JP2004362913A - 固体酸化物形燃料電池用電解質及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオン伝導度を損なうことなく、機械的強度を向上させることができ、高性能、かつ信頼性の高い燃料電池を得ることができる固体酸化物形燃料電池用電解質、及びこのような電解質の製造方法、さらにはこのような電解質を用いた固体酸化物形燃料電池用セル板を提供する。
【解決手段】ジルコニアとイットリアから成る板状の電解質(3YSZ)2の平面方向の所望部位に、さらにイットリアを含浸させてイットリア濃度が高い変性領域(8YSZ)2aを設け、周辺部及び中央の格子状部分の機械的強度を確保しながら、上記領域2aにおけるイオン伝導性を向上させる。
【選択図】 図4
【解決手段】ジルコニアとイットリアから成る板状の電解質(3YSZ)2の平面方向の所望部位に、さらにイットリアを含浸させてイットリア濃度が高い変性領域(8YSZ)2aを設け、周辺部及び中央の格子状部分の機械的強度を確保しながら、上記領域2aにおけるイオン伝導性を向上させる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体酸化物形燃料電池に係わり、さらに詳しくは、機械的強度に優れた固体酸化物形燃料電池用電解質の構造と、その製造方法、さらにはこのような電解質を用いた固体酸化物形燃料電池用セル板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、使用する電解質の種類によって、リン酸型(以下、「PAFC」と略称する)、溶融炭酸塩型(以下、「MCFC」と略称する)、固体高分子型(以下、「PEFC」と略称する)、及び固体酸化物型(以下、「SOFC」と略称する)に区分されている。
この中でSOFC型燃料電池は、電解質材料としてリン酸水溶液や溶融炭酸塩のような液体状材料の代わりにイオン導電性を有する固体酸化物電解質材料を用いたものであり、PAFC型やMCFC型の燃料電池に比べて発電効率が高く、高温度の排熱が得られることから、オンサイト用コージェネレーションシステムへの適用が期待されている。
【0003】
そして、SOFC型燃料電池の代表的且つ具体的な燃料電池の構造としては、例えば、平行平板型燃料電池を挙げることができる。
この平行平板型燃料電池の構造は、PAFC型やMCFC型と基本的に同等の構造であって、電解質層を構成する基板の両面に燃料極層と空気極層が積層された平面状のセル板と、一方に燃料ガス流路と他方に空気流路とを形成したセパレータ兼インターコネクタとを交互に貼りあわせた構造を有している。なお、このような電解質支持型構造に対し、電解質層の内部抵抗を減らして発電効率を向上すべく、電解質層を薄膜化するために、多孔質の燃料極あるいは空気極のどちらか一方の電極層を支持体として電解質膜と他方の電極層を形成した電極支持型構造も提案されている。
【0004】
このような固体酸化物型燃料電池においては、電解質層の平板面積を大きくすることによって発電容量を増大させることが考えられるが、電解質層の平板面積を大きくするためには、その電解質基板の材料強度を高める必要がある。しかし、単純に電解質基板を厚く(0.2〜0.3mm)して、強度を向上させようとした場合には、電解質基板が薄い場合よりも内部抵抗が増大し、導電率の低下により発電特性が損なわれるという問題が生じる。そのため、内部抵抗が低く、かつ機械的強度の高い電解質層が望まれている。
【0005】
一般に固体酸化物電解質材料においては、酸素イオン伝導度と機械的強度は相反する関係にある。これは酸素イオンの伝導が、基材酸化物に対してドーピングを施すことによる結晶欠陥の発生や、結晶格子の歪によって発現することに起因しており、イオン伝導度を向上させるということは、このような欠陥や歪を増やすことであって、当然のことながら基材の強度低下に直結することになる。
このような問題の解決策の一つとして、電解質層に対して上面および下面の一方、又は両方に電解質層を支持する支持部材を設けることによって電解質層の強度を高めることが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−133284号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法においては、電解質層の表面に支持部材を追加して設けるため、支持部材を別途作製すると共に、さらにその支持部材を電解質層と一体化する必要がある。従って、支持部材の材料、製造工程および電解質層と支持部材の接合工程等が新たに発生し、製造工程が複雑で長くなり、またコスト高となるといった問題点があった。
なお、前述の電極支持型構造の燃料電池においては、電極基板には、ガス供給のためにかなり多孔質な構造が必要である一方、支持基板としての機械的強度も要求されることから、相当な厚さとなるばかりでなく、このような多孔質の電極基板上に薄い電解質を形成することは極めて高度な技術を要する。
【0008】
本発明は、従来の固体酸化物形燃料電池における上記課題に着目してなされたものであって、基板としての電解質、あるいは他の基板上に形成される電解質層のイオン伝導度を損なうことなく、機械的強度を向上させることができ、高性能、かつ信頼性の高い燃料電池を得ることができる固体酸化物形燃料電池用電解質、及びこのような電解質の製造方法、さらにはこのような電解質を用いた固体酸化物形燃料電池用セル板を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質は、ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状の電解質において、平面方向の所望部位に添加物の濃度や組成が異なる変性領域を備えたことを特徴としており、固体酸化物形燃料電池用電解質におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
また、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質の製造方法は、上記燃料電池用電解質の製造に好適なものであって、ジルコニアと第1の添加物、例えばY2O3、Sc2O3、CaO、MgOなどを含む電解質材料を所望形状に成型し、仮焼成して一旦低焼結密度の仮焼体としたのち、第2の添加物、例えばY、Sc、Ca、Mg、Ti、Nb、Ta、Mn、Alなどを含む溶液を上記仮焼体の所望の領域に塗布して含浸させ、本焼成を行って焼結密度を高めるようにしたことを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池用セル板は、上記固体酸化物型燃料電池用電解質を上部電極層と下部電極層で挟持した構成としたことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質について、さらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質は、上記のように、ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状のものであって、平面方向の所望部位に変性領域、すなわち他の部分より上記添加物の濃度が高い領域や、上記添加物に加えて他の添加物を含有する領域を備えているので、添加物によって当該変性領域の機械的強度やイオン伝導度などの物性を部位に応じて調整することができるようになり、機械的強度とイオン伝導性を兼ね備えた電解質となる。
【0014】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質においては、電解質母材として、ジルコニアを主成分とし、ジルコニアの安定化に寄与する成分である第1の添加物、例えばY2O3、Sc2O3、CaO、MgOなどの酸化物を単独で、あるいは任意の組み合わせで添加したものが使用される。
【0015】
これら第1の添加物は、当該電解質のイオン伝導性を向上させる機能を有していることから、所望部位についてその濃度を高めることによって、あるいは、上記グループのうちから第1の添加物として使用したもの以外の酸化物を第2の添加物として添加することによって、その領域のイオン伝導性が向上し、セルを形成した場合の発電性能が改善されることになる。
また、上記添加物の以外にも、4A族、5A族、7A族、4B族の酸化物、例えばTiO2、Nb2O5、Ta2O5、MnO2などにもイオン伝導性を向上させる機能があることから、これらを第2の添加物として所望部位に添加することによっても同様の効果が得られることになる。なお、これら添加物についても、単独添加のみならず、複合添加してもよい。
【0016】
一方、例えばAl2O3やMgAl2O4には、電解質母材の機械的強度を高める機能があるので、これらを第3の添加物として、所望の領域、例えば外周部などに添加することによって、当該部位を強化することができる。
【0017】
すなわち、従来の固体酸化物形燃料電池用電解質は、面内方向において均一な材料であったため面内で求められる機能が異なっていても、その一つの材料にて全てを担う必要があった。言い換えると、高いイオン伝導度が求められるセル部分も、イオン伝導度は要求されず強度が求められる外周部やマニホールド部分などもおなじ材質で形成せざるをえなかった。
【0018】
これに対し、本発明の電解質によれば、機械的強度に優れた電解質母材を使用して、強度が要求される部位、すなわちスタッキングに際して、ガスシール性の確保や接触抵抗の低減等の理由により、強い応力のかかる外周部やガスマニホールド周辺、あるいは中央部のセル形成部分を強化するための梁状部分などを残して、これ以外の部分における第1の添加物濃度を高めたり、さらに第2の添加物を含有させたりすることによって、あるいは第1の添加物濃度を高めたうえで、さらに第2の添加物を含有させることによって、セル相当部分のイオン伝度性を高めることができ、発電特性に優れ、かつ強度にも優れた電解質が得られる。
また、イオン伝度性に優れた電解質母材を使用して、上記のような強度が要求される部位のみに第3の添加物を添加することによって、セル相当部分のイオン伝度性を確保しながら当該領域の機械強度を高めることができ、同様に発電特性と強度とを兼ね備えた電解質が得られる。言うまでもなく、第1又は第2の添加物によってセル相当部分のイオン伝度性を高めたうえで、第3の添加物によって外周部などの強度をさらに高めることも当然可能である。
【0019】
このように、部位によってイオン伝導度や機械的強度が異なる固体酸化物形燃料電池用電解質は、例えば成分や濃度の異なる領域を別々に成形したのち、互いに張り合わせることによっても製造することができるが、ジルコニアと第1の添加物、すなわちY2O3、Sc2O3、CaO、MgOなどを含む電解質材料を所望形状に成型したのち、仮焼成して低焼結密度の仮焼体とし、当該仮焼体の所望領域に、第2の添加物、例えばY、Sc、Ca、Mg、Ti、Nb、Ta、Mn、Alなどを含む溶液を塗布して含浸させ、次いで本焼成を行うことによって、容易に製造することができる。
【0020】
ここで、電解質材料の成型には、プレス成形や押出し成形、ドクターブレード法などを採用することができる。また、シリコンや電極材料から成る基板上に形成することもでき、この場合にはスラリーあるいはペースト状とした材料を基板上に塗布法あるいは印刷法などによって付着させて成型した後、乾燥して基板と共に仮焼成することになる。
また、第2の添加物を含む溶液を仮焼成された仮焼体に塗布するに際しては、例えば、市販のマスキングテープ等によって、含浸させたくない部位にマスキングを施すことが望ましい。微細なパターンが必要であればフィルムレジスト等を使用することができ、フィルムレジスト等をもちいたフォトリソグラフィ技術を用いたマスキングを行うことにより、セル相当領域内に格子状やハニカムに高強度部分を残したり、形成したりすることができ、セル部分を支持する梁として機能することから、機械的強度を損なうことなく、発電部(セル)面積を大きくすることができ、発電効率のさらなる向上が期待できる。
【0021】
さらに、集電に際して電気的接続の接触抵抗を低減させるためには、押し付け力が必要となるが、強度を向上させた領域において集電を集中的に行うこともできるようになり、集電抵抗の低減による性能向上、信頼性の向上も可能となる。
【0022】
本発明の固体酸化物形燃料電池用セル板は、上記固体酸化物型燃料電池用電解質を上部電極層と下部電極層で挟持したものであるから、単位容積当たりの発電効率に優れ、しかもガスシール性に優れ、集電損失の少ない高性能の燃料電池が得られることになる。
【0023】
上記固体酸化物形燃料電池用セル板において、空気極材料としては、La1−XSrXMnO3(LSM)、La1−XCaXMnO3(LCM)、La1−XSrXCoO3(LSC)、Ptなどを使用することができ、一方、燃料極材料としては、NiO−YSZサーメット、Ni−SDC(サマリウム・ドープ・セリア)サーメット、Ptなどを使用することができるが、これらのみに限定されるものではない。
また、上記電極層を形成するには、例えば、スラリー塗布法、印刷法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマスプレー法、イオンプレーティング法、フレームスプレー法、プラズマジェットトーチ法、EVD法、CVD法などを採用することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本明細書においては、電解質層、燃料極層、空気極層の3層からなる部分を電池セル、又は単にセル、この電池セル及びその外周部のガス給排気用マニホールド部までを含めてセル板、このセル板及びセパレータから成る繰り返し単位を単セルユニット、単セルユニットを積層したものをセルスタック、そしてセルスタックを構成する各単セルユニットへガスを供給及び排出する機能を担うセルスタック内の流路をそれぞれ供給マニホールド及び排気マニホールドと称する。また、酸化ガスと空気は同義である。
【0025】
(実施例1)
図1〜4は、本発明の第1の実施例として、本発明を電解質支持型の平行平板固体酸化物形燃料電池に適用した例を示すものであって、図1(a)は当該実施例におけるセル板の上面図、図1(b)はその断面図、図3(c)はセル周縁部の拡大図である。
【0026】
図1(a)〜(c)に示すセル板1における電解質層2は、後述するように、外周部及び梁状の部分は3mol%のイットリア(Y2O3)を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、「3YSZ」と称する)から成り、この3YSZの領域内に8mol%のイットリア(Y2O3)を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、「8YSZ」と称する)から成る領域(変性領域)2aが形成されている。そして、当該8YSZから成る領域2aを上下から挟むように、電解質層2の図中上面に空気極層3、下面に燃料極層4がそれぞれ形成されている。
また、電解質層2の外周部の3YSZの領域には、積層してスタックとした状態において、各セルへ空気及び燃料ガスを供給するためのマニホールド、すなわち空気供給マニホールド2c、空気排気マニホールド2d、燃料供給マニホールド2e、燃料排気マニホールド2fが形成されている。
【0027】
図2は、上記セル板1を用いてスタックを形成する場合、セル間の電気的導通を図ると共に、それぞれのガスを分離するためのセパレータの一例を示し、図3は、上記セル板1、及び上記セパレータ6を用いて積層したスタックの構造を示すものである。
なお、上記セパレータ6は、上記電解質層2に形成された各マニホールドに対応する位置に、空気供給マニホールド6c、空気排気マニホールド6d、燃料供給マニホールド6e、燃料排気マニホールド6fを備えている。
【0028】
次に、図4に基づいて、上記電解質層2及びセル板1の作製方法について説明する。
まず、3YSZの原料粉と適当なバインダー及び分散媒かならなるスラリーを調整し、ドクターブレード法によってキャリアフィルム上に敷き述べてシート状に成形する。このシートを乾燥し分散媒を揮発させてグリーンシートを作製し、これを切断、パンチング等により適当なサイズに揃えると共に、空気及び燃料の給排気用マニホールド2c〜2fを開口し、数100℃〜1000℃程度の熱処理を施すことによって、図4(a)に示すように、1辺10cm、厚さ100μm程度の電解質の仮焼体2oを形成する。この仮焼体2oは焼成温度が低いため焼結密度が低く焼成温度によって30〜60%程度の空隙を含むことになる。
【0029】
次いで、図4(b)に示すように、得られた仮焼体2oにマスキング7を施し、仮焼体2oの外周部と、中央部の格子状梁部分を残して所望の領域2aを4箇所に開口した状態で、イットリウムを含む溶液、硝酸イットリウムを塗布して、含浸させる。この時の含浸量は仮焼体2oの厚さと溶液中のイットリウムの量を勘案し、ジルコニアに対し8mol%になるように調整する。
このマスキング7は含浸させる溶液が透過しなければいいので、市販のマスキングテープ等でも構わないし、微細なパターンが必要であればフィルムレジスト等を使用しても構わない。また、仮焼体2oに塗布・含浸させる溶液としては、イットリウムを含み、かつ焼成処理によってイットリア成分以外のものは揮発するものが望ましく、例えば水溶性の上記硝酸イットリウムの他に、同じく水溶性の炭酸イットリウム、あるいはアルコキシドに代表される有機金属塩を使用することができる。
【0030】
そして、マスク7を取り除いた後、1400℃程度にて本焼成を行い、図4(c)に示すように、緻密な電解質2を得る。この時、マスキングされた外周部及び格子状部分は原料粉とほぼおなじ3mol%のイットリアを含む3YSZとなるが、硝酸イットリウムを塗布された領域2aについては、硝酸成分が揮発し、イットリウムは酸化してイットリアとしてジルコニア内に取り込まれ8YSZが形成されることになる。
【0031】
最後に、図4(d)に示すように、上記電解質2の燃料極となる側に、8YSZが形成された領域2a及び格子状部分を覆うようにNiOとジルコニアからなるNi−サーメット材料を50μm程度に塗布して、1000〜1200℃程度の温度で焼成し、さらに空気極側にもLaXSr1−XCoO3(以下、「LSC」と称する)を50μm程度に塗布したのち800〜900℃程度で焼成することにより、電解質層2の両面に燃料極層4及び空気極層3をそれぞれ形成し、燃料電池セル板1とする。
【0032】
この実施例においては、機械的強度に優れる3YSZを母材とし、強度保持用梁として機能する部分を格子状に残した状態で、発電に寄与する領域にイオン伝導度の優れた8YSZを形成している。したがって、スタッキングした際に、ガスシール性を確保するために強い応力のかかるセル板1の外周部や、ガスマニホールド周辺などの強度、さらには格子状梁によって発電に寄与するセル部分の強度をも確保しながら、セル部分のイオン伝導度を高くすることができ、セルの大口径化も可能となって、発電特性に優れ、しかも強度に優れたセル板1が得られる。
また、仮焼体の段階でイットリアを含んだ溶液を選択的に塗布するといった簡単な工程を追加するだけで、イオン伝導度の高い8YSZから成る変性領域2aをセル相当部分に形成することができ、安価に機械的強度とイオン伝導度を兼ね備えた電解質層2を実現することができる。
【0033】
なお、上記実施例では、電解質材料の形成にドクターブレード法を用いたが、これに限定されるものではなく、プレス成形や押出し成形などを適用してもよい。
また、3YSZの仮焼体にイットリアを含む溶液を塗布して、含浸させることにより8YSZの領域2aを形成したが、3YSZ及び8YSZの領域をそれぞれ別個に成形して、張り合わせるようにすることも可能である。
【0034】
さらに、上記実施例においては、母材としてジルコニアを主成分とし添加物(第1の添加物)としてイットリアを用いたが、前述のようにこれに制限されるものではなく、安定化の添加物としてはSc、Mg、Ca等を用いることもできる。また、イオン導電性を向上させる添加物として、母材の添加物と同じイットリアを用いたが、前述のSc、Mg、Caでも同様の効果が得られる。さらに、イオン導電性を向上させる添加物は、母材の添加物と同じである必要はなく、4A族、5A族、7A族、4B族の酸化物、例えばTiO2、Nb2O5、Ta2O5、MnO2などを第2の添加物として使用することができる。なお、これら添加物は単独のみならず、複合添加することも可能である。
【0035】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施例として、本発明の電解質を同様に電解質支持型の平行平板固体酸化物形燃料電池に適用した例を示す。当該実施例においては、イオン伝導度に優れた8YSZの仮焼体にアルミナ(Al2O3)を導入することによって所望部分、すなわち外周部及び中央の格子状梁部分の強度向上を行った点において、上記実施例1と相違する。
【0036】
図5に基づいて、当が追い実施例における電解質層2及びセル板1の作製方法について説明する。
まず、8YSZの原料粉を用いて、上記実施例1と同様の手法により、図5(a)に示すように8YSZの仮焼体2oを作製する。
【0037】
次いで、図5(b)に示すように、仮焼体2oにマスキング7を施し、所望の領域2a、この場合は外周部、マニホールド部、中央部の格子状部分など、強度の向上をはかりたい領域を開口し、開口部分にシュウ酸アルミニウム水溶液を塗布して、含浸させる。この時の含浸量は仮焼体2oの厚さと溶液中のアルミニウムの量を勘案し、ジルコニアに対して、例えば1mol%となるように調整する。
マスキングに際しては、実施例1と同様に、市販のマスキングテープやフィルムレジスト等を使用することができる。また、含浸溶液としては、アルミニウムを含み、焼成処理によってアルミニウム成分以外のものは揮発するようなものが望ましく、上記した水溶性のシュウ酸アルミニウムの他には、アルコキシドに代表される有機金属塩などを使用することができる。
【0038】
次に、マスク7を取り除いた後、1400℃程度にて本焼成を行い、図5(c)に示すように、緻密な電解質2を得る。この時、マスキングされた領域は原料粉とほぼおなじ8mol%のイットリアを含む8YSZとなるが、シュウ酸アルミニウムを塗布された領域2aについては、シュウ酸成分が揮発し、アルミニウムは酸化してアルミナとしてジルコニア内に分散し、アルミナ強化8YSZが形成されることになる。
【0039】
そして最後に、図5(d)に示すように、上記電解質2の燃料極となる側に、8YSZから成る領域を覆うようにNiOとジルコニアからなるNi−サーメット材料を50μm程度に塗布して、1000〜1200℃程度の温度で焼成し、さらに空気極側にもLSCを50μm程度に塗布して、800〜900℃程度で焼成することにより、電解質層2の両面に燃料極層4及び空気極層3をそれぞれ形成して、燃料電池セル板1とする。
【0040】
この実施例においては、イオン伝導性に優れた8YSZを母材とし、外周部やガスマニホールド周辺、さらに中央部の格子状梁部分を選択的に強度に優れたアルミナ強化8YSZとしており、上記実施例1と同様に、発電特性に優れ、しかも強度に優れた電解質層2が得られる。
【0041】
なお、これら実施例のバリエーションとして、当該実施例2と上記実施例1とを組合わせることも可能である。
例えば、母材を3YSZとしてイオン伝導度を向上させたいセル部分に実施例1を用いて8YSZを形成し、強度を向上させたい外周部分に実施例2を適用してアルミナ強化YSZを形成したり、8YSZを母材としてセル部分に実施例1を適用してイオン伝導度をさらに向上させ、強度を向上させたい部分に実施例2を適用してアルミナ強化8YSZを形成したりすることも可能である。
【0042】
(実施例3)
図6〜8は、本発明の第3の実施例として、本発明を電極支持型、具体的には燃料極を支持基板とした燃料極支持型の平行平板固体酸化物型燃料電池に適用した例を示すものであって、図6(a)は当該実施例におけるセル板の上面図、図6(b)はその断面図、図6(c)はセル周縁部の拡大図である。
【0043】
このセル板1においては、多孔質の燃料極基板4を支持材として、その上に電解質層2と空気極層3が形成されている。また、電解質層2は、外周部及び中央部の梁状部分は機械的強度に優れた3YSZから成り、当該3YSZの領域内にイオン伝導性に優れた8YSZが形成されている。そしてこの8YSZの領域を覆うように空気極層3が形成され、外周部の3YSZの領域に耐熱金属から成るセルホルダー8が接合されている。
【0044】
セルホルダー8は、積層しスタック化した状態の各セルへ空気、及び燃料ガスを供給するためのマニホールド、すなわち空気供給マニホールド8c、空気排気マニホールド8d、燃料供給マニホールド8e、燃料排気マニホールド8fが開口されている。
また、図7は、上記セル板1と、実施例1と同様のセパレータ6を用いて積層したスタックの構造例を示すものである。
【0045】
以下に、図8に基づいて、電解質層2及びセル板1の作製方法について説明する。
まず、Ni−YSZサーメットを原料粉としてバインダーおよび分散媒かならなるスラリーを作り、ドクターブレード法によってキャリアフィルム上に敷き延べてシート状に成形する。そして、このシートを乾燥して分散媒を揮発させてグリーンシートを作製し、これを切断、パンチング等により適当なサイズに揃えたのち、1000〜1300℃程度の熱処理を施し、1辺10mm、厚さ1mm程度の正方形の燃料極基板4を形成する。
【0046】
次いで、3YSZ原料粉と適当なバインダーおよび分散媒からペーストを作り、スクリーン印刷法によって3YSZの印刷膜を形成し、燃料極基板2の焼成温度より低い数100℃〜1200℃の温度で仮焼成を行い、図8(a)に示すように上記基板2の上に3YSZから成る仮焼体2oを形成する。
【0047】
次に、図8(b)に示すように、燃料極基板2上の仮焼体2oにマスキング7を施し、その外周部と、中央部の格子状梁部分を残して、所望の領域2aを4箇所に開口した状態で、硝酸イットリウムを塗布し、含浸させる。この時の含浸量は仮焼体2oの厚さと溶液中のイットリウムの量を勘案し、ジルコニアに対し8mol%になるように調整する。
【0048】
そして、マスク7を取り除いた後、1400℃程度にて本焼成を行い、図8(c)に示すように、緻密な電解質層2を得る。この時、マスキングされた外周部及び格子状部分は原料粉とほぼおなじ3mol%のイットリアを含む3YSZとなるが、硝酸イットリウムを塗布された領域2aについては、硝酸成分が揮発し、イットリウムは酸化してイットリアとしてジルコニア内に取り込まれ8YSZが形成されることになる。
【0049】
ついで、図8(d)に示すように、電解質層2の上に、LSCを50μm程度に塗布したのち、800〜900℃程度で焼成して空気極層3とし、最後に、この電極支持型セルの外周部に、ガラス材9を用いて耐熱金属製のフレーム状をなすセルホルダー8を接合し、マニホールド8c〜8fを備えたセル板1とする(図6参照)。
【0050】
上記のような電極支持型のセルにおいては、支持基板が電極層であり、ガス透過性を有している。従って、燃料ガスが空気極側に漏れ出さないように燃料極基板表面が空気極側に表出しないようにする必要がある。そのため緻密でガスリークの無い電解質層に金属フレーム(セルホルダー)を接合したり、金属フレームを接合する領域に機械的強度が高く、ガスリークのないセラミック材料、例えばアルミナ等などからなる緻密なシール領域を形成したりすることが必要となる。
しかし、電解質層はイオン伝導度を重視すると機械的強度が不充分で接合部にクラックが発生する。また高強度のシール領域を形成する場合には追加工程が必要な上、場合によっては電解質層とシール領域の材料の違いによる熱膨張係数差による応力が発生して、クラックが発生するなど、コストや信頼性の点でも問題がある。
【0051】
当該実施例によれば、発電領域についてはイオン伝導度に優れた8YSZとすることができ、セルホルダー8を接合する部分は3YSZのままであるから機械的強度に優れることから、極めて簡単な方法により上記のような問題点が解決されることになる。
【0052】
また、集電における接触抵抗を低減するために、大きな力で集電体を押付けた場合、電解質の割れ、剥離が発生し、同様に信頼性の低下を引き起こすことになるが、当該実施例によれば、押し付け力が必要となる集電を強度向上させら領域で集中的に行うことも可能となる。また、フィルムレジスト等を用いたフォトリソグラフィ技術を用いたマスキングにより8YSZ領域内に3YSZの領域を格子状、あるいはハニカム状の梁として残すことも可能であり、発電に寄与する電解質層2の中央部をも部分的に機械的強度を向上させることができることから、集電抵抗の低減による性能向上、信頼性の向上も期待できる。
【0053】
なお、上記実施例においては、3YSZの仮焼体2oにイットリアを含む溶液を塗布することによって8YSZの領域を形成した例を示したが、Ni−YSZサーメットから成る燃料極基板4の上に、3YSZの領域と、8YSZの領域を別々にスクリーン印刷することによって形成することも可能である。
また、当該実施例において添加物として使用したイットリアについても、他の添加物と置換し得ることは、上記実施例1と同様である。さらに、このような電極支持型セルにおいても、実施例2と同様に、イオン伝導度に優れた電解質層にアルミナ等を導入することによって、所望部分の強度を向上することも可能である。
【0054】
(実施例4)
図9及び10は、本発明の第4の実施例として、本発明を多孔質金属基材上にセルを形成した多孔質金属支持型の平行平板固体酸化物型燃料電池に適用した例を示すものであって、図9(a)は当該実施例におけるセル板の上面図、図9(b)はその断面図、図9(c)はセル周縁部の拡大図である。
【0055】
この実施例に係わるセル板1においては、空気及び燃料ガスを供給するためのマニホールドが形成された耐熱金属から成る多孔質金属基板0を支持材とし、その上に燃料極層4、電解質層2、空気極層3が形成されている。また、電解質層2は外周部及び中央部の梁状部分は3YSZから成り、この3YSZの領域内に8YSZが形成されている。そして、当該8YSZの領域を覆うように空気極層3が形成され、セルが形成されている。
また、図10は、上記セル板1と、実施例1と同様のセパレータ6を用いて積層したスタックの構造例を示すものである。
【0056】
上記セル板1を作製するには、まず、外周側に空気供給マニホールド10c、空気排気マニホールド10d、燃料供給マニホールド10e及び燃料排気マニホールド10fが形成され、多孔質処理によって中央部分にさらに多孔質部10bが形成された金属基板10に、NiOとジルコニアから成るNi−サーメット材料をスクリーン印刷して焼成することにより、燃料極層4を形成する。
これ以降は、上記実施例3と同様のプロセスによって、支持基板10上に電解質層2及び空気極層3を形成し、当該実施例に係わるセル板1が得られる。
【0057】
多孔質金属基板を用いたセル板においては、通常、基板の多孔質部と非多孔質部の境界周辺では、境界部分における強度の違いや集電体の押付けによる電解質層のクラック発生が問題となるが、当該実施例によれば、上記実施例3と同様に、強度の必要な部分は高強度に、セルの部分はイオン伝導度を高くするようにしており、このような問題点を解消することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質は、ジルコニアと特定添加物から成る電解質における平面方向の所望部位に、他の部分より上記添加物の濃度が高かったり、さらに他の添加物を含有したりする変性領域を備えていることから、これら添加物によって当該変性領域の機械的強度やイオン伝導度などの物性を調整することができ、強い圧力がかかる外周部の機械的強度を高め、電池性能が要求される中央部のイオン伝導性を向上させることができ、強度とイオン伝導性を兼ね備えた電解質とすることができるという極めて優れた効果を有するものである。
【0059】
また、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質の製造方法は、上記燃料電池用電解質の製造に好適に使用することができ、ジルコニアと第1の添加物を含む電解質材料を所望形状に成型し、仮焼成して一旦低焼結密度の化焼体としたのち、当該仮焼体の所望領域に第2の添加物を含む溶液を塗布して含浸させ、本焼成を行うようにしており、本発明の上記固体酸化物形燃料電池用電解質を容易に、低コストに製造することができる。
【0060】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池用セル板は、本発明の上記固体酸化物型燃料電池用電解質を上部電極層と下部電極層で挟持したものであるから、単位容積当たりの発電効率に優れ、しかもガスシール性に優れ、集電損失の少ない高性能の燃料電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 本発明の第1の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の構造を示す平面図である。
(b) 図1(a)に示したセル板の断面図である。
(c) 図1(b)の要部拡大断面図である。
【図2】図1に示したセル板による燃料電池スタックに用いられるセパレータの形状を示す平面図及び断面図である。
【図3】(a) 図1に示したセル板による燃料電池スタックの空気流路を示す断面図である。
(b) 図1に示したセル板による燃料電池スタックの燃料ガス流路を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は図1に示したセル板の製造手順を示す工程図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の第2の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の製造手順を示す工程図である。
【図6】(a) 本発明の第3の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の構造を示す平面図である。
(b) 図6(a)に示したセル板の断面図である。
(c) 図6(b)の要部拡大断面図である。
【図7】(a) 図6に示したセル板による燃料電池スタックの空気流路を示す断面図である。
(b) 図6に示したセル板による燃料電池スタックの燃料ガス流路を示す断面図である。
【図8】(a)〜(d)は図6に示したセル板の製造手順を示す工程図である。
【図9】(a) 本発明の第4の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の構造を示す平面図である。
(b) 図9(a)に示したセル板の断面図である。
(c) 図9(b)の要部拡大断面図である。
【図10】(a) 図9に示したセル板による燃料電池スタックの空気流路を示す断面図である。
(b) 図9に示したセル板による燃料電池スタックの燃料ガス流路を示す断面図である。
【符号の説明】
1 固体酸化物形燃料電池用セル板
2 電解質(層)
2a 変性領域
3 空気極(層)
4 燃料極(層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体酸化物形燃料電池に係わり、さらに詳しくは、機械的強度に優れた固体酸化物形燃料電池用電解質の構造と、その製造方法、さらにはこのような電解質を用いた固体酸化物形燃料電池用セル板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、使用する電解質の種類によって、リン酸型(以下、「PAFC」と略称する)、溶融炭酸塩型(以下、「MCFC」と略称する)、固体高分子型(以下、「PEFC」と略称する)、及び固体酸化物型(以下、「SOFC」と略称する)に区分されている。
この中でSOFC型燃料電池は、電解質材料としてリン酸水溶液や溶融炭酸塩のような液体状材料の代わりにイオン導電性を有する固体酸化物電解質材料を用いたものであり、PAFC型やMCFC型の燃料電池に比べて発電効率が高く、高温度の排熱が得られることから、オンサイト用コージェネレーションシステムへの適用が期待されている。
【0003】
そして、SOFC型燃料電池の代表的且つ具体的な燃料電池の構造としては、例えば、平行平板型燃料電池を挙げることができる。
この平行平板型燃料電池の構造は、PAFC型やMCFC型と基本的に同等の構造であって、電解質層を構成する基板の両面に燃料極層と空気極層が積層された平面状のセル板と、一方に燃料ガス流路と他方に空気流路とを形成したセパレータ兼インターコネクタとを交互に貼りあわせた構造を有している。なお、このような電解質支持型構造に対し、電解質層の内部抵抗を減らして発電効率を向上すべく、電解質層を薄膜化するために、多孔質の燃料極あるいは空気極のどちらか一方の電極層を支持体として電解質膜と他方の電極層を形成した電極支持型構造も提案されている。
【0004】
このような固体酸化物型燃料電池においては、電解質層の平板面積を大きくすることによって発電容量を増大させることが考えられるが、電解質層の平板面積を大きくするためには、その電解質基板の材料強度を高める必要がある。しかし、単純に電解質基板を厚く(0.2〜0.3mm)して、強度を向上させようとした場合には、電解質基板が薄い場合よりも内部抵抗が増大し、導電率の低下により発電特性が損なわれるという問題が生じる。そのため、内部抵抗が低く、かつ機械的強度の高い電解質層が望まれている。
【0005】
一般に固体酸化物電解質材料においては、酸素イオン伝導度と機械的強度は相反する関係にある。これは酸素イオンの伝導が、基材酸化物に対してドーピングを施すことによる結晶欠陥の発生や、結晶格子の歪によって発現することに起因しており、イオン伝導度を向上させるということは、このような欠陥や歪を増やすことであって、当然のことながら基材の強度低下に直結することになる。
このような問題の解決策の一つとして、電解質層に対して上面および下面の一方、又は両方に電解質層を支持する支持部材を設けることによって電解質層の強度を高めることが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−133284号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法においては、電解質層の表面に支持部材を追加して設けるため、支持部材を別途作製すると共に、さらにその支持部材を電解質層と一体化する必要がある。従って、支持部材の材料、製造工程および電解質層と支持部材の接合工程等が新たに発生し、製造工程が複雑で長くなり、またコスト高となるといった問題点があった。
なお、前述の電極支持型構造の燃料電池においては、電極基板には、ガス供給のためにかなり多孔質な構造が必要である一方、支持基板としての機械的強度も要求されることから、相当な厚さとなるばかりでなく、このような多孔質の電極基板上に薄い電解質を形成することは極めて高度な技術を要する。
【0008】
本発明は、従来の固体酸化物形燃料電池における上記課題に着目してなされたものであって、基板としての電解質、あるいは他の基板上に形成される電解質層のイオン伝導度を損なうことなく、機械的強度を向上させることができ、高性能、かつ信頼性の高い燃料電池を得ることができる固体酸化物形燃料電池用電解質、及びこのような電解質の製造方法、さらにはこのような電解質を用いた固体酸化物形燃料電池用セル板を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質は、ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状の電解質において、平面方向の所望部位に添加物の濃度や組成が異なる変性領域を備えたことを特徴としており、固体酸化物形燃料電池用電解質におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
また、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質の製造方法は、上記燃料電池用電解質の製造に好適なものであって、ジルコニアと第1の添加物、例えばY2O3、Sc2O3、CaO、MgOなどを含む電解質材料を所望形状に成型し、仮焼成して一旦低焼結密度の仮焼体としたのち、第2の添加物、例えばY、Sc、Ca、Mg、Ti、Nb、Ta、Mn、Alなどを含む溶液を上記仮焼体の所望の領域に塗布して含浸させ、本焼成を行って焼結密度を高めるようにしたことを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池用セル板は、上記固体酸化物型燃料電池用電解質を上部電極層と下部電極層で挟持した構成としたことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質について、さらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質は、上記のように、ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状のものであって、平面方向の所望部位に変性領域、すなわち他の部分より上記添加物の濃度が高い領域や、上記添加物に加えて他の添加物を含有する領域を備えているので、添加物によって当該変性領域の機械的強度やイオン伝導度などの物性を部位に応じて調整することができるようになり、機械的強度とイオン伝導性を兼ね備えた電解質となる。
【0014】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質においては、電解質母材として、ジルコニアを主成分とし、ジルコニアの安定化に寄与する成分である第1の添加物、例えばY2O3、Sc2O3、CaO、MgOなどの酸化物を単独で、あるいは任意の組み合わせで添加したものが使用される。
【0015】
これら第1の添加物は、当該電解質のイオン伝導性を向上させる機能を有していることから、所望部位についてその濃度を高めることによって、あるいは、上記グループのうちから第1の添加物として使用したもの以外の酸化物を第2の添加物として添加することによって、その領域のイオン伝導性が向上し、セルを形成した場合の発電性能が改善されることになる。
また、上記添加物の以外にも、4A族、5A族、7A族、4B族の酸化物、例えばTiO2、Nb2O5、Ta2O5、MnO2などにもイオン伝導性を向上させる機能があることから、これらを第2の添加物として所望部位に添加することによっても同様の効果が得られることになる。なお、これら添加物についても、単独添加のみならず、複合添加してもよい。
【0016】
一方、例えばAl2O3やMgAl2O4には、電解質母材の機械的強度を高める機能があるので、これらを第3の添加物として、所望の領域、例えば外周部などに添加することによって、当該部位を強化することができる。
【0017】
すなわち、従来の固体酸化物形燃料電池用電解質は、面内方向において均一な材料であったため面内で求められる機能が異なっていても、その一つの材料にて全てを担う必要があった。言い換えると、高いイオン伝導度が求められるセル部分も、イオン伝導度は要求されず強度が求められる外周部やマニホールド部分などもおなじ材質で形成せざるをえなかった。
【0018】
これに対し、本発明の電解質によれば、機械的強度に優れた電解質母材を使用して、強度が要求される部位、すなわちスタッキングに際して、ガスシール性の確保や接触抵抗の低減等の理由により、強い応力のかかる外周部やガスマニホールド周辺、あるいは中央部のセル形成部分を強化するための梁状部分などを残して、これ以外の部分における第1の添加物濃度を高めたり、さらに第2の添加物を含有させたりすることによって、あるいは第1の添加物濃度を高めたうえで、さらに第2の添加物を含有させることによって、セル相当部分のイオン伝度性を高めることができ、発電特性に優れ、かつ強度にも優れた電解質が得られる。
また、イオン伝度性に優れた電解質母材を使用して、上記のような強度が要求される部位のみに第3の添加物を添加することによって、セル相当部分のイオン伝度性を確保しながら当該領域の機械強度を高めることができ、同様に発電特性と強度とを兼ね備えた電解質が得られる。言うまでもなく、第1又は第2の添加物によってセル相当部分のイオン伝度性を高めたうえで、第3の添加物によって外周部などの強度をさらに高めることも当然可能である。
【0019】
このように、部位によってイオン伝導度や機械的強度が異なる固体酸化物形燃料電池用電解質は、例えば成分や濃度の異なる領域を別々に成形したのち、互いに張り合わせることによっても製造することができるが、ジルコニアと第1の添加物、すなわちY2O3、Sc2O3、CaO、MgOなどを含む電解質材料を所望形状に成型したのち、仮焼成して低焼結密度の仮焼体とし、当該仮焼体の所望領域に、第2の添加物、例えばY、Sc、Ca、Mg、Ti、Nb、Ta、Mn、Alなどを含む溶液を塗布して含浸させ、次いで本焼成を行うことによって、容易に製造することができる。
【0020】
ここで、電解質材料の成型には、プレス成形や押出し成形、ドクターブレード法などを採用することができる。また、シリコンや電極材料から成る基板上に形成することもでき、この場合にはスラリーあるいはペースト状とした材料を基板上に塗布法あるいは印刷法などによって付着させて成型した後、乾燥して基板と共に仮焼成することになる。
また、第2の添加物を含む溶液を仮焼成された仮焼体に塗布するに際しては、例えば、市販のマスキングテープ等によって、含浸させたくない部位にマスキングを施すことが望ましい。微細なパターンが必要であればフィルムレジスト等を使用することができ、フィルムレジスト等をもちいたフォトリソグラフィ技術を用いたマスキングを行うことにより、セル相当領域内に格子状やハニカムに高強度部分を残したり、形成したりすることができ、セル部分を支持する梁として機能することから、機械的強度を損なうことなく、発電部(セル)面積を大きくすることができ、発電効率のさらなる向上が期待できる。
【0021】
さらに、集電に際して電気的接続の接触抵抗を低減させるためには、押し付け力が必要となるが、強度を向上させた領域において集電を集中的に行うこともできるようになり、集電抵抗の低減による性能向上、信頼性の向上も可能となる。
【0022】
本発明の固体酸化物形燃料電池用セル板は、上記固体酸化物型燃料電池用電解質を上部電極層と下部電極層で挟持したものであるから、単位容積当たりの発電効率に優れ、しかもガスシール性に優れ、集電損失の少ない高性能の燃料電池が得られることになる。
【0023】
上記固体酸化物形燃料電池用セル板において、空気極材料としては、La1−XSrXMnO3(LSM)、La1−XCaXMnO3(LCM)、La1−XSrXCoO3(LSC)、Ptなどを使用することができ、一方、燃料極材料としては、NiO−YSZサーメット、Ni−SDC(サマリウム・ドープ・セリア)サーメット、Ptなどを使用することができるが、これらのみに限定されるものではない。
また、上記電極層を形成するには、例えば、スラリー塗布法、印刷法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマスプレー法、イオンプレーティング法、フレームスプレー法、プラズマジェットトーチ法、EVD法、CVD法などを採用することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本明細書においては、電解質層、燃料極層、空気極層の3層からなる部分を電池セル、又は単にセル、この電池セル及びその外周部のガス給排気用マニホールド部までを含めてセル板、このセル板及びセパレータから成る繰り返し単位を単セルユニット、単セルユニットを積層したものをセルスタック、そしてセルスタックを構成する各単セルユニットへガスを供給及び排出する機能を担うセルスタック内の流路をそれぞれ供給マニホールド及び排気マニホールドと称する。また、酸化ガスと空気は同義である。
【0025】
(実施例1)
図1〜4は、本発明の第1の実施例として、本発明を電解質支持型の平行平板固体酸化物形燃料電池に適用した例を示すものであって、図1(a)は当該実施例におけるセル板の上面図、図1(b)はその断面図、図3(c)はセル周縁部の拡大図である。
【0026】
図1(a)〜(c)に示すセル板1における電解質層2は、後述するように、外周部及び梁状の部分は3mol%のイットリア(Y2O3)を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、「3YSZ」と称する)から成り、この3YSZの領域内に8mol%のイットリア(Y2O3)を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、「8YSZ」と称する)から成る領域(変性領域)2aが形成されている。そして、当該8YSZから成る領域2aを上下から挟むように、電解質層2の図中上面に空気極層3、下面に燃料極層4がそれぞれ形成されている。
また、電解質層2の外周部の3YSZの領域には、積層してスタックとした状態において、各セルへ空気及び燃料ガスを供給するためのマニホールド、すなわち空気供給マニホールド2c、空気排気マニホールド2d、燃料供給マニホールド2e、燃料排気マニホールド2fが形成されている。
【0027】
図2は、上記セル板1を用いてスタックを形成する場合、セル間の電気的導通を図ると共に、それぞれのガスを分離するためのセパレータの一例を示し、図3は、上記セル板1、及び上記セパレータ6を用いて積層したスタックの構造を示すものである。
なお、上記セパレータ6は、上記電解質層2に形成された各マニホールドに対応する位置に、空気供給マニホールド6c、空気排気マニホールド6d、燃料供給マニホールド6e、燃料排気マニホールド6fを備えている。
【0028】
次に、図4に基づいて、上記電解質層2及びセル板1の作製方法について説明する。
まず、3YSZの原料粉と適当なバインダー及び分散媒かならなるスラリーを調整し、ドクターブレード法によってキャリアフィルム上に敷き述べてシート状に成形する。このシートを乾燥し分散媒を揮発させてグリーンシートを作製し、これを切断、パンチング等により適当なサイズに揃えると共に、空気及び燃料の給排気用マニホールド2c〜2fを開口し、数100℃〜1000℃程度の熱処理を施すことによって、図4(a)に示すように、1辺10cm、厚さ100μm程度の電解質の仮焼体2oを形成する。この仮焼体2oは焼成温度が低いため焼結密度が低く焼成温度によって30〜60%程度の空隙を含むことになる。
【0029】
次いで、図4(b)に示すように、得られた仮焼体2oにマスキング7を施し、仮焼体2oの外周部と、中央部の格子状梁部分を残して所望の領域2aを4箇所に開口した状態で、イットリウムを含む溶液、硝酸イットリウムを塗布して、含浸させる。この時の含浸量は仮焼体2oの厚さと溶液中のイットリウムの量を勘案し、ジルコニアに対し8mol%になるように調整する。
このマスキング7は含浸させる溶液が透過しなければいいので、市販のマスキングテープ等でも構わないし、微細なパターンが必要であればフィルムレジスト等を使用しても構わない。また、仮焼体2oに塗布・含浸させる溶液としては、イットリウムを含み、かつ焼成処理によってイットリア成分以外のものは揮発するものが望ましく、例えば水溶性の上記硝酸イットリウムの他に、同じく水溶性の炭酸イットリウム、あるいはアルコキシドに代表される有機金属塩を使用することができる。
【0030】
そして、マスク7を取り除いた後、1400℃程度にて本焼成を行い、図4(c)に示すように、緻密な電解質2を得る。この時、マスキングされた外周部及び格子状部分は原料粉とほぼおなじ3mol%のイットリアを含む3YSZとなるが、硝酸イットリウムを塗布された領域2aについては、硝酸成分が揮発し、イットリウムは酸化してイットリアとしてジルコニア内に取り込まれ8YSZが形成されることになる。
【0031】
最後に、図4(d)に示すように、上記電解質2の燃料極となる側に、8YSZが形成された領域2a及び格子状部分を覆うようにNiOとジルコニアからなるNi−サーメット材料を50μm程度に塗布して、1000〜1200℃程度の温度で焼成し、さらに空気極側にもLaXSr1−XCoO3(以下、「LSC」と称する)を50μm程度に塗布したのち800〜900℃程度で焼成することにより、電解質層2の両面に燃料極層4及び空気極層3をそれぞれ形成し、燃料電池セル板1とする。
【0032】
この実施例においては、機械的強度に優れる3YSZを母材とし、強度保持用梁として機能する部分を格子状に残した状態で、発電に寄与する領域にイオン伝導度の優れた8YSZを形成している。したがって、スタッキングした際に、ガスシール性を確保するために強い応力のかかるセル板1の外周部や、ガスマニホールド周辺などの強度、さらには格子状梁によって発電に寄与するセル部分の強度をも確保しながら、セル部分のイオン伝導度を高くすることができ、セルの大口径化も可能となって、発電特性に優れ、しかも強度に優れたセル板1が得られる。
また、仮焼体の段階でイットリアを含んだ溶液を選択的に塗布するといった簡単な工程を追加するだけで、イオン伝導度の高い8YSZから成る変性領域2aをセル相当部分に形成することができ、安価に機械的強度とイオン伝導度を兼ね備えた電解質層2を実現することができる。
【0033】
なお、上記実施例では、電解質材料の形成にドクターブレード法を用いたが、これに限定されるものではなく、プレス成形や押出し成形などを適用してもよい。
また、3YSZの仮焼体にイットリアを含む溶液を塗布して、含浸させることにより8YSZの領域2aを形成したが、3YSZ及び8YSZの領域をそれぞれ別個に成形して、張り合わせるようにすることも可能である。
【0034】
さらに、上記実施例においては、母材としてジルコニアを主成分とし添加物(第1の添加物)としてイットリアを用いたが、前述のようにこれに制限されるものではなく、安定化の添加物としてはSc、Mg、Ca等を用いることもできる。また、イオン導電性を向上させる添加物として、母材の添加物と同じイットリアを用いたが、前述のSc、Mg、Caでも同様の効果が得られる。さらに、イオン導電性を向上させる添加物は、母材の添加物と同じである必要はなく、4A族、5A族、7A族、4B族の酸化物、例えばTiO2、Nb2O5、Ta2O5、MnO2などを第2の添加物として使用することができる。なお、これら添加物は単独のみならず、複合添加することも可能である。
【0035】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施例として、本発明の電解質を同様に電解質支持型の平行平板固体酸化物形燃料電池に適用した例を示す。当該実施例においては、イオン伝導度に優れた8YSZの仮焼体にアルミナ(Al2O3)を導入することによって所望部分、すなわち外周部及び中央の格子状梁部分の強度向上を行った点において、上記実施例1と相違する。
【0036】
図5に基づいて、当が追い実施例における電解質層2及びセル板1の作製方法について説明する。
まず、8YSZの原料粉を用いて、上記実施例1と同様の手法により、図5(a)に示すように8YSZの仮焼体2oを作製する。
【0037】
次いで、図5(b)に示すように、仮焼体2oにマスキング7を施し、所望の領域2a、この場合は外周部、マニホールド部、中央部の格子状部分など、強度の向上をはかりたい領域を開口し、開口部分にシュウ酸アルミニウム水溶液を塗布して、含浸させる。この時の含浸量は仮焼体2oの厚さと溶液中のアルミニウムの量を勘案し、ジルコニアに対して、例えば1mol%となるように調整する。
マスキングに際しては、実施例1と同様に、市販のマスキングテープやフィルムレジスト等を使用することができる。また、含浸溶液としては、アルミニウムを含み、焼成処理によってアルミニウム成分以外のものは揮発するようなものが望ましく、上記した水溶性のシュウ酸アルミニウムの他には、アルコキシドに代表される有機金属塩などを使用することができる。
【0038】
次に、マスク7を取り除いた後、1400℃程度にて本焼成を行い、図5(c)に示すように、緻密な電解質2を得る。この時、マスキングされた領域は原料粉とほぼおなじ8mol%のイットリアを含む8YSZとなるが、シュウ酸アルミニウムを塗布された領域2aについては、シュウ酸成分が揮発し、アルミニウムは酸化してアルミナとしてジルコニア内に分散し、アルミナ強化8YSZが形成されることになる。
【0039】
そして最後に、図5(d)に示すように、上記電解質2の燃料極となる側に、8YSZから成る領域を覆うようにNiOとジルコニアからなるNi−サーメット材料を50μm程度に塗布して、1000〜1200℃程度の温度で焼成し、さらに空気極側にもLSCを50μm程度に塗布して、800〜900℃程度で焼成することにより、電解質層2の両面に燃料極層4及び空気極層3をそれぞれ形成して、燃料電池セル板1とする。
【0040】
この実施例においては、イオン伝導性に優れた8YSZを母材とし、外周部やガスマニホールド周辺、さらに中央部の格子状梁部分を選択的に強度に優れたアルミナ強化8YSZとしており、上記実施例1と同様に、発電特性に優れ、しかも強度に優れた電解質層2が得られる。
【0041】
なお、これら実施例のバリエーションとして、当該実施例2と上記実施例1とを組合わせることも可能である。
例えば、母材を3YSZとしてイオン伝導度を向上させたいセル部分に実施例1を用いて8YSZを形成し、強度を向上させたい外周部分に実施例2を適用してアルミナ強化YSZを形成したり、8YSZを母材としてセル部分に実施例1を適用してイオン伝導度をさらに向上させ、強度を向上させたい部分に実施例2を適用してアルミナ強化8YSZを形成したりすることも可能である。
【0042】
(実施例3)
図6〜8は、本発明の第3の実施例として、本発明を電極支持型、具体的には燃料極を支持基板とした燃料極支持型の平行平板固体酸化物型燃料電池に適用した例を示すものであって、図6(a)は当該実施例におけるセル板の上面図、図6(b)はその断面図、図6(c)はセル周縁部の拡大図である。
【0043】
このセル板1においては、多孔質の燃料極基板4を支持材として、その上に電解質層2と空気極層3が形成されている。また、電解質層2は、外周部及び中央部の梁状部分は機械的強度に優れた3YSZから成り、当該3YSZの領域内にイオン伝導性に優れた8YSZが形成されている。そしてこの8YSZの領域を覆うように空気極層3が形成され、外周部の3YSZの領域に耐熱金属から成るセルホルダー8が接合されている。
【0044】
セルホルダー8は、積層しスタック化した状態の各セルへ空気、及び燃料ガスを供給するためのマニホールド、すなわち空気供給マニホールド8c、空気排気マニホールド8d、燃料供給マニホールド8e、燃料排気マニホールド8fが開口されている。
また、図7は、上記セル板1と、実施例1と同様のセパレータ6を用いて積層したスタックの構造例を示すものである。
【0045】
以下に、図8に基づいて、電解質層2及びセル板1の作製方法について説明する。
まず、Ni−YSZサーメットを原料粉としてバインダーおよび分散媒かならなるスラリーを作り、ドクターブレード法によってキャリアフィルム上に敷き延べてシート状に成形する。そして、このシートを乾燥して分散媒を揮発させてグリーンシートを作製し、これを切断、パンチング等により適当なサイズに揃えたのち、1000〜1300℃程度の熱処理を施し、1辺10mm、厚さ1mm程度の正方形の燃料極基板4を形成する。
【0046】
次いで、3YSZ原料粉と適当なバインダーおよび分散媒からペーストを作り、スクリーン印刷法によって3YSZの印刷膜を形成し、燃料極基板2の焼成温度より低い数100℃〜1200℃の温度で仮焼成を行い、図8(a)に示すように上記基板2の上に3YSZから成る仮焼体2oを形成する。
【0047】
次に、図8(b)に示すように、燃料極基板2上の仮焼体2oにマスキング7を施し、その外周部と、中央部の格子状梁部分を残して、所望の領域2aを4箇所に開口した状態で、硝酸イットリウムを塗布し、含浸させる。この時の含浸量は仮焼体2oの厚さと溶液中のイットリウムの量を勘案し、ジルコニアに対し8mol%になるように調整する。
【0048】
そして、マスク7を取り除いた後、1400℃程度にて本焼成を行い、図8(c)に示すように、緻密な電解質層2を得る。この時、マスキングされた外周部及び格子状部分は原料粉とほぼおなじ3mol%のイットリアを含む3YSZとなるが、硝酸イットリウムを塗布された領域2aについては、硝酸成分が揮発し、イットリウムは酸化してイットリアとしてジルコニア内に取り込まれ8YSZが形成されることになる。
【0049】
ついで、図8(d)に示すように、電解質層2の上に、LSCを50μm程度に塗布したのち、800〜900℃程度で焼成して空気極層3とし、最後に、この電極支持型セルの外周部に、ガラス材9を用いて耐熱金属製のフレーム状をなすセルホルダー8を接合し、マニホールド8c〜8fを備えたセル板1とする(図6参照)。
【0050】
上記のような電極支持型のセルにおいては、支持基板が電極層であり、ガス透過性を有している。従って、燃料ガスが空気極側に漏れ出さないように燃料極基板表面が空気極側に表出しないようにする必要がある。そのため緻密でガスリークの無い電解質層に金属フレーム(セルホルダー)を接合したり、金属フレームを接合する領域に機械的強度が高く、ガスリークのないセラミック材料、例えばアルミナ等などからなる緻密なシール領域を形成したりすることが必要となる。
しかし、電解質層はイオン伝導度を重視すると機械的強度が不充分で接合部にクラックが発生する。また高強度のシール領域を形成する場合には追加工程が必要な上、場合によっては電解質層とシール領域の材料の違いによる熱膨張係数差による応力が発生して、クラックが発生するなど、コストや信頼性の点でも問題がある。
【0051】
当該実施例によれば、発電領域についてはイオン伝導度に優れた8YSZとすることができ、セルホルダー8を接合する部分は3YSZのままであるから機械的強度に優れることから、極めて簡単な方法により上記のような問題点が解決されることになる。
【0052】
また、集電における接触抵抗を低減するために、大きな力で集電体を押付けた場合、電解質の割れ、剥離が発生し、同様に信頼性の低下を引き起こすことになるが、当該実施例によれば、押し付け力が必要となる集電を強度向上させら領域で集中的に行うことも可能となる。また、フィルムレジスト等を用いたフォトリソグラフィ技術を用いたマスキングにより8YSZ領域内に3YSZの領域を格子状、あるいはハニカム状の梁として残すことも可能であり、発電に寄与する電解質層2の中央部をも部分的に機械的強度を向上させることができることから、集電抵抗の低減による性能向上、信頼性の向上も期待できる。
【0053】
なお、上記実施例においては、3YSZの仮焼体2oにイットリアを含む溶液を塗布することによって8YSZの領域を形成した例を示したが、Ni−YSZサーメットから成る燃料極基板4の上に、3YSZの領域と、8YSZの領域を別々にスクリーン印刷することによって形成することも可能である。
また、当該実施例において添加物として使用したイットリアについても、他の添加物と置換し得ることは、上記実施例1と同様である。さらに、このような電極支持型セルにおいても、実施例2と同様に、イオン伝導度に優れた電解質層にアルミナ等を導入することによって、所望部分の強度を向上することも可能である。
【0054】
(実施例4)
図9及び10は、本発明の第4の実施例として、本発明を多孔質金属基材上にセルを形成した多孔質金属支持型の平行平板固体酸化物型燃料電池に適用した例を示すものであって、図9(a)は当該実施例におけるセル板の上面図、図9(b)はその断面図、図9(c)はセル周縁部の拡大図である。
【0055】
この実施例に係わるセル板1においては、空気及び燃料ガスを供給するためのマニホールドが形成された耐熱金属から成る多孔質金属基板0を支持材とし、その上に燃料極層4、電解質層2、空気極層3が形成されている。また、電解質層2は外周部及び中央部の梁状部分は3YSZから成り、この3YSZの領域内に8YSZが形成されている。そして、当該8YSZの領域を覆うように空気極層3が形成され、セルが形成されている。
また、図10は、上記セル板1と、実施例1と同様のセパレータ6を用いて積層したスタックの構造例を示すものである。
【0056】
上記セル板1を作製するには、まず、外周側に空気供給マニホールド10c、空気排気マニホールド10d、燃料供給マニホールド10e及び燃料排気マニホールド10fが形成され、多孔質処理によって中央部分にさらに多孔質部10bが形成された金属基板10に、NiOとジルコニアから成るNi−サーメット材料をスクリーン印刷して焼成することにより、燃料極層4を形成する。
これ以降は、上記実施例3と同様のプロセスによって、支持基板10上に電解質層2及び空気極層3を形成し、当該実施例に係わるセル板1が得られる。
【0057】
多孔質金属基板を用いたセル板においては、通常、基板の多孔質部と非多孔質部の境界周辺では、境界部分における強度の違いや集電体の押付けによる電解質層のクラック発生が問題となるが、当該実施例によれば、上記実施例3と同様に、強度の必要な部分は高強度に、セルの部分はイオン伝導度を高くするようにしており、このような問題点を解消することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質は、ジルコニアと特定添加物から成る電解質における平面方向の所望部位に、他の部分より上記添加物の濃度が高かったり、さらに他の添加物を含有したりする変性領域を備えていることから、これら添加物によって当該変性領域の機械的強度やイオン伝導度などの物性を調整することができ、強い圧力がかかる外周部の機械的強度を高め、電池性能が要求される中央部のイオン伝導性を向上させることができ、強度とイオン伝導性を兼ね備えた電解質とすることができるという極めて優れた効果を有するものである。
【0059】
また、本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質の製造方法は、上記燃料電池用電解質の製造に好適に使用することができ、ジルコニアと第1の添加物を含む電解質材料を所望形状に成型し、仮焼成して一旦低焼結密度の化焼体としたのち、当該仮焼体の所望領域に第2の添加物を含む溶液を塗布して含浸させ、本焼成を行うようにしており、本発明の上記固体酸化物形燃料電池用電解質を容易に、低コストに製造することができる。
【0060】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池用セル板は、本発明の上記固体酸化物型燃料電池用電解質を上部電極層と下部電極層で挟持したものであるから、単位容積当たりの発電効率に優れ、しかもガスシール性に優れ、集電損失の少ない高性能の燃料電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 本発明の第1の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の構造を示す平面図である。
(b) 図1(a)に示したセル板の断面図である。
(c) 図1(b)の要部拡大断面図である。
【図2】図1に示したセル板による燃料電池スタックに用いられるセパレータの形状を示す平面図及び断面図である。
【図3】(a) 図1に示したセル板による燃料電池スタックの空気流路を示す断面図である。
(b) 図1に示したセル板による燃料電池スタックの燃料ガス流路を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は図1に示したセル板の製造手順を示す工程図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の第2の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の製造手順を示す工程図である。
【図6】(a) 本発明の第3の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の構造を示す平面図である。
(b) 図6(a)に示したセル板の断面図である。
(c) 図6(b)の要部拡大断面図である。
【図7】(a) 図6に示したセル板による燃料電池スタックの空気流路を示す断面図である。
(b) 図6に示したセル板による燃料電池スタックの燃料ガス流路を示す断面図である。
【図8】(a)〜(d)は図6に示したセル板の製造手順を示す工程図である。
【図9】(a) 本発明の第4の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池用電解質を用いたセル板の構造を示す平面図である。
(b) 図9(a)に示したセル板の断面図である。
(c) 図9(b)の要部拡大断面図である。
【図10】(a) 図9に示したセル板による燃料電池スタックの空気流路を示す断面図である。
(b) 図9に示したセル板による燃料電池スタックの燃料ガス流路を示す断面図である。
【符号の説明】
1 固体酸化物形燃料電池用セル板
2 電解質(層)
2a 変性領域
3 空気極(層)
4 燃料極(層)
Claims (15)
- ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状をなし、面方向の所望部位に変性領域を備え、当該変性領域における第1の添加物の濃度が他の部分よりも高いことを特徴とする固体酸化物型燃料電池用電解質。
- 第1の添加物がY2O3、Sc2O3、CaO及びMgOからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質。
- ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状をなし、面方向の所望部位に変性領域を備え、当該変性領域には第1の添加物に加えて第2の添加物が含まれていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池用電解質。
- 変性領域における第1の添加物の濃度が他の部分よりも高いことを特徴とする請求項3に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質。
- 第1の添加物がY2O3、Sc2O3、CaO及びMgOからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物であることを特徴とする請求項3又は4に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質。
- 第2の添加物が第1の添加物として使用された酸化物以外のY2O3、Sc2O3、CaO及びMgOからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質。
- 第2の添加物がTiO2、Nb2O3、Ta2O3及びMnO2からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質。
- ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状をなし、外周部に第3の添加物を含有していることを特徴とする固体酸化物型燃料電池用電解質。
- 外周部に第3の添加物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質。
- 第3の添加物がAl2O3及び/又はMgAl2O4であることを特徴とする請求項8又は9に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質。
- ジルコニアと第1の添加物を含む電解質材料を所望形状に成型し、仮焼成して一旦低焼結密度の仮焼体としたのち、
上記仮焼体の所望領域に、第2の添加物を溶液状態で塗布して含浸させ、
次いで、本焼成を行うことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質の製造方法。 - 第1の添加物がY2O3、Sc2O3、CaO及びMgOからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物であることを特徴とする請求項11に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質の製造方法。
- 第2の添加物がY、Sc、Ca、Mg、Ti、Nb及びTaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項11又は12に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質の製造方法。
- 第2の添加物がMn及び/又はAlであることを特徴とする請求項11又は12に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の固体酸化物型燃料電池用電解質を上部電極層と下部電極層で挟持して成ることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用セル板。
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