JP2005296796A - 下水流路の浄化方法と装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】硫化水素によるコンクリート腐食を防止し、かつ下水流路内で発生する硫化物の抑制させる方法と装置を提供すること。
【解決手段】(−)帯電型変調電磁波発生器3と該発生器3からの電磁波を下水内で照射するコイル部2を備えた電磁波付与部を用いて、例えば中継ポンプピット1内の下水に混入した油分が下水圧送管路7などの壁面に固着することを防止し、さらに下水に亜鉛又はニッケル成分を含有する金属塩からなる硫化水素抑制剤を供給することで下水を浄化する。
【選択図】図1

Description

本発明は、変調電磁波処理及び硫化水素抑制剤併用による下水流路内で硫化水素の生成を抑制する下水流路内の浄化方法と装置に関する。
日本など山間部の多い国土では、下水流路内を流れる下水を一旦中継ポンプピットに溜めた後、登り流路をポンプで圧送して下水処理場に送る必要がある。この下水の圧送前の中継ポンプピット内において下水が長時間滞留して嫌気的な状態になると硫酸イオンが嫌気性細菌(硫酸塩還元細菌)によって還元され、硫化物が生成される。中継ポンプピット内で発生した硫化物は圧送先のマンホール又は着水井などの吐き出し部分で硫化水素ガスとして放散される。この硫化水素ガスは悪臭原因のひとつでもあるが、気相への放散個所において好気性細菌である硫黄酸化細菌によって硫化水素から硫酸が生成される。マンホール又は着水井を構成するコンクリート製施設は、前記下水から生成された硫酸によって腐食を生ずる問題が発生している。
このような 下水流路内で発生する硫化物の抑制のための技術として、従来は次のような対策が講じられていた。
(1)酸素供給法(空気又は酸素の注入法)
汚水と空気を一緒に流す事で下水を好気性条件下に保持し、硫化物の生成を抑制する方法である。
(2)薬品添加法
薬品を添加して硫化物の固定化と下水の嫌気化などの防止を行う。前記硫化物の固定化と下水の嫌気化には塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸塩、過酸化水素、塩素又は水酸化ナトリウムなどの薬品が用いられる。
(3)施設の防食法
耐食性材料、塗装及びライニング等の処置により施設の劣化防止を行う。
(4)管路清掃法
管路を高流速体で洗浄し、排泥する方法であり、ピグ洗浄法等がある。
特開平7−42220号公報 特開2003−103276号公報
前記(1)の酸素供給法には次のような問題点がある。
(a)イニシャルコストが大きく、保守点検と不具合発生を常に考慮しなければならず、予備機を設置すると更にコストが大きい。
(b)下水を圧送するために下水流路内の中継ポンプピット内に設けられた圧送ポンプの停止時も常に中継ポンプピット内に空気注入を連続して行うことで、下水を好気性条件下に保持する必要がある。このためのランニングコストとしてコンプレッサー電力費及び圧送ポンプ電力費増加分が加算される。また下水と共に空気を送るために酸素の実質の圧送量が低下し、圧送ポンプ稼働時間が増加する分が加算される。
(c)圧送ポンプの変更を伴う場合がある。空気注入による圧力損失が伴う場合は既設圧送ポンプを変更する必要があり、これが設備コストの増加分となる。
(d)下り勾配部を避けて圧送管路設計又は圧送管路変更を必要とするため、該管路内に空気を注入することによる圧力損失は下り勾配が大きい程、大きいため、これを考慮した圧送管路設計又は既設管路に対しては変更を必要とする。
(e)圧送先の下水流路の途中に設ける複数の流入部を有するマンホールでは逆流防止策が必要である。また、多重圧送の場合も同様である。
(f)空気注入を行っている下水流路において配管の破損する場合又は継ぎ手が抜ける場合、配管内の圧縮空気の残留分が外部に飛散するおそれがある。
以上のように空気注入方式では数々の制約が伴い、対策として問題が多い。
(2)前記薬品添加法では硫化物の固定化、嫌気化防止等のために次のような問題点がある。
(a)鉄成分を注入する場合に硫化鉄の固定化には多量の薬剤を必要とする。汚水性状又は下水流路条件にも左右されるが、300〜500ppm近い薬品注入率を要する箇所もある。また、生成する鉄水酸化物の比重が大きく、下水処理領域の後段の管路内に堆積し易い。さらに、下水排出基準の溶解性鉄濃度は10ppm以下と定められている事から当該下水流路における適用は困難である。
(b)硝酸塩は硫酸塩還元反応の抑制を目的に使用される。しかし昨今のN(窒素)・P(リン)排出量削減の気運からも好ましい添加薬品とは言えない。また、その添加効果もあまりない。
(c)過酸化水素は汚水の嫌気化防止及び硫化物の酸化を目的として使用される。しかし、過酸化水素は下水のORP(酸化還元電位)を上げるためには多量の酸化剤(過酸化水素)を要するので、二次公害の原因となり易い。
(d)塩素は殺菌及び硫化物の酸化を目的として使用される。この場合も、過酸化水素を添加する場合と同様に下水に対して多量の薬剤投入を必要とし、下水流路の金属部の腐食の問題及び多量に注入した場合の下水処理設備への影響等が問題となる。
(e)水酸化ナトリウムは「バイオフィルム」と呼ばれる下水流路内壁に付着する物質の不活性化を目的に使用されているが、実際には油分付着物を強アルカリで溶解させて除去又は付着防止する作用が主体となる。強アルカリ性であるために下水水質、特に下水のpHを大きく変化させるため、好ましい薬品ではない。
以上、薬品添加方式ではランニングコストが高く、水質変動を伴うものが多く、実用化が困難である。
(3)施設の防食法は、多大のコストを要することと既存設備に対して補修する必要があるので推奨できない。
(4)下水流路清掃法は、定期的に多大のコストを要する作業が必要となる。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、硫化水素によるコンクリート腐食を防止し、かつ下水流路内で発生する硫化物の抑制させる方法と装置を提供することである。
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、(−)帯電型変調電磁波発生器から10Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流をコイル部に流して、該コイル部が浸漬された下水内又は前記コイル部が配置された部位の近傍にある下水を電磁波処理し、同時に該下水に硫化水素抑制剤を供給する下水流路の浄化方法である。
請求項2記載の発明は、前記硫化水素抑制剤を下水流路の中で登り流路の手前に設置される中継ポンプピット内に一時的に貯留される下水内に添加する請求項1記載の下水流路の浄化方法である。
請求項3記載の発明は、前記硫化水素抑制剤として、亜鉛又はニッケル成分を含有する金属塩を用いる請求項1又は2記載の下水流路の浄化方法である。
請求項4記載の発明は、下水中の硫化水素濃度及び/又は下水流路内での下水の流速に応じて前記硫化水素抑制剤の注入量を調節する請求項1ないし3のいずれかに記載の下水流路の浄化方法である。
請求項5記載の発明は、下水流路内を流れる下水の電磁波処理用コイル部と該コイル部に10Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す(−)帯電型変調電磁波発生器とを備えた変調電磁波処理装置と、下水流路内を流れる下水に硫化水素抑制剤を供給する硫化水素抑制剤供給装置を備えた下水流路の浄化装置である。
請求項6記載の発明は、変調電磁波処理装置のコイル部が、下水流路の中で登り流路の手前に設置される下水の一時的な貯留槽である中継ポンプピット内の下水内に浸漬して配置されるか又は前記中継ポンプピットの近傍に配置される請求項5記載の下水流路の浄化装置である。
請求項7記載の発明は、下水流路には該流路内を流れる下水の流速計及び/又は硫化水素濃度計を設け、前記流速計の測定した下水流速及び/又は前記濃度計の測定した下水中の硫化水素濃度に応じて前記硫化水素抑制剤供給装置からの硫化水素抑制剤の供給量を調整する制御装置を設けた請求項5又は6記載の下水流路の浄化装置である。
請求項8記載の発明は、変調電磁波処理装置のコイル部が、(a)下水が流れる流路の表面に巻き付けたコイル、(b)下水中に浸漬したコイル設置部材表面に巻き付けたコイル又は(c)下水が流れる流路の近傍に配置したコイル設置部材表面に巻き付けたコイルからなる請求項5ないし7のいずれかに記載の下水流路の浄化装置である。
下水に混入した油分と水中の金属成分(Ca・Mg等)との反応により生成した金属セッケンは下水流路の内壁面へスケールとして付着し易い。
請求項1、5記載の発明によれば、(−)帯電型変調電磁波処理により前記下水流路の内壁面へのスケール付着を防止する。しかし、(−)帯電型変調電磁波処理で、下水流路内壁等へのスケールの付着を防止できても粘着性付着物の形成が避けられない。前記粘着性付着物は腐敗すると硫化水素を発生し、硫化水素が水中に溶解してくる。そこで(−)帯電型変調電磁波処理をしているときに、同時に硫化水素抑制剤を下水中に添加して硫化水素の発生を抑制させる。
こうして、請求項1、5記載の発明によれば、硫化水素抑制剤などの薬品添加は最小限にとどめ、特別な新たな設備を取り付けること無く既存の下水施設を用いての浄化処理が可能となり、設備コストの負担がない。
請求項2、6記載の発明によれば、硫化水素抑制剤を下水流路の中で登り流路の手前に設置される中継ポンプピット内に一時的に貯留される下水内に添加することにより、貯留中の下水からの硫化水素発生量を抑制することができる。
請求項3記載の発明によれば、前記硫化水素抑制剤として亜鉛又はニッケル成分を含有する金属塩を用いることで硫化水素の発生を効果的に、しかも比較的低コストで抑制できる。
請求項4、7記載の発明によれば、前記硫化水素抑制剤を下水中の硫化水素濃度に応じて注入量を調節することで、過不足無く硫化水素抑制剤を使用できる。また、下水流路を流れる下水の流速により、下水流路内壁への粘着物の付着度合い又は中継ポンプピットから下水流路の登り流路へ下水を圧送するポンプ性能の劣化度合いが分かるので、硫化水素抑制剤の注入量を調節して効果的に下水流路の浄化ができる。
請求項8記載の発明によれば、変調電磁波処理装置のコイル部を下水貯留部の壁面へのスケール付着防止に最も効果的な部位に設けることで下水流路を浄化することができる。
本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
以下、変調電磁波処理及び硫化水素抑制剤の併用システムについて説明する。
(1)変調電磁波処理
図1に本実施例の下水処理システムの概略構成図を示し、図2には電磁波付与部の構成図を示す。
起伏の多い日本のような地形では下水配管から下水処理場に下水を搬送する過程で登り流路がある場合が多いので、一旦下水を中継ポンプピット1に貯留して、該中継ポンプピット1からポンプ5を用いて登り流路である下水圧送管路7内に下水を圧送する必要がある。
本実施例では前記下水中継ポンプピット1内にコイル部2を内蔵した電磁波付与部4を浸漬させる投げ込み式変調電磁波処理装置を用いて電磁波処理を行い、下水中継ポンプピット1内及び圧送管路7内における壁面に油分等のスケールが付着するのを防止する。
(−)帯電型変調電磁波処理装置を用いて下水より混入する油分などの固着を防止することで下水圧送配管吐き出し側マンホール6における発生硫化水素を抑制させる。 下水に混入する油分は水中の金属成分(Ca・Mg等)との反応により金属セッケンを形成する。この際、界面活性剤の存在は金属セッケンの形成を促し易い。上記下水に混入する油分の固着防止用に用いる(+)帯電型界面活性剤と(−)帯電型界面活性剤を比較すると、(+)帯電型界面活性剤の方が金属セッケンを形成し易い。下水中継ポンプピット等では滞留によりマッドボールと呼ばれる油分の塊を生じたり、壁面への付着を生じている。また、下水圧送管路の内壁にも油分の付着を生じ易い。
すなわち、下水槽壁面又は下水流路の配管内壁面に油分を主体とした付着物を生ずる場合、その付着物に共存する硫酸イオンは内部の嫌気性細菌(硝酸塩還元細菌)によって還元され、硫化物を形成し易い。付着物量が増加し、下水流量の少ない時間帯では滞留時間が長い程、硫化物濃度が増加し易い。流量増加に伴い、下水の吐き出し側マンホールにおける発生硫化水素濃度も増加する。
下水が流入する中継ポンプピット1内の下水内に変調電磁波処理装置のコイル部2を内蔵した電磁波付与部4を浸漬させる。該電磁波付与部4となるコイル部2には変調電磁波発生器3から時間の経過と共に周波数が変わる電流が流れる。この電流により形成される電磁波により下水が処理される。
通常、コイル部2は被処理水が流れる配管(図示せず)の外側へコイルを巻き付ける構成が採用され、該コイル2部へ(−)帯電型変調電磁波発生器3から変調電磁波を流すとコイル部2より発生する変調電磁波が前記配管を透過して被処理水に照射される。しかし、前記配管の材質によっては電磁波の透過量が異なり、ステンレス管<鋼鉄管<塩化ビニル管の順に電磁波透過量は多くなる。透過率の悪い材質に対してはコイル電流値を増加させて被処理水に必要な変調電磁波量を確保する。
そこで、本実施例では図2に示すように、コイル部2を絶縁性の合成樹脂製のケース(電磁波付与部)4内に密封して中継ポンプピット1内の下水中に浸漬した投込み照射型の装置を用いた。中継ポンプピット1内の下水内に投げ込む方式のコイル部2は、被処理水配管にコイルを巻く方法(図示せず)と比較して配管の材質に左右されないで電磁波を被処理水に有効に作用させることができる。また、図2に示すように下水中に投込み照射型の変調電磁波装置のコイル部2を浸漬させておくと、変調電磁波発生器3から発する変調電磁波エネルギーは全て被処理水に供給されるのでエネルギーのロスがない。
図3に(−)帯電型変調電磁波発生器3の構成を示す。図3において、スイープ信号発振回路から連続可変周波数発生回路にスイープ信号が所定時間間隔で発振され、周波数が変化しながら波形整形増幅回路に出力される。このとき連続可変周波数発生回路には周波数幅設定回路と中心周波数設定回路からの出力が入り、それぞれ周波数の幅の中心周波数が設定される。波形整形増幅回路では、レベル設定回路で電磁波強度を設定し、その後、電力増幅回路で適切な大きさの電力を得てコイル部2に出力する。
なお、電磁波強度とは空間における電磁波の強さを意味し、単位は[V/m]又は[A/m]である。測定方法は使用目的により使い分けるが、本実施例においては[A/m]である(Vは電圧、Aは電流、mは長さ)。電磁波の強さはコイル部2に流す電流に比例するがそのものではなく、センサーを置いた所での磁界の大きさをこの場合の電磁波の強さ又は強度としている。
この(−)帯電型変調電磁波発生器3は、10Hz〜1MHzの帯域で連続的に周波数が時間的に変化する方形波の変調交流電流をコイル部2に流す装置であり、当該発生器3により発生する電流により誘起される電磁界により前記下水を処理するものである。
この(−)帯電型変調電磁波発生器3から発生する電流を、例えば400msサイクル(任意可変可能)で順次周波数を変えてコイル部2に流すと、図4に示す電磁波強度が得られる。なお、図4は周波数に対する電磁波強度のイメージ図であり、電磁波強度(出力3)で周波数帯(出力2)を有する主要周波数(出力1)を示す。また、出力3の電磁波強度はコイルに流す電流値に比例してその大きさが変化する。
P=K×i×t
P:被処理水液体への変調電磁波照射エネルギー[W]
i:コイルに流れる電流[A]
t:照射時間[秒]
K:定数[H/m3
次に、変調電磁波処理により金属セッケンの形成防止について説明する。
(−)帯電型変調電磁波処理水中で形成されるスケール結晶はその表面電位中性若しくは(−)マイナス帯電する事で、中継ポンプピット1および下水圧送管路7の内壁等の界面への電気的スケール付着を防止する。なお、前記界面とは、水と接するあらゆる境界面であり、水-スケール結晶、水-気泡(空気)、水-配管内壁等、水-油等が挙げられる。
また、図5には中継ポンプピット1または下水圧送管路7の内壁とスケール結晶の電気的付着が(−)帯電型変調電磁波処理により電気的反発により無くなることを示す顕微鏡写真を示す。図5の顕微鏡写真は図6に示す後述の机上試験(ラボテスト)により行った結果を示すものである。
机上試験は次のような条件で行った。500mlのビーカに食品洗浄用の市販洗剤0.05g、市販サラダ油1.0g及び炭酸カルシウム粉末0.5gに東京都の上水500mlを加えて得られる水溶液に(−)帯電型変調電磁波処理をした処理水溶液と(−)帯電型変調電磁波処理をしない未処理水溶液を得た。これらの水溶液の一部をスポイドで採取して、ガラス板上に分取した。当該ガラス板を乾燥させて得られる油滴の界面付近の様子を顕微鏡で観察した。
前記(−)帯電型変調電磁波処理は、10Hz〜1MHzの時間と共に変化する周波数で、コイル電流値を0.75Aとして図6のガラスパイプに5回通液した。
図5(a)は(−)帯電型変調電磁波処理をしていない場合の水(外側)と油(内側)の界面におけるスケール結晶の顕微鏡写真であるが、硫化物固定剤として用いる金属塩の添加で油分と金属の結合により金属セッケンが形成され、この金属セッケンが油分内で水との界面付近に集合していることが分かる。しかし図5(b)に示すように(−)帯電型変調電磁波処理をすることで、油と金属イオンが共に(−)帯電型を帯びることにより、互いに反発して、水(外側)と油(内側)の界面における金属石けんの形成が抑えられる。
上記(−)帯電型変調電磁波処理によって金属セッケンの形成を抑えることで図1に示す中継ポンプピット1内でオイルボールが形成されることを防止し、さらに該金属石けんの集合体がピット1の内壁面へ付着することも抑制されるため、圧送管路7内に付着物が形成され難くなる。但し、金属セッケンの粘性物が多少は形成されるため、この粘性物が中継ポンプピット1と圧送管路7の壁面に粘着付着物を形成することは避けられない。
(2)硫化水素抑制剤の添加
上記(−)帯電型変調電磁波処理によって油分を含む金属セッケンの形成抑制効果だけでは避けられない粘性物の生成に起因して中継ポンプピット1の壁面と圧送管路7の内壁の粘着付着物は嫌気条件下において水中で溶解硫化水素を生成する。該硫化水素の発生を防止するために中継ポンプピット1において硫化水素抑制剤を添加することで粘着付着物から硫化水素が発生しないようにする。
硫化水素抑制剤としては、金属塩(亜鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、その他)を主体とする液体薬剤を中継ポンプピット1内に添加して硫化水素を硫化物として固定化を行うことで、前記硫化水素の発生を抑制する。硫化水素発生防止には、特に速効性に優れた抑制剤が望まれるが、前記金属塩の中で亜鉛又はニッケルが優れていることが分かった。
下水中の硫化水素は硫酸塩還元細菌の存在下で次のような反応で生成され、さらに硫黄酸化細菌により硫酸に成る。
SO4++2H2O+有機分 → 2HCO3-+H2
硫酸塩還元細菌
2S+2O2 → H2SO4
硫黄酸化細菌
そこで、生成された硫化水素を金属塩により硫化物として次のように固定化する。 Zn2+ → ZnS
Ni2++S2- → NiS
Fe2++S2- → FeS
表1に前記Fe、Zn、NiおよびAgの硫化物の水に対する溶解度を示す。
Figure 2005296796
生成した金属硫化物は水に対する溶解度が小さい程、下水中において金属硫化物を析出し、水中での硫化水素濃度は低下する。Ag金属塩は高価であるが、Zn又はNi金属塩は比較的安価であり、また、これらの金属塩を下水中に添加すると水に対する溶解度の小さい金属硫化物が得られることが分かる。現在下水の薬品処理において主として使用されているFe塩はZn又はNi塩と比較して水酸化物の形成性に違いがある。
Figure 2005296796
下水は、ほぼpH6〜9の範囲のpH値を有するが、下水のpHに近いpH=4.5ではFe(三価)金属塩はFe水酸化物を形成するために水中のイオウイオンとの結合でFeSを生成するまでには至らない。また、Fe(二価)金属塩ではNi及びZn金属塩とほぼ同様に下水のpHに近いpH9〜10において水酸化物を形成するが、Ni及びZn金属硫化物形成能力においてNi・Zn金属塩に劣る事が判る。
そこで図1に示すように、Ni又はZn系の薬品を薬品注入設備10から変調電磁波処理をしている中継ポンプピット1内に供給する。中継ポンプピット1内の処理後の硫化物含有量が薬品添加により減少した浄化下水はポンプ5で一旦マンホール6までくみ出され、その後自然流下される。
(3)硫化水素抑制剤の注入方法
次に硫化水素抑制剤の注入方法について述べる。
(a)注入率:下水流路内にて生成される下水中の硫化物濃度は1〜2ppm以上であるので、亜鉛成分又はニッケル成分を主体とする硫化物固定剤は、その金属濃度として硫化物濃度とほぼ同程度の濃度で添加すれば良い。
(b)注入方法:
(b−1)間欠タイマー注入法
注入率は下水量により変動する。下水量が少ない場合は過剰注入となり、薬品コストが増加する。
(b−2)下水流量に対する定量注入法
下水流量データを基に時間帯流入水量に対する間欠タイマー注入方法を行う。本来中継ポンプピット1に流入する下水量に対して定量注入を実施するのが最適であるが、流入下水量を計測する測量計が高価である事と複数の流入経路もあり、圧送ポンプ5の吐出側の管路7に設けた流量計9の時間帯流量データを基に薬品注入量を間欠タイマー制御する。時間帯流量は平日と休日において大別される。
(b−3)硫化水素濃度に対する補助注入法
前記(b−1)又は(b−2)の方式で硫化水素抑制剤を注入している際、マンホール6に設けた硫化水素濃度を測定する硫化水素計11の濃度が設定値を超えていることがモニタリングされた場合、設定するタイマー1回分だけ追加注入し、設定する時間内は、この追加注入を行わない。
(4)下水流路の監視システム
先の変調電磁波処理及び硫化水素抑制剤の併用による下水処理システムでは、次のように下水流入量、中継ポンプ性能の確認、下水流路内の付着物量の把握及び薬品注入量など監視が必要である。本実施例の下水流路の監視システムは、既存のシステムにおける中継ポンプ5の吐出側の管路7に流量計9を取り付けるだけの簡単な工事で済む。本実施例では流量計9としてはドップラー式超音波流量計を用いた。
(a)流入水量の確認
下水圧送管路7に流入する下水量の把握と共に降雨量との相関値から下水管路に混入する不明水の混入量の予測が可能となる。不明水とは下水継ぎ手部等からの下水以外の混入する水の事である。なお中継ポンプピット1は容量が小さく、すぐ満タンになるので中継ポンプピット1への下水流入量と満タンに成った中継ポンプピット1から流出する量はほぼ同じとなり管路7の流量計9では中継ポンプピット1への流入水量が測定できる。
(b)中継ポンプ性能の確認
ポンプインぺラーの磨耗等の理由で中継ポンプ5の性能低下を生じるが、中継ポンプピット1に流入する流入水流量データを基に最大流入水量で下水が流入するときに、中継ポンプ5の吐出量が追いつかない場合には、マンホール6から外に下水が溢れることとなり、中継ポンプ5の性能の確認ができる。また、管路7に流入する流入下水の流量低下データが得られると、中継ポンプ5の能力劣化が予測されるので保守計画を作成する事が可能となる。
(c)下水流路付着物量の把握
ドップラー式超音波流量計9を用いる場合、圧送管路7の内壁に付着物が形成されて内径が小さくなればなる程、流速が増加する。そこで、圧送管路7の内壁に付着物が無い状態で計測した流速値と比較する事で監視データを基に圧送管路7の内壁への付着物増加の推定が可能である。また、(−)帯電型変調電磁波処理によって圧送管路7の内壁の付着物の抑制を行う当システムにおいてその処理効果を監視する事が可能である。
(d)薬品注入率の安定化
前記圧送管路7の流量データを基に薬品を安定した注入率で薬品注入設備10に注入でき、薬品注入割合の管理が可能となる。また、薬品の過剰注入を避ける事で薬品コストの削減が可能である。
また、薬品注入設備10に超音波液位計(図示せず)を設けると、薬品使用量の確認、薬品の在庫確認が可能となり、また、薬品注入設備10から低水位信号が発せられると薬品補充管理を行う事が可能である。
(5)机上試験
以上の変調電磁波処理及び硫化水素抑制剤の併用システムの机上試験について、次に述べる。
(a)(−)帯電型変調電磁波処理による金属セッケン形成の防止
試料として下水を用い、(−)帯電型変調電磁波処理装置により、10Hz〜20kHz間で変調した周波数、コイル電流値0.75Aで変調電磁波処理を行った。
机上試験として図6に示すガラスパイプに(−)帯電型変調電磁波発生器3に接続したコイル部2を巻き付けておき、これに10Hz〜20kHz間で変調した周波数、コイル電流値0.75Aで1回、3回、5回などの下水の通液テストを行い、通液をしていない未処理液と比較するテストを行った。
前記比較テストは試料をガラス板上に滴下し、乾燥させた後、得られた乾燥被膜の界面部の結晶状態を顕微鏡を用いて確認することで行った。
同様に、ガラスパイプに(+)帯電型変調電磁波発生器3(図示せず)に接続したコイル部2を巻き付けておき、これに(−)帯電型変調電磁波処理と同じ条件で電磁波処理を行った。
未処理の(変調電磁波処理をしない)場合の前記界面部の結晶状態の顕微鏡写真を図7に示し、(+)帯電型変調電磁波処理により5回通液テストした後の前記界面部の結晶状態の顕微鏡写真を図8に示す。
また、(−)帯電型変調電磁波処理により5回通液テストした後の前記界面部の結晶状態の顕微鏡写真を図9に示す。
図7の未処理の(変調電磁波処理をしない)場合には界面への有機分(金属セッケンを含む)及び結晶等の集合性が認められ、下水流路内へのスケールが付着し易いことが示されている。また、(+)帯電型変調電磁波処理をした場合には図8に示すように、前記未処理の場合に比較して界面への集合性物質の増加傾向があることが分かった。すなわち、下水に対して(+)帯電型変調電磁波処理を行うことは、逆効果であることが判明した。
これに対して、図9から(−)帯電型変調電磁波処理により、界面では集合性物質が形成される程度は減少しており、(−)帯電型変調電磁波処理が下水流路の内壁への付着物が生じることを抑制する作用があることが分かった。
なお、図9に示す結果は5回(−)帯電型変調電磁波処理による通液テストした後の前記界面部の結晶状態の顕微鏡写真であるが、通液回数増加と共に界面に集合していた金属セッケン物質を含む結晶は徐々に減少傾向を示す。
(b)硫化物抑制剤の選定−1
図1に示す圧送管路7において発生する硫化水素によるマンホール6のコンクリート壁面の腐食を防止するために、硫化物を金属塩により固定化し、圧送先における硫化水素ガスの発生を抑制するもっとも安価で、最適な硫化物抑制剤を選定する。
試験方法は次の通りである。
まず試料としてpH6.5、導電率709μS/cmの滞留下水を用い、水で5倍希釈試料に調整し、その内の50ml(300ml密閉容器に分取)に次の薬剤を注入する。
A剤(有機系静菌剤)
B剤(Zn系金属塩:Zn含有率16%)
C剤(塩素系酸化剤)及び
D剤(過酸化水素:酸化剤)
次いで、10秒間の間、その容器を手で加温しながら10回振とうして混合する。得られ試料中の硫化水素の濃度をガス検知管法により測定した。
試験結果を表3示す。
Figure 2005296796
表3の結果から次のことが判明した。
(a)Zn系金属塩を主体とする薬剤であるB剤(Zn系金属塩)が最も即効性に優れていた。B剤を5ppm注入した場合は、硫化水素は不検出であった。Zn成分の注入率としては0.8ppmが妥当である。
(b)C剤(酸化剤系薬剤)も若干の効果を示したが、注入率を増加させても硫化水素濃度の減少は見られなかった。
(c)本机上試験は、未処理時の硫化水素濃度が16ppm程度と低かったので、実設備における100ppmを超える硫化水素濃度に対しては実機にて確認することが必要である。
(c)硫化物抑制剤の選定−2
前記硫化物抑制剤の選定試験−1で優れた効果を示した金属塩(Zn)以外の硫化物固定剤を選定する。その理由は下水道排出基準において「Zn5ppm以下である事」という制限があるために、前記試験のB剤(Zn系金属塩)の注入率5ppmでは該B剤はZn成分を0.8ppm含むものであるので、十分前記基準を満たしているが、下水排出基準より除外されている下記のNi系薬品、その他金属塩の選定を行った。
B剤(Zn系金属塩:Zn含有率16%)
E剤(Fe系金属塩:Fe含有率25%)及び
F剤(Ni系金属塩:Ni含有率15%)
また、更に高濃度の硫化水素を発生させる条件で上記効果を確認するために下水濃縮汚泥を試料として調整した。
試験方法は次の通りである。
まず、試料としてpH6.2、ORP(酸化還元電位)−280mVの下水濃縮汚泥を水で2倍に希釈した試料に調整し、200ml(500ml三角フラスコに分取)して硫化物抑制剤を注入する。フラスコを密栓して10秒間振とう・攪拌することを10回繰り返して十分混合する。得られた混合物を1分間静置した後、試料中の硫化水素の濃度をガス検知管法により測定した。
試験結果を表4に示す。
Figure 2005296796
表4の結果から次のことが判明した。
(a)Zn系金属塩とNi系金属塩は、硫化物の固定化剤として優れている。特に、Zn系金属塩と比較してもNi系金属塩の方が優れている。
(b)Fe系は硫化水素の除去能力がほとんど認められなかった。
E剤(Fe含有率25%)を使用した場合には、金属濃度は高いにも関わらず、硫化水素固定による硫化水素除去率は低い。逆に、pH低下が増加している。これは試料液内で硫化水素の発生量が増加したためと考えられる。
(c)硫化水素固定剤としてはF剤(Ni系金属塩)が最も優れている。
(6)実設備試験
以上の検討の結果に基づき実設備を用いて次のような実設備での実証試験をおこなった。
(a)処理条件
下水流入量780m3/日の中継ポンプピット1に投げ込みコイル式の(−)帯電型変調電磁波処理装置を用いて、コイル電流値3.5A、周波数10Hz〜20kHzの間を時間の経過ととも連続的に周波数(主要周波数は8000Hz近傍)を変調した。
なお、使用薬品としてB剤(Zn系金属塩:Zn含有率16%:東洋クリーン化学(株)商品名シュカッターSW)を使用した。F剤(Ni系金属塩は市販品がないのでB剤(Zn系金属塩)を使用した。比較のためにE剤(Fe系金属塩:Fe含有率25%:工業薬品37%塩化第二鉄水溶液)も使用した。
(b)試験結果−1
(−)帯電型変調電磁波処理により図1に示す中継ポンプピット1の内部に前記薬品を断続的に注入して発生する硫化水素濃度の経時変化を下水圧送先のマンホール6に設けた硫化水素濃度計11で測定した。結果を表5に示す。
Figure 2005296796
また、図10にはB剤(Zn系金属塩)とE剤(Fe系金属塩)を断続的に注入して、図1に示す中継ポンプピット1の内部で発生する硫化水素濃度の経時変化を下水圧送先のマンホール6に設けた硫化水素濃度計11で測定した結果を示す。
なお、本実施例の電磁波処理を行わない場合に見られた中継ポンプピット1と圧送管路7の内壁に付着した付着物および下水中のオイルボールはかなりの程度減少していることを観察できた。
表5と図10の結果から次のことが分かった。
(c−1)Zn系金属塩
2〜5ppmの注入量で硫化水素発生は良好に抑制される。これは机上テストの結果と同様であった。Zn系金属塩を用いた場合は残留効果が得られ、5ppm以上の注入を1日継続した場合、約2〜3日迄圧送管路7の先の流路で硫化水素の発生が抑制された。
また、Zn系金属塩の注入を中止すると硫化水素濃度が高くなることが分かる。
(c−2)Fe系金属塩
硫化物固定化の能力はZn系金属塩と比較して著しく劣る。この結果も前記机上試験結果と同様であった。
なお、上記実施例では変調電磁波の周波数を10Hz〜20KHzとしているが、本発明の前記周波数は被処理の性状に応じて10Hz〜1MHzとすることができる。
本発明は、変調電磁波処理及び硫化水素抑制剤併用による滞留する下水流路内での壁面付着物の減少と硫化水素の生成を抑制する下水処理技術として、利用可能性が高い。
下水中継ポンプピットの下水の変調電磁波処理により下水流路内における油分付着を防止する装置の構成図である。 投げ込み式コイル部の構成図である。 (−)帯電型変調電磁波発生器の回路図である。 図3の(−)帯電型変調電磁波発生器による電磁波強度と周波数の関係図である。 図5(a)は(−)帯電型変調電磁波処理をしていない場合の水(外側)と油(内側)の界面におけるスケール結晶の顕微鏡写真、図5(b)は(−)帯電型変調電磁波処理をした後の水(外側)と油(内側)の界面での金属石けんの形成抑制を示す顕微鏡写真である。 変調電磁波処理の有効性をテストする机上試験を説明する図である。 下水の未処理(変調電磁波処理をしない)場合の机上試験後の乾燥物の界面部の結晶状態の顕微鏡写真を示す。 下水の机上試験による(+)帯電型変調電磁波処理後の乾燥物の界面部の結晶状態の顕微鏡写真を示す。 下水の机上試験による(−)帯電型変調電磁波処理後の乾燥物の結晶状態の顕微鏡写真を示す。 実設備の中継ポンプピット内での下水の(−)帯電型変調電磁波処理と、該下水に硫化水素抑制剤を断続的に注入した場合の発生硫化水素濃度の経時変化を示す図である。
符号の説明
1 中継ポンプピット 2 コイル部
3 変調電磁波発生器 4 電磁波付与部
5 中継圧送ポンプ 6 マンホール
7 下水圧送管路 9 流量計
10 薬品注入設備 11 硫化水素濃度計

Claims (8)

  1. (−)帯電型変調電磁波発生器から10Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流をコイル部に流して、該コイル部が浸漬された下水内又は前記コイル部が配置された部位の近傍にある下水を電磁波処理し、同時に該下水に硫化水素抑制剤を供給することを特徴とする下水流路の浄化方法。
  2. 前記硫化水素抑制剤は、下水流路の中で登り流路の手前に設置される中継ポンプピット内に一時的に貯留される下水内に添加することを特徴とする請求項1記載の下水流路の浄化方法。
  3. 前記硫化水素抑制剤は、亜鉛又はニッケル成分を含有する金属塩を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の下水流路の浄化方法。
  4. 下水中の硫化水素濃度及び/又は下水流路内での下水の流速に応じて前記硫化水素抑制剤の注入量を調節することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の下水流路の浄化方法。
  5. 下水流路内を流れる下水の電磁波処理用コイル部と該コイル部に10Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す(−)帯電型変調電磁波発生器とを備えた変調電磁波処理装置と、
    下水流路内を流れる下水に硫化水素抑制剤を供給する硫化水素抑制剤供給装置を備えたことを特徴とする下水流路の浄化装置。
  6. 変調電磁波処理装置のコイル部は、下水流路の中で登り流路の手前に設置される下水の一時的な貯留槽である中継ポンプピット内の下水内に浸漬して配置されるか又は前記中継ポンプピットの近傍に配置されることを特徴とする請求項5記載の下水流路の浄化装置。
  7. 下水流路には該流路内を流れる下水の流速計及び/又は硫化水素濃度計を設け、前記流速計の測定した下水流速及び/又は前記濃度計の測定した下水中の硫化水素濃度に応じて前記硫化水素抑制剤供給装置からの硫化水素抑制剤の供給量を調整する制御装置を設けたことを特徴とする請求項5又は6記載の下水流路の浄化装置。
  8. 変調電磁波処理装置のコイル部は、(a)下水が流れる流路の表面に巻き付けたコイル、(b)下水中に浸漬したコイル設置部材表面に巻き付けたコイル又は(c)下水が流れる流路の近傍に配置したコイル設置部材表面に巻き付けたコイルからなることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の下水流路の浄化装置。
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