JP2007276552A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 給電回路のリレー接点の氷結等による接触不良や異常が発生したときに回復処理を行うことができる電動パワーステアリング装置の制御装置を提供する。
【解決手段】 電源供給線異常検出器32はトルク信号、リレーコイル温度、モータ駆動回路電源電圧を入力とし、モータ駆動回路の電源電圧の変化の状態とトルクゲインの変化の状態とに基づいて電源供給線の異常を判定する。異常検出信号はモータ出力制限器30とフエールセーフ処理器33に出力され、電源リレー47やモータリレー48への給電が停止される。リレーへの通電により温度が上昇して氷結が解除されると、接点をON/OFFさせて接触不良を回復させる処理を実行する。複数回の診断処理を繰り返しても電源供給線の異常が判定されるとき、電源供給線の異常を確定するものとする。
【選択図】 図2

Description

この発明は、電動パワーステアリング装置に関し、特にその電源と制御対象の間に配置されたリレーの導通不良等の異常を検出し、検出された導通不良等の異常を回復させる手段を備えた電動パワーステアリング装置に関する。
車両用の電動パワーステアリング装置は、操向ハンドルの操作によりステアリングシヤフトに発生する操舵トルクと車速を検出し、その検出信号に基づいてモータを駆動して操向ハンドルの操舵力を補助するものである。このような電動式パワーステアリング装置の制御は電子制御回路で実行されるが、その制御の概要は、トルクセンサで検出された操舵トルクと車速センサで検出された車速に基づいてモータに供給する電流の大きさを演算し、その演算結果に基づいてモータに供給する電流を制御する。
即ち、電子制御回路は、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生しているときに、検出された車速が零あるいは低速の場合は大きな操舵補助力を供給し、検出された車速が速い場合は小さな操舵補助力を供給するように操向ハンドルの操舵力と車速に応じてモータに供給する電流を制御することで、走行状態に応じた最適の操舵補助力を与えることができるものである。
この種の装置では、実際にモータに流れる電流が、操舵トルクや車速に基づいて演算されたモータ電流の制御目標値に一致するようフイードバツク制御を行なっており、このためにモータに流れる電流を検出するモータ電流検出手段を備えている。
前記したモータ電流検出手段が故障した場合は正確なモータ電流を測定することができず、この結果、必要以上の電流がモータに流れて過大な操舵補助力を供給したり、或いはモータに必要なだけの電流が流れず、十分な操舵補助力を供給できないという不都合が発生することになる。
さらに、モータに電流を流してモータ電流検出手段の動作を確認するときにモータが回転してしまうと、モータ軸とステアリング機構が結合している状態では操向ハンドルが回転してしまい、不測の事故が発生するおそれがある。
この課題への対応として本出願人は、モータの電気的時定数よりも十分に大きく、且つモータの機械的時定数よりも十分に小さい時間だけ前記モータに低い電圧を印加したときに予測される電流値と、モータ電流検出手段により検出されたモータ電流値に基づいて、モータ電流検出手段の故障を判定する故障判定手段を提案した(特許文献1参照)。
しかし、モータが新しい場合は特に支障はないが、ある程度の期間使用されるとモータの整流子とブラシとの接触面に電気絶縁特性を持つ酸化被膜が形成され、時間経過と共に酸化被膜が厚くなり電気抵抗が高まる傾向があり、より高い電圧をモータに印加しないとモータ電流が流れなくなる。
この課題への対応として本出願人は、モータの電気的時定数よりも十分に大きく、且つモータの機械的時定数よりも十分に小さい時間だけモータ電流指令値を設定すると共にモータ電流指令値に基づく電流制御値を時間の経過と共に変更し、低いモータ印加電圧から出発して時間の経過と共に印加電圧を高めながら、モータ電流予測値とモータ電流検出手段で検出されたモータ電流検出値とを繰り返し比較することによりモータ電流検出手段の故障を検出する故障判定手段を提案した(特許文献2参照)。
しかし、上記したモータの整流子とブラシとの接触面に酸化被膜が形成されて導電性が損なわれるという不都合は、整流子付きモータに限られるものではなく、電動パワーステアリング装置の給電回路に配置されるリレーの接点においても、同じく酸化被膜が形成されて導電性が損なわれるという不都合が発生する。そこで、本出願人は、前記故障判定手段によりモータ電流検出手段の故障判定が複数回連続したときは故障検出処理を中断し、リレーのON/OFF制御を所定期間継続して酸化被膜や異物を除去した後、故障検出処理を再開する制御手段を開発した。
特開平8−91239号公報 特開2003−237605号公報
しかしながら、上記した給電回路に配置されるリレー接点に発生する不都合は、使用期間の長期化により形成される酸化被膜が原因となるばかりでない。極低温環境においてはリレー接点部分に付着した水分の氷結、リレーを構成する可動部材に付着した水分の氷結などによりリレーがON/OFF動作されない事態の発生する可能性がある。
このようなリレーの氷結は、開放形のリレーばかりでなく密閉形のリレーにおいても、樹脂材料によって密閉ケースが構成される場合は、水分を分子レベルで透過させる呼吸作用により内部の湿度が上昇してしまい、上と同じ不都合が発生する可能性がある。
この発明は、従来から課題とされてきた電動パワーステアリング装置の給電回路に配置されるリレーに発生する多様な不都合を解決することを目的とするものである。
この発明は上記課題を解決するもので、請求項1の発明は、少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルクに基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御する備えた電動パワーステアリング装置において、電源供給線に配置されたリレーと、電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、前記リレー温度を推定するリレー温度推定手段と、前記電源供給線の異常を検出する電源供給線異常検出手段とを備え、前記制御装置は、電源電圧の変化の状態とトルクの変化の状態とに基づいて電源供給線の異常を検出することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
そして、前記制御装置において電源供給線の異常の検出に使用される電源電圧の変化の状態とは所定の時間間隔でサンプリングされる前回電源電圧値と今回電源電圧値との差に関する数値情報であり、トルクの変化の状態とは所定の時間間隔でサンプリングされる前回トルク値と今回トルク値との差を示す数値情報である。
そして、前記制御装置は、電源電圧の変化の状態を示す数値情報とトルクの変化の状態を示す数値情報との積算値の符号に基づいて異常発生回数を計数し、異常発生回数の計数が所定の閾値を越えたとき、電源供給線が異常であると判定する。
そして、前記制御装置は、更にモータ電流制限手段を備え、電源供給線の異常が判定されたときは、前記リレー温度推定手段により推定されたリレー温度が所定温度以下の場合はモータ電流を所定値以下に制限するものとする。
そして、前記制御装置は、前記リレー温度推定手段により推定されたリレー温度が所定温度以上に上昇したときは、リレーをON/OFF動作を繰り返すものとする。
そして、前記制御装置は、電源電圧値とトルク値のサンプリングの都度実施される診断においてモータ電流が所定値以下に制限されたときは、次回の診断において診断回数が所定値以下であればモータ電流の制限を解除し、異常発生回数を計数するカウンタ計数値をリセットするものとする。
そして、前記制御装置は、電源電圧値とトルク値のサンプリングの都度実施される診断回数が、所定の診断回数を越えてなお電源供給線が異常であると判定されるときは、電源供給線の異常を確定し、所定のフェールセーフ処理を実行するものとする。
また、前記電源供給線に配置されたリレーは、機械式接点を駆動するために励磁巻線へ通電する方式のリレーである。
また、前記リレー温度推定手段は、リレー巻線へ通電した電流値と巻線抵抗値に基づいて推定するリレー温度推定手段である。
そして、前記電動パワーステアリング装置には、電源供給線に機械式接点を駆動するための励磁巻線と駆動回路をそれぞれ2以上持つ複数のリレーが配置されていてもよい。
以上説明したとおり、この発明の電動パワーステアリング装置は、電源電圧の変化の状態とトルクの変化の状態とに基づいて電源供給線の異常を検出するものである。
トルクが発生している状態、即ちモータ電流が流れる条件の下で、電源電圧の変化の状態から電源供給線の異常を判定するから、リレー接点の氷結やリレーを構成する可動部材に付着した水分の氷結などにより発生する接触不良を確実に検出することができる。
そして、電源供給線の異常が判定されたときは、推定されたリレー温度が所定温度以下(例えば氷点温度以下)の場合は、モータ電流を所定値以下に制限することで、リレー接点の氷結が解除されたときに急激にモータ電流が増加して過剰アシストとなる危険を回避することができる。
そして、リレー温度が所定温度以上に上昇して接触不良、例えば氷結が解除したときは、リレーをON/OFF動作を繰り返すことで、リレー接点に付着した異物を除去することができる。また、リレーはリレー巻線への通電により発熱する自己発熱型のリレーを使用することで、特別に加熱手段を設けることなしにリレー接点の氷結やリレーを構成する可動部材に付着した水分の氷結を解除することができる。
以下、この発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の実施の形態の電動パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図で、操向ハンドル1の軸2は減速ギア4、ユニバーサルジョイント5a、5b、ピニオンラツク機構7を経て操向車輪のタイロツド8に結合されている。軸2には操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が設けられており、また、操舵力を補助するモータ9が減速ギア4を介して軸2に結合している。
パワーステアリング装置を制御する制御手段である制御装置には第1及び第2実施例があり、第1実施例では制御装置10、第2実施例では制御装置50として参照される。
制御装置10(50)は、バツテリ14からイグニッシヨンキー(IGキー)11を経てIG信号が供給されるとともに、並列の電源ラインから電力が供給される。制御装置10(50)は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと車速センサ12で検出された車速に基づいて操舵補助指令値の演算を行い、演算された操舵補助指令値に基づいてモータ9に供給する電流iを制御する。
[制御装置の第1実施例]
図2は、第1実施例の制御装置10の構成を説明するブロツク図で、後述する電源リレー47に対する電源供給線の異常を検出する構成を備えている。
制御装置10は、CPU10Aとそれに接続される検出回路、駆動回路などから構成され、CPU10Aは、CPU内部においてプログラムで実行される機能を示してある。例えば、位相補償器23は独立したハードウエアとしての位相補償器23を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示す。また、図2には、制御装置10の動作の理解を容易にするため、バッテリ14、モータ9も示してある。
以下、制御装置10の機能と動作を説明する。
まず、IGキー11から出力されるON/OFF信号は、IGキーON/OFF検出器21により検出され、IGキー11がONの場合は、ONを示す信号が後述する入力トルク制限器22及びフェールセーフ処理器33に出力される。
トルクセンサ3で検出されたトルク信号は入力トルク制限器22に入力され、所定値以上のトルク信号は制限され、位相補償器23に入力される。位相補償器23では操舵系の安定を高めるために位相補償され、操舵補助指令値演算器24に入力される。また、車速センサ12で検出された車速も操舵補助指令値演算器24に入力される。
操舵補助指令値演算器24は、入力されたトルク信号と車速信号に基づいて所定の演算式によりモータ9に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値Iを演算する。
比較器25、微分補償器26、比例演算器27及び積分演算器28から構成される回路は、実際のモータ電流値iが操舵補助指令値Iに一致するようにフイードバツク制御を行う回路である。
比例演算器27では、操舵補助指令値Iと実際のモータ電流値iとの差に比例した比例値が出力される。また比較器25の出力は積分演算器28において積分され、差の積分値の比例値が出力される。微分補償器26では、操舵補助指令値Iに対する実際にモータに流れるモータ電流値iの応答速度を高めるため、操舵補助指令値Iの微分値が出力される。微分補償器26から出力された操舵補助指令値Iの微分値、比例演算器27から出力された操舵補助指令値と実際のモータ電流値との差に比例した比例値、及び積分演算器28から出力された積分値は、加算器29において加算演算され、モータ出力制限器30を経て電流制御値E(モータ印加電圧を決定するPWM信号のデユーテイ比)が出力される。電流制御値Eはモータ駆動回路41に出力され、モータ9が駆動される。モータ9に流れる電流はモータ電流検出器42で検出され、加算器25にフィードバックされる。
モータ出力制限手段を構成するモータ出力制限器30は、電源供給線異常検出器32からリレー接点の接触不良など電源供給線が異常と判定されて異常信号が入力されると、モータ駆動回路41への電流制御値Eの出力を停止し、モータによる操舵補助力の発生を停止すると共に、電源供給線の異常が解消してモータの出力制限を解除するときは、徐々に出力制限を解除する機能を備える。
リレー接点の接触不良などにより電源供給線が異常とされたときはモータ出力が制限されるので、運転者の操向ハンドル操作に危険を与えることがない。また、リレー接点の接触不良が解消し電源供給線が正常に回復したときは、モータ駆動回路への電流制御値Eの出力を時間を掛けて徐々に回復させ、モータ出力制限を徐々に解除するので、突然に過剰な操舵補助力を発生することがないから運転者の操向ハンドル操作に危険を与えることがない。
このほか制御手段を構成する制御装置10には、モータ駆動回路41に供給される電源電圧を検出する電源電圧検出手段を構成するモータ駆動回路電源電圧検出器46、電源リレー47のリレーコイルに供給される電圧を検出するリレーコイル電圧検出器45、リレーコイルの接点の氷着状態を判定するためにリレーコイル温度を推定するリレー温度推定手段を構成するリレーコイル温度推定器31、電源供給線異常検出手段を構成する電源供給線異常検出器32、電源供給線の異常が検出されたとき、後述する電源リレー47やモータリレー48への給電を停止するフエールセーフ処理器33が設けられている。
リレーコイル電圧検出器45とリレーコイル温度推定器31とは、電源リレー47の温度を推定するもので、検出された電源リレー電圧と電源リレーの内部抵抗から電流値を算出し、リレーコイルの内部抵抗と電流値の2乗値に基づいて発熱量を算出し、別途制御装置に付設された温度センサにより計測されたリレーコイル通電開始時の温度(環境温度)を加算してリレーコイル温度を推定する。
このほか、リレーコイル温度の推定は、リレー周辺に温度センサを設けることでも可能であるが、EPSの制御回路の回路基板の温度を温度センサで検出しているときは、回路基板の温度からリレーコイル温度を推定することもできる。
電源供給線異常検出器32は、入力トルク制限器22を経て入力されたトルク信号、推定されたリレーコイル温度、モータ駆動回路電源電圧検出器46で検出されたモータ駆動回路電源電圧を入力として、電源供給線の異常を検出する。電源供給線の異常が検出されると、前記したとおり異常検出信号はモータ出力制限器30に出力されるほか、異常検出信号はフエールセーフ処理器33に出力され、電源リレー47やモータリレー48への給電が停止される。電源供給線の異常の検出とフエールセーフ処理については後で詳細に説明する。
バッテリ14からモータ駆動回路41へ電力を供給する電源回路には電源リレー47の接点47aが挿入されており、またモータ駆動回路41とモータ9との間にはモータリレー48の接点48aが挿入されており、電源リレー47の接点47a、モータリレー48の接点48aはフエールセーフ処理器33によりON/OFF制御される。
モータ駆動回路41は、前記した電流制御値Eに基いて決定されるPWM信号のデューテイ比によりON/OFF制御される半導体スイッチング素子をHブリッジに接続した回路、その他の回路であり、電流制御値Eに対応した電圧(平均値)をモータ9に供給するものである。図3にモータ駆動回路41の構成の一例を示すが、モータ駆動回路自体は公知の回路であり、ここではその詳細の説明は省く。
以上説明した制御装置10は、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生しているときに、検出された操舵トルクが大きく、また検出された車速が零あるいは低速の場合は電流指令値Iを大きく設定し、検出された操舵トルクが小さく、また検出された車速が速い場合は操舵補助指令値Iを小さく設定するから、走行状態に応じた最適の操舵補助力を与えることができる。
次に、この発明の特徴部分の構成である、電源供給線の断線異常又はリレーの接点の接触不良(以下、電源供給線の異常という)の診断処理について説明する。
上記した電源供給線の異常は、駆動回路の電源電圧を常時監視することで検出可能であるが、バッテリが劣化している場合もモータの駆動時にバッテリ電圧が低下して上と同じ異常現象が発生するので、電源電圧の監視だけでは電源供給線の異常を正確に検出することは困難である。
そこで、この発明では、複数回の診断処理を繰り返し行うものとし、各回の診断処理においてモータ駆動回路の電源電圧の変化の状態とトルクゲインの変化の状態とに基づいて電源供給線の異常を判定し、リレーの接点の接触不良を回復させる処理を実行する。そして、複数回の診断処理を繰り返しても電源供給線の異常が判定されるとき、電源供給線の異常を確定するものとする。
以下の説明では、電源電圧の変化の状態を示す数値として電源電圧の前回サンプリング値E0 と今回サンプリング値E1 との差Ed (Ed =E0 −E1 )と、トルクゲインの変化の状態を示す数値としてトルクゲインの前回サンプリング値T0 と今回サンプリング値T1 との差Td (Td =T0 −T1 )を使用する。
また、電源供給線の異常検出は、イグニッションキーをONとした後のEPS制御回路の初期診断時のほか、通常のアシスト(操舵補助)制御中も、以下説明するデータを所定期間毎にサンプリングして行なうものである。
まず、電源電圧の前回サンプリング値E0 と今回サンプリング値E1 との差Ed (Ed=E0 −E1 )と、トルクゲインの前回サンプリング値T0 と今回サンプリング値T1 との差Td (Td =T0 −T1 )とを演算し、さらにその乗算値C(C=Ed ×Td )を算出する。
そして、上記サンプリングを行なう都度、乗算値Cの符号に応じて異常発生回数を示す異常カウンタをカウントアップ或いはカウントダウンして、異常カウンタの計数値が所定の閾値を越えた時、異常状態の発生と判断して所定の処理を行う。
即ち、乗算値Cの符号が負(C<0)になったときは、異常発生回数を示す異常カウンタをカウントアップ(加算1)し、乗算値Cの符号が正(C>0)になったときは異常カウンタをカウントダウン(減算1)し、乗算値Cの符号が零(C=0)のときは異常カウンタをそのままに維持する。
なお、上記差Ed (Ed =E0 −E1 )と差Td (Td =T0 −T1 )との乗算結果である乗算値C(C=Ed ×Td )は、通常の状態では、符号が必ず正(プラス)又は零になり、負(マイナス)にはならない。例えば、トルクゲインが最大の状態で急操舵を行なった場合はトルクゲインの変化は零、電源電圧の変化が前回サンプリング値E0 と今回サンプリング値E1 との差Ed (Ed =E0 −E1 )で、その符号が負(マイナス)となる場合も生じるが、その乗算結果である乗算値Cは零であり、符号が負ではなく、異常の扱いとはしない。
異常カウンタの計数値が予め設定された所定の閾値に達したとき、電源供給線が異常と判定するが、この段階では、操舵補助力の供給を停止、即ちモータへの給電を停止することなく、以下の処理を実行する。
まず、電源供給線が異常と判定された時点でのリレー温度を推定し、リレー温度推定値が予め設定した所定値(例えば、氷結温度0℃)以下であれば、モータ電流の出力制限を行う。これは、リレー接点の突然の接触によりモータ電流が流れて過剰なアシストが発生する危険を回避するためである。
そして、モータ電流の出力制限開始後もリレー温度の推定処理を実行し、リレー温度推定値が予め設定した所定温度以上となったときは、リレーを一旦OFFとした後再びONとするワイピング動作(以下、OFF/ON動作という)を予め設定した所定回数行う。このとき、リレーの1回のOFF/ON動作の後は、所定の時間の経過を待ってリレー接点の接触状態が安定してから次の動作を開始するものとする。
上記したリレーのOFF/ON動作が終了した後、モータ電流の出力制限を徐々に解除する。出力制限を解除する時間は運転者に危険を与えないように適当な時間を掛けて徐々に解除するものとする。これは、例えばリレー温度推定値が氷結温度0℃であったときにリレーのOFF/ON動作を行なった結果、リレー接点が正常に回復した場合、直ちにモータ電流の出力制限を解除すると、操舵トルクに応じたモータ電流が流れて過剰な操舵補助力が発生して運転者に危険を与える場合があるので、モータ電流の出力制限は徐々に解除するようにするのである。
以上で、第1回の診断処理における電源供給線の異常状態の判定とリレーの接点の接触不良の回復処理を終了するが、この診断処理における異常状態の判定とリレーの接点の接触不良の回復処理を、所定診断回数、例えば2回繰り返しても異常カウンタの計数値から異常と判定されたときは異常の発生を確定し、フェールセーフ処理、即ち操舵補助力の供給を停止する。
図4は、上記した診断処理における電源供給線の判定処理の概略を説明するフローチヤートである。トルクセンサ及び車速センサで検出された操舵トルクと車速に基づいて演算された電流指令値に基づくアシスト制御(ステップP1)、及びリレーの温度の推定処理が実行される(ステップP2)。電源供給線の異常判定処理が実行され(ステップP3)、イグニッションキー(IGキー)がOFF(IGキーがOFFでも制御装置は通電されて動作中)とされたか、またフェール処理中か(異常判定が確定されたとき実行される)を判定する(ステップP4)。この結果、判定が否定的な場合はステップP1に戻り、異常判定処理を繰り返す。また判定が肯定的な場合は、既にフェールセーフ処理が実行されているので、モータ電流の出力制限を徐々に解除する後処理を実行し(ステップP5)、処理を終了する。
図5は、図4のフローチヤートでステップP3として示した電源供給線の異常判定処理の詳細を説明するフローチヤートである。まず、電源電圧の前回サンプリング値E0 と今回サンプリング値E1 との差Ed (Ed =E0 −E1 )と、トルクゲインの前回サンプリング値T0 と今回サンプリング値T1 との差Td (Td =T0 −T1 )を算出し、前記差Ed と差Td との乗算値C(C=Ed ×Td )を算出する(ステップP11)。
このとき、電源電圧の今回サンプリング値E1 とトルクゲインの今回サンプリング値T1 を記憶装置に格納し、次回の演算において、前回サンプリング値E0 及びT0 として使用するものとする。
乗算値Cが零(C=0)か否かを判定し(ステップP12)、C=0の場合はステップP16に移る。ステップP12の判定でC=0でない場合は、乗算値Cが正(C>0)か否かを判定し(ステップP13)、乗算値Cが正(C>0)の場合は異常カウンタの計数内容から1減算し(ステップP14)、乗算値Cが負(C<0)の場合は異常カウンタの計数内容に1加算する(ステップP15)。
異常カウンタの計数内容が予め設定された閾値(例えば100)よりも大きいか否かを判定し(ステップP16)、異常カウンタの計数内容が閾値より大きい場合は、注意すべき異常状態が発生しているものと判断してモータ電流の出力制限を実行する(ステップP17)。異常カウンタの計数内容が閾値未満の場合は、注意すべき異常状態は発生していないものと判定して、今回(第1回)の診断処理を終了し、次回(第2回)の診断処理に移る。
また、リレー温度推定値が予め設定された所定温度よりも高いか否かを判定し(ステップP18)、リレー温度推定値が所定温度(氷結温度)よりも高い場合は、リレーの氷結状態は解消したものと判断して、診断回数が予め設定された所定回数(例えば2回)未満か否かを判定し(ステップP19)、所定回数未満の場合は診断処理回数カウンタに1を加算し(ステップP20)、リレー接点のワイピング動作(リレーのOFF/ONF動作)を行い(ステップP21)、異常カウンタをリセットし(ステップP22)、モータ電流の出力制限を徐々に解除することを許可し(ステップP23)、次回の診断処理に移る。
ステップP18の判定でリレー温度推定値が予め設定された所定温度よりも高くない場合は、リレーの氷結状態は解消していないものと判断して、氷結状態の解消を待つため今回の診断処理を終了し、次回の診断処理に移る。
また、ステップP19の判定で診断処理回数が予め設定された所定回数(例えば2回)に達したときは電源供給線の異常状態が解消できないものと確定し、診断回数カウンタをリセットし(ステップP24)、フェール処理の実行(ステップP25)、即ち、操舵補助力の供給を停止、即ちモータへの給電の停止を指令し、次回の診断処理に移る。
図6は、極低温環境において、電源リレー47のリレー接点47aが凍結して接触不良となり、電源供給線が異常とされた場合の異常検出処理のタイミングの一例を説明するタイミングチャートである。
時点t0 でEPSによる制御が開始される。この時点では、リレー温度Tは凍結温度以下のTf 、リレー駆動回路はリレーONに設定するがリレー接点は凍結のためOFFの状態、トルクゲインは100%、駆動電源電圧は正常値の下限、モータ電流の出力制限無し(100%)、異常カウンタは正常値、となっている。
リレー駆動回路はONに設定されるからリレーコイルへの通電によりリレー温度は次第に上昇する。トルクゲインの変化の状態の監視、及び駆動電源電圧の変化の状態の監視が開始され、異常カウンタのカウントが開始される。
即ち、電源電圧の前回サンプリング値E0 と今回サンプリング値E1 との差Ed (Ed=E0 −E1 )と、トルクゲインの前回サンプリング値T0 と今回サンプリング値T1 との差Td (Td =T0 −T1 )とを演算し、さらにその乗算値C(C=Ed ×Td )を算出し、サンプリングを行なう都度、乗算値Cの符号に応じて異常発生回数を示す異常カウンタのカウントが開始される。
時点t1 で異常カウンタのカウント値が所定の閾値を越えて電源供給線の異常が確定すると、モータ電流の出力制限が行われる。リレー温度Tが上昇して凍結解除温度T0 に達した時点t2 でリレー接点のワイピング動作(OFF/ON動作)を行なう。これにより、リレー接点の凍結が解除され、付着していた氷片その他の異物が除去され、リレー接点はONとなり、異常カウンタはリセットされる。この後、時点t3 からモータ電流の出力制限が徐々に解除され、時点t4 でモータ電流の出力制限が完全に解除され、正常な状態に復帰する。
[制御装置の第2実施例]
図7は、第2実施例の制御装置50の構成を説明するブロツク図で、モータリレー48及びモータ9に対する電源供給線の異常を検出する構成を備えている。
第2実施例の制御装置50は、CPU50Aとそれに接続される検出回路、駆動回路などから構成され、CPU50Aは、CPU内部においてプログラムで実行される機能を示してある。また、図7には、制御装置50の動作の理解を容易にするため、バッテリ14、モータ9も示してある。
第2実施例の制御装置50は、す第1実施例と類似した構成であるから、第1実施例と同一の回路要素、機能要素については同一符号を付して説明を省略し、以下、相違点について説明する。
第2実施例では、電源リレー47の電圧を検出するリレーコイル電圧検出器(第1実施例の45)に代えてモータリレー48の電圧を検出するリレーコイル電圧検出器51を、リレーコイル温度推定器(第1実施例の31)に代えてリレーコイル温度推定器53を備える。また、モータ駆動回路電源電圧検出器(第1実施例の46)に代えてモータ端子電圧検出器52を、電源供給線異常検出器(第1実施例の32)に代えて電源供給線異常検出器54をそれぞれ備えている。
第2の実施の形態では、電源供給線異常検出器54にリレーコイル温度推定器53で推定されたモータリレー48の温度推定値、モータ端子電圧検出器52で検出されたモータ端子電圧、モータ電流検出器42で検出されたモータ電流が入力され、モータリレー48及びモータ9に対する電源供給線の異常が検出される。なお、リレーコイル温度の推定は第1実施例で説明したものと同様の手法による。
モータリレー48及びモータ9に対する電源供給線の異常が検出されると、異常検出信号はモータ出力制限器30に入力され、モータ駆動回路41への電流制御値Eの出力を停止してモータによる操舵補助力の発生を停止させるほか、異常検出信号はフエールセーフ処理器33に出力され、電源リレー47やモータリレー48への給電が停止される。
電源供給線の異常の検出とフエールセーフ処理は、第1実施例で説明した手法と同様で、第1実施例で説明した電源電圧をモータ端子電圧に、電源リレーをモータリレーに読み替えたものとなるので、詳細な説明は省略する。
図8は、図2及び図7に示す制御回路のモータリレー48に置き換えて使用することができる複合リレー60及びその駆動回路の一例を説明する図である。複合リレー60は鉄心61の周囲に複数のリレーコイルL1、L2、・・・Lnが配置されており、2つのリレーコイル、例えばL1とL2とは対のコイルで、略同一特性に設定されている。また、鉄心61の端部には引張バネ62で鉄心61から離れる方向に付勢された可動子63が配置され、可動子63には可動子接点63aが設けられ、可動子接点63aに対向する位置には固定子接点63bが配置されている。可動子接点63aと固定子接点63bは、図2に示す制御回路のモータリレー48の接点48aに対応するもので、モータ等の図示しない制御対象が接続される。
また、リレーコイルL1、L2、・・・Lnはそれぞれ駆動回路D1、D2、・・・Dnに接続されており、駆動回路D1、D2、・・・Dnは、例えば図2に示す制御回路のフェールセーフ処理器33に対応するもので、例えば、制御対象の装置が複数の異常検出部とその検出結果でフェールセーフ処理を行うような構成を備えているような場合は、駆動回路D1、D2、・・・Dnは上記複数の異常検出部の検出結果で動作する複数のフェールセーフ処理器となる。
なお、複合リレー60のリレーコイルはL1、L2、・・・Lnの複数を備え、駆動回路もD1、D2、・・・Dnの複数を備えているが、使用に際しては2個、4個など任意の個数を選択して使用するとよい。また、回路構成によっては共通のリレー接点を複数の異なるリレーコイルのいずれかを駆動して開閉するように使用することも可能である。
次にその動作を簡単に説明する。まず、通電によりリレー温度を上昇させる場合は、発生する磁力が打消されるように駆動回路D1、D2を駆動してコイルL1とL2とに互いに逆方向の電流を供給し、可動子53を動作させない。これらのコイルL1、L2は通電により発熱して複合リレー60の温度が上昇するから、可動子接点63a、固定子接点63bの凍結を解除することができる。
また、複合リレー60の通常の動作をさせる場合において、接点を閉じるときは、発生する磁力の方向が同一方向を向くように駆動回路D1、D2を駆動してコイルL1、L2に同一方向の電流を供給し、引張バネ62の付勢力に抗して可動子63を鉄心61に吸引させて可動子接点63aを固定子接点63bに接触させる。また接点を開くときは、コイルL1、L2への電流の供給を停止して引張バネ62の付勢力により可動子63を鉄心61から離し、可動子接点63aと固定子接点63bとの接触を解除させるものとする。
以上、この発明に係る電源回路の導通不良を解決する手段を、操舵アシスト用モータの電源回路によって説明したが、この発明に係る電源回路の導通不良を解決する手段は、その他の電源回路の導通不良の解決にも適用できることは言うまでもない。
電源とモータとの間に配置されて電源回路の開閉を行なうリレー接点の導通不良、特に低温環境においてリレー接点の氷結などによる導通不良や異常の発生を検出し、回復処理できる電動パワーステアリング装置である。
この発明の実施の形態の電動パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図。 制御装置の第1実施例のブロツク図。 モータ駆動回路の構成の一例を説明する図。 電源供給線の異常判定処理の概略を説明するフローチヤート。 図4のフローチヤートにおける電源供給線の異常判定処理の詳細を説明するフローチヤート。 リレー接点の凍結による接触不良で電源供給線の異常が判定された場合の異常検出処理のタイミングを説明するタイミングチャート。 制御装置の第2実施例のブロツク図。 複合リレーとその駆動回路の一例を説明する図。
符号の説明
1 操向ハンドル
2 軸
3 トルクセンサ
4 減速ギア
5a、5b ユニバーサルジョイント
7 ピニオンラツク機構
8 タイロツド
9 モータ
10 制御装置(第1実施例の制御装置)
11 イグニッシヨンキー(IGキー)
12 車速センサ
14 バツテリ
21 IGキーON/OFF検出器
22 入力トルク制限器
23 位相補償器
24 操舵補助指令値演算器
25 比較器
26 微分補償器
27 比例演算器
28 積分演算器
29 加算器
30 モータ出力制限器
31 リレーコイル温度推定器
32 電源供給線異常検出器
33 フエールセーフ処理器
41 モータ駆動回路
42 モータ電流検出器
45 リレーコイル電圧検出器
46 モータ駆動回路電源電圧検出器
47 電源リレー
47a リレー接点(電源リレーのリレー接点)
48 モータリレー
48a リレー接点(モータリレーのリレー接点)
50 制御装置(第2実施例の制御装置)
51 リレーコイル電圧(バッテリ電圧)検出器
52 モータ端子電圧検出器
53 リレーコイル温度推定器
54 電源供給線異常検出器
60 リレー
61 鉄心
62 引張バネ
63 可動子
L1、L2、・・・Ln リレーコイル
D1、D2、・・・Dn 駆動回路

Claims (10)

  1. 少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルクに基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御する制御装置を備えた電動パワーステアリング装置において、
    電源供給線に配置されたリレーと、
    電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、
    前記リレー温度を推定するリレー温度推定手段と、
    前記電源供給線の異常を検出する電源供給線異常検出手段とを備え、
    前記制御装置は、電源電圧の変化の状態とトルクの変化の状態とに基づいて電源供給線の異常を検出すること
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記制御装置において電源供給線の異常の検出に使用される電源電圧の変化の状態とは所定の時間間隔でサンプリングされる前回電源電圧値と今回電源電圧値との差に関する数値情報であり、トルクの変化の状態とは所定の時間間隔でサンプリングされる前回トルク値と今回トルク値との差を示す数値情報であることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記制御装置は、電源電圧の変化の状態を示す数値情報とトルクの変化の状態を示す数値情報との積算値の符号に基づいて異常発生回数を計数し、異常発生回数の計数が所定の閾値を越えたとき、電源供給線が異常であると判定すること
    を特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記制御装置は、更にモータ電流制限手段を備え、電源供給線の異常が判定されたときは、前記リレー温度推定手段により推定されたリレー温度が所定温度以下の場合はモータ電流を所定値以下に制限すること
    を特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記制御装置は、前記リレー温度推定手段により推定されたリレー温度が所定温度以上に上昇したときは、リレーをON/OFF動作を繰り返すこと
    を特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記制御装置は、電源電圧値とトルク値のサンプリングの都度実施される診断においてモータ電流が所定値以下に制限されたときは、次回の診断において診断回数が所定値以下であればモータ電流の制限を解除し、異常発生回数を計数するカウンタ計数値をリセットすること
    を特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。
  7. 前記制御装置は、電源電圧値とトルク値のサンプリングの都度実施される診断回数が、所定の診断回数を越えてなお電源供給線が異常であると判定されるときは、電源供給線の異常を確定し、所定のフェールセーフ処理を実行すること
    を特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  8. 前記電源供給線に配置されたリレーは、機械式接点を駆動するために励磁巻線へ通電する方式のリレーであること
    を特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  9. 前記リレー温度推定手段は、リレー巻線へ通電した電流値と巻線抵抗値に基づいて推定するリレー温度推定手段であること
    を特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  10. 前記電動パワーステアリング装置は、電源供給線に機械式接点を駆動するための励磁巻線と駆動回路をそれぞれ2以上持つ複数のリレーが配置されていること
    を特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。


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