JP2005520007A - カチオン系光重合のための促進物質 - Google Patents

カチオン系光重合のための促進物質 Download PDF

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Abstract

【解決すべき課題】
カチオンにより重合を急速に促進する物質を発見すること。
【解決手段】
少なくとも一つのエポキシ単量体、少なくとも一つのカチオン系光重合開始剤、及び光増感剤/促進物質を含む、カチオン系光重合開始剤により加速された速度で光重合できる組成物を提供する。この促進物質はフェノール系レゾール、又は化学式R1(CR2R3OH)nの構造を有する化合物である。この化学式において、R1はフェニル、多環式アリール、及び多環式へテロアリールから選択され、それぞれが一つ以上の電子供与基で置換されたフェニルで任意選択的に置換されており、R2とR3はそれぞれ水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、及び置換されたアルキルアリールから選択されるものであり、nは1から10までの整数である。

Description

本発明は、カチオンにより光重合できる組成物、及びカチオン光重合方法に関する。
関連特許
本出願は、2002年3月8日に出願された、米国仮出願番号第60/362,680に基づく優先権を主張し、この出願の全体は参照により本明細書にインコーポレートされる。
様々な工業用の化学物質製造工程の環境への影響を減らそうとする継続的な努力の一環として、有機被覆剤の適用と硬化処理のための新しい方法の開発が強調されてきた。このようないたるところに存在する物質は、現代生活には絶対に欠かすことのできないものであるが、一方で、大気汚染や水質汚染に寄与する揮発性有機溶剤を排出する主な工業資源の一つにもなっている。装飾用及び保護用の有機被覆剤の製造に光重合を用いることがこの問題の解決策の一つであり、この技術が成熟し、そしてより多くの使用者が自身の要求にこの技術を適用させる成功経験を積むに連れ、広く受け入れられつつある。
光重合方法には、2種類の主な単量体組成物であるアクリル酸塩とエポキシを用いるのが通常である。エポキシ組成物のカチオン系光重合はアクリルモノマーの遊離基光重合よりも遅いということが広く認識されている。このため、光硬化処理したエポキシは一般的にアクリル化したものよりも良い性質を有するが、これらの物質は印刷用インクや高速画像化技術などのような高速の用途には用いられないのが普通である。
カチオンによる光重合開始方法においてエポキシモノマーの重合速度を高める又は促進する一つの方法は、光増感剤の使用によるものである。実際、光増感剤は、光重合が採用された多くの適用におけるカチオン光重合の成功には不可欠である。広帯域照射光源を用いた場合、光増感剤でさらに加わったスペクトル感度により、最も一般的なUV照射源から照射された利用可能な光のより高い画分を捕捉できるようになることがしばしばある。結果として、光重合開始剤のより効果的な光分解は、光増感剤がない場合と比較すると、モノマーの重合速度を明らかに加速させる多数の開始剤種を生じさせる。加えて、現在では画像化用途にレーザーや発光ダイオードなどの単色性光源を使用する傾向があり、これらの光源が重合開始剤により吸収されない波長で照射する場合、光増感剤の使用が必要となることがある。
多環式芳香族化合物又は多核式芳香族化合物は、オニウム塩を光分解するための既知の光増感剤である。これらの化合物は容易に入手可能であり、多くの場合、出発物質は安価である。さらに、これらは極めて重要な長波長UV領域と可視領域で増感する可能性がある極めて豊富で強吸収性のUVと可視の吸収スペクトルを有するのが一般的である。カルバゾール核を含むモノマー及びポリマー化合物が、チェンら(非特許文献1)、及び本件の発明者ら(非特許文献2、非特許文献3)により記載されている。フェノチアジン誘導体も、オニウム塩光重合開始剤として使用できる新種の光増感剤として報告された(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7を参照)。発見されたオニウム塩のための最も有効な光増感剤の中には、アントラセン、ピリン及びペリレン(ジベンズ[DE,KL]アントラセン)(非特許文献8)などの、電子が豊富な多核式芳香族化合物がある。タカハシへの米国特許(特許文献1)は、任意選択的に置換された9,10−ジアルコキシアントラセン及び9,10−ジアラルキルオキシアントラセン、及び、特に、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン及び2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセンを含む、ヒドロキシ基、又は任意選択的に置換されたアラルキルオキシ(aralkyloxy) 基若しくはアルコキシ基で置換された多環式芳香化合物及びカルバゾール誘導体を含む光触媒組成物を開示している。これらの組成物は、硬化速度が加速したと報告されている。しかしながら、この種の光増感剤は、可能な適用が多いにも関わらずあまり注目されてこなかった。これは、これらの化合物に関連するいくつかの主要な欠陥から生じるものである。第一に、これらの化合物は殆どのモノマーに溶解し難い傾向があり、第二に、室温での蒸気圧が高い化合物が多く、そのために重合の間に薄いフィルム被覆から容易に消失してしまう。第三に、米国特許第6,313,188号に記載されているようなヒドロキシ基で置換された多環式芳香族であるフェノール系の光増感化合物は酸化を受け、その結果、黄変するか黒ずんでしまう。これは、透明被覆の適用時、又は顔料を利用する場合には問題となり得る。最後に、全てではないにしても、カチオン重合用の光増感剤として開示されている殆どの多核式芳香族炭化水素は有毒である。毒性は、組成物の調製と重合が行われる作業場での安全性の面だけでなく、高分子網目に結合されていない有毒な化合物が滲出してくる可能性がある最終的な適用でも問題となる。とりわけ、硬化した組成物が食物と接することがある適用では、重合中に成長する鎖に結合することになる光増感剤を使用することが不可欠である。
米国特許第6,313,188号 チェン, Y.、ヤマムラ, T.、イガラシ, K. 、 J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2000, 38, 90 ) ホワ, Y.、クリヴェッロ, J.V. 、 J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.2000, 38, 3697 ホワ, Y.;クリヴェッロ, J.V. 、 Macromolecules 2001, 34, 2488 ゴムラシュビリ, Z.、クリヴェッロ, J.V. 、J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2001, 39, 1187 ロドリゲス, M.R.、ノイマン, M.G. 、 J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem 2001, 39, 46 クリヴェッロ, J.V.、リー, J.L. 、Macromolecules, 1983, 16, 864 デニズリギル, S.、レズール, R.、ヤグチ, Y.、マカードル, C.、ファウアッシア, J.−P. 、Macromol. Chem. Phys. 1996, 197, 1233 クリヴェッロ, J.V.、ラム, J.H. W. 、J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 1979, 17, 1059
従って、化学的に高分子網目に組み込まれ、それによりエポキシ組成物の光重合速度が便利且つ容易に促進される非フェノール系増感剤を発見し、それを光硬化可能なアクリル酸塩と同等のものとすることは考慮すべき価値がある。
発明の概要
ヒドロキシメチル置換基又は置換されたヒドロキシメチル置換基を含む芳香族化合物が、エポキシ化合物に対する効果的な光増感剤及び硬化促進物質であることが、意外にも発見された。これらの化合物は、置換されていない類似体と比べると、毒性が減少し、処方中への溶解性が増加していた。最も重要なのは、これらの化合物が重合反応に関与し、そのため重合体に組み込まれることになるということである。その結果、揮発性が減少するため光増感剤の有効性は最大となり、光増感剤が環境に取り込まれないので毒性は最小となる。
従って一つの側面では、本発明は少なくとも一つのエポキシ単量体、少なくとも一つのカチオン系光重合開始剤、及びフェノール系レゾール、又は次の化学式Iの構造を有する一つ以上の化合物を含む促進物質を含む、カチオンで光重合可能な組成物に関する。
R1(CR2R3OH)n
I
上式中、
R1は、それぞれ一つ以上の電子供与基で置換されても良い、フェニル、多環式アリール、及び多環式へテロアリールから選択され、
R2及びR3は、それぞれ水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、及び置換されたアルキルアリールから選択され、
nは1から10までの整数である。
化学式Iの化合物の水中での解離定数(pK)は4.0より大きい。
大抵の単量体では、これらの促進物質を処方中に含めると、重合速度は少なくとも2倍増加させることができる。多くの場合、10倍又はそれ以上の光重合速度の増加が観察された。
一つの側面では、本発明は、次のものを含むカチオンによる光重合が可能な組成物に関する。
少なくとも一つのエポキシ単量体
少なくとも一つのカチオン系光重合開始剤、及び
フェノール系レゾール及び化学式Iの化合物から選択された、少なくとも一つの促 進物質
R1(CR2R3OH)n
I
上式中、R1は、それぞれが一つ以上の電子供与基で置換されても良い、フェニル、多環式アリール、及び多環式へテロアリールから選択され、R2及びR3は、それぞれ水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、及び置換されたアルキルアリールでから選択され、nは1から10までの整数である。
該促進物質の水中での解離定数は4.0より大きい。即ち、これらは非塩基性であるということである。塩基性の化合物は、本発明の組成物中の酸性の光重合開始剤と反応し、その有効量を減少させることがある。例えば、ピリジン(pK5.25)、モルフォリン(pK8.33)やピロール(pK11.27)などの塩基性芳香族複素環系から誘導されるヘテロアリール化合物は、通常は本発明の組成物及び方法における促進物質として適切ではない。
化学式Iでは、R1は、それぞれが一つ以上の電子供与基で置換されても良い、単環式アリール、通常はフェニル、多環式アリール、又は多環式へテロアリールであってよい。一部の実施態様では、R1は一つ以上の電子吸引基で、又は一つ又は複数の電子不活性基で、さらに置換されていることがある。多環式アリール基は、多環式芳香族炭化水素(PAH)から誘導されるものであり、とりわけ、ケミカルアブストラクト・インデックスガイドの1997年版で定義された縮合系(縮合炭素環)、即ち、5員環以上の環のうちの少なくとも2個を有し、「オルト」縮合、又は「オルト−及びペリ−」縮合のみを含む融合系から誘導されるものである。これらの例には、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、及びペリレンが含まれるが、これらに限定されない。同様に、多環式へテロアリール基は多環式芳香族複素環化合物、とりわけ、カルバゾール、フェノチアジン、及びチアントレンなどの融合系(融合複素環)から誘導されるものである。なんらかの、エポキシ処方における低い溶解性、及び/又は毒性に関する懸念のためにその使用が制限されるかもしれないが、どの多環式アリール化合物又は多環式ヘテロアリール化合物を使用しても良い。幸い、本明細書に記載のヒドロキシメチルで置換した促進物質は、通常は、それらの置換していない親化合物よりも、通常溶解性が高く、毒性が低い。
R1がそこから選択される環系は、必要であれば、少なくとも一つの電子供与基で置換しても良い。電子供与基は、それらが結合する先の芳香環又は芳香族複素環(単数又は複数)に電子を供与できる基、又はそれらと電子を共有できる基である。例としては、アルコキシ(特にメトキシ、ヒドロキシ)、アリール(特にフェニル)、及びアルキル(特にメチル)などの一価の基、並びに−OCH2O−などの二価の基が含まれる。電子供与基(単数又は複数)が二価の場合、該環系は二箇所において二価の基で置換される。環系が二価の電子供与基で置換される促進物質の一例は、ピペロニルアルコールである。上で指摘したように、置換基は非塩基性の基に限定するのが望ましいかもしれない。一部の例では、電子供与基はニトロ、シアノ、ハロ、スルホン酸塩や、カルボン酸塩などの、電子吸引性置換基又は電子的に不活性な置換基と共に、環上に存在することがある。多くの場合、環上に電子供与性置換基が存在するとカチオン系重合に極めて強い促進効果を生じることが見出された。
化学式Iにおいて、R2及びR3は、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール又は置換されたアルキルアリールであって良い。とりわけ、R2とR3の一方又は両方が、水素、メチル、又はフェニルであって良い。さらに好ましくは、R2は水素で、R3はメチルかフェニルであって良い。
化学式Iの環系上にあるヒドロキシメチル基又は置換されたヒドロキシメチル基の数(化学式Iのn)は、1から10までの範囲である。この数は、2より小さいものと限定しても良く、必要であれば、さらに1に限定しても良い。
本発明の組成物において有用なヒドロキシメチル化合物の例には、ピペロニルアルコール、9−アントラセンメタノール、9−フルオレンメタノール、1−ピレンメタノール、3−ペリレンメタノールと、下に示す化合物が含まれる。
Figure 2005520007
Figure 2005520007
フェノール系レゾールは、本発明の組成物及び方法で光増感剤又は重合促進物質として用いても良い。フェノール系レゾールは、塩基の存在下で過剰なホルムアルデヒドとフェノールを縮合させ、芳香環上に高度のメチロール置換を含む低分子量の縮合物を生じさせて製造する。式IIはレゾールの一例を示す。この式において、mは0から12までの範囲であり、p、q、及びrはそれぞれ0から3までの範囲にある。
Figure 2005520007
この式に示すように、環上のメチロール(methyol)基の数と位置は変化することがある。本発明の用途に適したフェノール系レゾールは、ある範囲の分子量とメチロール置換度を有する物質を含むのが通常である。これらは、テキサス州ダラスのデユレツコーポレーションからメチロン樹脂として市販されている。
通常、光増感剤は単量体基準で0.01から50モル%までの範囲の濃度で用いられる。光増感剤の量は、単量体基準で0.01から10モル%に、さらには単量体基準で0.01から2モル%に限定しても良い。この光増感剤は、通常は光重合開始剤の重量の約10〜50%に相当する量で用いられるが、必要であればこれらの量と割合は変えても良い。
光増感剤は、ヒドロキシメチル基が、カチオン系重合反応、及びオニウム塩光重合開始剤の遊離基鎖により誘導される分解に関与できるため、光重合を開始したカチオン系の開環エポキシドとオキセタンの重合の速度を促進させるのに効果的であると考えられている。加えて、光増感剤はエーテル基として、重合体の鎖末端に組み込まれうる。このことは、一旦重合が完了すれば、該光増感剤が遊走できないという点で利点がある。このことには、これらの物質の毒作用の緩和に重要な因果関係がある。
本発明のカチオンによる光重合が可能な組成物には、少なくとも一つのエポキシ樹脂も含まれる。カチオンによる光重合が可能な多種多様なエポキシ樹脂を、本発明の組成物に用いても良い。これらには、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシル(EECH又はERL)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、4−ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド及びジシクロペンタジエンジオキシドなどの脂環式エポキシ樹脂類、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカンなどのα−オレフィンエポキシド類、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル(BPADGE)、ビスフェノール−Fジグリシジルエーテル、これらの鎖伸長類似体や1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを含むグリシジルエーテル類、テトラブロモビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルなどの臭化エポキシ樹脂類、エポキシクレゾールノボラック、エポキシフェノールノボラック、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油などのエポキシ化植物油類、及び、例えばフタル酸ジグリシジルなどの、グリシジルエステル樹脂類が含まれる。上に挙げたエポキシ樹脂類は、カチオンによる光重合が可能な組成物に使用するためのエポキシ混合物を作るために、単独で又は組み合わせて含めても良い。特に、BPADGE、4−ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシル、シクロヘキセンオキシド、又はこれらの混合物を用いることができる。
本発明のカチオンによる光重合が可能な組成物には、カチオン系光重合開始剤も含まれる。カチオンの機作により光重合を開始することで知られる多くの化合物のいずれを用いても良い。これらの化合物には、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードソニウム塩、ジアルキルフェニルスルホニウム塩、ジアルキル(ヒドロキシジアルキルフェニル)スルホニウム塩、及びフェロセニウム(ferrocenium)塩が含まれる。このような塩は、アルキル、アルコキシ、シロキシなどの基を付着させることにより、それらの有用性を損なうことなく修飾することができる。とりわけ有益な開始剤には、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−n−デシルオキシフェニル)フェニルヨードニウム(IOC10)、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−n−デシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム(SOC10)及びヘキサフルオロアンチモン酸S−メチル−S−n−ドデシルフェナシルスルホニウム(DPS−C1C12)が含まれる。通常は、光重合開始剤は、単量体基準で0.01から1.0モル%まで、または単量体の総重量基準で0.1から10重量%までの範囲の濃度で用いられる。
実施例
以下は、本発明の組成物及び方法をさらに詳細に例示するために用いられる実施例である。
材料
ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、9−フルオレンメタノール、9−アントラセンメタノール、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキセンオキシド、及び4−ビニルシクロヘキセンジオキシド(VCHDO)は、特に断らない限り、アルドリッチ・ケミカル社(ミルウォーキー,ウィスコンシン州)から購入したものを使用した。PC−1000は、ポリセット社(メカニックビル,ニューヨーク州)から提供された。ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルは、トーアゴウセイ・ケミカル社(名古屋,日本)の好意により提供された。リモネンジオキシド(LDO)は、ウイトコ・ケミカル社(ブルーミングプレーリー,ミネソタ州)から贈与された。3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(ERL−4221E,ERL)は、ユニオンカーバイド社(バウンドブルック,ニュージャージー州)から購入した。ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル(BPADGE)は、ダウケミカル社(ミッドランド,ミシガン州)から入手した。オニウム塩カチオン系光重合開始剤であるヘキサフルオロアンチモン酸(4−n−デシルオキシフェニル)フェニルヨードニウム(IOC10)、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−n−デシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム(SOC10)及びヘキサフルオロアンチモン酸S−メチル−S−n−ドデシルフェナシルスルホニウム(DPS−C1C12)は、次の文献に記載されているとおりに調製した。IOC−10:クリヴェッロ, J.V.、リー, J.L. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. Ed. 1989, 27, 3951 、SOC10:アカター,S.R.、クリヴェッロ, J.V.、リー, J.L. J. Org. Chem. 1990, 55, 4222,、及びDPS−C1C12-クリヴェッロ, J.V.、コング, S Macromolecules 2000, 33, 833。それぞれの単量体と光重合開始剤の構造を表1に示す。 1H−NMRスペクトルは、内部標準としてテトラメチルシランを使用し、室温でCDCl3中でバリアンXL500MHzスペクトロメータを用いて得た。
Figure 2005520007
3−ペリレンメタノールと1−ピレンメタノールの調製
N−メチルホルムアニリド(11.0g,0.081モル)と新たに蒸留したo−ジクロロベンゼン(20mL)を含む250mLの三口丸底フラスコに、オキシ塩化リン(11.0g,0.072モル)を添加した。この混合物を、N2下で15分間、室温で攪拌した。ペリレン(8.8g,0.035モル)をこのフラスコに添加し、その反応混合物をN2雰囲気下で18時間、80〜85℃で攪拌した。酢酸ナトリウムの濃縮水溶液(50g)を添加し、さらに2時間攪拌した。その混合物は、ジクロロメタン(10×200mL)で抽出した。その抽出物を合わせ、蒸留水(4×500mL)で洗浄し、その後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥した強い紫色の溶液を約200mLまで濃縮し、実験台に一晩置いた。黄褐色の結晶性固体(6.5g)が得られた。その母液を濃縮すると、さらに2.0gのペリレンカルボキシアルデヒド(perylenecarboxaldehyde)が得られた。融点:232〜4℃(文献値236℃)。(ブー−ホイ,N.P.とロング,C.T. Rec. Trav. chim. 1956, 75, 1221 )。
1H NMR δ(CDCl3): 10.29 (s, 1H), 9.14 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.3 − 8.20 (m, 4H), 7.89 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.83 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.66 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.58 − 7.48 (m, 2H)。
250mLの三口丸底フラスコに3−ペリレンカルボキシアルデヒド(3.0g,0.011モル)、ホウ水素化ナトリウム(2.2g,0.058モル)及び乾燥THF(60mL)を入れた。この混合物を、N2雰囲気下で15時間、80℃(油浴)で攪拌した。このフラスコを氷水浴中で冷却し、反応が見られなくなるまでゆっくりと1MのHCl溶液(約50mL)を添加した。この混合物をジクロロメタン(4×300mL)で抽出した後、この抽出物を合わせ、3%のNa2CO3(100mL)、蒸留水(4×400mL)で洗浄し、次に無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥した赤色の溶液を約50mLまで濃縮し、冷凍庫で一晩冷却した。融点が207〜209℃である褐色の固体(2.3g)が得られた。
1H NMR δ(CDCl3): 8.20(d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.56− 7.44 (m, 4H), 5.07 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 1.76 (t, J = 5.8 Hz, 1H)。
同様に、1−ピレンカロボキシアルデヒドをバックリーら(バックリー,D.A.;トーマス,H.R. Ger Offen. 1975 DE 2456538 19750710、米国出願番号 73-428929、Chem. Abstr. 1975, 83, P192946w )の方法を用い、そしてN−メチルホルムアミドの替わりにN−メチルホルムアニリドを用いて調製した。ホウ水素化ナトリウムによる還元後、1−ピレンメタノール、融点122〜124℃(文献の融点125〜126℃)が得られた。この化合物の1HNMRスペクトルは、アルドリッチ・ケミカル・カンパニーから得た試料と全ての点で一致した。
表2は、これらの化合物の特徴である構造、融点、及びUVスペクトルを示す。
Figure 2005520007
一般に、この表に示すヒドロキシメチル化した化合物の融点は、それぞれに対応する親の炭化水素前駆体よりも低く、このことはこれらの前者の化合物の溶解性が増大したことをも示す。これらの化合物がそれらの親炭化水素に類似したUV吸収特性を示し(ペリレンを例としてこの表に含める)、長波長領域と可視領域にかなりのモル吸光係数を持つ多数のバンドを示すということに注目するのは興味深いことである。多核炭化水素中の芳香環の数が増加するにつれ、吸収バンドがより長波長側にシフトすることも、さらに観察されうる。
シクロヘキセンオキシドの光重合
ヒドロキシメチル化した多核炭化水素の光増感剤が、形成される重合体中に組み込まれたことを確認するため、IOC10と1−ピレンメタノールをそれぞれ光重合開始剤、光増感剤として使用してシクロヘキセンオキシドのバルク重合を実施した。乾燥させたバイアル中に、0.1モル%のIOC10及び0.1g(0.0004モル,2.0モル%)の1−ピレンメタノールを溶解した2.0g(0.02モル)のシクロヘキセンオキシドを入れた。この混合物を窒素気流を用いて脱気し、ゴム隔壁で密閉した。この試料は、300nmを主体とする照射光を持つランプを16個装備したレーヨネット紫外線照射器の中で、室温で10分間、照射を行った。次に、その半固体の重合体をトリエチルアミンを1滴含むジクロロメタン中に溶解し、その後メタノール中に沈殿させた。このプロセスを、小分子出発物質及び生産物の除去を確実にするため、さらに二度繰り返した。最後に、この重合体を真空オーブンで一晩乾燥させ、THF中に溶解し、そのUVスペクトルを記録した。スペクトルの243nm、265nm、276nm、314nm、327nm及び343nmに強い目立った吸収バンドの存在は、光増感剤が重合体骨格中に組み込まれたことを示す。
フーリエ変換実時間IR分光法(FT−RTIR)による、光重合開始済み開環カチオン系エポキシドの重合速度の研究
種々のエポキシ単量体の直接及び光増感したカチオン系光重合の動力学を、FT−RTIR分光法を用いてモニターした。液体窒素で冷却したHg−Cd−Te検出器を備えたミディアックM−1300FT−IR分光計に、UVEXのSCU−110型水銀ランプを取り付けた。その光は、可動式のワンド(細い管)を通り抜けて試料室に到達する。ワンドの末端は所定の距離に取り付け、試料室窓に対して45°の入射角になるように向けた。UV照射の強度は、UVプロセス・サプライ社のコントロール・キュア・ラジオメータを用いて測定した。本研究の動力学実験は全て、25℃で、モニター及びデータ分析に好都合となるような光強度で行った。
動力学分析のための試料は、次のように調製した。指定の光重合開始剤と光増感剤を含む、対象の単量体の均一な溶液を調製した(全ての濃度は、特に断らない限り、単量体に対するモル%で表示する)。この溶液を、2層の12μmのコロナ処理した延伸ポリプロピレンフィルムの間に薄膜として広げ、次に2cm×2cmのプラスチック製スライドホルダーに搭載した。様々な試料間におけるこの試料の厚さの再現性は、干渉計で頂点と頂点の間の距離をモニターしてチェックした。光重合の間、エポキシ基による789cm-1の赤外線吸収バンドをモニターした。データは、1秒につき1スペクトルの割合で収集した。その後、このスペクトルのデータを変換対時間曲線に変換し、ミダック(Midac)のGrams/386ソフトウェアを用いてプロットした。
選択された動力学に対する動力学パラメータ、Rp/[Mo]は、次の式の照射時間−変換曲線の初期の直線部分の勾配から決定した。
Rp/[Mo]=([変換]t2−[変換]t1)/(t2−t1)
この式において、Rp及び[Mo]はそれぞれ光重合の速度と初期の単量体濃度であり、変換は照射時間t1とt2時点の曲線から決定されたものである。
図1には、二官能性エポキシ単量体である4−ビニルシクロヘキセンジオキシド(VCHDO)重合における様々な量のベンジルアルコール(BzOH)を包含することの影響を研究した結果を示す。ベンジルアルコールの量が増えるにつれ、変換対時間曲線の勾配で表される光重合の速度が上昇する。この速度の上昇は、30〜40モル%(エポキシ単量体基準)の間のベンジルアルコールが添加されたときに最大となる。エポキシド基の変換は、ベンジルアルコールの量が増加するにつれ上昇するということにも注目すべきである。
図2は、VCHDOの光重合に及ぼす20%の種々のベンジル型アルコールの効果の比較を表す。ベンジルアルコールが使用されていない場合の曲線を基準線として含めた。この図には、ベンジルメチルエーテルの存在下で実施された重合の研究も示されている。ベンジルメチルエーテル(BME)には、これがヒドロキシル基を有しないという事実にもかかわらず、重合速度を僅かに速める効果がある。本発明者らは、この効果を、この化合物の光重合開始剤の遊離基鎖による誘導分解に関与する能力によるものであると考える。ジフェニルメタノール(ベンズヒドロール,Ph2CHOH)も、光重合の速度を促進させる弱い効果をもつ。この場合、ラジカル中間体及びカチオン中間体に対するジフェニルメチル基の安定化効果の増強が予測されるにもかかわらず、このアルコールは立体障害が遙かに多く、開始剤であり伝播剤であるオキソニウムイオンとの緩慢な反応を受ける。同様の原理により、α−メチルベンジルアルコール(α−MeBzOH)の僅かに良好な振る舞いが説明される。4−メチル−オキシベンジルアルコール(MeObzOH)は、VCHDOの光重合に対し最も高い促進効果を示す。これは、ラジカル中間体及びカチオン中間体の両方に対する共鳴と誘導による安定性をもたらす4−メトキシ基が分子内に存在するためである。加えて、メトキシ基の存在はベンジルアルコールの求核性を高め、結果として活性化された単量体機作に関与するこの化合物の能力の増強を生ずるとも予測されるであろう。
図3は、電子供与性置換基及び電子吸引性置換基を保持するベンジルアルコールの間の比較をさらに示す。これらの動力学研究の結果を表3にまとめる。
Figure 2005520007
置換された及び置換されていない様々なベンジルアルコールに対する速度に加え、表3にはアルコールが存在しない状態で測定された速度も含まれている。これらの数値を用いて、促進因子AFを、それぞれのベンジルアルコールについて決定した。ここでは、AFは、ベンジルアルコールの存在下でのエポキシド開環重合の速度対ベンジルアルコールが存在しない場合のその速度の比率である。即ち、
AF=Rp/[Mo]アルコール /Rp/[Mo]
4−ニトロベンジルアルコール(NO2BzOH)には、VCHDOの光重合に対する明白な減速効果(AF=0.29)があり、一方4−クロロベンジルアルコール(ClBzOH)にはベンジルアルコール(AF=1.3)とほぼ同じ活性(AF=1.2)がある。これらのベンジルアルコールはいずれも、光重合の促進においては、4−メトキシベンジルアルコール(AF=1.9)と比べると、反応性が相当低い。電子供与特性を持つ置換基の反応性を、図4に示す。3,5−ジメトキシベンジルアルコール(3,5(MeO)2BzOH)では、2つのメトキシ基の誘導効果のみがベンジル基によって感じられるが、この物質は置換されていないベンジルアルコールよりも反応性が高い(AF=1.5)。対照的に、3,4−ジメトキシベンジルアルコール(3,4(MeO)2BzOH)はVCHDOの光重合に対して極めて強い促進効果(AF=5.3)を示し、このアルコールは4−メトキシベンジルアルコールよりもはるかに良い促進物質である。図4には、ピペロニルアルコール(3,4−メチレンジオキシフェニルメタノール,PipOH)の変換対時間曲線も示す。ピペロニルアルコールは、自然産物であるサフロール(suffrole) から誘導される、容易に入手できるベンジル型アルコールである(フーソン, R.C. 有機化合物の反応, ジョンワイリー&サンズ,ニューヨーク州,1962,p. 230、メルク・インデックス9版,ウィンドホルツ, M.,;ブダバリ,編者,メルク社,ローウェイ,ニュージャージー州,1975,p. 973)。
ピペロニルアルコールは、そのベンゼン環に、高度に電子が豊富で活性化しているメチレンヂオキシ基を含む。ピペロニルアルコールは、VCHDOの重合のための促進物質(AF=5.0)として、3,4−ジメトキシベンジルアルコールと同等の効果があり、入手がずっと容易であり価格も安い。VCHDOの重合のためのピペロニルアルコールの最適濃度を決定するための研究を図5に示す。重合混合物にこのアルコールが5%しか含まれない場合に、優れた速度促進が観察され、変換の顕著な増加も観察される。これら二つの効果は、ピペロニルアルコールが20%のときに最高となる。
遊離基の機作の寄与とイオンの機作の寄与を区別しようとする試みでは、10%の4−メトキシベンジルアルコールの存在下で実施されたVCHDOの重合が、単独の場合と、遊離基遅延物質としてニトロベンゼンを存在させた場合とで比較された。その結果を図6に示す。この重合混合物に5モル%のニトロベンゼンを添加すると、実質的な重合速度の遅延があった。アルコールの非存在下の場合(0.92)、4−メトキシベンジルアルコールを用いた場合(1.9)、及び4−メトキシベンジルアルコールとニトロベンゼンの両方を含む混合物の場合(0.99)の重合に対する速度係数(Rp/[Mo])を比較すると、殆どの促進は、観察されたVCHDOの重合速度の全体的促進に対する遊離基機作の寄与によるものであることが分かる。
図7は、促進物質として4−メトキシベンジルアルコールを用いたVCHDOの光重合に対する光重合開始剤の構造の効果を示す。ここでも、比較のためにアルコールを使用しなかった研究を含める。ジアリールヨードニウム塩光重合開始剤を用いた場合にのみ、有意な速度の上昇が見られた。これら三つの異なる光重合開始剤については、吸収の特性及び量子収率にいくつかの相違があるが、主な相違はオニウム塩の酸化電位における相違にあるようである。より低い酸化電位(E1/2=−0.2V)を持つIOC10は、SOC10(E1/2=−1.01から−1.46V)よりもずっと容易に還元される。ジアルキルフェナシルスルホニウム塩の還元電位は、ジアリールヨードニウム塩とトリアリールスルホニウム塩の中間(E1/2=−0・7V)であることが分かっている。これらの結果は、この機作の提唱したラジカル成分に対するさらなる支持を与えるものである。
VCHDO以外のエポキシド単量体の光重合に対するヒドロキシメチル化合物の効果も研究した。従って、表1に示す構造を持つ極めて典型的ではあるが異なる4種の二官能性エポキシド単量体を、20%のピペロニルアルコールの存在下と、比較のためにピペロニルアルコールの非存在下で光重合させた。これらの動力学的研究の結果も表3にまとめる。全ての場合において、重合速度と変換の両方で実質的な上昇が観察される。リモネンジオキシドは、同様のVCHDOへの反応性並びに高い促進係数(AF=8.5)を示す。二官能性エポキシシリコン単量体であるPC−1000も、ピペロニルアルコールの存在下で優れた促進(AF=3.5)を示す。図8は、市販の3’−4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロへキシルメチル(ERL)の同条件下での光重合を示す。ピペロニルアルコールの存在下では、この単量体の光重合速度は24倍の著しい上昇が観察される。同時に、200秒照射後のエポキシ基の変換は4倍上昇した。ピペロニルアルコールの存在下と非存在下での、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル(BPADGE)の光重合を図9に示す。この単量体は、アルコールの非存在下では極めて緩慢な光重合挙動を示す。しかしながら、ピペロニルアルコールを添加すると、この速度は3.7倍に促進され、200秒照射後の変換は完全に2倍になる。
ヒドロキシメチル化した多核炭化水素光増感剤も、様々な単量体を用いて、カチオン系開環重合において評価した。この実験からの動力学的データを、このデータが得られた実験条件の記述と共に、表4にまとめる。
Figure 2005520007
図10は、IOC10を光重合開始剤として用いて、1−ピレンメタノール及び9−アントラセンメタノールを二官能性エポキシド単量体である4−ビニルシクロヘキセンジオキシド(VCHDO)の重合における光増感剤として比較した研究である。この図には比較のため、光増感剤が含まれなかった動力学曲線も含める。光増感剤を採用した場合には、広帯域UV照射を用いた低光強度(173mJ/cm2−分)の場合でさえも、光重合速度の相当な増大(表4、エントリー1及び2、AF=10:1−ピレンメタノール、AF=4.5:9−アントラセンメタノール)が観察された。1−ピレンメタノールのより広帯域でより強いスペクトルは、それを9−アントラセンメタノールよりも遥かに良い光増感剤とする。図11は、当モル量のベンジルアルコールと共に1−ピレンメタノールを用いた場合及び光増感剤を含まない場合(エントリー4〜6)の、同じ単量体の光重合を比較している。この研究は光重合開始剤としてSOC10を用いて行った。各々のベンジルアルコールを使用した場合と比べて1−ピレンメタノールで観察されたかなり高い重合速度は、光増感の効果によるものであり、活性化した単量体内にこの分子のアルコール部分が含まれていたことによる促進によるものではないと言える。ベンジルアルコールの存在下と非存在下における光重合速度の比較は、6.0%のベンジルアルコールの存在下において僅かな速度上昇を示すだけである。先の研究は、活性化した単量体機作によるか又はフリーラジカルによる誘導分解機作によるカチオン系開環重合の両方の促進が、比較的大量の(10〜20%)ベンジルアルコールを必要とすることを示した。VCHDOをリモネンジオキシド(LDO)(エントリー7〜9)又は3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(ERL)(エントリー10、11)のいずれかで置換した場合、非常に類似した結果が観察された。光増感剤、光重合開始剤の相対濃度又は光強度(エントリー12〜15)のいずれかが減少しても、やはり1−ピレンメタノールを用いて優れた光増感効果をもたらす。ジアルキルフェナシルスルホニウム塩である、ヘキサフルオロアンチモン酸S−メチル−S−n−ドデシルフェナシルスルホニウム(DPS−C1C12)を光重合開始剤として、光増感剤1−ピレンメタノールと共に用いた場合(図12、表4:エントリー16〜18)、同様の速度の上昇が観察された。ヒドロキシメチル化した多核炭化水素光増感剤は、この研究で用いた3種類のオニウム塩光重合開始剤全てに有効であるため、特に有利であることに注目されたい。
光増感剤に最適濃度があるか否かを決定する試みでは、0.5、1.0及び2.0%の1−ピレンメタノールを、0.7%のIOC10を光重合開始剤として共に用いて、4−ビニルシクロヘキセンジオキシドの重合を行った。その結果を図13に示す。この光増感剤の3種類の濃度全てで、ほぼ全く同程度に、この単量体の重合の劇的な促進が観察される。このことは、この光増感効果が、UVスペクトルの長波長領域で単量体溶液におけるこの光増感剤の光学密度が高いために1−ピレンメタノールが0.5%で既に飽和していることを示している。この研究で用いた光強度が僅か85mJ/cm2分であり、それでもこれらの条件の下で該重合混合物の反応性が極めて高かったということは、注目に値する。商業的システムでは、この光強度は2000mJ/cm2分以上のオーダーであることが多い。
さらに2つの光増感剤、9−フルオレンメタノール及び3−ペリレンメタノールを評価した。その結果を図12と図13に示す。9−フルオレンメタノールは比較的弱い光増感剤(表4、エントリー19及び20、AF=1.7)であるが、3−ペリレンメタノールはIOC10に対して優れた光増感特性を示す。0.5%と0.2%の3−ペリレンメタノールがVCHDOの重合に用いられた場合、完全に同一の変換対時間曲線が得られた。これらの重合に対して、それぞれ16と15のAF値が測定された(表4、エントリー21及び22)。この二つの光増感剤の性能における相違は、表2に示すような二つの異なる光増感剤のUV吸収スペクトルを比較することにより合理化できる。3−ペリレンメタノールにおける強い長波長吸収帯と、9−フルオレンメタノールにそれが無いことは、光増感におけるそれらの有効性の大きな相違を説明する。加えて、電子が豊富なペリレン核は、対応するフルオレン核よりも遥かに容易に酸化され、さらには、形成されるカチオン遊離基をずっと容易に安定化させる。一官能性エポキシドであるシクロヘキセンオキシドを3−ペリレンメタノールで光増感した重合のFT−RTIR研究を図16に示す。重合開始剤が存在しない並行実験と比べると、この光増感剤は濃度が0.2モル%において、重合を著しく促進する(AF=11)。
ビニルエーテルの重合は、エポキシドよりもはるかに速い。図17は、2−クロロエチルビニルエーテルの重合に対する1−ピレンメタノールの光増感効果を示す。この極めて反応性の高い単量体は、重合前に除去されなかった重合阻害物質としての塩基を微量含んでいた。光増感剤を含まなかった対照の重合と比較すると、光増感剤の存在下における阻害期間が著しく減少することが明らかになる。これは、光増感剤が存在すると、塩基性阻害物質を急速に消費する大量の酸が光により形成されるためのようである。対照的に、光重合開始剤の直接光分解は、この阻害物質が消費されるまで、単量体をゆっくり消費するという結果になる。その後、急速な重合が続いて起こる。オキセタンのカチオン系光重合はエポキシドのカチオン系光重合と同様の速度で進行する。光重合開始剤としての1−ピレンメタノールの存在下及び非存在下で実施された単量体、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルの光重合を図18に示す。前述の場合のように、この二官能性単量体も重合の開始部分の速度を低下させる塩基性阻害物質を微量含むようでもある。しかしながら、光増感剤を用いると、その阻害期間は著しく短くなり、重合は高度な変換まで急速に進む。対照的に、光増感剤を含まない直接重合は速度の促進を示さず、その変換は比較的長い照射時間の後ですら、低いままである。
ベンジルアルコール及び電子供与置換基を持つその類似体は、エポキシド単量体のジアリールヨードニウム塩により光重合開始されたカチオン系重合の有用な促進物質である。促進物質として特に効果的なのは、3,4−ジメトキシベンジルアルコールとピペロニルアルコールである。ヒドロキシメチル化された多核芳香族炭化水素は、長波長UV領域及び可視領域における様々な種類のオニウム塩光重合開始剤の光増感に対して、低濃度で極めて効果的であった。ベンジルアルコールはいくつかの種類の市販されているエポキシド単量体の重合速度の促進に効果があることも分かった。
ヒドロキシメチルの官能性を持たせた光増感剤は、エポキシドやオキセタンなどの環状エーテルのカチオン系開環光重合に対しいくつかの利点を同時に有する。第一に、この化合物はオニウム塩に対して電子伝達光増感剤として機能する。第二に、極性アルコール基の存在は、単量体中への光増感剤の溶解性を高めることに寄与する。第三に、これらの化合物は活性化単量体機作に関与する能力があるため、これらの単量体の重合を促進させる。特に多官能性単量体が用いられる場合には、これらの光増感剤は連鎖伝達によるより高度な変換と、架橋結合開始の遅延の両方をもたらす。第四に、重合中に単量体と光増感剤が縮合して生じるエーテルは、オニウム塩光増感開始剤の、フリーラジカルにより誘導される鎖分解にも関与することができる。最後に、これらの光増感剤は形成される重合体の中にエーテル末端基として共有結合され、その毒性と揮発性を減少させる。形成される重合体結合エーテルは、ヒドロキシメチル親化合物と実質的に同一のUV吸収特性を有し、従って同様な光増感機能を示すことがさらに期待される。
図1は、様々な量のベンジルアルコールの存在下における、VCHDOの光重合のFT−RTIR研究である(光重合開始剤は0.1%のIOC10、光強度は150mJ/cm2分)。 図2は、VCHDOのカチオン系開環光重合に対する様々な20%ベンジルアルコール類の促進効果を比較したものである(光重合開始剤は0.1%のIOC10、光強度は150mJ/cm2分)。 図3は、VCHDOのカチオン系開環光重合に対する様々な20%ベンジルアルコール類の効果を比較したものである(光重合開始剤は0.1%のIOC10、光強度は190mJ/cm2分)。 図4は、VCHDOのカチオン系開環光重合に対する、電子供与基を有する様々な20%ベンジルアルコール類の促進効果を比較したものである(光重合開始剤は1.0%のIOC10、光強度は190mJ/cm2分)。 図5は、1.0%のIOC10(光強度250mJ/cm2分)の存在下における、VCHDOの光重合に対するピペロニルアルコールの濃度の効果を表したものである。 図6は、10%の4−メトキシベンジルアルコールの存在下(黒四角)において、5%のニトロベンゼンを添加(黒三角)した、VCHDOのカチオン系光重合のFT−RTIR研究である(光重合開始剤は1.0%のIOC10、光強度は200mJ/cm2分)。 図7は、10%の4−メトキシベンジルアルコールの存在下におけるVCHDOの光重合に対する光重合開始剤の効果をあらわしたものである(1.0%のIOC10,(黒三角)SOC10(○)DPS−C1C12(△)IOC10アルコールなし,(黒四角)(光強度は200mJ/cm2分))。 図8は、ERL単独の光重合(黒三角)及び、20%のピペロニルアルコールの存在下での光重合(黒四角)である(光強度は175mJ/cm2分、1.0%のIOC10)。 図9は、BPADGE単独の光重合(黒四角)及び、20%のピペロニルアルコールの存在下における光重合(黒三角)である(光強度は175mJ/cm2分、1.0%のIOC10)。 図10は、6.7%のピレンメタノール(黒三角)、6.7%の9−アントラセンメタノール(黒丸)の存在下、及び光増感剤無し(黒四角)における4−ビニルシクロヘキセンジオキシドのカチオン系光重合を調べたものである(0.67%のIOC10、光強度は175mJ/cm2分)。 図11は、4−ビニルシクロヘキセンジオキシドの光重合に対する、6.0%の1−ピレンメタノール(黒丸)、6.0%のベンジルアルコール(黒菱形)及び光増感剤無し(黒四角)の効果を比較したものである(0.60%のSOC10、光強度は180mJ/cm2分)。 図12は、4−ビニルシクロヘキセンジオキシドの光重合に対する、6.0%の1−ピレンメタノール(黒三角)及び6.0%のベンジルアルコール(黒四角)の効果を比較したものである(0.60%のDSP−C1C12、光強度は180mJ/cm2分)。 図13は、0%(黒四角)、2.0%(黒菱形)、1.0%(黒丸)及び0.5%(黒三角)の1−ピレンメタノール(0.70%のIOC10、光強度は176mJ/cm2分)の存在下で、4−ビニルシクロヘキセンジオキシドのカチオン系光重合の反応速度を調べたものである。 図14は、2.0%の9−フルオレンメタノールの存在下(黒四角)、及び光増感剤の非存在下(△)における、4−ビニルシクロヘキセンジオキシドのカチオン系光重合のFT−RTIR研究である(0.70%のIOC10、光強度75.8mJ/cm2 分)。 図15は、0モル%(黒四角)、0.2モル%(黒三角)及び0.5モル%(黒丸)の3−ペリレンメタノールの存在下における、0.1モル%のIOC10による4−ビニルシクロヘキセンジオキシドのカチオン系光重合のFT−RTIR研究である(光強度377mJ/cm2 分)。 図16は、光増感剤の非存在下における0.01モル%のIOC10を用いた(黒四角)、及び0.5モル%(黒丸)及び0.2モル%(黒三角)の3−ペリレンメタノールを用いた、シクロヘキセンオキシド(CHO)のカチオン系光重合の反応速度を調査したものである(光強度は178mJ/cm2分)。 図17は、0%(黒四角)及び0.5モル%(△)の1―ピレンメタノールを用いた、1.0モル%のOIC10による2−クロロエチルビニルエーテル(CEVE)のカチオン系光重合のFT−FTIR研究である(光強度は194mJ/cm2分)。 図18は、0.5モル%の1−ピレンメタノールの存在下(△)及び光増感剤をなし(□)の、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルの光重合である(1.0モル%のIOC10、光強度は401mJ/cm2分)。

Claims (27)

  1. a.少なくとも一つのエポキシ単量体、
    b.少なくとも一つのカチオン系光重合開始剤、及び
    c.フェノール系レゾール、又は化学式がR1(CR2R3OH)nである化合物を含 む、少なくとも一つの促進物質
    を含む、カチオンによる光重合が可能な組成物であって、
    上式中、R1はフェニル、多環式アリール、及び多環式へテロアリールから選択され、それぞれが一つ以上の電子供与基で置換されてもよく、
    R2とR3は、それぞれ水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール及び置換されたアルキルアリールから選択されるものであり、そして
    nは1から10までの整数である、組成物。
  2. nが1である、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  3. 該促進物質がフェノール系レゾールである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  4. R1がフェニルである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  5. R1が多環式アリール又は多環式へテロアリールである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  6. R1が少なくとも一つの電子供与基で置換されたものである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  7. 該少なくとも一つの電子供与基が、アルコキシ、ビニル、置換されたビニル、及び−OR4O−から選択されるものであり、R4が独立して選択された二価のアルキル残基である、請求項6に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  8. 該少なくとも一つの電子供与基がアルコキシである、請求項6に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  9. 該少なくとも一つの電子供与基がメトキシである、請求項6に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  10. 該少なくとも一つの電子供与基が−OCH2O−である、請求項6に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  11. R1がアントラセン、フルオレン、ピレン、ペリレン、カルバゾール、フェノチアジン、又はチアントレンから誘導されるものである、請求項5に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  12. R2及びR3の少なくとも一方が水素である、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  13. R2及びR3の少なくとも一方がメチルである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  14. R2及びR3の少なくとも一方がフェニルである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  15. R2及びR3がそれぞれ水素である、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  16. R2が水素であり、R3がメチル又はフェニルである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  17. R1が電子吸引基及び電子的に不活性な基から選択された一つ以上の基でさらに置換されるものである、請求項1記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  18. 該促進物質が、ピペロニルアルコールである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  19. 該促進物質が、1−ピレンメタノールである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  20. 該促進物質が、9−アントラセンメタノールである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  21. 該促進物質が、9−フルオレンメタノールである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  22. 該促進物質が、3−ペリレンメタノールである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  23. 該少なくとも一つのエポキシ単量体が、少なくとも一つの多官能性エポキシ単量体を含むものである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  24. 該少なくとも一つのエポキシ単量体が、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、PC−1000、3,4−エポキシシクロへキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロへキシル−メチル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びシクロヘキセンオキシドから成る基より選択されるものである、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  25. 該少なくとも一つのエポキシ単量体の100重量部、
    該少なくとも一つのカチオン系光重合開始剤の0.01〜10重量部、及び
    該少なくとも一つの促進物質の0.01〜10重量部、
    を含む、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  26. 該少なくとも一つのエポキシ単量体の100重量部、
    該少なくとも一つのカチオン系光重合開始剤の0.01〜10重量部、及び
    該少なくとも一つの促進物質の0.01〜1重量部、
    を含む、請求項1に記載のカチオンによる光重合が可能な組成物。
  27. a.下記のものを含むカチオンによる光重合が可能な組成物を調製する工程、
    i. 少なくとも一つのエポキシ単量体、
    ii. 少なくとも一つのカチオン系光重合開始剤、及び
    iii. フェノール系レゾール又は式R1(CR2R3OH)nで表される化合 物を含む少なくとも一つの促進物質、
    上式中、R1はフェニル、多環式アリール、及び多環式へテロアリールから選択さ れ、それぞれが一つ又は複数電子供与基で置換されたフェニルで置換されても良く 、R2及びR3は、それぞれ水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、置換 されたアルキル、置換されたアリール及び置換されたアルキルアリールから選択さ れるものであり、そして
    nは1から10までの整数である、及び
    b.カチオンによる光重合が可能な組成物を照射する工程
    を含み、
    該工程により、エポキシ単量体が重合され、促進物質の少なくとも一部が該重合体に組み込まれるものである、カチオンによる光重合方法。
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