JP2009007596A - シャフト用合金、モータ用シャフトおよびモータ - Google Patents

シャフト用合金、モータ用シャフトおよびモータ Download PDF

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Abstract

【課題】非磁性を確保しながら、良好な耐食性および被削性を備えるとともに適度な硬さを備えることにより耐久性が高く、加えてコストの上昇が抑えられるモータのシャフト用合金を提供する。
【解決手段】モータのシャフト用合金として、重量比で、C:0.4〜0.6%、Si:0.2〜0.5%、Mn:7.0〜15.0%、Cr:13.0〜20.0%、N:0.08〜1.0%、Se、TeおよびCaの合計:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的に混入する不純物を含む非磁性オーステナイト系鋼からなるものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、モータの回転軸として用いられるシャフトの材料である合金に係わり、特に、パソコン等のハードディスクドライブのスピンドルモータや、ファンモータ、あるいは各種家電製品や精密機器に採用されるモータに好適な被削性(切削のし易さ)に優れた非磁性の鋼材料に関する。また、本発明はそのような合金でできたシャフト、そしてそのシャフトを用いたステッピングモータ等のモータに関する。
モータ用シャフトは、モータの磁石の影響を受けて磁性を帯びることにより回転性能に影響が出ないようにするため、オーステナイト組織を有する非磁性ステンレス鋼が材料に選ばれている。SUS303Cuは耐食性や被削性に優れる点もあってシャフト材料として好適であるが、近年、価格が高騰しているNiやCuを含むことが、コストアップにつながり経済的ではないといった不満が生じている。軸用材料としてのオーステナイト系ステンレス鋼としては、特許文献1等に開示される材料も知られている。また、オーステナイト系以外で非磁性を示すステンレス鋼は高Mn鋼があるが(特許文献2等参照)、この材料は加工硬化性が大きく被削性の点で劣るという問題がある。
特開2004−250717号公報 特開平10−121204号公報
一般的な鉄鋼材料においては、被削性改善の元素としてPbやSが公知であるが、Pbは環境上の観点から好ましくない。また、Sを高Mn鋼に多量に添加した場合、MnSが形成されて被削性が向上するが、熱間加工性および耐食性の低下が懸念される。
よって本発明は、非磁性を確保しながら、良好な耐食性および被削性を備えるとともに適度な硬さを備えることにより耐久性が高く、加えてコストの上昇が抑えられるモータのシャフト用合金を提供することを目的としている。また、本発明はこのような合金でできたシャフト、そしてそのシャフトを用いたステッピングモータ等のモータを提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成することができる合金の開発を鋭意進めたところ、高Mn鋼にSe、TeおよびCaのうち少なくとも一つを適量添加することにより、高Mnであっても被削性の向上を果たせることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものであり、重量比で、C:0.4〜0.6%、Si:0.2〜0.5%、Mn:7.0〜15.0%、Cr:13.0〜20.0%、N:0.08〜1.0%、Se、TeおよびCaの合計:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的に混入する不純物を含む非磁性オーステナイト系鋼からなるモータのシャフト用合金であることを特徴としている。
以下、本発明の化学成分(元素)の含有量の根拠を説明する。なお、以下の%は重量比である。本発明は以下に上げた成分の他の残部が、Feおよび不可避的に混入する不純物とされる。
・C(炭素):0.4〜0.6%およびMn(マンガン):7.0〜15.0%
Cは強力なオーステナイト生成元素であり、強度向上に効果的な元素であるが、含有量が多くなると耐食性の低下を招くので注意が必要である。したがって、強度向上の確保が下限であり、耐食性の確保が上限となる。また、MnはNiに代わって非磁性のオーステナイト組織を生成する元素であり、オーステナイト組織を得るためには、本発明は含有量が比較的高い高Mn鋼とする。また、合金が非磁性となるためにはMnの含有量を7.0%以上とすることが必要である。また、MnはNiよりも安価であるが、コスト低減に寄与するためには、含有量を15.0%以下に抑えることが望ましい。
本発明では、オーステナイト組織を得るために、CとMnの含有量は、両者の相関関係から決定される。図1はC−Mn状態図であり、Cr炭化物の析出を避け、Mnの過剰な添加を抑えてオーステナイト組織を得るには、C:0.4〜0.6%であって、かつMn:7.0〜15.0%とされる。なお、図1で示す範囲A(図1で区画される四角いハッチング領域)では、Mnの含有量が少ないときにオーステナイト組織(γ相)とマルテンサイト組織(α相)が同時に存在する領域(図1中の(γ+α+ε)領域)が含まれる場合が出てくるが、十分な硬さを得るためにはCとMnの含有量の組合せがオーステナイト領域(図1中のγ領域)に含まれていることが必要である。後述するように、Nの適量な含有によって、C:0.4〜0.6%およびMn:7.0〜15.0%を範囲Aとした場合でも、範囲Aにおけるオーステナイト領域が拡大し、オーステナイト組織の生成を確保することが可能である。
・Si(シリコン):0.2〜0.5%
Siは脱酸剤、特に精錬時の脱酸剤として必要な元素であるが多くなると耐食性や冷間加工性の低下を招く。そこで、脱酸剤として効果を発揮させる下限として0.2%とし、耐食性や冷間加工性を確保する上で0.5%を上限とした。
・Cr(クロム):13.0〜20.0%
Crは不動態皮膜を形成して耐食性を向上させるために必要な元素であり、また、強力なフェライト生成元素でもある。Crが13.0%未満では耐食性が不十分になりやすく、一方、20.0%を超えるようであるとオーステナイト相が不安定となる。これらを鑑みてCrは13.0〜20.0%とするが、Crは比較的高価であるため使用量は少ない方が良く、13.0〜15.0%がコスト的には好ましい。
・N(窒素):0.08〜1.0%
Nは強力なオーステナイト生成元素であり、また、硬さの向上にも寄与する。Nを合金に含有させるには、N雰囲気の溶解炉内で合金を溶解させることによってなされるが、通常の大気圧下での溶解炉では0.08〜0.12%程度まで含有させることが可能である。さらにNの含有量を増加させたい場合、完全密閉が可能なESR炉(エレクトロスラグ再溶解炉)内をN雰囲気として加圧しながら溶解すると、Nの含有量を1.0%程度まで上げることができる。図1に、Mn−Cの状態図を示すが、α’領域、(α+ε)領域、(γ+α+ε)領域およびγ領域(オーステナイト領域)の四つの領域が存在する。曲線1、2および3は特定のNの含有量に対する各領域間の境界線を示している。この場合では、本発明におけるCとMnの含有量範囲(範囲A)の半分以上がオーステナイト領域から外れている。そこで、Nの添加量を多くすることにより、たとえば曲線1が模式的に示した曲線1’(破線)にシフトされ、オーステナイト領域が拡大する。また、約1%のNを添加することによりオーステナイト領域がより顕著に拡大され、たとえば曲線1が模式的に示す曲線1”(破線)までシフトされる。特に示さないが、同様に曲線2、3もシフトする。これにより、CとMnの含有量に応じてNを0.08〜1.0%の範囲で適量添加すれば安定したオーステナイト組織を得ることができる。但し、Nの含有量が0.08%未満では範囲Aにおけるオーステナイト領域が小さすぎて実用的ではなく、Nの含有量が約1%であれば、非磁性合金を得るためのMnの含有量下限値(7.0%)以上およびCの含有量が0.4%以上の範囲がオーステナイト領域に入るので、それ以上Nを添加する必要はない。したがって、本発明ではNの含有量を0.08〜1.0%とし、製造の容易性からは0.08〜0.12%が好ましい範囲とする。この場合、Cの含有量が0.4〜0.6%の範囲でオーステナイト領域を得るためには、Mnの含有量を13.0〜15.0%とするのが好ましい。
・Se(セレン)、TeおよびCaの合計含有量:0.1〜0.3%
Seは本発明の高Mn鋼に含有されることにより被削性を向上させる。Se、TeおよびCaはMn等の元素とともにセレナイド(セレン化合物)を生成し、これが鋼中に分散して存在することによって切削抵抗を軽減させる。本発明の場合、Se、TeおよびCaの少なくとも一つを含むが、その合計含有量が0.1%未満では被削性の改善には寄与しにくく、一方、0.3%を超える量であると被削性の改善効果の飽和に至り、また、熱間圧延等の熱間加工性を阻害する。したがって、Se、TeおよびCaの合計含有量は0.1〜0.3%とした。
以上が本発明の合金の必須成分であるが、これらの他に本発明の合金には以下の成分が含まれる場合もある。
・P(リン):0.05%以下
Pは含有量が多いと粒界偏析などにより耐食性、加工性、靱性が低下し、含有量が0.05%を超えるとこれらの特性の低下が顕著となる。したがってPの含有量は0.05%以下とする。
・S(硫黄):0.1〜0.3%
SはMnなどの元素とともにサルファイド(硫化物)を生成し、0.1%以上になると鋼中に分散して存在することにより切削抵抗を低減させるが、含有量が0.3%を超えると機械的強度の低下や熱間加工性を低下させる。したがってSの含有量は0.1〜0.3%とする。
以上が本発明のモータのシャフト用合金に関する成分であり、この合金は、各成分を混合して溶解するなどの方法で得ることができる。なお、Nは上記のように溶解の際の雰囲気に用いることで含有させることができる。本発明は、この合金から製造されるモータ用のシャフト、およびこのシャフトを用いたステッピングモータ等のモータを含む。
本発明によれば、C、MnおよびNの適量な配合によって非磁性を示すオーステナイト組織を確実に得ることができ、また、高Mn鋼ながらもSe、TeおよびCaのうち少なくとも一つを適量含有させることによって十分な被削性が確保され、さらに、Niの代わりに安価なMnを用いることにより非磁性オーステナイト系鋼のコスト低減が図られるといった効果を奏する。
以下、本発明の効果を実施例によって実証する。
表1に示す成分の試験用鋼:実施例1〜4および比較例1〜5を溶解炉で溶製して得た。比較例1〜5は本発明以外の比較例であり、実施例1〜5が本発明の実施例である。なお、表1ではFeが残部とされているが、厳密には残部はFeと不可避的に混入する不純物とを言う。
次に、比較例1〜5の鋼を圧延加工して、円柱状のバー材(寸法φ10×300mm)をそれぞれ必要数得た。そしてこれら試料を熱処理して溶体化処理した後、透磁率、塩水噴霧試験、ビッカース硬さ試験を行った。各試験に供した試料の数は3個ずつであり、それぞれの平均値を求めた。これらの試験結果を得た後、旋盤で切削試験を行った。但し、比較例1は、透磁率μが1.01より大(μ>1.01)で、モータのシャフト用合金としては不適であるため、切削試験から除外した。さらに、比較例2は窒素添加量不足で硬さが低いため、また、比較例3は錆発生のため、同様に切削試験から除外した。したがって、切削試験は比較例4、5および実施例1〜4に対して実施した。
Figure 2009007596
透磁率、塩水噴霧試験および硬さ試験の結果を表2に、切削試験の結果を図2に示す。塩水噴霧試験(JISZ2371)は、純水にNaClを5%混合した塩水を35℃で96時間にわたって試料に噴霧して行い、試験後の表面の錆の状態を観察した。また、切削試験は、旋盤にセットした試料を切削工具(バイト: 超硬M20)によって切削し、切削工具の刃先磨耗等によって通常状態での切削ができなくなった時点をもって工具寿命とする方法で、切削速度を図2に示す複数の速度に設定した。この試験では、同じ切削速度で比較して工具寿命が長いほど被削性が良いと言える。言い換えると、同じ工具寿命を得るための切削速度が速いほど被削性が良いと言える。
Figure 2009007596
表2によると、透磁率μに関しては、比較例1以外はいずれの試料も非磁性の特性を満足する1.01以下を示していた。塩水噴霧試験の結果によると、Crの含有量が13.0%未満の比較例3は錆が発生して実用上問題があり、Crが13%以上(比較例3以外)であれば錆は発生しないことが認められた。硬さ試験の結果によると、比較例1のようにMnの含有量が少ない場合でも、Nの含有量が多いと、比較例1よりも2倍以上多くMnを含有する実施例2〜4に近い硬さが得られ、Nが硬さの向上に寄与することが認められた。
図2に示す切削試験の結果によると、切削速度を80m/分とした場合、工具寿命については、比較例4が約2分、比較例5が約5分に対して、本発明の実施例1〜4では約30分であった。また、切削速度を50m/分とした場合、工具寿命については、比較例4が約6分、比較例5が約10分に対して、本発明の実施例1〜4では約70分であった。この切削試験の結果によると、同じ切削速度で比較した場合、本発明の鋼が比較例の鋼よりも格段に切削工具の寿命が長く、被削性がきわめて良好であることが確認された。
本発明の合金は、一般的なモータのシャフトとして好適なものであるが、モータの中でも、特にステッピングモータについては、近年小型化が著しく、例えば直径3mmや6mmといった超小型のものも提案されている。この種のモータではシャフトも極めて小さくなるため加工の容易さは特に重要であり、このため良好な被削性が要求される。また、小さなシャフトで必要な強度を確保することも必要となるため、材料の適度な硬さが要求される。そこで、本発明のシャフト用合金は、非磁性であって、被削性および強度に優れ、従来よりもコストを抑えることができる材料であり、大量生産されるステッピングモータのシャフトに適用するのに非常に有効なものである。
C−Mn状態図であり、かつ本発明のC含有量およびMn含有量を示す図である。 本発明の実施例および比較例で行った切削試験結果を示す線図である。

Claims (4)

  1. 重量比で、C:0.4〜0.6%、Si:0.2〜0.5%、Mn:7.0〜15.0%、Cr:13.0〜20.0%、N:0.08〜1.0%、Se、TeおよびCaの合計:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的に混入する不純物を含む非磁性オーステナイト系鋼からなるモータのシャフト用合金。
  2. 請求項1に記載のシャフト用合金からなることを特徴とするモータ用のシャフト。
  3. 請求項2に記載のシャフトを用いたことを特徴とするモータ。
  4. 前記モータがステッピングモータであることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
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JP2021503558A (ja) * 2018-05-23 2021-02-12 ファ, マンチャオHE, Manchao Npr非磁性ロックボルト鋼材料及びその生産方法
CN116888282A (zh) * 2020-12-23 2023-10-13 法国洛林大学 非磁性计时器部件和用于获得非磁性计时器部件的热机械处理方法

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