JP2009502149A - 新規な抗第viii因子抗体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、凝固経路の第VIII因子(FVIII)の構造および機能の特性化、FVIIIインヒビターの根絶の治療ストラテジーの設計、および医薬としての使用に特に適した新規な抗体ならびにその断片および誘導体に関する。本発明はまた、該特異的抗体を産生する細胞株に関する。さらにまた、本発明は、本発明の抗体、断片および/または誘導体を含む医薬組成物、ならびに該抗体もしくはその断片および誘導体またはその医薬組成物を用いることによる心血管障害の予防および処置方法に関する。

Description

発明の分野
本発明は、新規な抗体ならびにその断片および誘導体に関する。該抗体ならびにその断片および誘導体は、凝固経路の第VIII因子(FVIII)の構造および機能の特性化、FVIIIインヒビターの根絶の治療ストラテジーの設計、および医薬としての使用に特に適している。本発明はまた、該特異的抗体を産生する細胞株に関する。さらにまた、本発明は、本発明の抗体、断片および/または誘導体を含む医薬組成物、ならびに抗体もしくは断片およびその誘導体またはその医薬組成物を用いることによる心血管障害の予防および処置方法に関する。
発明の背景
哺乳動物における凝固系は、カスケード型の活性化において相互作用するプロ酵素および補因子を含む一連のタンパク質で構成されている。活性化されると、プロ酵素は、特定の補因子の存在下で、カスケード内の次の成分を切断する酵素に変換される。
かかる系は、通常、3つの時期:開始期、増幅期および伝播期に分けられる。開始期は、FVIIaおよびカルシウムの存在下、組織因子によるFXおよびFIXの酵素的切断によって誘発される。活性化FXは、プロトロンビンをトロンビンに切断する。増幅期では、トロンビンが、FV、FVIIIおよびFXIなど多数の因子を活性化し、これにより、今度はFIXが活性化される。次いで、伝播期は、多数の正のフィードバック機構で構成され、活性化FIXとその補因子FVIIIaとの組合せによって、FXがさらに切断される。FXaおよびFVaは会合し、プロトロンビンをトロンビンに切断する。
ヒトFVIIIは、2種類の内部相同性を含む3つのドメインで構成された330kdの糖タンパク質である。第1のドメインは、互いに(A1、A2、A3)+/−30%相同性を示し、かつ残基1〜329、380〜711、1,649〜2,091を含むAセグメントの3重化にある。領域A1およびA2は、重鎖を構成し、一方、グリコシル化部位(Bドメイン)高含有の948アミノ酸の領域で分離されたA3は、軽鎖のアミノ末端に位置する。第2の内部相同性は、該分子のカルボキシ末端に見られ、この部分には、40%相同性を有するほぼ150アミノ酸を含む第3の型のドメインの2つのコピー(C1およびC2)が見られる。特定の酸性の領域(A1−a1−A2−a2−B−a3−A3−C1−C2)で分離された異なるセグメントで構成される天然のFVIII分子は、酵素によって速やかに切断された後、血漿中に、2価のカチオンによって80kDの軽鎖(a3−A3−C1−C2)に会合される重鎖(A1およびA2ドメインとBドメインまたはその切断型部分と一緒に)からなるヘテロダイマーとして侵入する。活性となり、テナーゼ複合体形成においてその機能を果たすためには、循環FVIIIは、トロンビンによって切断されなければならない。
血友病Aは、FVIIIの欠如または不充分な機能を特徴とする。重度の血友病A(すなわち、1%未満の機能的FVIII)患者は、補充療法として、組換えまたは血漿由来FVIIIの投与によって処置される。FVIII輸液による補充療法中の血友病A患者の約25%は、FVIIIに対して免疫応答を発現する。これは、重度の血友病A患者が、妊娠期間中、その患者の免疫系に対するFVIIIの曝露が欠如するため、FVIIIに対して耐性になる機会がなかったという事実によるものである。また、抗FVIII抗体も、一部の自己免疫疾患の状況において、または時として、妊娠または手術後に見られ得る。かかる抗体は、インヒビターと呼ばれ、テナーゼ複合体によってトロンビン生成速
度を低下させ、それにより、凝固カスケードの増幅ループを阻害する。
インヒビター抗体は、FVIII分子上の多数の異なるエピトープを認識する。特に最も高頻度に認識されるエピトープは、C2およびA2ドメイン内に位置する。C2ドメイン内のエピトープの詳細な特性化は、C2の結晶構造の解析およびヒトモノクローナル抗C2抗体の利用可能性のおかげでなされ、これにより、C2ドメインの構造モデルの充分な確認ならびに単一のアミノ酸レベルでのエピトープの正確なマッピングが可能となった(Jacquemin MGら,1998 Blood.JuI 15:92(2):496−506)。この知見により、2つの系統の研究、すなわち、インヒビター抗体との相互作用が低減された新規なFVIII分子の設計、および抗C2インヒビター抗体の産生の阻止または抑制を目的とする新規な治療ストラテジーの開発の道が開かれた。
A2ドメインとの抗体相互作用を解明するための同様のアプローチは、これまで、適当な試薬がないことにより妨げられていた。先行技術では、FVIIIに対して低親和性を有するヒトモノクローナルIgM抗体が報告されたが、強いFVIII阻害能力を有するヒトモノクローナルIgG抗体は、報告されていない。
インヒビターを有する患者のレパートリーに由来する抗体は、FVIIIに対して実際に生成される抗体であるため、特殊な試薬である。対照的に、マウスなどの動物モデルにおいて生成される抗体は、マウス免疫系の特性はヒトのものと同等でないため、ヒトでの状況を代表するものではない。
FVIIIの特性化またはインヒビターの産生の阻止もしくは抑制を目的とする治療法の確立のための潜在的使用の他、FVIIIのA2ドメインに対する抗体は、血友病A患者由来のものもそうでないものも、治療目的、例えば、血餅の形成の阻害に有用であり得る。抗凝固および抗血栓性の処置は、危険な結末、例えば、心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患による四肢の損失または肺塞栓症を予防するための血餅の形成の阻害を目的とする。今日まで数年来、抗血栓療法は、数種類の薬物、すなわち、アスピリン、ヘパリンおよび経口ワルファリンに依存している。血栓症に関与するプロセスの理解が深まるとともに、開発された凝固因子の特異的インヒビター(例えば、組換え組織プラスミノゲン活性化因子(t−PA)またはストレプトキナーゼなど)の数は増大している。しかしながら、これまで、より良好な有効性/安全性比は、これらでは得られていなかった。
モノクローナル抗体は、既に、抗血栓剤として治療価値があることが示されている。この分野で最初に認可された薬物は、血小板GP IIbIIIa受容体に対するマウスモノクローナル抗体(7E3)のヒト化Fab断片であるアブシキシマブ(ReoPro TM)である。マウス抗体は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)を称される抗免疫グロブリン応答を惹起し、その治療有効性を低減もしくは破壊し得る、および/または患者においてアレルギー性もしくは過敏反応を誘発し得るため、ヒトの治療での使用がかなり制限され得る特性を有する。ヒトモノクローナル抗体の使用は、この制限に対処し得るが、従来のハイブリドーマ手法によって、かかる抗体を大量に生成させることは困難であることが示されている。
したがって、組換え手法を用い、マウスモノクローナル抗体の高結合親和性を維持しているが、ヒトにおいて免疫原性の低減を示す「ヒト化」抗体が構築されている。結合親和性および出血などの副作用の問題が、いくつかの「ヒト化」抗体療法に関して報告されている。
したがって、新規な抗凝固および抗血栓性/血栓溶解性の処置または、一般的に、凝固障害の処置のための化合物が必要とされている。抗体に基づく治療用薬剤では、理想的な
化合物は、充分な抗凝血有効性を有し、免疫原性を誘発しないヒト抗体である。
先行技術では、第VIII因子のA2ドメインに対する単離されたヒト抗体が報告されており、これは、EBV−不死化によって血友病A患者の末梢血単核球(PBMC)由来の抗FVIII抗体を産生するリンパ芽球系細胞株から得られたものである(Gharagozlouら 2003,ヒト抗体12:67−76)。しかしながら、報告された抗体はすべて、もっぱらIgMアイソタイプのものであり、したがって、治療目的に使用するのは困難である。さらにまた、この著者は、血友病患者には第VIII因子特異的IgM+B細胞の優先的増殖の系が存在し、これは、血友病患者においてFVIII分子の特質およびFVIIIに対する感作の条件に特異的に関連している可能性があることを示唆しており、その結果、この様式でIgG抗体を得ることは可能でないか、または極めて困難であることを示唆している。
したがって、第VIII因子のA2ドメインに結合し、FVIII活性を阻害するモノクローナル抗体および抗体断片の必要性が残る。理想的には、治療用薬剤のためには、かかる抗体は、HAMAを惹起し得ない(またはその傾向が低い)ため、非免疫原性である。
発明の概要
本発明は、FVIIIのA2ドメインに指向される最初のヒトモノクローナルIgG抗体、その産生および完全な特性化、ならびにFVIIIの構造的および機能的特性化のためのその使用、および医薬としての使用を提供する。さらにまた、本発明は、FVIIIのA2ドメインに特異的に結合し、研究、診断および治療に有用である抗体およびその抗原結合断片を提供する。本発明者らはまた、抗A2阻害性抗体の産生の抑制を図るを治療の設計のためのストラテジーを提供する。
本発明の第1の態様は、第VIII因子のA2ドメインに指向される新規なモノクローナル抗体、より詳しくは、IgGアイソタイプならびにその断片および誘導体に関する。本発明のモノクローナル抗体の特別な一実施形態は、第VIII因子の活性を阻害する。
本発明のこの態様の特別な実施形態は、より詳しくは、抗体の可変領域の重鎖がそのCDR内に配列番号5〜7に対応する配列もしくは少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列を含み、軽鎖可変領域がそのCDR内に配列番号8〜10の配列、もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列を含むことを特徴とするIgG型のヒトモノクローナル抗体を提供する。
さらなる特別な一実施形態は、その重鎖可変領域が配列番号2の配列もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列をCDR領域内に含む、および/またはその軽鎖可変領域が配列番号4の配列もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列をCDR領域内に含むことを特徴とするIgG型のヒトモノクローナル抗体を提供する。
さらなる特別な一実施形態は、BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託された細胞株によって産生される抗体BOIIB2であるIgG型のヒトモノクローナル抗体を提供する。
本発明のこの態様のさらなる特別な一実施形態は、Fab、Fab’またはF(ab’)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)の組合せ、可溶性もしくは膜固定単鎖可変部分、または単一の可変ドメインの群から選択される、上記のヒトモノクローナルIgG抗体の抗原結合断片を提供する。
本発明の別の態様は、FVIIIのA2ドメインに特異的に結合し得る、BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託された細胞株によって産生される抗体BOIIB2、およびFVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する任意の抗体を提供する。
具体的な一実施形態によれば、FVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する抗体(antibodies antibody)は、配列番号11の配列に特異的に結合する。
さらなる具体的な一実施形態によれば、FVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する抗体は、ヒト抗体、ラクダ抗体、サメ抗体またはヒト化抗体またはキメラ抗体である。より特別には、該抗体はモノクローナル抗体である。
本発明のこの態様の特別な実施形態において、FVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する抗体(antibodies antibody)は、該抗体の可変領域の重鎖がそのCDR内に配列番号5〜7に対応する配列もしくは少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列を含み、軽鎖可変領域がそのCDR内に配列番号8〜10の配列、もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列を含むことを特徴とする。
本発明のこの態様のさらなる特別な実施形態において、FVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する抗体は、その重鎖可変領域が配列番号2の配列もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列をCDR領域内に含む、および/またはその軽鎖可変領域が配列番号4の配列もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列をCDR領域内に含むことを特徴とする。
さらなる特別な実施形態において、本発明は、抗体断片、より特別にはFVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する抗体の抗原結合断片、より特別にはFVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する抗体断片を提供する。より詳しくは、これらの抗体断片は、Fab、Fab’またはF(ab’)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)の組合せ、可溶性もしくは膜固定単鎖可変部分、または単一の可変ドメインからなる群より選択される。
かかる抗原結合断片の特別な実施形態としては、BOIIB2の少なくとも2つのCDRを含む断片もしくはその誘導体、またはより特別には、配列番号5〜10の群から選択される少なくとも2つのCDR断片、または少なくとも2つのそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列を含む断片が挙げられる。本発明の抗体断片の具体的な実施形態は、配列番号6および配列番号7の配列もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列または配列番号9および配列番号10の配列もしくはそれと少なくとも80%または少なくとも90%または95%配列同一性を有する配列を含む断片である。
本発明の特別な一実施形態は、ヒトBOIIB2抗体の単鎖可変断片(scFv)およびFVIII活性を阻害し得るscFvを提供することに関する。本発明の別の実施形態は、該抗体と標識または目的のペプチドもしくは他の分子、または1つ以上のCDRを含むポリペプチドなどとの複合物を含む、本発明の抗体の抗原結合誘導体に関する。本発明の特別な一実施形態によれば、該抗体は、ハイブリッド抗体、最も特別には2つの異なる抗原またはエピトープに対する特異性を兼ね備える二価抗体である。
本発明のまたさらなる目的は、本発明の抗体を産生する細胞株を提供することである。これには、モノクローナルヒトIgG抗体を産生する細胞株、およびFVIIIへの結合に関して抗体BOIIB2と競合する本発明の抗体を産生する細胞株が含まれる。また、これには、例えば、組換え手法の結果としてBOIIB2またはその断片に由来する抗体を産生し得る細胞株が含まれる。本発明のこの態様の特別な一実施形態は、本発明によるモノクローナル抗体を産生するBOIIB2という名称の細胞株であり、これは、BCCM/LMBPに受託番号LMBP 6422CBで寄託されている(Belgian Co−ordinated Collections of Microorganisms/Plasmid Collection Laboratorium voor Moleculaire Biologie,University of Ghent K.L.Ledeganckstraat 35,B−9000 Ghent,BE)。
本発明の別の態様は、本発明の抗体および抗原結合断片および誘導体の使用、すなわち、ヒト試料におけるFIIIの免疫学的検出のため、すなわち、診断用ツールとして、診断方法における標識化された標的成分として、FVIII活性を阻害する化合物のスクリーニングため、FVIIIの構造および機能の特性化のため、ならびにFVIIIインヒビターの根絶のための治療ストラテジーの設計のため(とりわけ、抗A2インヒビター抗体の産生または活性を阻止および/または抑制する化合物の同定における)の使用に関する。
本発明の別の態様は、哺乳動物における心血管障害の処置および/または予防方法を提供し、該方法は、かかる処置または予防を必要とする哺乳動物、より特別にはヒトに、FVIIIのA2ドメインに特異的に結合する本発明による抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体である活性成分の治療有効量を投与することを含む。本発明の方法の特別な一実施形態は、心血管障害、例えば限定されないが、ヒトにおける止血障害、特に凝固カスケードの障害および結果として起こる血栓性病態、例えば、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞、SIRSと呼ばれる障害、例えば限定されないが、膵炎における全身性炎症、虚血、多発外傷および組織損傷、出血性ショック、免疫媒介型臓器損傷および感染、セプシス、敗血症性ショック、微小血管系における血栓形成、播種性血管内凝固(DIC)、敗血症などの処置および/または予防に関する。
本発明の別の態様は、凝固障害、例えば限定されないが心血管障害などの予防および/または処置のための医薬として、および医薬の製造のための該抗体ならびにその断片および誘導体の使用に関する。本発明の方法の具体的な実施形態において、凝固障害は、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞およびSIRSと呼ばれる障害(全身性炎症反応症候群)からなる群より選択される、ヒトにおける血栓性病態である。
本発明はまた、凝固の内因性経路ならびに外因性経路によるトロンビン生成を抑制または低減するための本発明の抗体ならびに抗原結合断片および誘導体の使用に関する。
本発明の別の態様は、本発明の抗体またはその断片もしくは誘導体の医薬組成物、および本発明の抗体またはその断片もしくは誘導体を用いることによる凝固障害の処置方法に関する。
哺乳動物における凝固障害の予防または処置のための医薬組成物の特別な実施形態は、BOIIB2であるFVIIIに対する抗体または断片もしくは誘導体、より特別には、薬学的に許容され得る担体との混合物におけるその抗原結合断片を含む。本発明の具体的な実施形態は、Fab、Fab’またはF(ab’)、可溶性もしくは膜固定単鎖可変部分または単一の可変ドメインからなる群より選択される、BOIIB2またはその誘導体の抗原結合断片を含む医薬組成物である。本発明の最も特別な実施形態は、配列番号5〜10の群から選択される少なくとも2つのCDRまたは、配列番号5〜10の群から選択される2つの異なる配列と少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは95%配列同一性を有する少なくとも2つの配列を含む抗原結合断片を含む医薬組成物に関する。その特別な一実施形態は、本発明のBOIIB2抗体のscFvを含む医薬組成物、より特別には、配列番号5〜10の群から選択される少なくとも2つのCDRまたは配列番号5〜10の群から選択される2つの異なる配列と少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは95%配列同一性を有する少なくとも2つの配列を含むscFvを含む医薬組成物に関する。
本発明による医薬組成物のまた別の特別な一実施形態では、本発明の抗FVIII抗体または抗体断片に加えて、凝固障害の処置または予防に有用な別の薬剤の治療有効量を含む。この点において最も特別には、他の抗FVIII抗体またはその断片もしくは誘導体、例えば、Krix−Iなどが想定される。
本発明の別の目的は、まず、記憶IgG担持B細胞を血友病患者のPBMCから調製する工程、続いて、CD40受容体による記憶B細胞の活性化を行なう工程、およびEBVを添加して該細胞株を不死化させる工程を含む、IgGアイソタイプの、より特別にはFVIIIのA2ドメインに指向される、より特別にはBOIIB2のエピトープに結合するヒトモノクローナル抗FVIII抗体の作製方法に関する。別の実施形態は、(少なくとも)配列番号11の配列を含むペプチドでの哺乳動物の例えばマウスの免疫処置により、IgGアイソタイプの、より特別にはFVIIIのA2ドメインに指向される、より特別には、BOIIB2のエピトープに結合するモノクローナル抗FVIII抗体の調製方法に関する。かかる抗体は、次いでヒト化され得るか、または断片および誘導体が、次いで、これらの哺乳動物抗体から調製され得る。
本発明の別の態様は、本明細書に開示されたFVIIIに結合する抗体の抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド、より特別には、細胞株BOIIB2によって産生されるBOIIB2の重鎖および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を提供する。最も詳しくは、配列番号2および配列番号4の可変領域をコードするヌクレオチド配列が想定される。さらに、BOIIB2の少なくとも2つのCDRを含む抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド配列、より詳しくは、配列番号5〜配列番号10からなる群より選択される少なくとも2つのCDRをコードするポリヌクレオチド、または配列番号5〜10を少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは95%配列同一性を有する少なくとも2つのCDRを含む配列をコードするポリヌクレオチド。本発明のヌクレオチドの具体的な実施形態を、配列番号1および3に示す。さらなる具体的な実施形態としては、BOIIB2のscFvをコードするヌクレオチド配列、およびこれと少なくとも80%または少なくとも90%配列同一性を有する配列、最も特別には、scFvのCDR領域をコードする領域内の配列が挙げられる。しかしながら、遺伝暗号における重複の結果、本発明の範囲に含まれる多数のヌクレオチド配列が存在することは認識されよう。
さらに、本発明は、配列番号1、3および5〜10からなる群より選択されるペプチドをコードする組換え発現ベクター、より詳しくは、細菌、酵母、植物、哺乳動物またはウイルス系の発現ベクターを提供する。さらに、本発明は、記載のベクターを含む組換え細
胞、より特別にはヒト細胞を提供する。
本発明の別の特別な一実施形態は、第VIII因子のA2ドメインに指向されるFVIII阻害抗体の作製のための本発明のBOIIB2のエピトープ(エピトープ配列配列番号11)の使用、またはFVIIIを阻害する化合物のスクリーニングのためのアッセイにおける使用に関する。
実施例を含む以下の記載は、本発明を、記載の具体的な実施形態に限定することを意図せず、添付の図面(参照により本明細書に組み込まれる)と関連させて理解され得る。
発明の詳細な説明
定義
用語「抗体断片」は、本明細書で用いる場合、抗体分子の下位区分または抗体の1つ以上の領域を含む分子であって、単独または他の断片との組合せで、これが生成された抗原に結合し得るものをいう。典型的な抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、単一の可変ドメイン(Fv)または単鎖可変部分(もしくは領域)(scFv)である。より小さな断片としては、相補性決定領域すなわちCDR、例えば、重鎖もしくは軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3など、および/またはその2つ以上の組合せが挙げられる。したがって、用語「抗体断片」は、インタクトな抗体の断片化によって得られ得る断片、および抗体の1つ以上の部分(すなわち、アミノ酸配列)を含む組換え手法によって得られる分子、例えば、限定されないが、ナノボディ、ビスscFv、ダイアボディ、トリアボディなど(HolligerおよびHudson,Nature Biotechnology,2005,23(9):1 126−1136に記載のような)の両方を包含する。
抗体または抗体断片の「誘導体」という用語は、本明細書において、(例えば、ヒト化して抗原に対する親和性または標識などの他の分子への結合を増大させるため)、例えばアミノ酸配列に関して元の抗体の修飾である(例えば、ハイブリドーマ細胞株によって産生される)が、抗原に対する抗体または断片に有意に影響しない抗体または抗体断片をいうために用いる。誘導体には、合成ポリペプチドなどの抗原結合分子をもたらす1つ以上のCDRの代替構造が含まれる。誘導体としては、非ヒト抗体のヒト化型、ハイブリッド抗体および1種類以上の抗体の1つ以上の可変領域および/またはCDRをグラフトまたは導入することにより得られた抗体または他の抗原結合分子が挙げられる。したがって、ヒト抗体の誘導体としては、ヒト抗体の1つ以上の可変領域および/またはCDRを含む非ヒト種由来の抗体、例えば、限定されないが、ハイブリッドラクダ科動物もしくはテンジクザメの抗体またはこれらから得られるナノボディなどが挙げられる。さらに、用語「誘導体」は、グリコシル化に関して修飾された抗体および抗体断片を包含する。
「ヒト化抗体またはヒト化抗体断片」は、本明細書で用いる場合、ヒト抗体とより類似させるためにアミノ酸が置き換えられた、非ヒト抗体分子またはその断片をいう。典型的には、このような置換の大部分は、抗原結合に寄与しない領域内に存在する。多くの場合、該置換は、CDR間のフレームワーク領域内に存在する。しかしながら、CDR内で、抗原への結合に全くまたはほとんど関与しないアミノ酸もまた、ヒト抗体とより類似するように置換され得ることが想定される。
「新形態の」抗体もしくは抗体断片または「ハイブリッド抗体」は、本明細書で用いる場合、少なくとも2つの異なる抗体、より特別には異なる種の2つの抗体の一部分を含む抗体をいう。典型的には、ヒトハイブリッド抗体は、目的の抗原に対して指向される別の抗体の非ヒト(任意選択でヒト化された)可変領域に連結されたヒト定常領域、または抗
原結合領域内のアミノ酸配列が例えば目的のヒト抗原に対して指向される別の抗体由来の配列で置き換えられたヒト抗体の主鎖であり得る。より特別には、目的の抗原に対して親和性を有する抗体の抗原結合領域、例えば、1つ以上のCDRもしくは可変領域またはその一部分が、ヒト抗体の主鎖内に導入される(例えば、CDRグラフト抗体)。異なるエピトープに対して指向される抗体のCDRが導入される場合(例えば、抗体のアーム(arm)の各々において)、新形態またはハイブリッドの抗体は、1つの抗原の2つの異なるエピトープに対して親和性を有するものであり得るか、または異なる抗原に対応する異なるエピトープに対して親和性を有するものでさえあり得る。
用語「相同性」または「相同な」は、本明細書で用いる場合、本発明の抗原結合分子に関して、該抗原結合分子のその抗原への結合と競合する、または該結合を阻害する分子をいう。該結合は特異的であるのがよい、すなわち、抗原に対する相同な分子の結合は、該抗原に対する該抗原結合分子の結合と同程度に特異的であるのがよい。
2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の「配列同一性」という用語は、本明細書で用いる場合、2つの配列をアラインメントしたとき、短い方の配列内のヌクレオチドまたはアミノ酸の数で除算される同一のヌクレオチドまたはアミノ酸を有する位置の数に関する。2つの配列の配列同一性は、70%〜80%、81〜85%、86〜90%、91〜95%または96〜100%であり得る。抗原との結合に対して可変領域の主鎖の寄与は一般的に限定的であることに鑑みると、配列同一性は、最も一般的に本明細書において、相補性決定領域もしくはCDR内のアミノ酸配列に関して、またはCDRを構成するアミノ酸配列をコードする(encoding and)ヌクレオチド配列に関して特定される。
2つのアミノ酸は、これらがともに、以下の群GASTCP;VILM;YWF;DEQN;KHRのうちの1つの同じ群に属する場合、「類似」とみなされる。したがって、本明細書でいう2つのタンパク質配列間の配列類似性の割合は、2つのタンパク質配列をアラインメントし、短い方の配列内のアミノ酸の総数で除算される同一または類似のアミノ酸を有する位置の数を決定することにより決定され得る。
用語「阻害性の」は、FVIIIに対する抗体またはその断片もしくは誘導体についていう場合、該抗体、断片または誘導体が、FVIIIの機能、より特別には凝固カスケードにおけるFVIIIの機能を阻害し得ることを示すために使用される。第VIII因子の機能は、以下のとおりである。FVIIIは、凝固の補因子としての機能を果たす。初期に大量のトロンビンが生成されると、FVIIIは、その活性形態(FVIIIa)において切断され、そのシャペロン分子であるフォン・ビルブラント因子から解離する。次いで、FVIIIaは、活性化された第IX因子(FIXa)との複合体の形成の関与に充分利用可能となり、該複合体は、第X因子を切断してFXaを形成する。該複合体は、その活性に基づいて「テナーゼ(tenase)複合体」と呼ばれる。FIXaへのFVIIIaの結合により、FIXの酵素活性は±100,000倍増大する。FXaの形成は、活性化された第V因子との組合せで、プロトロンビンのトロンビンへの変換、続いて、凝固をもたらすフィブリンの形成をもたらす。したがって、FVIII活性の阻害により、一般的には、トロンビン、フィブリンの形成の低減および凝固の低減がもたらされ、これらは、本明細書に記載の方法によって測定され得る。FVIIIの阻害は、以下の効果:FVIIIaへの活性化の阻害、vWFからのVIIIの解離の阻害、FIXaとの複合体形成の阻害の1つ以上の結果であり得る。
用語「凝固障害」は、本明細書で用いる場合、ヒトにおける止血障害、特に、凝固カスケードの障害および結果として起こる血栓性病態、例えば、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞、SIRSと呼ばれる障害(全身性炎症反応症候群)などをいう。全身
性炎症は、いくつかの臨床症状、例えば、膵炎、虚血、多発外傷および組織損傷、出血性ショック、免疫媒介型臓器損傷および感染の考えられ得る終点である。最初の原因とは無関係に、全身性炎症では、かなり類似した病理学的変化が観察されるため、用語「全身性炎症反応症候群」(以下、本明細書においてSIRSという)は、かかる変化を説明するために一般的に引用し、したがって、本出願書類では、Chest(1992)101:1644−55においてR.C.Boneらによって明確化(formulate)されたAmerican College of Chest Physiciansの推奨に従って用いる。用語「全身性炎症反応症候群(SIRS)」には、セプシス、敗血症性ショック、微小血管系における血栓形成、播種性血管内凝固(DIC)、敗血症などが含まれる。
本明細書において「組換え」と称する核酸は、組換えDNA方法論によって作製された核酸であり、人為的組換え、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または制限酵素を用いるベクター内へのクローニングなどの方法に依存する手順によって作製される核酸が挙げられる。「組換え」核酸はまた、細胞の天然の機構により起こる組換え事象に起因するものであるが、所望の組換え事象を許容し、起こり得ることを可能にするように設計された核酸が細胞内に導入された後、選択される。
詳細説明
本発明を、特定の実施形態および特定の図面を参照して説明するが、本発明は、これらに限定されるのではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。本発明は、驚くべきことに、新規なリガンド、すなわち、新規なモノクローナル抗体ならびにその断片、誘導体およびホモログ、より特別には、IgGアイソタイプであって、A2ドメインへの結合によりFVIIIを阻害するものが測定されたことに基づく。
本発明は、第VIII因子(FVIII)に指向される抗体およびその抗原結合断片に関する。ヒト第VIII因子は、2種類の内部相同性を含有する3つのドメインで構成された330kdの糖タンパク質である。第1のドメインは、互いに(A1、A2、A3)+/−30%相同性を示し、それぞれ、残基1〜329、380〜711、1,649〜2,091を含むAセグメントの3重化にある。領域A1およびA2は、重鎖を構成し、一方、グリコシル化部位(Bドメイン)高含有の948アミノ酸の領域で分離されたA3は、軽鎖のアミノ末端に位置する。第2の内部相同性は、該分子のカルボキシ末端に見られ、この部分には、40%相同性を有するほぼ150アミノ酸を含む第3の型のドメインの2つのコピー(C1およびC2)が見られる。特定の酸性の領域(A1−a1−A2−a2−B−a3−A3−C1−C2)で分離された異なるセグメントで構成される天然のFVIII分子は、酵素によって速やかに切断された後、血漿中に、2価のカチオンによって80kDの軽鎖(a3−A3−C1−C2)に会合される重鎖(A1およびA2ドメインとBドメインまたはその切断型部分と一緒に)からなるヘテロダイマーとして侵入する。活性となり、テナーゼ複合体形成においてその機能を果たすためには、循環FVIIIは、トロンビンによって切断されなければならない。
本発明では、FVIIIのA2ドメインに特異的であり、FVIII機能を阻害する精製/単離された抗体の作製、特性化および使用を記載および提供する。
第VIII因子、特に第VIII因子のA2ドメインに対するかかる阻害性抗体、その断片および誘導体は、種々の目的に使用され得る。これらは、FVIIIの構造および機能の特性化のため、FVIIIインヒビターの根絶のための治療ストラテジーの設計のため、ヒト試料におけるFIIIの免疫学的検出のため、診断方法における標的化部分(すなわち、標識抗体)として、FVIIIを阻害する化合物のスクリーニングのため、または一般的に研究試薬として使用され得る。このように、これらは、FVIIIに対して実
際に生成される抗体であるため、特殊な試薬である。
FVIIIインヒビターの根絶のための治療ストラテジーの設計の一例として、抗A2インヒビター抗体に結合し、その阻害特性を中和する能力を有するペプチドが作製され得る。かかる目的のためのペプチドは、ファージディスプレイランダムペプチド(例えば、Villard Sら Blood(2003)102:949−952に記載のものなど)を用いたスクリーニングにより得られ得る。A2ドメインとの相互作用により第VIII因子の機能を阻害する抗体を中和し得る化合物(すなわち、小分子、ペプチドなど)のスクリーニングは、本発明の抗体を用いて行なわれ得る。あるいはまたさらに、抗第VIII因子抗体を阻害し得るペプチドは、BOIIB2のエピトープを鋳型として用いて作製され得る。これは、当業者に知られた工程、すなわち、エピトープ配列に相同な配列を有するペプチドの作製後、阻害能力の試験を含み得る。
さらにまた、本発明の抗体は、ヒト試料の精製用カラム内で該抗体を用いることによる、ヒト試料からの第VIII因子の精製に使用され得る。
さらにまた、本発明の抗体は、凝固障害の予防および/または処置のための医薬として、および医薬の製造のためにも使用され得る。医薬としてのこの使用では、哺乳動物の出血を誘発せず、第VIII因子が100%阻害されないことが確保される抗体用量が最適に確立されるのがよい。
本発明の第1の態様は、FVIIIに対する抗体、より特別には、第VIII因子のA2ドメインに指向されるヒトIgG抗体およびその抗原結合断片に関する。
一例として、インヒビターを有する血友病A患者の天然の記憶B細胞のレパートリーから得られたモノクローナルIgG抗体であるヒト抗体BOIIB2を記載する。抗体BOIIB2は、FVIIIのA2ドメイン、より特別には、その内部のアミノ酸379〜546に対応するエピトープに特異的に結合し、FVIII活性を阻害、より特別にはFVIII凝固促進活性を阻害し、これは、外因性または内因性凝固経路の活性化の際に血小板高含有血漿(PRP)中でのトロンビン生成によって測定される。
したがって、本発明のこの態様の特別な一実施形態は、第VIII因子のA2ドメインに指向されるインタクトなIgG抗体、より特別にはIgG4抗体である抗体を提供する。ヒトIgGを得るための方法によって、抗体が本明細書において記載され、本発明のさらなる態様を構成することがわかった。
したがって、本発明の第2の態様は、FVIIIへの結合において抗体BOIIB2と競合し得る、第VIII因子のA2ドメインに指向されるFVIIIに対する抗体およびその抗原結合断片を提供する。本発明のこの態様の特別な実施形態は、FVIIIへの結合において抗体BOIIB2と競合し得、FVIII活性を阻害する抗体および抗原結合断片に関する。
抗体BOIIB2と競合し得る抗体は、種々の様式で、当業者に周知の方法によって同定され得る。例えば、抗体がFVIIIへの結合に関してBOIIB2と競合する能力は、ELISAにおいて試験され得、この場合、抗体に対するFVIII結合が、FVIIIとBOIIB2または本明細書の実施例のセクションに記載のような抗体とのプレインキュベーションにより、またはなしで試験される。したがって、古典的な免疫処置方法とモノクローナル抗体手法のいずれかによって得られる抗体、またはインヒビターを有する血友病A患者から得られる抗体であってFVIIIに結合する抗体を試験し、抗体BOIIB2との競合が測定され得る。
特別な一実施形態によれば、本発明は、抗体、特にモノクローナル抗体またはその断片もしくは誘導体、例えば、本明細書においてBOIIB2と称する抗体と同じFVIIIのエピトープに結合するヒト化抗体および抗体断片を提供する。より特別には、該抗体が結合するエピトープは、立体的エピトープ、最も特別には、第VIII因子の484〜508位の間のアミノ酸残基ならびにグルタミン酸残基389、390および391を含むエピトープである。特別な一実施形態において、本発明の抗体および断片は、配列番号11を含むタンパク質またはペプチドに結合する。
本発明の具体的な実施形態としては、BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託された細胞株によって産生されるヒトモノクローナル抗体BOIIB2、およびその断片または誘導体、例えば、組換え手法によって作製され得る断片および誘導体などが挙げられる。抗体BOIIB2は、ヒト起源のFVIIIに対して指向され、ヒトFVIIIに結合し、ヒトFVIIIの機能を阻害し、したがって、治療の状況および試験またはスクリーニング目的の両方においてFVIIIの阻害に使用され得る。
本発明のさらなる実施形態は、抗体BOIIB2と実質的に同じ特性を有するモノクローナル抗体に関し、より詳しくは、動物、好ましくはマウスにおいて、例えばマウスにFVIIIに注射することによる意図的な免疫処置を行ない、次いで、脾臓のリンパ球をマウス骨髄腫細胞株と融合させた後、抗FVIII抗体を産生する細胞培養物を同定およびクローニングすることによって生成されるモノクローナル抗体に関する。任意選択で、抗体のさらなる選択を、BOIIB2エピトープとの反応性に基づいて行なう。あるいはまた、動物をBOIIB2エピトープで、例えば、該エピトープの配列を有するペプチドを注射することにより免疫処置し、次いでかかる抗体をさらにヒト化し得る。
本発明の別の実施形態は、抗体BOIIB2と実質的に同じ特性を有し、本明細書に記載の方法を用いること、すなわち、以下の工程
・まず、記憶IgG担持B細胞を血友病患者のPBMCから調製する工程
・続いて、例えばトランスフェクト細胞株における場合のように、固定化CD40リガンドを用いてCD40受容体による記憶B細胞の活性化を行ない、CD40と交差反応させる工程、および
・EBVを添加して該細胞株を不死化させる工程
を行なうことによって血友病患者から得られるモノクローナル抗体に関する。
本発明のさらなる一態様は、BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託された細胞株によって産生され、FVIIIに結合してFVIII活性を阻害し得るモノクローナル抗体BOIIB2に由来する抗体およびその抗原結合断片に関する。抗体BOIIB2に由来する抗体は、典型的には、BOIIB2の少なくとも2つのCDRを含む。典型的には、抗原結合は、主に、重鎖および軽鎖可変領域のCDR2およびCDR3によって決定される。さらなる特別な実施形態において、抗体BOIIB2の誘導体は、抗体BOIIB2の重鎖および/または可変軽鎖領域を含む。抗体BOIIB2の重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号2および配列番号4に開示する。
本発明のさらなる実施形態は、それぞれ、配列番号2および/または配列番号4と、少なくとも80%、特に少なくとも85%、より特別には少なくとも90%、最も特別には少なくとも95%配列同一性を有する可変重鎖領域およびまたは可変軽鎖領域を含む、抗体BOIIB2に由来する抗体に関する。
種々の型の抗体BOIIB2の誘導体が、本発明の状況において想定される。したがって、本発明はまた、ハイブリッド抗体またはキメラ抗体または二価抗体(すなわち、2つ
の異なる特異性を兼ね備えるもの)に関する。本発明の特別な実施形態は、図3の可変重鎖領域および/または軽鎖領域あるいはその一部分を含むハイブリッド抗体、ならびに配列番号5〜配列番号10のCDRの少なくとも2つ、より特別には3〜5つ、最も特別には6つすべてを含む抗体に関する。あるいはまた、本発明は、配列番号5〜10とそれぞれ、少なくとも80%、特に少なくとも85%、より特別には少なくとも90%、最も特別には少なくとも95%の配列同一性を有する少なくとも2つ、より特別には3〜5つ、最も特別には6つのCDRを含むハイブリッド抗体を提供する。
異なる抗体由来の結合相補性決定領域(「CDR」)を関連させる方法は、当業者に知られている[例えば、Recombinant approaches to IgG−like bispecific antibodies,Marvin JSおよびZhu Z in Acta Pharmacologica Sinica,2005,26:649−658を参照のこと]。あるいはまた、本発明の非ヒト抗FVIII抗体のアミノ酸をより限定的な数で置き換えることも想定される。
また別の態様は、本発明の抗体の機能性断片、例えば、本発明の抗体の誘導体の断片、例えば、キメラ抗体またはヒト化抗体の断片を提供する。本明細書に記載の抗体の機能性断片は、該断片が誘導される完全長抗体の少なくとも1つの結合機能および/またはモジュレーション機能を保持している。特別な機能性断片は、対応する完全長抗体(例えば、FVIIIのA2ドメインに対する特異性)の抗原結合機能を保持している。特別な機能性断片は、FVIIIに特徴的な1つ以上の機能を阻害する能力、例えば、その凝固促進活性を保持している。具体的な一実施形態によれば、本発明は、抗体断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、2つ以上のCDR組合せ、該抗体のCDRの2つ以上を含むペプチド、またはBOIIB2などの本発明のFVIII結合抗体の単一の可変ドメインに関する。かかる断片は、酵素的切断または組換え手法によって作製され得る。Fab、Fab’およびF(ab’)断片は、当該技術分野でよく知られた方法、例えば、Stanworthら,Handbook of Experimental Immunology(1978),第1巻 第8章(Blackwell Scientific Publications)に記載のものを用いてモノクローナル抗体のタンパク質分解的消化によって生成され得る。かかる断片は、抗原に結合する能力を保持しており、親抗体の多数の特質、例えば、補体活性化またはFcγ受容体に結合する能力などを失ったものである。より詳しくは、本発明は、それぞれ配列番号2および配列番号4に対応するBOIIB2およびその誘導体の重鎖および軽鎖の可変領域を提供する。さらなる本発明の特別な一実施形態は、BOIIB2およびその誘導体の相補性決定領域(CDR)に関する。CDRの同定のために用いられる(follow)最も一般的な2つの方法は、IMGTおよびKABATであり、BOIIB2のCDRのいずれかの型の1つより多くを含む断片、ならびにこれらの断片またはCDRを含むBOIIB2の誘導体が、本発明の状況において想定される。CDRのEMGT同定によれば、BOIIB2の可変領域内のCDR領域は、配列番号5〜10に対応する。
本発明のさらなる実施形態は、それぞれ配列番号2および配列番号4と少なくとも80%、特に少なくとも85%、より特別には少なくとも90%、最も特別には少なくとも95%配列同一性を有する重鎖可変領域および/または軽鎖領域をCDR領域内に含む抗体断片に関する。フレームワーク領域内の配列同一性は、限定されないが、80%未満であり得る。また、それぞれ配列番号5〜10の配列と少なくとも80%、特に少なくとも85%、より特別には少なくとも90%、最も特別には少なくとも95%配列同一性を有する少なくとも2つのCDRを含む抗体断片が想定される。
本発明のさらなる具体的な一実施形態は、FVIIIに対するモノクローナル抗体、より詳しくはBOIIB2の可溶性または膜固定単鎖可変部分を提供する。単鎖可変断片(
scFv)は、遺伝子操作された抗体断片であり、通常、可動型ペプチドリンカーによって互いに連結された免疫グロブリンの可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)、またはその一部分からなる。任意選択で、scFvは、目的の抗体のCDR領域と別の抗体のフレームワーク領域とを含む。抗体の単鎖可変部分を得る方法は、当業者に知られている。例えば、該方法は、別々の反応でのヒト重鎖および軽鎖の可変部分DNA配列の増幅ならびにクローニングの後、2工程ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるVHとVL間への15アミノ酸リンカー配列、例えば(Gly4 Ser)3の挿入を含むものであり得る(例えば、DieffenbachおよびDveksler,「PCR Primer,a laboratory manual」(1995),Cold Spring Harbour Press,Plainview,NY,USAを参照のこと)。次いで、得られた断片は、単鎖断片可変断片(scFv)の発現用の適当なベクター内に、可溶性またはファージディスプレイポリペプチドとして挿入され得る。これは、当業者によく知られた方法(例えば、Gillilandら,Tissue Antigens(1996)47:1−20に記載のものなど)によってなされ得る。
本発明はまた、FVIIIに結合し得るモノクローナル抗体の超可変領域に代表的なペプチドまたはその組合せを提供する。かかるペプチドは、アプライドバイオシステムズ合成装置、例えば、Milligen(USA)から入手可能な9050型などのポリペプチド合成装置または関連手法のモデルを用いた合成によって得られ得る。
また、本発明のさらなる一態様は、IgGアイソタイプの、より特別にはFVIIIのA2ドメインに指向されるヒトモノクローナル抗FVIII抗体、例えば、BOIIB2のエピトープに結合してFVIIIの機能を阻害する抗体の調製方法に関し、該方法は、まず、記憶IgG担持B細胞を、IgG抗体を有する血友病患者のPBMCから調製する工程、続いて、CD40受容体による記憶B細胞の活性化を行なう工程、およびEBVを添加して該細胞株を不死化させる工程を含む。
IgGアイソタイプのヒトモノクローナル抗FVIII抗体の作製に使用される方法は、Gharagozlouら(Hum Antibodies.2003:12(3):67−76)に記載のものと、以下のように異なる:
(1)第1の工程は、IgG担持B細胞を、患者から採取したPBMCからFVIIIに対するインヒビターを用いて分取することからなる。したがって、IgM担持B細胞は、抗ヒトIgM 抗体を担持している磁気ビーズ上への吸着によって枯渇される。Gharagozlouらによって調製された抗体は、PBMCから直接作製されたものであり、EBVによって形質転換され易い唯一の末梢血B細胞であるIgM担持B細胞を特異的に標的化する;
(2)IgG担持B細胞(記憶B細胞)は、次いで、ヒトCD40のリガンド(CD40L)でトランスフェクトされた細胞株(通常、線維芽細胞細胞株)に曝露される。これにより、B細胞表面でのCD40の活性化によって生存シグナルが伝達されるため、培養中、B細胞の初期のアポトーシスの回避(overcome)が可能になる。この工程は、Gharagozlouらの記載にはない。
本発明の方法の別の実施形態は、IgGアイソタイプの、より特別にはFVIIIのA2ドメインに指向されるモノクローナル抗FVIII抗体、例えば、完全エピトープ配列または配列番号11の配列を含むペプチドでの哺乳動物、例えばマウスの免疫処置によって、BOIIB2のエピトープに結合する抗体などの調製方法に関する。この目的に使用されるペプチドは、他のアミノ酸をさらにまた含むものであってもよい。
したがって、本発明のまた別の態様は、本発明の抗ヒトFVIII抗体を産生する細胞株、より特別には、モノクローナル抗体BOIIB2またはその断片もしくは誘導体を産
生する細胞株に関する。本発明のこの態様の特別な一実施形態は、本発明によるIgGアイソタイプのヒトモノクローナル抗体を産生するBOIIB2という名称のハイブリドーマ細胞株である。細胞株BOIIB2は、BCCM/LMBPに受託番号LMBP 6422CBで(Belgian Co−ordinated Collections of Microorganisms/Plasmid Collection Laboratorium voor Moleculaire Biologie,University of Ghent K.L.Ledeganckstraat 35,B−9000 Ghent,BE)、2005年8月4日に発明者Marc Jacqueminによって寄託された。さらに、本発明は、FVIIIとの結合に関して、本明細書に記載の上記の細胞株BOIIB2から得られるヒトモノクローナル抗体BOIIB2と競合し得るヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を提供する。
本発明のまた別の態様は、抗体BOIIB2またはその断片もしくは誘導体(例えば、細胞株BOIIB2から得られ得るものなど)の可変重鎖または可変軽鎖領域をコードするヌクレオチドを提供することに関する。本発明の特別な一実施形態は、それぞれ配列番号2および配列番号4によって規定される可変重鎖領域および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、例えば限定されないが、配列番号1および配列番号3のヌクレオチド配列などに関する。また、本発明の状況において、配列番号5〜10にて特定されるモノクローナル抗体BOIIB2の1つ以上のCDR領域をコードするヌクレオチド配列が提供される。本発明の特別な実施形態としては、BOIIB2のscFvをコードする配列ならびにこれと少なくとも80%配列同一性を有する配列(最も特別には、CDRをコードする領域内に)。本発明はまた、本明細書に記載のモノクローナル抗体またはその断片に対応する相補配列を含む。特に、本発明は、本明細書に記載のモノクローナル抗体もしくはその断片から構築されるプローブ、または本明細書に記載のポリヌクレオチドもしくは相補配列に由来するプローブを含む。
上記の本発明のヌクレオチドならびに細胞株BOIIB2から得られ得るBOIIB2をコードするヌクレオチド配列は、例えば組換え法による抗体および他の抗原結合断片の作製に有用である。組換え抗体および抗体断片の作製のための方法、例えば、クローニングならびに抗体遺伝子の操作、scFvおよび他の抗原結合断片の作製が、当該技術分野において利用可能である。したがって、さらなる一態様は、FVIII結合の作製方法、および好ましくは、組換え手法により本発明のヌクレオチド配列の1つ以上を含むFVIII−阻害性の分子に関する。
さらに、本発明のまた別の態様は、凝固がその病態に寄与する疾患の予防または処置のための医薬組成物を提供する。かかる凝固障害の例としては、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞、SIRSと呼ばれる障害(全身性炎症反応症候群)が挙げられる。
具体的な一実施形態によれば、本明細書に記載の抗体ならびにその抗原結合断片および誘導体は、凝固障害の処置および/または予防に特に適している。さらなる本発明の特別な一実施形態は、SIRS、より特別には、急性膵炎、虚血、多発外傷および組織損傷、出血性ショック、免疫媒介型臓器損傷および感染後のSIRSの予防および/または処置のための本発明の抗体および抗体断片の使用に関する。
本発明の重要な態様は、抗体、その断片および誘導体によって上記の疾患の処置および/または予防が、凝固障害の他の処置に起因する、または該処置では予測される副作用なく、可能になることである。
本発明の特別な一実施形態は、活性成分としてモノクローナル抗体BOIIB2またはその抗原結合断片もしくは誘導体を、薬学的に許容され得る担体との混合状態で含む医薬
組成物に関する。本発明の医薬組成物は、前記モノクローナル抗体、断片または誘導体の治療有効量(例えば、処置または予防方法に関して以下に示すものなど)を含むものであるのがよい。
また本発明の別の態様によれば、本発明によるFVIIIのA2ドメインに対する2つの異なる抗体または抗原結合その断片もしくは誘導体の組合せを含む医薬組成物が提供される。より特別には、該2つの異なる抗体はともに、FVIIIの結合に関して互いに競合する。具体的な実施形態において、該2つの抗体は、同じエピトープ、より特別には、抗体BOIIB2のエピトープに結合するが、阻害活性(例えば、親和性の結果として)が異なる。同じ抗原に関して競合し得るが異なる阻害活性を有する2つの抗体を異なる比率で混合することにより、抗体または抗原結合断片の各々の阻害活性の範囲内の阻害活性を有する抗体混合物の作製が可能になる。具体的な一実施形態によれば、該2つの抗体の一方は、抗体BOIIB2またはその抗原結合断片である。
また本発明の別の態様によれば、本発明の抗体または抗体断片もしくは誘導体および別の抗凝固剤を含む医薬組成物が提供される。好適な他の抗凝固製剤ならびにその通常の投薬量は、該製剤が属する類型に依存し、当業者によく知られている。
本発明の医薬組成物は、処置対象の疾患に対して活性な他の化合物/薬物の治療有効量をさらに含むものであり得る。
本発明の医薬組成物における使用に好適な医薬用担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版(1980)に記載されており、その製剤は当業者によく知られている。これらとしては、任意のあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(例えば、糖類または塩化ナトリウム)などが挙げられる。組成物中のモノクローナル抗体活性成分の作用持続時間を制御するため、さらなる成分を含めてもよい。したがって、制御放出組成物は、適切なポリマー担体、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミンなどを選択することにより得られ得る。薬物放出速度および作用持続時間はまた、モノクローナル抗体活性成分を、高分子物質、例えば、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸メチルなどおよびその他の上記のポリマーの粒子、例えばマイクロカプセル内に組み込むことによっても制御され得る。かかる方法としては、リポソーム、ミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセルなどのコロイド薬物送達系が挙げられる。投与経路に応じて、活性成分を含む医薬組成物には、保護コーティング剤が必要とされ得る。注射用途に適した医薬形態としては、滅菌水性の液剤または分散剤および即時調製のための滅菌粉剤が挙げられる。したがって、典型的な担体としては、生体適合性水性バッファー、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびその混合物が挙げられる。
本発明はまた、医薬としてのリガンド、すなわち本発明のモノクローナル抗体の使用を提供する。より好ましくは、本発明において使用される医薬は、凝固障害の予防および/または処置するための一手段である。前記リガンドは、患者に対して当該技術分野でよく知られた任意の手段、すなわち、経口、鼻腔内、皮下、筋肉内、皮内、静脈内、動脈内、非経口またはカテーテル法によって提供され得る。
したがって、本発明は、凝固障害の処置および/または予防方法であって、かかる処置または予防を必要とする哺乳動物に、本明細書において上記に開示したものなどのリガンドの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、前記リガンドは、細
胞株BOIIB2から得られ得るIgGアイソタイプのヒトモノクローナル抗体または抗原結合断片Fab、Fab’もしくはF(ab’)、相補性決定領域(CDR)、可溶性もしくは膜固定単鎖可変断片もしくは一部分(scFv)、単一の可変ドメイン、あるいはこれらの要素の任意の誘導体または組合せである。
本発明のまた別の態様は、ヒト試料におけるFVIIIの免疫学的検出のための本発明のモノクローナル抗体および抗原結合断片の使用、ならびにかかる検出に適したキットの構成要素としての使用に関する。抗原の免疫学的検出方法は、当該技術分野で知られており、限定されないが、ELISAおよびRIAおよび免疫組織化学的方法が挙げられる。FVIII抗原に対する本発明の抗体の結合は、例えば、標識された抗ヒト抗体によって間接的に検出され得る。あるいはまた、抗体またはその断片を直接標識してもよい。
本発明のまた別の態様は、診断用ツールとしての本発明の抗FVIII抗体およびその抗原結合断片の使用に関する。本発明の抗体または抗体断片は、病理学的状態の診断において、または正常状態では第VIII因子がどのようなレベルであるかを、例えば、本発明の抗体または抗原結合断片がインビボで標識され、可視化される画像形成手法により確立することにおいて使用され得る。本発明の抗体の結合をインビボで画像化するためのさまざまな標識が当該技術分野で知られており、限定されないが、光学的(例えば、蛍光)、金属および磁性標識が挙げられ、これらは、各々、特定の(放射線および)検出装置を必要とする。本発明のこの態様の特別な一実施形態は、疾患の予後の予測および処置レジメンの決定における本発明の抗体の使用に関する。
本発明のまた別の態様は、FVIIIを阻害する化合物のスクリーニングのため、または好都合な特性を有する化合物を同定するための本発明の抗体の使用に関する。試験対象の化合物と本発明の抗体または断片との併用投与により、該化合物が、本発明の抗体または断片単独の投与時に観察される効果に対して付加的な効果を有するか否かを確認することが可能になる。他の態様、例えば、抗FVIII抗体との組合せでの化合物の反対効果または毒性などもまたこのようにして測定され得る。
BOIIB2が結合するエピトープまたは対応する核酸配列は、種々の目的、例えば、モノクローナルIgG抗体を産生させるために哺乳動物の免疫処置のために使用され得るか、またはFVIIIのA2ドメイン上のBOIIB2のエピトープに特異的に結合する阻害性FVIII分子の検出のためのアッセイにおいて使用され得る。
本発明を、以下の実施例によってさらに記載する。実施例は、例示の目的のために示すにすぎない。
以下の実施例により、ヒト抗A2モノクローナル抗体の作製、特性化および使用の説明を提供する。
実施例1:ヒト抗A2モノクローナル抗体の作製
インヒビターを有する血友病A患者からインフォームドコンセントを得た後、末梢静脈血を採取した。末梢血単核球(PBMC)をFicoll−Hypaque密度遠心分離によって標準的な方法を用いて調製した。すべての細胞培養は、10%IgG無含有ウマ血清、1.5g/lグルコース、4mM L−グルタミン、1%のCaryoserおよび80mg/lのGeomycinを補給したダルベッコMEM/Nutrient Mix F12(Life Technologies)中で行なった。
PBMCを、以下のようにして不死化した。10個のPBMCを2mlの培養培地中
に再懸濁し、200μlのエプスタイン・バールウイルス(EBV)上清み(B95−8菌株)(14)とともに2時間37℃でインキュベートした。次いで、細胞を300〜24,000細胞/ウェルで、マイトマイシンC(50μg/ml)で1時間37℃にて処理した3T6−TRAP細胞を入れた96ウェルマウクロタイタープレート(Nunc,Roskilde,Denmark)内に播種し、培養ウェル内に、PBMCのEBV感染前の日に播種した。3T6細胞株は、ヒトCD40リガンド用の発現ベクター(3T6−TRAP)で安定的にトランスフェクトされたものであった。150μlの培養上清みを、1週間ごとに新鮮培養培地と交換した。個々のウェル内の成長速度に応じて4〜8週間後、培養上清みをELISAにおいて、抗fVIII抗体の存在について試験した。陽性細胞株を24ウェルプレートに移し、直ちに、60細胞/96ウェルプレートでフィーダー細胞なしでクローニングした。
したがって、FVIIIに対する抗体は、上清みを、FVIIIまたはフォン・ビルブラント因子(vWF)との複合体のFVIIIでコートしたポリスチレンプレートと反応させることにより同定される。特異的抗体の結合は、酵素に連結させた抗ヒトIgG試薬の添加によって検出される。該酵素の存在下で着色化合物に変換される酵素基質の添加により、特異的抗体の検出が可能になる。かかる方法は、固相酵素免疫検定法(ELISA)と呼ばれ、当業者によく知られている。詳細な記載は、Current Protocols in Immunology,第2章,John Wiley & Sons,Inc,1994(15)を参照にするとよい。
次いで、抗FVIII抗体を産生するB細胞を拡大培養し、限定希釈によってクローニングする。クローニングを行なうための方法は、例えば、Current Protocols in Immunology,第2章,John Wiley & Sons,Inc,1994(15)に記載されている。
所望の特性、すなわち、FVIIIの凝固促進活性を阻害する能力を有する抗FVIII抗体は、市販の発色アッセイキットを製造業者の推奨に従って用いて同定される。充分な親和性を有するFVIII機能を阻害する抗体を選択する。図1は、FVIIIのA2ドメインに特異的なBOIIB2と呼ばれる抗体の生成を示す。
FVIIIに対して充分な結合アビディティを有し、FVIII機能を阻害する抗体を、次いで、バルク培養にて産生させ、アフィニティクロマトグラフィーによって当業者によく知られた方法を用いて精製する。
あるいはまた、必要とされる特性を有する抗体は、動物の意図的な免疫処置によって生成させ得る。したがって、マウスにヒトFVIIIをアジュバントと注射する。次いで、モノクローナル抗ヒトFVIII抗体は、脾臓リンパ球とマウス骨髄腫細胞株との融合によって得られる。抗FVIII抗体を生成する細胞培養上清みを同定し、限定希釈によってクローン化する。かかる方法の一般的な記載は、Current Protocols
in Immunology,第2章,John Wiley & Sons,Inc,1994(Current Protocols in Immunology(1994)第2章,編集Coligan JE,Kruisbeek AM,Margulies DH,Shevach EM,Strober W,Coico R,National Institute of Health,John Wiley & Sons,Inc)を見るとよい。所望の特性を有するインヒビターのさらなる選択を、上記のようにして行なう。
マウスにおいて生成された抗体を、次いでヒト化する。したがって、マウスの重鎖および軽鎖の可変部分の配列を、ヒト免疫グロブリン可変領域とアラインメントし、フレーム
ワーク領域内で最大の相同性を有するヒト抗体を同定する。ヒト化可変領域をコードするDNA断片を、次いで、PCRに基づくCDRグラフティング方法によって、例えば、Satoら(Sato K,ら,1993,Cancer Research 53:851−85616)に記載のようにして合成する。ヒト化抗体の重鎖可変部分をコードする最終PCR産物を消化し、第1の発現プラスミド内のヒトCγ−1遺伝子の上流にサブクローニングする。最終構築物のヒト化軽鎖可変領域を、第2の発現プラスミド内のヒトCκ遺伝子の上流内に挿入する。該2つの構築物を、COS細胞発現系内にコトランスフェクトする。これらの方法の一般的な記載は、Satoら(上記)を見るとよい。
実施例2:抗A2抗体の特異性および親和性の特性化
A2ドメインに対する抗体の特異性を、特異性に関して、既報(Benhidaら,調製の原稿)のような転写−翻訳系の組合せをウサギ網状赤血球とともに用いることにより、さらにキャラクタライズする。簡単には、A2ドメインの種々の断片を含有するプラスミドのライブラリーを構築する。
7.2Kbの完全長FVIII cDNAを含有するプラスミド構築物pSP64−FVIII(ATCC,Rockville,MD)を鋳型として使用し、PCRによってあらゆる断片を作製した。変異または欠失を有するcDNA断片を、Splicing by Overlap Extension−PCR(SOE−PCR)(Horton
RMおよびPease LR.,1991,In:McPherson MJ編,Directed Mutagenesis:A Practical Approach.Oxford:IRL Press:217−228:Jacquemin M,ら 2000,Blood.Aug l:96(3):958−65)によって作製した。15アミノ酸未満のFVIIIの断片には、特異的抗タグ抗体による認識のためのユビキチンおよび/またはT7を含むタグ配列を、S標識のためのシステインの相補配列とともに付加した。ポリペプチドコードFVIII断片を、TNTカップリングReticulocyte Lysate Systems(Promega)において製造業者の使用説明書に従って作製した。
転写された遺伝子の免疫沈降を、以下のようにして行なった。特異的抗体を含有する試料の希釈物を、40μlのプロテインAセファロース(Pharmacia)に500μlの適切なバッファーにて混合し、混合物を1時間4℃で静かに振とうした。未結合抗体を、一連の遠心分離および洗浄によって除去した。抗体−プロテインAセファロースの複合体を、3μlのインビトロL−(35S)メチオニン標識FVIIIポリペプチドを補給した300μlのバッファー中に再懸濁し、4℃で2時間インキュベーションする。結合抗原/抗体複合体をビーズから、3分間30μlの変性試料バッファー中で煮沸することによって溶出し、放射能をカウントする。第2のアリコートをSDS−PAGEによって解析し、オートラジオグラフィーによって可視化する。
より詳細には、BOIIB2のエピトープの決定のため、FVIIIのA2ドメインの一部分の野生型配列に対応するアミノ酸残基379〜546をコードするポリペプチドを、TnTカップリングReticulocyte Lysate Systems(Promega,Buckingham,London,UK)において製造業者の使用説明書に従って作製する。この系は、ウサギ網状赤血球によってもたらされる転写−翻訳の組合せを含む。さらに、変異R484A;Y487A;R489AおよびP492Aを含む379〜546をコードするポリペプチド、ならびに461〜531をコードするポリペプチドもまた作製した。反応混合物中への35S−メチオニンの添加によって、ポリペプチドを放射性標識する。BOIIB2抗体をプロテイン−Aセファロースとともにインキュベートし、洗浄し、再懸濁した後、放射性標識したポリペプチドの1つを添加する。この懸濁液を90分間室温でインキュベートし、洗浄し、標識ポリペプチドをセファロース
ビーズから、ドデシル硫酸ナトリウム含有バッファーの添加によって溶出する。標識ポリペプチドの存在(シンチレーションカウンティングによって評価)は、BOIIB2が、かかるペプチド上への結合部位を有することを示す。
図2は、抗体BOIIB2のかかる実験の結果を示す。残基389〜510を含む領域内の結合部位は、A2ドメイン内に同定されている。しかしながら、エピトープのさらなる詳細な表示(delineation)は、かかる断片のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかのトリミング(trimming off)によって、抗体結合が急速に破壊されるため、困難であった。したがって、本発明者らは、単一の変異を主な推定結合部位、すなわち484〜509内に導入する段階的なアプローチで進めた。図2は、かかる部位内の単一の変異によって抗体結合が破壊されることを示す。さらに、単一の変異を、389〜391(Lubin IMら 1997,J Biol Chem.28:272(48):30191−519)内に位置する3グルタミン酸の配列内に導入すると、これによっても、結合の低下がもたらされた(データ示さず)。したがって、結合部位は484〜509アミノ酸配列内に位置するが、効率的な抗体結合には、少し離れて3グルタミン酸が必要とされる結論付けられた。
抗体親和性は、表面プラズモン共鳴系(O’Shanessy DJ,ら 1993,Anal Biochem 212:457−462)を用いて計算される。したがって、FVIIIとhu−mAb間のリアルタイムの動的相互作用を、Pharmacia Biosensor BIAcoreTM機器(Pharmacia Biosensor AB)を用いて解析した。精製BOIIB2(10mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)中20μg/ml)を、CM5センサーチップの活性化表面上に、製造業者の使用説明書に従って固定化した。すべての結合実験は、HBS中、10μl/分の一定流速で行なった。FVIII含有HBSをECR固定化センサーチップの表面上に種々の濃度で注入した。各サイクルの最後に、表面をHCl(pH2)で36秒間洗い流すことにより再生させた。会合および解離の速度定数を、BIA評価ソフトウェアパッケージを用い、1つまたは2つの固定化しリガンドに対する1つの被検物質の結合を想定したモデルに従って決定した。
BOIIB2は、kdissが1×10−8−1であり、kassが1×10−1−1であると評価された。
実施例3:BOIIB2抗体の配列決定
EBV不死化ヒトB細胞株からのRNAの単離を、TRIzol試薬を製造業者の使用説明書に従って用いて行なった(Life Technologies)。第1鎖cDNA合成用のSuperscript予備増幅系を用いてcDNAを合成した。重鎖可変領域遺伝子(V)をコードするcDNAを、Vファミリーのリーダー配列およびCγ領域の第1エキソンに特異的なプライマーを用いたPCRによって既報(Jacquemin M,ら 2000,Blood 1:95(1):156−63)のとおりに増幅した。アニーリングは、60℃で40PCRサイクル行なった。適切な大きさ(460bp)のPCR産物を1.5%アガロースゲルから単離し、TA Cloning Kit(Invitrogen BV,Leek,The Netherlands)を用いてクローニングした。目的のV遺伝子ファミリーに対応するプライマーの組を用いたPCRスクリーニングを、無作為に選択したコロニーの培養物において行なった。陽性コロニー由来のプラスミドDNAを、Wizard Plus Minipreps(Promega,Menlo Park,CA)を用いて単離し、Sequenase(United States Biochemical,Cleveland,OH)を製造業者の使用説明書に従って用いて両方向で配列決定した。可変遺伝子配列の解析を、「V BASE Sequence Directory」(Tomlinsonら,MRC Ce
ntre for protein Engineering,Cambridge,UK)を用いて行なった。
BOIIB2 V遺伝子は、VH4グループに属し、DP−71に最も相同である。Jセグメントは、JH6cに最も相同であった。クローニングされた軽鎖遺伝子の配列決定により、VはVκMであり、JセグメントはJκ5であると同定された(図3)。図3は、リーダーペプチド配列を有する抗体の完全な配列を示す。本発明はまた、リーダー配列をもたない抗体に関する。得られた配列は以下の通りであった。
実施例4:モノクローナル抗体の断片または誘導体の作製
モノクローナル抗体または誘導体の断片は、本発明の目的に使用され得る。充分報告された方法(Stanworth DおよびTurner MW,1978,第6章,Immunochemistry,Handbook of Experimental Immunologyの第1巻,編集Weir DM,Blackwell Scientific Publications)を用いた抗体のタンパク質分解的消化により、F(ab’)またはFab断片のいずれかが生成する。かかる断片は、抗体結合部位を含み、親抗体のいくつかの特性、例えば、補体活性化またはFcγ受容体への結合能力などが失われている。
抗体の可溶性または膜固定単鎖可変部分が得られ得る。ヒト重鎖および軽鎖の可変部分のDNA配列を、別々の反応で増幅し、TAクローニングベクター内に挿入する。15−アミノ酸リンカー配列(例えば、(Gly4 Ser)3など)をVHとVLの間に、2工程PCRによって挿入する。得られた断片を、scFv発現用の適当なベクター内に、可溶性またはファージディスプレイポリペプチドとして挿入する。かかる方法の記載は、Gillilandら(1996,Tissue Antigens 47:1−20)を見るとよい。
抗体の超可変領域の全部または一部の代表的なペプチドは、applied biosystem合成装置または関連手法を用いた合成によって得られ得る。かかるペプチドは、単独または組合せで、親抗体のものと類似した特性を発揮する。
あるいはまた、抗体のCDR領域の1以上、より特別には2つ以上を含むペプチドが、組換え法によって作製され得る。
BOIIB2に相同な抗体、例えば、80%相同性を有する抗体、およびFVIIIに対して同じかより高い親和性を有する抗体は、当該技術分野で知られた方法によって得られ得る。アミノ酸配列内、より特別には可変領域内またはさらにより特別にはCDR内の変異が、標準的な方法によって作製され得る。この後、親和性アッセイにおける得られた変異型の親和性の試験、阻害能力の試験、および本明細書に記載の方法により、エピトープが同じ状態で維持されているかか否かの試験が行なわれ得る。このようにして、修飾アミノ酸配列を有し、BOIIB2に相同な抗体が得られ得る。あるいはまた、CDR間のフレームワーク領域内の変異が、標準的な方法によって作製され得る。この後、得られ変異型の親和性および阻害能力が影響されたか否かの確認が行なわれ得る。
実施例5:本発明の抗体の使用
・FVIII重鎖の3Dコンホメーションの確立
C2ドメインは、これまでに結晶化されたFVIIIの唯一のドメインである。しかしながら、モデル構造の確認には、C2ドメインと特異的抗体との共結晶が必要とされた。したがって、C2ドメイン構造上に位置する推定リン脂質結合部位を、これらの部位を認識し、リン脂質への完全体FVIII分子の結合を阻害する抗体の結合により確認した。
かかる部位内の単一のアミノ酸置換によって、その機能的役割がさらに確認された。
抗体との結晶を形成するための実験条件は、充分確立されている(例えば、Spiegel PCら 2001,Blood.JuI l:98(l):13−9を参照のこと)。充分な親和性の抗体とのA2の共沈殿により、適切な開始条件の決定が大きく助長される。
・FVIII不活化の機構
FVIIIが不活化される主な機構の1つは、A1およびA3−C1−C2で構成されたヘテロダイマーに非共有結合しているA2ドメインの解離によるものである(26)。A2ドメインを認識する抗体は、A2の解離を加速することによりFVIII機能を阻害し得る。A2の生理学的解離をもたらす生化学的事象は充分確立されている(Jenkins PVら 2004,Biochemistry.May 4:43(17):5094−101)。
FVIIIのA2ドメインの480〜509領域に対する抗体によって機能的活性が阻害され得る別の機構は、FIXaの結合の干渉によるものである。後者は、FVIII上の同じ領域に正確にマッピングされる低親和性結合部位を有する。したがって、BOIIB2などの抗体の結合により、充分なFIXa酵素活性に必要とされるコンホメーションの変化が抑制され得る。
図1は、機能的アッセイにおける、BOIIB2がFVIIIを阻害する能力の評価の結果を示す。
機能的アッセイとして、本発明者らは、トロンビン(trombin)活性化FVIIIが、第X因子の第Xa因子への変換において第IXa因子の補因子としての機能を果たす発色アッセイを使用した。簡単には、recFVIIIをPBS−BSA溶液中に希釈した(1IU/ml)溶液20μlを、等容量のBOIIB2の連続希釈物(同じPBS−BSA溶液中)と混合し(X軸(axe))、1時間37℃でインキュベートした。次いで、20μlの混合物を3分間室温にて、マイクロタイターウェル内で、20μlの化学反応物(reactif)1(第X因子)および20μlの化学反応物2(第IXa因子)とともにインキュベートした後、100μlの化学反応物3(発色基質および停止バッファー)を添加した。対照実験には、特異的抗体なしで、または同じ濃度の無関連抗体とともにインキュベートしたrecFVIIIを含めた。基質着色の密度を405nmで直接測定し、450nmを参照とする。阻害割合(Y軸)を、陽性対照recFVIII
1IU/mlに関して計算する。曲線は、BOIIB2が、0.1μg/mlの濃度でFVIII機能を99%まで阻害することを示した。
・FVIIIクリアランス機構
FVIIIが循環系から排出される機構の1つは、低密度リポタンパク質受容体ファミリー(LPR)への結合によるものである。LPR受容体に対して少なくとも2つの結合部位が、FVIII分子のA2およびC2ドメインにおいてマッピングされた。A2ドメインにマッピングされた部位は、単一のアミノ酸置換を特徴とし、本発明における抗体BOIIB2で同定された抗体結合部位と重複する配列484〜510に対応することがわかった。したがって、BOIIB2を用い、FVIIIの全クリアランスにおけるこのクリアランス機構の重要性が確立され得る。
したがって、血友病Aマウスに、2IUの組換えFVIIIまたは2IUの組換えFVIIIをBOIIB2とともにプレインキュベートすることにより作製された混合物のいずれかをIV注射する。循環系からのFVIIIのクリアランス率を、マウスから一定の時間間隔で採血し、残留FVIII活性を抗原特異的ELISAによって測定することに
より確立する。
実施例6:BOIIB2抗体の存在下での血小板高含有血漿(PRP)におけるトロンビン生成の評価
クエン酸バッファー(1容量の129mMクエン酸ナトリウムに対して9容量の血液)を入れたチューブ内に血液を採取する。チューブを15分間900rpmで遠心機にかける。遠心分離後、PRPをピペッティングにより取り出し、収集する。血小板計数をCoulter Counterにて測定する。血小板をあまり含まない血漿を用い、PRPを300000血小板/μlに調整する。80μlのPRPを5分間、BOIIB2抗体(3μg/ml)+SynthAsilビーズ(Instrumentation Laboratory)1/200またはInnovin(Dade Behring)1/7500を含有する20μlのHepes Buffer(Hepes 20mM、NaCl 140mM、BSA 5mg/ml、pH7.35)とともにインキュベートする。負の電荷を有するSynthAsilビーズにより凝固の内因性経路の活性化が可能になり、一方、組織因子のみを含有するInnovinにより、外因性経路の活性化が可能になる。純粋なDMSO中に可溶化させ、発色(developing)溶液(Hepes 20mM、BSA 60mg/ml、pH7.35、CaC12 1m)中に希釈した20μlの基質(Z−Gly−Gly−Arg−AMC)(Bachem;Bubbendorf,Switzerland)を、種々の試料に添加する。トロンビンにより分割されると、これは、蛍光AMC(7−アミノ−4−メチルクマリン)を放出する。3分後、ThrombinoscopeTMにおいて390nm励起/460mm発光フィルターセットで吸光度を読む。
図5および6は、BOIIB2が、凝固の内因性経路ならびに外因性経路によってトロンビン生成を充分に阻害することを示す。
実施例7:抗体BOIIB2と競合する抗体としての抗体の同定
FVIIIに対して指向される抗体は、従来のモノクローナル抗体手法によって作製されるか、またはインヒビターを有する血友病A患者から得られるかのいずれかである。
第VIII因子結合抗体が抗体BIIIB2と競合するか否かを確認するため、以下の方法を使用する。ポリスチレンマイクロタイター(microtitration)プレートを、一晩4℃で、2μg/mlの50μLの抗体とともにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でインキュベートする。次いで、プレートをPBS−Tweenで4回洗浄する。ビオチン化組換えFVIII(0.5マイクログラム/ml)を含有するTris−BSA−Tweenを、該抗体または種々の濃度のBOIIB2と混合した後、抗体コートプレートに添加する。4℃で2時間のインキュベーション期間後、プレートを4回洗浄し、1マイクログラム/mlのアビジンペルオキシダーゼ(Sigma)の添加によって、結合ビオチン化FVIIIを検出する。室温で30分後、プレートを再度洗浄し、100μLのOPDを補給する。得られたODを、Emax Microplate Reader(Molecular Devices,Menlo Park,Ca)にて490nmで読み取る。
上記の実験における使用のためのビオチン化FVIIIは、Hepesバッファー(Hepes 10mM、NaCl 0.15M、CaC12 10mM、pH 8.5)中で透析した組換えFVIII(100マイクログラム/ml)を、1マイクログラム/mlのスルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce)とともに2時間室温でインキュベートすることにより調製する。次いで、調製物をHepes バッファーに対して透析し、−80℃で保存する。
図1は、機能的アッセイにおいてBOIIB2がFVIIIを阻害する能力の評価である。阻害の割合(Y軸)は、陽性対照recFVIII 1IU/mlに関して計算したものである。曲線は、BOIIB2が、0.1μg/mlの濃度でFVIII機能を99%まで阻害することを示す。 図2は、BOIIB2エピトープマッピングである。A2ドメイン残基379〜546(「379〜546」)、単一の変異を含むA2ドメイン残基379〜546(「379〜546Mut」)およびA2ドメイン残基461〜531(「461〜531」)ならびに対照Ig断片(「pIgタグ)(各々、cmyc9E10でタグ化)に対する抗体BoIIB2(「BoIIB2)、抗cmyc9E10抗体(「9E10」)およびヒト血漿(健常ドナーから採取:「ヒト血漿」)の結合。結果は2連の平均であり、SDを示す。 図3は、可変領域および定常領域ならびにCDRの部位の一般同定を伴うヒト抗体(BOIIB2)配列(ヌクレオチドおよびアミノ酸配列)である。 図4は、第VIII因子のA2ドメインにおけるBOIIB2のエピトープの同定である。 図5は、本明細書において実施例6に記載の、BOIIB2抗体の存在下での凝固の内因性経路の活性化の際の血小板高含有血漿(PRP)におけるトロンビン生成の評価である。トロンビン基質ペプチドからの蛍光AMCの放出の検出に基づくPRPにおけるトロンビン活性を、SynthAsil 1/200単独およびSynthAsil 1/200+3μg/mlおよび抗体BOIIB2の存在下で測定した。 図6は、さらに、BOIIB2抗体の存在下での凝固の外因性経路の活性化の際の血小板高含有血漿(PRP)におけるトロンビン生成の評価である。トロンビン基質ペプチドからの蛍光AMCの放出の検出に基づくPRPにおけるトロンビン活性を、Innovin 1/7500単独およびInnovin 1/7500+3μg/mlの抗体BOIIB2の存在下で測定した。

Claims (35)

  1. FVIIIのA2ドメインに特異的に結合する、IgGアイソタイプのヒトモノクローナル抗体。
  2. FVIIIの凝固促進活性を阻害する、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体。
  3. 抗体の可変領域の重鎖がそのCDR内に配列番号5〜7に対応する配列を含み、軽鎖可変領域がそのCDR内に配列番号8〜10の配列を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のヒトモノクローナル抗体。
  4. 抗体の可変領域の重鎖が配列番号2の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号4の配列を含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体。
  5. BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託された細胞株によって産生されるBOIIB2である、請求項1〜4いずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体。
  6. Fab、Fab’またはF(ab’)2、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)の組合せ、可溶性もしくは膜固定単鎖可変部分、または単一の可変ドメインの群から選択される、請求項1〜5いずれか1項に記載の抗体の抗原結合断片。
  7. FVIIIへの結合に関して、BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託された細胞株によって産生される抗体BOIIB2と競合する抗体。
  8. 配列番号11の配列に特異的に結合する、請求項7に記載の抗体。
  9. ヒト抗体、ラクダ抗体、サメ抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項7または8に記載の抗体。
  10. モノクローナル抗体である、請求項7〜9いずれか1項に記載の抗体。
  11. 抗体の可変領域の重鎖が配列番号5〜7に対応する配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号8〜10の配列を含むことを特徴とする、請求項7〜9いずれか1項に記載の抗体。
  12. 抗体の可変領域の重鎖が配列番号2の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号4の配列を含むことを特徴とする、請求項11に記載の抗体。
  13. BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託された細胞株によって産生されるヒトモノクローナル抗体BOIIB2である、請求項7〜12いずれか1項に記載の抗体。
  14. Fab、Fab’またはF(ab’)2、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)の組合せ、可溶性もしくは膜固定単鎖可変部分、または単一の可変ドメインの群から選択される、請求項7〜13いずれか1項に記載の抗体の抗原結合断片。
  15. 配列番号6および配列番号7の配列または配列番号9および配列番号10の配列を含む、請求項14に記載の抗原結合断片。
  16. 請求項1〜15いずれか1項に記載の抗体を産生する細胞株。
  17. BCCMに受託番号LMBP 6422CBで寄託されたBOIIB2という名称の抗体を産生する、請求項16に記載の細胞株。
  18. 抗A2インヒビター抗体の産生または活性を阻止および/または抑制する化合物の同定における、請求項1〜5もしくは請求項7〜13いずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
  19. 診断用ツールとしての請求項1〜5もしくは請求項7〜13いずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
  20. ヒト試料におけるFIIIの免疫学的検出のための請求項1〜5もしくは請求項7〜13いずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
  21. FVIII活性を阻害する化合物のスクリーニングのための請求項1〜5もしくは請求項7〜13いずれか1項に記載の抗体または/およびその抗原結合断片の使用。
  22. 哺乳動物における凝固障害の予防または処置の医薬の製造のための、請求項1〜5もしくは請求項7〜13いずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
  23. 活性成分として請求項1〜5もしくは請求項7〜13いずれか1項に記載のFVIIIに対する抗体、または請求項6、14もしくは15いずれか1項に記載の抗原結合断片を、薬学的に許容され得る担体との混合状態で含む、哺乳動物における凝固障害の予防または処置のための医薬組成物。
  24. 前記抗原結合断片が配列番号5〜10の群から選択される少なくとも2つのCDRを含む、請求項23に記載の医薬組成物。
  25. 配列番号5〜配列番号10で表されるCDRから選択される少なくとも2つのCDRを含む抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド。
  26. 配列番号2に示されるアミノ酸重鎖可変領域をコードする配列を含む、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
  27. 配列番号4に示されるアミノ酸軽鎖可変領域をコードする配列を含む、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
  28. 哺乳動物における凝固障害の処置および/または予防方法であって、かかる処置または予防を必要とする哺乳動物に、請求項1〜5もしくは請求項7〜13いずれか1項に記載の抗体、または請求項6、14もしくは15いずれか1項に記載の抗原結合断片から選択される活性成分の治療有効量を投与することを含む、方法。
  29. 凝固障害が、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞およびSIRSと呼ばれる障害を含む群から選択される、請求項28に記載の方法。
  30. ・まず、記憶IgG担持B細胞を血友病患者のPBMCから調製する工程
    ・続いて、例えばトランスフェクト細胞株における場合のように、固定化CD40リガンドを用いてCD40受容体による記憶B細胞の活性化を行ない、CD40と交差反応させる工程
    ・EBVを添加して該細胞株を不死化させる工程
    ・このようにして得られる該細胞株によって産生されるモノクローナル抗体を得る工程を含む、IgGアイソタイプのヒトモノクローナル抗体の調製方法。
  31. FVIII阻害能力を有する第VIII因子のリガンドのスクリーニングのための配列番号11の配列を含むペプチドの使用。
  32. 配列番号1、3および5〜10からなる群より選択される、ペプチドをコードする組換え発現ベクター。
  33. 細菌、酵母、植物、哺乳動物またはウイルス系の発現ベクターである、請求項32に記載の組換え発現ベクター。
  34. 請求項32または33に記載のベクターを含む組換え細胞。
  35. ヒト細胞である請求項34に記載の組換え細胞。
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