JP2009155774A - 繊維構造物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大豆蛋白繊維の持つ湿潤膨潤性をフルに活用して、湿潤時の優れたストレッチ性を有する大豆蛋白繊維構造物と<これを効率よく製造できる大豆蛋白繊維構造物の製造方法を提供すること。
【解決手段】大豆蛋白繊維を主体とする繊維構造物であって、該構造物の湿潤時の伸長率が15%〜300%および/または伸長回復率が70%以上有することを特徴とする大豆蛋白繊維構造物であり、また、大豆蛋白繊維を主体とする繊維を糸条、織物、編物等の繊維構造体に形成後に、加工の段階で精練後に予め、湿熱処理して該繊維構造体の長さ方向に20%〜70%収縮させ、しかる後、仕上げることを特徴とする大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、湿潤下で良好なストレッチ性を発揮する繊維構造物とこれを効率よく製造することができる製造方法に関するものである。
近年、衣料用繊維構造物に代表される織編物は快適生活の志向化に伴い、より機能性の高い衣類が求められている。特に、織編物のストレッチ性は身体の動きに追従して生地が伸びるため、動きやすく良好な着心地感が得られる。身体の部位では、特に肘や膝、腕などの屈曲しやすいところでの皮膚の伸びは最大72%のものになり、追随する生地のストレッチ率はかかる大きな伸びが要求される。これらの要求に対して合成繊維素材としてスパンデックス(ポリウレタン)やポリエステルの仮より加工糸、また、近年ではポリトリメチレンテレフタレート等の捲縮加工糸が投入され対応されている。
しかしながら、これらのストレッチ素材は通常の着用状態(乾状態)で効果を発揮するものであるが、汗をかいたときのシャツや水に濡れた時の水着では素材と水の摩擦係数が高くなり、生地が伸縮時にはギスギスして着心地感は満足できるものではないのが実状であった。一方、湿潤状態で膨潤する素材としてレーヨン等があるが、伸長率は最大10%程度、伸長回復率は50%程度であり、ストレッチ性能は低く対応できないものであった。
一方、本発明は、大豆蛋白繊維を用いるものであるが、該繊維の製造方法と特徴を次に説明する。
該繊維は、大豆の搾り粕からタンパク質を抽出した後、これにポリビニルアルコールを75〜80%程度ブレンドし、湿式紡糸した後、アセタール化を経て製造する原綿である。この繊維は、タンパク質の数種のアミノ酸を持ち、また、繊維の断面はダンベル状の扁平断面を有することからカシミヤ調の上品なソフトな風合いと光沢を持つ。また、繊維の側面に細かな溝があるので、吸水性があり、さらに綿並みの吸湿性を有する特徴がある。実際にはこの原綿を紡績し、織物や編物にして使用する。また、該繊維は搾り粕からタンパク質を抽出し、更にこの残さを肥料や飼料に使用できるので、大豆原料を全て使い切るという省資源素材のメリットを併せ持つ。
しかしながら、かかる繊維は、質感面、原料面において特徴ある素材であるが、通常の加工で仕上げしたものは(85℃〜98℃で染色)、普通の状態(乾状態)でのストレッチ性はほとんどない。また、湿潤時のストレッチ性もせいぜい10〜13%までであり、特徴がないのが現状である。なお、該繊維を用いてストレッチ性(乾状態)を改善する方法については公知文献、情報等は見当たらないが、当該業界において考えられる一般的な対応方法について、以下の(1)〜(3)に記す。
(1)本原綿製造時に機械的に捲縮を多く付与し、ストレッチを上げる方法
この方法は、ポリエステル、ポリアミドのような熱可塑性繊維では有効であるが、本繊維は熱可塑性に乏しい親水性のポリビニルアルコールを多く含むこと、また、耐熱性が130℃と低いことから、捲縮形態を固定(セット)できないのでストレッチ性を付与することはほとんど期待できない。
(2)紡績糸に仮より加工をすることによりストレッチ性を付与する方法
本繊維は、熱セット性がないので、上記(1)と同様な理由により、仮より捲縮を付与することができない。
(3)紡績糸を撚糸加工をすることによりストレッチ性を付与する方法
上記(1)と同様な理由により、撚り止めセットができないので、ストレッチ性を付与することができない。また、撚糸のビリ(スナール)欠点が発生して製織や製編すら困難である。
以上のように、大豆蛋白繊維においても糸条、織物、編物の繊維構造物における湿潤時のストレッチ性については十分に対応することができないものであった。
なお、大豆蛋白繊維に関する先行技術としては、たとえば、特許文献1があるが、本発明のようなストレッチ性に関するものは見当たらなかった。
特表2005−513298号公報
本発明の目的は、上述した点に鑑み、湿潤時に良好なストレッチ性を有する大豆蛋白繊維構造物とその製造方法を提供することにある。
より具体的には、本発明の目的は、大豆蛋白繊維の持つ湿潤膨潤性をフルに活用して、湿潤時の優れたストレッチ性を有する大豆蛋白繊維構造物とこれを効率よく製造できる大豆蛋白繊維構造物の製造方法を提供することにある。
上述した目的を達成するため、本発明の大豆蛋白繊維構造物は、以下の(1)の構成を有するものである。
(1)大豆蛋白繊維を主体とする繊維構造物であって、該構造物の湿潤時の伸長率が15%〜300%および/または伸長回復率が70%以上有することを特徴とする大豆蛋白繊維構造物。
また、かかる本発明の大豆蛋白繊維構造物において、具体的により好ましくは、以下の(2)〜(4)のいずれかの構成を有するものである。
(2)大豆蛋白繊維構造物が、短繊維であることを特徴とする上記(1)記載の大豆蛋白繊維構造物。
(3)大豆蛋白繊維が30%重量以上含まれることを特徴とする上記(1)または上記(2)記載の大豆蛋白繊維構造物。
(4)大豆蛋白繊維構造物が糸条、織物、編物のいずれかであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の大豆蛋白繊維構造物。
また、上述した目的を達成する本発明の大豆蛋白繊維構造物の製造方法は、以下の(5)の構成を有するものである。
(5)大豆蛋白繊維を主体とする繊維を糸条、織物、編物等の繊維構造体に形成後に、加工の段階で精練後に予め、湿熱処理して該繊維構造体の長さ方向に20%〜70%収縮させ、しかる後仕上げることを特徴とする大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
また、かかる本発明の大豆蛋白繊維構造物の製造方法において、具体的により好ましくは、以下の(6)〜(9)のいずれかの構成を有するものである。
(6)湿熱処理が90℃〜125℃の熱水処理であることを特徴とする上記(5)記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
(7)湿熱処理が水を主体とした液で、液温105℃〜125℃の熱水で処理するものであることを特徴とする上記(5)または(6)記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
(8)湿熱処理が、ベンジルアルコールを含む液で90℃〜110℃で処理することを特徴とする上記(5)または(6)記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
(9)大豆蛋白繊維構造物が糸条、織物、編物のいずれかであり、湿熱処理され、仕上げられたものであることを特徴とする上記(5)〜(8)のいずれかに記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
本発明によれば、従来技術では得られなかった、大豆蛋白繊維で湿潤時の優れたストレッチ性を有する繊維構造物とこれを効率よく製造できる方法を提供できるものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明で用いられる大豆蛋白繊維としては、豆の搾り粕からタンパク質を抽出した大豆蛋白成分を15〜30重量%と、ポリビニルアルコール成分を70〜85重量%を含み、延伸された繊維の短繊維や長繊維を好ましく用いることができる。なお、ポリビニルアルコール成分には必要に応じて他の少量の成分が含まれていてもよい。
大豆蛋白繊維を製造する方法については、特に限定されるものではないが、特表2005−513298号公報に例示される湿式紡糸の方法がある。すなわち、短繊維(原綿)は、上記の両成分をブレンドし、紡糸原液とする。これを脱気した後、硫酸ナトリウムの凝固液に紡出し2倍程度に延伸する。さらに該浴で1.5倍程度に延伸する。次いで、乾燥−乾熱工程で、さらに2〜5倍延伸する。この延伸糸をアセタール化処理をした後に洗浄、油剤付与、乾燥し、捲縮をかけ繊維を切断して原綿とする方法である。
通常、大豆蛋白繊維は、短繊維(原綿)が多く作られており、この場合の単繊維繊度は通常汎用品である単繊維繊度1.1〜1.6T(デシテックス)であれば特にストレッチ性は問題はない。繊維長(カット長)についても通常の38mm(短繊維紡績用)〜64mm(長繊維紡績用)は特に同様の問題はない。
本発明は、かかる大豆蛋白繊維を主体とする繊維構造物であって、該構造物の湿潤時の伸長率が15%〜300%および/または伸長回復率が70%以上有することが必要である。ここで、大豆蛋白繊維構造物の形態と伸長率、伸長回復率の測定は、次で定めた測定法で評価したものである。
(a)糸条(紡績糸、長繊維糸など)の場合の伸長率はJIS L 1095の9.5.2項の湿潤時の「単糸引っ張り強さおよび伸び率」に従って測定し評価したものをいう。また、伸長回復率はJIS L 1096の8.14.2項、A法の「織物の伸長回復率」に従って、糸条を評価したものをいう。
(b)織物の場合の伸長率はJIS L 1096の8.14.1項、A法の「織物の伸長率」で従って、また、伸長回復率は同8.14.2項、A法の「織物の伸長回復率」に従って、織物の経糸方向および緯糸方向をそれぞれ測定し評価したものをいう。
なお、湿潤の評価はJIS L 1096の8.12.2項、「湿潤時の試験」に従って評価した。
(c)編物の場合の伸長率はJIS L 1018の8.14.1項の「編物の伸び率」で従う。なお、ここで一定伸長には80%に定めて行った。また、伸長回復率は同8.15.1項、A法の「編物の伸長弾性率」に従って、測定し評価したものをいう。
なお、湿潤の評価は織物の評価に従い、JIS L 1096の8.12.2項、「湿潤時の試験」に従って評価した。
本発明において重要なことは、かかる評価で該構造物の湿潤時の伸長率が15%〜300%および/または伸長回復率が70%以上有することであるが、これは繊維構造体の形態に拘わらずに優れたストレッチ性が実現されていることを意味している。具体的には、例えば、紡績糸等の糸条では織物や編物のような構造上の形態による伸びがないため、伸長率は15%〜100%に、織物は50%〜200%、編物は80%〜300%のようにそれぞれ絶対値は異なるが、いずれも優れた伸びである。
かかる伸長率が15%を満たない場合は伸びが少なく、ストレッチ性は不十分である。また、300%を越えるものは一般衣料用途では必要性がなく、また、大豆蛋白繊維の膨潤性に限界があり、これを得ることは困難である。
一方、伸長回復率が70%を越えるものは伸びの回復性が高く、優れたストレッチバック性が得られるので、好ましい。特に75%〜100%のものは好ましい。伸長回復率が70%を満たないものは回復性が劣り、しわや“笑い”と称する生地のたるみが発生し好ましくない。
大豆蛋白繊維の繊維形態としては、短繊維、長繊維のいずれも構わないものであるが、前記の短繊維が単繊維同士が絡合されている状態なので、単繊維の膨潤性が妨げられず良好なストレッチ性とソフトな風合いが得られることから特に好ましい。
本発明において、繊維構造物の中に大豆蛋白繊維が少なくとも30%以上含まれることが、特に優れたストレッチ性が得られるので好ましい。大豆蛋白繊維が100%のものはかかる特性が最も好ましいが、用途や意匠性、目標とするストレッチ性から、他繊維との複合を適宜行っても構わない。この場合、大豆蛋白繊維の複合方法は特に限定されるものではないが、例えば、紡績糸等の糸条では他繊維との混紡、交撚があり、これをそのまま織物や編物に使ってもよい。また、大豆蛋白質繊維100%の糸条を他繊維と交織した織物あるいは交編した編物等も好ましい形態である。
本発明は、大豆蛋白繊維構造物は綿、糸条、紐、織物、編物、不織布等、特に限定されるものではないが、本発明の効果を最大限に発揮するものとして糸条、織物、編物のいずれかの形態のものが好ましい。中では、糸条では紡績糸が、織物では平織、綾織、繻子織が、編物ではスムース、ミラノリブ、天竺などの丸編、あるいは経編、横編などが効果が大きいことから推奨される。
次に本発明にかかる繊維構造物の製造方法について説明する。
本発明は、大豆蛋白繊維を主体とする繊維を構造物を糸条、織物、編物等の構造体に形成後に、加工工程で精練後に予め、湿熱処理して該繊維構造体の長さ方向に20%〜70%収縮させ、しかる後、仕上げることが必要である。
本発明の加工について具体的に説明する。
大豆蛋白繊維を用いた糸条、織物、編物等の構造体は繊維の油剤や織物での糊剤を含むので、これを取り除くため、まず、精練する。精練条件は常法に従って、温度×時間を96℃×3分として、一般精練剤、弱アルカリ液で行う。織物、編物は拡布状連続処理で糸条はバッチ処理を行う。この精練での構造体の長さの収縮はせいぜい3%以下であり、ごく小さいものである。
次いで、本発明の湿熱処理を行い乾燥する。乾燥は織物、編物では過度の張力のかからない低張力の乾燥機を用いる。例えば、広汎に用いられるショートループドライヤーで、120〜130℃で3分程度で行う。糸条はカセ状の場合は懸垂型ドライヤーを用いる。また、小片の場合は風乾する。
ここで重要なのは、かかる精練後に、湿熱収縮処理を行い、乾燥したときのかかる構造体の長さの収縮率が該湿熱処理前に比べて、少なくとも20%以上に収縮されるものでなければ、本発明のストレッチ効果は得られず、また70%を越えるものは繊維が硬くなり、好ましくない。この収縮とは、繊維構造体の湿熱処理の前後の長さの寸法変化率であり、具体的には糸条は長さ方向で、織物は経糸、緯糸方向で、編物はウェル:幅方向、コース:長さ方向で求められるものである。
なお、本発明において、収縮率とは、大豆蛋白繊維が用いられている構成糸の方向の収縮率をいう。例えば、大豆蛋白繊維が100%用いられたもの、あるいは他繊維との混紡、交撚等した構成糸はそのままの収縮率であるが、一方の方向にのみ交織した織物についてはその織物中で大豆蛋白繊維が用いられている方向の収縮率をいう。
収縮率の具体的な測定方法は、繊維構造体を精練/乾燥し、その状態で一定の長さをマーキングする。次いで湿熱処理し、乾燥した後、該マーキング部の長さを測長し、収縮率を求める。
湿熱処理の収縮率は下記式で算出する。
S(%)={L0−L1/L0}×100
ここで、S:糸条、織物、編物の湿熱処理での長さの収縮率(%)、L0:湿熱処理前(精練後)の原寸の長さ(cmまたはm)、L1:湿熱処理/乾燥後の長さ(cmまたはm)を表す。
なお、紡績糸の測定荷重および織物、編物の測長方法等の詳細条件については、後述の実施例中に記載する。
本発明にかかる湿熱処理方法は、熱水あるいはスチーム処理のいずれでも構わないが、ムラのない均一な処理と熱処理効率の点から、熱水処理が好ましい。
織物、編物の処理機は汎用性の高い高温タイプの液流染色機を使うことができる。糸条(紡績糸)の場合は低張力で大きく収縮させる装置として、紡績糸をカセ状態で処理する、噴射式カセ染色機を適用することが好ましい。
湿熱処理の温度はかかる収縮率が得られるものであればよく、限定されるものではないが、90℃〜125℃の熱水処理であることが、収縮率、ストレッチ性、風合いの点から好ましい条件である。更に、110℃〜120℃で処理することは、収縮の安定化が図れるので、更に好ましいことである。
90℃に満たない温度の処理では十分な収縮が得られず、また、125℃を越える温度では風合いが硬くなり、また、強度が低下するので、いずれも好ましくない。
更には湿熱処理がベンジルアルコールを含む液で90℃〜110℃で処理することが好ましい。これはベンジルアルコールが大豆蛋白繊維を大きく膨潤させて、大きな収縮率が得られること、および低温領域で処理するため、風合い硬化や強度低下を惹起しないことから、好ましい方法である。膨潤剤としてベンジルアルコール以外のフェノール系薬剤も考えられ、適用することも構わないが、作業性、排水処理性からベンジルアルコールが最も好ましい。
かかる処理条件の設定は、大豆蛋白繊維の混率、繊維構造形態等により異なるので、いずれにしても20%〜70%の収縮に入るように適宜処理温度、処理液を選択して行う。
次いで、湿熱処理後は乾燥を行い、湿熱処理における収縮率を測定する。乾燥は前記ショートループドライヤーや懸垂乾燥機を用いて乾燥する。
次いで仕上げを行うが、本発明でいう仕上げとは湿熱処理/乾燥後に染色を含む染色以降の工程と定義するものである。湿熱処理/乾燥後の仕上げ工程の各種例を挙げると、
a.染色―乾燥―仕上げセット
b.染色―乾燥―樹脂加工―仕上げセット(樹脂加工:制電加工、柔軟剤加工、起毛加工、カレンダー加工、撥水加工、吸水加工、膜加工などの付帯仕上げ)
c.(湿熱処理/乾燥)―仕上げセット(染色しない場合)
d.(湿熱処理/乾燥)―仕上げセット―プリント染色―(樹脂加工)―仕上げセット(プリント染色する場合)
等である。
このように、湿熱処理後は大豆蛋白繊維の構造物をそのまま仕上げるか、あるいは染色して仕上げる。
染色の場合は、酸性染料、直接染料を用いる場合は、通常の染色温度の85〜98℃で、反応染料では40〜80℃等で染色する。プリント染色の場合も同様の温度でスチーミングさせて染色する。染色した後は通常の仕上げ剤を付与するもの、あるいは付与せずに、仕上げセットを行い、仕上げる。仕上げセットは低温領域で過度の張力をかけずに、前記湿熱処理の収縮を維持するように行うことが好ましい。具体的には乾熱140〜150℃でタテ、ヨコ方向に少し弛緩させてセットすることが好ましい。
なお、本発明は大豆蛋白繊維の綿や紡績糸を染色する、いわゆる先染めした後に、前記湿熱処理し、仕上げることも含むものである。
以上のように、本発明によれば従来技術では得られなかった、大豆蛋白繊維で湿潤時の優れたストレッチ性を有する繊維構造物とこれを効率よく製造する方法が提供できる。
なお、本発明の繊維構造物の用途については限定するものではないが、衣料用途では汗をかいたときのシャツやフィットネスウェア等のスポーツウェアやアウトドアウェア、カジュアルウェアなどが最適であり、また水着用途にも適している。資材用途では水の濾過布や空気フィルター、マスク等の用途が好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。物性値の測定方法は次の通りである。
1.繊維構造物の伸長率、伸長回復率の評価
繊維構造物の伸長率、伸長回復率は次の方法で測定した。なお、伸長率、伸長回復率の値が高いものほど、ストレッチ性が優れており良好である。また、測定機は“オートグラフ”AGS−10KNG(島津製作所(株)製)で測定した。
A.紡績糸の場合(精練―湿熱処理―風乾品)
伸長率は、JIS L 1095の9.5.2項の湿潤時の「単糸引っ張り強さおよび伸び率」に従って測定し評価した。また、伸長回復率はJIS L 1096の8.14.2項、A法の「織物の伸長回復率」に従って糸条を評価した。
B.織物の場合(精練―湿熱処理―乾燥―染色―仕上げセット品)
伸長率はJIS L 1096の8.14.1項、A法の「織物の伸長率」に従って、また、伸長回復率は同8.14.2項、A法の「織物の伸長回復率」に従って織物の経糸方向および緯糸方向をそれぞれ測定し評価した。
なお、湿潤の評価はJIS L 1096の8.12.2項、「湿潤時の試験」に従って評価した。
C.編物の場合(精練―湿熱処理―乾燥―染色―仕上げセット品)
伸長率は、JIS L 1018の8.14.1項の「編物の伸び率」で従う。なお、ここで一定伸長には80%に定めて行った。また、伸長回復率は同8.15.1項、A法の「編物の伸長弾性率」に従って測定し評価した。
なお、湿潤の評価は織物の評価に従い、JIS L 1096の8.12.2項、「湿潤時の試験」に従って評価した。
2.繊維構造物の湿熱処理での収縮率測定
紡績糸、織物、編物とも精練し(96℃×3分)、これを乾燥したものを原寸とし採長する。次いで、湿熱処理/乾燥を行い、もとの長さを測長して次式で湿熱処理における収縮率を測定した。収縮率が大きいほど、仕上げ品の湿潤時のストレッチ性が高くなり、良好である。
S(%)={L0−L1/L0}×100
ここで、S:糸条、織物、編物の湿熱処理での長さ収縮率(%)
L0:湿熱処理前(精練後)の原寸の長さ(cmまたはm)、
L1:湿熱処理/乾燥後の長さ(cmまたはm)、
(1)糸条(紡績糸)の測定
糸条(紡績糸)の測定は100cmを5本採取し、上記の精練/風乾を行い、1デシテックスあたり、0.1センチニュートンの荷重をかけ、中央部に長さ50cmの印をつけて原寸とする。次いで湿熱処理/風乾し、同荷重をかけて長さを測定し、上式で湿熱処理における収縮率(%、5本の平均値)を求める。
(2)織物、編物の測定
織物、編物の布帛の測定は、50mの布帛を上記精練/ショートループドライヤー乾燥(120℃×3分)し、斜め検反機を用いて布帛の緯方向は全幅(cm)を実測する。タテ方向は布帛の中央部に長さ20mの印をつけて原寸とする。次いで湿熱処理/同乾燥し、同検反機で全幅の長さと経方向の長さを測定し、上式で湿熱処理における収縮率(%)を求める。
実施例1(本発明方法1、2)
(A)原綿の準備
特表2005−513298号公報の実施例1に基づいて製造した大豆蛋白繊維の原綿を用いた。すなわち、大豆粕から蛋白質を抽出し、この成分を21%とポリビニルアルコール79%をブレンドし、紡糸原液とした。これを脱気した後、45%の硫酸ナトリウムの凝固液に紡出し、2.1倍に延伸した。さらに連続して該浴で1.6倍に延伸した。次いで乾燥した後、220℃の乾熱工程で、さらに4.2倍延伸した。この延伸糸を20%のグリオキザールおよび2%の硫酸アンモニウム浴でアセタール化処理をした後に洗浄、油剤付与、乾燥し、捲縮をかけ繊維を切断して、原綿とした。
得られた原綿は、組成は大豆蛋白質21%、ポリビニルアルコール79%で、原綿の繊度とカット長は1.3デシテックス、38mmであった。これを過酸化水素溶液で漂白し、紡績用油剤を付け乾燥した。
晒し原綿の物性は強度(乾):3.5センチニュートン/デシテックス、伸度:17.8%、沸騰水収縮率:2.1%であった。
(B)紡績工程
前記大豆蛋白繊維の原綿を投入し、カード工程で260ゲレン/6ydのスライバーを得た後、このスライバーを8本ダブリングして練条工程で7.4倍のドラフトをかけた。この練条工程を2回繰り返して得たスライバーを粗紡工程で6.6倍のドラフトをかけ、1.43Sの粗糸を得た。この粗糸を精紡工程で40倍のドラフトをかけた。紡出番手は40番の単糸である。混率は大豆蛋白繊維100重量%であった。
(C)製織工程
かかる大豆蛋白繊維の紡績糸40番を緯糸に用い、経糸にナイロンー6(モノフィラメント):22デシテックス、1フィラメントを用い、エアージェットルームで330r・p・mの回転数で、経糸密度105本/吋、緯糸密度60本/吋で、幅212.5cm、長さ52.9mの平織に製織した。
(D)湿熱処理/仕上げ加工
かかる繊維構造体(生機)を拡布状で精練した。精練機は”ソフサー”(ニッセン(株)製)を用い、96℃×3分で処理した。次いでショートループドライヤーのS・S・D(ニッセン(株)製)で120℃×3分、乾燥した。次いで、この織物を液流染色機(日阪製作所(株)製)で湿熱処理をした。処理液はベンジルアルコール8%溶液で、100℃×20分で処理した(本発明方法1)。また、処理液を水のみで、120℃×20分で処理した(本発明方法2)。湿熱処理後の乾燥は精練と同じ条件で乾燥した。湿熱処理における収縮率は、前述した「繊維構造物の湿熱処理での収縮率測定」の(2)項の「織物の湿熱処理での収縮率測定」に基づいて求めた結果、本発明方法1は緯糸方向は60.5%、本発明方法2は緯糸方向は44.3%であった。
なお、処理後の仕上げはレッドの酸性含金染料を用い、98℃×40分で液流染色機で染色した。染色後は常法に従ってフィックス処理をした。
染色後は前記140℃で仕上げセットし、仕上げた。また、この仕上げ品の伸長率、伸長回復率を前述した「B.織物の場合」に従って評価した。
得られた織物の評価結果を表1に示す。
比較例1
比較例1として、湿熱処理を水のみで85℃×20分を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、精練、湿熱処理、乾燥、(収縮率を測定)、染色、仕上げセットした。湿熱処理の収縮率および仕上げ品の伸長率、伸長回復率を同様に評価した。
得られた織物の評価結果を表1に併記する。
比較例2
比較例2として、生機を湿熱処理をすることなく、精練のみ行った。その後は実施例1と同様にして98℃で液流染色機で染色し、同様に仕上げた。
なお、この場合のみに限り、湿熱収縮率の測定は染色/乾燥後の収縮率を測定した。その後、実施例1に準じて染色し仕上げ、同様に伸長率、伸長回復率を評価した。
得られた織物の評価結果を表1に併記する。
実施例2(本発明方法3、4)
(A)原綿の準備
実施例1で使用したのと同じものを用いた。
(B)紡績工程
前記実施例1の大豆蛋白繊維の原綿100重量%をカード工程で240ゲレン/6ydのスライバーを得た後、このスライバーを8本ダブリングして練条工程で8.0倍のドラフトをかけた。この練条工程を2回繰り返して得たスライバーを、粗紡工程で6.0倍のドラフトをかけ、1.25Sの粗糸を得た。このようにして得た粗糸を精紡工程で40倍のドラフトをかけ、紡績糸を得た。紡出番手は50番(116.9デシテックス)、単糸である。
(C)湿熱処理
かかる繊維構造体の大豆蛋白繊維紡績糸100cmを5本採取して前記条件で精練し、風乾した。次いで、湿熱処理はキャリヤーと呼ぶ円筒状のかごに軽く巻き(100cmを1かご巻きとしたものを、5かご用意)、金属製の染色ポットに処理液と共に入れ、小型ポット染色機(テクサム技研(株)製)を用いて処理した。処理液はベンジルアルコール溶液濃度を2.0〜10.0重量%に変えて、100℃×20分で処理した(本発明方法3)。また、処理液を水のみにして同様に処理温度を110〜125℃に変えて処理した(本発明方法4)。いずれも該処理後に風乾した。湿熱処理における収縮率は、前述の「糸条(紡績糸)の湿熱処理での収縮率測定」に基づいて求めた結果、湿熱処理における収縮率は、本発明方法3によるものは22.0〜44.4%の範囲で、本発明方法4によるものは26.9〜34.2%の範囲であった。また、このものの伸長率、伸長回復率を、前述「B.織物の場合」の測定・評価法に従って、評価した。
評価結果を表2に示す。
比較例3
比較例3として、湿熱処理を水のみで、60〜85℃×20分および130℃×20分を行い、いずれも風乾した。
得られた紡績糸の評価結果を表2に併記する。
実施例3(本発明方法5)
(A)原綿の準備
実施例1で使用したのと同じものを用いた。
(B)紡績
実施例1と同じものを用いた。
(C)製編
実施例1の大豆蛋白繊維100%紡績糸40番手を用いて、ウェル密度38本/吋、コース密度36本/吋で、幅202.0cm、長さ48.7mのスムースに製編した。編みゲージは22ゲージ、釜径は30吋で、丸編みに編製し、編物の混率は大豆蛋白繊維100重量%であった。
(D)湿熱処理/仕上げ加工
かかる生機を湿熱処理をベンジルアルコール6%溶液で処理したほかを除いて、実施例1に従って、精練、湿熱処理、乾燥、染色、仕上げセットした。「湿熱処理における収縮率」は、前述(2)項の「編み物の湿熱処理での収縮率測定」に基づいて求めた結果、収縮率はウェル方向(幅方向)62.3%、コース方向(長さ方向)48.7%であった(本発明方法5)。また、この仕上げ品の伸長率、伸長回復率を測定し評価した。
評価結果を表3に示す。
比較例4
(A)染色加工
実施例3の生機を湿熱処理することなく、実施例3と同様に精練、染色加工し、仕上げた。なお、この場合の湿熱収縮率の測定は染色/乾燥後の収縮率を測定した値を用いた。 得られた編物の評価結果を表3に示した。
Figure 2009155774
Figure 2009155774
Figure 2009155774
表1の織物、表2の紡績糸、表3の編物から明らかなように、実施例1、2、3の本発明方法1、2、3、4、5のいずれも湿熱処理での収縮は20〜70%あり、また、伸長率は15〜300%、伸長回復率は70%以上であり、湿潤でのストレッチ性は極めて大きく、優れたものであった。
また、湿潤時の風合いは滑らかで、強度の低下等も問題がなく、素晴らしい織物、紡績糸、編物であった。また、紡績性、製織性、製編性、湿熱処理、染色仕上げ加工も問題なく、円滑に効率よく製造することができた。
一方、比較例1、2、3、4のいずれも湿熱処理の収縮率、伸長率、伸長回復率とも不十分であり、ストレッチ性は劣るものであった。

Claims (9)

  1. 大豆蛋白繊維を主体とする繊維構造物であって、該構造物の湿潤時の伸長率が15%〜300%および/または伸長回復率が70%以上有することを特徴とする大豆蛋白繊維構造物。
  2. 大豆蛋白繊維が短繊維である請求項1記載の大豆蛋白繊維構造物。
  3. 大豆蛋白繊維が30%重量以上含まれることを特徴とする請求項1または2記載の大豆蛋白繊維構造物。
  4. 大豆蛋白繊維構造物が、糸条、織物、編物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の大豆蛋白繊維構造物。
  5. 大豆蛋白繊維を主体とする繊維を糸条、織物、編物等の繊維構造体に形成後に、加工の段階で精練後に予め、湿熱処理して該繊維構造体の長さ方向に20%〜70%収縮させ、しかる後、仕上げることを特徴とする大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
  6. 湿熱処理が90℃〜125℃の熱水処理であることを特徴とする請求項5記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
  7. 湿熱処理が水を主体とした液で、液温105℃〜125℃の熱水で処理するものであることを特徴とする請求項5または請求項6記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
  8. 湿熱処理がベンジルアルコールを含む液で90℃〜110℃で処理する請求項5または請求項6記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
  9. 大豆蛋白繊維構造物が糸条、織物、編物のいずれかであり、湿熱処理され、仕上げられたものであることを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれかに記載の大豆蛋白繊維構造物の製造方法。
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