JP2008024571A - グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents

グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの製造方法 Download PDF

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修平 若原
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Abstract

【課題】 発熱部品からの熱を速やかに移動させることができる十分な熱輸送能力を有するグラファイトフィルムを、提供することを目的としている。目的達成のための一つのアイデアとして、厚みの厚い高分子フィルムを黒鉛化する方法が挙げられるが、この方法では、表面が剥がれてボロボロになりやすいという課題がある。
【解決手段】厚みが80μm以上300μm以下である高分子フィルムを炭化昇温速度2.5〜20℃/min、黒鉛化昇温速度2℃/min以下で熱処理することを特徴とする、グラファイトフィルムの製造方法、によって、解決する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、放熱フィルムとして使用されるグラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの製造方法に関する。
熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得る方法として、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、のうちから選ばれた少なくとも1種類の高分子フィルムを1800℃以上で加熱し、グラファイトに転化する事を特徴とするグラファイトの製造方法が知られている(特許文献1)。
特許文献1の方法で得られるグラファイトは、高い熱伝導性を有するため、電子機器の放熱部材として使用されている。具体的な使用例としては、
1.CPUと冷却ファンやヒートシンクの間に挟む放熱スペーサや
2.DVD光ピックアップ部分や筐体部分に貼り熱を拡散させる放熱スプレッダ
等が挙げられる。
しかしながら、従来(特許文献1)の方法で作製されるグラファイトフィルムは、面方向へ熱拡散性をある程度は有するものの、発熱部品の発熱密度が急速に増加している現在においては、その熱輸送能力は不十分であり、温度の高いヒートスポットが発生している。そのため、従来のグラファイトフィルムより、高い熱輸送能力を示すグラファイトフィルムの開発が求められている。

特開昭61−275115号公報。
発熱部品からの熱を速やかに移動させることができる十分な熱輸送能力を有するグラファイトフィルムを、提供することを課題・目的としている。
熱輸送能力の優れたグラファイトフィルム開発の一つのアイデアとして、厚みの厚いグラファイトフィルムの作製が挙げられる。そのためには、従来の原料フィルムより、厚みが厚い原料フィルムを黒鉛化する必要があるが、従来(特許文献1)の黒鉛化の方法では、厚みが厚くなるほど、
<1>分解ガスが抜けにくく、フィルムが破損したり、黒鉛剥がれを起こしたりしやすくなった。
<2>また、厚みの厚いフィルムは昇温過程での分子配向の制御が難しく、グラファイト化の進行が不均一になり、黒鉛化後の柔軟性や熱伝導性が劣っていた。
本発明では、従来の原料フィルムより厚みの厚い高分子フィルムを、従来の炭化昇温速度より早い昇温速度で熱処理し、従来黒鉛化昇温速度より、遅い昇温速度で熱処理することで、これら<1><2>の問題を解決し、熱輸送能力に優れた(厚みの厚い)グラファイトフィルムを作製できた。
(1)本発明の第1は、
「厚みが80μm以上・300μm以下である高分子フィルムを炭化昇温速度2.5〜20℃/min、黒鉛化昇温速度2℃/min以下で熱処理することを特徴とする、グラファイトフィルムの製造方法」、
である。
(2)本発明の第2は、
「前記高分子フィルムを1000℃で熱処理して得られる炭化フィルムの25℃での厚み/高分子フィルムの25℃での厚みの比率が、0.80以上・0.96以下となる炭化工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法」、
である。
(3)本発明の第3は、
「前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、およびポリベンゾビスイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする、請求項1〜2に記載のグラファイトフィルムの製造方法」、
である。
(4)本発明の第4は、
「前記ポリイミドフィルムの複屈折率が0.08以上であることを特徴とする、請求項3に記載のグラファイトフィルムの製造方法」、
である。
(5)本発明の第5は、
「前記ポリイミドフィルムの複屈折率が0.12以上であることを特徴とする、請求項3に記載のグラファイトフィルムの製造方法」、
である。
(6)本発明の第6は、
「前記ポリイミドフィルムが、前駆体であるポリアミド酸を脱水剤とイミド化促進剤とを用いてイミド化して作製されうるポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法」、
である。
(7)本発明の第7は、
「前記のポリイミドフィルムは、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記と異なるジアミンを反応させて前記ポリアミド酸を合成し、前記ポリアミド酸をイミド化して作製されうることを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法」、
である。
(8)本発明の第8は、
「単位面積当たりの重量が0.010g/cm以上、面方向の熱拡散率が6.0×10−4/s以上であることを特徴とする、グラファイトフィルム」、
である。
(9)本発明の第9は、
「請求項8に記載のグラファイトフィルムで可とう性を有することを特徴とする、グラファイトフィルム」、
である。
(10)本発明の第9は、
「請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、グラファイトフィルム」、
である。
(11)本発明の第10は、
「請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、請求項8〜9のいずれかに記載のグラファイトフィルム」、
である。
本発明による、厚みが80μm以上・300μm以下である高分子フィルムを炭化昇温速度2.5〜15℃/min、黒鉛化昇温速度2℃/min以下で熱処理することにより、発熱部品からの熱を速やかに移動させることができる十分な熱輸送能力を有するグラファイトフィルムを得ることができた。
本発明のグラファイトフィルムの製造方法の第一は、厚みが80μm以上・300μm以下である高分子フィルムを炭化昇温速度2.5〜20℃/min、黒鉛化昇温速度2℃/min以下で熱処理することを特徴とする、グラファイトフィルムの製造方法、である。

<グラファイトフィルム>
本発明の製造方法で作製されるグラファイトフィルムは、熱拡散率が高いために、例えば、サーバー、サーバー用コンピュータ、デスクトップパソコン、DVD、プラズマテレビ、液晶プロジェクタ、インクジェットプリンタ、電子写真装置等の電子機器や、ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器や、半導体製造装置、液晶製造装置等の産業機器の放熱材料として好適である。
<高分子フィルム>
本発明で用いることができる高分子フィルムは、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの熱伝導性が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、結晶性、熱伝導性に優れたグラファイトとなりやすい。
<高分子フィルムの厚み>
本発明で用いる原料高分子フィルムの厚みは、80μm以上、好ましくは100μm以上、さらに好ましくは120μm以上である。原料フィルムの厚みが80μm以上であれば、厚みの厚いグラファイトフィルムが作製できるため、フィルムの熱輸送量が向上し、従来よりも優れた放熱性を発現することが可能となる。
<グラファイトフィルムの製造方法>
本発明の高分子フィルムを原料としてグラファイトフィルムを作製する製造方法は、炭素化させる工程(炭化)と黒鉛化させる工程(黒鉛化)の二つの工程からなる。炭素化と黒鉛化は、別々に行っても良いし、連続的に行っても良い。
<炭素化(炭化)>
炭素化は、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは窒素ガス中で予備加熱処理して炭素化を行う。この予備加熱は通常室温〜1500℃の温度で行われる。炭化の熱処理温度としては、最低でも800℃以上が必要で、好ましくは900℃以上、より好ましくは1000℃以上で熱処理することが、熱輸送能力に優れたグラファイトを得るためにはよい。
また、炭化の最高温度に達した時点で30分から1時間程度、最高温度のまま温度の保持を行っても良い。例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度の保持を行っても良い。昇温の段階では、出発高分子フィルムにシワが発生しないように、フィルムの破損が起きない程度に膜面に垂直方向に圧力を加えてもよい。
<黒鉛化>
次に、黒鉛化は、炭素化した高分子フィルムを一度取り出した後、黒鉛化用の炉に移し変えてからおこなっても良いし、炭素化から黒鉛化を連続的におこなっても良い。黒鉛化は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適当である。熱処理温度としては最低でも2000℃以上が必要で、最終的には2400℃以上、より好ましくは、2600℃以上さらに好ましくは2800℃以上で熱処理することが、熱輸送能力に優れたグラファイトを得るためにはよい。
<高分子フィルムの固定方法・保持方法>
本発明の熱処理では、容器に高分子フィルムを固定して行われてもよい。本発明のような2000℃の温度領域まで加熱されるような用途では、取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さ等を勘案すると、黒鉛製の容器が、特に好ましい。ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、等方性黒鉛、押出製黒鉛、が挙げられ、電気伝導性、熱伝導性に優れ、均質性にも優れる等方性黒鉛が、繰り返し用いる場合には好ましい。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板などの形状でよい。また容器は円筒状で、高分子フィルムを容器に巻きつける方法でも良い。容器の形状は、高分子フィルムを接触させることができる限りにおいて、特に制約を受けない。
なお、黒鉛製容器内に、高分子フィルムを接触させる方法(例えば、保持する方法・固定する方法を含む)とは、例えば、高分子フィルムをグラファイト板で挟んだ上で、グラファイト板の自重以外には特には加圧しない状態で容器壁や容器底に接するように接触させる方法(保持させたり、固定させたりしてもよい)や円筒の黒鉛容器に巻きつける方法が有るが、必ずしもこれらの方法だけに制約を受けるものではない。
<高分子フィルムのグラファイト化>
高分子フィルムのグラファイト化機構について説明する。
高分子フィルムのグラファイト化は、炭素化と黒鉛化の2段階を経由して起こる。まず、一般に炭素化とは、高分子フィルムを1000℃まで熱処理して、炭素分が主成分となる物質に変化させる過程のことを意味する。具体的には、高分子フィルムを分解温度で熱処理すると結合の開裂が起こり、分解成分は二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素等のガスとなって離脱し、1000℃まで熱処理されると、炭素が主成分の材料となる。次に黒鉛化とは、炭素質材料を2800℃以上の温度で熱処理し、芳香環が平面状に繋がったグラファイト層が多数積層した構造に変換させる過程のことを意味する。
しかし、高分子を熱処理して得られた炭素質材料が全て黒鉛になるわけではなく、エポキシやフェノール樹脂を熱処理して作製した炭素質材料は、2800℃以上の温度で熱処理しても黒鉛になることはなくガラス状炭素のままであり、ポリイミド、ポリオキサジアゾール等の芳香環を有する高分子で芳香環が面内にある程度配向し、耐熱性が高い限られた高分子材料を熱処理して得られる炭素質材料でのみが黒鉛となる。
<ポリイミドフィルムを含む、高分子フィルムのグラファイト化>
高分子フィルムのグラファイト化は上述の通り、炭素化と黒鉛化の2段階を経由しておこり、熱処理により炭素化した後、さらに高温で熱処理することでグラファイト構造に転化させられる。この過程では炭素−炭素結合の開裂と再結合が起きなければならない。グラファイト化をできる限り起こしやすくするためには、その開裂と再結合が最小のエネルギーで起こるようにする必要がある。出発高分子フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)の分子配向は炭素化フィルム中の炭素原子の配列に影響を与え、その分子配向はグラファイト化の際に結合の開裂と再結合化のエネルギーを少なくする効果を生じ得る。したがって、高度な分子配向が生じやすくなるように分子設計を行うことによって、グラファイト化の促進が可能になる。この分子配向の効果は、フィルム面に平行な二次元的分子配向とすることによって一層顕著になる。
グラファイト化反応における第二の特徴は、高分子フィルムが厚ければグラファイト化が進行しにくいということである。したがって、厚い高分子フィルムをグラファイト化する場合には、表面層ではグラファイト構造が形成されているのに内部ではまだグラファイト構造になっていないという状況が生じ得る。高分子フィルムの分子配向性はフィルム内部でのグラファイト化を促進し、結果的により低温で良質のグラファイトへの転化を可能にする。
本発明において使用される高分子フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)は、まさにこのような効果を生じるのに最適な分子配向を有していると考えられる。
しかしながら、後で詳しく述べるが、高分子フィルムの面配向が高過ぎると、熱処理過程でグラフェン層が緻密になり過ぎるため、発生する内部ガスがフィルム内部に閉じ込められ、内部ガスがフィルムを抜ける際にフィルムを押し破り、黒鉛剥がれが発生してしまう。特に厚みの厚いフィルムを原料として用いた場合、この現象は顕著で、黒鉛剥がれのない均一なグラファイトフィルムを得ることは難しい。
<従来の熱処理によるグラファイト化>
従来の原料フィルムの熱処理によるグラファイト化では、熱処理により熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることは可能であるものの、厚みが薄いため、その熱輸送能力は十分でなく、近年の電子機器の小型化に伴う熱密度増加に対応できなかった。
熱輸送能力の優れたグラファイトフィルム開発の一つのアイデアとして、厚みの厚いグラファイトフィルムの作製が挙げられる。そのためには、従来の原料フィルムより、厚みが厚い原料フィルムを黒鉛化する必要があるが、従来の黒鉛化の方法では、厚みが厚くなるほど、分解ガスが抜けにくく、フィルムが破損したり、黒鉛剥がれを起こしたりしやすくなった。また、厚みの厚いフィルムは昇温過程での分子配向の制御が難しく、グラファイト化の進行が不均一になり、黒鉛化後の柔軟性や熱伝導性が劣っていた。
従来のグラファイト化では、炭素化及び黒鉛化は、原料フィルムの内部よりも表面から優先的に起こると考えられる。その結果、表面の緻密な層が内部に残留したガスを閉じ込め、高温に加熱された時に、内部に残留したガスが表面層を破って抜け出し、表面はがれが発生し、外観においてまだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。表面剥がれが発生すると、外観上の問題に限らず、グラファイトフィルム使用時に機器内部を黒鉛粉が汚染するなど、重大な問題へと発展する。
<内部残留ガス>
内部残留ガスとしては以下のものが挙げられる。
(1)未炭化成分由来の分解ガス。
(2)あるいは、黒鉛化過程のグラフェン層の再配列で、配列しきれない余分なグラフェン層の分解ガス。
(3)高分子フィルムの量産時にフィルムに混入されるフィラーが高温に加熱され気化したフィラーガス(例えば、ポリイミドフィルムには、ブロッキング防止を目的として樹脂の0.15%以下の量のフィラー(リン酸水素カルシウムなど)が添加されている)。
<第三の工程の存在>
上述したように、厚みが厚い原料フィルムを黒鉛化すると、分解ガスおよびフィラーガスが抜けにくく、フィルムが破損したり、黒鉛剥がれを起こしたりしやすくなった。
高分子を原料とした、従来のグラファイトフィルムの製造工程として、炭素化工程、黒鉛化工程の二段階の工程が挙げられる。本発明は、炭化工程と黒鉛化工程温度領域の間の温度領域に、あるいは、炭化工程、黒鉛化工程の温度領域と同じ領域に存在する、高分子内部のフィラー消失の第三の工程を意識することで黒鉛化後の表面剥がれを抑制できた。この第三工程をフィラー消失工程と呼ぶこととする。
<フィラー消失工程>
フィラー消失工程では、フィラーが気化してフィルムから消失する(ポリイミドフィルムの場合、生産上の都合から、リン酸水素カルシウムがフィラーとして混入している)。その際、フィルム内部にあるフィラーはガス化し、体積が膨張するため、フィルムには負担がかかる。ガスの抜け道があるならば、フィルムはダメージを受けずにフィラーガスを放出できるのだが、ガスの抜け道がない場合、ガスはフィルムに割れ目を発生させてフィルムから抜ける。フィラーガスのみならず、高分子フィルムの分解ガスも、フィラーが存在する強度の弱い部分に集結し、フィルムの割れを助長していると考えられる。厚みの厚いフィルムにおいて、この割れ目の発生は顕著である。
このフィラーガスによるフィルムへのダメージが黒鉛化後の黒鉛剥がれの要因の一つである。フィラーの消失を制御することで、本来ならば作製の困難であった厚い原料フィルムを用いたグラファイトフィルムの作製が可能となる。
このフィラー消失工程はポリイミドフィルムの場合、通常800〜2400℃の温度で行われる。フィラー消失工程は、炭素化した高分子フィルムを一度取り出した後、黒鉛化用の炉に移し変えてからおこなっても良いし、炭素化工程、フィラー消失工程、黒鉛化工程を連続的におこなっても良い。フィラー消失工程は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適当である。フィラー消失工程の熱処理温度としては、最低でも1600〜2000℃温度領域の処理が必要で、好ましくは1400〜2200℃領域、より好ましくは1000〜2400℃領域で熱処理することが、黒鉛剥がれのないグラファイトフィルムを得るためにはよい。
<フィラー消失工程の制御方法>
上述したフィラー消失工程の制御方法として次の2点が挙げられる。
(1)炭化昇温速度を変更する。
炭化昇温速度を変更することで、炭素化フィルム中の炭素原子の配列に影響を与える。ポリイミドフィルムを含む高分子を炭素化する場合、炭化昇温速度が速いほど、分子配向は乱れ、炭化速度が遅いほど、分子配向に優れた緻密な炭素化フィルムが得られる。
ポリイミドフィルムの場合、フィラー消失工程の温度領域が1000〜2400℃であるため、炭化の時点で分子配向を乱し、フィラー消失時のガスの抜け道を確保することで割れ目を発生させずにフィラーを抜くことができる。
(2)黒鉛化昇温速度(特にフィラー消失工程の1000〜2400℃領域)を変更する。
黒鉛化昇温速度を変更することで、フィラーガスおよび高分子フィルムの分解ガスの単位時間当たりのガス発生量を調節できる。
黒鉛化速度を遅くすることでガスの発生速度を遅くすることができる。ガスの発生速度が遅いほど、フィルムには負担がかからないため、フィラー消失に伴うフィルムの割れは発生し難くなる。
<炭化昇温速度>
本発明のように、炭化速度を速める理由とは、上述のように、分子配向を乱し、高分子フィルム中に含まれるフィラーの抜け道を準備するためである。
原料フィルムとして125μmのポリイミドフィルムを使用する場合、室温から1000℃までの炭化速度は2.5℃/min以上25℃/min未満、好ましくは4℃/min以上20℃/min以下、さらに好ましくは5℃/min以上15℃/min以下である。炭化速度2.5℃/minより遅ければ、分子配向が緻密になり、フィラーガスの抜け道が確保できず、黒鉛化後に表面剥がれが発生する。炭化速度が25℃/min以上であれば、分子配向が乱れ過ぎて、2800℃以上に加熱しても、柔軟なグラファイトが作成できない。
<黒鉛化昇温速度>
本発明のように、黒鉛化速度(特に1000〜2400のフィラー消失工程)を遅くする理由とは、上述のようにフィラーガスおよび高分子フィルムの分解ガスの発生速度を遅くし、割れ目を発生させずにフィラーを抜くためである。
原料フィルムとして125μmのポリイミドフィルムを使用する場合、1000℃から2800℃までの黒鉛化速度は5℃/min以下、好ましくは2.5℃/min以下、さらに好ましくは1℃/min以下である。黒鉛化速度5℃/minより速ければ、フィラーガスの突沸によりフィルム内部に切れ目が発生し、黒鉛化後、表面剥がれが発生する。
<高分子フィルムを1000℃で熱処理して得られる炭化フィルムの厚み/高分子フィルムの厚みの比率>
炭化後(1000℃処理後)のフィルムの厚みは分子配向の乱れと対応している。分子鎖がフィルム面方向に規則的に配列している、つまり分子配向が高いと、フィルムの厚みは薄くなる。一方、分子配向が乱れていると、フィルムの厚みは厚くなる。フィルムの厚みを測定することで、分子配向の程度を知ることができるのである。
高分子フィルムを1000℃で熱処理して得られる炭化フィルムの25℃での厚み/高分子フィルムの25℃での厚みの比率は、0.80〜0.96、好ましくは0.82〜0.95、さらに好ましくは0.84〜0.94であると良い。0.80〜0.96になると、分子配向がほどよく乱れているため、内部ガスの抜け道が確保できる。また、2400℃以上に加熱することで均一に黒鉛化するため、表面剥がれのない均一な表面を有するグラファイトフィルムが得られる。一方、0.80未満になると、分子配向が緻密であり、内部ガスに抜け道が少なくため、表面剥がれが発生する。0.96より大きいと、内部ガスの抜け道は確保されているものの、分子配向が乱れすぎているために、2400℃以上の高温まで加熱しても均一に黒鉛化できない。
高分子フィルムおよび1000℃処理炭化フィルムの厚みの測定方法としては、50mm×50mmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社から入手可能な「厚みゲージ」)を用い、室温25℃の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。
<高分子フィルムと複屈折>
本発明の高分子フィルムにおける分子の面内配向性に関連する複屈折Δnが、フィルム面内のどの方向に関しても0.08以上、好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.12以上、最も好ましくは0.14である。複屈折0.08以上であると、熱伝導性の高いグラファイトフィルムとなる。またさらに、黒鉛化温度が低温でも十分高い熱伝導性のグラファイトフィルムとなり、厚みが厚くても、高い熱伝導性を有するグラファイトフィルムとなる。
複屈折が高くなるほど、フィルムの炭化(炭素化)、黒鉛化が進行しやすくなる。その結果、グラファイトの結晶配向性がよくなり、熱伝導性が顕著に改善される。特に、高分子フィルムの面配向性が高いと、金属との接触によることにより、高い熱伝導性を保持しながら、表面の黒鉛剥がれを抑制できた表面硬度、密度、表面の密着性に優れたグラファイトが得られる。また、炭化が進行しやすいため、炭化中の昇温速度を速く、熱処理時間を短くしても、品質の優れたグラファイトとなる。また、黒鉛化が進行しやすいため、最高温度を下げて熱処理時間を短くしても品質の優れたグラファイトとなる。
また低温で炭化(炭素化)及び黒鉛化が進行するために、低温の熱処理中からフィルムの熱伝導性が高くなり、表面及び内部へ充分に熱が伝わり、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。
また、原料の厚みが厚くなったとしても、表面と内部で均一に黒鉛化が進行するため、熱伝導性の優れたグラファイトが得られる。
複屈折が高くなると黒鉛化しやすくなる理由は明らかではないが、グラファイト化のためには分子が再配列する必要があり、複屈折の高い分子配向性に優れたポリイミドフィルムでは分子の再配列が最小で済むことから、ポリイミドフィルムの中でも、より配向性に優れたポリイミドフィルムの方が、比較的低温の最高処理温度で、厚みが厚くても、結晶性の高いグラファイトフィルムになると推測される。
<複屈折>
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意方向Xの複屈折Δnxは次式(数式1)で与えられる。
図1と図2において、複屈折の具体的な測定方法が図解されている。図1の平面図において、フィルム1から細いくさび形シート2が測定試料として切り出される。このくさび形シート2は一つの斜辺を有する細長い台形の形状を有しており、その一底角が直角である。このとき、その台形の底辺はX方向と平行な方向に切り出される。図2は、このようにして切り出された測定試料2を斜視図で示している。台形試料2の底辺に対応する切り出し断面に直角にナトリウム光4を照射し、台形試料2の斜辺に対応する切り出し断面側から偏光顕微鏡で観察すれば、干渉縞5が観察される。この干渉縞の数をnとすれば、フィルム面内X方向の複屈折Δnxは、次式(数式2)で表される。
ここで、λはナトリウムD線の波長589nmであり、dは試料2の台形の高さに相当する試料の幅3である。
なお、前述の「フィルム面内の任意方向X」とは、例えばフィルム形成時における材料流れの方向を基準として、X方向が面内の0゜方向、45゜方向、90゜方向、135゜方向のどの方向においても、の意味である。サンプル測定個所・測定回数は、好ましくは、下記の通りである。例えば、ロール状の原料フィルム(幅514mm、)からサンプルを切り出す際には、幅方向で10cm間隔に6カ所サンプリングして、各部位で複屈折を測定する。その平均を複屈折とする。
<ポリイミドフィルムの熱的性質、機械的性質、物理的性質、化学的性質>
また、本発明に用いられるグラファイトの原料となるポリイミドフィルムは、100〜200℃の範囲において2.5×10−5/℃未満の平均線膨張係数を有しているとよい。線膨張係数が2.5×10−5/℃未満であれば、熱処理中の伸びが小さく、スムースに黒鉛化が進行し、脆くなく、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。 このようなポリイミドフィルムを原料に用いることで、グラファイトへの転化が2400℃から始まり、2700℃で十分結晶性の高いグラファイトに転化が生じ得る。なお、その線膨張係数は、2.0×10−5/℃以下であることがより好ましい。
なお、高分子フィルムの線膨張係数は、TMA(熱機械分析装置)を用いて、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させた後に一旦室温まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目の昇温時の100℃〜200℃における平均線膨張係数を測定することによって得られる。具体的には、熱機械分析装置(TMA:セイコー電子製SSC/5200H;TMA120C)を用いて、3mm幅×20mm長のサイズのフィルム試料を所定の治具にセットし、引張モードで3gの荷重をかけて窒素雰囲気下で測定が行われる。
また、本発明に用いられるポリイミドフィルムは、その弾性率が3.4GPa以上であれば、グラファイト化をより容易に行い得るということから好ましい。すなわち、弾性率が3.4GPa以上であれば、熱処理中のフィルムの収縮によるフィルムの破損を防止することができ、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。
なお、フィルムの弾性率は、ASTM−D−882に準拠して測定することができる。ポリイミドフィルムのより好ましい弾性率は3.9GPa以上であり、さらに好ましくは4.9GPa以上である。フィルムの弾性率が3.4GPaより小さければ、熱処理中のフィルムの収縮で破損および変形しやすくなり、得られるグラファイトの結晶性は劣り、熱伝導性が劣る傾向にある。
フィルムの吸水率は、下記のごとく測定した。フィルムを絶乾するために、100℃で30分乾燥して、25μm厚み10cm角のサンプルを作製した。この重量を測定してA1とする。25μm厚み10cm角のサンプルを蒸留水に23℃で24時間浸漬し、表面の水を拭いて除去し直ちに重量を測定した。この重量をA2とする。下記式より吸水率を求めた。
吸水率(%)=(A2−A1)÷A1×100
<ポリイミドフィルムの作製方法>
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常は、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種が実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させられる。そして、得られた有機溶液は酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌され、これによってポリアミド酸が製造され得る。このようなポリアミド酸溶液は、通常は5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に、適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、例えば次のような重合方法(1)−(5)が好ましい。
(1) 芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
(2) 芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマを得る。続いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
この好ましい1つの態様は、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記とは異なるジアミンを反応させてポリアミド酸を合成する方法である。
(3) 芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマを得る。続いて、このプレポリマに芳香族ジアミン化合物を追加添加後に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
(4) 芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後に、その酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
(5) 実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
これらの中でも(2)、(3)に示すプレポリマを経由するシーケンシャル制御(シーケンスコントロール)(ブロックポリマー同士の組み合わせ・ブロックポリマー分子同士の繋がりの制御)をして重合する方法が好ましい。というのは、この方法を用いることで、複屈折が大きく、線膨張係数が小さいポリイミドフィルムが得られやすく、このポリイミドフィルムを熱処理することにより、結晶性が高く、密度および熱伝導性が優れたグラファイトを得やすくなるからである。また、規則正しく、制御されることで、芳香環の重なりが多くなり、低温の熱処理でもグラファイト化が進行しやすくなると推定される。また複屈折を高めるために、イミド基含有量を増やすと、樹脂中の炭素比率が減り、黒鉛処理後の炭素化収率が減るが、シーケンシャル制御をして合成されるポリイミドフィルムは、樹脂中の炭素比率を落とすことなく、複屈折を高めることが出来るために好ましい。炭素比率が高まるために、分解ガスの発生を抑えることができ、外観上優れたグラファイトフィルムが得られやすくなる。また芳香環の再配列を抑えることができ、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−オキシジアニリン)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル(3,3’−オキシジアニリン)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−オキシジアニリン)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
特に、線膨張係数を小さくして弾性率を高くかつ複屈折を大きくし得るという観点から、本発明におけるポリイミドフィルムの製造では、下記式(1)で表される酸二無水物を原料に用いることが好ましい。
ここで、Rは、下記の式(2)〜式(14)に含まれる2価の有機基の群から選択されるいずれかであって、
ここで、R、R、R、およびRの各々は−CH、−Cl、−Br、−F、または−OCHの群から選択されるいずれかであり得る。
上述の酸二無水物を用いることによって比較的低吸水率のポリイミドフィルムが得られ、このことはグラファイト化過程において水分による発泡を防止し得るという観点からも好ましい。
特に、酸二無水物におけるRとして式(2)〜式(14)に示されているようなベンゼン核を含む有機基を使用すれば、得られるポリイミドフィルムの分子配向性が高くなり、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が高く、さらには吸水率が低くなるという観点から好ましい。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きく、吸水率を小さくするためには、本発明におけるポリイミドの合成に下記式(15)で表される酸二無水物を原料に用いればよい。
特に、2つ以上のエステル結合でベンゼン環が直線状に結合された構造を有する酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムは、屈曲鎖を含むけれども全体として非常に直線的なコンフォメーションをとりやすく、比較的剛直な性質を有する。その結果、この原料を用いることによってポリイミドフィルムの線膨張係数を小さくすることができ、例えば1.5×10−5/℃以下にすることができる。また、弾性率は500kgf/mm(490GPa)以上に大きくすることができ、吸水率は1.5%以下に小さくすることができる。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きくするためには、本発明におけるポリイミドは、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成されることが好ましい。
また、本発明においてポリイミドの合成に用いられる最も適当なジアミンは4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンであり、これらの単独または2者の合計モルが全ジアミンに対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。さらに、p−フェニレンジアミンが10モル%以上、さらには20モル%以上、さらには30モル%以上、またさらには40モル%以上を含むことが好ましい。これらのジアミンの含有量がこれらのモル%範囲の下限値未満になれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。但し、ジアミンの全量をp−フェニレンジアミンにすると、発泡の少ない厚みの厚いポリイミドフィルムを得るのが難しくなるため、4,4’−オキシジアニリンを使用するのが良い。また炭素比率が減り、分解ガスの発生量を減らすことができ、芳香環の再配列の必要が減り、外観、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。
本発明においてポリイミドフィルムの合成に用いられる最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物および/または式(15)で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)であり、これらの単独または2者の合計モルが全酸二無水物に対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。これら酸二無水物の使用量が40モル%未満であれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。
また、ポリイミドフィルム、ポリアミド酸、ポリイミド樹脂に対して、カーボンブラック、グラファイト等の添加剤を添加しても良い。
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。
次に、ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、またはポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤やピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用いてイミド転化するケミカルキュア法のいずれを用いてもよい。中でも、イソキノリンのように沸点の高いものほど好ましい。というのは、フィルム作製中の初期段階では蒸発せず、乾燥の最後の過程まで、触媒効果が発揮されやすいため好ましい。特に、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすく、また比較的低温で迅速なグラファイト化が可能で、品質のよいグラファイトを得ることができるという観点からケミカルキュアの方が好ましい。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用することは、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が大きくなり得るので好ましい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するので加熱処理においてイミド化反応を短時間で完結させることができ、生産性に優れた工業的に有利な方法である。
具体的なケミカルキュアによるフィルムの製造においては、まずポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒からなるイミド化促進剤を加えて、支持板、PET等の有機フィルム、ドラム、またはエンドレスベルト等の支持体上に流延または塗布して膜状にし、有機溶媒を蒸発させることによって自己支持性を有する膜を得る。次いで、この自己支持性膜をさらに加熱して乾燥させつつイミド化させてポリイミド膜を得る。この加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲内にあることが好ましい。加熱の際の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは段階的に、徐々に加熱して最高温度がその所定温度範囲内になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚みや最高温度によって異なるが、一般的には最高温度に達してから10秒から10分の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドフィルムの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを容器に接触させたり固定・保持したり延伸したりする工程を含めば、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすい傾向にあるので好ましい。
<グラファイトフィルムの熱拡散率>
本発明の一態様であるグラファイトフィルムの光交流法による熱拡散率あるいは、
本発明の方法で製造されうるグラファイトフィルムの光交流法による熱拡散率は、
6.0×10−4/s以上、好ましくは7.0×10−4/s以上、さらに好ましくは8.0×10−4/s以上であると良い。6.0×10−4/s以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。一方、6.0×10−4/s未満になると、熱伝導性が悪いために、発熱機器から熱を逃がすことができなくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることができなくなる。
グラファイトフィルムの熱拡散率の測定方法としては、4mm×40mmのグラファイトフィルムを光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。グラファイト化の進行状況は、フィルム面方向の熱拡散率を測定することによって判定され、熱拡散率が大きいほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。
<グラファイトフィルムの単位面積当たりの重量>
本発明の一態様であるグラファイトフィルムの単位面積当たりの重量あるいは、
本発明の方法で製造されうるグラファイトフィルムの単位面積当たりの重量は、
0.010g/cm以上、好ましくは0.011g/cm以上、さらに好ましくは0.012g/cm以上であると良い。0.010g/cm以上になると、熱輸送能力が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。一方、0.010g/cm未満になると、熱輸送能力が悪いために、発熱機器から熱を逃がすことができなくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることができなくなる。
グラファイトフィルムの単位面積当たりの重量は、圧縮したグラファイトを10cm角に切り取り、その重量(g)を測定し、次式により算出した。
単位面積当たりの重量(g/cm)=10cm角の重量(g)/100cm
<熱輸送能力>
本願でたびたび使用した、熱輸送能力とは、材料そのものの熱の輸送能力を意味する言葉である。材料そのもののとは、材料の密度や厚みなどを含めた意味である。例えば、材料の厚みが厚いほど、あるいは、密度が大きいほど、熱輸送能力は大きくなる。
この、熱輸送能力は、材料の
(1)熱拡散率と
(2)単位面積当たりの重量
からがわかれば、相対的に比較できる。熱拡散率が大きいほど、単位面積当たりの重量が大きいほど、材料の熱輸送能力は大きくなる。
<熱輸送能力と熱拡散率、単位面積当たりの重量の関係>
次に、熱輸送能力と熱拡散率、単位面積当たりの重量の関係について簡単に説明する。
単位面積を通過する熱流速、つまり熱の輸送は、次式のように、熱伝導率と温度勾配から求められる。
q=−λ・grad(Temp)・・・(1)
q:熱流速(W/m
λ:熱伝導率(W/mK)
grad(Temp):温度勾配
熱流速qの値が大きいほど、発熱体の熱をたくさん輸送できるために、発熱体の温度は低下する。つまり熱流速が大きいほど、材料の熱輸送能力は大きいと言える。
<熱伝導率>
(1)式のλ:熱伝導率は、材料が持つ熱の移動を評価する物理量として知られている。熱伝導率は次式に示すように、材料の密度と熱容量を熱拡散率にかけることで求められる。
λ=αdC・・・(2)
λ:熱伝導率(W/mK)
α:熱拡散率(m/s)
d:密度(kg/m
C:熱容量(J/kg)
<熱拡散率と単位面積当たりの重量>
(1)式を変形すると
q/A=λD/c・・・(3)
q:熱流(W)
λ:熱伝導率(W/mK)
D:温度差(K)
c:距離(m)
(2)式を代入してqについて整理すると
q=αdCDA/c・・・(4)
dA/cで単位面積当たりの重さhの項ができ、同じ材料を比較する場合CとDは定数Xとおくことができるので
q=Xαh・・・(5)
h:単位面積当たりの重量(g/cm
(5)式より流れる熱流は、熱拡散率と単位面積あたりの重量に依存していることがわかる。
<本発明で得られたグラファイトフィルムの熱拡散率と単位面積当たりの重量>
本発明で得られたグラファイトフィルムの熱拡散率は6.0×10−4/s以上、単位面積当たりの重量は、0.010g/cm以上である。熱拡散率は従来のグラファイトフィルムと同等レベルで、単位面積当たりの重量が従来のグラファイトフィルムより大きいことから、本発明で得られたグラファイトフィルムの熱輸送能力は従来のフィルムより優れていると言える。
実際に、本発明グラファイトフィルムの優れた熱輸送能力は、実際の使用形態に近い形で確認できた。
具体的には、圧縮して得られた柔軟なグラファイトを5cm角に切り取り、中心に発熱体として1cm角セラミックヒーター(坂口電熱製)を接続した。電源のワット数5Wに保ち測定をおこなった。定常状態(ヒーター温度が±1℃以下)になったところで、ヒーター温度を計測した。本発明のグラファイトフィルムは、従来品と比較してヒーターの温度が低かった(図3)。
<可とう性>
さらに、得られたグラファイトフィルムを圧縮する圧縮工程を有し、フィルムの均質性や柔軟性を向上させてもよい。本発明でグラファイト化したグラファイトフィルムは発泡状態を有するものがあり、このような発泡状態を有するフィルムにおいては、特に、圧縮することで柔軟性が寄与できる。
柔軟性を寄与することで、グラファイトフィルムのハンドリング性、耐久性が向上する。
<その他の効果>
以上のように、本発明において、厚みが80μm以上・300μm以下である高分子フィルムを炭化昇温速度2.5〜20℃/min、黒鉛化昇温速度2℃/min以下で熱処理することで熱輸送能力に優れたグラファイトシートが作製できた。
本発明のグラファイトフィルムは、以下のような効果も同時に得られた。
(1)コシがあるため、ハンドリング性に優れたグラファイトシートである。
従来のグラファイトフィルムは厚みが薄く、コシがないためにフィルムの加工時あるいは機器への取り付け時に傷を付けてしまうことがあった。また、粘着材などを使用し、機器の筐体などに貼り付ける際、狙った部分に思うように貼り付けられないといった問題点もあった。
本発明のグラファイトフィルムは、単位面積当たりの重量が大きい(つまり厚みが厚くコシがある)ため、加工時あるいは機器への取り付け時のハンドリング性が向上した。また、粘着材などを使用し、機器の筐体などに貼り付ける際も、狙った部分に貼り付けが可能となった。
(2)圧縮率が大きいため、発熱体との接触熱抵抗を軽減できるグラファイトシートである。
また従来のグラファイトフィルムは厚みが薄いため圧縮率が小さかった。圧縮率が小さいと、発熱体との接触熱抵抗が大きく、熱を効率的に拡散することができない。例えば、CPUパッケージとヒートシンクの間に挟みこんで、グラファイトフィルムを使用する場合、CPUとグラファイトの密着性、グラファイトとヒートシンクの密着性が熱の拡散には大きく影響する。
本発明のグラファイトシートは、厚みが厚いため、大きな圧縮率を示す。圧縮率が大きいと、発熱体とグラファイトとの密着性が向上するため、効果的に発熱体の熱を拡散することができる。
<用途など>
本発明の製造方法で作製されるグラファイトフィルムは、熱伝導性、電気伝導性が高いために、例えば、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器、ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器、液晶ディスプレイ(特にバックライト付近)、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器、インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置、半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品、リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(以上左記の配線板とは、プリント配線板なども含む)、真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置、断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置、DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器、カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置、充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等の放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁シールド部品として好適である。
<使用形態など>
また、使用において、発熱体、ヒートシンク、ヒートパイプ、水冷冷却装置、ペルチェ素子、筐体、ヒンジとの固定、熱拡散性、放熱性、取り扱い性を改善するために、片面および/または両面に樹脂層、セラミック層、金属層、絶縁層、導電層を形成しても良い。

以下において、本発明の種々の実施例がいくつかの比較例と共に説明される。
(ポリイミドフィルムAの作製)
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布された。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥された。
出来上がり厚みが75μmの場合におけるフィルム作製用の乾燥条件を示す。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで120℃において240秒乾燥されて、自己支持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアルミ箔から引き剥がされ、フレームに接触させられ、固定・保持された。さらに、ゲルフィルムは、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒーターにて460℃で23秒段階的に加熱されて乾燥された。
以上のようにして、厚さ75μmのポリイミドフィルム(ポリイミドフィルムA:弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10−5/℃)が製造された。なお、その他厚みのフィルムを作製する場合には、厚みに比例して焼成時間が調整された。例えば厚さ125μm、175μmのフィルムの場合には、75μmの場合よりも焼成時間を5/3倍、7/3倍に設定した。また、厚みが厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
実際のグラファイト化においては、上記方法と同様にして作製された(株)カネカ製・アピカルAHの厚さ75、125、175μmのポリイミドフィルムを用いた(それぞれ75AH、125AH、175AHとする)。カネカ製ポリイミドには、ブロッキング防止剤としてリン酸水素カルシウムが添加されている(樹脂の0.15%以下)。
上記方法と同様に作製したフィルムAには、フィラー(リン酸水素カルシウム)は添加していない。
(実施例1)
原料フィルムに125AH、を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温(2.5℃/min)された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)を行った。得られた75AHの炭素化フィルムをふたたび、黒鉛板に挟み、黒鉛化炉を用いて2100℃以下では減圧下、2100℃以上ではアルゴン雰囲気下で2800℃まで昇温した(1℃/min)後、2800℃で1時間熱処理して黒鉛化処理をおこない、グラファイトフィルムを作製した。
(実施例2)
炭化速度を10℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例3)
炭化速度を15℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例4)
原料フィルムを(株)東レ・デュポン社から入手可能な、125μmKAPTONフィルムを変更し、炭化速度を2.5℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例5)
原料フィルムをフィルムAに変更し、炭化速度を2.5℃/min黒鉛化速度2℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例6)
原料フィルムを175AHに変更し、炭化速度を15℃/min黒鉛化速度0.5℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例1)
炭化速度1℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例2)
炭化速度25℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例3)
炭化速度10℃/min、黒鉛化速度5℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例4)
原料フィルムの厚みを75μmに変更し、炭化速度2.5℃/min、黒鉛化速度5℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(得られた炭化フィルム、グラファイトフィルムの評価方法)
○炭化フィルムの厚みの測定(1000℃処理品)
高分子フィルムおよび1000℃処理炭化フィルムの厚みの測定方法としては、50mm×50mmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社から入手可能な「厚みゲージ」)を用い、室温25℃の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。
○黒鉛化の表面状態評価
黒鉛化後のグラファイトフィルムの外観を目視にて評価した。目視にてグラファイト剥がれがないものは○、目視にて表面剥がれは確認されないが、触ると粉が付着するものは△、表面剥がれが発生しているものは×とする。
○柔軟性評価
その後グラファイトフィルムを(株)神藤金属製の油圧式プレスを用い、2kg/cmの圧力で圧縮して、その後、柔軟性を評価した。柔軟性の評価は、グラファイトを10mm×50mmに切り抜き、直径10mmの棒にフィルムを巻きつけて、割れが発生するかどうかで評価した。巻きつけて、割れが発生せず、フィルムに変化がないものは○、割れは発生しないが、フィルムにシワ、黒鉛剥がれなど発生するものは△、割れが発生するものは×とする。
○熱拡散率測定
グラファイトフィルムの熱拡散率は、4mm×40mmのグラファイトフィルムを光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。
○グラファイトフィルムの単位面積当たりの重量
グラファイトフィルムの単位面積当たりの重量は、圧縮したグラファイトを10cm角に切り取り、その重量(g)を測定し、次式により算出した。
単位面積当たりの重量(g/cm)=10cm角の重量(g)/100cm
○冷却性能評価
グラファイトフィルムの冷却性能の評価は、実際の使用形態に近い形でおこなった。
具体的には、図3に示すように、圧縮して得られた柔軟なグラファイトを5cm角に切り取り、中心に発熱体として1cm角セラミックヒーター(坂口電熱製)を接続した。接続には、ヒートシンクとCPU間の接触などに使用される高熱伝導性シリコーンゴムシート(GELTEC製、6.5W/mK)を使用した。放熱体およびヒーターは、黒鉛スプレーで全体を薄くコーティングし、すべての材料の放射率が一定となるようにした。実際の測定は黒鉛の放射率0.85で換算し、温度を算出した。また、室温は22.5±0.5℃に調節し、対流(風)による冷却効果をできるだけ一定とするため、測定領域を発泡スチロールで覆い測定をおこなった。電源のワット数5Wに保ち測定をおこなった。定常状態(ヒーター温度が±1℃以下)になったところで、ヒーター温度を計測した。ヒーターの測定は、発熱体から発生する赤外線を読み取る放射温度計を用いて測定をおこなった。実際には、(株)NEC三栄社から入手可能な、サーモトレサTH9100MV/WVを用いヒーター温度の測定をおこなった。ヒーターの温度が低いほどグラファイトの冷却性能が優れていると言える。

実施例1〜3で得られたグラファイトフィルムは、黒鉛剥がれなく表面が均一に発泡し(図4)、圧縮することで十分な柔軟性を示した(図5)。表面剥がれが抑制できた理由としては、炭化速度を速めたことで、フィルム内部に発生するフィラーガス、分解ガスの抜け道が準備できたためである。これは、1000℃処理炭化フィルムと原料フィルムの厚みの比も0.80〜0.96の範囲内であり、分子配向の乱れもちょうどよいことが確認できる。図6、7より、1000℃処理品で確認されるフィラーが2000℃処理後にフィルムに割れ目を発生させることなく、消失したことが確認できた。
また、従来の炭化より炭化速度を速めたことで、炭化工程に要する時間が少なくなり、生産性向上にもつながった。
また、単位面積当たりの重量も0.013g/cm以上であり外観(表面はがれ)、熱輸送能力に優れたものであった。実施例1、2、3の順序で熱拡散率の値が小さくなっているが、これは、炭化昇温速度が速いほど分子配向が乱れて、黒鉛化後のグラファイトフィルムの分子配向が乱れているからである。1cm角のヒーターを用いた冷却性能の評価でも、グラファイトがない場合は300℃程度まで温度上昇するヒーター温度を90℃程度に低下させた。
また、実施例4で使用した125KAPTONは125AHより分子配向がもともと乱れていると考えられる。そのため、炭化速度を2.5℃/minと遅くすることで、実施例1〜2の炭化フィルムと同等レベルの分子配向の乱れを有する炭化フィルムが得られた(1000℃処理品の厚みから)。黒鉛化して得られたグラファイトフィルムも実施例1〜3と同等の物性を示した。しかしながら、炭化速度を遅くしたために、炭化工程に要する時間がかかるため125AHと比較して生産性に劣る。
また、実施例5では、フィラーが添加されていないフィルムAを使用しているため、内部ガスの発生量は、フィラーガスの分、多少抑えられるため、早い黒鉛化速度でも表面剥がれのないグラファイトフィルムが得られる。得られたグラファイトフィルムは、黒鉛化最終過程で発生する窒素ガスなどにより発泡しており、圧縮することで柔軟性が寄与できた。
また、実施例6では炭化速度を速め、内部ガスの抜け道を確保し、黒鉛化速度を0.5℃/minと非常に遅くすることにより、実施例1〜3より、さらに厚みのあるグラファイトフィルムが得られた。
一方、比較例1では、黒鉛剥がれが発生した(図8)。これは、炭化速度が遅すぎて、炭素原子が緻密に配列し、フィラー消失工程、黒鉛化工程にて内部発生ガスがフィルム内部に閉じ込められ、ガスがフィルムに割れ目を発生させて抜けたためであると考えられる(図9)。
黒鉛粉が剥がれるために、単位面積当たりの重量の正確な測定は実施できなかった。また、熱拡散率についても、熱拡散率測定装置内への黒鉛粉汚染の恐れがあるために測定は実施しなかった。
また、比較例2では、黒鉛化後、単位面積当たりの重量が大きなグラファイトが得られたものの、フィルムの表面は硬く、圧縮しても柔軟なフィルムは得られなかった。これは、炭化工程での昇温速度が速すぎて、分子配向が乱れ、2800℃の高温まで加熱してもグラファイト化が完全に進行できなかったと考えられる。熱拡散率の値も2.0×10−4/sと低く、この値からも、グラファイト化が進行していないことが確認できる。ヒーター温度も高く、熱輸送能力が低いことが確認された。
また、比較例3では、黒鉛剥がれが発生した。これは、炭化速度は妥当なスピードで、ガスの抜け道は準備できていたものの、黒鉛化速度が速く、単位時間当たりの内部発生ガス量が多かったために、フィルムに割れ目が発生したためであると考えられる(図10)。
比較例1と同様、黒鉛粉が剥がれるために、単位面積当たりの重量の正確な測定は実施できなかった。また、熱拡散率についても、熱拡散率測定装置内への黒鉛粉汚染の恐れがあるために測定は実施しなかった。
また、比較例4では、黒鉛剥がれなく表面が均一に発泡し、圧縮することで十分な柔軟性を有するグラファイトフィルムが得られた。また、熱拡散率の測定値も、7.8×10−4/sと大きく、実施例1〜3と同等であった。しかしながら、原料フィルムの厚みが薄いため、グラファイトフィルムの単位面積当たりの重量は、実施例1〜3の約6割程度の重量であった。そのため、1cm角のヒーターを用いた冷却性能の評価でも、ヒーター温度は100.2℃と、実施例1〜3と比較して約10℃ほど高い温度であった。
ポリイミドフィルム及びくさび形シート くさび形シートの斜視図 熱輸送能力試験 均一発泡したグラファイトフィルム 可とう性を有したグラファイトフィルム 125AHにおける1000℃熱処理後の断面SEM写真(炭化速度10℃/min) 125AHにおける2000℃熱処理後の断面SEM写真(炭化速度10℃/min、黒鉛化速度1℃/min) 黒鉛剥がれが発生したグラファイトフィルム 125AHにおける2000℃熱処理後の断面SEM写真(炭化速度1℃/min、黒鉛化速度1℃/min) 125AHにおける2000℃熱処理後の断面SEM写真(炭化速度10℃/min、黒鉛化速度5℃/min)
符号の説明
1 ポリイミドフィルム
2 くさび形シート
3 くさび形シートの塙
4 ナトリウム光
5 干渉縞
31 1cm角セラミックヒーター
32 5cm角グラファイトフィルム
33 高熱伝導性シリコーンゴムシート(GELTEC製、6.5W/mK)
34 上図
35 横図
41 均一発泡したグラファイトフィルム
51 可とう性を有したグラファイトフィルム
61 フィラー(リン酸水素カルシウム)
71 フィラーが消失した跡(割れ発生なし)
81 黒鉛剥がれ
91 フィラーが消失した跡
92 フィラー消失後のフィルムの割れ目
101 フィラー消失後のフィルムの割れ目

Claims (11)

  1. 厚みが80μm以上・300μm以下である高分子フィルムを炭化昇温速度2.5〜20℃/min、黒鉛化昇温速度2℃/min以下で熱処理することを特徴とする、グラファイトフィルムの製造方法。
  2. 前記高分子フィルムを1000℃で熱処理して得られる炭化フィルムの25℃での厚み/高分子フィルムの25℃での厚みの比率が、0.80以上・0.96以下となる炭化工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  3. 前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、およびポリベンゾビスイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする、請求項1〜2に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  4. 前記ポリイミドフィルムの複屈折率が0.08以上であることを特徴とする、請求項3に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  5. 前記ポリイミドフィルムの複屈折率が0.12以上であることを特徴とする、請求項3に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  6. 前記ポリイミドフィルムが、前駆体であるポリアミド酸を脱水剤とイミド化促進剤とを用いてイミド化して作製されうるポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  7. 前記のポリイミドフィルムは、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記と異なるジアミンを反応させて前記ポリアミド酸を合成し、前記ポリアミド酸をイミド化して作製されうることを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  8. 単位面積当たりの重量が0.010g/cm以上、面方向の熱拡散率が6.0×10−4/s以上であることを特徴とする、グラファイトフィルム。
  9. 請求項8に記載のグラファイトフィルムで可とう性を有することを特徴とする、グラファイトフィルム。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、グラファイトフィルム。
  11. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、請求項8〜9いずれかに記載のグラファイトフィルム。
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