JP2012137072A - 軸流圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスタービンの部分負荷運転等でIGVを閉じた運転をする際には、圧縮機後段側の翼列負荷上昇による、空力性能や信頼性の低下が懸念される。本発明の目的は、軸流圧縮機の空力性能や信頼性の低下を抑制することにある。
【解決手段】ロータと、前記ロータに設けられた複数の動翼列と、前記動翼列の外側に位置するケーシングと、前記ケーシングに設けられた複数の静翼列と、前記静翼列のうちの最終段静翼列の下流側に設けられた出口案内翼を備えた軸流圧縮機において、前記最終段静翼列の流れのインシデンス角が、インシデンス作動領域の限界ライン以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、軸流圧縮機に関する。
本技術分野の背景技術を開示する文献として、特開平2−223604号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、取り付け角を変更可能な静翼に関し、軸心周りに前静翼と後静翼とをスライド回動させることにより、静翼のキャンバ(翼のそり)を滑らかに連続的に変形することが開示されている。
特開平2−223604号公報
ガスタービンの部分負荷運転等でIGVを閉じた運転をする際には、圧縮機後段側の翼列負荷上昇による、空力性能や信頼性の低下が懸念される。本発明の目的は、軸流圧縮機の空力性能や信頼性の低下を抑制することにある。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、ロータと、前記ロータに設けられた複数の動翼列と、前記動翼列の外側に位置するケーシングと、前記ケーシングに設けられた複数の静翼列と、前記静翼列のうちの最終段静翼列の下流側に設けられた出口案内翼を備えた軸流圧縮機において、前記最終段静翼列の流れのインシデンス角が、インシデンス作動領域の限界ライン以下であることを特徴とする。
本発明によれば、空力性能や信頼性の低下を抑制可能な軸流圧縮機を提供できる。
本発明の実施例の大気温度に対するインシデンス作動領域図。 本発明の実施例のガスタービンのシステム構成図。 本発明の実施例の軸流圧縮機の子午面断面図。 最終段静翼列のスパン方向断面図と、それに対応した流入角−全圧損失特性図。 本発明の実施例の一つである最終段静翼列のスパン方向断面図。 軸流圧縮機の静翼列のスパン方向断面図。 本発明の実施例の一つである最終段静翼列面の等エントロピーマッハ数分布図。 本発明の実施例の一つである最終段静翼列のシュラウド構造。 軸流圧縮機の定格負荷運転時の段圧力比分布。
ガスタービン用の軸流圧縮機の例をあげて本発明を説明する。本発明はガスタービン以外にも産業用の軸流圧縮機等にも適用可能である。
タービンと圧縮機が1つの軸で連結されている1軸式ガスタービンの運転には、ガスタービンの燃焼温度を定格状態に保持して圧縮機のIGVを閉じることで、ガスタービンの運用負荷領域を拡大する運転がある。このような運転では、圧縮機の後段側の翼列負荷が上昇し、翼面で剥離が発生する可能性がある。そうすると、空力性能と信頼性の低下が懸念される。特に、極低気温時の運転ではこの事象が顕著となる。
タービンが高圧タービンと低圧タービンに分かれて回転軸がそれぞれ別軸構成となっている2軸式ガスタービンでは、部分負荷時に高圧タービンの出力と圧縮機動力をバランスさせるためにIGVを通常より閉じた運転が必要となる。このような運転でも圧縮機の後段側の翼列負荷が上昇し、非定常な流れの剥離に起因する翼振動の増大が懸念される。
また上述したガスタービン用の軸流圧縮機では、1軸式と2軸式とで、スケール比以外の基本的な翼仕様を共通にできる。そうすると、翼の設計や試験,製作にかかる時間や労力を大幅に軽減することができる。ただしそのためには、ガスタービンの運用条件を考慮し、特に最終段静翼列の負荷上昇に対応した翼形状に設計チューニングすることが必要となる。さらに、最終段静翼列の上流側にタービンロータ冷却用の内周抽気スリットが設けられ、ここから多量に圧縮空気が抽気された場合、最終段静翼列の内周側の軸流速度が低減することで流入角が大きくなり、翼負荷が更に増大する可能性がある。そのため、最終段静翼列の定格点以外の作動状態、部分負荷や大気温度変化も考慮することが、圧縮機全体の空力性能および信頼性の観点から重要となってくる。
すなわち、ガスタービンの最過酷の運転時においても後段静翼列の負圧面側の剥離を抑制し、翼列振動の増大を回避できれば、圧縮機の効率向上と信頼性を確保できる軸流圧縮機を提供できる。そのためには、軸流圧縮機の最終段静翼列への流れの流入角と翼入口角の差であるインシデンス角を、インシデンス作動領域の限界ライン以下にすることが有効である。
そうすれば、1軸式や2軸式ガスタービンの部分負荷といったIGVを閉じた運転において、圧縮機の後段側に位置する静翼列の負荷が増加した場合でも、最終段静翼列の翼負圧面で発生する剥離を抑制でき、翼列の信頼性を確保できる。また、最終段静翼の上流側にタービンロータ冷却,シール用の内周抽気スリットにより、最終段静翼の内周側で軸流速度が低減することによる流入角の増加に対しても翼列作動範囲を拡大でき、翼列性能の向上および信頼性を確保することができる。
更に、圧縮機後段側の静翼列の作動範囲が拡大できることで、ガスタービン部分負荷におけるIGV開度変化量を拡大でき、それに伴って圧縮機吸込流量も制御可能となる。結果として、ガスタービン部分負荷の運用範囲を拡大させることができる。
図2にガスタービンシステム構成図の概略を示す。以下、図2を用いてガスタービンシステムの構成例について説明する。
ガスタービンシステムは、空気を圧縮して高圧空気を生成する圧縮機1と、圧縮空気と燃料を混合して燃焼させる燃焼器2と、高温の燃焼ガスにより回転駆動するタービン3から構成されている。圧縮機1とタービン3は回転軸5を介して発電機4と接続されている。本実施例のガスタービンは1軸式のものを想定しているが、タービン側が高圧タービンと低圧タービンで別軸構成となっている2軸式ガスタービンであっても構わない。
次に、作動流体の流れについて説明する。作動流体である空気11は圧縮機1へ流入し、圧縮機で圧縮されながら高圧空気12として燃焼器2に流入する。燃焼器2で高圧空気12と燃料13が混合燃焼され、燃焼ガス14が生成される。燃焼ガス14はタービン3を回転させた後、排気ガス15として系外部へ放出される。発電機4は、圧縮機1とタービン3とを連通する回転軸5を通じて伝えられたタービンの回転動力により駆動される。圧縮機1の後段から高圧空気の一部がタービンロータ冷却空気およびシール空気として、ガスタービンの内周側流路を介してタービン側へ供給される。この空気16は、タービンロータを冷却しながら、タービン3の高温燃焼ガス流路へ導かれる。この冷却空気は、タービンの高温燃焼ガス流路からタービンロータ内部へ高温ガスの漏れこみを抑制するシール空気の役割も兼ねている。
図3に、多段の軸流圧縮機の模式図を示す。軸流圧縮機1は、複数の動翼列31が取り付けられた回転するロータ22と、複数の静翼列34を取り付けたケーシング21から構成されている。軸流圧縮機1にはロータ22とケーシング21により環状流路が形成されている。動翼列31と静翼列34は軸方向に交互に配列されており、1つの動翼列と静翼列とで段を構成している。動翼列31の上流側には、吸込み流量を制御するための入口案内翼33(IGV:Inlet Guide Vane)が設けられる。
本実施例の圧縮機1の前段側静翼列は、ガスタービン起動時の旋回失速を抑制するための可変機構を備えている。図3では可変機構を備えた静翼列は静翼列34だけ図示しているが、可変静翼列を複数段備えている場合もある。
最終段動翼列32の下流側には、最終段静翼列35と出口案内翼36,37(EGV:Exit Guide Vane)が設けられる。EGV36,37は環状流路内の動翼列が作動流体に与えた旋回速度成分のほとんど全てを軸流速度成分に転向させる目的で設置されている。EGV37を出た流れを減速させながら燃焼器へ導入するために、圧縮機の下流側にはディフューザ23が設置されている。なお、図3では出口案内翼が軸方向に2段構成の場合を示すが、EGVが1翼列であっても、それ以上であっても構わない。また、最終段動翼列32の下流側、最終段静翼列35の上流側の内周には、タービンロータ冷却空気およびシール空気16を供給するための内周抽気スリット24が設けられる。
圧縮機1の環状流路内に流入する空気11は、この環状流路を通過しながら、各翼列により減速,圧縮されて高温高圧の気流になる。具体的には、動翼列の回転により流体の運動エネルギーが増加され、静翼列で減速されて運動エネルギーを圧力エネルギーに変換されることで昇圧される。このように、作動空気には動翼列により旋回速度が与えられるので、圧縮機1の最終段静翼列35への流れは約50〜60degの流入角で流入することになる。圧縮機出口に位置するディフューザ23へ流入する流れである高圧空気12は、流入角ゼロ(軸流速度成分)にする必要がある。そのため、最終段静翼列35と出口案内翼36,37から構成される静翼列で約60degから0degまで流れを転向させることが空力性能向上のために重要となる。
なお、各翼列の圧力上昇(翼列負荷に相当)は翼列の設定角度と運転状態により決定される。翼列負荷が最も厳しくなる運転状態においても翼列の空力性能と信頼性を確保する必要がある。
次に、ガスタービン圧縮機の運転状態について説明する。
ガスタービンは定格運転のみならず起動時や部分負荷時、更に大気温度変化に対応して、性能および信頼性を確保する必要がある。ガスタービンの部分負荷特性を向上させることでガスタービンの運用負荷領域を拡大させることは、夜間など電力がそれ程必要でないときの運転上のメリットが大きい。
1軸式ガスタービンの出力を制御する方法として、運用負荷領域を拡大させるために、燃焼温度を定格温度に保持した状態でIGV開度の開閉により圧縮機吸込流量を変化させる方法がある。このような運転においてIGVを閉じた場合、圧縮機の後段翼列の負荷が増加し、特に最終段静翼列35の負荷増大が懸念される。この理由について図9を用いて説明する。
図9は軸流圧縮機の定格負荷運転時の段圧力比分布を示す。一般的に、軸流圧縮機の定格負荷運転時の段圧力比分布は、図9に実線で示すように、初段から最終段までほぼ線形に減少する分布である。一方で、部分負荷運転のIGVおよび可変静翼を閉じた場合の段圧力比分布を点線で示す。部分負荷運転時には、IGVや可変静翼を有する段落では動翼への流入角が小さくなるため、段圧力比(段負荷)が小さくなる。そして、可変静翼後の段落から最終段までの段圧力比は線形に減少する。一方、可変静翼段で圧力が減少した分を、他の段落で補う必要があるため、必然的に後段側になるほど段圧力比(段負荷)が定格負荷運転時に比べて高くなる。
大気温度が低い場合には、この部分負荷運転時の後段翼列の負荷増加が顕著となり、翼列の信頼性の低下と空力性能の低下をもたらす。翼負荷が限界ラインに達すると、翼列は剥離により流体励振される。その翼列振動応力が許容応力値以上になると翼列が損傷する可能性が高くなる。
図3で示した圧縮機前段側の可変静翼が複数段ある場合、通常IGVと連動して可変静翼も開閉される。そのため、IGVを閉じた部分負荷運転時には可変静翼列も閉じられる。したがって、可変静翼列のある段落では段仕事が低減するが、圧縮機全体の圧力比は変わらないので、更に後段翼列の負荷が増大する結果となる。そして、環状流路の後段側では側壁境界層が発達しているため、側壁部分では軸流速度が低下し、その影響で静翼列の側壁部では流入角が大きくなり主流部に比べて負荷が増大する。これにより後段側翼列の側壁部では前段側の翼列より流れが剥離しやすい状態となる。
一方2軸式ガスタービンにおいては、部分負荷運転では高圧タービンの出力と圧縮機動力をバランスさせるために、IGVを閉じて吸込流量を低減させて圧縮機動力を小さくする。一方、高圧タービンでは圧力比を高めにさせて出力を大きくする必要がある。このようなIGVおよび可変静翼が閉じられた運転では、後段側翼列、特に最終段静翼列の負荷が増加し性能および信頼性を確保することが課題となる。
後段静翼の負荷増加は、大気温度にも大きく影響される。大気温度が低温になると、上記した圧縮機特性が顕著になり部分負荷におけるガスタービンの信頼性が低下する可能性が高い。更に、圧縮機の入口で多量の水噴霧によりガスタービンの出力および効率向上させるようなガスタービンシステムにおいても同様で、圧縮機の前段側の翼列負荷が低減し、後段側の翼列負荷が増加する傾向となる。そのため、上記した運転と同様な問題が生じる。
本実施例の最終段静翼列の上流側の内周には、タービンロータ冷却およびシール空気を抽気する抽気スリットが設けられる。その抽気スリットで多量の抽気量を取り出すと、最終段静翼列へ流入する流れの流入角が大きくなる。最終段静翼列の上流側で内周抽気がある場合、抽気により静翼列の内周側では軸流速度が低減する。そのため流入角が大きくなり、翼負圧面側で流れが失速して大剥離する可能性がある。図3の最終段静翼列35のようにケーシングに取り付けられた片持ち支持の静翼では、特に内周側で剥離が発生すると翼列は流体励振され、バフェッティングや失速フラッタといった流体振動により翼列を損傷する恐れがある。
図4を用いて、最終段静翼列35の翼負荷増加の問題について説明する。図4は、最終段静翼列35のあるスパン方向断面図と、翼へ流入するインシデンス−全圧損失特性図を示す。ここで、インシデンス角は翼へ流入する流れの流入角β1と翼入口角βb1との差で現される。
最終段静翼列35はガスタービン定格運転のインシデンス角idにおいて翼列性能が最大で、かつ起動から定格といった様々な運転範囲においてチョーク側icとストール側isからなる作動領域42を十分に確保できるように設計される。インシデンス角idで静翼列35に流入した流れは翼負圧面側に沿って減速され、下流側の出口案内翼列へ導入される。しかし、ガスタービンの部分負荷運転時に、低大気温度,内周抽気量の増加、さらに圧力比が増加するなど、最終段静翼列35のインシデンス角が大きくなりストール側の限界インシデンス角is以上に変化した場合、静翼列35の負圧面側で剥離が発生し、翼列の正の失速を引き起こす。このような剥離現象は、翼列の性能や信頼性に悪影響を及ぼす。そのため、翼面での剥離を抑制するために静翼列35の作動領域42の拡大が必要であり、そのためにも静翼列35のインシデンス角の適正化を図ることが重要となる。
図5を用いて、本実施例の最終段静翼列35のインシデンス角の改良方法について説明する。図5は、図3のA−A断面を示し、点線が比較翼である静翼列35,実線が本実施例の改良翼38の断面図である。静翼列35,改良翼38では、ケーシングに複数枚の翼が周方向に、あるピッチ長さで取り付けられている。本図では、あるスパン方向断面の周方向に1枚の翼列だけを示し、その他の翼は省略してある。
本実施例の改良翼38では、後縁の反りを変更しないで、前縁近傍の反りを大きく(曲率半径を小さく)している。その結果、翼コード方向と軸方向とのなす角度である取り付け角度ξは、比較翼35より大きくなっている。ここで、翼前縁近傍とは、翼の最大厚み位置よりも前縁側を意味している。具体的には、本実施例の比較翼35の最大厚み位置は30〜40%コード長である。このように、基準となる静翼である比較翼35に対し、最終段静翼である改良翼38の最大厚み位置よりも上流側かつ前縁側の反りを、最大厚み位置よりも下流側の反りの変化量に比べてより大きくすることで、ストール側のインシデンス角isまでの作動領域を拡大できる。一方、下流側の出口案内翼に流入する流れが変化しないので、流れが下流静翼へ与える影響を微小にできる。
図6を用いて一般的なインシデンス角の改良手法について説明する。図6は、軸流圧縮機1の静翼列のスパン方向断面図を示す。インシデンス角を改良する場合、図6(a)(b)に示すように、翼の取り付け角度を変更する(図6(a))方法や、翼全体の反り角を変更する(図6(b))方法が一般的である。このような改良では図5の本実施例翼と同様に、ストール側のインシデンス角isまでの作動領域を拡大できる効果は得られる。ところが、最終段静翼列の流出角が比較翼からずれるため、下流側に位置する出口案内翼への流入角が変化する。特に図6(a)では静翼列39の流出角が大きくなるので出口案内翼36の流入角が増加し、出口案内翼36の負圧面側で剥離する可能性がある。そうすると、圧縮機の性能低下および信頼性の低下に繋がる。
図6(a)や図6(b)で示す方法が一般的な理由について説明する。図6(a)のように翼形状を変更しないで、翼取り付け角度ξだけを変更する場合、翼形の図面化が省略できるメリットがある。通常の翼形の図面は、取り付け角度がゼロで図面化されるので、取り付け角度だけの変更では翼形の図面を共通化できる。
また、圧縮機の後段翼にはNACA65翼と言われる一般的な翼形状が適用される。この翼設計方法は反り線に厚み分布を付加することで翼形状が生成される。このような翼形設計方法は設計ツールも整備されているので反り線だけを変更し厚み分布を変更しないような図6(b)のような形状であれば、ほぼ自動的に翼形設計することが可能である。
図6(a)(b)のような翼形の変更の際、動翼列間の複数段の静翼列に適用させることで、変更した最終の翼の後縁からの流れ(流出角)を許容範囲内になるように設計変更することは可能であった。しかし前述のように、最終段の静翼より下流側の出口案内翼では流出角をゼロにすることが望ましいということ、さらに、翼形変更が可能な翼が静翼だけで、段数も少ないという知見を利用し、本実施例のような設計方法が効果的であるという結論に達した。図6(a)(b)のような翼形改良では、流出角のズレが大きくなるため、性能低下や信頼性の低下をもたらす。本実施例のような改良翼を用いることにより流出角のズレを抑制することができる。
次に図1を用い、本実施例の改良翼38の前縁近傍の反り量について説明する。図1は大気温度に対するインシデンス角の関係を示す。インシデンスは前縁反りに相当する。
翼列は、部分負荷や大気温度特性を考慮しながら、設計大気温度Tdesで損失が最小になる設計インシデンス角idで設計される。しかし、1軸式ガスタービンや2軸式ガスタービンの運転制御の相違や、部分負荷や極低気温といった運用条件を考慮すると、インシデンス作動範囲が厳しくなる可能性がある。このようなガスタービンの運用範囲でも圧縮機の翼列を共用化させられれば、設計,製造,組立,管理などの面でメリットが大きい。
図1の点線51では、比較翼が設計大気温度Tdesで最小損失になるように設計され、大気温度Tminで部分負荷時において、インシデンス角がストール側限界ラインisを超過する場合を示す。このような運転状態では、インシデンス角はインシデンス作動領域の最大値以上になるので、図4(b)に示すように翼負圧面側で流れが剥離(正の失速)して、損失の増大および流体振動による翼列損傷を引き起こす可能性が高まる。
本実施例の改良翼38は図5の実線で示すように翼前縁近傍の反りを大きくしている。そのため、図1の実線52で示すように、大気温度Tmin時のインシデンス角がストール限界インシデンスis以下になるようにできている。これにより設計大気温度Tdesにおけるインシデンス角が最小損失のインシデンス角idからずれるため、損失は若干増加する。ただし、高気温側Tmaxでは、チョーク側の限界インシデンスicに対して十分な余裕がある。またストール側のインシデンス角の裕度を優先させることで、仮にチョーク限界インシデンスicを超過した場合においても翼列のチョーク側である翼圧力面側の剥離(負の失速)では翼列振動が発生する危険性はないため、信頼性は確保できる。
このように低気温時(例えば東京の最低気温程度である−10℃や日本の最低気温程度である−40℃)のインシデンス角をストール限界インシデンス以下にして、全大気温度範囲においてインシデンス作動領域内にすることで、設計大気温度での損失を最小限に抑えて、低気温時の部分負荷運転でも最終段静翼の信頼性を確保することが可能となる。
すなわち、回転軸5であるロータと、このロータに設けられた複数の動翼列と、この動翼列の外側に位置するケーシング21と、ケーシング21に設けられた複数の静翼列と、この静翼列のうちの最終段静翼列35の下流側に設けられた出口案内翼36や37を備えた軸流圧縮機において、最終段静翼列35の流れのインシデンス角が、インシデンス作動領域の限界ライン以下であるような軸流圧縮機とすれば、翼負圧面側での流れの剥離を抑制できるため、損失の増大および流体振動による翼列損傷を引き起こす可能性の少ない、空力性能や信頼性の低下を抑制可能な軸流圧縮機を提供できる。
なお、最終段静翼列の上流側に内周抽気スリットを有する圧縮機であれば、空力性能や信頼性の低下を抑制する効果はさらに大きい。最終段静翼列の内周側の軸流速度が低減することで流入角が大きくなり、翼負荷が特に大きくなっているからである。
図7に、翼面の等エントロピーマッハ数分布の比較を示す。点線は設計大気温度Tdesにおける比較翼のマッハ数分布、実線は本実施例の改良翼38におけるマッハ数分布を表している。全体としてマッハ数の高い側が負圧面、低い側が圧力面をあらわしている。
図7に示した改良翼38の比較翼との相違点の一つは、翼前縁近傍において圧力面側と負圧面側のマッハ数分布が交差している点である。改良翼,比較翼ともに、インシデンス角が大きくなるにつれて負圧面側の翼前縁近傍のマッハ数が高くなり、翼前縁近傍の負圧面と圧力面のマッハ数の差が大きくなる。このような負圧面の前縁近傍のマッハ数の限界値を超えると負圧面側で剥離が発生する。比較翼の前縁近傍では負圧面のマッハ数が圧力面に比べて大きく、マッハ数分布が開いているのでインシデンス角が大きくなるにつれて前縁の最大マッハ数が増加し、負圧面側で流れが剥離し易くなる。一方、本実施例の改良翼38では、翼前縁近傍において圧力面側と負圧面側のマッハ数分布が交差するまで負圧面の翼前縁近傍のマッハ数を低く設計している。そうすると、インシデンス角が大きくなっても比較翼に比べて前縁での最大マッハ数に余裕があるため、部分負荷で最低気温Tminにおいてもストール限界インシデンス以下にすることが可能となり、部分負荷の性能向上と信頼性を確保できる。
このように定格温度での翼面等エントロピーマッハ数に関し、最終段静翼列である改良翼38の前縁近傍で圧力面側と負圧面側のマッハ数分布が逆転するよう構成すれば、インシデンス作動領域を実質的に広げることができ、信頼性の高い軸流圧縮機を提供することができる。
図8を用い、本実施例における改良翼38の、流体振動に対する信頼性を確保できる構造について説明する。図8は、最終段静翼列のシュラウド構造を示す。図8(a)は、最終段静翼の支持構造として、外径側にダブテイル構造71、内径側にシュラウド構造72を設けて、両端で支持されたものを示す。一般的な最終段静翼は、図3で示すように、ケーシング側のダブテイル構造で肩持ち支持された構造である。一方、本実施例では両端で支持することで、翼の剛性を増加させて流体励振による翼振動を抑制できる。
通常、圧縮機の後段側の静翼では、動翼と異なり、翼の内径から外径まで翼コード長が一定で、翼取り付け角度もほぼ同等であるため、その形状は翼高さ方向にほぼ直線的となる。また、圧縮機翼は直方体の素材から機械加工により生成される。そのため素材コストを考えると、ダブテイル形状サイズは翼のフィレット半径を確保できる大きさにすることが望ましい。
フィレットは、溶接の用語で隅肉部を示す。図8(a)に示すように、ダブテイル面に近づくにつれて、翼部の翼厚みを段階的に大きくさせる形状がフィレットである。このフィレットがあることで、翼根元に働く局所応力を低減させている。一般的にはフィレット半径が大きいほど局所応力を低減できる。しかし、フィレット半径を大きくするとフィレット部がダブテイルから途中で切断される可能性がある。フィレット部が途中切断される場合、隣接翼におけるダブテイル接触面において、環状ガスパス形状に段差が発生する。その段差の影響は空力性能を低下させる要因となり、好ましくない。
さらに、産業用ガスタービン圧縮機のケーシングは上下の半割れ構造である。そのためダブテイルのガスパス面の形状が矩形構造であれば、組立時にケーシングに静翼を挿入したときケーシング半割れ面とダブテイル側面が一致させることができ、組立検査が容易になるメリットがある。
翼半径の違いにより、内周側のシュラウドの周方向長さlは、ダブテイルの周方向長さLに比べて短くなる。しかし内外周ともに矩形構造にした方が、製作性における素材コストおよび組立性でメリットは大きくなる。ただしケーシング側の肩持ち構造の圧縮機翼列をガスタービンの運用を考慮して、本実施例のように両持ち構造に変更する場合、シュラウド側のガスパス面の形状を図8(b)に一点鎖線で示した矩形(II)のようにすると、翼のフィレットRを確保することが困難になる。最悪の場合、翼前後縁付近がシュラウドに乗らない可能性もある。特に、最終段静翼列では翼取り付け角度が大きいので、その点からもシュラウド構造を矩形(II)のようにすることが困難となる。
このような構造では翼前後縁付近の剛性を確保できなくなる。そのため翼全面をシュラウドで覆う構造に比べて信頼性が低下する。また、局所的に翼先端間隙ができてしまうため、漏れ損失や流れの衝突損失による損失増加も懸念される。
そこで、本実施例の改良翼38は、その両端をダブテイルとシュラウドに接続させている。その上で外周側のダブテイルは図8(b)に実線で示した矩形構造(I)とし、内周側のシュラウドは図8(b)に点線で示した周方向端面を傾斜させる構造(III)にしている。別の言い方をすれば、ダブテイルの周方向端面と、前記シュラウドの周方向端面の傾きを異ならしめている。具体的には、ダブテイルを径方向から見た形状が長方形であり、シュラウドを径方向から見た形状が平行四辺形である。このような形で内外周の両端支持構造にすることで、部分負荷で低気温時でも翼の流体加振による翼の励振を抑制でき、ガスタービンの信頼性を確保することができる。
以上説明したように、本実施例の圧縮機を用いることでガスタービンの性能と信頼性を確保でき、さらに運用負荷領域も拡大できるガスタービンシステムを提供することができる。また、本実施例の改良翼38を既存の圧縮機の最終段静翼と取り替えることで、改造により本実施例で説明したような各種効果を奏する圧縮機を得ることもできる。
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 発電機
5 回転軸
11 空気
12 高圧空気
13 燃料
14 燃焼ガス
16 空気
21 ケーシング
22 ロータ
23 ディフューザ
24 内周抽気スリット
31 動翼列
32 最終段動翼列
33 入口案内翼(IGV)
34,35 静翼列
36、37 出口案内翼(EGV)
38 改良翼
41 最終段静翼列の流入角−全圧損失特性
42 翼列作動範囲
71 ダブテイル構造
72 シュラウド構造

Claims (9)

  1. ロータと、
    前記ロータに設けられた複数の動翼列と、
    前記動翼列の外側に位置するケーシングと、
    前記ケーシングに設けられた複数の静翼列と、
    前記静翼列のうちの最終段静翼列の下流側に設けられた出口案内翼を備えた軸流圧縮機において、
    前記最終段静翼列の流れのインシデンス角が、インシデンス作動領域の限界ライン以下であることを特徴とする軸流圧縮機。
  2. 請求項1の軸流圧縮機において、
    定格温度での翼面等エントロピーマッハ数に関し、前記最終段静翼列の前縁近傍で圧力面側と負圧面側のマッハ数分布が逆転することを特徴とする軸流圧縮機。
  3. 請求項1または2の軸流圧縮機において、
    前記最終段静翼列の各静翼はダブテイルとシュラウドに接続されており、
    前記ダブテイルの周方向端面と、前記シュラウドの周方向端面の傾きが異なることを特徴とする軸流圧縮機。
  4. 請求項1から3のいずれかの軸流圧縮機の設計方法において、
    基準となる静翼に対し、最終段静翼の最大厚み位置よりも上流側かつ前縁側の反りを、
    最終段静翼の最大厚み位置よりも下流側の反りの変化量に比べてより大きくすることを特徴とする軸流圧縮機の設計方法。
  5. ロータと、
    前記ロータに設けられた複数の動翼列と、
    前記動翼列の外側に位置するケーシングと、
    前記ケーシングに設けられた複数の静翼列と、
    前記静翼列のうちの最終段静翼列の下流側に設けられた出口案内翼を備えた軸流圧縮機の改造方法において、
    前記最終段静翼列の各翼を、翼の最大厚み位置よりも上流側かつ前縁側の反りを、翼の最大厚み位置よりも下流側の反りの変化量に比べてより大きくした翼に取り替えることを特徴とする軸流圧縮機の改造方法。
  6. ダブテイルとシュラウドとを有する圧縮機静翼であって、
    前記ダブテイルの周方向端面と、前記シュラウドの周方向端面の傾きが異なることを特徴とする圧縮機静翼。
  7. 請求項6の圧縮機静翼において、
    前記ダブテイルを径方向から見た形状が長方形であり、前記シュラウドを径方向から見た形状が平行四辺形であることを特徴とする圧縮機静翼。
  8. 請求項1の軸流圧縮機において、
    前記最終段静翼列の上流側に内周抽気スリットを有することを特徴とする軸流圧縮機。
  9. 請求項1の軸流圧縮機において、
    前記最終段静翼列の流れのインシデンス角が、大気温度−40℃におけるインシデンス作動領域の限界ライン以下であることを特徴とする軸流圧縮機。
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