JP2006183122A - ダイカスト用アルミニウム合金およびアルミニウム合金鋳物の製造方法 - Google Patents

ダイカスト用アルミニウム合金およびアルミニウム合金鋳物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 鋳造性と耐食性に優れたダイカスト用アルミニウム合金を提供する。
【解決手段】 ダイカスト用アルミニウム合金成分量の中でもMn、Fe、およびCu量がアルミニウム合金の耐食性に大きく影響していることが判明した。そこで、Si:9.0〜12.0重量%、Mg:0.20〜0.80重量%、Mn+Fe:0.7〜1.1重量%を含み、Mn/Fe比:1.5以上であり、不純物としてCuが0.5重量%以下に規制され、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるダイカスト用アルミニウム合金溶湯を、大気圧以下の所定圧以下に減圧した状態でダイカスト用金型内に充填する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、鋳造性および耐食性に優れたダイカスト用アルミニウム合金、アルミニウム合金鋳物の製造方法、およびアルミニウム合金鋳物に関する。
従来、特許文献1においては、Cu含有量を0.02重量%以下に規制し、Siを4〜13重量%含有する、透明皮膜を設けて使用されるダイカスト用アルミニウム合金において、0.05〜0.3重量%のTiおよび0.05〜0.15重量%のBeの一種または二種を含有させ、これにより、耐糸状腐食性を向上させることが記載されている。
特開平2−232331号公報
ところで、特許文献1のアルミニウム合金組成においてBeは有毒性があるので、取扱に注意を要する。
従来、自動車用アルミニウムダイカスト部品には、一般的に鋳造性の優れたJIS−ADC12(JIS−H−5302−2000)合金が使用されているが、このJIS−ADC12は耐食性が低い。そのため、被水環境のように腐食進行が早い環境で用いられる製品においては、短期間で材料表面が腐食を起こし、その結果、強度が低下するので、JIS−ADC12は使用しにくい。
また、JIS−ADC5、JIS−ADC6は耐食性が良好である反面、アルミニウム合金の融点が高くなって、溶湯が金型表面で冷却され凝固しやすくなるので、溶湯の流動性が悪化して鋳造性が悪化する。なお、本明細書の「鋳造性」という用語は、「溶湯の流動性」、「溶湯凝固後のひけ性」、「溶湯凝固に伴う鋳造割れ性」、「金型に対する耐焼付き性」等の評価項目を含む総合的な成形性の意味で用いている。
本発明は、上記点に鑑み、鋳造性と耐食性に優れたダイカスト用アルミニウム合金を提供することを目的とする。
また、本発明は、Beのごとき有毒性のある成分を含まないダイカスト用アルミニウム合金を提供することを他の目的とする。
また、本発明は、強度にも優れたダイカスト用アルミニウム合金を提供することを他の目的とする。
また、本発明は、材料硬度を低下できるダイカスト用アルミニウム合金を提供することを他の目的とする。
本発明者らは、JIS−ADC12の耐食性低下の原因について実験研究を重ねた結果、ダイカスト用アルミニウム合金成分量の中でもMn、Fe、およびCu量がアルミニウム合金の耐食性に大きく影響していることが判明した。
すなわち、JIS−ADC12では、耐食性に有害なカソード極(電位の貴な部分)を構成するβ−AlFeSi粒子が発生するとともに、β−AlFeSi粒子よりは弱い作用ではあるが同じくカソード極を構成するα−Al(Fe・Mn)Si粒子が発生して、耐食性を低下させることが判明した。
このβ−AlFeSi粒子およびα−Al(Fe・Mn)Si粒子が発生するのは、JIS−ADC12におけるMnとFeの添加量比(Mn/Fe)が0.34付近の低い値になっているためであって、MnとFeの添加量比(Mn/Fe)を規制すれば、β−AlFeSi粒子の発生を抑制できるとともに、α−Al(Fe・Mn)Si粒子の耐食性悪化要因を除去できることが分かった。
また、JIS−ADC12では、Cu添加量が1.5〜3.5重量%という比較的多い量になっている。このため、貴なAl2Cu相が多く、また、α−A1(Fe・Mn)Si粒子中へのCuの固溶が促進され、これにより、α−A1(Fe・Mn)Si粒子の電位が一層貴になって、耐食性を低下させる原因となる。
本発明は上記知見に基づいて案出されてものであり、請求項1に記載の発明では、Si:9.0〜12.0重量%、Mg:0.20〜0.80重量%、Mn+Fe:0.7〜1.1重量%を含み、
Mn/Fe比:1.5以上であり、
不純物としてCuが0.5重量%以下に規制され、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるダイカスト用アルミニウム合金を特徴としている。
本発明者の実験研究によると、Mn/Fe比を1.5以上に設定することにより、耐食性に有害なカソード極(電位の貴な部分)を構成するβ−AlFeSi粒子の発生を抑制できると同時に、カソード極を同様に構成するα−Al(Fe・Mn)Si粒子についても、その粒子中のFe/Mn比を1以下に抑えることにより、その粒子の電位を引き下げることができて、耐食性悪化要因を除去できることが分かった。
また、Cu添加量を0.5重量%以下に規制することにより、貴なAl2Cu相を少なくでき、また、α−A1(Fe・Mn)Si粒子中にCuが固溶することを抑制でき、α−A1(Fe・Mn)Si粒子の電位を引き下げることができる。
これらのことが相まって、請求項1に記載の発明では、JIS−ADC12に比較して耐食性を大幅に向上できることを確認できた(後述の図5参照)。
そして、Si添加量を9.0〜12.0重量%の範囲に設定することにより、JIS−ADC12とほぼ同等の流動性を得ることができる。よって、ダイカスト用アルミニウム合金の鋳造性と耐食性の両立を実現できる。
しかも、Cu添加量を0.5重量%以下に規制すると、耐食性向上のみならず、材料硬度をJIS−ADC12に比較して大幅に引き下げることができる(後述の図6参照)。これにより、アルミニウム合金鋳物の圧入・かしめ等の加工性が良好になるので、アルミニウム合金鋳物と他部品との結合を容易に行うことができる。
さらに、Cu添加量を0.5重量%以下に規制して、上記のCu固溶を抑制すると、アルミニウム合金の導電性(熱伝導性)が向上するので、放熱性も向上できる。
また、MnとFeはアルミニウム合金の金型への焼付きを抑える効果がある。ここで、Mn+Fe量(MnとFeの合計添加量)を0.7重量%未満に減少すると、上記焼付きを抑制する効果が不十分となる。一方、Mn+Fe量が1.1重量%を超えると、耐食性および強度と伸びが低下するとともに、溶湯保持炉中にて塊状のAl−Si−Fe系金属間化合物を生じ、切削を始めとした機械加工性を悪化させる可能性が高くなる。よって、Mn+Fe量は0.7〜1.1重量%の範囲とするのがよい。
一方、Mgの添加は機械的強度を向上させるためであり、Mg添加量を0.20重量%未満では、強度向上効果が不十分であり、一方、Mg添加量が0.80重量%を超えると、強度向上効果が低下する。よって、Mg添加量は0.20〜0.80重量%の範囲とするのがよい(後述の図8参照)。
また、Beのごとき有毒性のある成分を含まないから、アルミニウム合金の取り扱いが容易である。
請求項2に記載の発明では、請求項1に対して、不純物として更に、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Na、Sbのいずれか一種以上を含んでいる。これにより、初晶α−Al相の微細化と共晶Si粒子改良を成し、鋳造性ならびに強度をより一層改善したアルミニウム合金を提供できる。
より具体的には、Ti、B、Zrは、初晶α−Al相の微細化に効果がある。Sr、Ca、Na、Sbは共晶Si粒子の改良を成すとともに、鋳造性および強度を改善する効果を有する。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のダイカスト用アルミニウム合金において、Mn/Fe比の上限を5.0以下に規定している。これにより、Feの最低必要量を確保して、アルミニウム合金の金型への焼付きを防止する効果(耐焼付き性)を確保できる。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いてアルミニウム合金鋳物を製造する製造方法であって、
金型(10、11)を閉じ、前記金型(10、11)内を大気圧未満の所定圧以下に減圧する減圧工程と、
前記減圧工程後に、前記金型(10、11)内に前記アルミニウム合金の溶湯を充填する溶湯充填工程とを備えることを特徴としている。
これによると、金型(10、11)内を大気圧未満の所定圧以下に減圧した後に、アルミニウム合金の溶湯を金型(10、11)内に充填するから、溶湯充填時に金型内圧(背圧)が上昇して溶湯の流動を妨げる現象を防止できる。従って、溶湯の流動性をより一層向上できる。
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いてアルミニウム合金鋳物を製造する製造方法であって、
金型(10、11)を閉じ、前記金型(10、11)内の空気を排出する排気工程と、
前記排気工程後に、前記金型(10、11)内に酸素を供給して前記金型(10、11)内を酸素雰囲気に置換する雰囲気調整工程と、
前記雰囲気調整工程後に、前記金型(10、11)内に前記アルミニウム合金の溶湯を充填する溶湯充填工程とを備えることを特徴としている。
これによると、金型(10、11)内を酸素雰囲気に置換した後に、アルミニウム合金の溶湯を金型(10、11)内に充填するから、アルミニウム合金の酸化を促進して合金材料の組織を緻密にすることができ、材料強度を向上できる。
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いて製造されるアルミニウム合金鋳物であって、最小板厚部の板厚が0.5〜1.5mmの薄肉フィン部(31b)を有することを特徴とする。
本発明によるアルミニウム合金の流動性はSi添加量を前述の範囲に設定することにより、JIS−ADC12に準じた高いレベルにできるので、請求項6のような薄肉フィン部(31b)を有する製品形状であっても良好に鋳造できる。
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いて製造されるアルミニウム合金鋳物であって、圧入もしくはかしめにより他部品と結合される結合部(31c)を有することを特徴とする。
本発明によるアルミニウム合金では、前述のごとくCu添加量を0.5重量%以下に規制することにより、材料硬度をJIS−ADC12に比較して大幅に引き下げることができるので、請求項7のような圧入もしくはかしめにより他部品と結合される結合部(31c)を有する製品構造であっても、この圧入もしくはかしめという機械的結合を容易に行うことができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下本発明の実施形態を具体的実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例1〜5および比較例1〜3のダイカスト用アルミニウム合金の材料成分を示し、図2は図1の各材料組成の流動性の評価結果を示す。比較例2はJIS−ADC12であり、比較例3はJIS−AC4Cである。
なお、図1および後述の図4の材料成分において、「−」は各成分の添加量が0.01重量%未満の微少量であることを示している。図3(a)(b)には、JIS−ADC12、JIS−ADC5、JIS−ADC6、およびJIS−AC4Cの材料成分を示す。
実施例1〜5では、いずれも、Si添加量を本発明のSi添加範囲に含まれる9.1〜10.8重量%に設定している。
図2の流動性の評価結果は、比較例2のJIS−ADC12の流動長を1としたときの流動長比率で表している。ここで、流動長は、各種アルミニウム合金の溶湯を、所定断面形状を有する鋳型内に流し込んだ時に、そのアルミニウム合金溶湯が凝固して溶湯の進行が停止するまでの溶湯進行方向の流動長さである。
実施例1〜5によると、比較例2のJIS−ADC12の流動長に対して、0.8以上の流動長比率を得ることができ、JIS−ADC12に準じた高いレベルの流動性を確保できることが分かる。
これに反し、比較例1、3はSi添加量がそれぞれ6.7重量%、7.0重量%という少ない量である。その結果、比較例1、3は比較例2のJIS−ADC12の流動長に対して0.7近傍の流動長比率しか得ることができず、比較例2および実施例1〜5よりも一段と流動性が低下する。
次に、図4は、上記実施例1〜5および比較例2、3におけるMn/Fe比およびMn+Fe量を示すものであり、実施例1〜5のMn/Fe比は2.2〜4.8の範囲であり、Mn+Fe量は0.92〜1.04重量%の範囲になっている。
これに対し、比較例2はMn/Fe比が0.34という、本発明の範囲から大きく外れる低い値である。また、比較例3はMn/Fe比およびMn+Fe量の両方が本発明の範囲から大きく外れている。
図5は各材料の耐食性の評価結果を示すもので、比較例2のJIS−ADC12の腐食減量を1としたときの各材料の腐食減量比率を表している。ここで、耐食性評価は最も一般的な評価方法である塩水噴霧試験方法(JIS Z 2371(2000)を参照)を用いて行っている。
具体的には、実施例1〜5および比較例2〜5の各合金材料で作製したテストピースを、塩水を噴霧できる浴槽内に置いて、所定時間経過後にテストピースを浴槽内から取り出して、テストピースの腐食した量(腐食減量)を測定し、その腐食減量が多いほど耐食性が低いと評価する。
実施例1〜5によると、その腐食減量比率を比較例2のJIS−ADC12の0.4以下に大幅に低減でき、耐食性を顕著に向上できる。
因みに、比較例2のJIS−ADC12は、Mn/Fe比=0.34という低い値であり、かつ、Cu添加量=3.08重量%という高い値であり、この両方が原因となって、耐食性を低下させている。
また、比較例3のJIS−AC4CはCu添加量が0.09重量%に減少しているものの、Mn/Fe比=0.33という低い値であるので、腐食減量比率は0.5付近となり、比較例3の耐食性は実施例1〜5より低下する。
なお、比較例3のJIS−AC4CはMn+Fe量が0.24重量%という低い値であるため、アルミニウム合金の金型への焼付きを抑制する効果も不十分となる。
次に、図6はJIS−ADC12の材料硬度を1としたときの相対硬度にて、Cu添加量による材料硬度の変化を示している。図6の例では、JIS−ADC12のCu添加量を2.5重量%にしている。一方、実施例6、7、8および比較例4のCu添加量は、1.0重量%以下である。なお、実施例6、7、8および比較例4の材料組成は図7に示す通りである。
図6に示すように比較例4→実施例8→実施例7→実施例6の順にCu添加量が減少するに伴って材料硬度が低下することが分かる。特に、Cu添加量を0.5重量%以下に規制することにより、JIS−ADC12に対する相対硬度を0.8付近まで大きく下げることができる。これにより、ダイカスト成形されたアルミニウム合金鋳物への部品の圧入、かしめ等が可能となる。
次に、図8はMg添加量=0のときの強度(具体的には引張強度)を1としたときの相対強度にて、Mg添加量による材料強度の変化を示している。
図8から分かるように、Mg添加量=0.20〜0.80重量%の範囲(より好ましくは0.35〜0.60重量%の範囲)においてアルミニウム合金の引張強度を効果的に向上できることがわかる。
なお、図8示すMg添加量の変化によるアルミニウム合金の強度変化の傾向は、実施例1〜実施例8において共通して現れる。
なお、実施例1〜実施例8においてアルミニウム合金のその他の不可避不純物として、特に耐食性を低下させるZn、Ni、Sn、Pb、Bi等は含有量を規制される。Zn、Ni、Snは0.05重量%以下、Pb、Biは0.005重量%以下が望ましい。
次に、本実施形態によるアルミニウム合金を用いたアルミニウム合金鋳物の製造方法(ダイカスト方法)を説明する。最初に、本実施形態のダイカスト装置を図9により説明する。ダイカスト装置は固定型10と、この固定型10に対向配置された可動型11とから構成される金型を有している。
可動型11は可動側ブロック12とスペーサ13とダイベース14とにより構成される。可動型11のダイベース14には図示しない油圧駆動機構等が連結されて、可動型11が図9の左右方向に移動できるようになっている。
図9は可動型11の可動側ブロック12が固定型10に接触する位置に移動して金型を閉じている状態を図示しており、可動側ブロック12と固定型10との間にアルミニウム合金鋳物の製品形状を作るキャビティ15が形成される。
固定型10の外側には円筒状の射出スリーブ16が配置され、この射出スリーブ16の内部空間の一端部は、固定型10を貫通するスプールブッシュ10aを介してキャビティ15と連通している。射出スリーブ16の上面部に給湯口16aが開口している。
射出スリーブ16の内部には射出プランジャ17が嵌合している。この射出プランジャ17には図示しない油圧駆動機構等が連結されて、射出プランジャ17が射出スリーブ16の軸方向(図9の左右方向)に移動可能になっている。
図9は射出プランジャ17が給湯口16aを開口する位置に後退した状態を示す。ラドル18はアルミニウム合金の溶湯を射出スリーブ16内に注入する柄杓(溶湯注入器)の役割を果たすものであって、図示しない炉内部に保持されているアルミニウム合金の溶湯をラドル18によって給湯口16aから射出スリーブ16の内部に注入する。
電動式等の真空ポンプ19および真空タンク20はキャビティ15を含む金型内部空間を大気圧未満の所定圧以下に減圧するための減圧装置を構成するもので、真空タンク20はホース21および可動側ブロック12内の連通路22を介してキャビティ15に連通している。
ここで、ホース21の途中には電動式等の開閉弁21aが配置されている。また、連通路22はより具体的には、キャビティ15のうち、射出スリーブ16の連通部位と反対側の部位に連通している。また、連通路22には圧力計(真空計)23が接続され、この圧力計23により金型内部の圧力(減圧度合い)を計測できるようになっている。
さらに、可動型11には、連通路22を開閉できる開閉手段をなすカットオフピン25、押出しピン26、押出しプレート27等が装備されている。
次に、上述のダイカスト装置を用いた、アルミニウム合金鋳物の製造方法(ダイカスト方法)を説明する。まず、可動型11の可動側ブロック12を図9に示すように固定型10に接触させて金型を閉じた状態(型締め状態)にするとともに、射出プランジャ17を図9の実線で示す最大後退位置に後退させて給湯口16aを開口する。
この状態にて、ラドル18によりアルミニウム合金の溶湯を給湯口16aから射出スリーブ16の内部に注入する。
射出スリーブ16内部への溶湯注入が終了した後に、射出プランジャ17を前進させて、図9の破線17aで示す中間停止位置まで前進させる。このとき、給湯口16aは全閉でなくてもよく、要は射出プランジャ17の前進によって金型内を密封して、金型内と大気(外気)雰囲気とを遮断できればよい。
次に、キャビティ15を含む金型内部空間を大気圧未満の所定圧以下に減圧する減圧工程を実施する。具体的には、電動式等の開閉弁21a、およびカットオフピン25を開状態に操作して真空タンク20内の高真空度により金型内部空間の空気を連通路22、ホース21を介して真空タンク20側へ吸引して金型内部空間を減圧する。
金型内部空間の圧力を真空計23により計測して、金型内部圧力が予め設定された所定圧(例えば、13.3kPa)以下に低下すると、圧力計23の計測信号に基づいて、開閉弁21a、およびカットオフピン25を閉状態に復帰させる。
次に、圧力計23の計測信号に基づいて射出プランジャ17の前進が開始され、射出スリーブ16内部の溶湯がキャビティ15内部に充填される。この充填工程の際に、金型内部が上記所定圧以下に前もって減圧されているので、溶湯充填に伴う背圧(溶湯移動方向前方側空間の圧力)の上昇が発生しない。このため、キャビティ15内部への溶湯充填をスムースに行うことができる。
図9の破線17bは射出プランジャ17の射出前進限位置であり、この射出前進限位置17bにてキャビティ15内部への溶湯充填が終了する。その後も、射出プランジャ17の射出前進限位置17bは保持され、キャビティ15内部の溶湯が凝固する。
そして、溶湯が凝固した後に、可動型11を固定型10から離れる方向(図9の左方向)へ移動させて型開きを行い、押出しプレート27および押出しピン26を図9の右方向へ前進させて、キャビティ15内部で凝固した製品(鋳造品)を金型外部へ取り出す。
次に、図10により本実施形態のダイカスト装置の他の例を説明する。図10の例では、図9に示すダイカスト装置に対して酸素供給装置24を付加している。この酸素供給装置24はキャビティ15を含む金型内部空間に酸素を供給するためのもので、具体的には、酸素を所定圧で貯蔵している酸素タンク24a、供給管24b、および供給管24bの通路を開閉する電動式等の開閉弁24cを備えている。
供給管24bの先端を、射出スリーブ16およびスプールブッシュ10aにより構成される内部空間のうち射出プランジャ17の中間停止位置17aよりも前進側の部位に開口し、スプールブッシュ10aの内部空間を通して金型内部空間に酸素を供給するようになっている。
次に、図10のダイカスト装置を用いた、アルミニウム合金鋳物の製造方法(ダイカスト方法)を説明すると、まず、アルミニウム合金の溶湯を給湯口16aから射出スリーブ16の内部に注入する。この溶湯注入工程は図9の例と同じであり、射出スリーブ16内部への溶湯注入が終了した後に、射出プランジャ17を中間停止位置17aまで前進させる。
次に、キャビティ15を含む金型内部空間の大気成分を排出する排気工程(換言すると真空引き工程)を行う。この排気工程は図9の例の減圧工程に相当するものであるが、その目的は金型内部の減圧ではなく、金型内部の大気成分の排出である。
この排気工程を実施した後に、金型内部を酸素雰囲気に置換する雰囲気調整工程を実施する。すなわち、この雰囲気調整工程では供給管24bの開閉弁24cを開弁して、酸素供給装置24の酸素タンク24a内の酸素を供給管24b、射出スリーブ16およびスプールブッシュ10aを通してキャビティ15内部に供給する。
そして、金型内部の酸素雰囲気の圧力が大気圧を超える所定圧力まで上昇したことを圧力計23により測定すると、供給管24bの開閉弁24cを自動的に閉塞して、雰囲気調整工程を終了する。
次に、前述の図9の例と同様に溶湯充填工程、溶湯充填状態の保持、型開きによる製品(鋳造品)の取り出し等を行う。
図10の例によると、金型内を酸素雰囲気に置換した後に、アルミニウム合金の溶湯を金型内に充填するから、アルミニウム合金の酸化を積極的に促進でき、この酸化により合金材料の組織を緻密にすることができ、材料強度を向上できる。
次に、図11により本発明のアルミニウム合金鋳物の具体的製品例を説明すると、図11は電気発熱部品30の放熱フィン31を本発明のアルミニウム合金鋳物により構成した例を示している。電気発熱部品30はより具体的にはダイオードである。
放熱フィン31は平板状の基板31aの表裏両面に複数枚の薄肉フィン部31bを一体成形している。そして、基板31aのうち、薄肉フィン部31bを成形していない平坦部に円形の取付穴31cを開けて、この円形の取付穴31cに円柱状の外形に形成された電気発熱部品30を圧入固定するようになっている。
薄肉フィン部31bの最小板厚部(先端部)の板厚tは0.5〜1.5mm程度である。このような薄肉板形状であっても、アルミニウム合金鋳物のダイカスト成形時の流動性向上により成形が可能となる。
また、本発明のアルミニウム合金鋳物によると、アルミニウム合金の材料硬度が低下するので、放熱フィン31の基板31aの取付穴31cに電気発熱部品30を圧入固定することが良好な品質で効率よく行うことができる。
なお、図11では、電気発熱部品30を放熱フィン31の基板31aに圧入固定しているが、電気発熱部品30を放熱フィン31の基板31aにかしめ固定する場合にも、アルミニウム合金の材料硬度が低下することにより、放熱フィン31の基板31aのかしめ加工を良好な品質で効率よく行うことができる。
図9、10に示すダイカスト装置において、可動型11の駆動機構としては、油圧駆動機構に限らず、電動モータ、水圧、空気圧等の種々の動力源を用いた駆動機構を使用できる。同様に、真空ポンプ19を駆動する動力源も、電動モータの他に、油圧、水圧、空気圧等の種々の動力源を使用できる。
本発明の実施例1〜5および比較例1〜3の材料成分を示す図表である。 図1の各種のアルミニウム合金材料の流動性の評価結果を示すグラフである。 JISに規定されたアルミニウム合金材料の材料成分を示す図表である。 本発明の実施例1〜5および比較例2、3の材料成分を示す図表で、図1に対してMn/Fe比およびMn+Fe量を付加している。 図4の各種のアルミニウム合金材料の耐食性の評価結果を示すグラフである。 アルミニウム合金材料へのCu添加量と材料硬度との関係を示すグラフである。 本発明の実施例6〜8および比較例4の材料成分を示す図表である。 アルミニウム合金材料へのMg添加量と材料強度との関係を示すグラフである。 本発明の実施形態におけるダイカスト装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態におけるダイカスト装置の他の例を示す概略断面図である。 本発明によるアルミニウム合金鋳物の具体的製品例を示す斜視図である。
符号の説明
10…固定型(金型)、11…可動型(金型)、16…射出スリーブ、16a…給湯口、17…射出プランジャ。

Claims (7)

  1. Si:9.0〜12.0重量%、Mg:0.20〜0.80重量%、Mn+Fe:0.7〜1.1重量%を含み、
    Mn/Fe比:1.5以上であり、
    不純物としてCuが0.5重量%以下に規制され、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなることを特徴とするダイカスト用アルミニウム合金。
  2. 不純物として、更に、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Na、Sbのいずれか一種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用アルミニウム合金。
  3. Mn/Fe比の上限が5.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイカスト用アルミニウム合金。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いてアルミニウム合金鋳物を製造する製造方法であって、
    金型(10、11)を閉じ、前記金型(10、11)内を大気圧未満の所定圧以下に減圧する減圧工程と、
    前記減圧工程後に、前記金型(10、11)内に前記アルミニウム合金の溶湯を充填する溶湯充填工程とを備えることを特徴とするアルミニウム合金鋳物の製造方法。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いてアルミニウム合金鋳物を製造する製造方法であって、
    金型(10、11)を閉じ、前記金型(10、11)内の空気を排出する排気工程と、
    前記排気工程後に、前記金型(10、11)内に酸素を供給して前記金型(10、11)内を酸素雰囲気に置換する雰囲気調整工程と、
    前記雰囲気調整工程後に、前記金型(10、11)内に前記アルミニウム合金の溶湯を充填する溶湯充填工程とを備えることを特徴とするアルミニウム合金鋳物の製造方法。
  6. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いて製造されるアルミニウム合金鋳物であって、
    最小板厚部の板厚が0.5〜1.5mmの薄肉フィン部(31b)を有することを特徴とするアルミニウム合金鋳物。
  7. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載のダイカスト用アルミニウム合金を用いて製造されるアルミニウム合金鋳物であって、圧入もしくはかしめにより他部品と結合される結合部(31c)を有することを特徴とするアルミニウム合金鋳物。
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