JP2006291328A - 電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置 - Google Patents

電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 任意の固体材料に関して、液体化した材料の蒸発による成分および固体ターゲットアブレーションにおける微粒子の発生を抑えることにより、良好な膜質の薄膜を形成することができるレーザアブレーション成膜装置の提供。
【解決手段】 ターゲット11を保持するターゲットホルダ10と、成膜用基板21を保持する基板ホルダ20と、電子線を発生する電子線発生装置30と、電子線収束装置40と、レーザ光照射装置50とを備えた電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置である。電子線収束装置40は、電子レンズを形成することにより電子線発生装置30から発生された電子線をターゲット11の表面の一部に収束させて該表面の一部を局所的に液体化する。レーザ光照射装置50は、電子線収束装置40により液体化されたターゲット11の表面の一部にレーザ光を照射してアブレーションを行う。
【選択図】 図1

Description

本発明はレーザアブレーション成膜装置に関し、特にターゲットを液体化した状態でレーザ光を照射するレーザアブレーション成膜装置に関する。
従来より、基板に薄膜を形成する方法として、レーザアブレーション成膜法が知られている。レーザアブレーション成膜法には、膜の一様性が高い、付着強度が高いなど多くのメリットがある。しかし、固体ターゲットによるレーザアブレーション成膜法では、微粒子が発生してその微粒子が薄膜内部に取り込まれるという問題があるため実用化が難しかった。
かかる問題を回避する方法として、ターゲットを抵抗加熱等の方法により加熱して液体化した状態でレーザ光を照射してアブレーションを行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。液体化した状態でレーザ光を照射すれば微粒子が発生しないため、微粒子が薄膜内部に取り込まれることがほとんどない。この方法は、ガリウムなど低融点でしかも蒸気圧の低い材料については有効である。
同様に、加熱溶融したターゲットに対してレーザ光を照射してレーザアブレーションを行う装置も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平4−311561号公報 特開2002−241930号公報
しかしながら、比較的高い融点を有し溶融した状態での蒸気圧が高いシリコン(Si)などの材料の場合には、液体状態にあるターゲットから蒸発する蒸気の量が多くなる。そして、この蒸気が基板に付着する量は、レーザアブレーションによる付着量に比べて無視できない程度に達する。かかる蒸気の付着によって形成された薄膜の膜質は、レーザアブレーションにより形成された薄膜の膜質と比べて劣るため、結果として形成された薄膜の膜質が悪くなってしまう。
そこで本発明は、任意の固体材料に関して、液体化した材料の蒸発による成分を抑え、かつ、固体ターゲットアブレーションにおける微粒子の発生がなく、従って良好な膜質の薄膜を形成することができるレーザアブレーション成膜装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、固体材料からなるターゲットを保持するターゲットホルダと、該ターゲットホルダに対して所定の位置に設けられ、成膜用基板を保持する基板ホルダと、電子線を発生する電子線発生装置と、電子レンズを形成することにより該電子線発生装置から発生された電子線を該ターゲットの表面の一部に収束させ、もって該ターゲットの表面の一部を局所的に液体化する電子線収束装置と、液体化された該ターゲットの表面の一部にレーザ光を照射するレーザ光照射装置とを備えた電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置を提供している。
ここで、該電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置は真空室を備えた真空容器を更に備え、該電子線発生装置は、電子線放出源と、該電子線放出源に電圧を印加して電子線を放出させる駆動電源とを備え、該ターゲットホルダ、該基板ホルダ、及び、該電子線放出源は該真空室に設けられているのが好ましい。
また、該ターゲットホルダは、底部と、該ターゲットを囲むように該底部から立設された周壁とを備え、該底部及び該周壁は、該ターゲットを収容する凹部を形成し、該周壁は、該レーザ光照射装置側に位置する第1の壁部と、該レーザ光照射装置とは反対側に位置する第2の壁部とを有し、該第1の壁部及び該第2の壁部は、それぞれ、該凹部の内側へ向かって該底部側へ傾斜した開口端部を有するのが好ましい。
また、該駆動電源は、該ターゲットの表面における電子線の収束位置を移動させる電子線移動手段を備えているのが好ましい。更に、該レーザ光照射装置は、該ターゲットの表面におけるレーザ光の照射位置を移動させるレーザ光移動手段を備えているのが好ましい。また、該ターゲットホルダは、該ターゲットを冷却保持するための冷却手段を備えているのが好ましい。
更には、該ターゲットホルダと該基板ホルダとの間に設けられ、該ターゲットの蒸発物が該基板に達するのを妨げる閉状態と該ターゲットの蒸発物が該基板に達するのを可能とする開状態とを切り替え可能なシャッタを備えているのが好ましい。また、該真空容器には、該ターゲットの表面における電子線収束位置とレーザ光照射位置とを観測するための観測窓が設けられているのが好ましい。
請求項1記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置によれば、電子線収束装置がターゲットの表面の一部を局所的に液体化し、レーザ光照射装置がターゲットのうち液体化された表面の一部に対してレーザ光を照射するため、固体ターゲットを用いたレーザアブレーション成膜法のように微粒子が発生するという問題がない。しかも、ターゲットの全体を液体化するのではなくターゲット表面の一部を局所的に液体化するため、ターゲットが液体状態での蒸気圧が高いシリコン(Si)などの材料である場合でも、液体化された部分から蒸発する蒸気の量は非常に少ない。すなわち、かかる蒸気が基板に付着する量は、レーザアブレーションによる付着量に比べて無視できる程度である。したがって、本装置により形成された薄膜は、一様性が良く、付着強度が高い等、レーザアブレーション法に特徴的な多くのメリットを有している。また、本装置によれば、ターゲットがアルミニウムなど低融点の低蒸気圧材料あるいは高融点の昇華性材料である場合であっても、同様に良好な膜質の薄膜を形成することができる。すなわち、任意の固体材料に関して、レーザアブレーション法による良好な膜質の薄膜を形成することができる。
請求項2記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置によれば、ターゲットホルダ、基板ホルダ、及び、電子線放出源は真空室に設けられているため、効果的にレーザアブレーションを行うことができる。
請求項3記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置によれば、レーザ光照射装置側に位置する第1の壁部が、凹部の内側へ向かって底部側へ傾斜した開口端部を有するので、レーザ光をより斜め方向から入射させることができる。よって、基板ホルダが障害となってレーザ光をターゲットに入射させにくいという問題が防止できる。また、レーザ光照射装置とは反対側に位置する第2の壁部も凹部の内側へ向かって底部側へ傾斜した開口端部を有しているので、液体化されたターゲットの表面で反射されたレーザ光が第2の壁部に照射されずに通過する。第2の壁部には液体化したターゲットが蒸発して付着している場合があるため、反射レーザ光がかかる付着物質をアブレーションして不要な微粒子を成膜用基板に付着させるという問題を防止することができる。
請求項4記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置によれば、ターゲットの表面における電子線の収束位置を移動させる電子線移動手段を備えているため、電子線の収束位置をターゲットの表面における適切な位置に移動させることができる。
請求項5記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置によれば、レーザ光照射装置は、ターゲットの表面におけるレーザ光の照射位置を移動させるレーザ光移動手段を備えているので、液体化されたターゲットの表面における適切な位置にレーザ光を照射することができる。
請求項6記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置によれば、ターゲットホルダはターゲットを冷却保持するための冷却手段を備えているので、ターゲットの表面の一部のみを局所的に液体化し、それ以外の部分は極力液体化しないようにすることができる。よって、液体化された部分から蒸発する蒸気の量を更に抑制することができる。
本発明の実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置について図1乃至図5に基づき説明する。
最初に、本発明の実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置1の構成について図1および図2を参照して説明する。図1に示されるように、電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置1は、真空容器6と、ターゲットホルダ10と、基板ホルダ20と、電子線発生装置30と、電子線収束装置40と、レーザ光照射装置50とを備えている。
真空容器6の内部には真空室61が画成されている。真空容器6には真空装置(真空ポンプ)65が設けられており、真空室61を排気して真空状態にすることが可能である。図1に示されるように、ターゲットホルダ10、基板ホルダ20、電子線発生装置30のうち後述するフィラメント31、および電子線収束装置40などが真空室61内に設けられている。
ターゲットホルダ10は、固体材料からなるターゲット11を保持するためのものである。図1および図2に示されるように、ターゲットホルダ10は、底部12(図2)と、ターゲット11を囲むように底部12から立設された周壁13とを備えている。周壁13は上面13Aを有している。底部12及び周壁13は、ターゲット11が保持された坩堝17を収容する平面視略円形状の凹部16を形成している。
図2に示されるように、周壁13は、レーザ光照射装置50側に位置する第1の壁部14と、レーザ光照射装置50とは反対側に位置する第2の壁部15とを有している。すなわち、第1の壁部14および第2の壁部15は周壁13の一部を構成する。第1の壁部14は、凹部16の内側へ向かって底部12側へ傾斜した開口端部14Aを有している。同様に、第2の壁部15は、凹部16の内側へ向かって底部12側へ傾斜した開口端部15Aを有している。開口端部14Aおよび15Aは、上面13Aの一部を構成する。したがって、図2に示されるように、上面13Aは外周側から凹部16に向かって傾斜し、円錐面の一部のような形状をなしている。
図1に示されるように、ターゲットホルダ10には水冷装置18が設けられており、坩堝17およびターゲット11を冷却保持することが可能である。図1に示されるようにターゲットホルダ10はアースに接続されているため、ターゲットホルダ10、坩堝17、およびターゲット11は全てアース電位となっている。また、真空容器6もアース電位である。
基板ホルダ20は、薄膜を形成するための成膜用基板21を保持するためのものである。本実施の形態においては、基板ホルダ20は、ターゲット11に対して約10cm離れた上方(+Z方向)に設けられている。基板ホルダ20は開口部20aを有していて、成膜用基板21の成膜面21Aがターゲット11に向かって露出している。よって、ターゲット11から蒸発した物質が、開口部20aを通って成膜面21Aに蒸着されるようになっている。なお図1において、基板ホルダ20および成膜用基板21については、成膜面21Aに垂直な方向に沿った断面が示されている。
基板ホルダ20とターゲットホルダ10との間には、シャッタ71が設置されている。シャッタ71は開閉可能に構成され、開状態においてはターゲット11から蒸発した物質が成膜用基板21に到達するのを許容し、閉状態においてはターゲット11から蒸発した物質が成膜用基板21に到達するのを阻止する。
電子線発生装置30は、フィラメント31と電子線発生用駆動電源32とから構成される。フィラメント31は、例えばタングステンフィラメントから構成され、電流が流れると自由電子を放出する。電子線発生用駆動電源32は、フィラメント31にマイナスの電位を与え、かつ、フィラメント31を加熱する電流を流すためのものである。電子線発生用駆動電源32は、交流電源33、直流電源34、コイルL1〜L3、コンデンサC1、C2、および遠隔操作装置35を備えている。
交流電源33の電圧Vは、後述するように遠隔操作装置35により可変である。交流電源33はコイルL1に接続されている。コイルL1〜L3は、全体として一つの絶縁トランスを構成している。図1のコイルL1〜L3にそれぞれ付された点で示されるように、コイルL2およびL3の極性は互いに等しく、コイルL2、L3とコイルL1の極性は互いに逆向きである。またコイルL2およびL3のインダクタンスは互いに等しい。また、コンデンサC1およびC2は互いに等しい容量を有する。
直流電源34は、その一方がアースに接続され、もう一方がコンデンサC1とC2との間およびコイルL2とL3との間に接続されている。直流電源34の電圧Eは、遠隔操作装置35により、0〜−8kV(キロボルト)の範囲で可変である。なお、電子線発生装置30には、フィラメント31に流れる電流を測定するための電流計(図示せず)が接続されている。
遠隔操作装置35は、パワースイッチ35P、制御つまみ35A、および制御つまみ35Bを備えている。パワースイッチ35Pは、電子線発生装置30の電源をオン・オフするためのスイッチである。制御つまみ35Aは、直流電源34の電圧Eを調整するためのつまみである。制御つまみ35Bは、交流電源33の電圧Vを調整するためのつまみである。なお、電子線発生装置30のうちフィラメント31は真空室61内に設けられているが、電子線発生用駆動電源32は真空容器6の外部に設けられている。
電子線収束装置40は、永久磁石41と、ヨーク42および43と、アノード44とを備えている。ヨーク42、43は鋼鉄製で、永久磁石41の両側にそれぞれ設けられている。永久磁石41とヨーク42および43とは全体として略「コ」の字状をなしており、したがって馬蹄形磁石と同様の磁界H(図4)を形成する。
アノード44は略平板状をなし、その中ほどには上下方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔44aが形成されている。図2に示されるように、アノード44は、貫通孔44aがフィラメント31の上方(+Z方向)に位置するように設けられている。また図1に示されるようにアノード44は、アースに接続されている。
レーザ光照射装置50は、レーザ装置51、レンズ52、および移動装置53を備えている。レーザ装置51は、所望の波長、強度、周波数を有するパルスレーザ光を発生させることが可能な市販のパルスレーザ装置である。レンズ52は、レーザ装置51から発せられたレーザ光を集光してターゲット11に照射するためのレンズであり、本実施の形態においては焦点距離500mmの石英レンズが用いられる。移動装置53は、レンズ52に接続され、XYZ各軸方向に関してレンズ52を平行移動させることが可能である。かかる移動を行うことにより、ターゲット11の表面におけるレーザ光の照射位置を移動させることができる。なお、これらレーザ装置51、レンズ52、および移動装置53は、真空容器6の外部に設けられている。
真空容器6の壁にはレーザ窓63が設けられており、レーザ装置51から発せられレンズ52により集光されたレーザ光を透過可能である。真空室61内であって、レーザ窓63とターゲット11との間には、開閉可能に構成されたシャッタ72が設けられている。シャッタ72はレーザ光照射時以外には閉じられ、加熱されたターゲット11から蒸発する気体成分がレーザ窓63に付着するのを抑制する。
また、真空容器6の壁にはターゲット観察用窓62が設けられており、ターゲット11の様子を外部から観察することができる。真空室61内であって、ターゲット観察用窓62とターゲット11との間には、開閉可能に構成されたシャッタ73が設けられている。シャッタ73はターゲット観察時以外には閉じておかれるため、加熱されたターゲット11から蒸発する気体成分がターゲット観察用窓62に付着するのを抑制することができる。
次に、上述した電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置1を用いた成膜方法について、図3乃至図5を参照しながら具体的に説明する。図3は当該成膜方法における各ステップ(以下、ステップを「S」と称する。)S10〜S50を示すフローチャートである。また、図4および図5は電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置1により成膜を行っている様子を示している。
図3に示されるように、S10では、前準備としてターゲット11をターゲットホルダ10内に水平に設置し、洗浄済の成膜用基板21を基板ホルダ20に固定する。なお本実施の形態においては、ターゲット11として直径20mm、厚さ5mm、純度99.999%の円盤状シリコンを用いる。また、成膜用基板21として厚さ0.5mm、一辺が1cmの正方形状石英ガラス板を用いる。
S20では、真空容器6を真空装置65によって排気して、約3×10−6torrより高い真空状態にする。このときシャッタ71〜73は閉じた状態にしておく。また水冷装置18によりターゲットホルダ10を冷却状態にする。
S30では、ターゲット11に対して電子線照射を行う。図4に示される遠隔操作装置35のパワースイッチ35Pをオンにする。制御つまみ35Bを回して交流電源33の電圧Vを調整し、フィラメント31から放出される電子線Dの強度を約20mA(ミリアンペア)に調整する。フィラメント31に流れる電流が増加するほど放出される電子の量も増加するため、交流電源33の電圧Vを調整することによりフィラメント31に流れる電流値を調整して、フィラメント31から放出される電子線Dの強度を調整することができる。
ここでシャッタ73を開いてターゲット観察用窓62からターゲット11を観察し、ターゲット11の表面の一部の領域が液体状になっていることを確認する。この領域を液体状領域11Aと呼ぶ。液体状領域11Aは、例えば大きさが約3mm×5mmの略楕円形状をしている。後述するように直流電源34の電圧Eを調整することによって電子線Dの収束位置を調整することができるため、ターゲット11を観察しながら制御つまみ35Aを回して直流電源34の電圧Eを調整し、電子線Dの収束位置を液体状領域11Aの中央付近に移動させる。
ここで、電子線発生用駆動電源32がフィラメント31にマイナスの電位を与え、かつ、フィラメント31を加熱する電流を流すしくみについて説明する。交流電源33による電流がコイルL1に流れると、コイルL2およびL3に誘導起電力が生じる。上述したようにコイルL2、L3の極性およびインダクタンスは等しいので、向きおよび大きさの等しい誘導起電力がコイルL2およびL3にそれぞれ生じ、フィラメント31の両端にはこれらの起電力を足し合わせた交流電圧が印加される。またフィラメント31には、直流電源34の電圧Eの分だけアースに対して低い電位が与えられる。以上より、フィラメント31には、電位−E(マイナスE)を中心とし、かつ、交流電源33の電圧に応じた振幅を有する交流電圧が印加されることになる。なお、コンデンサC1およびC2はフィラメント31に印加される交流電圧を平滑化する機能を有するので、フィラメント31の電位をより安定にすることができる。
次に、直流電源34の電圧Eを変えることにより電子線Dの収束位置を調整できるしくみについて説明する。上述したように、フィラメント31には約−Eの電位が与えられており、アノード44にはアース電位が与えられている。よって、フィラメント31とアノード44との間には、電位−Eとアース電位との差による電界がかかっている。また、アノード44の電位は、ターゲットホルダ10および真空容器6と同じくアース電位である。以上より、フィラメント31から放出された電子は、この電界によって上方(+Z方向)へ向かって加速される。フィラメント31の上方には、アノード44の貫通孔44aが位置しているため(図2)、大部分の電子は貫通孔44aを通過してアノード44の上方に達する。ここでアノード44の上方に達した時点での電子の速度をvとすると、速度vは電圧Eの値が大きいほど大きい。
一方、永久磁石41およびヨーク42、43により、磁界Hが生じている。速度vの電子は、磁束密度Bの磁界中において、F=−e・v×Bで表される力Fを受ける。ここで、eは電子の電荷量、vとBは共にベクトルであり、・はスカラー積、×はベクトル積を表す。すなわち電子は、速度vの方向および磁束密度Bの磁界の方向の両方に垂直な方向に向かう力Fを受ける。よって、電子は力Fの大きさに応じた距離だけ曲げられる。上記のように速度vは直流電源34の電圧Eの値が大きいほど大きくなるため、電圧Eを調整することにより電子線Dの収束位置を調整することができる。以上説明したように、電子線収束装置40は、フィラメント31から放出された電子を、電界および磁界の電子レンズ効果によって液体状領域11A上に収束照射する。
S40では、レーザ装置51を駆動し、波長約193nm、強度約190mJ/パルス、パルス周波数50Hzのパルスレーザ光を発生させる。シャッタ72を開け、集光レンズ52によって集光されたレーザ光Rを、液体状領域11Aに入射結像させ照射する。結像したレーザ光のターゲット11の表面への照射パターンは、約2mm×0.4mmの大きさである。液体状領域11Aの端の方は液体の厚さが薄いため、液体が100μm程度以上の深さを有する中央付近にレーザ光Rが照射されるようにする。さもないと、レーザ光Rの一部がターゲット11の固体部分にまで到達して、微粒子が発生するおそれがあるからである。
また、移動装置53によりレンズ52を移動させて照射位置を変えながら照射を行う。なぜなら、同一位置のみにレーザ光Rを照射すると液体の粘性のために穴が掘れて液層が薄くなり、レーザ光Rが固体部分にまで到達して微粒子が発生する結果となるためである。具体的には、レーザ光Rの照射位置を、液体状領域11Aの長手方向(Y方向)に沿って、振幅±2mm、0.25mm/秒の一定速度で、液体状領域11A上を周期的に往復させる。なお上記のように、微粒子の発生を防ぐためには、液体状領域11Aの深さは約100μm以上であるのが好ましい。ただし、この深さはレーザ光Rの強度、レーザ光Rの波長、ターゲット11の材料などによっても異なる。
S50では、シャッタ71を開けて成膜用基板21上への成膜を開始し、約10分後にシャッタ71を閉めて成膜を終了する。
本実施の形態によるターゲットホルダ10の形状による効果について、図5を参照して説明する。図5に示されるように、レーザ光Rは、ターゲット11の表面に垂直な方向(Z軸方向)に対して約60度の角度で照射される。このとき、開口端部14Aは凹部16の内側へ向かって底部12側へ傾斜しているため、レーザ光Rは第1の壁部14に遮られることなくターゲット11の液体状領域11Aに照射される。また、反対側の開口端部15Aも凹部16の内側へ向かって底部12側へ傾斜しているため、液体状領域11Aで反射されたレーザ光R´も第2の壁部15に遮られることなく、凹部16の外部へ出射する。したがって、反射レーザ光R´が第2の壁部15の内壁に照射されて、その内壁に蒸発付着されている物質をアブレーションすることにより、不要な微粒子が成膜用基板21に付着するという問題が生じない。
実際に上記の方法により成膜実験を行ったところ、走査電子顕微鏡(SEM)による観測可能なサイズである10nm以上の大きさの微粒子がなく、かつ、厚さ50nmの良質なシリコン膜を得ることができた。また、このシリコン膜にセロハンテープを粘着させた後にセロハンテープを剥がすという実験を行ったが、シリコン膜が剥がれることはなかった。更に比較のため、レーザ光照射を行わずに電子線照射のみでどの程度の膜厚の膜が形成されるかの実験を行ってみたところ、電子線照射による膜厚は、レーザ光照射による膜厚と比較して1/100以下の無視しうる程度であることが分かった。
以上のように、本実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置1によれば、電子線収束装置40がターゲット11の表面の一部を局所的に液体化し、レーザ光照射装置50がターゲット11のうち液体状領域11Aに対してレーザ光Rを照射するため、固体ターゲットを用いたレーザアブレーション成膜法のように微粒子が発生するという問題がない。しかも、ターゲット11の全体を液体化するのではなくターゲット表面の一部を局所的に液体化するため、ターゲット11が液体状態での蒸気圧が高いシリコン(Si)などの材料である場合でも、液体状領域11Aから蒸発する蒸気の量は非常に少ない。すなわち、かかる蒸気が基板に付着する量は、レーザアブレーションによる付着量に比べて無視できる程度である。したがって、本実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置1により形成された薄膜は、一様性が良く、付着強度が高い等、レーザアブレーション法に特徴的な多くのメリットを有している。また、本装置によれば、ターゲットがアルミニウムなど低融点の低蒸気圧材料あるいは高融点の昇華性材料である場合であっても、同様に良好な膜質の薄膜を形成することができる。すなわち、任意の固体材料に関して、レーザアブレーション法による良好な膜質の薄膜を形成することができる。
また、ターゲットホルダ10はターゲット11を冷却保持するための水冷装置18を備えているので、電子線照射によりターゲット11の表面の一部のみを局所的に液体化する一方(液体状領域11A)、それ以外の部分の温度上昇を極力抑制して液体化を防止することができる。よって、液体化された部分から蒸発する蒸気の量を更に抑制することができる。
次に比較例として、ターゲットホルダ10と異なる形状のターゲットホルダ110、210を用いた場合について、図6(a)および図6(b)を参照して説明する。一般に、ターゲットから発生する蒸発物質は、cosθ(θは液体状面に垂直な方向に対して物質が放出される方向がなす角度)に比例して放出されることが知られている。よって、蒸発物質はターゲット11から成膜用基板21に向かう方向(+Z方向)を中心として、広がりをもって放出される。このため、成膜用基板21の方向以外の方向に進む蒸発物質が真空容器6の内壁に付着しないようにするためには、図6(a)に示されるように、坩堝17をターゲットホルダ110の深い位置に設置することが望ましい。
一方、ターゲット11の上方には基板ホルダ20があるため、基板ホルダ20を避けてレーザ光を入射させる必要がある。このため、ターゲットホルダ110および基板ホルダ20が障害となってレーザ光を坩堝17の内部に入れにくいという問題が生じる。図6(a)に示される例では、レーザ光Rの一部が基板ホルダ20によって遮られている。
この問題を解決するためには、図6(b)に示されるように、ターゲットホルダ210の開口端部214Aを斜めに形成し、レーザ光Rをより斜め方向から入射させればよい。ところが、液体状領域11Aは凹凸の無い鏡面になっているため、入射したレーザ光Rの大部分がその鏡面で反射される。反射レーザ光R´は、ほとんど広がらないままターゲットホルダ210の内壁に照射され、ターゲット11から蒸発付着されている物質をアブレーションして不要な微粒子を成膜用基板21に付着させてしまう。ほとんど広がっていないレーザ光はエネルギーが大きく、アブレーションする力も大きいためである。
そこで図5に基づき説明したように、上記実施の形態では、入射側の開口端部14Aに加えて反射側の開口端部15Aが形成されている。したがって、反射レーザ光R´は、第2の壁部15に遮られることなく、ある程度広がった状態で真空容器6の内壁に照射される。広がった反射レーザ光R´のエネルギーは比較的小さく、また、真空容器6の内壁に付着した蒸発物質の量はターゲットホルダ10の内壁に付着した蒸発物質の量と比べて少ないから、微粒子の発生を防止することができる。
本発明による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述した実施の形態ではターゲット11としてシリコンを用いたが、アルミニウムなど低融点の低蒸気圧材料あるいは高融点の昇華性材料など任意の固体材料を用いることができる。
また上述した実施の形態では、坩堝17およびターゲットホルダ10の凹部16は、ターゲット11の形状に合わせて平面視略円形状に形成されている。しかし、ターゲット11、坩堝17、および凹部16の形状は、矩形状など他の形状でもよい。
以上のように、本発明にかかる電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置は、任意の固体材料に関してレーザアブレーション法による良好な膜質の薄膜を形成することができる成膜装置として有用であり、特にターゲットが液体状態での蒸気圧が高いシリコンなどの材料である場合に特に有用である。
本発明の実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置の全体構成を示す説明図。 図1のII−II線に沿った断面図。 本発明の実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置を用いた成膜方法における各工程を示すフローチャート。 本発明の実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置により成膜を行っている様子を示す説明図。 本発明の実施の形態による電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置に用いられるターゲットホルダの形状による効果を示す概略断面図。 比較例によるターゲットホルダの形状を示す概略断面図。 別の比較例によるターゲットホルダの形状を示す概略断面図。
符号の説明
10・・・ターゲットホルダ、 11・・・ターゲット、 11A・・・液体状領域、 12・・・底部、 13・・・周壁、 14・・・第1の壁部、 15・・・第2の壁部、 14A、15A・・・開口端部、 16・・・凹部、 17・・・坩堝、 18・・・水冷装置、 20・・・基板ホルダ、 21・・・成膜用基板、 30・・・電子線発生装置、 31・・・フィラメント、 32・・・電子線発生用駆動電源、 33・・・交流電源、 34・・・直流電源、 35・・・遠隔操作装置、 35P・・・パワースイッチ、 35A、35B・・・制御つまみ、 40・・・電子線収束装置、 41・・・永久磁石、 42、43・・・ヨーク、 44・・・アノード、 44a・・・貫通孔、 50・・・レーザ光照射装置、 51・・・レーザ装置、 52・・・レンズ、 53・・・移動装置、 60・・・真空容器、 61・・・真空室、 62・・・ターゲット観察用窓、 63・・・レーザ窓、 65・・・真空装置、 71〜73・・・シャッタ、 110、210・・・ターゲットホルダ、 C1、C2・・・コンデンサ、 L1〜L3・・・コイル。

Claims (6)

  1. 固体材料からなるターゲットを保持するターゲットホルダと、
    該ターゲットホルダに対して所定の位置に設けられ、成膜用基板を保持する基板ホルダと、
    電子線を発生する電子線発生装置と、
    電子レンズを形成することにより該電子線発生装置から発生された電子線を該ターゲットの表面の一部に収束させ、もって該ターゲットの表面の一部を局所的に液体化する電子線収束装置と、
    液体化された該ターゲットの表面の一部にレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、
    を備えることを特徴とする電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置。
  2. 真空室を備えた真空容器を更に備え、
    該電子線発生装置は、電子線放出源と、該電子線放出源に電圧を印加して電子線を放出させる駆動電源とを備え、
    該ターゲットホルダ、該基板ホルダ、及び、該電子線放出源は、該真空室に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置。
  3. 該ターゲットホルダは、底部と、該ターゲットを囲むように該底部から立設された周壁とを備え、
    該底部及び該周壁は、該ターゲットを収容する凹部を形成し、
    該周壁は、該レーザ光照射装置側に位置する第1の壁部と、該レーザ光照射装置とは反対側に位置する第2の壁部とを有し、
    該第1の壁部及び該第2の壁部は、それぞれ、該凹部の内側へ向かって該底部側へ傾斜した開口端部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置。
  4. 該ターゲットの表面における電子線の収束位置を移動させる電子線移動手段を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置。
  5. 該レーザ光照射装置は、該ターゲットの表面におけるレーザ光の照射位置を移動させるレーザ光移動手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置。
  6. 該ターゲットホルダは、該ターゲットを冷却保持するための冷却手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一記載の電子線補助照射レーザアブレーション成膜装置。
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