操作を同様に繰り返した。すなわち、下記(1)〜(3)の3ステップを踏むことにより、ルテニウム原料への各種金属元素の添加量を調整した。各工程で得られたインゴット中の金属元素含有量を分析し、またルテニウムの結晶粒径を測定した。
(1)不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料に純度4NのSi、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWの粉末を該金属元素濃度が各々1重量%になるように秤量して混合し、300gをプレス(株式会社東京衡機製造所製の200t耐圧試験機)によって固め、10種類の混合物サンプルを作製した。なお、比較のためFeの粉末を用いて、同様に金属元素濃度が1重量%になるように秤量して混合し、300gをプレスによって固めた。
これをプラズマアーク熔解炉中の水冷銅ハースに置き、炉内をArガス置換した後、水素含有プラズマ作動ガス(5体積%H2を含有するAr)により、炉内圧を1×105Pa(1atm)に調節しながら、プラズマアーク熔解を計60分間行い、600℃になるまで340℃/minで冷却して、直径58mmの合金インゴットを作製した。プラズマアーク熔解には、大同特殊鋼株式会社製のプラズマ高融点金属熔解炉を使用した。また、熔解時の電流値は550Aであった。
これらのインゴットをワイヤーカット(ソデイック社製)で切断し、7mm×7mm×4mm(2.37g)チップを20個切り出した。ここまでの操作を以下、操作Aという。
残りのルテニウムからφ15mm厚み3mmの板を切り出して表面を研磨、洗浄してグロー放電質量分析装置(「VG ELEMENTAL ANALYSIS 製グロー放電質量分析装置 VG9000」)で分析した。その結果を表1に示す。
Fe以外の金属元素濃度は約1重量%の合金であった。Feを添加したインゴットのFe濃度は390重量ppmであった。また何れの試料からも添加元素以外で10重量ppmを超える元素は検出されなかった。また添加元素(Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe)以外の元素を合計しても50重量ppmを超えることは無かった。
結晶粒径はインゴットをワイヤーカットでスライスして、その断面(直径58mm)をNaClOと7%NaOH水溶液を3:1で混合したエッチング液を用いて80℃、5分間エッチングを行って、その面を観察した。大部分の粒は1mm〜4mmであったが、10mm程度の粒が1〜3個存在していた。
【0061】
【表1】
【0062】
(2)操作Aで作製した合金チップ7個を不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約500重量ppmになるように秤量し、全体の重量を331.8gとした。作製した10種類の混合物サンプルを用い、前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して直径58mmの合金インゴットを作製し、そのインゴットから7mm×7mm×4mm(2.37g)チップを23個切り出した。ここまでの操作を以下、操作Bという。
前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果を表2に示す。いずれも金属元素濃度が約400〜500ppmの合金であった。また結晶粒径はインゴットの大部分で1mm〜3mmであったが、7mm程度の粒が1〜2個存在していた。
【0063】
【表2】
【0064】
(3)操作Bで作製した合金チップを不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約75重量ppmになるように秤量し、全体の重量を252.8gとした。作製した10種類の混合物サンプルを用い、前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。ここまでの操作を以下、操作Cという。
前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果を表3に示す。ほぼ予定したように約60〜80重量ppmの濃度となった。また結晶粒径は1mm〜3mmで5mm以上の粒は存在していなかった。
【0065】
【表3】
【0066】
(比較例1)
操作Aで作製したFeの合金チップを不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、全体の重量を252.8gとした。前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。
前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果、Feの濃度は12〜26重量ppmと低くなり、分析試料内で濃度分布を示した。また結晶粒径は、2mm〜20mmの大きな粒が7個も混在していた。
【0067】
(実施例11)
操作Bで作製したSiを含む合金インゴットと、Zrを含む合金インゴットの残りから7mm×7mm×4mm(2.37g)チップを各8個切り出した。この2種類の合金チップと不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約75重量ppmになるように秤量し、全体の重量を252.8gとした。前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果、Siが28重量ppm、Zrが36重量ppmで合計は64重量ppmであった。
結晶粒径は1mm〜3mmで、5mm以上の粒は存在していなかった。
【0068】
(実施例12)
実施例11と同様の方法を用いて、SiとZrの合計が75重量ppmとなり、インゴット重量が680gとなるように秤量し、プラズマアーク熔解を計60分間行い、直径78mm、厚さ約7mmの高純度合金ルテニウムインゴットを4個作製した。
このインゴットから放電加工機で53mm×53mm×3.3mmのルテニウム板を作製し、得られた板材を酸洗浄してから、平面研削盤で側面を研削加工した後、田の字型に組み合わせ、端面を突き合わせて電子ビーム熔接を行い、106mm角の板を作製した。熔接はEB熔接機機(日本電気製EBW(6)523636)を用いて、電圧150Kv、電流8.5mA、熔接速度1m/min、真空度1.5×10−4Torrで行った。熔接後の板の内部を、透過X線写真、探傷剤や超音波探傷によって検査したが、クラックなどの内部欠陥は検出されなかった。
【0069】
(実施例13)
実施例12で作製した熔接後の板からφ100mm厚さ3mmのターゲットを作製し、アネルバ製のスパッタ装置(SPF−210H)に取り付けて製膜を行った。
製膜条件はAr圧0.5Pa、DC電流0.5A、ターゲット−基板間距離を65mmとしてルテニウムの膜厚200nmを5回製膜した。パーティクルを測定するため、ポリッシュ済みの3インチウエハーをチャンバーの底に置いて、5回製膜後にその上のパーティクルをSEMで測定した。
SEMの倍率は2000倍とし、測定領域を100μm角としてウエハーの中心とウエハーの中心から上下左右に1cm離れた4箇所、計5箇所の1μm以上のパーティクルをカウントした。同様の測定をスパッタリングターゲットごとに各3回実施し、全体の平均値をとった。本発明のターゲットでのパーティクルの平均値は2.5個となった。
【0070】
(比較例2〜11)
操作Bで作製した合金チップ7個と、不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約30重量ppmになるように秤量し、全体の重量を276.5gとした。作製した10種類の混合物サンプルを用い、前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果を表4に示す。
また結晶粒径を測定すると、2mm〜10mmの粒が混在していた。
【0071】
【表4】
【0072】
(従来例1)
不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料(600g)だけを用い、金属元素を添加することなくプレスによって固め、プラズマアーク熔解炉中の水冷銅ハースに置き、炉内をArガス置換した後、前記実施例に記載したと同様に水素含有プラズマ作動ガスにより、炉内圧をそれぞれ調節しながら、プラズマアーク熔解を計60分間行い、直径78mm、厚さ約7mmの高純度ルテニウムインゴットを作製した。このインゴットは粒径10mm〜30mm程度の粗大粒から構成されていた。前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果、インゴット中にSiは7重量ppm、Wが2重量ppm存在したが、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wは何れも1重量ppm未満であり、合計も最大17重量ppm未満である。
【0073】
(従来例2)
従来例1と同様の方法で直径78mm、厚さ約7mmの高純度ルテニウムインゴットを4個作製した。
このインゴットから53mm×53mm×3.3mmのルテニウム板を作製し、側面を研削加工した後、田の字型に組み合わせてEB熔接を行い106mm角の板を作製した。EB熔接は前述の方法と同じである。
熔接後の板にはクラック熔接部から粒界に沿った1mm〜3mm程度のクラックが5個発生した。
【0074】
(従来例3)
従来例2で作製した熔接後の板材を用いて、実施例11と同様の製膜試験を行いパーティクルを観察した。発生したパーティクルの平均値は6.6個であった。
【0075】
以上の結果から、実施例1〜10のように、ルテニウム原料にSiなどの特定の金属元素を1種類添加・混合して、この混合物を熔解炉に装入し、水素プラズマアーク熔解すれば、得られたインゴット中のルテニウム結晶粒径が5mm以下となることが分かる。また、実施例11のように、ルテニウム原料に2種類の金属元素(SiとZr)を添加して同様にインゴットを作製しても、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下となることが分かる。
そして、実施例11により得られたルテニウムインゴットは、切り出した板材を電子ビーム熔接してもクラックが生じることなく(実施例12)、スパッタ成膜時にパーティクルを低減できることが分かる(実施例13)。
【0076】
これに対して、比較例1のように、添加金属元素として鉄を用いると、得られたインゴット中に粒径が5mm以上のルテニウム結晶が多数生じることが分かる。また、比較例2〜11のように、Siなどの金属元素を添加したとしても、添加量が50重量ppm未満であると、水素プラズマアーク熔解しても、粒径5mm以上のルテニウム結晶が無いインゴットを得られない。
従来例1は、Siなどの金属元素を添加しないので、得られたインゴット中のルテニウム結晶粒径が5mm以下とならないことが分かる。そのため、電子ビーム熔接でクラックが生じ(従来例2)、スパッタ成膜時にパーティクルを抑制できないことが分かる(従来例3)。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、インゴット作製時、熔接時にクラックが発生せず、内部欠陥のないルテニウムスパッタリングターゲットを提供できる。また、高い歩留りの下に大型のターゲットを製造でき、高純度ルテニウムスパッタリングターゲットを安価に提供できることから、その工業的価値は極めて大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法に関し、さらに詳しくは、熔解法によってインゴットを大型化する際にクラックを発生させず、半導体メモリーのキャパシタ用電極、磁気ヘッドや磁気ディスクなどでルテニウム製膜時にパーティクルの発生を抑えることができ、膜厚分布を小さくしうる高純度ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体メモリーのキャパシタ用電極をはじめ、巨大磁気抵抗効果(GMR)やトンネル磁気抵抗効果(TMR)などを用いた磁気ヘッドや、反強磁性結合(AFC:Antiferromagnetic coupled)メディアを記録層に用いた磁気ディスクには、その構成要素となる非磁性中間膜材料としてルテニウムが用いられている。これら用途に用いられるルテニウム膜は、高純度ルテニウムスパッタリングターゲットを使用し、スパッタリング法により製膜される。
【0003】
また、半導体デバイスの高集積化にともなうチップサイズの大型化や歩留まり向上のため、使用されるSiウエハーの大型化が進んでいる。Siウエハーの大型化に伴って、非磁性中間膜を始めとしてデバイスを構成する薄膜を形成するためのスパッタリングターゲットにも大型化が求められてきている。
さらに、磁気ヘッドの分野でも、歩留まり向上、コスト低減のため基板の大型化が求められており、この基板の大型化に伴って薄膜形成用のスパッタリングターゲットも同様に大型化が要請されるようになった。
デバイスの高集積化・高密度化が進むにつれ、各種材料の純度が見直され、ルテニウムスパッタリングターゲット(以下、スパッタリングターゲット、或いは単にターゲットともいう)にもさらなる高純度化が求められている。
【0004】
ところで、従来のルテニウムスパッタリングターゲットは、ホットプレス、プラズマ焼結やHIP(熱間等方プレス)等を用いる粉末冶金法で製造されてきたが、粉末冶金法で作製されたスパッタリングターゲットには、ガス元素が多量に含有され、密度も100%にはならないという欠点があった。このため、この粉末冶金法で作製したスパッタリングターゲットを用いて製膜すると、パーティクルと呼ばれる数ミクロンのゴミが発生しやすいことも知られている。
【0005】
そこで、ターゲットの高純度化・高密度化を図るため、ルテニウム粉末にアルカリ金属などを添加、混合してホットプレスし、得られた成形体の表面を電子ビーム溶解などで溶解する方法(例えば、特許文献1参照)、ホットプレス成形体の一部分を電子ビーム熔解又はアーク熔解処理する方法(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、これらの方法によれば、ホットプレス成形体の表面にルテニウム熔解層を形成させるために、表面は高純度化するものの、それ以外の部分は低純度の状態であり、表面部分しかターゲットとして利用できずロスが大きいという問題があった。
【0007】
さらに、得られた溶解ルテニウムターゲットには酸素が含まれており、これが半導体回路素子のキャパシタ用電極としての金属ルテニウム膜の特性に大きく影響することから、ホットプレスにより作製した焼結体を高真空雰囲気で電子ビーム熔解することにより、酸素を低減させてルテニウムスパッタリングターゲットを作製する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法では、高真空雰囲気にするための真空装置が必要となり、装置全体を大型化してしまうという課題があった。
【0008】
一方、電子ビーム熔解法でルテニウム原料を熔解しようとすると、熔解の際に発生したガスがインゴットに残留し、内部で生じる気泡が欠陥を形成するという問題があった。そのために本出願人は、炉内圧を特定範囲に調節し、水素プラズマアーク熔解法でルテニウム原料を熔解することにより、内部欠陥のない高純度のルテニウムスパッタリングターゲットを作製する方法を提案した(特許文献4参照)。
【0009】
ところで、熔解法で作製したルテニウムスパッタリングターゲットを観察すると、ルテニウムは20〜30mm程度の大きな結晶粒を含む多結晶体となっている。そのため、通常、粗大粒で構成されたインゴットの粒径を微細化するのに、塑性加工により鋳造組織を破壊し、再結晶化することが行われる。
【0010】
しかしながら、ルテニウムは、室温付近での伸びが小さく、脆いため冷間では加工できない。また、大気中で加熱すると、500℃を超えた時点でインゴット表面の酸化が始まり、粒界が酸化すると酸化による膨張のためクラックが発生する。更に大気中で加熱すると、1000℃以上で毒性を持つRuO4が発生すると言われている。
その他にも、ルテニウムは、結晶面によって異なるスパッタ率を持つため、20〜30mmの大きな結晶粒で構成されたルテニウムスパッタリングターゲットを用いて製膜すると、形成される薄膜の膜厚分布が大きくなるという問題点を持っていた。
【0011】
このようなことから、クラックを発生させずにインゴットを大型化でき、歩留まりよく、膜厚が均一なスパッタ膜が形成できるルテニウムスパッタリングターゲットの出現が切望されていた。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−311641号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−302462号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2000−178722号公報(段落番号0005、0009)
【特許文献4】
特開2002−105631号公報(段落番号0009)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熔解法によってインゴットを大型化する際にクラックを発生させず、半導体メモリーのキャパシタ用電極、磁気ヘッドや磁気ディスクなどのルテニウム製膜時にパーティクルの発生を抑えることができ、膜厚分布を小さくしうる高純度ルテニウムスパッタリングターゲットとその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ルテニウム原料に対し、特定の金属元素を特定量添加してから熔解炉に装入し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解すれば、ルテニウムの結晶粒径が小さいインゴットを得ることができ、これから切り出した板材を熔接する際に割れが生じなくなり、大型で高純度なルテニウムスパッタリングターゲットが得られることを見出し、また、かかる方法で得られたターゲットは、添加した金属元素以外の元素含有量が少なく実質的にルテニウムからなり、これを用いれば成膜時のパーティクルの発生が抑制され、膜厚分布が小さくなるなど優れたスパッタリング性能が発揮されることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ルテニウム原料に、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWから選ばれる1種以上の金属元素を添加し、混合する工程と、得られた混合物を熔解炉に装入し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解させ、該金属元素を合計で50〜100重量ppm含有したインゴットを作製する工程とを含むことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プラズマアーク熔解は、不活性ガスに1〜50体積%の水素を混合したガス雰囲気下で行うことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、さらに、得られたインゴットを所定のサイズの板材に加工し、この板材を複数枚接合することを含むことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0018】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、板材の接合は、電子ビーム熔接により行うことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0019】
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の方法により得られ、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下であることを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットが提供される。
【0020】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、実質的にルテニウムからなり、アルカリ(土類)金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、添加した金属元素及び白金族元素を除く遷移金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、放射性同位体元素のいずれの含有量も1重量ppb以下で、ガス成分元素の含有量が合計で30重量ppm以下であり、不可避的不純物として白金族元素を含んでなるルテニウムスパッタリングターゲットが提供される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法、それにより得られるターゲットについて詳細に説明する。
【0022】
1.ルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法
本発明のルテニウムスパッタリングターゲットは、(1)ルテニウム原料を用意し、これに特定の金属元素を添加し、混合する工程、(2)この混合物を熔解炉に装入し、水素プラズマアーク熔解して、インゴットを作製する工程を含み、次いで(3)得られたインゴットを板材に加工し、最後に(4)複数枚の板材を接合し、(5)これを所定のサイズに切断、研磨・加工することで製造される。
【0023】
(1)ルテニウム原料の調製(金属元素の添加)
先ず、ルテニウム原料を用意し、これに特定の金属元素(以下、添加剤ともいう)を混合する。
【0024】
添加剤は、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWの金属元素から選択される少なくとも1種である。これらは、いずれもルテニウムの結晶粒径を小さくする効果をもつ金属元素である。このうち、好ましいのは、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Cr、又はMoであり、なかでもSi又はZrが好ましい。これらの金属元素は金属元素そのものであることが望ましいが、酸化物、窒化物、水酸化物、ハロゲン化物などの金属化合物であってもよい。
【0025】
一般に高純度金属中に固溶した不純物元素は、結晶粒径を小さくする効果を持つとされているが、本発明者らの実験によると、ルテニウムは、融点が2250℃と高いため、ルテニウムの融点近傍で高い蒸気圧を持つ元素、例えば、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Geなどは所定の濃度の合金を得ることが難しく、濃度の分布を持ちやすいことが分かった。またPt、Ir、Os、Rhなど白金族元素は、ルテニウムの融点近傍で蒸気圧は低いが、結晶粒径を小さくする効果は見られなかった。
【0026】
添加剤の量は、合金化したインゴット中のSi、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWの元素の合計含有量が50〜100重量ppm、好ましくは60〜80重量ppmになるようにする。
添加した金属元素のインゴット中の合計含有量が50重量ppm未満では、結晶粒径を5mm以下まで小さくする効果が顕著でなく、金属元素の濃度が高いと完全に固溶できなくなって部分的に析出して粒径が均一でなくなる。また半導体などでは、不純物を嫌うため固溶させる金属元素の濃度は100重量ppmを超えないことが望ましい。TaやWが多量に含まれると、スパッタリング中に異常放電が増加するという問題がある。
【0027】
ルテニウム原料としては、通常市販されている純度3N程度のものでよく、特に高純度化したものを用いる必要はない。原料中に混入していたアルカリ(土類)金属元素などは、それらの大半がルテニウムの熔解とともに除去されるからである。
ただし、純度3N以上の粉末を用い、これを後述する水素プラズマアーク熔解法で、または電子ビーム熔解や真空プラズマ熔解で高純度化した原料(ルテニウムインゴット)とすることが更に好ましい。ルテニウムインゴットは、熔解条件を最適化して得られたものでも粒径10mm〜30mm程度のルテニウム粗大粒から構成されている。
【0028】
そこで、ルテニウム粗大粒で構成されたインゴットの粒径を微細化するには、塑性加工により鋳造組織を破壊し、再結晶化することが行われる。しかしながらルテニウムは室温付近での伸びが小さく、脆いため冷間では加工できない。また、大気中で加熱すると500℃を超えるとインゴット表面で酸化が始まり、粒界が酸化すると酸化による膨張のためクラックが発生する。更に大気中で加熱すると1000℃以上で毒性ガス(RuO4)が発生すると言われている。
【0029】
ルテニウム原料と添加剤(金属元素)との混合手段は、特に限定されない。ルテニウムインゴットを原料とする場合は、予めインゴットを直径10mm程度以下のサイズ(チップ)に粉砕しておくことが望ましい。その後、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機で混合される。
なお、得られた混合物が粉末状の場合は、プレスやホットプレスなどで塊状(成形体)にしておけば、プラズマ作動ガスにより粉末が飛散するのを抑制でき、生産効率が向上する。
【0030】
(2)水素プラズマアーク熔解による合金化
次に、得られたルテニウム粉末(成形体)を、熔解炉に装入し、少なくとも水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解して、ルテニウムインゴットとする。
【0031】
プラズマアーク熔解には、プラズマ作動ガスとしてアルゴンなどの不活性ガスを使用できる。プラズマ作動ガスに対しては水素を1〜50体積%、好ましくは5〜40体積%添加する。水素が1体積%未満では、熔解装置の電極材からの不純物の混入を抑制できず、50体積%を越えるとアークが不安定となり、熔解装置を破損するなどの問題があり好ましくない。
【0032】
プラズマアーク熔解中は、炉内圧を1.33×103〜2×105Pa(10Torr〜2atm)に調整することが好ましい。特に好ましい炉内圧力は、2×104〜1×105Paである。
所要時間は、ルテニウム原料の純度、量(インゴットのサイズ)、投入電力(アーク出力)などによっても異なるが、30〜90分の間で適宜選定できる。
【0033】
このように、水素を含有するガス雰囲気下でルテニウム原料をプラズマアーク熔解するため、インゴットへの不純物の混入を大幅に低減しうる。この理由は、まだ完全には解明されていないが、ガス雰囲気に水素が存在しない場合には良好な結果が得られないことから、水素が重要な役割を果たしているものと考えられる。
【0034】
また、1.33×103〜2×105Paの炉内圧でルテニウムを熔解させることから、従来のような中真空領域(1.33×10−1〜13.3Pa)で行う真空プラズマ熔解法に比して、蒸発損失が極めて少なく、ルテニウムスパッタリングターゲットを高い歩留りの下に製造することができる。
【0035】
本発明では、熔解後のルテニウム合金インゴットを600℃になるまで、300〜400℃/min、好ましくは320〜380℃/minの条件で冷却する。600℃から室温までの冷却条件は、クラックなどの発生に影響を与えないので特に制限はない。
【0036】
インゴットの大きさは、特に限定されるわけではないが、直径30〜150mm程度とすることが好ましい。直径が30mm未満では、大型のターゲットを製造するのに多くの工程を必要とし効率的ではなく、一方、150mmを超える大きなものにすると板材にするときにクラックが発生しやすい。
【0037】
得られたインゴットには必要以上に水素が取り込まれる可能性があるので、引き続き、真空中又は不活性ガス中で、800℃以上かつルテニウムの融点(2250℃)よりも低い温度でインゴットを熱処理することが好ましい。この熱処理により、インゴット中の水素含有量は低減する。
【0038】
熱処理方法としては、インゴットを炉内に置き、ガスを置換できる一般的な電気炉により加熱する方法などが採用できる。熱処理は、例えば1000〜1400℃の温度範囲で行うのが好適である。1000℃であれば10〜60分間必要であるが、1400℃であれば、5〜50分間かけて熱処理すればよい。このように高温で熱処理することで、インゴットを脱水素できる。また、これにより板材を接合する際に、その割れを生じ難くすることができる。
【0039】
本発明において実際的な方法は、高純度化ルテニウム粉末又は高純度化ルテニウムインゴットのチップに、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wのいずれかの金属元素を特定量だけ添加、混合して、熔解炉に装入し、水素プラズマアーク熔解により合金化する。これにより得られた合金インゴット中のSi、Zrなど添加金属元素を分析し、その合計含有量が50重量ppm以上100重量ppm以下でなければ、その範囲内になるように、チップの数を調整し、ルテニウム粉末又は金属元素を適量混ぜて、再度プラズマアーク熔解を行うようにすればよい。
以上により、プラズマアーク熔解を繰り返せば、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W及び白金族元素以外の遷移金属元素、アルカリ(土類)金属元素、放射性同位体元素やガス成分元素などの不純物が極低濃度域まで低減され高純度、かつルテニウムの結晶粒径も5mm以下になったルテニウムインゴットが得られる。
【0040】
(3)板材の作製
次に、得られたルテニウムインゴットを、放電加工や機械加工などによって所定サイズの板材とする。放電加工や機械加工は、公知の手段であって、特別な装置や条件が要求されるわけではない。板の形状は、接合の容易さ等を考慮して正方形、正六角形の多角形とすることが好ましい。
【0041】
前記の熔解工程で最後にインゴットを熱処理しなかった場合、800℃以上かつルテニウムの融点以下の処理温度で熱処理して、板材を脱水素することが好ましい。既に、インゴット作製段階で熱処理してあっても、ここで再度熱処理を行えば、さらに大きな効果を期待することができる。熱処理は、インゴットを炉内に置き、プラズマ作動ガスをアルゴンとした熱プラズマにより加熱する方法などが採用できる。板材は薄いために、インゴットの場合よりもやや低温で板材を熱処理する方が好ましいであろう。
板材は800〜1200℃で熱処理するのが好適である。800℃であれば10〜60分間必要であるが、1200℃であれば5〜50分間だけ熱処理すればよい。これによって、装置からの不純物混入を抑制しながらインゴットを脱水素でき、また、板材を接合する際に、一層その割れが生じ難くなる。
【0042】
(4)板材の接合
大型化したターゲットを作製する場合は、得られた所定サイズの板材を複数枚突き合わせて接合する。
【0043】
多角形のルテニウム板を2枚以上、互いの側面が接触するように突き合わせる。板材は、既に正方形、正六角形の多角形に切断しているため、複数の板を容易に突き合わせることができる。
接合手段は、特に制限されないが、接合部への不純物混入を抑制するためには、電子ビーム熔接、或いは水素を含有するガス雰囲気下でのプラズマアーク熔接又はアーク熔接のいずれかによることが好適である。熔接幅をなるべく狭くするには電子ビーム熔接によることが好ましい。電子ビーム熔接は、公知の手段であって、条件などは特に限定されない。
【0044】
本発明では、板材の接合に上記の電子ビーム熔接を採用することが望ましいが、その他に、(i)圧縮接合法、(ii)黒鉛製ケースを用いた接合方法などによることもできる。
【0045】
(i)圧縮接合
この方法では、少なくとも2枚のルテニウム板の端面を表面粗度Rmaxが20μm以下になるように研削加工し、研削加工されたルテニウム板を互いの端面が接触するように突き合せ、突き合せたルテニウム板を圧縮接合装置の冶具に設置する。
【0046】
圧縮接合装置としては、ホットプレス装置などが使用される。また、インゴットを圧縮する冶具としては、1100℃以上でルテニウムと反応しない黒鉛を用いることが好ましい。
そして、引き続き、10−1Pa以下、より好ましくは2×10−2Pa以下の真空中、又は純度4N以上の不活性ガス雰囲気中で、1100℃以上の温度に加熱、対向する端面を1MPa以上の面圧で圧縮し、ルテニウム板を接合する。
【0047】
真空度が10−1Pa未満では、加熱中にルテニウムインゴット表面の酸化が起こる。RuO2は1000℃以上で分解するが、粒界部が酸化するとその部分が膨張して体積変化を起こすため、粒界が脆くなり接合時に割れやすくなる。
また、純度が4Nより悪いと、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中でも酸素により加熱中にルテニウム板表面の酸化が起こるので好ましくない。
【0048】
加熱温度は、1100℃以上でルテニウムの融点(2250℃)以下、特に1200℃〜1900℃が好ましい。1100℃未満では、接合強度が不足し、1900℃を超えると、黒鉛を用いた場合、ルテニウム中へ炭素が拡散するため、保持時間を短くするなどの考慮が必要となる。
【0049】
面圧は、1MPa(10kg/cm2)〜30MPa、好ましくは2MPa〜20MPaで接合することが望ましい。面圧が1MPa未満では拡散接合は起きるが、加熱中に発生する応力で接合面が動くなどの問題が発生して実際的ではない。一方、面圧が20MPaを超えるとルテニウム板が変形するか、結晶の配向によって変形抵抗が違うため形状が変化するなどの問題が生じ、また、黒鉛が割れる、黒鉛にルテニウムがめり込む等の問題が生じる。
圧縮接合に要する時間は、加熱温度、面圧などの条件にもよるが、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間とする。0.5時間未満では接合強度が十分ではなく、5時間を超えるとルテニウム板にクラックが発生しやすい。
【0050】
(ii)黒鉛製ケースを用いた接合
この方法では、突合わせたルテニウム板の外周面に黒鉛製ブロックを配置し固定し、ルテニウム板と黒鉛製ブロックを収容した黒鉛製ケースを熱処理炉に装入する。そして、熱処理炉中、10−1Pa以下の真空中、または純度4N以上の不活性ガス雰囲気中で、ルテニウム板に面圧を加えることなく1100℃以上の温度に加熱する。
【0051】
加熱温度は、上記の圧縮接合の場合と同じく、1100℃以上でルテニウムの融点(2250℃)以下、特に1200℃〜1900℃が好ましい。
この温度条件で黒鉛製ケースを加熱し、ルテニウム板に対して面圧をかけないで所定の時間保持すればよい。加熱によって、ルテニウムが熱膨張するので、面圧をかけなくとも黒鉛製ブロックとの間でルテニウム板の接合部が1MPa(10kg/cm2)〜26MPa、好ましくは2MPa〜20MPaに加圧される。
【0052】
接合に要する時間は、加熱温度、雰囲気ガスなどの条件にもよるが、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間とする。0.5時間未満では接合強度が十分ではなく、5時間を超えると生産効率が低下する。
【0053】
上記のいずれかの方法で多角形の板材サイズを拡大できるわけであるが、これら接合工程を単位工程として、必要な回数だけ繰り返せば容易に大型のターゲットを製造することができる。
【0054】
以上により得られたルテニウム板は、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下であるだけでなく、熔解工程で装置電極材からの不純物混入が抑制されるため高純度であり、透過X線写真、探傷剤や超音波探傷によっても、割れなどの内部欠陥が検出されないほど高品質なものとなる。
【0055】
2.ルテニウムスパッタリングターゲット
本発明の高純度ルテニウムスパッタリングターゲットは、上記の方法で得られた大型の正方形板を円形に切断し、先端の四方に位置する部分を切り落とし、表面を平坦に研磨したものである。
【0056】
ルテニウムスパッタリングターゲットは、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下であり、水素プラズマアーク熔解によって高純度化されるため、添加剤以外の不純物の含有量が極めて低減されている。
すなわち、実質的にルテニウムからなり、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、或いはカルシウムなどのアルカリ(土類)金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄或いは銅などの遷移金属元素(白金族元素以外)の含有量が0.1重量ppm以下で、放射性同位体元素(U又はTh)のいずれの含有量も1重量ppb以下で、ガス成分元素(H、O、N又はSから選ばれる1種以上)の含有量が合計で30重量ppm以下であり、不可避的不純物として白金族元素が含まれた高純度なターゲットである。
【0057】
また、接合工程で黒鉛製の容器やブロックなどを用いる場合、炭素の混入が避けられないものの、炭素(C)は10ppm以下、特に5ppm以下であることが好ましい。 上記アルカリ(土類)金属元素、添加金属元素や白金族元素以外の遷移金属元素のいずれかが1重量ppmを越えると、良好なスパッタ膜を得られないことがある。
【0058】
本発明のターゲットは、透過X線写真、探傷剤や超音波探傷によっても、割れなどの内部欠陥が検出されず、優れたスパッタ性能を有する。
【0059】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示すが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜10)
まず、ルテニウム原料に各種金属元素を添加し、この混合物を水素プラズマアーク熔解し、得られたインゴットを切断し、所定のサイズのチップを切り出した。次に、このチップの所定数をルテニウム原料と混合し、前記操作を同様に繰り返した。すなわち、下記(1)〜(3)の3ステップを踏むことにより、ルテニウム原料への各種金属元素の添加量を調整した。各工程で得られたインゴット中の金属元素含有量を分析し、またルテニウムの結晶粒径を測定した。
(1)不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料に純度4NのSi、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWの粉末を該金属元素濃度が各々1重量%になるように秤量して混合し、300gをプレス(株式会社東京衡機製造所製の200t耐圧試験機)によって固め、10種類の混合物サンプルを作製した。なお、比較のためFeの粉末を用いて、同様に金属元素濃度が1重量%になるように秤量して混合し、300gをプレスによって固めた。
これをプラズマアーク熔解炉中の水冷銅ハースに置き、炉内をArガス置換した後、水素含有プラズマ作動ガス(5体積%H2を含有するAr)により、炉内圧を1×105Pa(1atm)に調節しながら、プラズマアーク熔解を計60分間行い、600℃になるまで340℃/minで冷却して、直径58mmの合金インゴットを作製した。プラズマアーク熔解には、大同特殊鋼株式会社製のプラズマ高融点金属熔解炉を使用した。また、熔解時の電流値は550Aであった。
これらのインゴットをワイヤーカット(ソデイック社製)で切断し、7mm×7mm×4mm(2.37g)チップを20個切り出した。ここまでの操作を以下、操作Aという。
残りのルテニウムからφ15mm厚み3mmの板を切り出して表面を研磨、洗浄してグロー放電質量分析装置(「VG ELEMENTAL ANALYSIS 製グロー放電質量分析装置 VG9000」)で分析した。その結果を表1に示す。
Fe以外の金属元素濃度は約1重量%の合金であった。Feを添加したインゴットのFe濃度は390重量ppmであった。また何れの試料からも添加元素以外で10重量ppmを超える元素は検出されなかった。また添加元素(Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe)以外の元素を合計しても50重量ppmを超えることは無かった。
結晶粒径はインゴットをワイヤーカットでスライスして、その断面(直径58mm)をNaClOと7%NaOH水溶液を3:1で混合したエッチング液を用いて80℃、5分間エッチングを行って、その面を観察した。大部分の粒は1mm〜4mmであったが、10mm程度の粒が1〜3個存在していた。
【0061】
【表1】
【0062】
(2)操作Aで作製した合金チップ7個を不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約500重量ppmになるように秤量し、全体の重量を331.8gとした。作製した10種類の混合物サンプルを用い、前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して直径58mmの合金インゴットを作製し、そのインゴットから7mm×7mm×4mm(2.37g)チップを23個切り出した。ここまでの操作を以下、操作Bという。
前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果を表2に示す。いずれも金属元素濃度が約400〜500ppmの合金であった。また結晶粒径はインゴットの大部分で1mm〜3mmであったが、7mm程度の粒が1〜2個存在していた。
【0063】
【表2】
【0064】
(3)操作Bで作製した合金チップを不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約75重量ppmになるように秤量し、全体の重量を252.8gとした。作製した10種類の混合物サンプルを用い、前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。ここまでの操作を以下、操作Cという。
前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果を表3に示す。ほぼ予定したように約60〜80重量ppmの濃度となった。また結晶粒径は1mm〜3mmで5mm以上の粒は存在していなかった。
【0065】
【表3】
【0066】
(比較例1)
操作Aで作製したFeの合金チップを不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、全体の重量を252.8gとした。前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。
前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果、Feの濃度は12〜26重量ppmと低くなり、分析試料内で濃度分布を示した。また結晶粒径は、2mm〜20mmの大きな粒が7個も混在していた。
【0067】
(実施例11)
操作Bで作製したSiを含む合金インゴットと、Zrを含む合金インゴットの残りから7mm×7mm×4mm(2.37g)チップを各8個切り出した。この2種類の合金チップと不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約75重量ppmになるように秤量し、全体の重量を252.8gとした。前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果、Siが28重量ppm、Zrが36重量ppmで合計は64重量ppmであった。
結晶粒径は1mm〜3mmで、5mm以上の粒は存在していなかった。
【0068】
(実施例12)
実施例11と同様の方法を用いて、SiとZrの合計が75重量ppmとなり、インゴット重量が680gとなるように秤量し、プラズマアーク熔解を計60分間行い、直径78mm、厚さ約7mmの高純度合金ルテニウムインゴットを4個作製した。
このインゴットから放電加工機で53mm×53mm×3.3mmのルテニウム板を作製し、得られた板材を酸洗浄してから、平面研削盤で側面を研削加工した後、田の字型に組み合わせ、端面を突き合わせて電子ビーム熔接を行い、106mm角の板を作製した。熔接はEB熔接機機(日本電気製EBW(6)523636)を用いて、電圧150Kv、電流8.5mA、熔接速度1m/min、真空度1.5×10−4Torrで行った。熔接後の板の内部を、透過X線写真、探傷剤や超音波探傷によって検査したが、クラックなどの内部欠陥は検出されなかった。
【0069】
(実施例13)
実施例12で作製した熔接後の板からφ100mm厚さ3mmのターゲットを作製し、アネルバ製のスパッタ装置(SPF−210H)に取り付けて製膜を行った。
製膜条件はAr圧0.5Pa、DC電流0.5A、ターゲット−基板間距離を65mmとしてルテニウムの膜厚200nmを5回製膜した。パーティクルを測定するため、ポリッシュ済みの3インチウエハーをチャンバーの底に置いて、5回製膜後にその上のパーティクルをSEMで測定した。
SEMの倍率は2000倍とし、測定領域を100μm角としてウエハーの中心とウエハーの中心から上下左右に1cm離れた4箇所、計5箇所の1μm以上のパーティクルをカウントした。同様の測定をスパッタリングターゲットごとに各3回実施し、全体の平均値をとった。本発明のターゲットでのパーティクルの平均値は2.5個となった。
【0070】
(比較例2〜11)
操作Bで作製した合金チップ7個と、不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料と混ぜて、金属元素が約30重量ppmになるように秤量し、全体の重量を276.5gとした。作製した10種類の混合物サンプルを用い、前述と同様の手順で水素プラズマアーク熔解して、直径58mmの合金インゴットを作製した。前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果を表4に示す。
また結晶粒径を測定すると、2mm〜10mmの粒が混在していた。
【0071】
【表4】
【0072】
(従来例1)
不純物品位の純度99.9重量%のルテニウム原料(600g)だけを用い、金属元素を添加することなくプレスによって固め、プラズマアーク熔解炉中の水冷銅ハースに置き、炉内をArガス置換した後、前記実施例に記載したと同様に水素含有プラズマ作動ガスにより、炉内圧をそれぞれ調節しながら、プラズマアーク熔解を計60分間行い、直径78mm、厚さ約7mmの高純度ルテニウムインゴットを作製した。このインゴットは粒径10mm〜30mm程度の粗大粒から構成されていた。前述と同様の手順で金属元素の分析を行った。その結果、インゴット中にSiは7重量ppm、Wが2重量ppm存在したが、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wは何れも1重量ppm未満であり、合計も最大17重量ppm未満である。
【0073】
(従来例2)
従来例1と同様の方法で直径78mm、厚さ約7mmの高純度ルテニウムインゴットを4個作製した。
このインゴットから53mm×53mm×3.3mmのルテニウム板を作製し、側面を研削加工した後、田の字型に組み合わせてEB熔接を行い106mm角の板を作製した。EB熔接は前述の方法と同じである。
熔接後の板にはクラック熔接部から粒界に沿った1mm〜3mm程度のクラックが5個発生した。
【0074】
(従来例3)
従来例2で作製した熔接後の板材を用いて、実施例11と同様の製膜試験を行いパーティクルを観察した。発生したパーティクルの平均値は6.6個であった。
【0075】
以上の結果から、実施例1〜10のように、ルテニウム原料にSiなどの特定の金属元素を1種類添加・混合して、この混合物を熔解炉に装入し、水素プラズマアーク熔解すれば、得られたインゴット中のルテニウム結晶粒径が5mm以下となることが分かる。また、実施例11のように、ルテニウム原料に2種類の金属元素(SiとZr)を添加して同様にインゴットを作製しても、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下となることが分かる。
そして、実施例11により得られたルテニウムインゴットは、切り出した板材を電子ビーム熔接してもクラックが生じることなく(実施例12)、スパッタ成膜時にパーティクルを低減できることが分かる(実施例13)。
【0076】
これに対して、比較例1のように、添加金属元素として鉄を用いると、得られたインゴット中に粒径が5mm以上のルテニウム結晶が多数生じることが分かる。また、比較例2〜11のように、Siなどの金属元素を添加したとしても、添加量が50重量ppm未満であると、水素プラズマアーク熔解しても、粒径5mm以上のルテニウム結晶が無いインゴットを得られない。
従来例1は、Siなどの金属元素を添加しないので、得られたインゴット中のルテニウム結晶粒径が5mm以下とならないことが分かる。そのため、電子ビーム熔接でクラックが生じ(従来例2)、スパッタ成膜時にパーティクルを抑制できないことが分かる(従来例3)。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、インゴット作製時、熔接時にクラックが発生せず、内部欠陥のないルテニウムスパッタリングターゲットを提供できる。また、高い歩留りの下に大型のターゲットを製造でき、高純度ルテニウムスパッタリングターゲットを安価に提供できることから、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (6)
- ルテニウム原料に、Si、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWから選ばれる1種以上の金属元素を添加し、混合する工程と、得られた混合物を熔解炉に装入し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解させ、該金属元素を合計で50〜100重量ppm含有したインゴットを作製する工程とを含むことを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法。
- プラズマアーク熔解は、不活性ガスに1〜50体積%の水素を混合したガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1に記載のルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法。
- さらに、得られたインゴットを所定のサイズの板材に加工し、この板材を複数枚接合することを含むことを特徴とする請求項1に記載のルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法。
- 板材の接合は、電子ビーム熔接により行うことを特徴とする請求項3に記載のルテニウムスパッタリングターゲットの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られ、ルテニウムの結晶粒径が5mm以下であることを特徴とするルテニウムスパッタリングターゲット。
- 実質的にルテニウムからなり、アルカリ(土類)金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、添加した金属元素及び白金族元素を除く遷移金属元素のいずれの含有量も0.1重量ppm以下で、放射性同位体元素のいずれの含有量も1重量ppb以下で、ガス成分元素の含有量が合計で30重量ppm以下であり、不可避的不純物として白金族元素を含んでなる請求項5に記載のルテニウムスパッタリングターゲット。
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