JP2012103312A - 累進屈折力レンズ及びその設計方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】装用感が良好な累進屈折力レンズを提供すること。
【解決手段】遠用作業距離を視認するための遠用部1と、近用作業距離を視認するための近用部2と、これらの遠用部1と近用部2との間に設けられた中間部3とを備える。中間瞳孔間距離MPDに基づいて設定された中間内寄せ量MLの位置Pに、中間作業距離を見るために必要な中間位置加入度MFを遠用部1と近用部2とにそれぞれ設定される屈折力以外に付与する。そのため、中間部3を通して視認する際に、視野の中に収差が入らず、装用感が良好となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、遠用作業距離を視認するための遠用部と、近用作業距離を視認するための近用部と、これらの遠用部と近用部との間に設けられた中間部とを備えた累進屈折力レンズ及びその設計方法に関する。
眼鏡レンズには単焦点レンズの他に、累進屈折力レンズがある。
この累進屈折力レンズとして、図7(A)に示される通り、遠用部1と、近用部2と、これらの遠用部1と近用部2との間に設けられた中間部3と、この中間部3の両側に設けられた中間側方部4とを備えた非球面レンズがある。
遠用部1、中間部3及び近用部2にかけて主子午線Aが設定される。主子午線Aは遠用部1ではほぼ中央部に上下に沿って設けられ、中間部3では、鼻側に向けて傾斜するように設けられ、近用部2では、上下に延びて設けられている。近用部2では、主子午線Aは近距離を見るときの輻輳により鼻側に偏寄している。
主子午線Aの累進開始点Sと累進終了点Eとの間は加入度が連続して変化した累進面とされる。この累進開始点Sと累進終了点Eとの間の上下方向の長さが累進帯長であり、上下方向と直交する左右方向に沿った長さが内寄せ量Iである。
図7(B)に示される通り、主子午線A上のレンズの度数は、遠用部1から累進開始点Sまでが度数D1であり、累進開始点Sから累進終了点Eにかけて度数D1からD2に増加し、累進終了点Eから近用部2の下部にかけて度数がD2とされる。
さらに、従来の累進屈折力レンズの設計方法として、矢状面の偏移量を求め、近方視の位置を想定し、決めた近方視によって、遠方視から近方視までの経線を変移させて一対の累進焦点眼鏡レンズを設計する方法(特許文献1)や、加齢とともに生じる近接視距離の変化(減少)を考慮に入れた累進屈折力レンズを設計するために、中間視距離区域と近接視区域とに位置する主経線の位置を変化させる方法(特許文献2)や、さらには、レンズの幾何中心の上方位置に遠用度数測定位置を設け、レンズの幾何中心の水平方向にアイポイントを設け、レンズの幾何中心の下方かつ鼻側内方に近用度数測定位置を設け、これらの3つの位置を通ってレンズを鼻側部分と耳側部分とに分割する主注視線を設けた累進多焦点レンズの設計方法(特許文献3)がある。
特表2008−511033号公報 特開平9−179074号公報 特開平8−286156号公報
図7で示される例では、主子午線Aの位置は、累進開始点Sから累進終了点Eにかけて内寄せ量Iだけ変化するものであり、主子午線A上のレンズの度数は、遠用部1から累進開始点Sまでが度数D1であり、累進終了点Eから近用部2の下部にかけて度数がD2とされるものである。主子午線Aの位置は、中間部3の領域である累進開始点Sと累進終了点Eとは単純に直線で結ばれるものであり、そのため、主子午線A上のレンズの度数は累進開始点Sから累進終了点Eにかけて度数D1からD2に単純に変化するに過ぎない。
つまり、従来では、中間部3は積極的に視認する領域とは考えられていないので、この領域内での内寄せ量がレンズ設計上、積極的に考慮されておらず、装用感が十分ではないという課題がある。
特許文献1で示される従来例は、標準矢状面に対する装用者の近方視における矢状面の偏位を考慮し、左右のレンズにおいて、最適な経線(主子午線)を設定するものであるが遠方視の領域と近方視の領域との間の領域において、内寄せ量を考慮してレンズ設計するものではないので、図7の例と同じ課題を有する。
特許文献2で示される従来例は、中間視距離区域と近接視区域とに位置する主経線の位置を変化させるものであって、これらの区域に隣接する中間区域についてはレンズ設計上考慮されておらず、図7の例と同じ課題を有する。
特許文献3で示される従来例は、遠用度数測定位置、アイポイント位置、近用度数測定位置の3点の水平方向の配置については、右眼用左眼用とも、近見時の眼の輻輳作用に対応させるべく、遠用度数測定位置よりもアイポイント位置が鼻側に位置し、このアイポイント位置は近用度数測定位置よりさらに鼻側に位置するものであり、これらの3つの位置を通る1本の曲線を主注視線としているが、この曲線は、主注視線で分割された2つの面部分が主注視線を挟んで水平方向に非対称になるようにするためのものであり、中間領域に着目したものではないので、図7の例と同じ課題を有する。
本発明の目的は、装用感が良好な累進屈折力レンズ及びその設計方法を提供することにある。
本発明の累進屈折力レンズは、遠用作業距離を視認する遠用部と、近用作業距離を視認する近用部と、これらの遠用部と近用部との間に設けられた中間部とを備えた累進屈折力レンズであって、前記中間部に、前記遠用作業距離より小さく前記近用作業距離より大きな中間作業距離を見るために必要な中間位置加入度が、前記中間作業距離を視認した際の視線が前記累進屈折力レンズの眼球側面を通る位置である中間内寄せ量の位置に設定されることを特徴とする。
この構成の本発明では、中間瞳孔間距離に基づいて設定された中間内寄せ量の位置に、中間作業距離を視認する際の中間位置加入度を、遠用部と近用部とにそれぞれ設定される屈折力以外に付与するので、中間部を通して視認する際に、視野の中に収差が入らず、装用感が良好となる。なお、本発明において、遠用作業距離とは無限遠方を含む。
ここで、本発明では、左眼用の前記中間内寄せ量の位置と右眼用の前記中間内寄せ量の位置との距離である中間瞳孔間距離をMPDとし、前記遠用作業距離を視認した際の遠用瞳孔間距離をOPDとすると、前記中間内寄せ量MLを、ML=(OPD−MPD)÷2から求める構成とすることが好ましい。
この構成の本発明では、中間内寄せ量MLを算出するにあたり、レンズ設計をする上で求めることが多い遠用瞳孔間距離OPDを利用しているため、効率よく、レンズ設計を実施することができる。
さらに、必要とする調節力をFとし、前記中間作業距離をmlとし、調節や刺激のない場合であって生理的緊張下での調節状態を示す調節安静位での屈折力をmfとすると、前記中間位置加入度MFは、MF=F−mf=(1/ml)−mfから求める構成としてもよい。
この構成の本発明では、中間位置加入度MFを、中間作業距離mlの逆数(1/ml)から調節安静位での屈折力mfを引いて求める。調節安静位とは、どこを見るともなく目を休めているときにピントが合っており、調節や輻輳の刺激がない場合における生理的緊張下での調節状態を示すものであり、この調節安静位を前提として中間位置加入度MFを設定しているので、中間作業距離mlを見る場合に副交感神経を働かせず見ることができるため、疲労感の少ない累進屈折力レンズを設計できる。
本発明の累進屈折力レンズの設計方法は、前述の構成の累進屈折力レンズを設計する方法において、中間瞳孔間距離を求める工程と、この工程で求められた中間瞳孔間距離に基づいて中間内寄せ量を設定する工程と、この工程で設定された中間内寄せ量の設定位置において前記中間作業距離を見るために必要な中間位置加入度を設定する工程と、を備えたことを特徴とする。
この構成の本発明では、中間瞳孔間距離を求める工程において、例えば、50cm〜100cmの中間作業距離にパソコンやテレビのディスプレイ等の対象物を配置し、この対象物から装用者までの距離を中間作業距離とする。そして、中間作業距離に対する中間瞳孔間距離MPDを計算や、直接、装置により求める。この工程の後に、中間瞳孔間距離MPDに基づいて中間内寄せ量MLを計算で求め、その後、中間内寄せ量MLの位置において中間作業距離を見るために必要な中間位置加入度を設定する。
そのため、本発明では、装用感が良好となる累進屈折力レンズを合理的に設計する方法を提供することができる。
ここで、累進屈折力レンズの設計方法の本発明では、前記中間内寄せ量を規定する方向をxとし、この方向xと直交する方向をyとし、方向xと方向yとの原点Oを前記遠用部に設定される累進開始点とすると、前記中間位置加入度を設定するy方向の位置は、前記累進開始点と前記近用部に設定される累進終了点とに設定される平均度数変化と、前記累進開始点と前記累進終了点との位置との関係から求める構成が好ましい。
この構成の本発明では、中間位置加入度のx方向(座標)の位置を前述の手順で求め、中間位置加入度のy方向(座標)の位置を、累進開始点と累進終了点とに設定される平均度数変化と、累進開始点と累進終了点との位置との関係から求める。つまり、平均度数変化のグラフからx座標上の中間位置加入度の位置に対応するy座標上の位置を求め、このy座標の位置が中間位置加入度のy座標上の設定位置とする。そのため、本発明では、視野の中に収差が入らず、装用感がより良好なレンズを簡単な方法で設計することができる。
本発明の実施形態にかかる累進屈折力レンズを示すもので、(A)は正面図、(B)は平均度数変化と主子午線の位置との関係を示すグラフ。 遠用瞳孔間距離、近用瞳孔間距離及び中間瞳孔間距離を説明するための概略図。 中間内寄せ量の概略を説明するためのグラフであって、横軸がレンズの横方向位置を示し、縦軸がレンズの縦方向位置を示す。 前記実施形態において中間位置加入度を設定する位置を示すグラフ。 アイマークレコーダーを用いて視線を直接測定する方法を説明する概略図。 アイマークレコーダーを用いて視線を直接測定する方法を説明する概略図。 従来例の累進屈折力レンズを示すもので、(A)は正面図、(B)は平均度数変化と主子午線の位置との関係を示すグラフ。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態にかかる累進屈折力レンズを示す。
本実施形態の累進屈折力レンズは、図1(A)に示される通り、無限遠方を含む遠用作業距離を視認するための遠用部1と、近用作業距離を視認するための近用部2と、これらの遠用部1と近用部2との間に設けられた中間部3と、この中間部3の両側に設けられた中間側方部4とを備えた非球面レンズである。
遠用部1、中間部3及び近用部2にかけて視線が当接する主子午線Aが設定される。この主子午線Aは装用時に頻繁に視線が通過するレンズ上の位置であり、遠用部1ではほぼ中央部に上下に沿って設けられ、近用部2では、上下に延びて設けられている。近用部2では、主子午線Aは近距離を見るときの輻輳により鼻側に偏寄している。
主子午線Aの累進開始点Sと累進終了点Eとの間は加入度が連続して変化した累進面とされる。この累進開始点Sと累進終了点Eとの間の上下方向の長さが累進帯長Lであり、上下方向と直交する左右方向に沿った長さが内寄せ量Iである。
フィッティングポイントを原点Oとし、この原点Oを通り遠用部1の主子午線Aに沿った方向をy座標、原点Oを通りy座標と直交する方向をx座標とする。原点Oが累進開始点Sであり、その座標は(0,0)である。累進終了点Eの座標は(xe,ye)である(0<xe)。
図1(B)に示される通り、主子午線Aの上では、度数は、遠用部1から累進開始点Sまでが度数D1であり、累進開始点Sから累進終了点Eにかけて度数D1からD2に増加し、累進終了点Eから近用部2の下部にかけて度数がD2とされる。本実施形態での加入度ADDは、ADD=D2−D1である。
内寄せ量Iについて、図2に基づいて説明する。
図2には遠用瞳孔間距離、近用瞳孔間距離及び中間瞳孔間距離を説明するための図が示されている。
図2において、通常、左眼LEと右眼REとで無限遠方を見た場合の視線はOSとなり、その視線が累進屈折力レンズの眼球側面を透過するx座標の位置は累進開始点Sの位置と同じOである。この際の左右の累進屈折力レンズの累進開始点S同士の距離は左眼LEの旋回中心と右眼REの旋回中心との間の距離であり、この距離が遠用瞳孔間距離OPDである。これに対して、近用作業距離(一般に、30〜40cm)を見た場合の視線はNSとなり、その視線NSが累進屈折力レンズの眼球側面を透過するx座標の位置は累進終了点Eの位置と同じであり、左右の累進屈折力レンズの累進終了点E同士の距離が近用瞳孔間距離NPDである。
内寄せ量Iは、I=(OPD−NPD)÷2 で求められる。
本実施形態では、中間部3において、中間内寄せ量MLを設定している。
中間作業距離ml(一般に、ml=50〜100cm)を見た場合の視線はMSとなり、左右の累進屈折力レンズにおいて、その視線MSの累進屈折力レンズの眼球側面を透過するx座標の位置同士の距離が中間瞳孔間距離MPDである。
中間内寄せ量MLは、ML=(OPD−MPD)÷2 で求められる。
図1(A)において、中間内寄せ量MLの設定位置Pは(xm,ym)の位置である(0<xm)。この設定位置Pにおいて、中間位置加入度MFが設定される。
中間位置加入度MFは、必要とする調節力をFとし、中間作業距離をmlとし、調節や刺激のない場合であって生理的緊張下での調節状態を示す調節安静位での屈折力をmfとすると、
MF=F−mf=(1/ml)−mf から求められる。
図3は中間内寄せ量MLを説明するための概念図である。
図3の実線は、中間部3に中間内寄せ量MLを1箇所設定した例である。この1箇所設定された中間内寄せ量MLを設定する位置Pと累進開始点Sを直線で結び、さらに、位置Pと累進終了点Eとを直線で結び、これらの直線が主子午線となる。この中間内寄せ量MLは、後述する通り、種々の条件によって、位置が変わるものであり、図3の二点鎖線で示される従来の内寄の量の設定位置Poに対して、内側あるいは外側に設定される。なお、中間内寄せ量MLの設定は1箇所に限定されるものではなく、例えば、複数箇所、例えば、3箇所設定されるものでもよく、この場合、主子午線は図3の一点鎖線に示されるようになる。
次に、本発明の累進屈折力レンズの設計方法にかかる第1実施形態を説明する。
[装用者のパラメーターの測定工程]
装用者の遠用瞳孔間距離OPD、近用瞳孔間距離NPD、中間瞳孔間距離MPDを測定する。
これらの測定に際して、例えば、累進屈折力レンズを装用した状態で、装用者が遠方視あるいは近方視した際の左右の累進屈折力レンズ上の眼の位置にそれぞれ印をつけ、これらの印の位置を結んだ直線の距離を、遠用瞳孔間距離OPDや近用瞳孔間距離NPDとしてもよい。あるいは、近方視および遠方視に対応した検眼用の単焦点レンズを装用した状態で、装用者が遠方視あるいは近方視した際の左右の単焦点レンズ上の眼の位置にそれぞれ印をつけ、これらの印の位置を結んだ直線の距離を、遠用瞳孔間距離OPDや近用瞳孔間距離NPDとしてもよい。また、装用者の左右の眼球の旋回中心間を測定機で測定し、これらの旋回中心間を遠用瞳孔間距離OPDとし、さらに、累進屈折力レンズの眼球側の面と眼球との距離を測定又は既知の値とし、近方視した際の近用作業距離、左右の眼球の旋回中心距離の値から三角関数により、近用瞳孔間距離NPDを求めるものでもよい。
そして、中間瞳孔間距離MPDの測定のため、まず、中間作業距離ml、例えば、80cmの位置に配置されたパソコンやテレビのディスプレイ等の対象物を目標値として設置する。そして、中間瞳孔間距離MPDの測定を近用瞳孔間距離NPDの測定と同様の方法で行ってもよい。例えば、累進屈折力レンズの眼球側の面と眼球との距離を算出又は既知の値とし、中間作業距離ml、左右の眼球の旋回中心距離の値から三角関数により、中間瞳孔間距離MPDを求めるものでもよい。
さらに、調節安静位での屈折力mfを測定する。調節安静位とは、調節や輻輳の刺激がない場合における生理的緊張下での調節状態を示すものであり、その際の屈折力mfを、検眼装置(アコモドメーターAA−2000(株式会社ニデック製)、オートレフラクトメーターGR−2100/GR−3100K(グランド精工株式会社製))を用いて測定する。
なお、明確な測定が困難な場合は、正確な調節安静位とは言えないが、0.50〜1.00(D)の間の数値を便宜的に使用してもよい。
そして、従来と同様の方法によって、累進帯長L、度数D1,D2、加入度ADDを決定し、さらに、累進開始点S、累進終了点E、内寄せ量Iを求める。
[中間内寄せ量設定工程]
前述の工程で求められた中間瞳孔間距離MPDに基づいて、中間内寄せ量MLを設定する。
ここでは、中間内寄せ量MLを、ML=(OPD−MPD)÷2の式から求める。
[中間位置加入度設定工程]
中間内寄せ量の設定位置Pにおいて中間作業距離mlを見るために必要な中間位置加入度MFを設定する。
中間内寄せ量MLの設定位置Pで設定される中間位置加入度MFは次の式から求められる。
必要とする調節力をFとし、中間作業距離をmlとし、調節安静位での屈折力をmfとすると、中間位置加入度MFは前述の通り、
MF=F−mf=(1/ml)−mf の式から求められる。
ここで、中間作業距離mlは前述の通り、予め定めた値であり、調節安静位での屈折力mfは、前述の通り、測定機を用いて測定されているので、中間位置加入度MFを算出することができる。
例えば、中間作業距離mlが0.8mであり、必要とする調節力Fは(1/ml)であるから、1.25(D)となる。調節安静位での屈折力mfの測定値を0.5(D)とすると、中間位置加入度MFは0.75(D)である。
中間内寄せ量MLは、設定位置Pのx座標上の距離であり、そのy座標上の位置は図1(B)の累進開始点Sと累進終了点Eとに設定される平均度数変化と、累進開始点Sと累進終了点Eとの位置との関係を示すグラフから求める。
前述の測定の結果、遠用瞳孔間距離OPDが66.00mmであり、近用瞳孔間距離NPDが61.00mmであり、中間瞳孔間距離MPDが63.94mmであり、累進屈折力レンズの加入度ADDが2.00(D)であり、累進帯長Lが14mmであるとすると、内寄せ量Iは2.50mmであり、中間内寄せ量MLはML=(66.00mm−63.94mm)÷2=1.03mmである。そして、中間位置加入度MFが0.75(D)であるから、その設定位置Pは、図4に示される通り、y座標が原点Oから下に5.25mmであり、x座標が原点Oから右に1.03mmである(xm=1.03mm、ym=−5.25mm)。
従って、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)中間瞳孔間距離MPDに基づいて設定された中間内寄せ量MLの設定位置Pに、遠用部1と近用部2とにそれぞれ設定される屈折力以外に、中間作業距離mlを見るために必要な中間位置加入度MFを付与するので、中間部3を通して視認する際に、主子午線上で収差が入らず、装用感が良好となる。
(2)中間瞳孔間距離をMPDとし、前記遠用作業距離を視認した際の遠用瞳孔間距離をOPDとすると、中間内寄せ量MLを、ML=(OPD−MPD)÷2から求めたので、中間内寄せ量MLを算出するにあたり、レンズ設計をする上で求めることが多い遠用瞳孔間距離OPDを利用しているため、効率よく、レンズ設計を実施することができる。
(3)中間位置加入度MFを、必要とする調節力をFとし、中間作業距離をmlとし、調節安静位での屈折力をmfとして、MF=F−mf=(1/ml)−mfの式から求めた。つまり、調節安静位を前提として中間位置加入度MFを設定しているので、中間作業距離mlを見る場合に副交感神経を働かせず見ることができるため、疲労感の少ない累進屈折力レンズを設計できる。
(4)中間位置加入度MFを設定する設定位置Pのy座標を、累進開始点Sと累進終了点Eとの間の平均度数変化と、累進開始点Sと累進終了点Eとの主子午線Aの位置との関係のグラフから求めた。つまり、平均度数変化と主子午線Aの位置とのグラフから、x座標上の中間位置加入度MFの設定位置Pに対応するy座標上の位置を求め、このy座標の位置を中間内寄せ量MLを設定するy座標上の位置としたから、装用感が良好なレンズを簡単な方法で設計することができる。
次に、本発明の累進屈折力レンズの設計方法にかかる第2実施形態を図5及び図6に基づいて説明する。第2実施形態の累進屈折力レンズは第1実施形態のレンズと同じである。
第2実施形態では、中間内寄せ量MLを設定する位置を測定機によって特定するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
測定方法としては、アイマークレコーダーを使用する。アイマークレコーダーは測定者の視線方向を測定し、両眼の視線方向から物体距離も同時に測定できる。測定結果により、視線が通るレンズ位置と物体距離が求められる。視線が通るレンズの縦方向位置において、物体距離に合った内寄せ量と中間位置加入度とすることで、装用者に適したレンズ設計が行われる。
第2実施形態では、アイマークレコーダーは既知の装置を利用できる。例えば、特開平8−238222号公報や特開2010−104754号公報に記載された技術を応用したアイマークレコーダーや、さらには、モバイル型アイマークレコーダーEMR−9(株式会社ナックイメージテクノロジー製)を利用することができる。特開平8−238222号公報に記載された技術は、視線認識対象の眼球に光を照射して眼球の角膜上に複数の特徴点を持つ像を結像させ、角膜上に結像された像の特徴点から眼球の角膜曲率中心を求め、角膜曲率中心と瞳孔中心の位置情報から視線方向を認識するものである。この場合、仮視線計算手段が、角膜曲率中心と瞳孔中心の位置関係から仮の視線方向を計算すると、角膜領域判定手段が、仮の視線方向と瞳孔の位置情報から限定された角膜領域を求める。そして、処理手段が、限定された角膜領域内に像の特徴点がある場合に、仮の視線方向を視線認識結果とし、また、限定された角膜領域内に像の特徴点がない場合には、限定された角膜領域内に存在する像の特徴点を選択し、選択された像の特徴点から、眼球の角膜曲率中心を求めて、角膜曲率中心と瞳孔中心の位置情報とから視線方向を認識し、視線認識結果とする。
第2実施形態では、アイマークレコーダーの測定方法が2種類あり、これらを図5と図6とを用いて説明する。
図5において、中間作業距離、例えば、眼から100cm位置にある壁10を目標として設置する。なお、累進帯長よりも外に視線移動しない環境にする。そして、レンズ11の上方から装用者の眼球RE(LE)に向けてアイマークレコーダー12をセットする。なお、装用者が装着するレンズ11は単焦点レンズである。累進屈折力レンズを用いないのは、累進屈折力レンズでは見やすい位置のみ見てしまうので、測定が正確に行えないからである。
次に、レンズ11を装用者がかけてアイマークレコーダー12の測定を行う。
置いた物体(壁)に視線を向けてもらい、レンズ11のどこ部位を使用しているかを測定する。中間作業距離(100cm)を見る時に視線が通過するレンズ11の縦方向の位置をアイマークレコーダー12で測定する。つまり、100cm先にある対象物を見る際に、レンズ11のフィッティングポイント(累進開始点S)から何mm下を使用しているかをアイマークレコーダー12で測定する。本実施形態の測定値は、フィッティングポイントFP(y=0)から下に4mmであった。
さらに、第1実施形態と同様に、予め測定した中間瞳孔間距離MPD、遠用瞳孔間距離OPDから中間内寄せ量MLを求め、この中間内寄せ量MLの設定位置に前述の測定値を合わせる。
そして、フィッティングポイントFPから下に4mmにある加入度を見やすい加入度にする。つまり、調節安静位の状態で、100cmが見えるように中間位置加入度MFを調整する。必要とする加入度が1.00(D)であり、調節安静位での屈折力mfを0.5(D)とした場合、中間位置加入度MFは、MF=F−mf=(1/ml)−mf=0.5(D)である。
さらに、装用者が見やすい位置に中間作業距離100cmの中間内寄せ量MLと、中間位置加入度MFを設計した主子午線Aを設定する。
図6において、レンズ11の上方から装用者の眼球RE(LE)に向けてアイマークレコーダー12をセットする。図6の例は図5の例とは異なり、壁を設置するものではない。
まず、アイマークレコーダー12で両眼の視線方向Cを測定する。そして、単焦点レンズ11をかけてアイマークレコーダー12の測定を行う。
視線が通るレンズの位置を決める。本実施形態では、フィッティングポイントFPから5mm下を通る視線がどこを見ているかを測定する。
そして、両眼の視線方向Cにより物体距離を測定する。物体距離は両眼の視線の交点が視認している位置である。図6の例では、フィッティングポイントFPから5mm下を使っているとき、100cmの物体に視線が集中しやすいことがわかった。
さらに、中間作業距離mlが100cmを見ている時の中間瞳孔間距離MPDを測定し、中間作業距離mlの100cmを見るために装用者が必要とする加入度を図5の例と同様に求める。つまり、必要とする加入度が1.00(D)であり、調節安静位での屈折力mfを0.5(D)とした場合、中間位置加入度MFは、MF=F−mf=(1/ml)−mf=0.5(D)である。
さらに、図5の例と同様に、装用者が見やすい位置に中間作業距離100cmの中間内寄せ量MLと、中間位置加入度MFを設計した主子午線Aを設定する。
従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(3)の効果に加え、次の効果を奏することができる。
(5)装用者がレンズのどの部分を使用し、どこの距離を見ているかをアイマークレコーダー12で測定し、この測定データに基づいて装用者に最適なレンズを設計するので、装用者に応じた装用感が良好なレンズを設計することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態では、中間内寄せ量MLを、遠用瞳孔間距離OPDと中間瞳孔間距離MPDとの差に基づいて求めたが、本発明では、近用瞳孔間距離NPDと中間瞳孔間距離MPDとの差に基づいて求めるものであってもよい。
また、前記実施形態では、設計者が装用者の使用する中間作業距離mlを決めているが、他の方法として、装用者から実際に使用頻度の多い中間作業距離mlや、レンズのどの位置を特に使用しているかをヒヤリングし、中間作業距離mlの指定や測定する中間作業距離mlを増やすことによって、前記実施形態による設計よりも装用者にとって使いやすいレンズを設計することができる。
さらに、前記実施形態では、レンズ設計に際して、調節安静位での屈折力mfを用いたが、中間作業距離mlを見るために、装用者が使用しやすい屈折力(調節力)がわかっていれば、その値を用いるものであってもよい。
また、フィッティングポイントと累進開始点Sとが一致しない累進屈折力レンズについても本発明を適用することができる。
本発明は、遠用部、近用部及び中間部を有する累進屈折力レンズに利用することができる。
1…遠用部、2…近用部、3…中間部、A…主子午線、S…累進開始点、E…累進終了点、ADD…加入度、MPD…中間瞳孔間距離、ML…中間内寄せ量、P…設定位置、ml…中間作業距離、MF…中間位置加入度、OPD…遠用瞳孔間距離、FP…フィッティングポイント

Claims (5)

  1. 遠用作業距離を視認する遠用部と、近用作業距離を視認する近用部と、これらの遠用部と近用部との間に設けられた中間部とを備えた累進屈折力レンズであって、
    前記中間部に、前記遠用作業距離より小さく前記近用作業距離より大きな中間作業距離を見るために必要な中間位置加入度が、前記中間作業距離を視認した際の視線が前記累進屈折力レンズの眼球側面を通る位置である中間内寄せ量の位置に設定されることを特徴とする累進屈折力レンズ。
  2. 請求項1に記載された累進屈折力レンズにおいて、
    左眼用の前記中間内寄せ量の位置と右眼用の前記中間内寄せ量の位置との距離である中間瞳孔間距離をMPDとし、前記遠用作業距離を視認した際の遠用瞳孔間距離をOPDとすると、前記中間内寄せ量MLを、
    ML=(OPD−MPD)÷2
    から求めることを特徴とする累進屈折力レンズ。
  3. 請求項1または請求項2に記載された累進屈折力レンズにおいて、
    必要とする調節力をFとし、前記中間作業距離をmlとし、調節や刺激のない場合であって生理的緊張下での調節状態を示す調節安静位での屈折力をmfとすると、前記中間位置加入度MFは
    MF=F−mf=(1/ml)−mf
    から求めることを特徴とする累進屈折力レンズ。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載された累進屈折力レンズを設計する方法において、
    中間瞳孔間距離を求める工程と、
    この工程で求められた中間瞳孔間距離に基づいて中間内寄せ量を設定する工程と、
    この工程で設定された中間内寄せ量の設定位置において前記中間作業距離を見るために必要な中間位置加入度を設定する工程と、
    を備えたことを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法。
  5. 請求項4に記載された累進屈折力レンズの設計方法において、
    前記中間内寄せ量を規定する方向をxとし、この方向xと直交する方向をyとし、方向xと方向yとの交点を前記遠用部に設定される累進開始点とすると、前記中間位置加入度を設定するy方向の位置は、前記累進開始点と前記近用部に設定される累進終了点とに設定される平均度数変化と、前記累進開始点と前記累進終了点との位置との関係から求めることを特徴とする累進屈折力レンズの設計方法。
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