JP2009095256A - 加熱調理用油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】パーム油から分別されたパーム分別軟質部を含み、加熱調理に適した加熱調理用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】パーム分別軟質部を含む油相と、乳化剤とを含有する加熱調理用油脂組成物であって、前記油相は、前記パーム分別軟質部を25〜100質量%、及び液状植物油を0〜75質量%含有し、前記パーム分別軟質部は、1つのパルミチン酸と2つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(PO2)の含有量が30質量%以上であり、且つ2つのパルミチン酸と1つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(P2O)の含有量が20質量%以下であり、前記乳化剤は、該乳化剤の含有量が、前記油相質量の0.05〜1.2質量%であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、パーム油から分別されたパーム分別軟質部を含み、加熱調理に適した加熱調理用油脂組成物に関する。
一般に、油を用いて加熱調理される揚げ物や炒め物等の調理品には、加熱調理に用いられた油がしみこんでいる。この油は、調理品の風味や味を向上させると共に、栄養源として好ましいものであるが、調理後、時間の経過と共に徐々に当該調理品から油がにじみ出してくる場合がある。この場合には、油の食感がべとつき、風味も重くなるという問題があった。また、調理品を収容した容器が、このにじみ出してきた多量の油で汚れてしまい、容器洗浄の負荷が増大するという問題があった。
一方、近年、大豆油に次いで生産量の多い植物性油脂であるパーム油の需要が増大している。このパーム油は、酸化安定性に優れるという特徴を有しているため、揚げ物や炒め物に使用される油脂の原料としても用いられるようになっている。パーム油は、高融点成分を多く含むため、揚げ物や炒め物の温度が低くなると表面で油が固まり、食感が悪くなるという問題があった。また、冷蔵状態や寒冷地等の低温下においては、0℃以上でも保存時に高融点成分が結晶化しやすく低温での保存安定性が悪いという問題もあった。
そこで、特許文献1には、低温下での保存安定性を向上させるために、特定の乳化剤を添加したフライ用油脂組成物が提案されている。しかし、特許文献1記載のフライ用油脂組成物は、乳化剤の効果により低温での保存安定性は向上するものの、より高い保存安定性が求められている。
特開2004−189965号公報
本発明の課題は、上記問題に鑑みて、揚げ物や炒め物等の調理品の食感・風味を改善し、容器の汚れを抑えるために、調理品からの油のにじみ出しを抑え、低温での保存安定性も改善した加熱調理に適した加熱調理用油脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、パーム油中に含まれる特定のパーム分別軟質部を含む油相と、所定量の乳化剤とを含有する油脂組成物を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) パーム分別軟質部を含む油相と、乳化剤とを含有する加熱調理用油脂組成物であって、前記油相は、前記パーム分別軟質部を25〜100質量%、及び液状植物油を0〜75質量%含有し、前記パーム分別軟質部は、1つのパルミチン酸と2つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(PO2)の含有量が30質量%以上であり、且つ2つのパルミチン酸と1つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(P2O)の含有量が20質量%以下であり、前記乳化剤は、該乳化剤の含有量が、前記油相質量の0.05〜1.2質量%であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物。
(2) 前記パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中におけるパルミチン酸の含有量は、該パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸に対して25〜38質量%であることを特徴とする(1)記載の加熱調理用油脂組成物。
(3) 前記液状植物油は、大豆油、菜種油又はコーン油のいずれか1種以上を含むことを特徴とする(1)又は(2)記載の加熱調理用油脂組成物。
(4) 前記乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、該ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸中に炭素数8〜12の飽和脂肪酸を1〜20質量%、炭素数14〜22の飽和脂肪酸を10〜48質量%、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を51〜89質量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の加熱調理用油脂組成物。
(5) 前記パーム分別軟質部は、パーム油から2回以上の分別工程を経て得られたものであり、且つヨウ素価が68〜70であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の加熱調理用油脂組成物。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の加熱調理用油脂組成物を用いて加熱調理して得られる揚げ物又は炒め物。
本発明によれば、加熱調理後に調理品からにじみ出る油の量を低減できる加熱調理用油脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、低温での保存安定性に優れると共に、加熱調理後の調理品が良好な食感等を維持することができる加熱調理用油脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の加熱調理用油脂組成物について詳しく説明する。
本発明の加熱調理用油脂組成物における油相は、パーム分別軟質部を含むものである。
本発明に用いられるパーム分別軟質部は、パーム油から分別して得られるものであり、一般にオレイン、スーパーオレイン、トップオレイン、シングルオレイン、ダブルオレイン、トリプルオレインと呼ばれるもの等が挙げられる。
上記パーム分別軟質部は、1つのパルミチン酸と2つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(PO2)の含有量が30質量%以上、好ましくは35〜45質量%、更に好ましくは38〜45質量%のものであり、且つ2つのパルミチン酸と1つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(P2O)の含有量が20質量%以下、好ましくは5〜18質量%、更に好ましくは7〜11質量%のものである。
パーム分別軟質部におけるPO2の含有量が30質量%未満である場合、あるいはP2Oの含有量が20質量%を超える場合には、得られた加熱調理用油脂組成物は、耐冷性が悪くなる。
ここで、本発明におけるPO2及びP2Oは、それらを構成する脂肪酸の結合位置を特に限定しない。即ち、本発明におけるPO2は、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)のみから構成されていてもよく、またOPO(2−パルミトイル−1,3ジオレオイルグリセリン)のみから構成されていてもよい。更には、POO及びOPOの両者を含むものであってもよい。
同様に本発明におけるP2Oは、OPP(1−オレオ−2,3ジパルミトイルグリセリン)のみから構成されていてもよく、またPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)のみから構成されていてもよい。更にはOPP及びPOPの両者を含むものであってもよい。
本発明においては、上記の如くPO2及びP2Oを構成する脂肪酸の結合位置を特に限定しない。
尚、上記パーム分別軟質部の構成脂肪酸は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.4.2.2−1996」の方法に準じて測定できる。
上記パーム分別軟質部は、その構成脂肪酸としてパルミチン酸、オレイン酸を多く含有するものである。上記パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中に含まれるパルミチン酸の含有量は、該パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸に対して、好ましくは25〜38質量%、更に好ましくは25〜32質量%である。また、上記パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中に含まれるオレイン酸の含有量は、該パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸に対して、好ましくは40〜60質量%、更に好ましくは48〜60質量%である。
パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中に含まれるパルミチン酸の含有量が38質量%以下である場合は、より耐冷性が向上する。同パルミチン酸の含有量が25質量%以上である場合には、にじみ出る油の量をより低減させることができる。
また、パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中に含まれるオレイン酸の含有量が40質量%以上である場合には、耐冷性がより向上する。オレイン酸の含有量が60質量%以下の場合には、にじみ出る油の量をより低減させることができる。
更に、上記パーム分別軟質部は、その構成脂肪酸として上記パルミチン酸、及びオレイン酸に加えてリノール酸を含有していることも好ましい。上記パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中に含まれるリノール酸の含有量は、該パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸に対して、好ましくは10〜18質量%、更に好ましくは12〜18質量%である。
また、パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中に含まれるリノール酸の含有量が10質量%以上である場合には、耐冷性がより向上する。リノール酸の含有量が18質量%以下の場合には、にじみ出る油の量をより低減させることができる。
パーム分別軟質部を得るためのパーム油の分別方法には、特に制限はなく、冷却による自然分別法や、界面活性剤や溶剤等を用いて分別する方法を採用することができる。パーム油を分別して得られる中融点部分又は低融点部分が一般にパーム分別軟質部と呼ばれるものである。高融点部分は、一般にパームステアリンと呼ばれる。本発明においては、上記パーム分別軟質部として、パーム油を2回以上分別して得られた低融点部分を用いることが好ましい。
また、パーム油を2回以上分別して得られた上記パーム分別軟質部は、耐冷性の観点から、ヨウ素価が63以上のものであることが好ましく、更に好ましくは65以上、最も好ましくは68〜72のものである。パーム分別軟質部のヨウ素価が63以上である場合には、更に耐冷性がよく、にじみ出る油の量の低減効果もより良好である。
尚、上記パーム分別軟質部のヨウ素価は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.1−1996」の方法に準じて測定できる。
油相中における上記パーム分別軟質部の含有量は、25質量%以上、好ましくは25〜60質量%、更に好ましくは25〜50質量%、最も好ましくは30〜49質量%である。油相中における上記パーム分別軟質部の含有量が25質量%以上の場合には、得られた加熱調理用油脂組成物による加熱調理後の調理品からにじみ出る油の量の低減効果がより増加する。
パーム分別軟質部の原料として用いられるパーム油は、例えば、以下の方法により得られる。アブラヤシの果房を蒸気で処理した後、圧搾法により採油する。採油された油は、遠心分離によって繊維や夾雑物を取り除かれた後、乾燥される。その後、この油は、定法に従い精製工程を経る。精製方法としては、化学的精製や物理的精製等が挙げられる。このようにして得られたパーム油を上述のように分別して、本発明に用いられるパーム分別軟質部を得る。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、油相中に上記パーム分別軟質部に加えて、他の液状植物油を含有してもよい。ここで、液状植物油とは、常温で流動性を有する植物性油脂をいい、好ましくは、5℃において流動性及び透明性を有する植物性油脂をいう。他の液状植物油としては、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性及び価格の観点から、大豆油、菜種油、コーン油を用いることが好ましい。
また、上記液状植物油として、上述の液状植物油の2種以上を混合して用いることもできる。
油相中における上記液状植物油の含有量は、75質量%以下、好ましくは40〜75質量%、更に好ましくは50〜75質量%、最も好ましくは51〜70質量%である。油相中における液状植物油の含有量が75質量%以下の場合には、得られた加熱調理用油脂組成物による加熱調理後の調理品からにじみ出る油の量の低減効果がより増加する。
更に、上記油相全体を構成する全脂肪酸中に含まれるパルミチン酸の含有量は、該油相を構成する全脂肪酸に対して、好ましくは10〜38質量%、更に好ましくは10〜22質量%である。
油相全体を構成する全脂肪酸中に含まれるパルミチン酸の含有量が10質量%以上の場合、にじみ出る油の量をより低減させることができる。パルミチン酸の含有量が38質量%以下の場合には、耐冷性がより向上する。
また、上記油相全体を構成する全脂肪酸中に含まれるオレイン酸の含有量は、該油相を構成する全脂肪酸に対して、好ましくは25〜60質量%、更に好ましくは30〜55質量%である。
油相全体を構成する全脂肪酸中に含まれるオレイン酸の含有量が25質量%以上である場合には、耐冷性がより向上する。オレイン酸の含有量が60質量%以下の場合には、にじみ出る油の量をより低減させることができる。
なお、上記脂肪酸の含有量を満たす範囲であれば、他の脂肪酸が入っていてもよい。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、乳化剤を油相に対して0.05〜1.2質量%、好ましくは0.1〜1.2質量%、更に好ましくは0.1〜0.5質量%含有するものである。
乳化剤の含有量が油相の質量に対して0.05質量%未満の場合には、得られる加熱調理用油脂組成物は、結晶成長抑制効果を発揮できず、低温での保存安定性が悪くなってしまう。また、乳化剤の含有量が油相の質量に対して1.2質量%を超えた場合には、乳化剤が過剰となり結晶化を促進してしまうと共に、得られた加熱調理用油脂組成物の風味に悪影響を及ぼしてしまう。
上記乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、グリセリドエステル等が挙げられる。本発明においては、これらの中でもポリグリセリン脂肪酸エステルを好ましく用いることができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、当該ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸中に炭素数8〜12の飽和脂肪酸を1〜20質量%、炭素数14〜22の飽和脂肪酸を10〜48質量%、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を51〜89質量%含有するものを用いることが好ましい。このような脂肪酸組成を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として使用することにより、得られる加熱調理用油脂組成物は、低温での保存安定性がより向上する。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する炭素数8〜12の飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等が挙げられる。炭素数14〜22の飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。また、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、必要に応じて他の成分を含有させることもできる。他の成分としては、酸化防止剤、香辛料、着色料等が挙げられる。
酸化防止剤としては、トコフェロール類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキン及びそれらのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。
香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等が挙げられる。
着色料としては、カロテン、アスタキサンチン、カラメル、紅麹色素等が挙げられる。
本発明の加熱調理用油脂組成物中におけるこれら他の成分の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に制限はないが、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法は、特に制限なく、定法に従って行うことができる。例えば、本発明の加熱調理用油脂組成物は、パーム分別軟質部及び乳化剤、必要に応じて他の液状植物油を混合し、均一になるまで撹拌して製造することができる。また、パーム分別軟質部及び乳化剤を、例えば、40℃程度に加熱してから他の液状植物油と混合撹拌してもよい。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、揚げ物、炒め物、焼き物等の加熱調理用の油として好適に用いることができる。
上記加熱調理用油脂組成物を用いて調理される揚げ物としては、コロッケ、天ぷら、とんかつ、空揚げ、魚フライ、春巻き等の惣菜、ポテトチップス、トルティーヤチップス、ファブリケートポテト等のスナック菓子、揚げせんべい等の揚げ菓子、フライドポテト、フライドチキン、ドーナツ、即席麺等が挙げられる。
上記加熱調理用油脂組成物を用いて調理される炒め物としては、チャーハン、野菜炒め等の中国料理等が挙げられる。
上記加熱調理用油脂組成物を用いて調理される焼き物としては、ステーキ、ハンバーグステーキ、ムニエル、鉄板焼き、ピカタ、卵焼き、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば等が挙げられる。
本発明の加熱調理用油脂組成物を用いて加熱調理した調理品は、調理後長時間にわたって油が調理品の表面で固まりにくいにもかかわらず、該調理品からの油のにじみ出しが抑制され、良好な食感を長時間維持できるものである。
また、本発明の加熱調理用油脂組成物は、乳化剤を含有することにより低温での保存安定性にも優れ、特に家庭用の加熱調理用油脂組成物として好適に用いることができる。
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例になんら制限されるものではない。
〔パーム分別軟質部Aの製造〕
INTERCONTINENTAL SPECIALTY FATS SDN BHD社製のパーム油軟質部(ヨウ素価64.4)100質量部を60℃で完全溶解した後、5〜8℃に冷却する。冷却にて生じた結晶部をプレスフィルターでろ別し、ヨウ素価69.8のパーム分別軟質部A52質量部を得た。
また、INTERCONTINENTAL SPECIALTY FATS SDN BHD社製のパーム油軟質部(ヨウ素価64.4)をパーム分別軟質部Bとして、同じく、INTERCONTINENTAL SPECIALTY FATS SDN BHD社製のパーム油軟質部(ヨウ素価59.8)を比較例のパーム分別軟質部Cとして用いた。
パーム分別軟質部A〜Cの特性を以下の表1に示す。
Figure 2009095256
尚、各パーム分別軟質部のヨウ素価及び各パーム分別軟質部の構成脂肪酸については、上述した方法を用いて測定した。
パーム分別軟質部の曇点は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.2.7−1996」の方法に準じて測定した。
〔乳化剤〕
以下の各実施例及び比較例においては、乳化剤として2種類のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた。各乳化剤を構成する脂肪酸の組成を以下に示す。
乳化剤1は、炭素数8〜12の飽和脂肪酸を2.5質量%、炭素数14〜22の飽和脂肪酸を25.5質量%、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を72.0質量%含有するポリグリセリン脂肪酸エステルである。
乳化剤1は、サンソフトQMP5(太陽化学株式会社製)と、リョートーポリグリセリンエステルO−50D(三菱化学フーズ株式会社製)とを1対1の比率で配合して製造した。
乳化剤2は、炭素数8〜12の飽和脂肪酸を13.1質量%、炭素数14〜22の飽和脂肪酸を42.5質量%、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を44.8質量%含有するポリグリセリン脂肪酸エステルである。
乳化剤2は、THL17(阪本薬品工業株式会社製)とリョートーポリグリセリンエステルO−50D(三菱化学フーズ株式会社製)とを1対1の比率で配合して製造した。
〔液状植物油〕
以下の各実施例及び比較例においては、液状植物油として大豆油(商品名:日清大豆サラダ油、日清オイリオグループ株式会社製)、及び菜種油(商品名:日清キャノーラ油、日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。
〔実施例1〜8及び比較例1〜7〕
以下の表2に記載した割合でパーム分別軟質部、乳化剤、及び液状植物油を混合し、実施例1〜8及び比較例1〜7の加熱調理用油脂組成物を製造した。尚、表中の「−」は、当該成分を含有していないことを示す。
実施例1〜8及び比較例1〜7で得られた加熱調理用油脂組成物について、下記評価基準により、低温での保存安定性を評価した。また、実施例1〜8及び比較例1〜7で得られた加熱調理用油脂組成物を用いてコロッケを揚げ、油のにじみ出し及び調理から3時間経過後のコロッケの風味を下記基準により比較評価した。結果を表2に示す。
〔低温での保存安定性〕
実施例1〜8及び比較例1〜7で得られた加熱調理用油脂組成物を5℃において静置して、白濁が発生するまでの時間を計測した。評価は以下の5段階で行った。
<評価基準>
○○○:1ヶ月以上
○○ :1週間以上1ヶ月未満
○ :3日以上1週間未満
△ :1日以上3日未満
× :1日未満
〔油のにじみ出し量の測定〕
実施例1〜8及び比較例1〜7で得られた加熱調理用油脂組成物を揚げ物調理用の油として用い、以下の条件でコロッケを揚げた。また、油のにじみ出し量を以下のように測定した。
実施例及び比較例で得られた加熱調理用油脂組成物800gを電磁調理器で180℃に加熱し、コロッケ2枚を4分間揚げた。揚げたコロッケを20分間放冷した。放冷後、重量を測定した厚紙(130mm×130mm×0.5mm)に載置した。室温20℃において3時間静置した後、コロッケを取り除き、厚紙の重量変化を測定した。この厚紙の重量変化を油のにじみ出し量とした。また、空試験を行い、厚紙のみの重量変化を測定し、補正に用いた。
油のにじみ出し量が多いほどコロッケがべたついていることを表す。
結果を表2に示す。
〔3時間後のコロッケの風味の測定〕
実施例1〜8及び比較例1〜7で得られた加熱調理用油脂組成物を揚げ物調理用の油として用い、以下の条件でコロッケを揚げた。また、以下のようにして風味の評価を行った。
実施例及び比較例で得られた加熱調理用油脂組成物800gを電磁調理器で180℃に加熱し、コロッケ2枚を4分間揚げた。揚げたコロッケを3時間静置した後、試食して油っぽさを評価した。
結果を表2に示す。
Figure 2009095256
表2の結果から、実施例1〜8の加熱調理用油脂組成物は、油のにじみ出し量が少なく、3時間経過後のコロッケの風味があっさりしており、更に低温での保存安定性にも優れることがわかった。
特に、実施例6〜8の加熱調理用油脂組成物は、油のにじみ出し量が少なく、時間経過後のコロッケの風味に優れていた。その中でも、乳化剤1を油相に対して0.2質量%含有する実施例7の加熱調理用油脂組成物は、低温での保存安定性にも優れることがわかった。
また、油相中にパーム分別軟質部を30質量%及び液状植物油を70質量%含有し、乳化剤1を油相の質量に対して0.2質量%含有する実施例1及び2の加熱調理用油脂組成物は、特に低温での保存安定性に優れることがわかった。そのなかでも、パーム分別軟質部Aを用いた実施例1の加熱調理用油脂組成物は、油のにじみ出し量も低く抑えられることがわかった。
一方、油相中にパーム分別軟質部A又はBを含有しない、又はパーム分別軟質部A又はBの含有量が25質量%未満の比較例1、2、6及び7の各加熱調理用油脂組成物は、低温での保存安定性には優れるものの、油のにじみ出し量が多く、コロッケの風味が油っぽいものとなることがわかった。
また、乳化剤を含有しない比較例4の加熱調理用油脂組成物、及び乳化剤の含有量が1.2質量%を超えて、1.5質量%である比較例5の加熱調理用油脂組成物は、いずれも油のにじみ出し量が少なく、コロッケの風味もあっさりしているものの、低温での保存安定性に劣ることがわかった。これは、比較例4の加熱調理用油脂組成物については、結晶成長抑制効果を発揮できなかったことに起因すると考えられ、また、比較例5の加熱調理用油脂組成物については、乳化剤が過剰となり加熱調理用油脂組成物の結晶化を促進してしまうとことに起因すると考えられる。
また、PO2の含有量が30質量%未満であり、且つP2Oの含有量が20質量%よりも多いパーム分別軟質部Cを用いた比較例3の加熱調理用油脂組成物は、油のにじみ出し量が少なく、コロッケの風味もあっさりしているものの、低温での保存安定性に劣ることがわかった。
これら実施例及び比較例の結果から、PO2の含有量が30質量%以上であり、且つP2Oの含有量が20質量%以下であるパーム分別軟質部A又はB、及び乳化剤を油相の質量に対して0.05〜1.2質量%含有する各実施例の加熱調理用油脂組成物は、低温での保存安定性に優れた加熱調理用油脂組成物として好適に用いられることがわかった。また、各実施例の加熱調理用油脂組成物によれば、当該加熱調理用油脂組成物を使用して調理した調理品からの油のにじみ出し量が少ないため、調理品を容器に収容した際に、にじみ出した油による容器の汚れを低減することができる。
一方、各比較例の加熱調理用油脂組成物は、油のにじみ出し量、3時間後のコロッケの風味又は低温での保存安定性のいずれかに劣っており、低温での保存安定性に優れた加熱調理用油脂組成物には適していないことがわかった。
特に油のにじみ出し量の少ない実施例6〜8の加熱調理用油脂組成物は、調理品を収容した容器を汚しにくいという点で、弁当用の具材等を加熱調理する際に用いられる加熱調理用油脂組成物として特に好ましく用いることができる。
また、低温での保存安定性に優れる実施例1及び2の加熱調理用油脂組成物は、低温においても透明感を失わず、家庭用に用いられる加熱調理用油脂組成物として特に好ましく用いることができる。

Claims (6)

  1. パーム分別軟質部を含む油相と、乳化剤とを含有する加熱調理用油脂組成物であって、
    前記油相は、前記パーム分別軟質部を25〜100質量%、及び液状植物油を0〜75質量%含有し、
    前記パーム分別軟質部は、1つのパルミチン酸と2つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(PO2)の含有量が30質量%以上であり、且つ2つのパルミチン酸と1つのオレイン酸とを構成成分とするトリアシルグリセロール(P2O)の含有量が20質量%以下であり、
    前記乳化剤は、該乳化剤の含有量が、前記油相質量の0.05〜1.2質量%であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物。
  2. 前記パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸中におけるパルミチン酸の含有量は、該パーム分別軟質部を構成する全脂肪酸に対して25〜38質量%であることを特徴とする請求項1記載の加熱調理用油脂組成物。
  3. 前記液状植物油は、大豆油、菜種油又はコーン油のいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理用油脂組成物。
  4. 前記乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、
    前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、該ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全脂肪酸中に炭素数8〜12の飽和脂肪酸を1〜20質量%、炭素数14〜22の飽和脂肪酸を10〜48質量%、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を51〜89質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理用油脂組成物。
  5. 前記パーム分別軟質部は、パーム油から2回以上の分別工程を経て得られたものであり、且つヨウ素価が68〜70であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱調理用油脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の加熱調理用油脂組成物を用いて加熱調理して得られる揚げ物又は炒め物。
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