JP2009102460A - フィッシャー・トロプシュ合成法による炭化水素類の製造方法 - Google Patents

フィッシャー・トロプシュ合成法による炭化水素類の製造方法 Download PDF

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創 田島
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Abstract

【課題】バイオマスのガス化工程等で発生する水素および一酸化炭素を主成分とする合成ガスを生産現場で利用しやすい気体もしくは液状の炭化水素類に効率的に変換することができる炭化水素類の製造方法を提供する。
【解決手段】一酸化炭素および水素からなる合成ガスにオレフィンを添加した混合気体を、常圧以上5kg/cm2,G未満、空間速度300以上30,000以下、反応温度220℃以上260℃以下で、多孔質シリカ単独の担体または多孔質シリカに周期表第III族またはランタノイド系列から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有する担体にコバルト金属換算、触媒質量基準で5質量%以上25質量%以下のコバルトを含有する触媒に接触させることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭化水素類の製造方法に関するものである。
近年、炭酸ガス削減が急務とされ、バイオマスの有効利用が注目されている。例えば森林バイオマスでは、ガス化、炭化が有力な利用法とされている。
バイオマスから得られたガス中には水素、一酸化炭素の他、二酸化炭素が含まれる場合がある。これらはシーワン(C1)ケミストリーと呼ばれる炭素数1の無機ガスからアルコール類、炭化水素類、炭酸ジメチル、ジメチルエーテル(DME)など次世代を担う燃料への転換可能性が高い原料ガスになり得る可能性を持っているが、バイオマスを扱う地域は工業地帯から遠隔地にあるため、輸送等が足かせとなり単に燃焼させて熱源として利用される場合が多く、潜在価値を充分に生かし切れていないのが現状である。
ところで炭化水素類の合成方法としては、1920年から1940年代にかけて鉄系、コバルト系、ルテニウム系の触媒を用いるフィッシャー・トロプシュ合成が見いだされている(非特許文献1)。
フィッシャー・トロプシュ合成とは合成ガス(一酸化炭素と水素の混合気体)を出発原料とし一酸化炭素の水素化反応により炭化水素を得ようとするものである。古くは石炭乾留により得られた乾留ガス(コールガス)から燃料合成する技術として開発され、南アフリカ共和国では豊富に産出する石炭を用いSynthol法やARGE法などにより大がかりなプラントが稼動している。
近年、石油資源の有効活用や、硫黄分、窒素分を含まない低環境負荷燃料に対する関心が高まり、石油価格の高騰と相俟って天然ガスから液体燃料を合成するプロセス(GTL:gas to liquid)が注目されている。これらGTLプロセスは天然ガス田の規模が大きいためプロセス開発も比較的大きな物が多く、パイロットプラントでも数BPD(barrel per day)から数十BPDに至る物が稼動もしくは計画中である(非特許文献1)。
しかしながら、バイオマスガスを考えた場合、バイオマス資源量はある地域またはある営農家集合体規模にとどまる可能性が高く、前述の石炭ベースや天然ガスベースの液体燃料化技術をそのままダウンサイジングして適用するには困難な面が少なくない。近年のフィッシャー・トロプシュ合成技術はスラリー床反応器に適した物が多く(特許文献1)、生産性に優れる面はあるが中〜小の営農規模に適応し難いことが考えられる。
オレフィン類の炭素数変換に関しては、担持酸化モリブデン触媒、担持コバルト触媒などの試みがあるが、これらは随伴ガスや、FT合成で得られる低級オレフィンの選択的なオリゴメリゼーション(oligomerization)を狙ったもの(非特許文献2)であり、FT反応の根本的な促進効果につながる技術ではない。
鈴木、平山 エコインダストリー 第5巻、第10号、24〜31ページ(2000) 鈴木、機能材料、第27巻、第6号、48〜54ページ(2007) 特開2004−322085号公報
これまで開示されている炭化水素類の合成方法としてのフィッシャー・トロプシュ反応では合成ガスを原料として操業されており、反応速度の一層の向上には限界があった。
本発明は、バイオマスのガス化工程等で発生する水素および一酸化炭素を主成分とするガス(合成ガス)を生産現場で利用しやすい気体もしくは液状の炭化水素類に効率的に変換することができる炭化水素類の製造方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
第1:一酸化炭素および水素からなる合成ガスにオレフィンを添加した混合気体を、常圧以上5kg/cm2,G未満、空間速度300以上30,000以下、反応温度210℃以上260℃以下で、多孔質シリカ単独の担体または多孔質シリカに周期表第III族またはランタノイド系列から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有する担体にコバルト金属換算、触媒質量基準で5質量%以上25質量%以下のコバルトを含有する触媒に接触させることを特徴とする炭化水素類の製造方法。
第2:触媒は、周期表第III族またはランタノイド系列から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物のモル数と担持コバルト金属原子数の比(mol/atom比)が0.09以上1.00以下であることを特徴とする上記第1の炭化水素類の製造方法。
第3:触媒は、水素流通下500℃で1時間以上水素還元したときの35℃での触媒重量当たりの一酸化炭素吸着量が標準状態換算で0.60mL/g以上であることを特徴とする上記第1または第2の炭化水素類の製造方法。
第4:触媒は、500℃、常圧で1時間以上水素還元後50℃に降温し、一酸化炭素8容量%以上12容量%以下を含有するヘリウムガスを同温度で平衡吸着させ、毎分5℃で50℃から400℃まで昇温する工程において、200℃以上260℃以下の温度範囲で脱離する一酸化炭素量が触媒質量あたり標準状態換算で0.06mL/g以上であることを特徴とする上記第1から第3のいずれかの炭化水素類の製造方法。
本発明によれば、バイオマスなどの工業地帯から遠隔地にある産地において、輸送等が足かせとなり単に燃焼させて熱源として利用するなど低付加価値の利用方法しかないバイオマス由来の水素や一酸化炭素を主成分とする発熱量の低いガスを生産現場で利用しやすい気体もしくは液状の炭化水素類に比較的穏和な圧力下で効率的に変換することができる。バイオマス源としては、畜産廃棄物(糞・尿を含む)、木質、食品残渣などの利用が考えられる。
また本発明によれば、国内外に存在する小規模な油田やガス田から随伴ガス、天然ガスを始め炭層ガス等の改質等の処理によって得られる水素や一酸化炭素を主成分とするガスも好ましく利用できるため、LPG〜ナフサ留分などの輸送性が優れ、高カロリーな付加価値の高いエネルギー源に変換することができる。
以下に本発明の詳細を開示するが、本発明の技術内容をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書において、「常圧」とは大気圧(760mmHg=1013hPa)を指し、ゲージ圧(kg/cm2,G)では0に相当する。
(炭化水素類の製造方法)
本発明の方法では、一酸化炭素、水素、オレフィンを主成分とする気体を固定床(fixed bed)の触媒層へ通気することによって炭化水素類を合成する。
(オレフィン)
オレフィンにはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等の直鎖のアルケン類を好ましく用いることができる。特に、末端に二重結合を有するα−オレフィンが好ましく、ブテン、ペンテン等に関しては1−ブテン、1−ペンテン等が好適である。随伴ガスやバイオガスなどに含有されるエチレンを最も好ましく使用することができる。また用いるオレフィンには該オレフィン成分が主として含まれていればよい。なお、オレフィンの含有量は約60%以上が望ましい。これ未満の場合、炭化水素類の合成効率が低くなる可能性が考えられる。
(水素)
水素ガスを含む気体としては、水素単独、水素と水蒸気、水素と窒素、水素と希ガス類、水素と水蒸気と窒素、水素と水蒸気と希ガス類などを好ましく使用することができる。水素ガスを含む気体中の水素含有量は30vol.%以上が好ましい。水素含有量がこれ未満になると還元時間が長くなり生産性の観点から技術的な意義が希薄となる。
(一酸化炭素)
一酸化炭素を主成分としていれば好ましく使用することができ、一酸化炭素の含有量は約60%以上が好ましい。これ未満では分圧が低下するためなどの理由により炭化水素類の合成効率が低くなる可能性が考えられる。
(原料ガス)
原料ガスには水素、一酸化炭素およびオレフィンの混合ガスを用いる。原料ガス中の水素と一酸化炭素の比(H2/CO比)は0.4以上2.5以下が好ましく、0.5以上2.3以下がより好ましく1.8以上2.2以下が最も好ましい。この範囲未満では水素不足となり充分な生産性が確保し難くなり、この範囲を超過するとフィードガス中のオレフィンが水素添加され技術的な優位性が希薄となる。原料ガス中のオレフィン含有量は5vol.%以上50vol.%以下が好ましい。これ未満では合成ガスのみを使用する一般的なフィッシャー・トロプシュ反応との優位性が希薄となり技術的な意味を失う。これを超過した場合、合成ガス(水素と一酸化炭素の混合気体)の分圧が相対的に低下するため、主反応であるフィッシャー・トロプシュ反応速度が低下する傾向が見られ生産性が低下し技術的な意義が希薄になる傾向が予想される。
(反応促進の理由)
炭化水素合成の中心的な反応であるフィッシャー・トロプシュ反応の機構は下記式に示すように一酸化炭素と水素から生ずるアルキリデン種が逐次増炭すると考えられている。
Figure 2009102460
このようにアルキリデン種(M=CH等)が一酸化炭素と水素から供給され、触媒表面の活性点近傍で逐次炭素数を増やし、LPG分、ライトナフサ分、ヘビーナフサ分などが生産されてくる。
本発明では活性を向上させるためには触媒表面上の活性点近傍のアルキリデン種生成を円滑に進め炭化水素類の合成を容易に引き起こすことに着目している。アルキリデン種の生成を促進させるために一酸化炭素と水素の混合気体(合成ガス)にオレフィンを添加し、オレフィンからのアルキリデン種生成を促し、フィッシャー・トロプシュ反応による炭化水素合成を促進させる狙いがある(下記式参照)。
Figure 2009102460
すなわち、エチレン、プロピレン、1−ブテン等、末端メチレン基を有するオレフィンを後述の触媒に接触させることにより、オレフィンからアルキリデン種を触媒表面上の活性点近傍に供給し、一酸化炭素と水素から供給されるアルキリデン種とともにFT反応に組み込んでいくところが特徴である。従って、上記のようにオレフィンが水素添加されパラフィンに添加してしまうと、オレフィンから供給されるアルキリデン種濃度が減少し、通常の合成ガスのみを利用するフィッシャー・トロプシュ反応との優位性が希薄になる。
(反応温度)
反応温度は210℃以上260℃以下が好ましく、210℃以上250℃以下がより好ましく、225℃以上245℃以下が最も好適である。これ未満では充分な反応速度が得られない可能性が高くなり、これを超過すると連鎖成長が抑制され易くなって低級炭化水素の生成が著しくなる。その結果として輸送性に優れる炭化水素留分の収量が減少する虞があるため好ましくない。
(系内圧力)
圧力は常圧であっても反応は進行し特に制限はされない。よって常圧以上5kg/cm2,G未満が好ましい。得られる炭化水素をユーザーに供給する際や、電力交換する際のガスエンジンに供給する際などを考えた場合、多少の圧力を保有していることが望ましく、その観点から0.2kg/cm2,G以上5kg/cm2,G以下がより好ましい。この範囲未満では、生産性の低下が起こりやすく技術的な意義が希薄となる。この範囲を超過するとオレフィンの水素添加反応が活発になり、オレフィンを供給することによる高効率な炭化水素類の合成技術を提供する本発明の優位性は希薄になる。
(原料ガスの通気量)
原料ガスの通気量はGHSV(1時間フィードが通過する標準状態換算の体積を触媒の体積で割った数字;gas hourly space velocity)で300(vol/vol)h-1以上30,000(vol/vol)h-1以下が好ましく、1,000(vol/vol)h-1以上27,000(vol/vol)h-1以下がより好ましく、1,500(vol/vol)h-1以上12,000(vol/vol)h-1以下が最も好ましい。通気量がこれ未満では空時収量が少なくなり不経済となり、通気量がこれを超過すると転化率が頭打ちになり、分離工程が難しくなる可能性がある。なお、標準状態(STP)に換算するのは、反応圧、反応温度によってガスの体積が変化するので、ある一定基準での体積に換算し触媒上を通過する反応分子数を定量評価するためである。
(触媒担体の成分)
触媒担体は、多孔質シリカ単独または、多孔質シリカに周期表第III族またはランタノイド系列から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有するものである。中でも、後者を触媒担体として用いた場合には触媒性能が改善する。当該金属また金属酸化物に用いられる周期表第III族の金属元素の具体例としては、イットリウム、スカンジウムを挙げることができる。中でもイットリウムが好ましい。当該金属または金属酸化物に用いられるランタノイド系列の金属元素の具体例としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムを挙げることができる。その中でもランタン、セリウムが最も好ましい。
(触媒担体の物性)
担体の成分として使用するシリカの比表面積は250m2/g以上が好ましく、300m2/g以上がさらに好ましく、320m2/g以上が最も好ましい。比表面積の上限は特に限定されないが、工業的な用途を考えた場合の実質的な上限は500m2/g程度と考えられる。
シリカの細孔容積は0.6mL/g以上が好ましく、0.8mL/g以上がより好ましく、1.0mL/g以上が最も好ましい。上記範囲未満の細孔容積を持った担体を選択した場合、製品ロット間の性能の変動が大きくなる虞があり、安定した触媒を充填する意味で重要になる。細孔容積の上限に関しての制限はないが、実質的には約1.5mL/gが上限と考えられる。
シリカの平均細孔径は5nm以上60nm以下が好ましく、6nm以上15nm以下がより好ましく、9nm以上12nm以下が最も好ましい。平均細孔径が該範囲未満であると活性金属の担持量が多い触媒の場合、細孔径の閉塞などによる性能低下が起こる可能性がある。また、上限は特に限定されるものではないが実質的な上限は50nm〜60nm程度と考えられる。
(炭化水素類合成用触媒)
本発明に用いられる炭化水素類合成用触媒は、上述のシリカ単独の担体またはIII族金属またはランタノイド系列金属を添加したシリカ担体に活性金属としてコバルトを含有している。
(コバルトの含有量)
コバルト含有量はCo換算、触媒質量基準で5質量%以上25質量%以下が好ましく、8質量%以上25質量%以下がより好ましく9.5質量%以上15質量%以下が最も好ましい。コバルト含有量がこの範囲外であると充分な活性、選択性が得にくくなる場合がある。なお、助触媒としてコバルト以外の金属類を添加することや、離型剤などの成分を添加することを妨げない。
(周期表第III族またはランタノイド系列の金属酸化物の含有量)
周期表第III族またはランタノイド系列から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を触媒成分として添加する場合にあっては、該金属酸化物のモル数と担持コバルト金属原子数の比が0.09(mol/atom比)以上1.00(mol/atom比)以下であることが好ましい。
(触媒の調製方法)
触媒の調製方法は公知の方法を好ましく使用することが出来る。例えば、混練法、含浸法、ゾル−ゲル法(アルコキシド法)など公知方法により調製すればよい。触媒の形状は錠剤状、球状、円柱状、角柱状、四つ葉型、三つ葉型、ラシヒリング状、中空状、繊維状、紡錘型、粉末状、顆粒状、ハニカム状など様々な形状を好ましく使用することが出来る。
(触媒の備えるべき物理化学的な特性)
(触媒の物理化学的特性1:一酸化炭素の吸着量)
本反応に好適な触媒の作用状態(working state)は低酸化状態のコバルト種である。一酸化炭素は低酸化状態のコバルト種に化学吸着しやすい性質を有しており、一酸化炭素の吸着量は触媒活性の指標となる。好ましくは、水素流通下500℃で1時間以上水素還元したときの35℃での触媒重量当たりの一酸化炭素吸着量が標準状態換算(stp; standard temperature and pressure)で0.60mL/g以上である。一酸化炭素の吸着量がこれ未満であると充分な触媒活性が得られにくくなる可能性がある。
(触媒の物理化学的特性2:一酸化炭素の脱離量)
一酸化炭素の脱離量は活性点数を反映するものと考えられ、本発明で取り扱う反応に好適な触媒が示す一酸化炭素の脱離量は次のとおりである。すなわち、触媒を500℃、常圧で1時間水素還元後50℃に降温し、一酸化炭素8容量%以上12容量%以下を含有するヘリウムガスを同温度で平衡吸着させ、毎分5℃で50℃から400℃まで昇温する工程において、200℃以上260℃以下の温度範囲で脱離する一酸化炭素量が触媒重量あたり標準状態換算で0.06mL/g以上であることが好ましい。一酸化炭素脱離量がこれ未満であると充分な活性点数が得られにくくなる可能性がある。
(触媒の前処理)
本発明の炭化水素類の合成方法は、一酸化炭素、水素およびオレフィンを主成分とする混合気体を通気するため、前処理を省略しても原料ガスが還元性を示すためフィッシャー・トロプシュ反応は進行するが触媒の前処理は担持されたコバルト種の多くを好適な作用状態に近づけるために行うものであり、反応初期から安定した生産性を確保するためには前処理を行うことが望ましい。
(前処理の内容)
炭素鎖延長反応に先立ち触媒を以下に述べる前処理により活性化する。触媒の前処理は真空排気または不活性ガス雰囲気で350℃以上600℃以下で1時間以上行った後、水素ガスまたは水素ガスを主として含む気体で350℃以上600℃以下で1時間以上還元処理し、この後、真空排気または不活性ガス雰囲気で350℃以上600℃以下で1時間以上処理する。この後反応温度に保持してフィッシャー・トロプシュ反応に供すれば良い。生産現場などにおいて不活性ガスの入手が難しい場合には真空排気による加熱排気が適し、その際の系内圧力は×10-3mmHg以下が良い。
(前処理における通気量)
前処理における通気量はGHSV(1時間フィードガスが通過する標準状態換算の体積を触媒の体積で割った数字;gas hourly space velocity)で300(vol/vol)h-1以上30,000(vol/vol)h-1以下が好ましく、1,000(vol/vol)h-1以上27,000(vol/vol)h-1以下がより好ましく、1,500(vol/vol)h-1以上6,000(vol/vol)h-1以下が最も好ましい。これ未満では還元時間が延長し、これを超過した場合には使用されない水素が増加しコストが嵩むなど生産技術としての優位性が希薄になる。
(前処理の不活性ガス通気時の圧力)
不活性ガス雰囲気での加熱処理を行う場合の系内圧力は特に制限は無いが常圧以上10kg/cm2,G未満で行うのが現実的である。不活性ガスとしてはヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素などを好ましく使用でき、アルゴン、ヘリウム、窒素がより好ましく、ヘリウムおよび窒素が最も好ましい。
(還元工程の圧力)
前処理を行う際の還元工程における系内圧力は、100mmHg以上10kg/cm2,G未満が好ましく、200mmHg以上7kg/cm2,G 以下がより好ましく、300mmHg以上5kg/cm2,G以下が最も好ましい。この範囲未満では前処理時間が延長し技術的な優位性は希薄となり、この範囲の圧力を超過しても還元に要する時間等の短縮効果が飽和する傾向が強まる。
以下に実施例により本発明をより詳細に開示する。しかしながら実施例等は本発明の本質を説明するためのものであり、これらによって本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。
(触媒調製)
予め520℃で3時間焼成した平均粒子径3mm、比表面積380m2/g、細孔容積1.0mL/gのシリカ(SiO2)に硝酸コバルト(Co(NO3)2・6H2O)水溶液を含浸後、ロータリーエバポレータ内で40〜60℃で加温しながらアスピレーターで減圧し水分除去後、マッフル炉で500℃、3時間焼成しシリカ担持コバルト触媒(Co/SiO2触媒と略記する)を得た。このときの組成はCoが金属換算触媒重量基準で5質量%および残部シリカであった。
(反応装置)
反応には流通系反応装置を用いガス状生成物は気液分離器を経た後ガス捕集袋に捕集し熱伝導度型(TCD)および水素炎イオン化検出型(FID)ガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC-14B)で分析した。
(反応成績)
該触媒2mL(1.8g)を温度調節器(富士電気製 PXR3型)により制御された電気炉内で500℃を維持しながらで常圧でアルゴンをGHSV3,000(v/v)h-1で1時間通気後、水素に切り替えGHSV3,000(v/v)h-1で2時間通気しながら還元した。水素還元終了後、500℃、常圧でアルゴンに切り替えて1時間通気し前処理を完了した。引き続きアルゴンを常圧でGHSV3,000(v/v)h-1で通気しながら触媒床温度を245℃とし、水素と一酸化炭素の割合がH2:CO=2:1の合成ガス90vol.%、オレフィン(エチレン)10vol.%の混合気体をマスフローコントローラ(Emerson社製、モデル5850E)を介し圧力0.5kg/cm2,G、GHSV10,300(v/v)h-1で通気しフィッシャー・トロプシュ反応を行った。このときの液状炭化水素の目安となる炭素数5以上炭化水素(C5+と略記)の空時収量は17.0mmol/hを示した。
(物理化学特性の測定結果)
(CO吸着量)この触媒の物理化学的な特性は、CO吸着量に関しては該触媒1gを精秤し500℃で1時間還元後、COパルスを吸着が飽和するまで35℃で吸着させたときの触媒重量あたり標準状態換算でのCO吸着量は0.60mL/gを示した。
(CO脱離量)
該触媒1gを精秤し500℃で1時間還元後、COパルスを吸着が飽和するまで50℃で吸着平衡に至らしめ、毎分5℃で50℃から400℃まで昇温する工程において、200℃以上260℃以下の温度範囲で脱離してきたCO量は触媒重量当たり標準状態換算で0.08mL/gを示した。
実施例1と同様に調製したCoを金属換算触媒重量基準で10質量%および残部シリカのCo/SiO2触媒を用い反応温度を240℃とした他は実施例1と同様な条件でフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は34.2mmol/hに至り良好な結果を示した。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.60mL/gおよび0.11mL/gを示した。総合判定は適であった。
実施例1と同様に調製したCoを金属換算触媒重量基準で15質量%および残部シリカのCo/SiO2触媒を用い反応温度を210℃とし、水素と一酸化炭素比を2の合成ガスを80vol.%、エチレン20%の原料ガスを用いた他は実施例1と同様な条件でフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は65.3mmol/hに至り良好な結果を示した。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.77mL/gおよび0.17mL/gを示した。総合判定は適であった。
実施例1と同様に調製したCoを金属換算触媒重量基準で20質量%および残部シリカのCo/SiO2触媒を用い反応温度を225℃とし水素と一酸化炭素比を2の合成ガスを80vol.%、エチレン20%の原料ガスを用いた他は実施例1と同様な条件でフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は71.0mmol/hに至り良好な結果を示した。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.83mL/gおよび0.20mL/gを示した。総合判定は適であった。
予め520℃で3時間焼成した平均粒子径3mm、比表面積380m2/g、細孔容積1.0mL/gのシリカ(SiO2)に硝酸イットリウム(Y(NO3)2)水溶液を含浸後、ロータリーエバポレータ内で40〜60℃で加温しながらアスピレーターで減圧し水分除去後、マッフル炉で500℃、3時間焼成しイットリア含有シリカ担体得た。これに硝酸コバルト(Co(NO3)2・6H2O)水溶液を含浸後、同様に減圧による水分除去とマッフル炉を用いた焼成を行いイットリア含有シリカ担持コバルト触媒(Co/Y2O3-SiO2触媒と略記する)を得た。このときの触媒の組成はCoが金属換算触媒重量基準で10質量%、イットリア(Y2O3)と担持されたコバルトとの分子/原子(mol/atom)比は0.1であり、その他残部はシリカであった。Co/Y2O3-SiO2触媒を用い反応温度を260℃とし、水素と一酸化炭素比を2の合成ガスを60vol.%、エチレン40vol.%の原料ガスを用いた以外の条件は実施例1と同様としフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は50.3mmol/hに至り良好な結果を示した。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.75mL/gおよび0.15mL/gを示した。総合判定は適であった。
実施例5と同様な方法で調製したCoを金属換算触媒重量基準で10質量%、セリア(CeO2)と担持されたとコバルトの分子/原子(mol/atom)比は0.1であり、その他残部はシリカのイットリア含有シリカ担持コバルト触媒(Co/CeO2-SiO2触媒と略記する)を調製した。Co/CeO2-SiO2触媒を用い反応温度を250℃とし、水素と一酸化炭素比を2の合成ガスを60vol.%、エチレン40vol.%の原料ガスを用いた以外の条件は実施例1と同様としフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は51.4mmol/hに至り良好な結果を示した。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.64mL/gおよび0.11mL/gを示した。総合判定は適であった。
実施例5と同様な方法で調製したCoを金属換算触媒重量基準で10質量%、ランタニア
(La2O)と担持されたコバルトとの分子/原子(mol/atom)比は0.1であり、その他残部はシリカのランタニア含有シリカ担持コバルト触媒(Co/ La2O-SiO2触媒と略記する)を調製した。Co/ La2O-SiO2触媒を用い反応温度を240℃とした以外の条件は実施例1と同様としフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は40.1mmol/hに至り良好な結果を示した。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.75mL/gおよび0.14mL/gを示した。総合判定は適であった。
<比較例1>
実施例1と同様な方法で調製したCoを金属換算触媒重量基準で2質量%および残部シリカのCo/SiO2触媒を用い反応温度を240℃とした他は実施例1と同様な条件でフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、しかしながらC5+収率は4.1mmol/hにとどまった。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.30mL/gおよび0.04mL/gと低い結果となった。これは、コバルトの担持量および触媒の備えるべき物理化学的な特性値が所望値を満たさないため充分な性能が発揮できなかった例であり、総合判定は不適であった。
<比較例2>
実施例1と同様な方法で調製したCoを金属換算触媒重量基準で35質量%および残部シリカのCo/SiO2触媒を用い反応温度を240℃とした他は実施例1と同様な条件でフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、しかしながらC5+収率は6.5mmol/hにとどまった。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.50mL/gおよび0.05mL/gと低い結果となった。これは、コバルトの担持量が過多かつ触媒の備えるべき物理化学的な特性値が所望値を満たさないため充分な性能が発揮できなかった例であり、総合判定は不適であった。
<比較例3>
実施例7と同様な方法で調製したCoを金属換算触媒重量基準で10質量%、ランタニア
(La2O)と担持されたコバルトとの分子/原子(mol/atom)比は1.2であり、その他残部はシリカのランタニア含有シリカ担持コバルト触媒(Co/ La2O-SiO2触媒と略記する)を調製した。Co/ La2O-SiO2触媒を用い反応温度を240℃とした以外の条件は実施例1と同様としフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は6.7mmol/hにとどまった。また実施例1と同様にCO吸着量および脱離量を求めた結果、それぞれ触媒重量あたり標準状態換算で0.43mL/gおよび0.05mL/gを示した。これは第3成分であるランタニア量が過大であり触媒上に露出する活性点(低酸化状態のCo)の数が不足し充分な性能が発揮できなかった例であり、総合判定は不適であった。
<比較例4>
反応圧力を9kg/cm2,Gに設定した以外の条件は実施例7と同様としフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果、C5+収率は6.1mmol/hにとどまった。これは反応系圧力が高いためにオレフィン(エチレン)の水素添加反応が促進し、本発明の特徴が発現されなかった例であり、総合判定は不適であった。
<比較例5>
原料ガス中のエチレンの代わりにアルゴンを加えた他は実施例7と同様にフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果である。C5+収率は5.6mmol/hにとどまった。本発明の特徴は合成ガスにエチレンを添加することによりフィッシャー・トロプシュ反応速度を高めることであり、エチレンが共存しない場合には、充分な反応促進効果が得られないことを示す例である。よって総合判定は不適であった。
<比較例6>
反応温度を200℃とした以外は実施例2と同様にフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果である。C5+収率は2.2mmol/hにとどまった。これは好適な反応温度よりも低温で反応を行ったため充分に反応が進行しないことを示す例である。よって総合判定は不適であった。
<比較例7>
反応温度を290℃とした以外は実施例2と同様にフィッシャー・トロプシュ反応を行った結果である。C5+収率は2.7mmol/hにとどまった。これは好適な反応温度よりも高温で反応を行ったため転化率は高かったが、低級炭化水素の生成が著しくLPGないし液状炭化水素留分が不充分であった例である。よって総合判定は不適であった。
これらの実施例および比較例について表1に纏めて示す。
Figure 2009102460

Claims (4)

  1. 一酸化炭素および水素からなる合成ガスにオレフィンを添加した混合気体を、常圧以上5kg/cm2,G未満、空間速度300以上30,000以下、反応温度210℃以上260℃以下で、多孔質シリカ単独の担体または多孔質シリカに周期表第III族またはランタノイド系列から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有する担体にコバルト金属換算、触媒質量基準で5質量%以上25質量%以下のコバルトを含有する触媒に接触させることを特徴とする炭化水素類の製造方法。
  2. 触媒は、周期表第III族またはランタノイド系列から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物のモル数と担持コバルト金属原子数の比(mol/atom比)が0.09以上1.00以下であることを特徴とする請求項1記載の炭化水素類の製造方法。
  3. 触媒は、水素流通下500℃で1時間以上水素還元したときの35℃での触媒重量当たりの一酸化炭素吸着量が標準状態換算で0.60mL/g以上であることを特徴とする請求項1または2記載の炭化水素類の製造方法。
  4. 触媒は、500℃、常圧で1時間以上水素還元後50℃に降温し、一酸化炭素8容量%以上12容量%以下を含有するヘリウムガスを同温度で平衡吸着させ、毎分5℃で50℃から400℃まで昇温する工程において、200℃以上260℃以下の温度範囲で脱離する一酸化炭素量が触媒質量あたり標準状態換算で0.06mL/g以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の炭化水素類の製造方法。
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