JP2006122017A - 磁気スポットアレイチップを用いる細胞の回収方法 - Google Patents

磁気スポットアレイチップを用いる細胞の回収方法 Download PDF

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勤 小幡
Toshifumi Fujishiro
敏史 藤城
Hiroyuki Kishi
裕幸 岸
Yoshiatsu Tokimitsu
善温 時光
Hirokichi Nakazato
博吉 中里
Masayoshi Hashioka
真義 橋岡
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Abstract

【課題】生体試料から、そこに含まれる個々細胞を生体試料から分離することなしにチップに固定し、1つ1つの細胞を個別に検出し、さらに検出された細胞を1つ単位で回収できる方法を提供する
【解決手段】基板の少なくとも一方の主表面に複数の磁性体からなるスポットを有するスポットアレイチップの前記スポットを磁化し、前記スポットを有するスポットアレイチップの表面に、磁気修飾した細胞を含む生体試料を置いて、前記スポットに前記磁気修飾した細胞を付着させ、スポットアレイチップの表面を洗浄して付着しなかった生体試料を除去し、前記スポットに付着させた磁気修飾した細胞を、吸引することで、または前記スポットを消磁することで回収することを含む細胞の回収方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気スポットアレイチップを用いる抗原特異的リンパ球などの生体細胞の回収方法に関する。特に、本発明の方法は、末梢血など血液試料から、Bリンパ球を精製操作などすることなく、磁気スポットアレイチップの各スポットに固定化し、スポットに固定した細胞の中から、所望の細胞を回収する方法に関する。
従来、抗原特異的リンパ球は、例えば、96穴プレートを用いて、1穴あたり約200,000個のリンパ球を加えて3日から1週間、抗原の存在下で培養することにより検出していた(非特許文献1および2)。この方法では、約200,000個というリンパ球集団の中に抗原特異的リンパ球が存在することは確認出来た。しかし、リンパ球集団中に存在する個々の抗原特異的リンパ球を同定することは出来なかった。
これに対して近年、蛍光色素で標識した抗原分子をリンパ球と混ぜ合わせることにより、抗原特異的リンパ球の抗原受容体に蛍光標識抗原を結合させ、蛍光標識抗原を結合したリンパ球を、フローサイトメータを用いることにより検出する方法が開発され利用されている(非特許文献3)。この方法では抗原に結合する1個のリンパ球を同定することが可能である。さらに抗原に結合する1個のリンパ球を分取することも可能である。
しかしながら、上記検出方法では、分取するためにはセルソーターという高価で複雑な機器が必要である上に、以下の問題もある。
(1)分取するための機器の条件設定が難しく、細胞を分取させるためには機器操作の熟練を要する。
(2)バックグラウンドが高いため抗原特異的リンパ球の頻度が0.1 %以下の場合は抗原特異的リンパ球を検出出来ない。
(3)細胞を分取する効率は低い。
(4)頻度の低い細胞を分取するには時間がかかる。
(5)抗原が結合することは確認出来るが、抗原が結合したリンパ球の反応を解析することは難しい。
別の抗原特異的リンパ球検出方法として、磁気ビーズに結合した抗原分子をリンパ球と混ぜ合わせることにより、抗原特異的リンパ球の抗原受容体に磁気ビーズ結合抗原を結合させ、磁石を用いて抗原特異的リンパ球を分取する方法も開発されている(非特許文献4)。
この方法では、複雑な装置は必要とせず、細胞の分取の時間は短時間であり、抗原が結合することも確認出来る。しかし、抗原が結合したリンパ球が抗原に反応(細胞内シグナル伝達、RNA合成、タンパク質合成などの細胞の代謝生理反応)するかを分析することは出来なかった。また、抗原特異的リンパ球の頻度が0.1 %以下の場合は抗原特異的リンパ球を検出出来なかった。
それらに対し、本発明者らはすでに、複雑な装置は必要とせず、細胞の分取の時間は短時間であり、抗原が結合することも確認出来、頻度の低い抗原特異的リンパ球(0.001%以上)も検出でき、抗原が結合したリンパ球が抗原に反応するかを解析することが出来、しかも抗原特異的リンパ球を分取出来る抗原特異的リンパ球検出法として、1つ1つのリンパ球の抗原特異性を個別に検出し、さらに検出された抗原特異的リンパ球を回収出来るマイクロウェルアレイチップを開発した(特許出願中)。
しかしながら、上記マイクロウェルアレイチップでは、ウェルへの細胞の効率よい注入には技術的に問題があること、及びウェルに格納したリンパ球を回収する際、細胞がウェルの側壁に付着して回収が困難になる場合があり、チップの材料や形状に検討を加える必要が出てきている。
また、ウェルへ注入するために用いる細胞(リンパ球)の生体試料からの単離にも、従来は非常に手間がかかっている。そこで、生体試料からの単離操作を行うことなくリンパ球を固定し、1つ1つのリンパ球の抗原特異性を個別に検出し、さらに検出された抗原特異リンパ球を回収する方法の出現が望まれている。
「リンパ球機能検索法」矢野純一、藤原道夫編著、中外医学社(1994年) 「免疫実験操作法I、II」右田俊介、紺田進、本庶佑、濱岡利之編集、南江堂 (1995年) Altman JD, Moss PA, Goulder PJ, Barouch DH, McHeyzer- Williams MG, Bell JI, McMichael AJ, Davis MM, Phenotypic analysis of antigen-specific T lymphocytes, Science, 274:94-96, 1996 Abts H, Emmerich M, Miltenyi S, Radbruch A, Tesch H, CD20 positive human B lymphocytes separated with the magnetic sorter (MACS) can be induced to proliferation and antibody secretion in vitro, Journal of Immunological Methods 125: 19-28, 1989.
そこで本発明の目的は、生体試料から、そこに含まれる個々細胞を生体試料から分離することなしにチップに固定し、1つ1つの細胞を個別に検出し、さらに検出された細胞を1つ単位で回収できる方法を提供することにある。
上記課題を解決するための発明は以下の通りである。
[請求項1]
基板の少なくとも一方の主表面に複数の磁性体からなるスポットを有するスポットアレイチップの前記スポットを磁化し、
前記スポットを有するスポットアレイチップの表面に、磁気修飾した細胞を含む生体試料を置いて、前記スポットに前記磁気修飾した細胞を付着させ、
スポットアレイチップの表面を洗浄して付着しなかった生体試料を除去し、
前記スポットに付着させた磁気修飾した細胞を、吸引することで、または前記スポットを消磁することで、回収する
ことを含む細胞の回収方法。
[請求項2]
磁気修飾した細胞を含む生体試料が、回収したい細胞に特異的な抗体を結合させた磁気ビーズを、細胞を含む生体試料と混合して、磁気ビーズを修飾した細胞を形成することで得る請求項1に記載の方法。
[請求項3]
回収したい細胞がリンパ球であり、細胞を含む生体試料が末梢血であり、リンパ球に特異的な抗体を結合させた磁気ビーズを、末梢血を含む試料と混合して、磁気ビーズを修飾したリンパ球を形成し、リンパ球を末梢血に含まれる他の細胞から回収する請求項1に記載の方法。
[請求項4]
前記スポットは、1つのスポットに1つの磁気修飾した細胞が付着する形状および寸法を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[請求項5]
前記スポットに付着させた磁気修飾した細胞の回収を、特定のスポットを消磁することで、特定の細胞を選択的に回収する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[請求項6]
細胞が特定の抗原で刺激されたBリンパ球であり、前記特定の抗原に特異的なBリンパ球を回収する請求項5に記載の方法。
本発明によれば、磁気スポットアレイチップを用い、かつ生体試料に含まれる細胞を磁気修飾して、生体試料に含まれる個々の細胞を生体試料から分離することなしに磁気スポットアレイチップの各スポットに固定し、固定した1つ1つの細胞を個別に検出し、さらに検出された細胞を1つ単位で回収できる方法を提供することができる。
その結果、例えば、検出され取り出された抗原特異的リンパ球から、抗原特異的抗体遺伝子やT細胞受容体遺伝子をクローニングすることも可能になる。さらに、例えば、抗原特異的抗体遺伝子がクローニング出来ると、それを用いて大量にヒト型モノクローナル抗体を生産することが出来る。この抗体を感染症などの患者に投与することにより、感染症などの治療、予防に用いることが出来ると考えられる。
[スポットアレイチップ]
本発明の方法に用いるスポットアレイチップは、基板の少なくとも一方の主表面に複数の磁性体からなるスポットを有する。後述するように、各スポットに磁気ビーズ修飾した1個の被検体生体細胞を磁力により固定する。そのため、前記スポットは、1つのスポットに1個の生体細胞のみが固定される形状及び寸法を有する。
スポットの形状や寸法には特に制限はないが、スポットの形状は、例えば円形であることが出来、円形以外に、複数の辺により構成される多角形(例えば長方形、六角形、八角形等)、楕円形などであることも出来、これらの形状の二つ以上を組み合わせた形状であることも出来る。例えば、一部が円形であり、残りが方形であることが出来る。スポットの表面は通常、平坦であるが、曲面(凸面や凹面)とすることも出来る。
スポットの形状や寸法は、スポットに固定されるべき細胞の種類(細胞の形状や寸法など)を考慮して、1つのスポットに1つの細胞が固定(付着)され、回収出来るように適宜決定される。
1つのスポットに1つの細胞が固定され、回収されるようにするためには、例えば、スポットの形状に内接する最大円の直径が、スポットに固定させようとする細胞の直径に対して0.1〜1.5倍の範囲、好ましくは0.2〜1.0倍の範囲、より好ましくは0.3〜0.8倍の範囲であることが適当である。
また、スポットの厚さ(高さ)は、スポットに固定しようとする細胞の直径に対して0.5 倍以下の範囲、好ましくは0.2倍の以下の範囲であることが適当である。
スポットが円形の場合、その寸法は、例えば、直径1〜100 μmであることが出来、細胞がBリンパ球の場合、好ましくは、直径1〜8 μm である。また、厚さは、例えば、0.1〜4μmであることが出来る。但し、スポットの寸法は、上述のように、スポットに固定し、回収しようとする生体細胞の直径とのスポットの寸法に対する好適な比を考慮して適宜決定する。
1つのスポットアレイチップが有するスポットの数は、特に制限はないが、生体細胞がリンパ球の場合、抗原特異的リンパ球の頻度が100,000個に1個から多い場合には約500個であるという観点から、1 cm2 あたり、例えば2,000〜1,000,000個の範囲であることが出来る。
スポットの材料は、磁気ビーズ修飾した細胞を固定し、回収するため、例えば、ニッケルや酸化鉄などの金属、合金、及び酸化物等の単層膜、あるいはそれらを複数組み合わせた多層膜等を挙げることができる。
図1は、本発明に用いるスポットアレイチップの実施形態例である。パイレックス基板1a上にパターニングされた磁性体薄膜1bを磁化させ、磁気ビーズ1cで修飾した生体細胞1dを磁力によって固定することが出来、必要に応じて生体細胞を回収することが出来る。
[細胞の回収方法]
まず、スポットアレイチップの各スポットを磁化する。
スポットの磁化は、以下のように行うことができる。永久磁石や電磁石によってチップに配列されたスポットに磁界を加える。このとき、磁力線は、スポットに収束していくのでスポット上の磁力は、スポットの無いところに比較して大きくなる。また、保持力の大きなスポット材料を選択することで、磁界を取り除いても磁力は保持される。スポットに加える磁界は、スポットに対して垂直でも水平でもかまわない。スポット上に細胞を固定するためには、垂直磁界によって磁化することが好ましい。
永久磁石としては、例えば、KS鋼、フェライト、ネオジム・鉄・ボロン、アルニコ、サマリウム・コバルト、プラセオジム等が挙げられる。
また、スポットを選択的に磁化することも可能である。例えば、スポットチップ全体に、一定の磁界をかけて磁化しておき、レーザー光をあてた部分だけを消磁して行くことによって、任意位置のスポットを磁化させることができる。
次いで、磁化したスポットを有するスポットアレイチップの表面に、磁気修飾した細胞を含む生体試料を置く。
磁気修飾した細胞を含む生体試料は、例えば、回収したい細胞に特異的な抗体を結合させた磁気ビーズを、細胞を含む試料と混合して、磁気ビーズを修飾した細胞を形成することで得ることができる。
より具体的には、回収したい細胞がBリンパ球であり、細胞を含む生体試料が末梢血であり、Bリンパ球特異的な抗体を結合させた磁気ビーズを、末梢血を含む試料と混合して、磁気ビーズを修飾したBリンパ球を形成することで、磁気修飾した細胞を含む生体試料を調製することができる。この方法によれば、Bリンパ球を末梢血から分離することなしに、末梢血に含まれる他の細胞から回収することができる。
Bリンパ球特異的な抗体を結合させた磁気ビーズとしては、例えば、フナコシ(株)抗CD20抗体標識磁気ビーズ(米国、Clemente Associates社製)、ダイナル社(ノルウェイ)抗CD19抗体標識磁気ビーズなどを挙げることができる。
生体試料は、上述のように、血液(末梢血)であることができ、細胞は、Bリンパ球以外に、Tリンパ球であることもできる。細胞は、それ以外に扁桃腺(リンパ節)、脾臓等のリンパ組織由来リンパ球、がん浸潤リンパ球などの病変部位浸潤リンパ球等を挙げることができ、各リンパ球は各組織を生体試料として得られる。
磁気修飾した細胞を含む生体試料を置くことで、磁化したスポットに磁気修飾した細胞を付着させる。次いで、スポットアレイチップの表面を洗浄して付着しなかった生体試料を除去する。例えば、洗浄水により生体試料を除去し、スポットに細胞が付着したスポットアレイチップを得る。洗浄水は例えば、Phosphate buffered saline (PBS)、RPMI1640、含血清PBS、含血清RPMI1640等であることができる。また、洗浄方法は、例えば、以下の方法であることができる。
1) チップ表面の液をピペットを用いて除去する。
2) 洗浄液をピペットを用いてチップに添加する。
3) 1)および2)を繰り返す。
次いで、スポットに付着させた細胞を、そのままの状態、或いはスポットを消磁することで、回収することができる。スポットの消磁は、例えば、以下の様に行うことができる。
チップを一様に加熱あるいは交流磁界に挿入することで消磁が可能である。しかしこの際は、すべてのスポットが消磁される。
また磁化されたスポットは、選択的に消磁することが可能である。その方法として、キューリー点以上に加熱することによって消磁する加熱法、交流磁界によって消磁をおこなう減磁界法が挙げられる。前者は、レーザー加熱法等により実現でき、後者は消磁コイルなどにより実現可能である。
さらに、本発明では、スポットに付着させた細胞の回収を、特定のスポットを消磁することで、特定の細胞を選択的に回収することができる。
この場合、スポットに細胞を付着させた後、例えば、細胞がBリンパ球の場合、スポットアレイチップに特定の抗原を含む溶液を散布して、Bリンパ球を抗原の存在下で培養して刺激し、この抗原に特異的に反応するBリンパ球を検出し、この抗原特異的Bリンパ球を選択的に回収することができる。
利用される抗原には、特に制限はないが、例えば、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、脂質、糖鎖、または有機高分子化合物(例えば、環境ホルモン)等であることができる。あるいは、細菌、ウィルス、自己抗原、がん抗原またはアレルゲン等であることができる。
細胞の培養は、例えば、スポットアレイチップの表面を培養液で覆い、室温あるいは37℃にて、空気中あるいはCO2インキュベータ内にて培養することで行うことができる。
抗原に反応する細胞の検出は、例えば、(1)Caイオン依存性蛍光色素を用いて行う、(2)抗原により刺激され活性化した被検体リンパ球細胞の表面に発現する活性化マーカータンパク質を指標として行う、(3)被検体リンパ球細胞内蛍光物質が発する蛍光の偏光度を指標として行うことができる。
より具体的には、例えば、Bリンパ球の抗原受容体(免疫グロブリン)に抗原が結合すると細胞内シグナル伝達が起こる。従って、細胞内シグナル伝達を種々の方法により検知することにより、抗原に反応する細胞を検出することができる。あるいは、例えば、Tリンパ球の抗原受容体に抗原が結合すると細胞内シグナル伝達が起こる。従って、細胞内シグナル伝達を種々の方法により検知することにより、抗原に反応する細胞を検出することができる。
細胞内シグナル伝達を検出することによる、抗原に反応する細胞の検出は、例えば、細胞内Caイオンの濃度変化をCaイオン依存性の蛍光色素を用いることにより行うことができる。
細胞内Caイオン濃度変化は、蛍光色素としてFura-2、Fluo-3あるいは Fluo-4を用い、検出装置として蛍光顕微鏡あるいはマイクロアレイスキャナーを用いる。
具体的には、Bリンパ球にCaイオン依存性蛍光色素であるFluo-3を導入する。次いで抗原でBリンパ球を刺激すると、Bリンパ球内Caイオン濃度が上昇する。その結果、CaイオンがCaイオン依存性蛍光色素に結合し、蛍光強度が増強される。Caイオン濃度が低いと青っぽい色、高いと赤っぽい色で示されている。この方法では、抗原で刺激されることにより細胞内Caイオンが上昇したBリンパ球(抗原特異的)を、スポットアレイチップを用いて検出できる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
(フォトリソグラフィ技術を利用した例)
基板、例えばガラス基板上に堆積したニッケル薄膜を半導体作製工程技術であるフォトリソグラフィ技術を利用してスポットアレイチップを作製する方法を図2に示す。
(1)ガラス基板2aを用意する。
(2)基板2a上に、例えば、磁性材料の一つであるニッケル材料を真空蒸着法あるいはスパッタリング法などによって堆積し、膜厚約100nmのニッケル薄膜2bを作製する。
(3)この表面上に、例えば東京応化工業(株)o−ナフトキノンジアジド−ノボラック系ポジ型フォトレジストOFPR-800 2cを塗布する。
(4)紫外線露光などによって直径10ミクロンのフォトレジストパターン2cを形成する。
(5)ニッケル・エッチャントである硝酸第2アンモニウムなどによって、ニッケル薄膜2bが露出した部分を選択的にエッチングする。
(6)レジスト剥離液などによってフォトレジスト2cを除去することによって、スポットアレイチップが完成する。
実施例2
(マスク蒸着法を利用した例)
基板、例えばガラス基板上にマスク蒸着法によってスポットアレイを作製する方法を図3に示す。
(1)ガラス基板3aを用意する。
(2)ガラス基板3a表面にスポット状の微細穴の開いたマスク3bを密着させ、薄膜作製装置にセッティングする。
(3)マスク3b付基板3a上に、例えば、磁性材料の一つであるニッケル材料を真空蒸着法あるいはスパッタリング法などによって堆積し、膜厚約100nmのニッケル薄膜3cを作製する。
(4)薄膜作製装置より基板を取り出し、マスクを取り外す。
(5)これにより、スポットアレイ3dが形成される。
以上の方法に作製したスポットアレイチップの磁化の方法を図4に示す。スポットアレイ4aは、図中矢印方向の磁界4bにさらすことで磁化される。磁界の方向4bは、チップ表面上に配置されたスポット4aに対して垂直あるいは平行でもよくスポットを磁化したい方向や細胞の固定化方法(4c、4d)によって適宜選択される。上記の磁化の方法としては、例えば、KS鋼、フェライト、ネオジム・鉄・ボロン、アルニコ、サマリウム・コバルト、プラセオジム等を材料とする永久磁石や、空芯コイルや磁気抵抗の少ない鉄芯を挿入したコイルによって構成される電磁石等によって形成される磁界中に挿入することなどが挙げられる。
磁化したスポットアレイチップに、磁気ビーズを結合させたBリンパ球を播種、採取する方法を図5とともに以下に示す。尚、図5の(A)は、下記の工程(2)についての説明図であり、(B)は、下記の工程(7) についての説明図である。
(1)末梢血をヘパリン採血したものを100μLチューブに入れ、そこへカルシウム指示薬Fluo-4/AM(Molecular Probe社)最終濃度4μM、CellTracker Orange(Molecular Probe社)最終濃度1μM、Pluronic F-127(Molecular Probe社)最終濃度0.02%となるように加え室温で30分インキュベーションした。この時同時に5μLの抗CD20抗体が結合した磁気ビーズ(250nm、Clemente Associates, Madison, CT)を加え、インキュベーションを行った。この操作により、細胞にFluo-4およびCellTracker Orangeを負荷し、同時にBリンパ球にのみ磁気ビーズが結合させることができる。細胞内に取り込まれなかったFluo-4、CellTracker OrangeはRPMI1640/10% FCS溶液で細胞洗浄することにより除去し、その後細胞をRPMI1640/10% FCS溶液に懸濁した。
(2)スポットアレイチップ5a上に、(1)で蛍光色素を付加しさらに磁気ビーズを結合させた血液検体を滴下し、チップ5aに対して一様な垂直磁界下に暴露し、スポット5bを表面に対して垂直方向に磁化させた。この操作によって磁気ビーズ修飾されたBリンパ球5cはスポット上に吸着される。なお、Bリンパ球5cの直径は約8ミクロンである。
(3)スポットアレイチップ5a上の不要な検体は、ピペットによる吸引操作や洗浄操作によって除去する。スポット5bは磁化されたままであるので、これらの操作によって吸着しているBリンパ球5cが取り除かれず、吸着していない不要な顆粒球、Tリンパ球等は除去される。以上(2)(3)の操作を適宜回数繰り返す。
(4)スポットアレイチップ5aをマイクロスキャナーCRBIOIIe-FITC(日立ソフトウェアエンジニアリング(株))に挿入し、解像度2.5μmでスキャンしデータを保存する(抗原刺激前の蛍光のデータ:A)。
(5)次に、スポットアレイチップ5a上のRPMI1640/10% FCS溶液を除き、そこへRPMI1640/10% FCS溶液に溶解させた抗原(10μg/mL)を加える。抗原を加えて1分後にスポットアレイチップをマイクロアレイスキャナーに挿入し、解像度2.5μmでスキャンしデータを保存する(抗原刺激後の蛍光のデータ:B)。
(6)ここで刺激前後の蛍光強度の比(B/A)を計算し、比の大きいスポットを特定する。このスポット上に抗原特異的Bリンパ球が存在する。
(7)スポット5bに固定された抗原特異的なBリンパ球5eをマイクロキャピラリーピペット5dで吸引回収する。あるいは、任意のスポット5bを消磁させ、洗浄により回収してもよいし、逆に必要のないBリンパ球5cが固定されたスポット5bを消磁させ、洗浄、目的のBリンパ球5eを残す方法でもよい。
図6 に、図5に示した、リンパ球細胞回収実験結果の例を示す。図6 (A) は回収前の蛍光顕微鏡像を示しており、10 μmφのスポットアレイ 6a に、直径約250 nm の磁気ビーズで修飾されたヒト検体リンパ球細胞 6b が固定されている。マイクロキャピラリーピペット 6c によって細胞を回収した後の観察図を、図6 (B) に示す。この時、リンパ球細胞 6b を固定する磁力はピペットの吸引圧力に対して十分低下しており、リンパ球細胞 6bがピペットにより回収された。
本発明のスポットアレイチップでは、細胞が確実に回収出来る細胞チップとして、免疫医療器具として将来需要が高まると考えられる。また、作製時に複雑で高価な設備を利用することなく大量生産することが出来るため、産業化も容易である。
スポットアレイチップを利用した磁気ビーズ修飾したリンパ球細胞を固定する手法を概念的に示した図。 実施例1における、基板上に磁性体薄膜を形成した後、フォトリソグラフィを利用してスポットアレイチップを得る手法の説明図。 実施例2における、蒸着マスクを利用したスポットアレイチップを得る手法の説明図。 スポットアレイチップの磁化の方法の説明図。 スポットアレイチップ上にBリンパ球を固定させ、回収する方法の説明図。 実施例 におけるスポットアレイチップ上に固定した検体リンパ球の回収前(A)と回収後(B)の顕微鏡写真。

Claims (6)

  1. 基板の少なくとも一方の主表面に複数の磁性体からなるスポットを有するスポットアレイチップの前記スポットを磁化し、
    前記スポットを有するスポットアレイチップの表面に、磁気修飾した細胞を含む生体試料を置いて、前記スポットに前記磁気修飾した細胞を付着させ、
    スポットアレイチップの表面を洗浄して付着しなかった生体試料を除去し、
    前記スポットに付着させた磁気修飾した細胞を、吸引することで、または前記スポットを消磁することで回収する
    ことを含む細胞の回収方法。
  2. 磁気修飾した細胞を含む生体試料が、回収したい細胞に特異的な抗体を結合させた磁気ビーズを、細胞を含む試料と混合して、磁気ビーズを修飾した細胞を形成することで得る請求項1に記載の方法。
  3. 回収したい細胞がリンパ球であり、細胞を含む生体試料が末梢血であり、リンパ球に特異的な抗体を結合させた磁気ビーズを、末梢血を含む試料と混合して、磁気ビーズを修飾したリンパ球を形成し、リンパ球を末梢血に含まれる他の細胞から回収する請求項1に記載の方法。
  4. 前記スポットは、1つのスポットに1つの磁気修飾した細胞が付着する形状および寸法を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記スポットに付着させた磁気修飾した細胞の回収を、特定のスポットを消磁することで、特定の細胞を選択的に回収する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 細胞が特定の抗原で刺激されたBリンパ球であり、前記特定の抗原に特異的なBリンパ球を回収する請求項5に記載の方法。

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