JP2009057627A - 濃厚ナノ金コロイド液と金微粉体およびその製造方法 - Google Patents

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Hisashi Harada
久志 原田
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Abstract

【課題】濃厚な金コロイドを調製するために、濃縮操作や保護コロイド剤を添加することなく、低温から常温を含む広い反応温度で濃厚な塩化金酸水溶液を還元して濃厚で安定なナノ金コロイド液、金微粉体および金ペーストなど、各種用途の原材料を提供する。
【解決手段】生物由来で安全な三塩基酸型構造のバイオサーファクタント、スピクリスポール酸およびそのラクトン環開環体の各種アルカリ塩を還元剤兼コロイド保護安定剤とし、これらを、塩化金酸水溶液に加えて常温から高温下(5〜80℃)で振り混ぜた後静置し、高〜低濃度(0.1mmol/l〜2.43mol/l)の塩化金酸水溶液を還元して金ナノ粒子を生成させ、金単体の核発生数とそれらの合一を制御するとともに、生成した金コロイドに対して大きい分散安定化作用を持たせる。
【選択図】なし

Description

本発明は、スピクリスポール酸およびその誘導体アルカリ塩を用いて、常温など低温を含む広い反応温度で塩化金酸水溶液中のAu3+を還元し、生成した金コロイドが高濃度においても安定なナノ金コロイド液およびその製造方法並びにそれを用いた金微粒子の表面被覆密度の大きい被覆剤への応用に関する。
金コロイドは古くから色材として知られ、淡紅、赤、赤紫、青、青灰色などの色は、金の微粒子の粒子径に対応しており、古くからステンドグラスの鮮紅色やカシウスの紫など顔料として使われてきた。ロンドンの王立研究所にはファラデーの作った金コロイドが150年を経て今なお保管されているという(特許文献1)。当時、塩化金酸の還元剤にはリンやフォルムアルデヒドが使われたという。生成する金コロイドの安定化を見越した還元剤の種類と添加量など還元反応の反応設計が大事なことを示している。着色は、金微粒子の自由電子の量子化による局在プラズモン振動と入射光の振動が共鳴して光の吸収が起こるとされる。金ナノ粒子では530nm付近に極大吸収波長がある。粒子径が大きくなるとともに極大吸収波長は長波長側に移行する。こうして、金コロイドの多様な有色性とその電子的挙動により、現在、塗料用色材、各種の表面のコーテイング剤、焼成した金属薄膜模様コーテイング、合成樹脂用着色剤、導電膜およびナノワイヤー、表面増強ラマン分光(SERS)への応用(特許文献2)、TiO表面の金修飾による酸化触媒への応用、金ナノ粒子による目視遺伝子診断法(特許文献3)など診断薬、バイオセンサー、バイオマーカーおよび医用(リウマチ薬など)等々への応用などが提案されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6)。還元剤としては、クエン酸塩、ヒドラジン、水素化ホウ素塩、トリエタノールアミンなどがある。金コロイドの保護安定剤には水溶性高分子、有機および無機増粘剤・ゲル化剤さらに界面活性剤が用いられている。
北原文雄、表面、35,1(1997) 福岡隆夫、森 康維、ケミカル・エンジニアリング、2004−8,36(2004) 佐藤香枝、化学と工業、59(2),116(2006) 中許昌美、山本真理、色材、78(5),221(200) 米澤 徹、表面技術、56(12),743(2005) 小石真純、石井文由著「ナノ粒子のはなし」、日刊工業新聞社(2006)
上記のようにして、金コロイドは様々な応用のための原材料として、製造法が工夫されてきた。塩化金酸を還元して金コロイドを調製するためには、例えば試験管に0.5〜1.2mMHAuCl・4HO水溶液に対してクエン酸三ナトリウム塩水溶液を4倍モル比で加えてから、80℃に保った電気恒温水槽に試験管を固定して振とうしてかきまぜながら6、7分くらい加熱撹拌を続けると塩化金酸水溶液の色は黄色であったのが、Au3+が還元されて黄色からピンク、青、赤紫色へと変化した。反応はクエン酸三ナトリウムを用いた場合、HAuClのHがNaの置き換わり、またHAuClのClがOHに取って代わるなど多様な反応経過を経た後Auの金単体(疎水コロイド)が生成したことが確認された。UV測定により(後述の[0019]参照)、金コロイド中の金の平均粒子径は60nmであった。この反応では、クエン酸三ナトリウムは酸化されて2−ケトグルタール酸ナトリウムとなり、生成したコロイド状の金微粒子に吸着して負荷電を与えて0.5〜1.2mMの低濃度の金コロイドの安定に寄与し、一方反応によって同時に生成したNaClは金コロイドに凝析作用を及ぼして不安定化の要因となる。反応を終えて電気恒温水槽からおろし、常温で12時間くらい放置すると反応条件(基質および還元剤濃度とそれらの仕込み比、各種の添加物、反応温度)に対応した色(すなわち、固有の粒子径と粒子径分布に依存する)に落ち着く。ここで、上記のように還元剤のクエン酸三ナトリウムの未反応物と2−ケトグルタール酸ナトリウムは金ナノコロイド生成後には金ナノ粒子に電荷を与えて弱いながらコロイドの安定化に寄与し、またこれらの対イオンのNaおよび還元反応により生成したNaClの凝析作用との間のバランスにより金コロイドの安定性が決まる。それ故、還元剤が可及的少量であることが求められている。一般的に、金コロイドを濃縮するときには、水溶性高分子(PVA、PVP等)有機・無機増粘剤・分散剤、界面活性剤などの安定剤を後添加する必要がある。また、ナノ粒子の水分散系は、一般に粒子径が小さい程沈降しにくい。コロイドの定義では1〜100nmの微粒子分散系であるとされる。ストークスの式から計算すると、粒子径60nmの球形金ナノ粒子(非荷電と仮定)の沈降速度は37cm/月(20℃で一定)と計算される。いずれにせよ、反応基質となる塩化金酸の低濃度で生成する金コロイドは、色が薄いこと、還元剤が多量であること、またそのため金コロイドが不安定化すること、加熱・撹拌のための装置が必要であることなど従来技術には課題が残されている。
本発明は、濃厚で安定な金ナノコロイドを低温・常温を含む広い反応温度において、還元力が強力で効率がよく、加熱、撹拌、濃縮操作を要せずに調製する製造方法、並びに濃厚なため表面被覆性の大きい金ナノコロイドを提供するものである。ただし、粒子径の調節、金コロイドの色の選択、反応速度のさらなる促進のために必要であれば、反応温度を上げ、また撹拌してよい。このとき、本発明は濃縮操作が不要であるという大きなメリットがある。金単体の粒子径と粒子径分布は色材用途では非常に重要である。また、金ペーストやSERSへの応用ではサブミクロンの大きさのゆるやかに凝集した高濃度の二次粒子が有効とされているので、DLVO理論のポテンシャルエネルギー対距離の関係の「二次極小」がおこる低塩条件での点凝集(再分散可能なゆるい凝集)が求められる(特許文献7)ゆえんである。金単体の導電材料、着色剤、被覆・隠蔽材料や触媒活性の応用は高濃度の金コロイドが簡便に低コストで製造されることに大きな価値があり、濃厚金コロイド液を用いて二次元方向に高密度の金薄膜を作製可能にすることも課題である。
日本油化学会編、「界面と界面活性剤−基礎から応用まで−」、(社)日本油化学会(2007)、第5章 分散(大島広行、石橋 正、武林 敬)
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、生物由来で安全が確認されており、固有の化学構造(従来にはない多塩基酸型アニオン界面活性剤)を持つ微生物由来のバイオサーファクタント(特許文献8)の機能開発の研究において見出されたスピクリスポール酸[(4S,5S)−4,5−ジカルボキシ−4−ペンタデカノリド]アルカリ塩[I][化3]および[I]のラクトン環の開環体[(4S,5S)−3−ヒドロキシ−1,3,4−テトラデカントリカルボン酸]のアルカリ塩[II][化4]が、水溶液中および含水有機溶媒中において塩化金酸溶液中のAu3+を常温を含む広い温度で強力に還元して金単体のナノ粒子の水分散系(金コロイド)を生成するとともに生成した金コロイド分散系(疎水コロイド)の金微粒子に吸着して安定化させることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
石上裕、表面、27,457(1989)
すなわち、本発明は、次式
Figure 2009057627
[式中のXは無機アルカリ(Na,K,Li,NH ,Mg,Caなど)、有機アルカリ(アルキルアミン、アルギニンなど)、またはHを示す。nはXの陽イオンとしての価数を示す]
で表わされる化合物[I]、および次式
Figure 2009057627
[式中のXは無機アルカリ(Na,K,Li,NH ,Mg,Caなど)、有機アルカリ(アルキルアミン、アルギニンなど)、またはHを示す。nはXの陽イオンとしての価数を示す]
で表わされる化合物[II]]
を含有することを特徴とする金コロイド液。
多塩基酸型バイオサーファクタント、スピクリスポール酸(以下、S−酸と略称する)およびそのラクトン環の開環体(以下、O−酸と略称する)の各種アルカリ塩(特許文献9)は親水・親油バランス(HLB)の異なる同族体を構成し、それらの水溶液が大きい界面活性[表面張力低下作用、乳化・分散作用(耐塩性あり)、金属イオン捕捉作用、pH緩衝作用、中程度の湿潤・浸透作用、対イオンを選ぶことによる増粘・ゲル化作用およびベシクル形成作用]を有することが見出されている(特許文献10、特許文献11、特許文献12))。また、スピクリスポール酸中和塩は、生分解性およびヒトや生物に対する安全性も示されている(特許文献13)。本発明者らは、S−酸の特性および機能について鋭意研究を進めたところ、S−酸およびその開環体のアルカリ塩が塩化金酸に対して強い還元力を示すことを新たに見出したもので、S−酸開環体が三塩基酸(カルボキシレートイオン、分子中3個のCOOを持つ)型界面活性剤なので、ミセルの会合構造表面(ステルン層近傍)にAu3+イオンを強く引きつけ、局所濃縮するのである。作用機構には、前記のクエン酸三ナトリウムと同様にHAuCl・4HOのHがNaなどの対イオン(陽イオン)と置換し、またリガンドのClの全部または一部ががOHに変わるなど推測の反応経過を含むが、Au3+が[I]や[II]の集合体(ミセル等)表面層に局所濃縮され、還元反応が速やかに進むことが考えられる。それ故、[II]のみを還元剤として用いる場合、アルカリ性下でAu3+(モル)に対して仕込み量(モル)が0.1モルで還元力を示した。このとき、塩化金酸水溶液が酸性のため[I]および[II]は一部中和され、例えばO−酸三ナトリウム塩(以下O−3Naと略称する)からO−酸二ナトリウム塩(以下、O−2Naと略称する)へと一部が変化して界面活性が増強される。こうして、金コロイドの安定化には、生成した金単体表面に、分子がかさ高く、多塩基酸であるS−酸やO−酸アルカリ塩がイオン的、またファンデルワールス力により吸着して負荷電を与えて、金微粒子間の合一を防ぐのである。さらに、O−酸ジ2−エチルヘキシルアミン塩(以下、O−2EHAと略称する)、O−酸三マグネシウム塩(O−3Mgと略称する)およびO−酸アルギニン塩等の水溶液は、ゲル形成性および増粘性があり、コロイドの安定化に寄与しうる。
T.Tabuchi et al.,J.Ferment Technol.,55,37;43(1977)] 古澤邦夫監修、新しい分散・乳化の科学と応用技術の新展開、第I編第5節天然系乳化剤(石上 裕)、p.216、(株)テクノシステム、2006 Y.Ishigami et al.,CHIMICA OGGI,July/August 2000 Issue,1(Spiculisporic acid) 崔、石上、オレオサイエンス、2,649(2002) 石上 裕、化学工業、1990−9,28(1990)]
すなわち、これらのバイオサーファクタントは、生成した高濃度の金コロイドに吸着して負荷電を与える。ゼータ電位の測定を可能にするため2x10−2mol/l塩化ナトリウム水溶液で60倍に希釈して溶液のゼータ電位を測定すると−40mVであった。すなわち、スピクリスポール酸およびそのラクトン環の開環体は、還元された金単体、すなわち金ナノ粒子の表面にファンデルワールス結合および多塩基酸のカルボキシレートイオンが吸着し、保護して分散安定化作用を示すのである。応用用途のための各種の処方(有機化合物、高分子化合物や無機塩類の添加等やpH調整)に耐え、貯蔵時の温度変化(夏・冬の温度差)やpH変化に耐えることができる。他方、微量の硫酸アルミニウムを添加した系(600倍に希釈)のゼータ電位は+8mVであった。金ナノ粒子の荷電の制御や[0004]の二次極小の出現が考えられた。
こうして、S−酸およびO−酸の対イオンを選ぶことにより、金ナノ粒子の合一・会合の制御が可能となることを見出して本発明を完成するに至ったものである。例えば、[II]からのO−3NaやO酸三カリウム塩(以下、O−3Kと略称する)は還元力が大きいが、保護コロイド作用はO−2EHAよりも小さく、O−2EHAは逆の特徴を持つので両者の併用、また金コロイド製造後の後添加も可能である。特に、[II]からのO−2EHAは、水、エタノール、エタノール、ベンゼン、ジエチルエーテルに可溶で、水溶液の臨界ミセル濃度(cmc)は1.92x10−3mol/l(0.12%)、cmcでの表面張力値(γ cmc)は30.2mN/mで、乳化・分散作用が大きかった。なお、[II]からのO−3Na水溶液のcmc:0.17mol/l(7.01%),γ cmc:46.1mN/m、O−2Na水溶液のcmc:0.102mol/l(3.98%)、γ cmc:42.4mN/m(平衡値)、O−1Na水溶液のcmc:3.6x10−3mol/l(0.149%),γ cmc:38.4mN/m、[I]からのS−酸二ナトリウム塩(以下、S−2Naと略称)水溶液のcmc:6.1x10−2mol/l、γ cmc:39.2mN/mであった(特許文献14)。なお、塩化金酸水溶液は酸性で、[I]および[II]の水溶液はアルカリ性であるから還元反応中に[I]および[II]の親水基であるカルボキシレートイオンが一部中和されるためHLBが親油性の側に傾いて、より界面活性が強まり、分散・保護コロイド作用が大きくなることが容易に考えられる。
石上 裕、山崎信助、化技研報,80,231(1985)
<塩化金酸水溶液の調製>
HAuCl・4HO 1.030gを、量りこみで100ml容メスフラスコに入れ、標線まで脱イオン・蒸留水(以下、純水という)を加えて100mlとし、25.0mM(1.03%)HAuCl・4HO水溶液を調製した。同様にして、24.3mMおよび191mM等の濃度のHAuCl・4HO水溶液を調製した。また、25.0mM HAuCl・4HO水溶液を希釈して、0.5mMおよび1.25mMHAuCl・4HO水溶液を調製した。
<本発明に係るスピクリスポール酸アルカリ塩[I]およびその開環体アルカリ塩[II]の調製法>
対応するアルカリ[NaOH,KOH,LiOH,MgCO,Mg(OCHCH],Na塩のCaClによる複分解、直鎖または分岐ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルおよび2−エチルヘキシルなどの各種アルキルアミンやアルギニン等を用いて、中和およびけん化して調製した。S−酸1.635g(0.005mol)を100ml容共栓三角フラスコに入れ、さらに1M水酸化カリウム水溶液15ml(S−酸の3倍モルに相当する)を加えて70℃にて30分加熱すると、99.5mM(4.59%)O−酸三カリウム塩(以下、O−3Kと略称する)水溶液が得られた。一度に多量用意し、保管しておけばよい。常温では安定である。二価アルカリ塩も、S−酸やO−酸と等モルと反応させ、また等モル以下で中和およびけん化した。
<金コロイド液中の金微粒子の平均粒子径の評価法>
金ナノ粒子の粒子径が既知の単分散性の市販金コロイド[田中貴金属工業(株)製およびブリティッシュ・バイオセル・インターナショナル社製]をUV測定して、UVスペクトルの極大吸収波長と粒子径との関係を求めた。その結果、UVスペクトルの吸収極大での波長(nm)と金ナノ粒子の粒子径との関係は、UV521.5nm:平均粒子径20nm(淡紅色);UV528.0nm:平均粒子径40nm(鮮紅色);UV532.5nm:平均粒子径60nm(ワインレッド);UV545.0nm:平均粒子径80.0nm(赤紫色)、UV560.0nm:平均粒子径100nm(青紫色)であった。実施例の実験において、UVスペクトルの極大吸収波長がこれらの間にあるときは内挿して平均粒子径を求めた。
<従来のクエン酸三ナトリウム水溶液による塩化金酸の還元反応>
1.0mM(0.041%)HAuCl・4HO水溶液1mlを5ml容バイアル管に入れ、3.4mM(0.088%)クエン酸三ナトリウム水溶液1mlを加え、80℃に調節された電気恒温水槽に浸して30分間振とうしたところ、淡黄色から赤紫色に変わったので水槽から取り出し、1時間静置後UV測定した。波長527nmに極大吸収が見られた。金ナノ粒子の平均粒子径は35nmであった。なお、高濃度の塩化金酸の還元を試みたが安定な金コロイドが得られなかった。
<クエン酸三ナトリウムによる還元によって得られた金コロイドの安定性>
金コロイドは疎水コロイドであり、少量の無機塩類の存在や添加によって凝析を起こす(コロイド系が破壊されて沈殿を生ずる)。これに対してせっけんのような親水コロイドはもともと負電荷を持つので少量の無機塩類の存在では安定で、大量の無機塩を添加してはじめてコロイド系が破壊されて沈殿を生じる(塩析)。よって、ここでは、クエン酸三ナトリウム塩を還元剤兼生成した金コロイドの安定剤として用いたとき、凝析作用に耐えるか否か検討した。すなわち、0.6mM(0.025%)HAuCl・4HO水溶液5mlに1.5mM(0.039%)クエン酸三ナトリウム水溶液4.5mlを加え、75℃で10分加熱すると、赤紫色の金コロイドが得られた(UV測定より平均粒子径60nm)。このコロイド液に、1MNaCl水溶液0.05mlを室温で加えていくとみるみるうちに青紫色、灰色へと変色し、金ナノ粒子が凝析効果により大粒子、沈殿へと変化した。
<水素化ホウ素ナトリウムによる還元反応>
室温(25℃)で5ml容バイアル管に、8.1mM(0.334%)HAuCl・4HO水溶液1mlと30mM(0.113%)NaBH水溶液1mlとを入れて振り混ぜるとすぐに全体が青灰色に変わり、ついで黒い沈殿が生じた。NaBHは、還元作用は大きいが、生成した金コロイド系が不安定で、はじめに生成した金単体微粒子が合一をくり返し、再分散不可能な巨大粒子となってついには沈殿を生じたと考えられる。還元剤がNaBH単独でなく、O−2EHA,O−3Na,またはO−2Naなどを加えた複合還元剤を用いたところ、還元反応が速く、金コロイドの粒子径を制御し、分散安定化した金コロイドが得られた。
<本発明に係るO−酸アルカリ塩による塩化金酸の還元>
室温(25℃)で、1.2mM(0.05%)HAuCl・4HO水溶液2mlおよび1.2mM(0.05%)O−酸三ナトリウム塩(以下、O−3Naと略称)水溶液1mlを5ml容バイアル瓶に入れて軽く振り混ぜ、静置すると120分後から徐々に、黄色であった混合液が赤紫色になった。半日静置して平衡状態とし、UV測定すると極大吸収波長は543nmで、これは金微粒子の平均粒子径が77nmであることを示した。
<本発明に係るO−酸アルカリ塩による還元と生成した金コロイドの安定性>
24.3mM(1.00%)HAuCl・4HO水溶液2mlを、室温(20℃)で10ml容試験管に入れ、高濃度の99.5mM(4.59%)O−3K水溶液2mlを加えて軽く振り混ぜた。そのまま静置すると、黄色であった混合液が30分後紫色に変わり、170分後赤紫色になって安定化した。この溶液に光を当てるとチンダル光が観察され、金コロイドの生成に対応すると考えられた。ついで、その一部を取り、純水を加えて10倍に希釈してUVスペクトルを測定すると547nmに吸収極大があった。後述のUVスペクトルと標準金コロイドの粒子径との関係から、金微粒子の平均粒子径は83nmであった。室温で5ヶ月放置した後、UV測定したところ、スペクトルに変化がなかった。
次に本発明を実施例をもって詳細に説明する。
[実施例1]
71.6mM(2.95%)HAuCl・4HO水溶液2mlを10ml容試験管に入れ、110.6mM(4.56%)O−3Naと略称)2mlを加えた後振り混ぜ、室温(20℃)で20分静置すると、水溶液の色が黄色から赤紫色に変わり、この水溶液がチンダル現象を示すことから金コロイドの生成したことが明らかであった。平衡状態に到達させるため、そのまま1日静置し、その一部を取って1/20の濃度になるよう純水で希釈した。この溶液の分光測定(300〜900nm)を行ない、スペクトル(吸光度対波長の関係)の吸収極大が550nmであることから、金コロイドの平均粒子径が87nmと測定された。走査型電子顕微鏡(日立S−4700型)を用い、5万倍で金コロイドを観察した。20nm位の球状のナノ粒子、それよりやや大きい一時粒子、数個がゆるく集合した集合体など大きさに分布のあることが観察された。また、金に特異的な特性X線測定によって粒子状で金の存在、金微粒子の形状が球であることおよびそれらの分布状況が確認でき、また金のスペクトルとして金の存在量が仕込み量に対応して検出された。
[実施例2]
室温(20℃)で、1.2mM(0.05%)HAuCl・4HO水溶液2mlおよび1.2mM(0.05%)O−3Na水溶液2mlを5ml容バイアル管に入れて軽く振り混ぜ、静置すると50分後紫がかった赤色に呈色して金コロイドが生成した。チンダル現象が観察された。UVスペクトルの極大吸収波長は546nmで、平均粒子径77nmに相当した。さらに、別のバイアル瓶を用いて、1.2mM HAuCl・4HO水溶液2mlに対して、2.4mM O−3Na水溶液を各2ml加えて静置すると、それぞれ紫がかったやや濃い赤色となり、UVスペクトルの極大吸収波長529nmで、相当する金ナノ粒子の粒子径は45nmであった。
[実施例3]
室温(20℃)で、8.1mM(0.334%)HAuCl・4HO水溶液2mlおよび21.3mM(0.879%)O−3Na水溶液を5ml容バイアル管に入れ、軽く振り混ぜ、7時間静置した。UVスペクトルの極大吸収波長は550nmで、相当する金ナノ粒子径87nmであった。スペクトルの形から粒子径の分布が正規分布より長波長側に裾が広かった(平均粒子径より大きい粒子が多いことを示す)。
[実施例4]
実施例2に示された1.2mM HAuCl・4HO水溶液1mlと1.2mM O−3Na水溶液1mlとを混合し、静置して得た金コロイド液に1M NaCl水溶液0.1mlを加えて得た金コロイドも、UVスペクトルの極大吸収波長546nmで、相当する金ナノ粒子径81nmと変化がなく、O−3Na分子が金コロイド中の金ナノ粒子の安定剤として働いていることが確かめられた。
[実施例5]
室温(25℃)で、5ml容バイアル管に194mM(7.99%)HAuCl・4HO 1mlと152mM(6.27%)O−3Na 4mlとを入れて軽く振り混ぜ、静置すると15分で赤茶色の金コロイドが生成した。チンダル現象が見られた。1週間後、全体的には安定分散したコロイドであったが、僅かに黒い沈殿が見られた。2ヵ月後も同様の安定状態が続いていた。
[実施例6]
室温(25℃)で、5ml容バイアル管に194mM(7.99%)HAuCl・4HO水溶液0.2ml、152mM(6.27%)O−3Na水溶液1.0ml、および91mM(5.51%)O−2EHA0.2mlを入れ、軽く振り混ぜて静置すると、約3時間後に赤紫色の金コロイドが生成した。やわらかい、流動性のあるゲルで、2ヵ月後にも安定であった。O−2EHAが金コロイドの分散安定化に寄与したことを示している。この金コロイドの一部を毛筆で磁性ボートに塗りつけ、電気炉に入れて800℃、30分間焼成した。焼成後、SEMで5万倍に拡大して観察したところ、金ナノ粒子が融合して網状に合一した状態が観察された。
[実施例7]
10ml容サンプル瓶に24.3mM(1.01%)HAuCl・4HO水溶液4mlと110.6mM(4.56%)O−3Na 4mlとを入れ、軽く振り混ぜると15分で紫色に変わった。1日静置した後、2本の10ml容サンプル瓶に、この金コロイドをそれぞれ2ml取り、純水4mlを加えた。1M NaCl水溶液3.0mlを加えたところ1日以上コロイド状態が持続したが、2日後沈殿を生じてコロイドが破壊された。0.1M Al(SO水溶液0.6mlを加えると一部大きい粒子が析出したが大部分は紫色のコロイド状態を維持した。金コロイドは疎水性コロイドであり、シュルツェ・ハーディ則に従えば1価カチオンのNaClよりも3価カチオンのAl3+の凝析力がはるかに大きい(系により異なるが500倍くらい、Al3+濃度にすればNaの1/500で有効)はずであるが、本実験の解析から50倍くらいの差であった。このAl3+添加に対する強い抵抗力は、O−3Naによる分散安定化・保護コロイド作用によるものである。前述の[0014]との挙動のちがいが顕著である。いずれにせよ、本コロイドはO−3Na、また副次的にO−3Naより生成したO−2Naの保護コロイド効果が大きく、強い耐塩性をもたらしたものと考えられる。
[実施例8]
室温(20℃)で、5ml容バイアル管に、24.3mM(1.00%)HAuCl・4HO水溶液2mlと110.6mM(5.10%)O−3K水溶液2mlを入れて軽く振り混ぜ、静置すると、30分で紫色に呈色した。混合して170分経過後のUVスペクトルの吸収極大547nmから金ナノ粒子の平均粒子径は83nmであった。
[実施例9]
室温(20℃)で、5ml容バイアル瓶に3.0mM HAuCl・4HO水溶液1mlおよび22mM(0.809%)O−酸三アンモニウム塩水溶液1ml入れて振り混ぜ、静置すると40分後青灰色に変わった。100nm以上の粒子径であると推定された。
[実施例10]
室温(25℃)で、5ml容バイアル瓶にHAuCl・4HO粉末を0.20g取り、220mM(10.14%)O−3K水溶液3.0mlを加えて振り混ぜると25分で黄色から赤紫色に変わった。生成した金コロイド中の金含量は3.3%であると計算された。粒子径分布が広く、UV測定の結果から平均粒子径100nm付近の金微粒子と、大きいやわらかい二次粒子が生成した。再分散が可能であった。
[実施例11]
実施例10において、反応開始後120分の赤紫色の金コロイド2mlを5ml容バイアル瓶に入れ、これに対して91mM O−2EHA溶液2mlをを加えて振り混ぜると、チキソトロピー性の粘性の大きい(25℃で約2000mPa・s)、均一に分散した赤紫色のゲルが生成した。安定なゲルであった。
[実施例12]
室温(20℃)で、30ml容試験管に120mM(5.00%)O−3Mg水溶液10mlにn−テトラデカン10mlを加え振り混ぜると全体がゲル化し、白濁色に変わった(ブルックフィールド粘度計により、20℃で7300mPa・s)。このゲルに24.3mM(1,00%)HAuCl・4HO水溶液10mlを加え、70℃で10分加熱すると赤紫色に変わった。毛筆にこのコロイド液を含ませ、垂直に立てた磁製ボートに塗りつけた。垂れ止め効果があった。さらに、この磁製ボートを電気炉に入れ、300℃に加熱したところ、赤紫色のまま磁製ボート上に固着した。
[実施例13]
S−酸二ナトリウム塩(S−2Naと略称)の66.3mM(2.47%)水溶液はpH7.0であり、8.1mM(0.334%)塩化金酸水溶液のpHは4.0である。両者を等量混合して室温(25℃)で反応を試みたが、反応速度が著しく遅く、16時間後に青紫色に変わった。70℃に加熱すると20分の加熱で反応し紫色のコロイドを生成した。酸性側での還元反応は金コロイドを速やかに生成させるのには好ましくなかった。
[実施例14]
8.1mM(0.334%)HAuCl・4HO水溶液1mlおよび66.3mM(2.47%)S−2Na水溶液1mlを5ml容バイアル管に入れた。pHをアルカリ性にするため、1M NaOH水溶液0.6mlを加えて系のpHを9.8に調節した。室温(25℃)で25分後に着色しはじめ、12時間後には青紫色で安定化した。
[実施例15]
O−2EHAはHLBのバランスがとれ、その水溶液は表面張力低下作用が大きいこと、臨界ミセル濃度(cmc)が小さいこと、乳化・分散作用が大きいなど界面活性が大きいことが分かっている。塩化金酸水溶液は酸性である。そこで、O−2EHAの代わりにO酸三2−エチルヘキシルアミン塩(O−3EHAと略称)を用いて塩化金酸で中和し、反応系にO−2EHAを生じさせて還元作用の促進を行なった。すなわち、室温(25℃)で、5ml容バイアル管に8.1mM(0.334%)HAuCl・4HOエタノール・水(50:50)溶液1mlと83mM(6.10%)O−3EHAのエタノール・水(50:50)溶液1mlとを加えて時々振り混ぜると1日後には淡紅色を経てピンク色に変わって安定化した。

Claims (5)

  1. 次式、[化1]で表わされるスピクリスポール酸アルカリ塩[I]および次式、[化2]で表わされる[I](化1)のラクトン環の開環体アルカリ塩[II][式中のXは無機アルカリ(Na,K,Li,NH ,Mg,Caなど)、有機アルカリ(アルキルアミン、アルギニンなど)、またはHを示す。nはXの陽イオンとしての価数を示す。]を塩化金酸などAu3+の還元剤の全部または一部として反応させて得られる金コロイド液。
    Figure 2009057627
    Figure 2009057627
  2. 請求項1の[I]および[II]の化合物を塩化金酸などAu3+の還元剤の全部または一部として、反応温度10〜90℃、また特に15〜30℃の常温で反応させ、同時に[I]および[II]を、還元によって生成した金コロイド液中のコロイド金の分散・保護コロイド剤として用いることを特徴とする金コロイド液の製造方法。
  3. 塩化金酸の低級アルコール溶液およびジエチルエーテル溶液において、塩化金酸を反応基質とし、[I]と[II]のアルコール溶液または含水アルコール溶液を還元剤として金コロイドを生成させ、生成後には[I]および[II]の界面活性作用によって当該金コロイド液中のコロイド金を安定的に分散・保護して得た金コロイド液。
  4. 請求項1、2および3の金コロイド液を限外ろ過により分級して得た粒子径の小さい各ナノ金コロイド液とろ過されない残留粉体、さらにサブミクロン領域を含む金微粒子の分級した集合体など、粒子径別に分級されたナノ金コロイドおよび金微粒子。
  5. [I]および[II]の各種表面への付着性・各種の固体・液体との相溶性、また乳化・分散作用などの界面活性およびコロイド的特性を利用した金微粒子を含むコロイド液、さらに濃厚金ペースト、乾燥または焼成した金被覆膜および光学フィルター用の材料。
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