図1は、本発明が適用された車両の動力伝達装置8の構成を説明する骨子図である。図1において、例えば内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン10の出力は、クランク軸12、流体伝動装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、自動変速機16の出力軸46から差動歯車装置50および車軸51等を介して駆動輪52へ伝達されるようになっている(図3参照)。このようにエンジン10の出力が駆動輪52へ伝達されるまでが動力伝達経路であり、その動力伝達経路はトルクコンバータ14、自動変速機16、および差動歯車装置50等を備える動力伝達装置8により構成される。また、上記出力軸46には、回転機として電動モータおよび発電機として機能するモータジェネレータMGが作動的に連結されるように配設されている。
上記トルクコンバータ14は、クランク軸12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、それらポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えている。ロックアップクラッチ26は、係合側油室25内の油圧と解放側油室27内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチであり、それが完全係合させられることにより、ポンプ翼車20およびタービン翼車24は一体回転させられる。
自動変速機16は複数のギヤ段が選択的に成立させられるすなわち切り換えられる有段変速機であり、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速部32と、後進ギヤ段および前進4段の切り換えが可能な第2変速部34とを備えている。第1変速部32は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリヤK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置36と、サンギヤS0とキャリヤK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング38間に設けられたブレーキB0とを備えている。
第2変速部34は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリヤK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置40と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリヤK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置42と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリヤK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置44とを備えている。
サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリヤK2とキャリヤK3とが一体的に連結され、そのキャリヤK3は出力軸46に連結されている。また、リングギヤR2とサンギヤS3は互いに一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸48との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸48との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド式のブレーキB1がハウジング38に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング38との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸22と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
キャリヤK1とハウジング38との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング38との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
以上のように構成された自動変速機16では、例えば図2に示す作動表に従って後進1段および変速比γ(入力軸22の回転速度NIN/出力軸46の回転速 度NOUT) が順次小さくなる前進5段(1st〜5th)のギヤ段のいずれかに切り換えられる。図2において「○」は係合で、空欄は解放を表し、「◎」はエンジンブレーキ時の係合を表し、「△」は動力伝達に関与しない係合を表している。クラッチC0〜C2、およびブレーキB0〜B4は何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式の摩擦係合装置である。この図2から明らかなように、第2速ギヤ段と第3速ギヤ段との間は、ブレーキB2およびブレーキB3の一方が解放させられると同時に他方が係合させられることにより達成される所謂クラッチツウクラッチ変速である。
図3は、図1に示した動力伝達装置8の概略構成を説明する図である。図3に示すように、エンジン10には吸気管54および排気管56が設けられ、この吸気管54には、スロットルアクチュエータ60によって開閉制御される電子スロットル弁62が設けられている。電子スロットル弁62は、基本的には図8に示すように運転者の出力要求量を表すアクセル開度Accに対応するスロットル弁開度θTHとなるように制御される。
自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置およびロックアップクラッチ26は、電動式オイルポンプ64、およびエンジン10に機械的に連結されてエンジン10により直接回転駆動される機械式オイルポンプ68の少なくともいずれかから発生する油圧によるライン圧を元圧とする油圧制御回路66により制御されるようになっている。上記ライン圧は、自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置を係合するために用いられる最大係合圧となるものである。
モータジェネレータMGは、その作動によって出力軸を回転駆動する回転駆動装置として機能していて、エンジン10と同様に駆動力源となるものである。また、モータジェネレータMGはエンジン10を駆動力源とするエンジン走行時や減速走行時には出力軸46に回転駆動されて発電を行う。そして、モータジェネレータMGの電源として機能する蓄電装置としての蓄電池つまり二次電池であるバッテリ70と、そのバッテリ70からモータジェネレータMGへ供給される電流を制御したり或いは充電のためにバッテリ70へ供給される電流を制御するための例えば半導体スイッチング素子などから構成されるインバータ72とが設けられている。
ホイールブレーキ装置80は、ブレーキペダル82の操作などに関連して、車輪ブレーキに設けられたホイールシリンダWCへ制動油圧を供給する(図4参照)。このホイールブレーキ装置80では、通常は、マスタシリンダ84において発生させられるブレーキペダル82の踏力に対応した大きさの制動油圧がホイールシリンダWCへ直接供給されるが、例えばABS制御、トラクション制御、VSC制御、或いはヒルホールド制御時には、低μ路での車両の制動、発進、旋回走行や、或いは坂路途中の車両停止の保持或いは維持のために上記踏力に対応しない制動液圧がホイールシリンダWCへ供給されるようになっている。
図4は、上記ホイールブレーキ装置80を詳しく説明するための図であって、(a)は上記ホイールブレーキ装置80の構成を概略説明する図であり、(b)はホイールブレーキ装置80による実際の前後輪制動力配分を示すものである。図4(a)において、ホイールブレーキ装置80には、前後輪の制動力配分を理想配分に近づけ且つ後輪52Rのホイールロックを防止するために、例えばマスタシリンダ液圧が所定の作動開始点以上の液圧を超えると以降のリヤホイールシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧(フロントホイールシリンダ液圧)に対して一定の比で減じるプロポーショニングバルブ(Pバルブ)86が後輪52R側の配管途中に設けられている。図4(b)に示すように上記Pバルブ86により作動開始点以降の前輪52Fと後輪52Rとの制動力比が制御される。
図5は、本実施例の動力伝達装置8のための制御系統を説明するブロック線図であり、電子制御装置90に入力される信号およびその電子制御装置90から出力される信号を例示したものである。たとえば、電子制御装置90には、アクセル開度センサ89により検出されたアクセルペダル88の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、スロットル弁開度センサ63により検出されたスロットル弁62の開度θTHを表すスロットル開度信号、出力軸回転速度センサ(車速センサ)47により検出された出力軸46の回転速度NOUTすなわち車速Vに対応する車速信号、タービン回転速度センサ91により検出されたタービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を表す信号、シフトポジションセンサ98により検出されたシフトレバー92の操作位置PSHを表す信号、フットブレーキスイッチ78により検出されたフットブレーキ(ホイールブレーキ)の作動中(踏込操作中)を示すブレーキペダル82の操作(オン)BONを表す信号、電流センサ74により検出されたバッテリの充放電電流ICDを表す充放電電流信号、バッテリ温度センサ76により検出されたバッテリ温度TBATを表すバッテリ温度信号などが供給されている。他に、電子制御装置90には、図5に示す各センサやスイッチから、エンジン水温TWを示す信号を示す信号、エンジン10の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、M(モータ走行)モードを指令する信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、自動変速機16の作動油温TOILを示すAT油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、車両の重量を示す車重信号、各車輪の車輪速を示す車輪速信号、モータジェネレータMGの回転速度NMGを表す信号、モータジェネレータMGの発電電流IGMGを表す信号、モータジェネレータMGへの駆動電流IAMGを表す信号、バッテリ電圧VBATを表す信号、バッテリ70の充電容量(充電量、蓄電量)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置90からは、電子スロットル弁62の開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ60への駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、エンジン10の点火時期を指令する点火信号、エンジン10の吸気管54または筒内に燃料を供給し或いは停止する燃料噴射装置58によるエンジン10への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、モータジェネレータMGの作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)PSH表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示するMモード表示信号、自動変速機16のギヤ段を切り換えるために油圧制御回路66内のシフト弁を駆動するシフトソレノイドを制御する信号およびライン圧を制御するリニヤソレノイド弁を駆動するための指令信号、油圧制御回路66の油圧源である電動式オイルポンプ64を作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量を制御するリニヤソレノイド弁を駆動するための指令信号などが、それぞれ出力される。
上記電子制御装置90は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、基本的には例えば自動変速機16のギヤ段を自動的に切り換える変速制御、エンジン10の出力制御、ロックアップクラッチ26の係合、解放、或いはスリップを実行するロックアップクラッチ制御などを実行する。
図6は、シフトレバー92を備えた変速レンジ選択操作装置としてのシフト操作装置94の一例を示すものであり、そのシフト操作装置94は例えば運転席の横に配設されている。シフトレバー92は、自動変速機16内の動力伝達経路が遮断された中立状態とし且つ自動変速機16の出力軸46をロックするためのPレンジに対応する駐車位置「P」、後進走行のためのRレンジに対応する後進走行位置「R」、自動変速機16内の動力伝達経路が遮断された中立状態(ニュートラル状態)とするためのNレンジに対応する中立位置「N」、自動変速モードで第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の範囲で自動変速されるDレンジに対応する前進走行位置「D」(最高速レンジ位置)、第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段でエンジンブレーキが作用させられる4レンジに対応する第4エンジンブレーキ走行位置「4」、第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段でエンジンブレーキが作用させられる3レンジに対応する第3エンジンブレーキ走行位置「3」、第1速ギヤ段乃至第2速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段においてエンジンブレーキが作用させられる2レンジに対応する第2エンジンブレーキ走行位置「2」、第1速ギヤ段で走行させられ且つエンジンブレーキが作用させられるLレンジに対応する第1エンジンブレーキ走行位置「L」へそれぞれ操作可能に設けられている。
例えば、上記シフトレバー92の各シフトポジションへの操作に連動してそのシフトレバー92に機械的に連結された油圧制御回路66内のマニュアル弁が切り換えられて、図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「Rev」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」等が成立するように油圧制御回路66が機械的に切り換えられる。また、「D」ポジションにおける図2の係合作動表に示す1st乃至5thの各変速段は、油圧制御回路66内の電磁弁が電気的に切り換えられることにより成立させられる。
上記「P」乃至「L」ポジションに示す各シフトポジションは、「P」ポジションおよび「N」ポジションの各非走行ポジションは例えば図2の係合作動表に示されるようにクラッチC1およびクラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速機16内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とするクラッチC1およびクラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジションおよび「D」ポジション乃至「L」ポジションの各走行ポジションは例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくともいずれかが係合されるような自動変速機16内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とするクラッチC1および/またはクラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態へ切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
図7は、前記電子制御装置90が備えている制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、エンジン出力制御手段100は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ60により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置58による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置による点火時期を制御するなどしてエンジン10の出力制御を実行する。例えば、エンジン出力制御手段100は、図8に示す予め記憶された関係からアクセル開度信号Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。
また、上記エンジン出力制御手段100は、アクセル開度Accが略零(全閉)の車両停止時や減速時等には、アイドル回転速度NIDLを目標値制御するようにスロットル制御を実行する。例えば、エンジン出力制御手段100は、予め記憶された関係からエンジン水温信号TWや触媒温度信号に基づいて暖機後の通常のアイドル回転速度NIDLに比較して高く設定されたファーストアイドル回転速度NIDLFとなるように、またその暖機後の通常のアイドル回転速度NIDLとなるようにスロットル制御を実行する。また、エンジン出力制御手段100は、エアコンの作動を示すエアコン信号等の補機負荷からのアイドルアップ要求信号等に基づいて予め定められたアイドルアップ回転速度NIDLUとなるようにスロットル制御を実行する。
変速制御手段102は、前記シフトレバー92の「D」ポジションにおいて例えば図9に示すようにスロットル弁開度θTHおよび車速Vをパラメータ(変数)とする二次元座標において予め記憶された関係(変速線図、マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機16の変速すべきギヤ段を決定しすなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段となるように例えば図2に示す作動表に従って油圧式摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)の係合状態を切り換えるための切換信号SPを油圧制御回路66に出力する。上記図9の変速線図における変速線は、実際のスロットル弁開度θTH(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、上記値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。尚、この図9の変速線図においては、スロットル弁開度θTH(%)に替えてアクセル開度Acc(%)が用いられてもよい。
ところで、本実施例の動力伝達装置8のようにトルクコンバータ14等の流体伝動装置を介してエンジン10の出力が駆動輪52へ伝達される場合には、車両停止中や低速減速走行中であってもエンジン回転速度NEが例えばアイドル回転速度NIDLに維持されると共に、駆動輪52にはクリープトルク(クリープ力)による駆動輪トルクTWが生じている。このクリープトルクは、自動変速機16のギヤ段が低速側ギヤ段である程すなわち変速比が大きくなる程大きくされる。また、アイドル回転速度NIDLが上記ファーストアイドル回転速度NIDLFやアイドルアップ回転速度NIDLUに制御されてエンジン回転速度NEが高くなる程エンジン10の出力が大きくされ、それに伴って上記クリープトルクも大きくされる。
特に、自動変速機16において加速性能と燃費性能との両立の為に多段化や変速比のワイドレンジ化が進められ、その変速比のワイドレンジ化に伴って最低速側変速比としての最低速側ギヤ段の変速比が一層大きく(ローギヤ化)される場合には、車両停止時や車両減速走行における制動時に駆動輪52における上記クリープトルクが一層大きくされるので、車両を所望の制動状態で減速・停止させるためにこのクリープトルクに対してホイールブレーキ装置80による制動トルクを一層大きくする必要が生じる。しかしながら、前述したように、ホイールブレーキ装置80による制動トルクはPバルブにより前後輪制動力配分が制御されており、駆動輪52のみ制動力を大きくすると制動バランスが制御し難くなったり、或いは前後輪配分比を保ったまま全車輪の制動力を大きくすると従動輪では制動力が大きくなり過ぎて制動バランスが制御し難い可能性があった。
そこで、本実施例では、自動変速機16において多段化や変速比のワイドレンジ化に伴って特に最低速側ギヤ段の変速比が一層大きくされる場合であっても、ホイールブレーキ装置80による制動トルクを大きくすることなくすなわち従来通りのホイールブレーキ装置80による制動トルクのままで車両低速減速走行の際の制動時に適切な制動状態が得られるように、モータジェネレータMGによる回生制御を実行してエンジン出力の一部を電気エネルギーに変換し、駆動輪52へ伝達されるエンジントルクTEを減少させて上記クリープトルクを抑制する。以下に、その制御作動を説明する。
フットブレーキ操作判定手段104は、フットブレーキが踏込操作中であるか否かを、例えばフットブレーキスイッチ78により検出されたブレーキペダル82の操作を表す信号BONが出力されているか否かで判定する。
低速減速走行判定手段106は、車両が低車速すなわち第1速ギヤ段走行で且つ減速走行時であるか否かを、例えば車速Vが所定車速V’以下とされ且つアクセル開度Accが略零とされてアクセルオフの減速走行中すなわち惰性走行(コースト走行)中であるか否かで判定する。上記所定車速V’は前記変速制御手段102により自動変速機16が最低速側ギヤ段すなわち第1速ギヤ段に変速制御されるような低車速として予め実験的に定められている値である。
駆動力判定手段108は、車両低速減速走行の際の制動時すなわち前記フットブレーキ操作判定手段104によりフットブレーキが踏込操作中であると判定され且つ前記低速減速走行判定手段106により車両が低車速で且つ減速走行時であると判定されたときには、駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるか否かを、例えば駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるエンジントルクTEとなる所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’や所定アイドルアップ回転速度NIDLU’となるように前記エンジン出力制御手段100によりアイドル回転速度NIDLが目標値制御されているか否かに基づいて実質的に判定する。上記所定駆動輪トルクTW’は、本実施例では、ホイールブレーキ装置80による駆動輪52における制動トルク(制動力)よりも駆動輪トルクTW(駆動力)が所定値以下となるように後述する回生制御手段112によりモータジェネレータMGによる回生制御を実行させるか否かを判断するための理論上の判定値である。所定駆動輪トルクTW’は、ホイールブレーキ装置80をその制動トルクが大きくなるように構成することなく車両低速減速走行の際の制動時に適切な制動状態が得られる上限の駆動輪トルクTWであり、上記所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’や所定アイドルアップ回転速度NIDLU’は車両低速減速走行の際の制動時に適切な制動状態が得られる上限のエンジン回転速度NEとして予め実験的に求められている一定値である。
回生量設定手段110は、車両低速減速走行の際の制動時に上記駆動力判定手段108により駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’以上となると判定された場合には、駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えないように後述する回生制御手段112により実行されるモータジェネレータMGによる回生制御における回生実施量(回生量)を設定する。
例えば、図10は、ホイールブレーキ装置80による駆動輪52における制動トルク(制動力)よりも実際の駆動輪トルクTW(駆動力)が前記所定駆動輪トルクTW’以下となるように、エンジン回転速度NEと上記回生制御手段112による回生制御における回生実施量とが予め実験的に求めて記憶された関係(マップ)であり、エンジン回転速度NEが高くなる程その回生実施量が増加するように設定されている。上記回生量設定手段110は、図10に示す関係からエンジン回転速度NEに基づいて回生実施量を決定する。また、図10からも明らかなように、回生実施量はエンジン回転速度NEが上記所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’或いは所定アイドルアップ回転速度NIDLU’を超えるまでは零とされる。すなわちエンジン回転速度NEが上記所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’或いは所定アイドルアップ回転速度NIDLU’を超えるまでは回生制御手段112により回生制御は実行されない。
上記回生制御手段112は、車両低速減速走行の際の制動時に上記駆動力判定手段108により駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’以上となると判定された場合には、上記回生量設定手段110により設定された回生実施量が得られるようにモータジェネレータMGによる回生制御を実行する。これにより、エンジン出力の一部が電気エネルギーに変換されて駆動輪52へ伝達されるエンジントルクTEが抑制され、ホイールブレーキ装置80による駆動輪52における制動トルク(制動力)に対して駆動輪トルクTW(駆動力)が所定駆動輪トルクTW’以下となるように制御される。言い換えれば、モータジェネレータMGによりエンジントルクTEが持ち出されるので、駆動輪52へ流れるエンジントルクTEが低下させられてより少ないホイールブレーキ装置80による駆動輪52における制動トルク(制動力)でも適切な制動状態が得られる。
但し、回生量設定手段110により設定される回生実施量が零であっても、回生制御手段112は暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等のエンジン回転速度NEが所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’或いは所定アイドルアップ回転速度NIDLU’を超えなくときに通常の回生制御を実行する場合もある。この場合には、回生量設定手段110は回生制御手段112による通常の回生制御における回生量から増加させる分の回生実施量(増加回生量)を設定する。よって、回生制御手段112は通常の回生制御における回生量に加えて回生量設定手段110により設定された増加回生量が得られるようにモータジェネレータMGによる回生制御を実行する。
また、前記回生量設定手段110は、前記フットブレーキ操作判定手段104によりフットブレーキが踏込操作中であると判定される車両制動時であって、前記低速減速走行判定手段106により車両が低車速で且つ減速走行時であると判定されない場合或いは前記駆動力判定手段108により駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’以上となると判定されない場合には、回生制御手段112により実行されるモータジェネレータMGによる回生制御における回生実施量(回生量)を零に設定するか、或いは回生制御手段112による通常の回生制御における回生量から増加させる分の増加回生量を零に設定する。
よって、回生制御手段112は、前記フットブレーキ操作判定手段104によりフットブレーキが踏込操作中であると判定される車両制動時であって、前記低速減速走行判定手段106により車両が低車速で且つ減速走行時であると判定されない場合或いは前記駆動力判定手段108により駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’以上となると判定されない場合には、モータジェネレータMGによる回生制御を実行しないか、或いは暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等における通常の回生制御を実行する。
図11は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち車両低速減速走行の際の制動時に適切な制動状態が得られるようにする制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図12は、図11のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、自動変速機16のギヤ段が第1速ギヤ段とされているときの車両低速減速走行の際の制動時にエンジン回転速度NEが所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’や所定アイドルアップ回転速度NIDLU’を超えるようなアイドルアップ時に回生制御が実行された場合の例である。
先ず、前記フットブレーキ操作判定手段104に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、フットブレーキが踏込操作中であるか否かが、フットブレーキスイッチ78により検出されたブレーキペダル82の操作を表す信号BONが出力されているか否かで判定される。このS1の判断が否定される場合はS8において、制動操作時の制御作動以外の通常の制御作動が実行されるか、或いは現在の車両走行状態が維持されて本ルーチンが終了させられる。
上記S1の判断が肯定される場合は前記低速減速走行判定手段106に対応するS2において、車両が低車速すなわち第1速ギヤ段走行で且つ減速走行時であるか否かが、車速Vが所定車速V’以下とされ且つアクセル開度Accが略零とされてアクセルオフの減速走行中すなわち惰性走行(コースト走行)中であるか否かで判定される。図12のt1時点は車両低速減速走行の際にブレーキペダル82が踏込操作されたことが判定されたことを示している。
上記S2の判断が肯定される場合は前記駆動力判定手段108に対応するS3において、駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるか否かが、自動変速機16が第1速ギヤ段とされている状態において駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるエンジントルクTEとなる所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’や所定アイドルアップ回転速度NIDLU’となるように前記エンジン出力制御手段100によりアイドル回転速度NIDLが目標値制御されているか否かで判定される。図12のt2時点はエンジン回転速度NEが通常のアイドル回転速度NIDL(図12の二点鎖線)より高い所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’や所定アイドルアップ回転速度NIDLU’を超えるようなアイドルアップ時の回転速度(図12の実線)に目標値制御されていると判定されたことを示している。
上記S3の判断が肯定される場合は前記回生量設定手段110に対応するS4において、モータジェネレータMGによる回生制御における回生実施量、或いは暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等における通常の回生制御における回生量から増加させる分の増加回生量が、例えば前記図10に示すようにエンジン回転速度NEが高くなる程回生量が増加するように予め実験的に求めて記憶された関係からエンジン回転速度NEに基づいて(設定)決定される。続く、前記回生制御手段112に対応するS5において、このS4にて設定された回生実施量(増加回生量)が得られるようにモータジェネレータMGによる回生制御が実行される。
前記S2の判断が否定されるか、或いは前記S3の判断が否定される場合は前記回生量設定手段110に対応するS6において、モータジェネレータMGによる回生制御における回生実施量、或いは暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等における通常の回生制御における回生量から増加させる分の増加回生量が零に設定される。続く、前記回生制御手段112に対応するS7において、モータジェネレータMGによる回生制御が実行されないか、或いは暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等における通常の回生制御が実行される。
図12のt3時点乃至t5時点はエンジン回転速度NEに基づいて設定された回生実施量が得られるように制動操作時に一時的にモータジェネレータMGによる回生制御が実行されていることを示している。また、この図12に示した制動トルクの破線は、エンジン回転速度NEがアイドルアップ時の回転速度(図12の実線)とされたときに上記モータジェネレータMGによる回生制御が実行されない場合の特性であり、エンジントルクTEが暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等に比較して高い分だけより大きな制動トルクが必要とされることを示している。これに対して、図12に示した制動トルクの実線は、一時的に回生制御が実行された場合の特性であり、暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等の場合に必要とされる制動トルクに相当する。
上述のように、本実施例によれば、車両の低速減速走行時且つホイールブレーキ装置80による車両制動操作時に、ホイールブレーキ装置80による駆動輪52における制動トルク(制動力)に対して駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’以下となるように回生制御手段112によりモータジェネレータMGによる回生制御が実行される。これにより、エンジン出力の一部が電気エネルギーに変換されて駆動輪52へ伝達されるエンジントルクTEが抑制されるので、例えば自動変速機16の第1速ギヤ段の変速比が従来より大きくされてもその第1速ギヤ段における低速減速走行時の駆動輪52に発生する駆動力が抑制されて従来通りのホイールブレーキ装置80による制動力で適切な制動状態が得られる。例えば、路面摩擦力が得られない低μ路のように実質的に前輪制動力が充分に得られないときに、従来通り適切な制動状態が得られる。
また、本実施例によれば、回生量設定手段110によりエンジン回転速度NEに応じて設定された回生量が得られるように回生制御手段112により回生制御が実行されるので、エンジン回転速度NEが暖機後の通常のアイドル回転速度NIDLより高い回転速度で制御されてエンジン出力が大きくされても駆動輪52に発生する駆動力(クリープ力)が抑制されて従来通りのホイールブレーキ装置80による制動力で適切な制動状態が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、自動変速機16が第1速ギヤ段とされているときに回生制御手段112による回生制御が実行されたが、自動変速機16が第1速ギヤ段とされていなくともホイールブレーキ装置80による駆動輪52における制動トルクに対して駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるような場合には、回生制御手段112によりモータジェネレータMGによる回生制御が実行される。
また、前述の実施例では、エンジン出力制御手段100によるアイドルアップ時に回生制御手段112による回生制御が実行されたが、暖機後の通常のアイドル回転速度NIDL等のアイドルアップ時でなくともホイールブレーキ装置80による駆動輪52における制動トルクに対して駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるような場合には、回生制御手段112によりモータジェネレータMGによる回生制御が実行される。
また、前述の実施例では、駆動力判定手段108は、駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるか否かを、駆動輪トルクTWが所定駆動輪トルクTW’を超えるエンジントルクTEとなる所定ファーストアイドル回転速度NIDLF’や所定アイドルアップ回転速度NIDLU’となるように前記エンジン出力制御手段100によりアイドル回転速度NIDLが目標値制御されているか否かに基づいて実質的に判定したが、実際に求められた駆動輪トルクTW(=エンジントルクTE×自動変速機16の変速比γ×終減速装置の減速比i)が予め設定された上記所定駆動輪トルクTW’を超えたか否かで判定しても良い。
また、前述の実施例では、ホイールブレーキ装置80には、前後輪の制動力配分を制御するための液圧制御バルブとしてプロポーショニングバルブ(Pバルブ)86が後輪52R側の配管途中に設けられていたが、そのPバルブに替えて所謂リミティング(L)バルブやGバルブなどの他の液圧制御バルブが用いられても良い。
また、前述の実施例に加えて、前記電子制御装置90は回生制御手段112による回生制御の実行が可能か否かを判定する回生制御可否判定手段を機能的に備え、その回生制御可否判定手段により回生制御手段112による回生制御が実行され得ないと判定されたきには、エンジン出力制御手段100によるアイドルアップが実行されないようにしても良い。例えば、その回生制御可否判定手段は、バッテリ70の充電容量SOCが予め定められた充電容量の上限値SOCMAX例えば満充電の80%程度の充電容量SOC80%を満たしておりバッテリ70の充電ができないような場合、或いはモータジェネレータMG、インバータ72、バッテリ70、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や機能低下により発電能力の低下が発生したような場合等の理由により回生制御手段112による回生制御が実行され得ないと判定する。
また、前述の実施例の動力伝達装置8は、流体伝動装置が備えられ、その流体伝動装置を介してエンジン10の出力が駆動輪52へ伝達されていたが、必ずしもその流体伝動装置が備えられる必要はなく、車両停止中や低速減速走行中であってもエンジン回転速度NEが例えばアイドル回転速度NIDLに維持されると共に、駆動輪52にはクリープトルクによる駆動輪トルクTWが生じるような動力伝達装置であれば本発明は適用され得る。例えば、その流体伝動装置に替えてクラッチが備えられ、車両停止中や低速減速走行中にエンジン回転速度NEが維持されると共に、クリープトルクによる駆動輪トルクTWが生じるように、そのクラッチがスリップ制御させられるような動力伝達装置であっても良い。また、上記流体伝動装置としてロックアップクラッチ26付トルクコンバータ14が用いられたが、ロックアップクラッチが備えられていないトルクコンバータ、或いはトルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などを用いることもできる。
また、前述の実施例では、自動変速機16は4組の遊星歯車装置36、40、42、44の組み合わせから成る前進5速の変速機であったが、自動変速機16を構成する遊星歯車装置の組数は4組とは異なる数であってもよいし、また前進6速の変速機、前進4速の変速機等であっても差し支えない。
また、前述の実施例では、蓄電装置として蓄電池であるバッテリ70が用いられたが、蓄電装置として蓄電器であるコンデンサが用いられてもよい。或いは、蓄電装置として蓄電池および蓄電器のいずれもが用いられてもよい。
また、前述の実施例のモータジェネレータMGは回転電機として少なくとも回生時のみ発電機として機能するものであればよい。また、このモータジェネレータMGは自動変速機16の出力軸46に作動的に連結されなくとも、エンジン10と駆動輪52との間の動力伝達経路に配置されてエンジンの動力により回転駆動されて発電機として機能するものであればよい。
また、前述の実施例では、自動変速機16の係合要素であるクラッチC或いはブレーキBは、油圧式摩擦係合装置であったが、電磁式係合装置例えば電磁クラッチや磁粉式クラッチ等であってもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。