本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法について、実施形態を示しながら説明する。ただし、ここに示す形態は本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の説明では、説明の便宜上、ドープ原料を混合した後の溶液を混合物及びドープと称する。これらは、溶剤に対するセルロースエステル及び添加剤の溶解度の違いにより分類しており、混合物と対比してドープの溶解度は高い。
図1に示すように、本実施形態で用いるドープ製造設備10には、ドープ原料である溶剤を貯留する溶剤タンク11と、予め添加剤を溶剤と混合した添加剤溶液を貯留する添加剤タンク12と、フィルムの主原料であるポリマーを貯留するホッパ13と、各種ドープ原料を混合して混合液17を調製するための混合タンク15と、混合液17を加熱してドープ20とする加熱装置22と、加熱後のドープ20の温度を調整する温調装置23と、本発明を実施するための濾過器24を有する濾過ユニット25と、第1、第2濾過装置26、27と、ドープ20を貯留するためのストックタンク28とが備えられている。
この他にも、ドープ製造設備10には、ドープ20を濃縮して濃度を調整するためのフラッシュ装置31と、フラッシュ装置31の内部で発生した揮発溶剤を回収する回収装置32と、回収した溶剤を再生する再生装置33とが備えられている。なお、ストックタンク28には、片端がフィルム製造設備35に繋がっている配管36が接続されており、この配管36を介してドープ製造設備10とフィルム製造設備35とが連結されている。
次に、各装置の詳細について説明する。混合タンク15には、その外面を包み込むようにして配されたジャケット38と、モータ40、41により回転する第1攪拌機42、第2攪拌機43とが取り付けられている。本実施形態では、第1攪拌機42として、アンカー翼を有するタイプを使用し、第2攪拌機43として、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機を使用する。
加熱装置22は、内部温度を制御することが可能なジャケットを有する。ここで、混合液17の溶解度を高める上では、内部を加圧することができる加圧機能とを備える配管を用いることが好ましい。
第1、第2濾過装置26、27の内部には、ドープ中の不溶解物を除去するための孔が複数形成された多孔質の濾紙が取り付けられている。濾紙は、特に限定されるものではなく、材質はステンレス等の金属でも良いし、セルロース系等の有機物でも良い。また、濾紙に形成されている孔の平均孔径は、微細な不溶解物を除去して高精度の濾過を行なうためにも100μm以下であることが好ましい。ただし、平均孔径が小さすぎると、濾過に要する時間が長くなり濾過効率が低下するので好ましくない。一方で、平均孔径が大きすぎると、ドープ20中に含まれる微細な不溶解物を捕捉することが難しい。
ストックタンク28には、その外面を包み込むように設けられたジャケット45と、モータ47により回転し、ドープ20を攪拌するための攪拌機48とが取り付けられている。混合タンク15と同様に、ジャケット45に温度が調整された伝熱媒体を送り、循環又は保持することで、ストックタンク28の内部温度を所望の範囲で調整する。
なお、ドープ製造設備10で使用する各種装置及び部材は、耐食性や耐熱性に優れる等の利点からステンレス製の配管で接続されている。また、設備内の適当な箇所には、各種原料や混合液17、或いはドープ20を適宜送液するためのポンプP1、P2や、バルブV1〜V3が取り付けられている。ポンプやバルブは、必要に応じて設置すれば良く特に限定されない。
上記のドープ製造設備10により流延用ドープを製造する方法について説明する。
溶剤タンク11及び添加剤タンク12から、バルブV1、V2を開けて所定量の溶剤及び添加剤溶液を混合タンク15に送る。また、ホッパ13からはポリマーとしてセルロースアシレートを混合タンク15に送る。次に、第1攪拌機39及び第2攪拌機40を適宜選択し回転させて、混合タンク15中の各種ドープ原料を攪拌する。このとき、ジャケット38に温度を調整した伝熱媒体を送液した後、これを循環させて、混合タンク15の内部温度を−10〜55℃の範囲内で略一定となるように調整する。このように内部温度を調整した混合タンク15では、各攪拌機を適宜選択しながら回転させることにより各種ドープ原料を効率良くかつ効果的に攪拌して、十分に混合された混合液17を得ることができる。
混合タンク15に各種ドープ原料を送液する順番及び添加させるタイミングは、特に限定されるものではない。本実施形態では、ポリマー、溶剤、添加剤を同時に混合したが、溶剤とポリマーとを混合して混合物を調製した後、この混合物に添加剤を添加し、攪拌することで混合液を調製することも可能である。添加剤は、必ずしも溶剤と混合した状態の添加剤溶液として使用する必要はなく、例えば、添加剤が常温で液体の場合には、手を加えずに、そのままの状態で使用しても良いし、添加剤が固体の場合には、ホッパ等を用いて添加させても良く、添加剤の形態に応じて適宜添加方法は変更することができる。
ポンプP1を用いて混合タンク15より混合液17を抜き出して加熱装置22へ送る。加熱装置22により加圧状態で混合液17を加熱する。加熱時の混合液17の温度は0〜97℃の範囲で略一定とする。これにより、熱ダメージを受けることなく混合液17はその溶解度が高められてドープ20となる。なお、加熱装置22による加熱とは、混合タンク15から送られてきた混合液17の温度を上昇させることとし、混合液17を室温以上の温度に加熱するという意味ではない。例えば、加熱装置22により−7℃の混合液17を0℃にする場合もある。
本実施形態では、混合液17中の固形分の溶解度を高める方法として加熱装置22を用いる加熱溶解法を採用したが、本方法に替えて、冷却装置を用いて混合液17を冷却し、内部の固形分を溶剤に溶解させる冷却溶解法を適用することもできる。このとき、混合液17は−100〜−10℃に冷却させればよい。加熱溶解法及び冷却溶解法を、各ドープ原料の性能や形態等に応じて適宜選択して実施することにより、混合液17の溶解度を効率良く制御することができる。なお、上記の方法は、どちらか一方を適用しても良いし、同時に行なっても良い。
次に、濾過ユニット25を使用してドープ20を濾過する。濾過ユニット25を構成する濾過器24の内部には、図2に示すように、表面に酸性の官能基であるスルホン基が導入された多孔質の濾材24aが入れられている。濾材24aは、表面に酸性の官能基であるスルホン基が導入されているセルロース系の繊維からなる濾紙や、ステンレス製の多孔質板が好ましく用いられる。例えば、スルホン基を有するセルロース系の濾紙は、東洋濾紙製#63等の市販品として容易に入手することができる。濾材24aは、微小な不溶解物を取り除くことができるように平均孔径が5μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは、10μm以上50μm以下である。ただし、濾材24aの孔の大きさや、設置数、設置形態等は特に限定されるものではなく、捕捉したい不溶解物の大きさや濾過効率等を考慮しながら適宜選択すれば良い。
濾材24aの表面に持つ官能基の総数のうちスルホン基で置換されている割合は10%以上95%以下であることが好ましい。上記の官能基は、表面をスルホン化することを目的として予め導入される水酸基等が挙げられ、この水酸基をスルホン基で置換することでスルホン化処理が行なわれる。なお、スルホン基の導入されている割合が高い程、不溶解物を捕捉する効果に優れるが、濾材24aの製造コストが高くなるので、設備コストの増大を招くおそれがある。したがって、濾過効率や製造コスト等を考慮しながら上記範囲内で適宜選択する。
濾材24aには、水素イオン指数pHが8以上14以下のドープ20を供する。ドープ20に対して水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液のうち少なくとも1つを含ませ、各化合物の添加量を適宜調節することによりドープ20を所定の範囲でアルカリ性にすることができる。ドープ20のpH値は、市販のpH計で容易に測定することができる。ドープ20中には、微粒子の凝集物等を含む不溶解物50の他に、アルカリ土類金属であるCa2+やMg2+等の金属イオン51、52が混在している。上記の様にドープ20をアルカリ性とすれば、金属イオン51、52と添加剤等に起因するCOO−との反応が促進され、金属イオンよりも粗大なCa塩やMg塩等の金属塩が不溶解物53として生成する。このため、後の工程で多孔質の濾材を有する第1濾過装置26を用いて濾過すると、不溶解物50、53を効率良くかつ効果的に捕捉することができるので高純度のドープ20を得ることができる。なお、上記の化合物を添加するタイミングは、ドープ20を濾材24aに通過させる前であれば良く、特に限定はされない。本実施形態では、混合液17を調製する際に、水酸化ナトリウム溶液を添加してドープ20のpHを所定の範囲になるよう調整する。
濾過効率を向上させるには、濾材24aに通過させるドープ20の温度を抑えることが有効である。具体的には、溶解度向上を目的として加熱する際の温度を、ドープ原料を混合した時の液温よりも高い温度としながら、その差を35℃以内に抑えることが好ましい。本実施形態では、加熱装置22による加熱条件を好適に調節する。なお、加熱装置22の下流に温度計(図示しない)を設置してドープ20の液温を測定し、この測定値に基づいて加熱装置22を調節すれば、より好適にドープ20の温度を制御することができる。これによりドープ20の状態(例えば、pHなど)が好適に保持されるため、アルカリ土類金属をはじめとしてドラム汚れの原因物質を効果的に濾過で除去することができる。ドープ20の溶解度を高める上で加熱は重要であるが、アルカリ土類金属を含む汚れ原因物質を捕捉する点では、混合後、加熱しないことが好ましい。
濾材24aの表面にはスルホン基が導入されているので、ドープ20に残っている未反応のCa2+やMg2+等の微小な金属イオン51、52や、サイズの小さい不溶解物50は化学的な力により濾材24aの表面に引き付けられる。これにより、濾材24aの孔を小さくすることなく、捕捉するのが困難であった金属イオン51、52のような微細な不溶解物を、濾過効率を低下させることなく効果的に捕捉することが可能である。
本発明では、表面にスルホン基やカルボキシル基を持つ微粒子を濾過助剤として用いた濾材161を使用しても良い。濾過助剤が表面に持つ官能基の総数のうち、スルホン基或いはカルボキシル基で置換されている割合が10%以上95%以下であることが好ましい。これにより、濾過効率の低下を招くことなく高精度の濾過を実現することができる。上記の濾過助剤は、珪藻土或いはセルロース系化合物からの派生物であることが好ましい。珪藻土から派生した濾過助剤は、真珠石の派生物であるパーライト等の濾過助剤と比べて、耐久性に優れる等の特徴を有している。また、セルロース系化合物から派生した濾過助剤は、純植物繊維であること、非常に微細な繊維構造を有すること等から、人体や環境に対する安全性に優れる等の特徴を有する。
図3に示すように濾過ユニット55は、濾過助剤を有する濾材161を利用した一例である。濾過ユニット55は、ドープ20を送り込むタンク56と、互いに同形である濾過器57a、57bと、各濾過器の切り替えを行うための切替器58と、各濾過器から送り出されるドープ20の流量を測定するための流量計59と、タンク56内のドープ20に濾過助剤分散液を供給するための濾過助剤供給タンク60とが備えられている。タンク56は特に限定されるものではなく、本実施形態ではストックタンク28と同じタンクを用いる。また、濾過助剤分散液とは、予め所定の溶剤中に濾過助剤を分散させた液である。この溶剤は、ドープ20に対する相溶性の観点からドープ原料と同じ溶剤を用いることが好ましい。なお、本形態は、図1のドープ製造設備10中の濾過ユニットの構成を変更するだけで容易に実現することができる。また、図3においてドープ製造設備10と同じ装置には同符号を付し、説明は省略する。
ポンプP5で流量を調整しながら、温調装置23からドープ20をタンク56へ送り、更に、適量の濾過助剤分散液を濾過助剤供給タンク60からタンク56へ送る。ポンプP5の流量は流量計59の測定値に応じて調整する。タンク56では、モータで回転する攪拌機を使用してドープ20と濾過助剤分散液とを混合することで、ドープ20の中に濾過助剤を均一に分散させた液を調製する。
タンク56の内部温度は、ジャケットに流入させる伝熱媒体の温度を調整して、常圧におけるドープ20の(沸点−20℃)以上沸点以下とすると、ドープ20中に溶解していた空気を脱法する効果が得られるので好ましい。また、
切替器58により任意に選択した濾過器の中にタンク56内のドープ20を送る。本実施形態では、濾過器57aを用いる場合を示す。図4に示すように、濾過器57aの内部には多孔質孔の濾材161が入れられている。濾材161としては、例えば、市販されている濾紙、濾布、焼結金属等が挙げられる。図4の矢印方向に流れるドープ20のうち、濾材161の孔よりも大きい濾過助剤162や不溶解物50は濾材161の表面に堆積するので、サイズの異なる物質がランダムに堆積した多孔質層163が形成される。
濾過助剤162の表面にはスルホン基やカルボキシル基等が導入されているので、ドープ20に含まれるCa2+やMg2+等の金属イオン51、52が濾材161の表面に引き付けられる。これにより金属イオンのような微小な不溶解物を効果的に捕捉することができるので、この後に得られる濾液は高純度である。また、多孔質層163と濾材161とで段階的にドープ20を濾過するために、濾過器57aの濾過抵抗を上昇させずに使用寿命を延ばすことも可能となる。濾過助剤に関しては、特開2004−107629号公報に記載されており、この記載も本発明に適用することができる。
濾過助剤を使用する方法は特に限定されるものではなく、例えば、予め濾過助剤を堆積させた濾材を使用する方法が挙げられる。ただし、本方法では、多孔質層の空隙率が低くなるので、予め濾過助剤を分散させたドープを多孔質材に通過させることで堆積させる方法が好ましい。また、濾過助剤は、不溶解物の捕捉効果を向上させるために濾材の孔より大きく、かつこの条件の中で出来る限り微細な粒子を用いることが好ましい。好ましくは、その平均孔径が10μm以上100μm以下の濾過助剤を使用する。なお、微細な濾過助剤を用いるほど、濾過速度の遅延を招くおそれがあるので、濾過効率や濾過速度等を考慮しながら適宜選択する。
本実施形態のように、並列に配した複数の濾過器を切替器58で適宜選択しながら作業を行うと、例えば、どちらか一方の濾材の孔が詰まって濾過効率が低下する場合にも、他方の濾過器に切り替えて作業を行うことで、濾過処理に係る作業効率の低下を防止することができる。なお、濾過器の設置数は特に限定されるものではなく、3機以上を並列させても良い。
金属イオンを除去したドープ20を第1濾過装置26に送る。第1濾過装置26としては、平均孔径が100μm以下の濾紙を備えるタイプを使用する。これにより、ドープ20に含まれる不溶解物50、53を捕捉することができる。この後、ドープ20の濃度が所望の値を満たす場合には、ドープ20をストックタンク28へ送り、貯留する。ストックタンク28では、モータ47で攪拌機48を常時回転させて、ドープ20の中に異物が凝集するのを抑制しながら、流延に供するまでの間、均一な状態を保持する。
ところで、上記の様に、混合液17から所望の濃度のドープ20を調製する方法では、所望とするドープ20の濃度が高いほど調製に要する時間が長くなり、製造時間や製造コストの増大を引き起こす。そこで、本実施形態では、目的とする濃度よりも低濃度のドープ20を調製した後、所望の濃度となるように濃縮させることで、短時間のうちに所望のドープ20を調製する方法を採用し、以下に、その説明を行う。
先ず、所望の濃度よりも低濃度のドープ20を調製する。ドープ20の調製方法は、上述した一連の方法を用いれば良く、ここでは説明を割愛する。そして、第1濾過装置26で濾過した後のドープ20を、バルブV2を開けてフラッシュ装置31に送る。フラッシュ装置31では、ドープ20に含まれる溶剤の一部を蒸発させてドープ20を濃縮する。これにより、容易かつ短時間のうちに所望の濃度のドープ20を得ることができる。
フラッシュ装置31でドープ20を濃縮させているときに発生する溶剤ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮液化し、回収装置32で回収する。その後、再生装置33を用いることで、混合液17の調製に用いることができる溶剤として再生することができる。この再生溶剤をドープの調製に用いると、原料コストの削減を行なうことができる。濃縮したドープ20は、ポンプP2によりフラッシュ装置31から抜き出してから、第2濾過装置27を用いて濾過する。第2濾過装置27では、効率良くかつ効果的にドープ20中の不溶解物を除去するために、ドープ20の温度を0〜200℃とすることが好ましい。そして、不溶解物を除去したドープ20は、ストックタンク28へ送り、流延に供するまでの間、ここで攪拌しながら貯留する。
なお、第1、第2濾過装置26、27によりドープ20を濾過する際には、濾過流量を50L/時以上とすることが好ましい。これにより、各濾過装置に過度の負担をかけることなく、ドープ20中の不溶解物を効率良くかつ効果的に除去することができる。
フラッシュ装置31を用いる場合には、濃縮後のドープ20の中に濃縮時に発生した気泡が多く含まれていることが懸念される。このようなドープ20を流延に供すると、気泡を含有する流延膜が形成されるためドープ20中の気泡は流延前に出来る限り除去することが好ましい。そこで、フラッシュ装置31から抜き出した後のドープ20に、泡抜き処理を施すと、容易かつ効果的に気泡を除去することができる。ただし、泡抜き処理の方法は、特に限定されるものではなく、周知の方法を適用することができる。なお、本実施形態では、抜き出した直後のドープ20に超音波を照射することで泡抜き処理を行う。
金属イオンを除去する方法としては、ドープに接するように配された電極体を使用し、この電極体に電圧を印加して電界強度を持たせる方法も好適に用いることができる。電極体は、金属製のメッシュフィルタを使用することが好ましい。このような電極体にドープを通過させると、電界強度を持つ電極体で金属イオンを捕捉して除去することができる。
次に、上記のドープ20を用いてフィルムを製造する方法について、実施形態の一例を示しながら具体的に説明する。
図5に示すように、本実施形態で用いるフィルム製造設備35には、走行する支持体上に流延膜62を形成するための流延室63と、支持体から剥ぎ取った流延膜62を搬送する間に乾燥させるための渡り部65と、テンタ67と、フィルム68の両側端部を切除するための耳切装置69と、フィルム68の乾燥を十分に促進させるための乾燥室70と、フィルム68を冷却するための冷却室72と、フィルム68の帯電圧を調整するための強制除電装置74と、フィルム68にナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ76と、フィルム68をロール状に巻き取るための巻取室77等が備えられている。なお、配管を介して接続されるドープ製造設備10とフィルム製造設備35との間には、ストックタンク28から送り出すドープ20の流量を調整するためのポンプP3と、流延前にドープ20を濾過するための濾過装置78とが取り付けられている。
流延室63には、流延前のドープ20を送り込むフィードブロック80が備えられている。このフィードブロック80の内部にはドープ20の流路が形成されている。この流路の配置を調整することで、所望の構造の流延膜62を形成することができる。本実施形態では、単層の流延膜62を形成するため、フィードブロック80の内部には1本の流路が形成されているが、例えば、複数種のドープを使用して、基層と、この基層の両面に外層とを有する複層構造の流延膜を形成する場合には、内部に所望の配置となるよう形成された3本の流路を有するフィードブロックを使用すれば良い。
また、ドープ20の吐出口を有する流延ダイ81と、支持体である流延ドラム82と、流延ドラム82の表面温度を調整するために使用する冷媒を供給するための冷媒供給装置83と、支持体から剥ぎ取る際に流延膜62を支持するための剥取ローラ84と、流延室63の内部に浮遊する溶剤ガスを凝縮液化するための凝縮器(コンデンサ)85と、液化した溶剤を回収するための回収装置86と、流延室63の内部温度を調整するための温調装置87とが備えられている。
流延ダイ81には、流延ダイ81の吐出口近傍を減圧するための減圧チャンバ89が取り付けられている。なお、この減圧チャンバ89は、その内部温度を所定の範囲で保持することができるジャケット(図示しない)を備えている形態を使用し、ドープの流延時には内部温度を略一定となるように調整することが好ましい。流延ドラム82には、連続回転を可能とする駆動装置(図示しない)が取り付けられている。そして、流延膜62を形成する際には、この駆動装置により回転数を制御しながら、流延ドラム82を連続回転させる。また、流延ドラム82の内部には、冷却溶媒(冷媒)の流路(図示しない)が形成されており、この流路の中に冷媒供給装置83から冷媒を供給して循環又は通過させることで、その表面温度を所望の範囲で冷却する。
渡り部65には、流延膜62を支持し、搬送するための複数のパスローラ65aと、流延膜62を乾燥するために、温度を調整した乾燥風を供給する乾燥装置65bとが備えられている。
テンタ67は、流延膜62の搬送路に沿った両側に、複数のピンを有するピンプレートが取り付けられた1対のチェーン(図示しない)と、乾燥風を供給するための乾燥装置(図示しない)とが備えられており、流延膜62の両側端部をピンで突き刺し固定した後、テンタ67内を搬送する間に、乾燥風を吹き付けて流延膜62を乾燥させる。
耳切装置69には、切断したフィルム68の両側端部をチップとして粉砕するためのクラッシャ90が接続されている。また、乾燥室70の内部には、フィルム68を巻き掛けて搬送するための複数のローラ93と、乾燥室70の内部に浮遊する溶剤ガスを吸着回収するための吸着回収装置94と、乾燥室70の内部温度を調整するための温度調整装置95とが備えられている。そして、巻取室77には、プレスローラ97でフィルム68に押し圧を加えながらフィルム68を巻き取るための巻取ローラ98が備えられている。
次に、上記のフィルム製造設備35を用いてフィルムを製造する流れを具体的に説明する。
先ず、ドープ製造設備10で調製したドープ20を、ポンプP3を用いて濾過装置78に送って濾過した後、フィードブロック80を介して流延ダイ81へと送る。そして、表面が所定の温度範囲内に冷却され、常時回転している流延ドラム82の上に、流延ダイ81の吐出口からドープ20を流延する。このとき、流延ドラム82の表面温度は、その内部に形成された流路の中に冷媒供給装置84から所定の温度に調整した冷媒を送り込み、循環又は通過させることで、−40℃以上30℃以下とされる。
表面が冷却されている流延ドラム82の上に到達したドープ20は冷却されて、ゲル状の流延膜62となる。ここで、流延ドラム82の表面温度とドープ20の温度との差を小さくすると、ドープ20を短時間のうちに効率良くかつ効果的に冷却させることができる。そのため、流延時のドープ20の温度は−10〜55℃の範囲内とすることが好ましい。また、流延室63の内部温度は、温調装置87により常時−10〜57℃の範囲で略一定に調整することが好ましい。なお、本実施形態では、内部に冷媒を流して表面温度を−5℃に調整した流延ドラム82の上に35℃のドープを流延して流延膜62を形成する。
ドープ20の流延量は、所望とする流延膜62の厚み等を考慮しながら適宜選択すれば良いが、短時間のうちに製膜することができること、また、透明度が高く、所望の光学特性を確保したフィルム68を製膜することを目的として、フィルム68の膜厚が20〜150μmとなるように調整することが好ましい。より好ましくは、フィルム68の膜厚が25〜100μm程度となるようにすることである。
平面性に優れる流延膜62を形成するために、流延ドラム82の速度変動は3%以下とすることが好ましく、流延ダイ81の直下での流延ドラム82の上下方向の位置変動が500μm以下となるように調整することが好ましい。また、ドープを流延している間は、減圧チャンバ89により流延中のドープの後方を(大気圧−2000Pa)以上(大気圧−10Pa)以下で減圧することが好ましい。これにより、流延中のドープに凹凸が生じる原因となる同伴風の流れを低減し、かつ流延中のドープを適度に後方へと引っ張ることで、波うち等を抑制しながらドープを流延することができるため、平面性に優れる流延膜62を形成することができる。なお、減圧チャンバ89は、内部温度を調整することができる温度調整機能を有するものが好ましく、ドープの流延時には、その内部温度を常時略一定となるように調整することが好ましい。減圧チャンバ89の内部温度は特に限定されるものではないが、ドープ中に含まれる溶剤の凝縮点以上であることが好ましい。
流延ドラム82上の流延膜62は、時間の経過によりいっそう冷却されるためゲル化が進行する。その結果、剥ぎ取り可能な程度の自己支持性を持つようになる。また、本実施形態では、流延膜62を形成している間、流延膜62から蒸発して流延室63の内部に浮遊する溶剤を凝縮機35で凝縮液化させた後、回収装置36により回収する。これにより、浮遊する溶剤が流延膜62の表面に付着して、その平面性が低下するのを防ぐことができる。なお、回収装置36には再生装置(図示しない)を接続させて、回収した溶剤を再生する。この再生溶剤をドープの調製用として使用すると、原料コストの低減を図ることができる。
自己支持性を持った流延膜62を剥取ローラ84で支持しながら搬送方向に引張ることで、流延バンド82より剥ぎ取る。次に、剥ぎ取った流延膜62を渡り部65に送り、複数のパスローラ65aで支持しながら搬送する。渡り部65では、渡り部65の出口付近に配されるパスローラ65aの回転速度を渡り部65の入口付近に配されるパスローラ65aよりも速くすることが好ましい。この場合、流延膜62の搬送方向に張力が付与されるので、流延膜62を搬送方向に対して容易に延伸することが可能となる。また、渡り部65では、乾燥装置65bから所望の温度に調整した乾燥風を供給する。これにより、乾燥ムラを発生させることなく流延膜62を均一に乾燥することができる。なお、乾燥風の温度は特に限定されるものではなく、20℃以上250℃以下の範囲で略一定とすることが好ましい。ただし、使用するポリマーや添加剤等の種類や製造速度等を考慮しながら上記の範囲で適宜決定すれば良い。
乾燥を促進させた流延膜62をテンタ67に送る。テンタ67では、その入口付近の所定の位置で流延膜62の両側端部をピンで突き刺し、固定した後、レールに従って走行するチェーンの動きに応じて流延膜62を搬送する。この間、図示しない乾燥装置から乾燥風が供給され流延膜62の乾燥が進められる。流延膜62を構成するポリマーや添加剤等に熱ダメージを与えずに流延膜62を乾燥する上で、上記の乾燥風の温度は120℃以上180℃以下とすることが好ましい。
フィルム68を耳切装置69へ送り、その両側端部を切断する。これによりピンによる傷等を除去することができるので平面性に優れるフィルム68を得ることができる。また、フィルム68の両側端部を切除する処理は省略することもできるが、テンタを使用した後から製品とするまでのいずれかの工程で行うことが好ましい。なお、切除する回数や設置個数等も特に限定されるものではなく、製造条件等に応じて適宜選択すれば良い。
次に、フィルム68を乾燥室70に送る。乾燥室70は、温度調整装置95で内部温度を調整する。このため、複数のローラ93でフィルム68を巻き掛けながら搬送する間に、その乾燥を十分に促進させることができる。なお、乾燥室70の内部温度は特に限定されるものではないが、フィルム68を構成するポリマーに熱ダメージを与えずに、かつ溶剤を効果的に蒸発させることを目的として、フィルム68の膜面温度が60℃以上145℃以下となるように調整することが好ましい。膜面温度は、フィルム68の搬送路近傍であり、その中央付近に温度計を設けて測定することで把握することができる。
本実施形態では、乾燥室70に吸着回収装置94を接続して、乾燥時にフィルム68から蒸発する溶剤ガスを回収する。この回収した溶剤ガスは、溶剤成分を除去してから再度、乾燥室70に乾燥風として供給すると、製造コストの削減に繋がるエネルギーコストの低減を図ることができる。また、耳切装置69と乾燥室70との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフィルム68を予備乾燥すると、乾燥室70においてフィルム68の膜面温度が急激に上昇して形状変化が発生するのを抑制することができるので好ましい。
十分に乾燥したフィルム68を冷却室72に送る。冷却室72では、最終的に略室温となるようにフィルム68を徐々に冷却する。これにより、急激な温度変化によりしわやつれ等が発生するのを抑制しながらフィルム68を略室温とすることができる。なお、フィルム68を冷却する方法は、自然冷却でも良いし、冷却室72に温度調整装置を取り付けて冷却しても良く、特に限定されるものではない。なお、乾燥室70と冷却室72との間に調湿室(図示しない)を設けて、フィルム68を調湿した後に冷却室72へ送ると、フィルム68の表面にしわ等が生じている場合には、しわを効果的に伸ばして矯正することができるので好ましい。
略室温としたフィルム68を強制除電装置74に送る。これにより、フィルム68の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3〜+3kV)とすることができる。なお、本実施形態では、1台の強制除電装置74を冷却室72の下流側に設置しているが、設置数及び設置箇所は特に限定されるものではない。また、フィルム68の両側端部には、ナーリング付与ローラ76を用いてエンボス加工を施し、ナーリングを付与する。
最後に、フィルム68を巻取室77に送る。そして、プレスローラ97で巻き取り時の張力を調整しながらフィルム68を巻取ローラ98に巻き取る。巻取り時には、巻取開始時から終了時までの間で徐々に張力を変化させることが好ましい。また、巻き取られるフィルム68の長さは、搬送方向に少なくとも100m以上とすることが好ましく、幅方向が1400〜1800mmであることが好ましい。ただし、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果を得ることができる。更に、完成したフィルム68の厚みは、20〜500μmであることが好ましい。より好ましくは、厚みが30〜300μmであり、特に好ましくは、35〜200μmである。なお、完成したフィルム68の膜厚が15〜100μmであるような薄いフィルムを製造する際にも、本発明は効果を発揮する。
流延膜62やフィルム68の乾燥具合は、その残留溶剤量を目安として把握することができる。残留溶剤量は、残留溶剤量を測定したい対象物をサンプルとし、このサンプルの重量をx、サンプルを完全に乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出される乾量基準での値とする。なお、複数の溶剤を同時に使用する場合には、それらの溶剤の総和から残留溶剤量を算出する。
なお、流延ダイ81は、その形状や材質、大きさ等は特に限定されるものではないが、流延するドープの幅を略均一に保持するために、コートハンガー型のものを用いることが好ましい。その幅は、安全に所望の幅を有する流延膜を形成することを目的として、最終製品となるフィルム68の幅に対して、1.1〜2.0倍程度のものを用いることが好ましい。更に、その材質は、耐久性、耐熱性、耐腐食性等の観点から、析出硬化型のステンレス鋼を用いることが好ましい。更には、ジクロロメタンやメタノール、水の混合用液に3ヶ月浸漬させても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものが好ましい。ただし、耐腐食性の観点から、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものも好適に用いることができる。また、熱ダメージを抑制するために、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下である素材を用いることが好ましく、平面性に優れる流延膜を形成するために、流延ダイ81の表面は研磨されて凹凸が低減されているものを用いることが好ましい。
また、流延ダイ81におけるドープの吐出口の先端には、耐摩耗性の向上等を目的として、硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、セラミックスコーティングやハードクロムめっき、窒化処理等が挙げられる。ここで、硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削加工が可能であること、気孔率が低いこと、更には、脆性及び耐腐食性に優れること、流延ダイ81に対して密着度は高いが、一方でドープに対しては密着度が低いこと等の条件を満たすものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)やAl2 O3 、TiN、Cr2 O3 等が挙げられるが、中でも、WCを用いることが好ましい。なお、WCのコーティングは公知の溶射法により行うことができる。
吐出口の端に溶剤供給装置(図示しない)を取り付けて、流延するドープ20を可溶化させる溶剤を流延ビードの両端部や吐出口と外気との両気液界面に供給することが好ましい。これにより、吐出口から吐出されるドープ20が、局所的に乾燥して固化するのを防止することができるので、安定した流延ビードを形成することができるため、流延膜62に発生する凹凸を低減することができる。また、ドープ20の固化物が異物として流延ビードや流延膜62に含有するおそれも解消することができるため、透明度の高いフィルム68を得ることができる。なお、上記の溶剤としては、ドープ20を溶解することができる組成の化合物であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、ジクロロメタンを86.5重量部と、メタノールを13重量部と、n−ブタノールを0.5重量部とを混合した混合物が挙げられる。そして、上記のような混合物を供給する際には、脈動率が5%以下のポンプを用いて、その供給量が吐出口の端部の片側ごとに0.1〜1.0mL/分の範囲となるように供給することが好ましい。
本実施形態では、支持体として流延ドラムを使用する形態を示したが、特に限定されるものではなく、例えば、1対の駆動ローラに巻き掛けられ無端で走行する流延バンド等を用いることもできる。本発明は、支持体の幅や材質等に関して特に限定されるものではないが、過不足なく安定した流延膜を形成させるために、支持体の幅はドープの流延幅に対して1.1〜2.0倍程度が好ましく、その材質は、耐腐食性等の観点からステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するSUS316製であることがより好ましい。更に、平面性に優れる流延膜を形成させるために、できる限り表面が研磨されたものが好ましい。
なお、テンタ67は、固定手段としてクリップを備えるクリップ型テンタを使用することもできる。ただし、本実施形態のようにドープ20を冷却ゲル化して形成した流延膜62は、比較的に残留溶剤量が多く不安定であるため、クリップ型テンタを用いると、流延膜62の両側端部をクリップで挟持することが難しい。その点、ピン型テンタを用いると、流延膜62の両側端部をピンで突き刺すことで固定することができるので、安定して搬送することができる。また、延伸させる方向に係らず流延膜62に張力を付与している間は、乾燥温度の違いによって延伸の程度に差が生じるのを防止するために、乾燥温度を略一定とすることが好ましい。
次に、本発明に係る各種ドープ原料について、具体的に説明する。
本発明のドープは、セルロースエステルと、溶剤と、添加剤とを混合したものである。セルロースエステルとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアシレートブチレート等のセルロースの低級脂肪酸エステルを挙げることができる。中でも、セルロースアシレートを用いることが好ましく、特に、トリアセチルセルロース(TAC)を使用することが好ましい。これにより、透明度の高いセルロースエステルフィルムを得ることができる。また、本実施形態では、トリアセチルセルロース(TAC)を用いる。なお、TACを用いる場合には、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。
セルロースアシレートとしては、より透明度の高いフィルムを得るためにも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。ただし、下記式中のA及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わす。なお、Aはアセチル基の置換度であり、Bは炭素数が3〜22のアシル基の置換度である。
(a) 2.5≦A+B≦3.0
(b) 0≦A≦3.0
(c) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部を炭素数が2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合を意味する。なお、100%のエステル化の場合を置換度1とする。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合である。
セルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、2種類以上のアシル基が使用されていても良い。なお、2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。更に、DSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、33%以上であることが特に好ましい。更に、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましい。このようなセルロースアシレートを用いると、非常に溶解性に優れたドープを調製することができる。なお、上記のようなセルロースアシレートを用いる場合には、非塩素系溶剤を使用すると、非常に優れた溶解性を有し、低粘度であり、かつ濾過性に優れるドープを調製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿、パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数が2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられる。更に、それぞれが置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
本発明で使用することができるセルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
ドープ原料のうち溶剤としては、使用するセルロースエステルを溶解することができる有機化合物を用いることが好ましい。なお、本発明においてドープとは、セルロースエステルを溶剤に溶解又は分散させた混合物を意味するため、セルロースエステルとの溶解性が低い溶剤も使用することができる。好適に用いることができる溶剤としては、例えば、ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタンやクロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、メタノールやエタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等のアルコール、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン、酢酸メチルや酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル、テトラヒドロフランやメチルセロソルブ等のエーテル等が挙げられる。これらの中から2種類以上の溶剤を選択し、混合した混合溶剤を使用しても良い。
上記の溶剤の中でも、疎水性の溶剤を使用することが好ましい。疎水性溶剤としてはジクロロメタンがもっとも好ましい。また、上記のハロゲン化炭化水素としては、炭素原子数1〜7のものが好ましく用いられる。更に、セルロースエステルとの相溶性や、支持体から剥ぎ取る流延膜の剥ぎ取る易さの指標である剥ぎ取り性、フィルムの機械強度、光学特性等の観点から、ジクロロメタンに炭素数が1〜5のアルコールを1種ないしは、数種類混合させたものを用いることが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、中でも、メタノール、エタノール、n−ブタノール、或いはこれらの混合物を用いることが好ましい。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを使用しない溶剤組成も提案されている。この目的に対しては、炭素数が4〜12のエーテル、炭素数が3〜12のケトン、炭素数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いることが好ましい。これらの化合物は環状構造を有していても良いし、エーテル、ケトン及びエステルの官能基、すなわち、−O−、−CO−、及び−COO−のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。その他にも、溶剤は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していても良い。なお、2種類以上の官能基を有する場合には、その炭素数がいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であれば良く、特に限定はされない。
ドープには、目的に応じて可塑剤、紫外線吸収剤(UV剤)、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の公知である各種添加剤を添加させても良い。例えば、上記のうち可塑剤としては、トリフェニルフィスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート等のリン酸エステル系可塑剤や、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、及びポリエステルポリウレタンエラストマー等の公知の各種可塑剤を用いることができる。
また、ドープには、フィルム同士の接着を防止したり、屈折率を調整したりする目的で微粒子を添加させることが好ましい。この微粒子としては、二酸化ケイ素誘導体を用いることが好ましい。本発明における二酸化ケイ素誘導体とは、二酸化ケイ素や、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂も含まれる。このような二酸化ケイ素誘導体は、その表面がアルキル化処理されたものを使用することが好ましい。アルキル化処理のような疎水化処理が施されている微粒子は、溶剤に対する分散性に優れるため、微粒子同士が凝集することなくドープを調製し、更には、フィルムを製造することができるので、面状欠陥が少なく、透明度の高いフィルムを製造することが可能となる。
上記の様に、表面にアルキル化処理された微粒子としては、例えば、表面にオクチル基が導入された二酸化ケイ素誘導体として市販されているアエロジルR805(日本アエロジル(株)製)等を使用することができる。なお、微粒子を添加させる効果を確保しつつ、透明度の高いフィルムを得るためにも、ドープの固形分に対する微粒子の含有量は0.2%以下となるようにすることが好ましい。更に、微粒子が光の通過を阻害させないように、その平均粒径は1.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μmであり、特に好ましくは、0.4〜0.8μmである。
先に説明した通り、本発明では、透明度の高いセルロースエステルフィルムを得るためにもセルロースエステルとしてTACを利用してドープを調製することが好ましい。この場合、溶剤や添加剤等を混合した後のドープの全量に対して、TACを含有する割合が5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、TACを含有する割合が15〜30重量%であり、特に好ましくは17〜25重量%である。また、添加剤(主に可塑剤)を含有させる割合は、ドープ中に含まれるセルロースエステルやその他添加剤等を含めた固形分全体に対して、1〜20重量%とすることが好ましい。
溶剤、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、剥離剤等の各種添加剤及び微粒子については、特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、TACを利用したドープの製造方法、例えば、素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡等についても同様に、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
前述したように、本発明は、1種類のドープを用いて単層のフィルムを製造する場合にも、基層と、基層の両面に接するように配される外層とを有する複層構造のフィルムを製造する場合にも、適用することができ、優れた効果を得ることができる。なお、複数のドープを共に流延する共流延の方法は、特に限定されるものではなく、所望の複層構造となるように流路が形成されたフィードブロックや流延ダイを用いて、所望数のドープを同時に流延させても良いし、使用するドープと同数の流延ダイを用意し、これらのうち、支持体に接するドープを流延するための流延ダイを上流に配し、続けて、基層用ダイ、最下流側に他方の表層用ダイを配列させて、各ドープを支持体上に逐次に流延させても良い。また、上記の流延方法を組み合わせて使用しても良い。
流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶剤回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
完成したフィルムの性能や、カールの度合い、厚み、及びこれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
完成したフィルムを光学フィルムとして利用する場合、少なくとも一方の面を表面処理すると、その他の光学部材と貼り合せる際の接着性を向上させることができるため好ましい。表面処理としては、例えば、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理等が挙げられ、これらの中から少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。
また、本発明で得られるフィルムをベースとして、その両面或いは一方の面に所望の機能性層を設けると、機能性フィルムとして用いることができる。機能性層としては、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層等が挙げられ、これらのうち、少なくとも1層を設けることが好ましい。例えば、反射防止層を設けると、液晶表示装置等の画像反射防止効果を得ることができる機能性フィルムの反射防止フィルムを得ることができる。上記の機能性層は、界面活性剤や滑り剤、マット剤、帯電防止剤等の添加剤のうち少なくとも1種を含んでいることが好ましく、その場合の含有量は、0.1〜1000mg/m2 であることが好ましい。なお、フィルムに各種機能を付与するための機能性層や形成方法等は、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明により得られるフィルムは、透明度やレタデーション値が高く、湿度依存性が低い。そのため、特に、偏光板の位相差フィルムとして好適に用いることができるが、偏光板の表面を保護するための保護フィルムとしても利用することができる。本発明のセルロースエステルフィルムの具体的用途に関しては、特開2005−104148号公報において、例えば、[1088]段落から[1265]段落には、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されており、この記載も本発明に適用させることができる。
以下、本発明について行なった実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。