JP2006140357A - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

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広光 工藤
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Abstract

【課題】発光素子の製造プロセスを複雑にすることなく、しかも効果的に光散乱を生じさせる構造を素子内に設け、光取り出し効率を向上させること。
【解決手段】GaN系発光素子の素子構造において、n型層20、発光層30、p型層40を含んでなる積層体中に、発光層30以外の層として、光散乱層50を設け、該層50を構成する第一のGaN系結晶51と埋め込み層52との凹凸界面によって、発光層から発せられた光を散乱させる構成とする。光散乱層50は、サーファクタント処理されたベース面50Bに、屈折率n1の第一のGaN系結晶51が表面に突出部および/または陥凹部を有する形状に気相成長し、該結晶51が、第二のGaN系結晶(屈折率n2(≠n1))52によって埋め込まれた構造を持つ。該結晶51の表面の凹凸の高低差は、発光層30から発せられる光の層50内での波長の1/4以上とされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物半導体発光素子に関するものであり、とりわけ光取り出し効率が改善されたLEDの素子構造に関する。
窒化物半導体発光素子は、少なくとも発光層に窒化物半導体を用いた発光素子である。
窒化物半導体は、式AlInGa1−a−bN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)で決定される3族窒化物からなる化合物半導体である。前記式中の組成比a、bを選択することによって、例えば、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaNなど、2元〜4元の任意の混晶が得られる。ここで、3族元素の一部を、B(ホウ素)、Tl(タリウム)等で置換したものや、N(窒素)の一部をP(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)等で置換したものも、窒化物半導体に含まれる。
以下、窒化物半導体を「GaN系」とも略し、必要に応じて、GaN系結晶、GaN系発光素子、GaN系LEDなどのように用いて、従来技術および本発明の説明を行う。
GaN系LEDには、光取り出し効率が低いという問題がある。光取り出し効率とは、発光層で生じた光の総量のうち、どの程度の量の光が素子外へ取り出されているかを示す割合である。GaN系LEDの光取出し効率が低い原因は、次に述べるように、GaN系結晶の高い屈折率にある。
先ず、GaN系発光素子の素子構造は、基板上にGaN系結晶層を成長させてなるものであるが、最も好ましい基板材料として汎用されるサファイアは、GaN系結晶よりも屈折率が低い。一方、素子の上側では、素子を取り巻く材料や媒質〔例えば、パッシベーション膜(二酸化ケイ素など)、封止樹脂(エポキシ樹脂など)、空気(樹脂封止しない場合)など〕とGaN系結晶層が接することになるが、これらの材料や媒質も、殆どの場合、GaN系結晶より低い屈折率を有する。また、p側の電極として酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電膜材料からなる電極を用いる場合には、電極の屈折率がGaN系結晶よりも低くなる。
このように、発光構造の本体部分であるGaN系結晶層が、それよりも屈折率の低い物質によって上下から挟まれるために、発光層から発せられた光の一部は、GaN系結晶層を挟む両側の界面(例えば、〔基板とGaN系結晶層との界面〕と〔GaN系結晶層と空気との界面〕)で全反射され、多重反射によって素子内部に閉じ込められる。この光は、素子外に出ることなく、素子内部を伝播する間に内部吸収により減衰する。
また、フリップチップボンディング実装されるGaN系LEDでは、p側の電極がGaN系結晶層の一方の面に全面的に形成されるが(ITO等の透明導電膜を介して形成される場合もある)、この電極が光反射性とされるために、多重反射の問題が生じる。
このような多重反射の問題を解決し、光取り出し効率を向上させる方法として、素子内部に光の散乱を発生させ得る屈折率界面を設け、これによって多重反射の発生を阻害し、光をより多く素子外へと向わせる方法が公知となっている。
例えば、特許文献1の「光散乱を強化した発光素子」では、エッチングや選択成長によって形成した「テクスチャ加工層」と称する凹凸を素子内に設けることによって、光を散乱させている。
また、特許文献2の「発光素子、その製造方法およびLEDランプ」においても、高温処理によるピット、選択性エッチングによる凹凸、選択成長による凹凸を素子内に設け、光を散乱させて、光取り出し効率を向上させている。
また、特許文献3の「半導体発光素子」では、結晶成長の基礎となる面(基板面など)に凹凸加工を施し、GaN系結晶をファセット成長させることによってさらなる凹凸を作り出してこれを素子内に設け、光取り出し効率を向上させている。
しかしながら、上記従来の加工法(エッチング加工、マスクを用いた選択成長、基板面への凹凸加工など)により形成される光散乱構造は、いずれも素子の形成工程をより複雑にする。
特開2004−193619号公報 特開2004−200523号公報 特開2002−280611号公報 特開平10−79501号公報 特開平11−354842号公報 特開平11−354843号公報
本発明の課題は、発光素子の製造プロセスを複雑にすることなく、しかも効果的に光散乱を生じさせる構造を素子内に設け、光取り出し効率を向上させることである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、結晶成長のベースとなる表面(ベース面)をサーファクタント処理することによって微細なドット状の窒化物半導体結晶が形成される現象を、従来公知の用途である量子ドット構造の形成方法や、転位密度の低減された窒化物半導体結晶の成長方法として用いるのではなく、光散乱構造の形成方法として適用することに想到し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)窒化物半導体結晶層からなる積層体を有して構成されている窒化物半導体発光素子であって、該積層体内には、n型層、発光層、p型層が含まれており、かつ、発光層以外の層として、下記(A)の光散乱層が含まれており、
該光散乱層を構成する第一の窒化物半導体結晶と第二の窒化物半導体結晶との界面において、発光層から発せられた光が散乱する構成となっている、窒化物半導体発光素子。
(A)窒化物半導体結晶が2次元成長し得るベース面がサーファクタント処理され、該ベース面に、屈折率n1である第一の窒化物半導体結晶が、表面に突出部および/または陥凹部を有する形状に気相成長しており、かつ、該第一の窒化物半導体結晶は、屈折率n1とは異なる屈折率n2を持つ第二の窒化物半導体結晶によって埋め込まれている、光散乱層。
(2)上記第一の窒化物半導体結晶の表面が、上記発光層から発せられる光の波長の1/4以上の高低差を有する、上記(1)記載の窒化物半導体発光素子。
(3)上記(A)の光散乱層が、ベース面側を発光層とは反対の側に向けて、積層体内に位置している、上記(2)記載の窒化物半導体発光素子。
(4)上記(A)の光散乱層が、ベース面側を発光層の側に向けて、積層体内に位置している、上記(2)記載の窒化物半導体発光素子。
(5)n型層およびp型層の間を流れる当該窒化物半導体発光素子の駆動電流が、上記(A)の光散乱層を層厚方向に横切るように、該(A)の光散乱層が積層体内に位置している、上記(3)記載の窒化物半導体発光素子。
(6)当該窒化物半導体発光素子の光取り出し方向が、上記ベース面から離れる方向であって、屈折率n2<屈折率n1となるように、第一の窒化物半導体結晶と第二の窒化物半導体結晶とが選択されている、上記(2)〜(5)のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
(7)当該窒化物半導体発光素子の光取り出し方向が、上記ベース面に近づく方向であって、屈折率n1<屈折率n2となるように、第一の窒化物半導体結晶と第二の窒化物半導体結晶とが選択されている、上記(2)〜(5)のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
(8)上記第一の窒化物半導体結晶の突出部および/または陥凹部の側壁として斜めファセットが露出している、上記(2)〜(7)のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
2次元成長とは、当該発明の属する分野の技術用語であって、結晶成長が原子層毎に進行する、いわゆるステップフロー成長によって、平坦な成長面(2次元成長面)が保たれながら結晶成長が進む、結晶成長モードを意味する。
GaN系結晶の2次元成長が可能なベース面(例えばバッファ層が形成された基板表面や、基板上に2次元成長したGaN系結晶層の表面)に、サーファクタント処理を施したうえで、その上にGaN系結晶を気相成長させると、ベース面の表面エネルギーの低下によって、サーファクタント処理を行わない場合には2次元成長が発生する成長条件の下でも3次元的な成長が生じるようになり、ベース面上に微小なドット状のGaN系結晶が分散された構造が形成される。このようなサーファクタント処理による3次元的成長の促進作用は、ベース面がGaN系結晶で埋め尽くされるまで持続するので、上記の微小なドット状結晶を更に成長させると、よりサイズの大きな3次元構造の結晶を容易に形成することができる。
一方、ベース面がGaN系結晶で埋め尽くされると、2次元成長を阻害していた力が作用しなくなるので、適当な成長条件を用いることにより、2次元成長を発生させて、3次元的に成長した結晶を埋め込むことができる。
そこで、2次元成長が可能なベース面にサーファクタント処理を施し、その上に先ず屈折率n1を有する第一のGaN系結晶を3次元的に成長させ、この第一のGaN系結晶が適当な段階まで成長したところで、屈折率n2を有する第二のGaN系結晶の成長に切り替えると、第一のGaN系結晶の表面を埋め込むことができる。これによって、屈折率の異なる第一のGaN系結晶と第二のGaN系結晶とが、非平坦面状の界面で接合された構造を含む結晶層を形成することができる。
このような界面を内部に含む結晶層は、入射する光の伝播方向を反射や回折によって不規則的に変化させる働きを有する光散乱層として作用する。
本発明の窒化物半導体発光素子は、このような光散乱層を積層構造中に含むものであり、この光散乱層の作用によって素子内部で多重反射が生じ難くなるために、光取り出し効率が改善された発光素子となる。
また、付随的な効果として、結晶品質の改善が挙げられる。
この結晶品質の改善効果のひとつは、第一のGaN系結晶がベース面上に成長する段階で生じるものであり、サーファクタント処理によって、ベース面を提供する層(以下「ベース層」と呼ぶ)から第一のGaN系結晶への転位の伝播が抑制されることによる。
該改善効果の他のひとつは、ベース面上に成長するGaN系結晶の成長モードが3次元的な成長から2次元成長に変化する段階において、3次元的に成長した結晶の側壁部から横方向の結晶成長が生じ、その際に転位の進行方向が横方向に曲げられることによって生じるものである。
これらの現象により、光散乱層より上方では転位の密度が低減され、結晶品質が改善される。
従って、発光層を成長する前に光散乱層の成長を行うと、発光層の結晶品質が改善される効果もあり、好ましい。
GaN系発光素子の製品には、結晶成長の基礎となる基板が除去されたものや、表裏を逆にして実装(フリップチップ実装)されるものなどがあり、積層体の各層の上下位置関係や光取り出し方向などについての説明が不明確となる場合がある。本明細書では、そのような不明確さを解消するために、結晶成長の基礎となった基板が存在する側(存在した側)を、「下側」と呼び、各GaN系結晶層が「上側」へと積層されて積層体が形成されたものとしている。
また、本明細書において「横方向」という場合には、上記に定める上下方向(積層体の積層方向)と直交する方向をいう。
本発明によるGaN系発光素子は、図1(a)、(b)に構成例を示すように、GaN系結晶層からなる積層体Sを有して構成され、該積層体Sには、n型層20、発光層30、p型層40が含まれており、かつ、発光層以外の層として、上記(1)で示した上記(A)の光散乱層50が含まれている。以下、上記(A)の光散乱層を、単に「光散乱層」とも略す。
同図の例では、基板10の上に、n型層を基板側として積層体Sが成長した素子構造となっているが、p型、n型の上下や、基板の有無、電極の形成態様は限定されない。
本発明では、光散乱層50を構成する第一のGaN系結晶51と第二のGaN系結晶52の間の非平坦面状界面において、反射や回折が不規則的に生じることによって、発光層から発せられた光が散乱する構成となっており、これによって上述の効果が得られる。
上記(A)の光散乱層は、図2(a)に示すように、GaN系結晶が2次元的に結晶成長し得るベース面50Bにサーファクタント処理を施した後、図2(b)に示すように、この面50Bに第一のGaN系結晶51を気相成長させることによって、該第一のGaN系結晶51をベース面上に突出したドット状結晶として面50B上に離散的に成長させ、さらに、図2(c)に示すように、このドット状の第一のGaN系結晶51を埋め込んで覆うように第二のGaN系結晶52を成長させて得られるものである。
図では、説明のために、ドット状の第一のGaN系結晶51が、同じ大きさで均等に配置されたように描いているが、実際には配置パターンはランダムであって、形状や大きさも総じて同様ではあるが、厳密には互いに異なっている。他の図も同様である。
また、図2(b)の状態から、第一のGaN系結晶51を更に成長させると、図2(d)に示すように、ドット状の第一のGaN系結晶51によって、ベース面50Bが埋め尽くされる(ベース面50Bの露出面が無くなる)。この状態が達成された後の結晶成長に対しては、ベース面50Bをサーファクタント処理したことによる影響が及ばなくなるために、適当な成長条件を用いることにより2次元成長が発生する。
例えば、図2(d)の状態が達成された直後に、2次元成長が生じる成長条件を適用すると、ドット状の第一のGaN系結晶51同士の間の空間(凹部)が埋め込まれてゆくために、第一のGaN系結晶51は、図2(e)に示すように、表面に突出部および陥凹部を有する形状となる。このとき、埋め込みの速さに不均一が生じて、平坦面のところどころに窪み状の凹部が分散された形状が生じる場合もある。この段階で、成長させるGaN系結晶の組成を変化させ、第二のGaN系結晶52を成長面の表面が平坦となるまで成長させると、図2(f)に示す構造の光散乱層50が形成される。
図2(d)の状態が達成された後、引き続き、3次元的な結晶成長が促進される成長条件で第一のGaN系結晶の成長を行うこともできる。その場合、表面に平坦部分を生じることなく、ドット状の第一のGaN系結晶が一体化してゆき、表面の凹凸形状を維持したまま、厚さ(高さ)方向に成長する。その後、成長する結晶を第二のGaN系結晶に切り替え、また、成長条件を2次元成長が生じる条件に変化させれば、第二のGaN系結晶が第一のGaN系結晶を埋め込んで平坦化した構造が得られる。
上記のように形成される光散乱層50は、第一のGaN系結晶51の表面が、発光層から発せられる光の波長の1/4以上の高低差を有するように形成することが好ましい。
第一のGaN系結晶51の成長段階が、図2(b)または図2(d)に示す段階のときには、表面の高低差とは、ベース面50Bと、ドット状の第一のGaN系結晶(突出部)51の頂部との高低差である。
第一のGaN系結晶51の成長段階が、図2(e)に示す段階のときには、表面の高低差とは、第一のGaN系結晶51の表面の陥凹部の底部と突出部の頂部との間の高低差である。
第一のGaN系結晶51の表面の高低差を発光層から発せられる光の波長の1/4以上にすると、突出部や陥凹部の側壁面がこの光を反射または回折させる作用が強くなるために、発光層から発せられる光に対する散乱効果が強くなる。
ここでいう、発光層から発せられる光の波長とは、光散乱層の内部における波長を意味しており、空気中における波長を、光散乱層を構成する窒化物半導体の屈折率で除した長さとなる。
上記光散乱層の成長の基礎となるベース面は、GaN系結晶の2次元成長が可能な面であればよく、積層体内のいずれかのGaN系結晶層の上面や、基板上に形成された、GaN系結晶の成長に適したバッファ層の表面が例示される。
ベース面は、上記光散乱層を形成する際に存在していればよく、上記光散乱層が形成された後、ベース面を提供する層は、素子形成のプロセスにおいて除去されてもよい。例えば、基板上に形成されたバッファ層の表面をベース面として、上記光散乱層を形成し、さらに必要なGaN系結晶層を順次成長させて積層体とし、該積層体の最上面に別途準備した支持基板を接合し、最初の基板を除去する態様などが挙げられる。
サーファクタントは、GaN系結晶層を成長させる際に、ベース面の表面エネルギーを低下させることによって、成長するGaN系結晶に対するベース面の濡れ性を低くし、2次元成長を阻害するように、即ち、3次元成長(=島状の成長)を促進させるように作用する物質である。
サーファクタントとして使用可能な材料は、上記のような作用を示す物質であればよいが、具体的には、テトラエチルシラン、シラン、ジシラン、シクロペンタジエニルマグネシウム等が例示される。
サーファクタント処理とは、ガス状としたサーファクタントをベース面に接触させて、該ベース面にサーファクタントまたは、その分解により生じる原子、分子を残留させる処理である。
本発明でいうサーファクタント処理は、前記特許文献4〜6に記載された従来公知の量子ドット形成方法において行われている、サーファクタント(特許文献5および6ではアンチサーファクタントと称されている)を表面に作用させる処理と同じ処理であり、その詳細な手法や、処理条件等については、これらの特許文献を参照することができる。
一例を挙げると、基板上に成長したGaN系結晶の表面のサーファクタント処理として、H(水素ガス)をキャリアガスとしてテトラエチルシランを該表面に接触させる方法がある。この方法では、基板は、結晶成長炉内のサセプタ上に設置されて、GaN系結晶の成長温度に加熱され、テトラエチルシランは、密閉容器中で−12℃に冷却されて液体状とされ、そこに水素ガスをバブリングさせることによりガス状とされ、上記GaN系結晶の表面に供給される。
この方法において、GaN系結晶表面のサーファクタント処理の程度は、基板に供給するテトラエチルシランの量を変化させることにより調整できる。具体的には、例えば、テトラエチルシランの入った密閉容器にバブリングするキャリアガスの流量を変化させることによって該調整を行うことができる。
サーファクタント処理したベース面上に第一のGaN系結晶を成長する際に用いる成長条件は、サーファクタント処理を行わなければ2次元成長が生じる成長条件であってもよいし、サーファクタント処理を行わない場合においても3次元的な成長が生じる成長条件(3次元的成長を積極的に促進する成長条件)であってもよく、限定はない。後者の成長条件を用いると、第一のGaN系結晶が、後述する六角錘形状に成長し易くなる。
第一のGaN系結晶は、サーファタクタント処理したベース面上に、微小なドット状結晶として発生し、その後は、このドット状結晶を種として成長する。従って、ベース層から第一のGaN系結晶への転位の伝播は、実質的に、上記微小なドット状結晶が成長する段階においてのみ生じるので、第一のGaN系結晶の転位密度が低減されることになる。
サーファタクタント処理されたベース面上に、第一のGaN系結晶がドット状に成長するとき、底面が正六角形で、頂部が尖った六角錐形状、または該六角錘の頂部が切り取られて平坦面とされた形状(六角錘台形状)が、安定な形状として生じる場合がある。この場合、側壁面として露出され易い斜めファセットは、例えば、{1−101}ファセットである。このファセットは、ベース面(=基板面に平行な面)に対する角度が約60°となる。また、{11−22}ファセットが露出されることもある。
ドット状結晶が六角錐形状または六角錘台形状となるか、また六角錘台形状となる場合のアスペクト比(幅と高さの比)は、結晶の横方向と高さ方向の成長速度の比率により定まる。一般に、GaN系結晶は、成長温度が低いほど、雰囲気中の水素濃度が高いほど、成長雰囲気圧力が高いほど、またGaN系半導体に含まれるAlやInの組成比が高いほど、横方向の成長速度が低くなり、高さ方向の成長が促進される傾向(=3次元的に成長する傾向)がある。横方向の成長速度に対して高さ方向の成長速度が大きい程、頂面の面積が小さい、六角錘、または六角錘に近い形状に成長する。
そこで、成長条件やGaN系結晶の組成を制御することにより、ドット状結晶を意図的に六角錘形状や六角錘台形状に成長させることもできる。そのためには、成長温度を1000℃未満、雰囲気中の水素濃度を50%以上、成長雰囲気圧力を600Torr以上とすることが好ましい。
六角錘形状や六角錘台形状は、基板表面に平行な表面の面積がより小さいために、多重反射の抑制に有効であり、また、底部と頂部の高低差が大きくなるために、光散乱に有効な形状である。
上述のように、サーファクタント処理されたベース面上に第一のGaN系結晶を成長すると、初期には、量子効果が生じる程に微小なドット状の結晶が生じるが、やがて、これが大きく成長し(隣接するドット状結晶との合体・融合によるものを含む)、ドット状結晶によってベース面上が密に埋め尽くされた状態に達する。
この過程で第一のGaN系結晶の成長を止め、第二のGaN系結晶の成長に切り替える場合、これらのGaN系結晶の界面で光散乱が効果的に生じるようにするためには、第一のGaN系結晶からなるドット状結晶のベース面からの高さが、発光層で発せられる光の波長の1/4以上となるまで、第一のGaN系結晶の成長を行うようにする。光散乱をより効果的に生ぜしめるには、この高さを該波長の1/2以上とすることがより好ましく、該波長と同程度以上とすることが更に好ましい。
ここで、発光層で発せられる光の波長とは、上述のように、光散乱層中での波長である。一方、「発光素子の発光波長」という場合には、通常は、空気中における波長を指すので、例えば、発光波長(空気中)を400nmとした場合、その光の光散乱層中での波長は、GaN系結晶の屈折率をGaNの屈折率である約2.5として計算すると、約160nm(=400nm÷約2.5)となる。このような波長の光に対しては、上記ドット状結晶の高さを、この波長約160nmの1/4程度以上、即ち、40nm以上とすることによって、散乱現象を発生させることができる。そして、より好ましい高さは80nm以上、更に好ましい高さは160nm以上となる。
ドット状結晶の高さは、SEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定可能である。所定の成長条件を用いて、成長時間を変えながら第一のGaN系結晶を成長させた試料を作製し、その高さを測定すれば、当該成長条件での成長速度を求めることができる。このようにして求めた成長速度から、ドット状結晶を所望の高さに成長するのに必要な時間を決定することができる。
GaN系発光素子の発光波長は、通常の製品では360nm〜550nm程度であるから、それぞれの波長に応じて最適なドット状結晶体の高さを選択すればよい。
ドット状結晶がベース面上を密に埋めた状態が形成された後も、第一のGaN系結晶の成長を続けた場合について説明する。
サーファクタント処理されたベース面が第一のGaN系結晶で埋め尽くされると、2次元成長を阻害していた要因が実質的になくなるので、成長条件を適当に設定することで、2次元成長を発生させることができる。成長モードを2次元成長に切り替えると、それまで3次元的に成長していた結晶の側壁(例えば、斜めファセット)から横方向成長が発生して、第一のGaN系結晶の表面の陥凹部が埋め込まれてゆき、最終的には、平坦な二次元成長面が形成される。
この過程で第一のGaN系結晶の成長を止め、第二のGaN系結晶の成長に切り替える場合、これらのGaN系結晶の界面で光散乱が効果的に生じるようにするためには、上記陥凹部の深さが、発光層で発せられる光の波長の1/4以上であるときに第一のGaN系結晶の成長を止め、第二のGaN系結晶の成長に切り替えるようにする。光散乱をより効果的に生ぜしめるには、この深さを該波長の1/2以上とすることがより好ましく、該波長と同程度以上とすることが更に好ましい。
第一のGaN系結晶から第二のGaN系結晶への成長の切り替えをどの段階で行う場合であっても、両結晶の界面の形状は、第一のGaN系結晶をどこまで成長させるかによって定まり、第二のGaN系結晶の成長条件には実質的に影響されない。
そこで、第二のGaN系結晶の成長条件は、製造効率を向上させる観点から、表面の平坦化が早くなる条件とすることが好ましい。
表面の平坦化が早くなる成長条件とは、横方向の成長速度がより速い成長条件であり、前述の、ドット状結晶の高さ方向の成長が促進される成長条件と反対の条件となる。即ち、成長温度がより高く、雰囲気中の水素濃度がより低く、また、成長雰囲気圧力がより低い成長条件である。
また、GaN系結晶中のAlやInの組成比が低い程、表面の平坦化は早くなる。
サーファクタント処理したベース面上に第一のGaN系結晶を成長するとき、初期に形成される微結晶の分布密度を低く抑えると、ベース面がドット状結晶により埋め尽くされるまでの間に、ベース面のサーファクタント処理により生じる3次元的成長の促進効果を有効に利用して、個々のドット状結晶を大きく成長させることができる。
上記微結晶の分布密度を制御する方法としては、例えば、上記特許文献4を参照することができる。ベース面のサーファクタント処理の程度、第一のGaN系結晶の成長温度により、微結晶の分布密度を10〜1010cm−2の範囲で制御することができる。サーファクタント処理の程度が高い程、また成長温度が高い程、ベース面上の微結晶の分布密度は、低くなる。
上記の分布密度範囲では、微結晶1個あたりの平均的な占有面積が0.01μm〜10μmとなるために、前述の{1−101}ファセットが側壁として露出された六角錘形状のドットであれば、ベース面がドット状結晶に埋め尽くされる前に、高さ40nm以上に成長させることが十分可能となる。
第一のGaN系結晶、第二のGaN系結晶は、互いに屈折率が異なるように組成を選択すればよい。好ましい屈折率差は0.01以上、より好ましくは0.05以上であり、特に好ましくは0.1以上である。例えば、第一、第二のGaN系結晶を共にAlGaNで構成する場合、AlGaNは屈折率を、AlNの約2.0から、GaNの約2.5まで変化させることができるので、最大で約0.5の屈折率差の界面を形成することができる。
ベース層、第一のGaN系結晶、第二のGaN系結晶へのドーピングは導電性を制御する目的で任意に行ってよい。また、Siは結晶の高さ方向(厚さ方向)の成長速度を増加させる効果を有するので、この目的のために、第一のGaN系結晶の成長時に添加してもよい。一方、Mgは横方向成長速度を増加させる効果を有するので、この目的のために第二のGaN系結晶の成長時に添加してもよい。
上記(A)の光散乱層は、積層体中のどの位置に形成してもよい。成長の順序でいうと、図1(a)に示すように、発光層30の成長の前に(即ち、基板側に)形成してもよいし、図1(b)に示すように、発光層30の成長の後に(即ち、基板から遠い側に)形成してもよい。前者の場合には、上記(A)の光散乱層は、ベース面側を、発光層とは反対の側に向けて、積層体内に位置することになり、後者の場合には、上記(A)の光散乱層は、ベース面側を、発光層の側に向けて、積層体内に位置することになる。
前述のように、上記(A)の光散乱層は、該光散乱層よりも上に積層される層への転位の伝播を抑制することから、光散乱層を発光層30の成長の前に形成すると発光層の結晶品質が良好となり、好ましい。
この場合、特に、n型コンタクト層よりも上に、上記(A)の光散乱層を形成することが好ましい。n型コンタクト層とはn側の電極が形成される層で、導電性を高くするとともに電極との接触抵抗を低くする必要があることから、Si等のn型不純物が高濃度でドープされるので、結晶品質が低くなる傾向がある。そこで、n型コンタクト層よりも上に光散乱層を形成すると、n型コンタクト層の結晶品質が発光層の結晶品質に与える悪影響を軽減することができる。
なお、n型コンタクト層と発光層の間は、発光素子の駆動電流が流れる経路内であるが、このような導電経路内に上記(A)の光散乱層を形成することができるのは、サーファクタント処理では、実質的に絶縁膜として働く層が形成されないからである。
これに対して、例えば、凹凸状の結晶を選択成長により形成するためにSiO等からなるマスクを用いる従来技術にあっては、比較的厚いマスクが絶縁体として作用するので、導電経路内に適用すると発光が制限されるという問題があった。
上記(A)の光散乱層において、光取り出し効率を向上させる観点から、第一のGaN系結晶の屈折率n1と、第二のGaN系結晶の屈折率n2との大小関係は、発光素子の光取り出し方向に応じて次のように定めることが好ましい。
(a)図3(a)に示すように、ベース面から離れる方向を発光素子の光取り出し方向とする場合には、n2<n1とする。
(b)図3(b)に示すように、ベース面に近づく方向を発光素子の光取り出し方向とする場合には、n1<n2とする。
この関係は、上記(A)の光散乱層が、発光層の上下いずれに形成される場合であっても、同じである。この理由は、次のように説明される。
〔n2<n1の場合〕
光散乱層に対して、ベース面側から入射する光は進入し易く、ベース面とは反対側の面から入射する光は反射され易い。なぜなら、光散乱層のベース面側の表面には屈折率の高い第一のGaN系結晶が存在する一方、ベース面側と反対の表面は、屈折率の低い第二のGaN系結晶からなるためである。
また、同じ理由により、一旦、光散乱層内に進入した光は、ベース面側からは出射され難く、ベース面側と反対側の面から出射され易い。
一方、光散乱層内で第一のGaN系結晶から第二のGaN系結晶に向かって進む光は、屈折率の大小関係からすると両結晶の界面で反射され易いが、この界面は光散乱性とされるので、この傾向が緩和される。
従って、以上を総合すると、n2<n1とされた光散乱層は、ベース面側から入射する光を透過させ、ベース面側と反対の方向から入射する光を反射する傾向(即ち、ベース面から離れる方向に進む光を透過させ、ベース面に近づく方向に進む光を反射する傾向)を有する。
よって、ベース面から離れる方向を光取り出し方向とする発光素子においては、n2<n1とすることが光取り出し効率の点で有利となる。
〔n1<n2の場合〕
光散乱層に対して、ベース面側から入射する光は反射され易く、ベース面とは反対側の面から入射する光は進入し易い。なぜなら、光散乱層のベース面側の表面には屈折率の低い第一のGaN系結晶が存在する一方、ベース面側と反対の表面は、屈折率の高い第二のGaN系結晶からなるためである。
また、同じ理由により、一旦、光散乱層内に進入した光は、ベース面側から出射され易く、ベース面側と反対側の面からは出射され難い。
一方、光散乱層内で第二のGaN系結晶から第一のGaN系結晶に向かって進む光は、屈折率の大小関係からすると両結晶の界面で反射され易いが、この界面は光散乱性とされるので、この傾向が緩和される。
従って、以上を総合すると、n1<n2とされた光散乱層は、ベース面側から入射する光を反射し、ベース面側と反対の方向から入射する光を透過する傾向(即ち、ベース面に近づく方向に進む光を透過させ、ベース面から離れる方向に進む光を反射する傾向)を有する。
従って、ベース面に近づく方向を光取り出し方向とする発光素子においては、n1<n2とすることが光取り出し効率の点で有利となる。
本発明に係る窒化物半導体素子においては、発光層の上面をベース面として、サーファクタント処理し、その上に第一のGaN系結晶および第二のGaN系結晶を成長して上記(A)の光散乱層を形成してもよい。この場合、この光散乱層にp型不純物をドープしてp型クラッドとし、その上により多量のp型不純物をドープしたp型コンタクト層を形成してもよい。
発光素子構造を構成するための発光層以外の層、例えばn型、p型のコンタクト層やクラッド層は、ベース層や上記(A)の光散乱層にその働きを持たせてもよいし、あるいはベース層や光散乱層とは別途形成してもよい。
図1(a)の素子構造は、下側から順に〔サファイア基板10/アンドープGaN層L/光散乱層50/SiドープGaN層20/発光層30/MgドープAlGaN層41/MgドープGaN層42〕となっており、アンドープGaN層Lの上面がベース面とされ、光散乱層50もアンドープとされている。
また、図1(b)の素子構造は、下側から順に〔サファイア基板10/アンドープGaN層L/SiドープGaN層20/発光層30/MgドープAlGaN層41/光散乱層50/MgドープGaN層42〕となっており、MgドープAlGaN層41の上面がベース面とされ、光散乱層50もMgドープによりp型とされている。
n型層、発光層、p型層の積層順は、先にn型層を積層することが好ましい。p型層の導電率を十分高くするには多量のドーパントを添加する必要があるため、p型層は結晶品質が悪くなりがちであるが、結晶品質の悪い層を先に成長すると、その上に成長する結晶層の品質にも悪影響を及ぼすためである。
光取り出し方向を上方とする場合、上記好ましい積層順によれば、発光層の上に導電性の低いp型層を形成することになるため、GaN系結晶層の最上層の上面には、その全面を覆うように光透過性のp側電極を形成するのが好ましい。
なお、一般に、p側電極を形成するGaN系結晶層の最上層はp型のコンタクト層とされるが、更に、p側電極との間に、n型のトンネリング層や、p型不純物とn型不純物の共ドープ層を介在させてもよい。
光透過性電極としては、金属薄膜からなる透明電極、ITO等の酸化物半導体からなる透明電極、厚膜金属層に光取り出し用の開口部が設けられた開口電極等が例示される。透明電極に開口部を形成してもよい。
開口電極を用いた場合、GaN系結晶が、開口部において、屈折率の低い空気、樹脂材料またはパッシベーション膜と直に接する。また、金属薄膜からなる透明電極を用いた場合は、p型層の表面全面で、薄い金属層を介してGaN結晶が空気、樹脂材料またはパッシベーション膜と接する。よって、これらの電極を用いた場合には、p型層の表面で屈折率差による反射が生じ易いので、本発明が特に有用となる。
光取り出し方向を下方とする場合、基板を残したまま素子化する場合には、透明基板を用いる必要がある。
光取り出し方向がいずれであるかによらず、また、基板が透明基板、不透明基板であるかによらず、GaN系半導体結晶層の成長後、基板を除去することも可能である。基板をベース層とする場合も同様に、基板を除去することができる。
上記(A)の光散乱層は、ひとつの素子内に複数含まれてもよい。発光層の一方の側に複数あってもよいし、発光層の両側にそれぞれあってもよい。
発光層よりも上側の層をベース層として、その上面にサーファクタント処理を行った後、第一のGaN系結晶を突出部および/または陥凹部を表面に有する形状に成長させ、第二のGaN系結晶を形成しないで得られる凹凸表面を、光取り出し面としてもよい。この位置に凹凸を形成する場合に、サーファクタント処理を用いることの利点は、発光層の下に光散乱層を形成するときの利点と同じである。
光透過性のp側電極をこの表面に形成する場合、第一のGaN系結晶にp型不純物をドープしてp型とすればよい。あるいは、ベース層をp型とし、アンドープまたはp型ドープした第一のGaN系結晶を、ベース層を完全に覆わないように、離散的なドット状に形成してもよい。また、サーファクタントとしてp型不純物であるマグネシウムのドーピングに用いられるビスシクロペンタジエニルマグネシウム等を好ましく用いることができる。
発光層よりも上側のp型層をベース層として、その上面にサーファクタント処理を行ったうえで、第一のGaN系結晶を、表面に突出部および/または陥凹部を有する形状に成長させた後、第二のGaN系結晶を形成しないで得られる凹凸表面を光取り出し面とする態様において、第一のGaN系結晶をn型ドーピングによりn型とし、その凹凸表面を埋め込むようにITO(酸化インジウム錫)、ZnO等の酸化物半導体からなる透明電極を形成することができる。
この場合、サーファクタントとしてSiを含む物質を用いて、p型層および第一のGaN系結晶よりも抵抗値の低い、Siからなる低抵抗領域がp型層の表面に形成されるように、サーファクタント処理を行う。このような低抵抗領域を介してp型層上にn型層を形成すると、このp型層とn型層の界面をオーミック性とすることができ、n型層の上に形成した酸化物半導体電極からp型層に電流を供給可能となる(特開2004−179369号公報を参照できる)。
この態様では光取り出し方向がベース面から離れる方向であるが、ITOやZnOはGaN系結晶よりも屈折率が低いことから、ITOやZnOで第一のGaN系結晶を埋め込むことは、光取り出し効率の向上のために好ましい構成となる。
基板の材料は、GaN系結晶がエピタキシャル成長し得るものであればよく、例えば、サファイア(C面、A面、R面)、SiC(6H、4H、3C)、GaN、AlN、Si、スピネル、ZnO、GaAs、NGOなどが挙げられる。
サファイア基板は、GaN系結晶を成長させるための基板としては好ましいが、GaN系結晶との屈折率差が大きいことから光取り出し効率上の問題を有しており、本発明の有用性が顕著に示される基板である。
一方、SiCは屈折率がGaNと近い(GaNよりもやや高い)ので、SiC基板を用いた場合には、GaN系結晶層と基板との界面での反射の問題は小さくなるが、SiC基板の下面における反射(反射性の電極が形成される場合には、該電極による反射)のために、やはり多重反射の問題が生じる。また、可視光を透過しないSiやGaAsからなる基板を用いた場合も、基板の表面は鏡面研磨により反射性が高くなるので、多重反射の問題が生じる。従って、これらの基板を用いた場合においても、本発明が有用となる。
実施例1
(LEDウエハの作製)
直径2インチ、厚さ約300μmのC面サファイア基板を、MOVPE装置の成長炉内に設けられたサセプタに装着し、水素雰囲気下で基板温度を1100℃まで上昇させて、表面のサーマルクリーニングを行った。
次に、基板温度を330℃まで下げ、3族原料としてトリメチルガリウム(TMG)およびトリメチルアルミニウム(TMA)、5族原料としてアンモニアを用いて、AlGaN低温バッファ層を20nm成長させた。なお、この工程以降、原料およびサーファクタントのキャリアガスには水素ガスを用いるとともに、原料ガスの流れを整えるために、サブフローガスとして窒素ガスを成長炉内に流した。
次に、基板温度を1000℃に上げ、原料としてTMG、アンモニアを供給し、アンドープGaN層を2μm成長させた。
次に、TMG、アンモニアの供給を停止し、サーファクタントとして、ガス状にしたテトラエチルシランを成長炉内に供給し、アンドープGaN層の表面に接触させた。テトラエチルシランは密閉容器中で−12℃に冷却し、水素ガスを流量30cm/minで供給してバブリングすることによりガス状として、成長炉内に供給した。
テトラエチルシランの供給を停止した後、TMG、TMA(トリメチルアルミニウム)、アンモニアを供給し、アンドープAl0.5Ga0.5Nを、ドット状に成長させた。このときの成長時間は、ドットの高さが200nmとなるように決定した。
次に、TMAの供給を停止し、アンドープGaNを、ドット状に成長したAl0.5Ga0.5Nを埋め込むように成長した。このアンドープGaNは、先に成長したアンドープGaN層のサーファクタント処理された表面からの膜厚が2μmとなるようにした。
次に、シランを供給して、Si濃度が5×1018cm−3のSiドープGaN層を2μm成長した。
次に、基板温度を800℃に低下させて、GaN障壁層と、InGaN井戸層(発光波長405nm)を各10層交互に積層してなるMQW(多重量子井戸)構造の発光層を形成した。井戸層成長時のIn原料にはトリメチルインジウムを用いた。
次に、基板温度を1000℃に上げ、Mg原料のビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム(EtCpMg)と、TMG、TMA、アンモニアを供給し、Mg濃度が5×1019cm−3のMgドープAlGaN層を50nm成長させた。
次に、TMAの供給を停止して、Mg濃度が1×1020cm−3のMgドープGaN層を100nm成長させた。
このようにして発光波長405nmの近紫外LED構造が形成されたウエハを得た。
(p側電極の形成)
p側電極は開口電極とした。
電極膜の形成に先立ち、MgドープGaN層の上面にフォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィ技法を用いて、開口電極の形状にMgドープGaN層の表面が露出した窓部を、このフォトレジスト膜に形成した。
開口電極は、チップ化したときに、MgドープGaN層の上面をほぼ全面的に覆う大きさとし、6μm×6μmの正方形状の開口部が、縦横に間隔2μmで正方行列状に配列されたパターン(電極部分が正方格子状となるパターン)とした。
次に、露出したMgドープGaN層の表面と、フォトレジスト膜の上に、電子ビーム蒸着法を用いて、膜厚1nmのNi膜と膜厚250nmのAu膜をこの順に積層し、その後、フォトレジスト膜をリフトオフすることによって、MgドープGaN層の表面に正方格子状の電極が形成された。
p側電極の表面には、更に、膜厚20nmのTi膜と膜厚400nmのAu膜とをこの順に積層した、ワイヤボンディング用のパッド電極を形成した。後に、p側電極とMgドープGaN層とのオーミック接触を促進させるために、500℃にて5分間保持する熱処理を行った。
(n側電極の形成)
n側電極の形成は、LEDウエハの、GaN系結晶の積層体を形成した側から、MgドープGaN層、MgドープAlGaN層、発光層の一部を反応性イオンエッチングにて除去し、SiドープGaNが露出された凹部を形成した後、この露出されたSiドープGaN層の表面に、電子ビーム蒸着法にて膜厚50nmのAl膜、膜厚30nmのTi膜、膜厚400nmのAu膜を、この順に積層することにより行った。その後、SiドープGaN層とのオーミック接触を促進させるために、500℃にて5分間保持する熱処理を行った(上記p側電極に対する処理と同時に行った)。
n側電極の形成後、サファイア基板の裏面を厚さ90μmとなるまで研磨し、通常のスクライビングおよびブレーキングによって素子分離を行い、350μm角のLEDチップを得た。
比較例1
上記実施例1において、アンドープGaN層表面のテトラエチルシラン処理とドット状のアンドープAl0.5Ga0.5Nの成長を行わないで、AlGaNバッファ層上にアンドープGaN層を4μm成長し、続けてSiドープGaN層を成長したこと以外は、上記実施例1と同様の工程にてLEDチップ(従来のLED)を作製した。
(評価)
上記手順で作製したLEDチップをステム台にダイボンドした後、ワイヤボンディングにより通電可能な状態とし、実施例1、比較例1のそれぞれのLEDの素子特性を評価した。
その結果、実施例品と比較例品は、順方向電圧(20mA通電時)についてはほぼ同じ(約3.4V)であったが、積分球を用いて測定した出力(20mA通電時)は、実施例品の方が比較例品よりも約15%増加していた。
実施例2
本実施例では、Ni(下層)/Au(表層)からなるp側電極を、開口部を形成することなく、チップ化後のMgドープGaN層の上面をほぼ全面的に覆う大きさに形成するとともに、該p側電極の表面のパッド電極を省略したこと以外は、実施例1と同様の方法でLEDチップを作製した。
比較例2
上記実施例2において、アンドープGaN層表面のテトラエチルシラン処理とドット状のアンドープAl0.5Ga0.5Nの成長を行わないで、AlGaNバッファ層上にアンドープGaN層を4μm成長し、続けてSiドープGaN層を成長したこと以外は、上記実施例2と同様の工程にてLEDチップ(従来のLED)を作製した。
(評価)
得られたLEDチップを、リード電極パターンが形成されたセラミックパッケージ上に、p側電極およびn側電極が下側となるようにフリップチップボンディングし、実施例2、比較例2のそれぞれのLEDの素子特性を評価した。
その結果、実施例品と比較例品は、順方向電圧(20mA通電時)はほぼ同じ(約3.3V)であったが、積分球を用いて測定した出力(20mA通電時)は、実施例品の方が比較例品よりも約20%増加していた。
実施例1の場合よりも、比較例品に対する出力増加の割合が大きくなったが、これは、チップの光取り出し方向が、サーファクタント処理のベース面に相当するアンドープGaN層の上側表面に近づく方向であり、かつ、アンドープGaN層の表面にドット状に形成されたアンドープAl0.5Ga0.5Nの屈折率が、これを埋め込んで成長したアンドープGaNの屈折率よりも小さいことから、光取り出し効率上、より好ましい構成となったためと考えられる。
実施例3
先ず、アンドープGaN層表面のテトラエチルシラン処理とドット状のアンドープAl0.5Ga0.5Nの成長を行わずに、AlGaNバッファ層上にアンドープGaN層を4μm成長し、続けてSiドープGaN層を成長すること以外、実施例1と同様の方法で、Mg濃度が5×1019cm−3のMgドープAlGaN層までの窒化物半導体結晶層をサファイア基板上に成長した。
次に、EtCpMg、TMG、TMA、アンモニアの供給を停止し、サーファクタントとして、ガス状にしたテトラエチルシランを成長炉内に供給し、MgドープAlGaN層の表面に接触させた。テトラエチルシランの供給方法は実施例1と同様とした。
テトラエチルシランの供給を停止した後、EtCpMg、TMG、TMA(トリメチルアルミニウム)、アンモニアを再び供給し、Mg濃度が5×1019cm−3のMgドープAl0.5Ga0.5Nを、ドット状に成長させた。このときの成長時間は、ドットの高さが50nmとなるように決定した。
次に、TMAの供給を停止し、Mg濃度が1×1020cm−3のMgドープGaNを、ドット状に成長したAl0.5Ga0.5Nを埋め込むように成長した。このMgドープGaNは、先に成長したMgドープAlGaN層のサーファクタント処理された表面からの膜厚が150nmとなるようにした。
このようにして得られた発光波長405nmの近紫外LEDウエハに対して、実施例1と同様の方法でp側電極およびn側電極を形成した後、実施例1と同様の方法でチップ化を行った。
比較例3
上記実施例3において、MgドープAlGaN層表面のテトラエチルシラン処理とドット状のMgドープAl0.5Ga0.5Nの成長を行わずに、MgドープAlGaN層上にMgドープGaN層を150nm成長したこと以外は、上記実施例3と同様の工程にてLEDチップ(従来のLED)を作製した。
(評価)
得られたLEDチップを、実施例1と同様にステム台にダイボンドした後、ワイヤボンディングにより通電可能な状態とし、実施例3、比較例3のそれぞれのLEDの素子特性を評価した。
その結果、実施例品と比較例品は、順方向電圧(20mA通電時)は、ほぼ同じ(約3.4V)であったが、積分球を用いて測定した出力(20mA通電時)は、実施例品の方が比較例品よりも約7%増加していた。
実施例4
本実施例では、Ni(下層)/Au(表層)からなるp側電極を、開口部を形成することなく、チップ化後のMgドープGaN層の上面をほぼ全面的に覆う大きさに形成するとともに、該p側電極の表面のパッド電極を省略したこと以外は、実施例3と同様の方法でLEDチップを作製した。
比較例4
上記実施例4において、MgドープAlGaN層表面のテトラエチルシラン処理とドット状のMgドープAl0.5Ga0.5Nの成長を行わないで、MgドープAlGaN層上にMgドープGaN層を150nm成長したこと以外は、上記実施例4と同様の工程にてLEDチップ(従来のLED)を作製した。
(評価)
得られたLEDチップを、リード電極パターンが形成されたセラミックパッケージ上に、p側電極およびn側電極が下側となるようにフリップチップボンディングし、実施例4、比較例4のそれぞれのLEDの素子特性を評価した。
その結果、実施例品と比較例品は、順方向電圧(20mA通電時)は、ほぼ同じ(約3.4V)であったが、積分球を用いて測定した出力(20mA通電時)は、実施例品の方が比較例品よりも約9%増加した。
実施例5
本実施例では、実施例1と同様に、サファイア基板表面のサーマルクリーニングと、AlGaN低温バッファ層の成長を行った後、基板温度を1000℃に上げ、Si濃度が5×1018cm−3のSiドープGaN層を2μm成長した。
次に、このSiドープGaN層の表面に、実施例1と同様の方法でテトラエチルシランを接触させた後、Si濃度が5×1018cm−3のSiドープAl0.5Ga0.5Nをドット状に成長させた。このときの成長時間は、ドットの高さが200nmとなるように決定した。その後、TMAの供給を停止し、Si濃度が5×1018cm−3のSiドープGaNを、ドット状に成長したSiドープAl0.5Ga0.5Nを埋め込むように成長した。このSiドープGaNは、先に成長したSiドープGaN層のサーファクタント処理された表面からの膜厚が400nmとなるようにした。
以後、このSiドープGaNの上に、発光層、MgドープAlGaN層、MgドープGaN層を、実施例1と同様の方法で順次成長し、発光波長405nmの近紫外LEDウエハを得た。
次に、このウエハのMgドープGaN層の表面全面に、Ni(下層)/Au(表層)からなるp側電極を形成し、500℃×5分間の熱処理を行った。
次に、Au−Sn共晶を用いて、上記p側電極の表面にGaAs基板を接合した後、研削および研磨によりサファイア基板を摩滅させ、上記成長したSiドープGaN層を露出させた。露出されたSiドープGaN層の表面には、素子分離により個別のチップに分離される各領域にひとつずつ、ワイヤボンディング用のパッド電極として、Al(下層)/Ti(中層)/Au(表層)からなる電極を形成した。
このウエハを素子分離してLEDチップを得た。
(評価)
この実施例5で得られたLEDチップに対して、GaAs基板および上記パッド電極を介して通電することにより、素子特性を評価したところ、実施例2で得られたLEDチップよりも更に高い出力が得られた。
これは、光取り出し面側のサファイア基板が除去されたために、サファイアと空気の界面での、屈折率差に基づく反射が抑制されたこと等によると考えられる。
上記実施例1〜実施例5に係るLEDのいずれにおいても、サーファクタント処理およびドット状のGaN系結晶の成長を行わなかった従来構造のLEDと比較して、出力の向上の他に、素子のリーク電流の減少が観察された。これは、サーファクタント処理に伴う付随効果として、GaN系結晶の転位密度が低減されたことによるものと考えられる。
本発明において素子内に組み込まれる上記(A)の光散乱層は、ベース面に対してサーファクタント処理を行なうだけで形成可能であるから、発光素子の製造プロセスを複雑にすることなく、しかも効果的に光散乱を生じさせ、光取り出し効率を向上させる。
本発明のGaN系発光素子の構成例を示した模式図である。ハッチングは、領域を区別するために適宜用いている。 光散乱層の形成プロセスを示した図である。図2(a)では、ガス状としたサーファクタントを、点によって模式的に表現している。 光取り出し方向に関連して、第一のGaN系結晶の屈折率n1と、第二のGaN系結晶の屈折率n2の大小関係を定めることによる利点を説明する図である。
符号の説明
10 基板
20 n型層
30 発光層
40 p型層
50 光散乱層
51 第一のGaN系結晶
52 第二のGaN系結晶
S 積層体

Claims (8)

  1. 窒化物半導体結晶層からなる積層体を有して構成されている窒化物半導体発光素子であって、該積層体内には、n型層、発光層、p型層が含まれており、かつ、発光層以外の層として、下記(A)の光散乱層が含まれており、
    該光散乱層を構成する第一の窒化物半導体結晶と第二の窒化物半導体結晶との界面において、発光層から発せられた光が散乱する構成となっている、窒化物半導体発光素子。
    (A)窒化物半導体結晶が2次元成長し得るベース面がサーファクタント処理され、該ベース面に、屈折率n1である第一の窒化物半導体結晶が、表面に突出部および/または陥凹部を有する形状に気相成長しており、かつ、該第一の窒化物半導体結晶は、屈折率n1とは異なる屈折率n2を持つ第二の窒化物半導体結晶によって埋め込まれている、光散乱層。
  2. 上記第一の窒化物半導体結晶の表面が、上記発光層から発せられる光の波長の1/4以上の高低差を有する、請求項1記載の窒化物半導体発光素子。
  3. 上記(A)の光散乱層が、ベース面側を発光層とは反対の側に向けて、積層体内に位置している、請求項2記載の窒化物半導体発光素子。
  4. 上記(A)の光散乱層が、ベース面側を発光層の側に向けて、積層体内に位置している、請求項2記載の窒化物半導体発光素子。
  5. n型層およびp型層の間を流れる当該窒化物半導体発光素子の駆動電流が、上記(A)の光散乱層を層厚方向に横切るように、該(A)の光散乱層が積層体内に位置している、請求項3記載の窒化物半導体発光素子。
  6. 当該窒化物半導体発光素子の光取り出し方向が、上記ベース面から離れる方向であって、屈折率n2<屈折率n1となるように、第一の窒化物半導体結晶と第二の窒化物半導体結晶とが選択されている、請求項2〜5のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
  7. 当該窒化物半導体発光素子の光取り出し方向が、上記ベース面に近づく方向であって、屈折率n1<屈折率n2となるように、第一の窒化物半導体結晶と第二の窒化物半導体結晶とが選択されている、請求項2〜5のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
  8. 上記第一の窒化物半導体結晶の突出部および/または陥凹部の側壁として斜めファセットが露出している、請求項2〜7のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
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