JP2012105393A - Pwmインバータ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】過変調領域でのパルス幅変調におけるデッドタイム誤差電圧の変動も加味してデッドタイム補償を行い、指令値通りの出力電圧を得るPWMインバータ装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子の短絡防止用のデッドタイムによって発生するデッドタイム誤差電圧に基づいて第2の交流電圧指令信号を生成するデッドタイム補償手段を備え、上記デッドタイム補償手段は少なくとも、上記第2の交流電圧指令信号の振幅が上記搬送波信号の振幅よりも大きい過変調領域において、上記第2の交流電圧指令信号または上記第2の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさの割合を示す第2の変調率指令k2のうちの少なくとも1つと、上記第1の交流電圧指令信号の位相である第1の交流電圧位相とPWMインバータ装置10の出力電流の検出値または演算値の位相との間の差に応じて発生する上記デッドタイム誤差電圧に基づき上記第2の交流電圧指令信号を生成する。
【選択図】図1

Description

この発明は、パルス幅変調により直流電圧を交流電圧に変換するPWMインバータ装置に関し、より特定的には、交流電圧指令信号の振幅が搬送波信号の振幅よりも大きい過変調領域におけるパルス幅変調を行うPWMインバータ装置に関するものである。
スイッチング素子をオンオフさせることで直流電圧を交流電圧に変換するPWMインバータ装置では、スイッチング素子の短絡を防止するために、スイッチング素子のターンオフ時間を考慮してデッドタイムが挿入される。このデッドタイムによりインバータの電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧(以下、デッドタイム誤差電圧という。)が発生するため、これを補償するデッドタイム補償を行うのが一般的である。
ところで、交流電圧指令信号の振幅が搬送波信号の振幅以下である正弦波変調領域でパルス幅変調を行う場合、デッドタイム誤差電圧は搬送波周期に比例する振幅を持つ方形波状の電圧であるため、搬送波周期に比例してデッドタイム補償を行うPWMインバータ装置が特許文献1に開示されている。
しかし、PWMインバータ装置の出力電圧の基本波成分の大きさを高める場合、例えば電動機を高速回転させる必要がある場合などには、交流電圧指令信号の振幅が搬送波信号の振幅よりも大きい過変調領域でパルス幅変調を行うことがある。過変調領域では、交流電圧指令信号の振幅が大きくなるにつれて平均的なスイッチング回数が減少していくため、デッドタイム誤差電圧の振幅の変動が生じる。このため、上記特許文献1のように単純に搬送波周期に比例したデッドタイム補償では適切な補償を行うことができない。
特許文献2には、過変調領域でパルス幅変調を行う場合におけるインバータ出力電圧へのデッドタイム誤差電圧の影響の変化を抑制する技術が開示されている。
特開2006−217776号公報 特開2010−104151号公報
上記特許文献2に開示された技術は、正弦波変調領域と過変調領域の切り替え、及び過変調領域におけるスイッチング回数減少によるデッドタイムの影響の変化を抑制するように交流電圧指令信号の振幅を補正し、インバータ出力電圧の変動を抑制している。
しかし、上記特許文献2に開示された技術では、デッドタイム誤差電圧自体は補償されていないため、インバータ出力電圧はデッドタイム誤差電圧を含んだものとなり、適切なインバータ出力電圧が得られない。
この発明の目的は、過変調領域でのパルス幅変調におけるデッドタイム誤差電圧の変動も加味してデッドタイム補償を行い、指令値通りの出力電圧を得るPWMインバータ装置を提供することにある。
この発明に係るPWMインバータ装置は、制御指令に基づいてスイッチング素子をオンオフさせることにより、直流電圧を交流電圧に変換するPWMインバータ装置であって、上記直流電圧で出力可能な上記交流電圧の基本波成分の大きさに対する第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさの割合を示す第1の変調率指令を生成する第1の変調率指令生成手段と、上記第1の交流電圧指令信号の生成に用いる第1の位相を生成する第1の位相生成手段と、上記第1の位相と上記スイッチング素子の短絡防止用のデッドタイムによって発生するデッドタイム誤差電圧に基づいて第2の交流電圧指令信号を生成するデッドタイム補償手段と、上記第2の交流電圧指令信号と搬送波信号の比較に基づくパルス幅変調制御によって上記制御指令を生成するPWM制御手段と、を備え、
上記デッドタイム補償手段は少なくとも、上記第2の交流電圧指令信号の振幅が上記搬送波信号の振幅よりも大きい過変調領域において、上記第2の交流電圧指令信号または上記第2の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさの割合を示す第2の変調率指令のうちの少なくとも1つと、上記第2の交流電圧指令信号の位相である第2の交流電圧位相と上記PWMインバータ装置の出力電流の検出値または演算値の位相との間の差に応じて発生する上記デッドタイム誤差電圧に基づき上記第2の交流電圧指令信号を生成することを特徴とする。
この発明に係るPWMインバータ装置は、過変調領域を使用する場合において生じるデッドタイム誤差電圧変化も加味して所望のPWMインバータ出力電圧が得られる交流電圧指令信号を生成する。これにより、過変調領域においても適切にデッドタイム補償を行うことができる。
この発明の実施の形態1に係るPWMインバータ装置を含む同期電動機の制御系を示すブロック構成図である。 図1の交流電圧生成手段の内部を示す図である。 図1のPWM制御手段による制御指令の生成を示す図である。 この発明の実施の形態1に係るPWMインバータ装置の電圧応答特性を示す図である。 この発明の実施の形態1に係るPWMインバータ装置の位相補償手段の機能を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係るPWMインバータ装置により過変調領域で方形波型デッドタイム補償を行う際の同期電動機の制御系を示す図である。
以下、添付の図面を参照して、この発明に係るPWMインバータ装置について好適な実施の形態を説明する。なお、各図において同一または相当する部分については、同一符号を付して説明し、指令を表す文字には*を付すこととする。また、以下の各実施の形態では、このPWMインバータ装置を同期電動機の磁極位置センサレス制御装置として使用した場合について説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るPWMインバータ装置を同期電動機とともに示すブロック構成図である。
図1において、PWMインバータ装置10は、同期電動機11の駆動を制御する。同期電動機11は、固定子12および回転子13を有している。また、PWMインバータ装置10は、減算器14、周波数補償手段15、第1のdq電圧指令生成手段16、第1の位相生成手段である積分器17、3相−dq座標変換手段18、第2のdq電圧指令生成手段19、第1の交流電圧指令信号生成手段20、位相補償手段21、過変調領域検出手段22、第2の交流電圧指令信号生成手段23、PWM制御手段24、交流電圧生成手段25、第1の変調率指令生成手段26、第2の変調率指令生成手段27を備えている。なお、デッドタイム補償手段は、第2のdq電圧指令生成手段19、第1の交流電圧指令信号生成手段20、位相補償手段21、第2の交流電圧指令信号生成手段23、第2の変調率指令生成手段27から構成される。
PWMインバータ装置10は、上述したように、磁極位置センサレス制御装置であり、d−q軸を知ることができない。そこで、制御側で設定した仮想d−q軸を用いて同期電動機11に通電し、回転子磁束と電機子反作用磁束との合計磁束を一定値に維持するとともに、この合計磁束を仮想d軸と合わせる磁束ベクトル制御を用いる。これにより、磁極位置を見失うことなく、電圧を制御することができる。
減算器14は、周波数補償手段15から出力される周波数補償量fcを回転速度指令ωから減算し、周波数補償後の回転速度指令ω1を出力する。
周波数補償手段15は、3相−dq座標変換手段18からのq軸電流Iqに基づいて、回転速度指令ωの周波数を補償する周波数補償量fcを算出して出力する。周波数補償量fcは、次式(1)で表される。
fc=(khpf×ωhpf)×s/(s+ωhpf)×Iq・・・(1)
なお、式(1)でkhpfは周波数補償ゲイン、ωhpfはハイパスフィルタ通過周波数、sはラプラス演算子を示している。
第1のdq電圧指令生成手段16は、入力される界磁磁束と、減算器14からの周波数補償後の回転速度指令ω1と、3相−dq座標変換手段18からのd軸電流Idおよびq軸電流Iqとに基づいて、第1のd軸電圧指令Vd1および第1のq軸電圧指令Vq1を生成して出力する。なお、この実施の形態では、磁極位置センサレス制御アルゴリズムの1つである磁束ベクトル制御のアルゴリズムに基づいて第1のdq電圧指令値(第1のd軸電圧指令Vd1および第1のq軸電圧指令Vq1)を生成するが、他のアルゴリズムに基づいて第1のdq電圧指令を算出してもよい。
積分器17は、減算器14からの周波数補償後の回転速度指令ω1に基づいて、回転子13の位相(第1の位相)θを算出し、この回転子13の位相θを出力する。具体的には、積分器17は、前回の回転子13の位相に、演算周期分の位相進みを加算して回転子13の位相θを算出する。なお、この位相進みは、演算周期に周波数補償後の回転速度指令ω1を乗算することによって得られる。
3相−dq座標変換手段18は、積分器17からの回転子13の位相θに基づいて、同期電動機11の固定子12に流れる3相電流からdq電流値(d軸電流Idおよびq軸電流Iq)を算出して出力する。なお、この実施の形態では、3相電流のうち、U相電流IuおよびV相電流Ivを検出し、これらの検出電流に基づいてdq電流値を算出しているが、これに限定されず、検出する相電流は、3相のうちどの2相であってもよい。3相−dq座標変換手段18で算出されたd軸電流Idおよびq軸電流Iqは、第1のdq電圧指令生成手段16に用いられる。
第1の変調率指令生成手段26は、第1のdq電圧指令生成手段16から出力される第1のdq電圧指令値から第1の変調率指令k1を生成する。第1の変調率指令k1は、Vd1、Vq1の二乗和の平方根をPWMインバータ装置10の出力可能な交流電圧の基本波成分の大きさ、例えばPWMインバータの入力直流電圧で除算して算出する。
第2の変調率指令生成手段27は、デッドタイム誤差電圧の振幅Vtda、力率(PWMインバータ装置10及びPWMインバータ装置10に接続される同期電動機11の間で授受される交流電力の力率)pf、第1の変調率指令k1に基づいてデッドタイム誤差電圧を算出するデッドタイム誤差電圧算出手段を有する。
力率pfは、上記第2の交流電圧指令信号の位相である第2の交流電圧位相とPWMインバータ装置10の出力電流の位相との間の差を表わすものの例であり、上記第2の交流電圧指令信号の位相である第2の交流電圧位相とPWMインバータ装置10の出力電流の位相との間の差の余弦で定義される。第2の変調率指令生成手段27は、デッドタイム誤差電圧算出手段により算出されるデッドタイム誤差電圧に基づき、第1のdq電圧指令に等しいPWMインバータ装置10の出力電圧が得られる第2の変調率指令k2を生成する。なお、第2の変調率指令生成手段27の詳細な機能については後述する。
第2のdq電圧指令生成手段19は、第2の変調率指令生成手段27から出力される第2の変調率指令k2を第1の変調率指令k1で除算した値を、Vd1、Vq1にそれぞれ乗算し、その値をVd2、Vq2とする。すなわち、Vd2、Vq2は、第1の変調率指令の値をk1、第2の変調率指令の値をk2として、それぞれ次式(2)、(3)で表せる。
Vd2=(k2/k1)・Vd1・・・(2)
Vq2=(k2/k1)・Vq1・・・(3)
第1の交流電圧指令信号生成手段20は、第1のdq電圧指令生成手段16からの第1のd軸電圧指令Vdおよび第1のq軸電圧指令Vqと、積分器17から出力される回転子位相θとに基づいて、第1のU相電圧指令Vu1、第1のV相電圧指令Vv1および第1のW相電圧指令Vw1を生成して出力する。第1のU相電圧指令Vu1、第1のV相電圧指令Vv1および第1のW相電圧指令Vw1は、それぞれ次式(4)〜(6)で表される。
Vu1=(√2/√3)Vd1・cosθ−(√2/√3)Vq1・sinθ
・・・(4)
Vv1=(√2/√3)Vd1・cos(θ+240°)
−(√2/√3)Vq1・sin(θ+240°)・・・(5)
Vw1=−(Vu1+Vv1) ・・・(6)
位相補償手段21は、力率pf、デッドタイム誤差電圧の振幅Vtda、第2の変調率指令生成手段27から出力される第2の変調率指令k2、積分器17から出力される第1の位相θに基づき、デッドタイム誤差電圧の発生により生じる位相ずれを補償した第2の位相θcを出力する。なお、位相補償手段21の詳細な機能については後述する。
過変調領域検出手段22は、第1の交流電圧指令信号の振幅Vampと、正弦波変調領域で用いるデッドタイム補償量Vtdcの和が、PWM制御手段24における搬送波信号の振幅以下の場合を正弦波変調領域、搬送波信号の振幅よりも大きい場合を過変調領域として検出し、過変調領域検出信号Ovを生成して出力する。第1の交流電圧指令信号の振幅Vampは、第1の変調率指令k1にPWMインバータ装置10の出力可能な交流電圧の基本波成分の大きさ、例えばPWMインバータ装置10の入力直流電圧を乗算することで算出する。
第2の交流電圧指令信号生成手段23は、過変調領域検出手段22からの過変調領域検出信号Ovによって、正弦波変調領域であると判定されたときは、デッドタイム誤差電圧Vtdに基づくデッドタイム補償量VtdcをPWMインバータ装置10の出力電流(固定子12に流れる相電流)の極性に応じて、第1の交流電圧指令信号に加算または減算したものを第2の交流電圧指令信号(第2のU相電圧指令Vu2、第2のV相電圧指令Vv2および第2のW相電圧指令Vw2)として出力する。なお、本実施の形態では固定子12に流れる相電流のうちW相電流Iwは、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwの総和が0になる関係を利用して、U相電流Iu、V相電流Ivから算出する。
正弦波変調領域におけるデッドタイム誤差電圧は、PWMインバータ装置10の出力電流をIp、デッドタイム誤差電圧の振幅をVtdaとすると、次の式(7)〜(9)のように表せる。この式(7)〜(9)からわかるように、デッドタイム誤差電圧Vtdは、PWMインバータ装置10の出力電流Ipの極性に依存する方形波電圧である。出力電流Ipの位相θipは、例えば交流電圧信号の位相θpと力率pfにより次の式(10)のように定められる。
Vtd=Vtda(Ip<0) ・・・(7)
Vtd=0(Ip=0) ・・・(8)
Vtd=−Vtda(Ip>0) ・・・(9)
θip=θp−arccos(pf) ・・・(10)
なお、デッドタイム誤差電圧の振幅Vtdaは、次の式(11)の通り、PWMインバータ装置10の入力直流電圧EとPWM制御装置24で生成される搬送波周期f、デッドタイムtdを用いて表せる。
Vtda=E・f・td ・・・(11)
デッドタイム補償量Vtdcは式(7)〜(11)で表されるデッドタイム誤差電圧Vtdを打ち消すように第1の交流電圧指令信号に加算、または減算する。具体的には、Vtdc=Vtdaとして、Ip<0のとき、第1の交流電圧指令信号にVtdcを減算、Ip>0のとき、第1の交流電圧指令信号にVtdcを加算する。Ip=0のときは第1の交流電圧指令信号に加算も減算も行わない。このようにデッドタイム補償量Vtdcを第1の交流電圧指令信号に加算、または減算したものを第2の交流電圧指令信号として出力する。
第2の交流電圧指令信号生成手段23は、過変調領域検出手段22からの過変調領域検出信号Ovによって、過変調領域であると判定されたときは、第2のdq電圧指令から第2の交流電圧指令信号を生成して出力する。具体的には、上述の式(2)〜(4)のVd1、Vq1をそれぞれVd2、Vq2に、θをθcに置き換えた式で第2の交流電圧指令信号を生成して出力する。
交流電圧生成手段25は、直流電圧とPWM制御手段24から出力される制御指令に基づいてスイッチング素子をオンオフさせることで3相交流電圧を出力し、同期電動機11の固定子12に通電する。
図2は、交流電圧生成手段25の内部を示す図である。交流電圧生成手段25は、U相上下アーム(U相上側アーム、U相下側アーム)、V相上下アーム(V相上側アーム、V相下側アーム)、W相上下アーム(W相上側アーム、W相下側アーム)を有している。
U相上側アームはスイッチング素子Q1、ダイオードD1から成り、U相下側アームはスイッチング素子Q2、ダイオードD2から成っている。また、V相上側アームはスイッチング素子Q3、ダイオードD3から成り、V相下側アームはスイッチング素子Q4、ダイオードD4から成っている。更に、W相上側アームはスイッチング素子Q5、ダイオードD5から成り、W相下側アームはスイッチング素子Q6、ダイオードD6から成っている。PWM制御手段24から生成される制御指令はスイッチング素子Q1〜Q6に入力され、スイッチング素子がオンオフされる。
PWM制御手段24は、第2の交流電圧指令信号生成手段23から出力される第2の交流電圧指令信号と、PWM制御手段24の内部で生成される三角波状の搬送波との比較に基づくパルス幅変調制御により、制御指令を生成する。
図3は、PWM制御手段24による一相分の制御指令の生成を示す図である。第2の交流電圧指令信号と搬送波信号を比較し、第2の交流電圧指令信号≧搬送波信号となる場合は、上側アームのスイッチング素子、例えばU相の場合はQ1をON、下側アームのスイッチング素子、例えばU相の場合はQ2をOFFする。また、第2の交流電圧指令信号<搬送波信号の場合は、上側アームのスイッチング素子、例えばU相の場合はQ1をOFF、下側アームのスイッチング素子、例えばU相の場合はQ2をONする。
なお、上下アーム(上側アーム、下側アーム)のスイッチング素子は直列接続されているため、スイッチングによる短絡を防止する必要がある。このため、上側アーム、下側アームともスイッチング素子がONとなるタイミングを所定の時間tdだけ遅らせる。この時間tdがデッドタイムである。
続いて、第2の変調率指令生成手段27の詳細な機能を処理の流れに沿って説明する。
第2の変調率指令生成手段27は、第1の変調率指令k1に対してデッドタイム誤差電圧Vtdを補償しない場合のPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさとの関係を示す電圧応答特性から、PWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさが、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさと等しくなる第2の変調率指令k2を生成する。
第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさは、第1の変調率指令k1に、PWMインバータ装置10の出力可能な交流電圧の基本波成分の大きさ、例えばPWMインバータ装置10の入力直流電圧を乗算することで算出できる。
次に、第1の変調率指令k1から第2の変調率指令k2を生成するために用いる電圧応答特性について説明する。図4は、電圧応答特性の図示例であり、あわせて第1の変調率指令k1と第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさの関係も図示している。
第1の変調率指令k1と第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさは線形関係にあるが、PWM制御手段24によってパルス幅変調を行うと、ある第1の変調率指令k1の値以上から過変調領域に入る。過変調領域では、第1の変調率指令k1と第1の交流電圧指令信号をPWM制御手段24に入力したときのPWMインバータ装置10の基本波成分の大きさの関係が非線形となる。これに加え、過変調領域においては第1の変調率指令k1が大きくなるにつれてPWMのスイッチング回数が減少するため、デッドタイム誤差電圧の影響が小さくなる。そのため電圧応答特性も非線形となる。
図4のVmaxは、デッドタイム誤差電圧がない場合のPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の最大値を示している。Vcom1は、第1の変調率指令k1がある値kcom1のときの第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさを示す。電圧応答特性からPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさがVcom1となる第2の変調率指令k2を図4のように求めることができる。
以上、図4を用いて電圧応答特性から第2の変調率指令k2が求められることを説明したが、第2の変調率指令k2を求める方法について数式等を用いて説明する。
第2の変調率指令k2を求めるために設定する未知数Vpaを用いて、次の式(12)のように第2の交流電圧指令信号を仮定した交流電圧信号Vpの式を立てる。θpは、交流電圧信号Vpの位相を示す。
Vp=−(√2/√3)Vpa・sinθp・・・(12)
なお、交流電圧信号Vpが搬送波の取りうる値の範囲を逸脱する場合は、次のように交流電圧指令信号Vpの値を定める。
搬送波振幅の値をVcとすると、交流電圧信号Vpの値がVcよりも大きい場合は、交流電圧信号Vpの値をVcとする。交流電圧信号Vpの値が−Vcよりも小さい場合は、交流電圧信号Vpの値を−Vcとする。
以上のように設定される交流電圧信号Vpに対して、デッドタイム誤差電圧Vtdを重畳したデッドタイム誤差電圧重畳後交流電圧を算出する。交流電圧信号Vpの値がVc以下、かつ−Vc以上の場合、デッドタイム誤差電圧Vtdは、その振幅をVtdaとすると正弦波変調領域のときと同様に、式(7)〜(11)のようにPWMインバータ装置10の各相の出力電流Ipの極性に応じて場合分けして表せる。
なお、過変調領域でパルス幅変調を行う場合に生じる、交流電圧信号VpがVcまたは−Vcに保持される区間については、パルス幅変調によるスイッチングが発生しないため、デッドタイムも生成されない。このため、この区間についてはデッドタイム誤差電圧Vtdが発生せず、式(7)〜(11)に依らずVtd=0である。
交流電圧信号VpがVcまたは−Vcに保持される区間は、式(12)中の未知数Vpaの値に依存するため、Vtdも未知数である。
デッドタイム誤差電圧重畳後交流電圧は、交流電圧信号VpにVtdを加算することで得られる。このデッドタイム誤差電圧重畳後交流電圧の基本波成分の大きさを抽出したものが、PWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさに相当する。基本波成分の大きさは、例えばフーリエ級数展開によって基本波成分の大きさに相当するフーリエ係数を求めることで抽出できる。
以上のステップから、式(12)中の未知数VpaとPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさとの関係が求まる。この関係から、デッドタイム誤差電圧重畳後交流電圧の基本波成分の大きさが、図4のVcom1に等しくなるVpaが求まる。
このVpaから第2の変調率指令k2を求めるには、VpaをPWMインバータ装置10の出力可能な交流電圧の基本波成分の大きさ、例えばPWMインバータ装置10の入力直流電圧で除算すればよい。以上のステップで第1の変調率指令k1から第2の変調率指令k2を演算によって求めることができる。
演算負荷低減の観点からは、使用する範囲の第1の変調率指令k1と力率pfを引数として第2の変調率指令k2を求めることができるマップを演算装置内に用意することが考えられる。
なお、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさとPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさが等しくなる第2の変調率指令k2が存在しない場合には、例えば第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさに最も近くなる第2の変調率指令k2を選択することとする。
続いて位相補償手段21の詳細な機能について説明する。この実施の形態において、正弦波変調領域におけるデッドタイム補償量を用いたデッドタイム補償は、デッドタイム誤差電圧による影響を位相も含めて補償できるため、正弦波変調領域においては、位相補償手段21は第1の位相θをそのまま第2の位相θcとして出力する。過変調領域におけるデッドタイム補償は、第1の変調率指令k1から第2の変調率指令k2を求めることで、PWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさのみを補償するため、デッドタイム誤差電圧による位相のずれが生じる。デッドタイム誤差電圧による位相のずれを補償するためには、位相補償手段21が必要となる。
位相補償手段21は、過変調領域検出手段22で過変調領域と検出された場合は、第2の変調率指令生成手段27から出力される第2の変調率指令k2に基づいて生成される第2のdq電圧指令と、デッドタイム誤差電圧の振幅Vtda、同期電動機11の力率pfを用いて、第2の変調率指令k2に基づいて第2の交流電圧指令信号が出力されたときのPWMインバータ装置10の出力電圧の位相と、第1の交流電圧指令信号の位相とのずれを補償する。
PWMインバータ装置10のデッドタイム誤差電圧を含まないU相出力電圧Vuは、VuがVc以下かつ−Vc以上の場合、次の式(13)のように表せる。
Vu=(√2/√3)Vd2・cosθ−(√2/√3)Vq2・sinθ
・・・(13)
VuがVcより大きい場合はVu=Vc、Vuが−Vcより小さい場合はVu=−Vcとする。
以上のように表されるU相出力電圧Vuに対して、フーリエ級数展開などの手法により、その基本波成分の大きさを抽出したものをVu_1とする。
次に、デッドタイム誤差電圧Vtdを、式(7)〜(11)に基づき算出する。ただし、上述したように交流電圧信号VpがVcまたは−Vcに保持される区間については、パルス幅変調によるスイッチングが発生しないため、デッドタイムも生成されない。このため、この区間についてはデッドタイム誤差電圧Vtdが発生せず、式(7)〜(11)に依らずVtd=0である。
以上のように算出されるVtdに対して、フーリエ級数展開などの手法により、その基本波成分の大きさを抽出したものをVtd_1とする。
図5は、第1の交流電圧指令信号、デッドタイム誤差電圧を含まないPWMインバータ装置10の出力電圧、デッドタイム誤差電圧、デッドタイム誤差電圧を含むPWMインバータ装置10の出力電圧、PWMインバータ装置10の出力電流のそれぞれの基本波成分のベクトルの一例を示す図であり、それぞれの基本波成分のベクトルに対して符号51、52、53、54、55を付与している。図5中の円は、ベクトル51の大きさを半径とする。
第2の変調率指令生成手段27により、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさ(図5ではベクトル51の大きさに相当)と等しい大きさをもつベクトル54が得られているが、ベクトル54の向きは、図5のようにベクトル51に対してαだけずれていることがわかる。位相補償手段21では、このベクトルのずれを補償し、54のベクトルの向きを51のベクトルの向きに一致させる位相補償を行う。
図5から、52、53、54の3つのベクトルは三角形を構成することがわかる。52、53、54のベクトルの大きさは既知であるため、αを余弦定理により求めることができる。ベクトル52、53、54の大きさをそれぞれa、b、cとすると、αは次の式(14)のように算出できる。
α=arccos{(a+c−b)/(2・a・c)}・・・(14)
この位相補償量αを第1の位相θから減算することで、図5中でベクトル54の向きをベクトル51の向きに合わせることができる。位相補償手段21は、入力される第1の位相θに対して位相補償量αを減算して第2の位相θcを出力する。
以上、代表的にPWMインバータ装置10のU相出力電圧Vuを用いて位相補償手段21の機能の詳細について説明したが、各相(U相、V相、W相)の違いはPWMインバータ装置10の出力電圧の位相が異なるのみであり、各相でデッドタイム誤差電圧、PWMインバータ装置10の出力電圧の大きさの違いはないため、各相で三角形の形が変わることはない。そのため、どの相についても図5を用いて説明できる。従って、位相補償量αは各相の違いを考慮する必要はない。
なお、演算負荷低減の観点からは、PWMインバータ装置10のデッドタイム誤差電圧を含まない出力電圧の基本波成分の大きさの抽出は、式(13)が第2の変調率k2によって定められること、各相の違いは考慮する必要がないことから、第2の変調率指令k2を引数とするマップを演算装置内に用意して行うことが考えられる。
同じく演算負荷低減の観点からは、デッドタイム誤差電圧Vtdの基本波成分の大きさの抽出は、デッドタイム誤差電圧Vtdがデッドタイム誤差電圧の振幅Vtdaと第2の変調率指令k2によって定められることから、デッドタイム誤差電圧の振幅Vtdaと第2の変調率指令k2を引数とするマップを演算装置内に用意して行うことが考えられる。
同じく演算負荷低減の観点からは、位相補償量αは、ベクトル52、53、54の大きさを引数とするマップ、あるいは式(14)右辺のarccos内の値を引数とするマップを演算装置内に用意して求めることが考えられる。
以上説明したように、この実施の形態1に係るPWMインバータ装置10では、過変調領域でパルス幅変調を行う際にもPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分を第1の交流電圧指令信号の基本波成分と等しくすることができる。
なお、この実施の形態では第1の変調率指令k1から、第2の変調率指令生成手段27によりPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさに着目してデッドタイム補償を行えることを説明した。
ところで、デッドタイム誤差電圧Vtdは上述したように正弦波変調領域では振幅Vtdaの方形波であるため、デッドタイム誤差電圧Vtdには高調波成分も含まれている。この実施の形態では、上述したように正弦波変調領域ではPWMインバータ装置10の出力電流の極性に応じて、デッドタイム補償量Vtdcを加算または減算することでデッドタイム補償を行う。PWMインバータ装置10の出力電流の極性に応じて、デッドタイム補償量Vtdcを加算または減算することでデッドタイム補償を行うことを、以下方形波型デッドタイム補償という。正弦波変調領域で方形波型デッドタイム補償を行う場合、方形波状のデッドタイム誤差電圧Vtdを打ち消すようにデッドタイム補償量Vtdcを加算または減算するため、デッドタイム誤差電圧VtdによるPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分への影響のみならず、デッドタイム誤差電圧Vtdの高調波成分の影響も除去することができる。
この実施の形態においては、過変調領域ではデッドタイム補償量Vtdcを用いたデッドタイム補償は行わず、デッドタイム誤差電圧VtdによるPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさに着目してデッドタイム補償を行っているが、過変調領域においても方形波型デッドタイム補償を行うことにより、デッドタイム誤差電圧Vtdの高調波成分の影響も低減することができる。
過変調領域では、第2の交流電圧指令信号がVcより大きい、または−Vcより小さくなる区間においては、パルス幅変調によるスイッチングが発生しないため、デッドタイムも発生しない。従って、この区間においてデッドタイム誤差電圧Vtdは0となる。
また、過変調領域において第1の交流電圧指令信号に対してデッドタイム補償量Vtdcを加算または減算した結果、第2の交流電圧指令信号がVcより大きい、または−Vcより小さくなることがある。この場合に発生する第2の交流電圧指令信号がVcより大きい、または−Vcより小さくなる区間においても、デッドタイム誤差電圧Vtdは0となる。
正弦波変調領域においては、デッドタイム誤差電圧が一定であるため、一定のデッドタイム補償量を用いて方形波型デッドタイム補償を行えるが、過変調領域ではデッドタイム誤差電圧が変化するため、一定のデッドタイム補償量を用いた方形波型デッドタイム補償が行えない。
過変調領域で方形波型デッドタイム補償を行うために、この実施の形態を図1から図6のように変更する。図6では図1における第2の変調率指令生成手段27と第2のdq電圧指令生成手段19の代わりに、デッドタイム補償量生成手段60を備えている。デッドタイム補償量算出手段60は、デッドタイム誤差電圧の振幅Vtdaと力率pfから、PWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさが第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさに等しくなるデッドタイム補償量を算出する。
次に、デッドタイム補償量生成手段60の詳細な機能について説明する。第2の交流電圧指令信号を仮定した交流電圧信号Vpは、次の式(15)〜(17)のように表せる。式(15)〜(17)では代表的にU相の場合について表している。Vtdcは求めるべきデッドタイム補償量であり、未知数である。
Vp=(√2/√3)Vd1・cosθ−(√2/√3)Vq1・sinθ
−Vtdc (Ip<0)・・・(15)
Vp=(√2/√3)Vd1・cosθ−(√2/√3)Vq1・sinθ
+Vtdc (Ip>0)・・・(16)
Vp=(√2/√3)Vd1・cosθ−(√2/√3)Vq1・sinθ
(Ip=0) ・・・(17)
なお、VpがVcよりも大きい、または−Vcよりも小さい場合はそれぞれVp=Vc、Vp=−Vcとする。
上記のように設定される交流電圧信号Vpに対して、デッドタイム誤差電圧Vtdを加算することにより、デッドタイム誤差電圧重畳後交流電圧を算出する。デッドタイム誤差電圧Vtdは式(7)〜(11)に基づき算出されるが、上記のように設定される交流電圧VpがVcよりも大きい、または−Vcよりも小さい区間では0とする。
上記のように設定されるデッドタイム誤差電圧重畳後交流電圧に対して、その基本波成分を抽出する。基本波成分は、例えばフーリエ級数展開によって基本波成分に相当するフーリエ係数を求めることで抽出できる。これにより、デッドタイム誤差電圧重畳後交流電圧の基本波成分を抽出後、デッドタイム誤差電圧重畳後の基本波成分の大きさが、第1の交流電圧指令信号の基本波成分と等しくなるようなデッドタイム補償量Vtdcを求めることができる。このデッドタイム補償量とPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさとの関係が補償量応答特性である。
なお、演算負荷低減の観点からは、デッドタイム補償量Vtdcの生成を、第1の変調率指令k1と力率pfを引数とするマップを演算装置内に用意することにより行うことが考えられる。
以上、デッドタイム補償量生成手段60の詳細な機能について、U相の場合を考えて説明したが、各相の違いは位相の違いのみであり、他の相で考える場合も同様の方法でデッドタイム補償量が生成できる。
第2の交流電圧指令信号生成手段23は、過変調領域検出手段22によって過変調領域であると検出された場合は、デッドタイム補償量生成手段60によって生成されたデッドタイム補償量を、正弦波変調領域であると検出された場合は、式(10)により定められるデッドタイム補償量を、PWMインバータ装置10の出力電流の極性に応じて、第1の交流電圧指令信号に加算または減算することにより第2の交流電圧指令信号を生成する。
次に、過変調領域で方形波型デッドタイム補償を行う際の、位相補償手段21の詳細な機能について説明する。デッドタイム誤差電圧を含まないPWMインバータ装置10の出力電圧は、式(15)〜(17)にデッドタイム補償量生成手段60から出力されるデッドタイム補償量Vtdcを代入することで算出できる。ただし、VpがVcよりも大きい場合はVp=Vc、−Vcよりも小さい場合はVp=−VcとしてVpを算出する。このようにして得られたデッドタイム誤差電圧を含まないPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分を抽出する。基本波成分の抽出には、例えばフーリエ級数展開を用いる。
次に、デッドタイム誤差電圧Vtdを算出する。デッドタイム誤差電圧Vtdは、式(7)〜(11)に基づき算出されるが、上記のように設定される交流電圧VpがVcよりも大きい、または−Vcよりも小さい区間では0とする。このようにして得られたデッドタイム誤差電圧Vtdの基本波成分を抽出する。基本波成分の抽出には、例えばフーリエ級数展開を用いる。
以上のステップで得られたデッドタイム誤差電圧を含まないPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさと、デッドタイム誤差電圧の基本波成分の大きさを利用して、位相補償量αを求める。位相補償量αは式(14)に基づいて算出し、第1の位相θから位相補償量αを減算したものを第2の位相θcとして出力する。
なお、演算負荷低減の観点からは、式(15)〜(17)が第1の変調率指令k1とデッドタイム補償量Vtdc、力率pfによって定められること、各相の違いは考慮する必要がないことから、PWMインバータ装置10のデッドタイム誤差電圧を含まない出力電圧の基本波成分の大きさの抽出は、第1の変調率指令k1、デッドタイム補償量Vtdc、力率pfを引数とするマップを演算装置内に用意して行うことが考えられる。
同じく演算負荷低減の観点からは、デッドタイム誤差電圧Vtdがデッドタイム誤差電圧の振幅Vtda、第1の変調率指令k1、力率pfによって定められることから、デッドタイム誤差電圧Vtdの基本波成分の大きさの抽出は、デッドタイム誤差電圧の振幅Vtda、第1の変調率指令k1、力率pfを引数とするマップを演算装置内に用意して行うことが考えられる。
同じく演算負荷低減の観点からは、位相補償量αは、ベクトル52、53、54の大きさを引数とするマップ、あるいは式(14)右辺のarccos内の値を引数とするマップを演算装置内に用意して求めることが考えられる。
なお、PWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさが、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさに等しくなるデッドタイム補償量Vtdcが存在しない場合は、例えばPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさが、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさに最も近くなるデッドタイム補償量Vtdcを選択して出力することとする。
以上のように、実施の形態1に係るPWMインバータ装置10によれば、デッドタイム補償手段は、過変調領域でパルス幅変調を行う際に、第2の交流電圧指令信号とデッドタイム誤差電圧を仮定し、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさとPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさが等しくなる第2の交流電圧指令信号を生成する。あるいは、第2の交流電圧指令信号とデッドタイム誤差電圧、デッドタイム補償量を仮定し、PWMインバータ装置10の出力電圧の大きさが第1の交流電圧指令信号の基本波成分と等しくなるデッドタイム補償量を生成し、このデッドタイム補償量に基づいて第2の交流電圧指令信号を生成する。そのため、過変調領域において第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさとPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさの関係が非線形になること、及びスイッチング素子の短絡を防止するためのデッドタイムによる誤差電圧の大きさが変化することにより、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさとPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさのずれが第2の交流電圧指令信号によって変化する場合であっても、第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさに等しいPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさを得ることができる。
さらに、実施の形態1に係るPWMインバータ装置10によれば、位相補償手段21は、PWMインバータ装置10のデッドタイム誤差電圧を含まない出力電圧と、デッドタイム誤差電圧のそれぞれの基本波成分の大きさを用いて、位相補償量を算出し、これを第1の位相から減算することで第2の位相を生成する。そのため、デッドタイム誤差電圧によって生じるPWMインバータ装置10の出力電圧の位相と第1の交流電圧指令信号の位相とのずれを補償することができる。
なお、上記実施の形態では、PWMインバータ装置10が、磁極位置センサレス制御装置である場合について説明したが、磁極位置検出センサを用いる制御装置であってもよい。磁極位置を検出する磁極位置検出センサを用いることにより、図1に示した積分器17が不要となり、微分器を用いることにより、同期電動機11の実回転速度を算出することができる。また、この実回転速度をフィードバックさせることにより、電動機回転速度の閉ループ制御を実行することができる。
また、上記実施の形態では、d−q座標系によるベクトル制御を実行する構成を示したが、d−q座標系を用いずに、交流電圧そのものを制御する構成であってもよい。この場合には、第1のdq電圧指令生成手段16、第2のdq電圧指令生成手段19が不要となる。
また、上記実施の形態では、交流の相数を3としたが、交流の相数はこれに限定されない。
また、上記実施の形態では、第2の交流電圧指令信号の位相と、PWMインバータ装置10の出力電流の位相との差を表すものとして力率を用いたが、力率は演算により算出して用いてもよいし、あらかじめ測定しておいた値を用いても良い。また、より直接的には第2の交流電圧指令信号の位相とPWMインバータ出力電流の位相との差を算出してもよい。
また、上記実施の形態では、各相の交流電圧指令を正弦波で表していたが、正弦波に3次高調波を重畳した波形など、正弦波でない交流電圧指令を用いてもよい。
また、上記実施の形態では、電圧応答特性を演算により得ていたが、あらかじめ第1の変調率指令とデッドタイム誤差電圧を補償しない場合のPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさとの関係を測定などにより求めておくことによっても電圧応答特性を得ることができる。
また、上記実施の形態では、デッドタイム補償量応答特性を演算により得ていたが、あらかじめ、デッドタイム補償量と、デッドタイム補償量をPWMインバータ装置10の上記出力電流の検出値または上記出力電流の演算値の何れかの極性に応じて上記第1の交流電圧指令信号に加算または減算したときの上記PWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分の大きさとの関係を、測定などにより求めておくことによってもデッドタイム補償量応答特性を得ることができる。
また、上記実施の形態では過変調領域検出手段22により、正弦波変調領域と過変調領域とでデッドタイム補償の方法を切り替えていたが、過変調領域検出手段22を用いずに、正弦波変調領域でも上記実施の形態で示した、過変調領域におけるデッドタイム補償の方法を実施可能である。なお、上記実施の形態で示した過変調領域における方形波型デッドタイム補償を、正弦波領域でも実施する場合、生成されるデッドタイム補償量は上記実施の形態で示した正弦波変調領域におけるデッドタイム補償に用いるデッドタイム補償量と等しくなるため、等価なデッドタイム補償が行われる。
この発明の範囲は、上記で説明した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
10 PWMインバータ装置
11 同期電動機
12 同期電動機固定子
13 同期電動機回転子
14 減算器
15 周波数補償手段
16 第1のdq電圧指令生成手段
17 積分器
18 3相−dq座標変換手段
19 第2のdq電圧指令生成手段
20 第1の交流電圧指令信号生成手段
21 位相補償手段
22 過変調領域検出手段
23 第2の交流電圧指令信号生成手段
24 PWM制御手段
25 交流電圧生成手段
26 第1の変調率指令生成手段
27 第2の変調率指令生成手段
51 第1の交流電圧指令信号の基本波成分を表すベクトル
52 デッドタイム誤差電圧を含まないPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分を表すベクトル
53 デッドタイム誤差電圧の基本波成分を表すベクトル
54 デッドタイム誤差電圧を含むPWMインバータ装置10の出力電圧の基本波成分を表すベクトル
55 PWMインバータ装置10の出力電流の基本波成分を表すベクトル
60 デッドタイム補償量生成手段

Claims (7)

  1. 制御指令に基づいてスイッチング素子をオンオフさせることにより、直流電圧を交流電圧に変換するPWMインバータ装置であって、
    上記直流電圧で出力可能な上記交流電圧の基本波成分の大きさに対する第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさの割合を示す第1の変調率指令を生成する第1の変調率指令生成手段と、
    上記第1の交流電圧指令信号の生成に用いる第1の位相を生成する第1の位相生成手段と、
    上記第1の位相と上記スイッチング素子の短絡防止用のデッドタイムによって発生するデッドタイム誤差電圧に基づいて第2の交流電圧指令信号を生成するデッドタイム補償手段と、
    上記第2の交流電圧指令信号と搬送波信号の比較に基づくパルス幅変調制御によって上記制御指令を生成するPWM制御手段と、を備え、
    上記デッドタイム補償手段は少なくとも、上記第2の交流電圧指令信号の振幅が上記搬送波信号の振幅よりも大きい過変調領域において、上記第2の交流電圧指令信号または上記第2の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさの割合を示す第2の変調率指令のうちの少なくとも1つと、上記第2の交流電圧指令信号の位相である第2の交流電圧位相と上記PWMインバータ装置の出力電流の検出値または演算値の位相との間の差に応じて発生する上記デッドタイム誤差電圧に基づき上記第2の交流電圧指令信号を生成することを特徴とするPWMインバータ装置。
  2. 上記デッドタイム補償手段は、上記第1の変調率指令に対して上記デッドタイム誤差電圧を補償しない場合の上記PWMインバータ装置の出力電圧の基本波成分の大きさと上記第1の変調率指令との関係を、上記デッドタイム誤差電圧に基づいて示す電圧応答特性から、上記PWMインバータ装置の出力電圧の基本波成分の大きさが上記第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさに等しくなる第2の変調率指令を出力する第2の変調率指令生成手段を備え、
    上記第2の変調率指令に基づき、上記第2の交流電圧指令信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のPWMインバータ装置。
  3. 上記電圧応答特性において、上記PWMインバータ装置の出力電圧の基本波成分の大きさが上記第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさと等しくなる上記第2の変調率指令が存在しない場合は、上記第1の変調率指令に応じて上記第2の変調率指令を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載のPWMインバータ装置。
  4. 上記デッドタイム補償手段は、デッドタイム補償量と該デッドタイム補償量を上記PWMインバータ装置の上記出力電流の検出値または上記出力電流の演算値の何れかの極性に応じて上記第1の交流電圧指令信号に加算または減算したときの上記PWMインバータ装置の出力電圧の基本波成分の大きさとの関係を、上記デッドタイム誤差電圧に基づいて示す補償量応答特性から、上記PWMインバータ装置の出力電圧の基本波成分の大きさが上記第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさと等しくなる上記デッドタイム補償量を出力するデッドタイム補償量生成手段を備え、
    上記第2の交流電圧指令信号生成手段は、上記PWMインバータ装置の上記出力電流の検出値または上記出力電流の演算値の極性に応じて、上記デッドタイム補償量を上記第1の交流電圧指令信号に加算または減算したものに基づき上記第2の交流電圧指令信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のPWMインバータ装置。
  5. 上記デッドタイム補償量生成手段は、上記補償量応答特性において、上記PWMインバータ装置の出力電圧の基本波成分の大きさが上記第1の交流電圧指令信号の基本波成分の大きさと等しくなる上記デッドタイム補償量が存在しない場合は、上記第1の変調率指令に応じて上記デッドタイム補償量を選択して出力することを特徴とする請求項4に記載のPWMインバータ装置。
  6. 上記デッドタイム補償手段は、上記第1の位相に対して、上記デッドタイム誤差電圧によって生じる上記第1の交流電圧指令信号の位相に対する上記PWMインバータ装置の出力電圧の位相のずれを補償したものを第2の位相として出力する位相補償手段を備え、
    上記第2の位相に基づき、上記第2の交流電圧指令信号を生成することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のPWMインバータ装置。
  7. 上記デッドタイム補償手段は、上記第2の交流電圧指令信号の振幅が上記搬送波信号の振幅以下である正弦波変調領域と、上記第2の交流電圧指令信号の振幅が上記搬送波信号の振幅よりも大きい過変調領域とを判定する過変調領域検出手段を備え、
    上記過変調領域検出手段において、上記正弦波変調領域と判定された場合は、上記デッドタイム補償量を上記搬送波信号の周期と上記デッドタイムの比により算出し、上記第1の交流電圧指令信号に、上記PWMインバータ装置の出力電流の検出値または上記出力電流の演算値の何れかの極性に応じて上記デッドタイム補償量を加算または減算したものを上記第2の交流電圧指令信号とすることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のPWMインバータ装置。
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