JP2012156802A - インシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法 - Google Patents

インシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オーディオ機器の支持に用いられるスパイク方式インシュレータは、オーディオ機器→床面の方向には振動が伝達され易く、その逆方向には伝達されにくい効果を利用したものであるが、低周波の振動を減衰させ、低周波の床面振動とスピーカー本体の振動の相互干渉がもたらす音質の劣化を回避する。
【解決手段】スパイク方式と、スパイク方式の弱点である低周波における振動遮断効果の不足を補うフローティング方式を組み合わせることにより、可聴域以上の全周波域領域で、より効果的に振動遮断作用が得られる点に注目したものである。オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動の影響を回避できると共に、奥域感、分解能、透明感などの音響特性を飛躍的に向上できる。フローティング方式に用いるばねを高剛性化できるため、低域の力感、ブーミー現象、オーディオ機器の支持安定性などに対して大幅な改善が図れる。
【選択図】図1

Description

本発明はオーディオ機器である、スピーカー、アンプ、CDプレイヤー、アナログプレイヤー等に用いられるインシュレータ、及び、これらのオーディオ機器の支持方法に関するものである。
オーディオの分野においては、原音に限りなく近い音の追及が、オーディオ機器である、アンプ、スピーカー、CDプレイヤー、ケーブルなどの各コンポーネンツにおいてなされてきた。アナログからデジタルの時代に移行し、様々な革新的技術が投入されたにもかかわらず、録音から再生に至る過程の技術にはまだ限界があって、人間の聴覚が知覚する程には、原音を忠実に再現できないのが現状である。オーディオ機器が原音(たとえばオーケストラの生演奏の音)に追従できない要因の一つに、振動がオーディオ機器に与える影響がある。周知のように、オーディオ機器は自ら振動を発生するとともに、外部から様々な振動の影響を受けている。アンプの場合は電源トランスの交流基本信号とその高調波成分による「うなり」が発生する。CDプレイヤーの場合はディスクを回すモーターが振動源となる。スピーカーの場合、コーンを駆動するボイスコイルの反力がスピーカー・エンクロージャー(箱)本体を振動させる。この振動がスピーカーを設置した床面に伝達され、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させる。原音に複雑に重畳された外乱振動は、再びスピーカー本体を振動させる。この時発生する混変調歪(サブハーモニクス)がオーディオ機器の音質を劣化させるという仮説が提唱されているが、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動が、再生音の品位を低下させる重要な要因であるという点は、間違いのない事実であると思われる。
オーディオ機器の音質を改善するものとして、インシュレータがある。アナログ時代、ハウリングを抑止するために、インシュレータは主にアナログプレイヤーと床面との間に設置され、振動の伝達を遮断する手段として必須のものであった。アナログからCDプレイヤーに移行して、インシュレータはハウリング防止対策ではなく、オーディオ機器の音質を改善し、リスナーの好みの音に調整するチューニング手段として用いられるようになった。インシュレータの適用により、音質が変ることは良く知られているが、その効果をもたらすメカニズムについては、理論的に十分解明されているとは言えず、経験的、試行錯誤的に開発されたものが多い。過去、インシュレータとして用いられているものに、次の三つのタイプがある。
(1)スパイク構造によるインシュレータ
このタイプのインシュレータは、円錐形状のスパイクとスパイク受けから構成されるもので、スピーカー、あるいはオーディオボードの設置に多用されている。たとえば、複数個のスパイクを直列に配置した構造が特許第3848987号(特許文献1)に開示されている。
図15に示すダブルスパイク構造の振動防止支持装置は、スパイク受け600と、第1のスパイク601と、第2のスパイク602と、スパイク受け600に入れられた液体603とで構成される。第1のスパイク601は円柱部分がスパイク受け600の円筒の内壁と接するようにスパイク受け600の下端に挿入される。第2のスパイク602は、同様に第1のスパイク601の上面の中心に設けた窪みに円錐部分の頂点を置いている。スパイク受け600と、第1のスパイク601間の狭い隙間に満たされた液体603は、両部材600、601間の振動を絶縁する効果を有する。
(2)硬質材料によるインシュレータ
インシュレータのもうひとつのタイプは硬質材を用いるものである。近年、前述した緩衝体に代わり、オーディオ機器が発生する振動を効果的に吸収し、外部へ逃すことを目的とした硬質材、たとえば、木材、樹脂、金属、セラミック等を用いたもの、及びこれらの素材を多層構造にした複合タイプが考案され商品化されている。この複合タイプについては、特開平10-246284号(特許文献2)に開示されている。硬質インシュレータの場合は、良質な音響素材のキャラクターを利用した再生音のチューニング手段として用いられる。たとえば、
(a)金属系材料
真鍮:キラリとした明るいブリリアントな響き
銅:重厚感があってパワフル
銀:芯のとおりが良く、音の立ち上がり・立ち下がりが素早い
金:ふくよかさで艶やか
(b)木材系材料
アフリカ黒檀:固いが刺激的ではない音(楽器に使用される)
縞黒檀:アフリカ黒檀より柔らかい
桜:柔らかく芳純
(3)フローティング方式インシュレータ
このタイプのインシュレータは、振動の遮断(シャットアウト)を目的としたもので、剛性の小さい緩衝体が用いられる。緩衝体として、ゴム材を用いたもの、スプリングコイルを用いるもの、空気を封じ込めたエアーフローティング・ボード、磁力の反発力を利用したものなどがある。
特許第3848987号 特開平10-246284号公報 特開2006-200734号公報 特開平10-246284号公報
以下、オーディオ用インシュレータとして、上述した3つの従来方式が抱える課題を整理すると、次のようである。
(1)スパイク構造によるインシュレータの課題
スパイク構造によるインシュレータは、「オーディオ機器→円柱部→円錐部→受け皿→床面」の方向には振動が伝達され易く、その逆方向には伝達されにくい効果を利用したものである。しかし、低周波数(たとえば、数十Hz以下)の振動を減衰させることはできない。円錐形状のスパイクの場合、及びこのスパイクを直列に多段に組み合わせた場合も同様である。特許文献1には、スパイクの円筒面とこの円筒を収納するスパイク受けの間の狭い隙間に、粘性流体であるシリコンオイルを封入する方法が開示されている。しかし、この粘性流体による振動減衰作用は周波数に比例するため、低い周波数では振動減衰効果を得るのは困難である。
(2)硬質材料インシュレータの課題
硬質材料インシュレータの場合は、良質な音響素材の選択により、オーディオ機器が発生した高周波振動を効果的に吸収し、外部へ逃すことはできる。しかし、低周波数の振動を減衰させることはできない点はスパイク方式と同様である。スピーカーが設置される民間住宅の床面は、通常20〜100Hzを固有値とする分布振動モードを持っている。前述したように、スピーカーの振動が床面に伝達されると、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させる。この低周波の床面振動とスピーカー本体の振動の相互干渉がもたらす音質の劣化は、硬質材料インシュレータでは、スパイク方式同様に基本的に回避できない。
(3)フローティング方式インシュレータの課題
上述したゴム製インシュレータの場合は、ゴムの粘弾性による過剰な制振作用により、音に生気を与える高周波数成分まで減衰してしまうため、音の輪郭が曖昧となり、音質に混濁感が生じるという欠点があった。
スプリング方式の場合、ばね剛性と搭載物の質量できまる固有振動、及び、複数の高調波振動が広い周波数領域に渡って発生するため、この振動が音に与える影響をどう回避するかが大きな課題となる。
エアーフローティング・ボード、及び、磁力の反発力を利用したインシュレータの場合、オーディオ機器は床面に対して完全非接触で浮上できる。この完全非接触浮上により、音の透明感、立体感、分解能の向上などの効果が注目されている。反面、オーディオ機器から床面に伝達される振動は、インシュレ−タで完全遮断されるために、リスナーの好み、音楽のジャンルなどに合わせた音質のチューニングが硬質材料インシュレータと比べて難しく、音が没個性的になるという欠点があった。また、完全非接触浮上式(低剛性フローティング方式)の場合、適用対象のスピーカーによって、低域の力感・定位感が低下する、低音が引き締まらず空間に浮遊した不自然な感じ(ブーミー)になるという欠点が指摘されている。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、下記(1)(2)の方式
(1)スパイク方式によるインシュレータ
(2)フローティング方式インシュレータ
すなわち、一方向には振動が伝達され易く、その逆方向には伝達されにくい効果を利用した上記(1)のスパイク方式と、スパイク方式の弱点である低周波における振動遮断効果の不足を補う上記(2)のフローティング方式を組み合わせることにより、可聴域以上の全周波域領域で、より一層効果的に振動遮断作用が得られる点に注目したものである。本発明により、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動の影響を回避できると共に、奥域感、分解能、透明感などの音響特性を一層飛躍的に向上できる。また、フローティング方式に用いるばねを高剛性化できるため、フローティング方式の弱点である、低域の力感、ブーミー現象、オーディオ機器の支持安定性などに対して大幅な改善が図れる。
具体的に、請求項1の発明は、弾性部材の固定部と、前記弾性部材に設けられた荷重支持部と、前記弾性部材の高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段と、前記荷重支持部に形成されたスパイク先端受け部、あるいは、前記荷重支持部に装着されてスパイク先端を直接もしくは受け皿を搭載して支持できるディスク部から構成したものである。
すなわち、本発明においては、下記(i)(ii)の長所を併せ持つことができる。
(i)スパイク方式によるインシュレータの長所
(ii)フローティング方式インシュレータの長所
インシュレータ内部、あるいはオーディオ機器側に設けられたスパイク方式インシュレータの一方向伝達特性と、スパイク方式では得られない低周波域の振動遮断効果をフローティング方式が補うことにより、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動の影響を回避できると共に、奥域感、分解能、透明感などの音響特性を一層飛躍的に向上できる。高周波数域ではスパイク方式の振動遮断効果が補ってくれるために、高剛性ばねを選択できる。その結果、フローティング方式の弱点(設置安定性、低域の力感)を大幅に改善できるインシュレータを構成できる。
具体的に、請求項2の発明は、前記弾性部材は機械ばねで構成したものである。
すなわち、本発明においては、機械ばねとして、スプリングコイル、円錐コイルばね、皿バネ、あるいはこの皿ばねを多段に積み重ねた構造、竹の子ばね、輪ばね、渦巻きばね、薄板ばね、重ね板ばね、U字型ばねなど、オーディオ用インシュレータに要求される形状、寸法などを考慮して選択できる。
具体的に、請求項3の発明は、搭載される搭載物の質量と前記弾性部材のばね剛性で決まる除振特性により20Hz以下での振動遮断作用を得るように前記弾性部材のばね剛性を設定したものである。
すなわち、本発明においては、可聴周波数域の限界値f0=20Hzとしたとき、f>f0において振動減衰効果が得られるように搭載物の質量と前記弾性部材のばね剛性で決まる固有値を設定することにより、従来スパイク方式では得られない低周波域での振動遮断効果が得られる。
具体的に、請求項4の発明は、機械ばねにスプリングコイルを用いて、このスプリングコイルの概略線径はφ3〜φ6mmの範囲に設定したものである。
すなわち、本発明においては、太い線径のスプリングコイルはマクロに見れば、外径と巻数の選択により剛性の調節が容易な集中ばね、ミクロの現象で捉えれば、高周波の音波を伝搬する音響管(sound tube)の役割ができるという点に着目したものである。「オーディオ機器→スパイク→中間支持部材→音響管(スプリングコイル)→床面」に至る振動の伝達を振動伝播経路Φzとする。オーディオ機器が発生した高周波振動は、前記振動伝播経路Φzを通じて外部へ逃すことで、音響素材が持つキャラクターを利用した再生音のチューニングが図れる。
具体的に、請求項5の発明は、前記荷重支持部から前記弾性部材に至る振動伝播経路は107Ns/m3以上の固有音響インピーダンスを有する材料で構成したものである。
すなわち、本発明においては、荷重スリーブからスプリングコイルに至る振動伝播経路Φzに、スプリングコイル(鋼)と同レベルの固有音響インピーダンスが大きな材料(z>107Ns/m3)を用いることで、オーディオ機器から上部スリーブに入射した音波は、スムーズに音響管(スプリングコイル)内に透過できる。その結果、良質な音響素材が持つキャラクターを利用した再生音のチューニングが、効果的に図れる。
具体的に、請求項6の発明は、前記ディスク部は、このディスク部に設置されるスパイク受け皿の横滑りが防止できるように断面が概略凹形状で構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記収納部材の断面を概略凹形状とすることにより、スプリング構造部全体が傾斜した場合、あるいは、インシュレータとオーディオ機器が相対的に摺動した場合でも、スパイク受けが横滑りして前記ディスク部から転落することはない。
具体的に、請求項7の発明は、スパイク円錐部と、スパイク円柱部と、オーディオ機器の荷重を支持するスパイク側荷重支持部によりスパイク構造部を構成し、前記スパイク先端受け部で前記スパイク円錐部を支持すると共に、前記固定部に形成された筒部に狭い隙間を介して軸方向に摺動可能に前記スパイク円柱部が収納されているものである。
すなわち、本発明においては、スパイク方式とフローティング方式の両インシュレータの長所を併せ持つと共に、スパイク円柱部が狭い隙間を介して、弾性部材の固定部に軸方向に摺動可能に収納されている。そのため、インシュレータのオーディオ機器への設置が容易であり、スパイク構造にラジアル荷重が加わった場合でも安定に支持できる。
具体的に、請求項8の発明は、オーディオ機器側に設置されたスパイク円錐部と、スパイク円柱部と、スパイク側荷重支持部より構成される部分をスパイク構造部としたとき、このスパイク構造部と請求項1で記載されるインシュレータを組み合わせて前記オーディオ機器を支持したものである。
すなわち、本発明においては、簡素化したインシュレータ構造により、スパイク方式によるインシュレータの長所とフローティング方式インシュレータの長所を併せ持つことができる。
具体的に、請求項9の発明は、前記スパイク側荷重支持部から前記弾性部材内部に至る振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを有し、かつこの振動伝播経路ΦRは概略筒型形状部材で構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記振動伝播経路ΦZに風鈴の振動系ΦRを組み合わせたものである。振動系ΦRは筒型形状部材(上部スリーブ)の端部を振動伝播経路ΦRの解放端として、前記振動伝播経路ΦZに対して並列配置された分布定数系の質量とバネで決まる振動系として振動伝播経路ΦZに影響を与える。良質な音響素材で構成された上部スリーブは、可聴領域内(f<15000Hz)で数多くの固有振動モードが存在し、これらの複数の固有振動モードが相乗されて、再生音に深みのある音色の変化を与える。また高周波数の固有振動モードは、ステレオ再生における音場感・定位感を向上させる。
具体的に、請求項10の発明は、前記概略筒型形状部材は固有音響インピーダンスが107Ns/m3以上の材料で構成したものである。
すなわち、本発明においては、高周波域での響きの親和性を考慮した良質な各種音響素材(固有音響インピーダンスが107Ns/m3以上)を、リスナーの音の好みに合わせて選択できる。
具体的に、請求項11の発明は、前記概略筒型形状部材は銅合金を用いたものである。
すなわち、本発明においては、上部スリーブ(概略筒型形状部材)に音響素材として良好な特性を有する、たとえば真鍮を用いることにより、透明感がありながらも深みのある音色と余韻が再生音に加味されると共に、音の定位感、密度感、スケール感がさらに大幅に向上する効果が得られる。
具体的に、請求項12の発明は、前記銅合金は錫の含有率が1%〜25%の範囲で用いたものである。
すなわち、本発明においては、錫の含有量の多い銅合金、たとえば、「さはり材」を用いることにより、雅味豊かで澄んだ高音特性を有するインシュレータとなる。再生音に加わる音の余韻(空間の広がり感)は、錫の含有量が1%でも得ることができる。含有量を25%まで増加すると、さらに風鈴が持つ「いやし音」としての効果が増強される。
具体的に、請求項13の発明は、前記固定部の下部中央部に突設して形成された筒部と、この筒部に軸方向に設けられた貫通穴と、この貫通穴を通して前記荷重支持部に装着された締結部材と、この締結部材により前記固定部及び前記荷重支持部の相対的な軸方向距離の上限値を規制したものである。
すなわち、本発明においては、前記貫通穴を通して装着された前記締結部材で、前記荷重支持部のストローク上限値を規制することにより、前記固定部に対して前記荷重支持部の離脱を防止することができる。
具体的に、請求項14の発明は、フローティング方式インシュレータと直列に配置されたスパイク方式インシュレータでオーディオ機器を支持したものである。
すなわち、本発明においては、フローティング方式インシュレータはスプリングコイルだけではなく、空気を封じ込めたエアーフローティング方式、磁力の反発力を利用した磁気浮上方式、ゴム材を用いたものなどが適用できる。フローティング方式とスパイク方式の上下の配置方法はどちらでも適用できる。
具体的に、請求項15の発明は、スパイク方式インシュレータにおいて、オーディオ機器の荷重を支持する荷重支持部からスパイク円錐部に至る振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを有し、かつこの振動伝播経路ΦRは前記スパイク円錐部、もしくは、このスパイク円錐部の上部を収納する概略筒型形状部材で構成したものである。
すなわち、本発明においては、スパイク構造部に筒型形状の風鈴を設けた構成により、この構成単体としてもスパイク方式インシュレータとして、通常のスパイク受け皿と組み合わせて広く適用できる。この場合、低周波数域での振動遮断効果は無くなるが、従来のスパイク方式インシュレータと比べて、風鈴効果が加味された音響特性の向上が図れる。
具体的に、請求項16の発明は、弾性部材の固定部と、前記弾性部材に設けられた第1荷重支持部と、前記弾性部材の高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段と、前記第1荷重支持部に装着された円柱部と、この円柱部に設けられたオーディオ機器の荷重を支持する第2荷重支持部と、前記固定部に形成された筒部に狭い隙間を介して軸方向に摺動可能に前記円柱部を収納したものである。
すなわち、本発明においては、オーディオ機器の荷重を支持する第2荷重支持部に半径方向の荷重、あるいはモーメント荷重が加わった場合でも、前記円柱部が前記固定部に形成された筒部に狭い隙間を介して軸方向に摺動可能に収納されているため、スプリングコイルはスムーズに伸縮でき、振動絶縁効果を失わない。また、第2荷重支持部の傾斜角を僅少にできるため安定にオーディオ機器を支持することができる。
具体的に、請求項17の発明は、前記スパイク側荷重支持部に形成された第2スパイク先端受け部でオーディオ機器側に設置されたスパイク円錐部の先端を支持することにより、ダブルスパイク支持構造としたものである。
すなわち、本発明においては、一方向の振動伝達特性を有するスパイク方式を2段で構成して、かつフローティング方式を直列に配置することにより、より広帯域の振動遮断効果を得ることができる。
具体的に、請求項18の発明は、狭い隙間をΔとしたとき、Δ<0.5mmに設定したものである。
すなわち、本発明においては、請求項16の発明において、前記固定部に形成された筒部と前記円柱部の隙間をΔ<0.5mmに設定することにより、第2荷重支持部の傾斜角を十分に僅少にできるため、安定にオーディオ機器を支持することができる。
本発明により、(1)スパイク方式によるインシュレータの長所、(2)フローティング方式インシュレータの長所、上記(1)(2)を併せ持つインシュレータが実現できる。広い周波数範囲で振動遮断効果が得られるため、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動の影響を回避できると共に、奥域感、分解能、透明感などの音響特性を一層飛躍的に向上できる。また、支持剛性の高いインシュレータ構造にできるため、低剛性フローティング方式の弱点を回避できる高剛性ばねを選択できる。その結果、音響特性と支持安定性の両方に優れたインシュレータを構成できる。その効果は顕著である。
本発明の実施形態1を示すオーディオ用インシュレータで、図1aは上面断面図(図1bのA-A断面図)、図1bは正面断面図 本発明の実施形態1に係るオーディオ用インシュレータを用いたオーディオ・システムの矢視図 実施形態1におけるオーディオ用インシュレータにおいて、スプリング構造部の低周波数域における振動絶縁効果の解析結果のグラフ 本発明の実施形態2を示すオーディオ用インシュレータの正面断面図 本発明の実施形態3を示すオーディオ用インシュレータの正面断面図 本発明の実施形態4を示すオーディオ用インシュレータの正面断面図 本発明の実施形態5を示すオーディオ用インシュレータの正面断面図 本発明の実施形態6を示すオーディオ用インシュレータの正面断面図 本発明の実施形態7を示すオーディオ用インシュレータの正面断面図 実施形態7において、インシュレータがで、オーディオ機器を支持した状態を示す図 本発明の実施形態8を示すオーディオ用インシュレータの正面断面図 フローティング方式と風鈴付きスパイク方式を組み合わせた場合のインシュレータ構造を示す正面断面図 図12の構造において、スパイクの凹凸の配置を逆にした場合のインシュレータ構造を示す正面断面図 オーディオ機器側に設置されたスパイク構造とフローティング方式を組み合わせた場合のインシュレータ構造を示す正面断面図 インシュレータの従来例で2段スパイク構造を示す図
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態1に係るオーディオ用インシュレータを示し、図1aは上面断面図(図1bのA-A断面図)、図1bは正面断面図である。本インシュレータの構造は、大きく分けて、スパイク構造部1とスプリング構造部2から構成される。3は上部支持部(スパイク側荷重支持部)、4はスパイク円柱部、5はスパイク円錐部である。部材3,4,5により、スパイク構造部1を構成している。6は部材収納筒部(固定部)、7はこの部材収納筒部の底面に圧入して固定された下部ベース、8は下部ベース7の中央部に突設して形成された筒部、9は筒部8の外周部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。サージング防止部材9は、円筒状の筒部9aと、半径方向へ延びて突設された複数の粘弾性片9bで構成される。10は下部ベース8の上部に配置された円盤形状の中間支持部材(荷重支持部)である。この中間支持部材10は、部材収納筒部6の内部で軸方向移動可能に収納されている。中間支持部材10と下部ベース8に挟まれるようにスプリングコイル11(弾性部材)が設けられている。ちなみに、本発明における弾性部材はスプリングコイルに限定されず、フローティング方式インシュレータに用いられる磁気式、エアー式などが適用できる。スプリングコイル11の下端外周部は前記下部ベース7底面に形成された位置決め部12に、スプリングコイル11の上端外周部は中間支持部10底面に形成された位置決め部13に嵌まり込むようになっている。そのため、スプリングコイル11を装着した状態で、両部材7,10の軸芯が一致した状態を保つことができる。14は中間支持部10の上面中央部に形成されたスパイク先端受け部である。スパイク先端受け部14は、スパイク先端を収納するために窪みが断面円錐形状で形成されている。15は部材収納筒部6の上部に形成された軸受部である。この軸受部15に狭い隙間16を介在して、スパイク円柱部4が軸方向に摺動自在に収納されている。本実施例では、スパイク構造部1はスプリング構造部2に対して、着脱可能に構成されている。
17は前記部材収納筒部内部のスプリング収納空間、18は前記中間支持部と前記部材収納筒部の半径方向の隙間である。スプリングを用いてインシュレータを構成する場合、サージング共振現象が大きな問題となる。このサージングは、コイル素線に沿って伝搬される衝撃波が, ばねの有効部を往復するときのサージ速度から決定される共振現象であり、基本振動数に対する複数の高調波振動が広い周波数領域に渡って発生する。本実施例で使用するサージング防止部材9(9a,9b)は、粘弾性ゴムで構成した。衝撃に対して振動吸収性と内部減衰性に優れ、外力を受けてもほとんど反発せず、振動エネルギーを吸収する性質を持つ公知の制振材料である。粘弾性片9bは、スプリングコイル11の内周面に、変形して常に接触した状態を保っている。サージング防止部材9の高さは、スプリングコイル11がスピーカーなどの搭載物によって圧縮された時の最小寸法よりも小さく形成されている。
本実施例では、振動の伝達経路であるスパイク構造部1、中間支持部10、下部ベース7は音響素材として良好な特性を有する真鍮を用いた。
図2は、本発明の実施形態1に係るオーディオ用インシュレータを用いたオーディオ・システムの矢視図である。31、32は左右に配置された2チャンネルのステレオ用スピーカーであり、各々のスピーカー本体部はボード33、34の上に搭載された4個のインシュレータによって支持されている。各インシュレータの配置方法をわかり易くするために、右側スピーカー32を浮上した状態で図示している。35a〜35d、及び、36a〜36dは左右のスピーカー31、32の底面4隅に配置されたインシュレータ(図1の構造)である。
以下、本実施例インシュレータの特徴について述べる。
(1)広い周波数範囲で振動遮断効果が得られる。
上記(1)の理由は、本実施例のインシュレータは、下記(i)(ii)の長所を併せ持つからである。
(i)スパイク方式によるインシュレータの長所
(ii)フローティング方式インシュレータの長所
上記(i)は、スパイク方式によるインシュレータは、「円柱→円錐→円錐の頂点→受け皿→床面」の方向には振動が伝達され易く、その逆方向には伝達されにくい効果を利用したものである。したがって、オーディオ機器から床面に伝達した振動が、再び床面からオーディオ機器へ伝達する高周波数の振動を遮断することができる。但し、低周波数の振動は遮断できない。
上記(ii)は、搭載物の質量とばね剛性で決まる2次振動系の周波数特性により、共振周波域以上での振動遮断作用が得られる効果を利用したものである。図3は、負荷質量を一定(m=63.4Kg)として、スプリングコイルのばね剛性が3種類の場合、KZ=14.1N/mm、KZ=50.6N/mm、KZ=120N/mmについて、スプリング構造部2の低周波数域の振動遮断特性(スパイク特性は考慮せず)を比較したものである。可聴域の下限値f0=20Hzにおいて、振動遮断レベルが0dB以下(A点)となるようにばね剛性を選択することで、スパイク方式では得られない低周波域の振動遮断作用が得られる。上記(ii)だけでも高周波数域での遮断効果は得られるが、さらに上記(i)が加わることにより、音響特性に影響の大きい高い周波域領域(たとえば、1000Hz以上)で、より一層効果的に振動遮断作用が得られる。その結果、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動の影響を回避できると共に、奥域感、分解能、透明感などの音響特性を一層飛躍的に向上できる。
(2)支持剛性の高いインシュレータ構造にできる
本実施例のインシュレータは、高剛性のスプリングコイルを用いることができる。図3のグラフにおいて、共振点より高い周波数において、周波数に対する振動遮断効果の勾配はいずれのグラフも-40dB/decである。ちなみに、decはBode線図の横軸上で周波数が10倍になる間隔である。ばね剛性の大きさの違いによる振動遮断効果の差は、高い周波数でも変わらない。したがって、スプリングコイルのばね剛性が低い程、高周波数域でもより大きな振動遮断効果が得られるが、低剛性のフローティング方式インシュレータは、以下示すような不具合点を有する。
(i)たとえば、オーディオ機器底面の4隅を、低剛性のフローティング方式インシュレータで支持した場合、オーディオ機器の重心が図形中心で無い場合は、オーディオ機器は傾斜して支持されることになる。アナログプレイヤーでは、この傾斜の許容値は極めて小さい。
(ii)重量級のスピーカーをフローティング方式インシュレータで支持する場合は、地震などの衝撃的外乱に対する支持安定性が大きな課題となる。
(iii)低剛性フローティング方式の場合、適用対象のスピーカーによって、低域の力感・定位感が低下する、低音が引き締まらず空間に浮遊した不自然な感じ(ブーミー)になるという欠点が指摘されている。この現象の理論的究明がなされた報告例はまだ見出していないが、本発明者の研究では、インシュレータのばね剛性と搭載物(スピーカー)で決まる固有振動数が小さくなり過ぎるがゆえに発生する、スピーカー本体の前後振動に起因することが明らかになっている。スパイク方式と高剛性スプリング方式を組み合わせた本実施例のインシュレータは、たとえば、1000Hz以上の高周波数域ではスパイク方式の振動遮断効果が補ってくれるために、低剛性フローティング方式の上記(i)〜(iii)の弱点を回避できる高剛性ばねを選択できる。その結果、音響特性向上効果と支持安定性の両方に優れたインシュレータを構成できる。
図4は、本発明の実施形態2に係るオーディオ用インシュレータ、及び、オーディオ機器の支持方法を示す正面断面図である。本インシュレータの構造は、実施形態1同様にスパイク構造部51とスプリング構造部52から構成され、スパイク構造部51はオーディオ機器側に設置されている。53スパイク固定部、54はスパイク円柱部、55はスパイク円錐部である。部材53,54,55により、スパイク構造部51を構成している。56はオーディオ機器(想像線)、57は上部ケース、58は下部ケース(固定部)、59は下部ケース58の中央部に形成された突設部、60は突設部59の上部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。上部ケース57は下部ケース58上部に配置され、両部材57、58の内部にスプリングコイル61(弾性部材)が設けられている。62、63はスプリングコイル61を装着した状態で、両部材57,58の軸芯が一致した状態を保つための両部材に形成された位置決め部である。サージング防止部材60は、スプリングコイル61の内周面に、変形して常に接触した状態を保っている。64は上部ケース57の上面に設けられた荷重支持部、65はこの荷重支持部の中央に形成されたスパイク先端受け部である。スパイク先端受け部65は、スパイク先端を受けるための窪みが断面円錐形状で形成されている。実施例では、荷重支持部64の材料に真鍮を用いたが、スパイク円錐部55の頂点から受ける荷重によって磨耗による変形が生じにくい材料を選択するのが好ましい。音響素材として各種材料の固有音響インピーダンス(z=ρc)で評価すれば、z>107Ns/m3の硬い材料で荷重支持部64を構成するのが好ましい。荷重支持部64全体に上記材料を用いるのではなく、スパイク円錐部55の頂点を支持するスパイク先端受け部65近傍だけに硬い部材を埋め込む構造でもよい。あるいは、荷重支持部64の上端面を平坦面にして、この平坦面が弾性変形する部材でスパイク先端を受ける構造でもよい。要は、スパイク先端を横滑りすることなく安定して支持できる構造であれば、荷重支持部の上端面の形状・材料に限定されず、スパイク先端受け部として適用できる。
本実施例の場合も、実施形態1と同様に、(1)広い周波数範囲で振動遮断効果が得られる、(2)支持剛性の高いインシュレータ構造にできる、上記(1)(2)の特徴により、音響特性向上効果と支持安定性の両方に優れたインシュレータを実現できる。
図5は、本発明の実施形態3に係るオーディオ用インシュレータ、及び、オーディオ機器の支持方法を示す正面断面図である。前述した実施形態2においては、インシュレータの荷重支持部にスパイク先端を受ける窪みを形成して、オーディオ機器側に設置されたスパイクを直接支持していた。本実施例は、前記荷重支持部にスパイク先端を支持できるディスク部を装着して、オーディオ機器側に設置されたスパイク及びスパイク受けを支持する方法を示す。
101はスパイク構造部、102はスプリング構造部、103はスパイク固定部、104はスパイク円柱部、105はスパイク円錐部である。106はオーディオ機器(想像線)、107は上部ケース、108は下部ケース(固定部)、109は下部ケース108の突設部、110はサージング防止部材(振動発生防止手段)である。111はスプリングコイル(弾性部材)、112,113は両部材に形成された位置決め部、114は上部ケース107の上面に設けられた荷重支持部である。115は荷重支持部114に着脱自在に装着されたスパイク受け皿を搭載できるディスク部である。ディスク部115は断面凹形状で、この凹部116にスパイク受け皿117が搭載される。前記ディスク部は断面凹形状であるため、スプリング構造部102全体が傾斜した場合、あるいは、インシュレータ本体とオーディオ機器が相対的に摺動した場合でも、スパイク受け皿117が横滑りしてディスク部115から転落することはない。118はこのスパイク受け皿117の中央に形成されたスパイク先端受け部である。スパイク先端受け部118は、スパイク先端を受けるための窪みが断面円錐形状で形成されている。スパイクとスパイク受け皿は一対のセットとして使用される場合が多いため、ディスク部の凹部116の内径を十分に大きくしておけば、様々な形態のスパイク構造に対応できる。あるいは、スパイク構造を用いていないオーディオ機器を支持できる。前記ディスク部の凹部は、スパイク受け皿の横滑りを防止できる手段(防壁)があればよく、たとえば歯型形状でもよい。あるいは、ディスク部に十分に摩擦係数の大きな材料を選べば、ディスクは断面凹形状である必要はなく上面が平坦な形状でもよい。
スパイク受け皿でスパイク先端を受けるのではなく、前記ディスク部をスパイク受け皿相応の材料で作り、ディスク部上面に形成したスパイク先端受け部119でスパイク先端を直接支持してもよい。この場合もディスクは断面凹形状である必要はなく上面が平坦な形状(図5とは異なる)でもよい。
本実施例の場合も、実施形態1、2と同様に、(1)広い周波数範囲で振動遮断効果が得られる、(2) 支持剛性の高いインシュレータ構造にできる、上記(1)(2)の特徴により、音響特性向上効果と支持安定性の両方に優れたオーディオ機器の支持方法が実現できる。実施形態2、3共、前記下部ケースが前記上部ケースを包みこむような形状でもよい。あるいは、前記上部ケースを床面に設置して、逆に前記下部ケースをオーディオ機器側に配置する構成でも、インシュレータとしての機能に支障はない。この場合、実施形態3におけるディスク部115は、下部ケース108の端面に装着される構造にすればよい。
図6は、本発明の実施形態4に係るオーディオ用インシュレータ、及び、オーディオ機器の支持方法を示す正面断面図である。本実施例は、前述した実施例における長所、
(i)スパイク方式によるインシュレータの長所
(ii)フローティング方式インシュレータの長所
上記(i)(ii)に加えて、
(iii)硬質材料によるインシュレータの長所
を併せ持つことができる。すなわち、良質な音響素材が持つキャラクターを利用した再生音のチューニングを図ることができる。その原理について以下述べる。本インシュレータの構造は、前述した実施例同様に、大きく分けて、スパイク構造部151とスプリング構造部152から構成される。153は上部支持部(スパイク側荷重支持部)、154はスパイク円柱部、155はスパイク円錐部、156は厚い肉厚の金属で形成された上部スリ−ブ(筒型形状部材)である。部材153〜156により、スパイク構造部151を構成している。157はオーディオ機器(想像線)、158は部材収納筒部、159は下部ベース、160は前記下部ベースに突設して形成された筒部、161はサージング防止部材(振動発生防止手段)、162は円盤形状の中間支持部材(スプリング側荷重支持部)、163はスプリングコイル(弾性部材)、164、165は前記スプリングコイルの位置決め部、166はスパイク先端受け部、167は軸受部である。本実施例では、スパイク構造部151はスプリング構造部152に対して、着脱可能に構成されている。
オーディオ機器157から前記上部スリーブの上部支持部153、さらに床面(図示せず)に至る振動の経路を振動伝播経路ΦZとする。太い線径を有するスプリングコイル163は、オーディオ機器が発生する振動を床面に伝播する「音響管」(Sound tube)としての役割を担う。さらに、この振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを筒型形状部材で構成すると、「風鈴効果」(Wind bell effect)ともいうべき以下述べる顕著な音響特性の改善が図れる。この風鈴効果は既提案(特許出願中)で見出した現象であるが、本発明の実施例でも同様な効果が得られた。本実施例において、上部スリーブ156内部はスプリング構造部152を収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部168を大気解放端とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状となっている。実施例では、オーディオ機器157から受ける振動が減衰することなく直接伝搬される位置で、すなわち、スパイク円錐部155を振動が通過する手前に上部スリーブ156を配置したため、風鈴効果をより効果的に得ることができた。筒型形状部材を上記配置にする効果は、後述する各実施例(たとえば、実施形態5)でも同様である。
本実施例では、「硬質材料インシュレータの効果」を活かす新たな手段として、風鈴の持つさわやかな音色に注目した。ちなみに、風鈴は日本独特の文化ではなく、その歴史は古く世界中に存在する。風鈴が奏でる透明感のある深い音色と余韻のある音は遠くまでよく響き、風が吹くたび、細く凛と鳴り響く。すなわち、前記振動伝播経路ΦZに風鈴の振動系ΦRを組み合わせることにより、良質な音響素材がもたらす効果が一層増強される。振動系ΦRは上部スリーブ156の端部168を振動伝播経路ΦRの解放端として、前記振動伝播経路ΦZに対して並列配置された分布定数系の質量とバネで決まる振動系として振動伝播経路ΦZに影響を与える。以下、本インシュレータをスピーカーに搭載した試聴実験の結果であるが、厚い肉厚を有する上部スリーブ156の固有振動数とその高調波成分が、オーディオの再生音に不自然な響きをもたらす不具合はなかった。多くの楽器を奏でる際に発生する高次倍音や非協和音成分(擦動音・擦過音)は、楽器本来の音を損ねるのではなく、逆に音に深みと味わいを与える。本実施例では、上部スリーブ156に音響素材として良好な特性を有する真鍮を用いたが、この場合、透明感がありながらも深みのある音色と余韻が再生音に加味されると共に、音の定位感、密度感、スケール感がさらに大幅に向上する効果が得られた。ちなみに、この音響効果の確認は、筒型形状の上部スリーブ156(風鈴)を有しない実施形態1と比較試聴実験したものである。実施形態1の場合でも、十分な音響特性の向上効果が得られるが、本実施例はそれをさらに上回るものである。たとえば、スリーブ外径φ74mm、スリーブ内径φ60mm、スリーブの半径方向厚み6mm、スリーブ高さ52mm、材料は真鍮として、材料は真鍮として、固有値解析を行うと、可聴領域内(f<15000Hz)で数多くの固有振動モードが存在する(固有値解析の結果は図示せず)。これらの複数の固有振動モードが相乗されて、再生音に深みのある音色の変化を与え、また高周波数の固有振動モードが定位感の向上に寄与しているものと思われる。ちなみに、ステレオ再生における音場感・定位感は高音域の特性に依存する。
従来、多層構造インシュレータ(たとえば、特許文献4)として商品化されているものは、音響インピーダンスの異なる各種材料を縦方向(縦振動の主伝達経路Φzの方向)に重ね合わせたもので、本実施例のように振動伝播経路ΦZから分岐して並列配置された振動系ΦRを有するものではない。本実施例では、前記上部スリーブの材料に真鍮を用いたが、さらに錫の含有量の多い銅合金、たとえば、「さはり材」を用いれば、雅味豊かで澄んだ高音特性を有するインシュレータとなる。再生音に加わる音の余韻(空間の広がり感)は、錫の含有量が1%でも得ることができる。含有量を25%まで増加すると、さらに風鈴が持つ「いやし音」としての効果が増強される。
但し、リスナーの音の好みに合わせるならば、前記上部スリーブに適用する材料に制約は無く、すなわち、前記上部スリーブの材料に、高周波域での響きの親和性を考慮した良質な音響素材(固有音響インピーダンスが107Ns/m3以上)を用いることにより、効果的に音響特性の改善が図れる。表1に各種材料の固有音響インピーダンスの参考例を示す。
オーディオ分野から工業用分野の防振装置に眼を転じると、この分野で従来から使用されている吸振体の一例が特開2006-200734号(特許文献2)に開示されている。この分野で用いられる吸振体による防振装置の場合、数Hzから500Hz程度の範囲の機械振動伝達を遮断するだけで実用上十分である場合が多い。吸振体を構成する材料は、耐候性と耐衝撃性を有する塩ビ系やポリプロピレン系などの樹脂、熱可塑性エラストマなどが用いられる。工業用分野の防振装置では、高周波振動を音のチューニングに利用するという概念はなく、そのため、音響振動の構造面・材料面での伝搬特性については、なんら配慮されていない。
本発明のその他の実施例にも適用する筒型形状の上部スリーブの外周部包絡線は、真円でなくても良く、非軸対称の多角形でもよい。また円筒形状ではなく、円錐中空形状でもよい。円錐中空形状にした場合、縦方向外力に対して、筒型部材には水平方向分力が発生するため、固有振動モードを励起し易くなる。また連続した筒形状ではなく歯型のように不連続な壁面を有する構造でもよい。筒型スリ−ブに適用できるこれらの形状をすべて含めて、本発明では概略筒型形状と呼ぶことにする。
図7は、本発明の実施形態5に係るオーディオ用インシュレータ、及び、オーディオ機器の支持方法を示す正面断面図である。
本インシュレータの構造は、実施形態4同様にスパイク構造部201とスプリング構造部202から構成されるが、スパイク構造部201はオーディオ機器側に設置したものである。203はスパイク支持部、204はスパイク円柱部、205はスパイク円錐部、206は厚い肉厚の金属で形成されたスパイク側スリ−ブ(筒型形状部材)である。部材203〜206により、スパイク構造部201を構成している。207はオーディオ機器(想像線)、208はスプリング収納筒部、209は下部ベース、210は前記下部ベースに突設して形成された筒部、211はサージング防止部材(振動発生防止手段)、212は円盤形状のスプリング側荷重支持部、213はスプリングコイル(弾性部材)、214、215は前記スプリングコイルの位置決め部、216はスパイク先端受け部である。スプリング側荷重支持部212は狭い隙間217を介して、スプリング収納筒部208に対して軸方向に移動可能に収納されている。オーディオ機器207からスパイク構造部201のスパイク円柱部204→スパイク円錐部205→スプリング側荷重支持部212→スプリングコイル213→床面(図示せず)に至る振動の経路を振動伝播経路ΦZとする点は、実施形態4と同様である。太い線径を有するスプリングコイル203は、オーディオ機器が発生する振動を床面に伝播する「音響管」(Sound tube)としての役割を担う。さらに、本実施例では、この振動伝播経路ΦZから分岐した「風鈴効果」(Wind bell effect)をもたらす振動伝播経路ΦR(筒型形状部材)を、スパイク構造部201側に形成した。すなわち、本実施例において、スパイク側スリ−ブ206内部はスパイク円柱部204、スパイク円錐部205を収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部218を大気解放端とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状となっている。本実施例では、スパイク側スリ−ブ206に音響素材として良好な特性を有する真鍮を用いたが、この場合、透明感がありながらも深みのある音色と余韻が再生音に加味されると共に、音の定位感、密度感、スケール感がさらに大幅に向上する効果が得られ点は、実施形態4と同様であった。
ちなみに、本実施例で示したスパイク構造部に筒型形状の風鈴を設けた構成は、この構成単体としてもスパイク方式インシュレータとして、広く適用できる。たとえば、図7に示すスプリング構造部202の代わりに、通常のスパイク受け皿を配置してもよい。この場合、低周波数域での振動遮断効果は無くなるが、通常のスパイク方式インシュレータと比べて、上述した風鈴効果が加味された効果が得られる。また、スパイク受け皿を上部(オーディオ機器側)に、スパイク円錐部を下部に配置して、上部を筒型形状の風鈴で包み込むような構造でもよい。
図8は、本発明の実施形態6に係るオーディオ用インシュレータ、及び、オーディオ機器の支持方法を示す正面断面図である。本実施例の場合も前述した実施例同様に、スパイク構造部とスプリング構造部から構成されるが、両部材を逆配置したものである。
251は上部スリーブ(筒型形状部材)、252は下部スリーブ(固定部)、253はスパイク円柱部、254はスパイク円錐部、255はスパイク円柱部253の中央部に突設して形成された筒部、256は筒部255の外周部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。上部スリーブ251は下部スリーブ252とスパイク円柱部253上部に配置され、上部スリーブ251とスパイク円柱部253で挟み込まれるようにスプリングコイル257(弾性部材)が設けられている。258、259はスプリングコイル257を装着した状態で、スパイク円柱部253と上部スリーブ251軸芯が一致した状態を保つために両部材に形成された位置決め部である。260はスパイク先端受け部であり、下部スリーブ252の中央部に形成される。261は上部スリーブ251の上端面でオーディオ機器(図示せず)を搭載する荷重支持部である。風鈴効果をもたらす上部スリーブ251は下部スリーブ252を、狭い隙間262を介して、上部から包み込むように収納している。また、スパイク円柱部253も下部スリーブ252の内面に対して、狭い隙間263を介して非接触の状態を保っている。本実施例も、前述した実施例における各方式インシュレータ、すなわち、(i)スパイク方式によるインシュレータ、(ii)フローティング方式インシュレータ、(iii)硬質材料によるインシュレータの長所を併せ持つことができる。
図9は、本発明の実施形態7に係るオーディオ用インシュレータ、及び、オーディオ機器の支持方法を示す正面断面図である。図10は、オーディオ機器側に設置されたスパイクを支持した状態を示す正面断面図である。
本実施例の場合も前述した実施例同様に、スパイク構造部とスプリング構造部から構成されるが、スプリング構造部の上下2つのスリーブの離脱防止に工夫を施した構造を示すものである。301はスパイク構造部(図10)、302はスプリング構造部、303はスパイク支持部、304はスパイク円柱部、305はスパイク円錐部、部材303〜305により、スパイク構造部301を構成している。306はオーディオ機器(想像線)である。307は風鈴効果を得るための筒型円筒部材である上部スリーブ、308は下部スリーブ(固定部)、309は下部スリーブ308の中央部に突設して形成された筒部、310は筒部309の外周部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。上部スリーブ307は下部スリーブ308上部に配置され、両スリーブ307、308の内部にスプリングコイル311(弾性部材)が設けられている。312、313はスプリングコイル311を装着した状態で、両スリーブ307,308の軸芯が一致した状態を保つための両スリーブに形成された位置決め部である。314はスパイク先端受け部であり、上部スリーブ307の中央部に形成される。315は筒部309の上端中央部に形成された貫通穴、316はこの貫通穴を貫通して上部スリーブ307に締結されるボルトである。スプリング構造部302が無負荷時(図9)においては、貫通穴315よりも径大のボルト316の頭部317がストッパーとなり、上下スリーブ307,308の離脱を防止する。また、スプリング構造部302にオーディオ機器が搭載された負荷時(図10)には、ボルトの頭部317は貫通穴315の位置よりも下降するため、インシュレータとしての機能に影響を与えない。318は上部スリーブ307の上端面である荷重支持部、ちなみに、319は荷重支持部318に着脱自在に装着できるディスク部である。320はディスク部319に形成されたスパイク受け皿(図示せず)を設置できる凹部、321はディスク部319下面に形成されたリング部、322は荷重支持部318に形成されたリング収納部である。このリング収納部322にリング部321が装着される。本実施例では、ディスク部319は使用せず、上部スリーブ307に形成れたスパイク先端受け部314を利用して、オーディオ機器側に設置されたスパイク構造部301を支持している。
さて、本実施例では「風鈴効果」を得るために設けた長い筒状のスリーブ(上部スリーブ307)を利用して、インシュレータに搭載されたオーディオ機器に地震などによる衝撃的な水平方向外乱荷重が加わった場合、オーディオ機器の傾斜を最小限に抑えて、転倒を防止することができる。オーディオ機器に外乱荷重Fが加わった場合を図10の想像線で示す。上部スリーブ307と下部スリーブ308の半径方向隙間をδとして、この隙間δを十分に小さく設定しておけば、上部スリーブ307の傾斜を抑制できる。多くのスピーカーを対象にした評価実験の結果、本インシュレータを適用するスピーカーの仕様(高さ、設置面積、質量など)に変更がある場合でも、間隙δ≦1.0mmに設定しておけば、衝撃的外乱荷重に対して、実用上はほとんど支障がなかった。本実施例とは逆に、下部スリーブ308が上部スリーブ307を被嵌するような構成でもよい。
あるいは、上部スリーブ307を床面に、下部スリーブ308をオーディオ機器側に配置する構成でもよい。
図11は、本発明の実施形態8に係るオーディオ用インシュレータを示す正面断面図である。本実施例は、オーディオ機器に加わる衝撃的外乱荷重に対して、前述した実施形態7よりもさらに強固に設置安定性の向上を図ったものである。701は風鈴効果を得るための筒型円筒部材である上部スリ−ブ、702は上部支持部(第2荷重支持部)、703は円柱部、704は部材収納筒部、705は下部ベース、706は前記下部ベースに突設して形成された筒部、707はサージング防止部材(振動発生防止手段)、708は円盤形状の中間支持部材(第1荷重支持部)、709はスプリングコイル(弾性部材)、710、711は前記スプリングコイルの位置決め部、712は中間支持部材708に形成された凹部で、この部分に円柱部703の下端部が収納される。前記凹部の内径と前記円柱部外径(凸部)の間の隙間は十分な余裕を持たせてよい。713は固体潤滑材料による軸受部であり、部材収納筒部704側の上部内面に圧入され、狭い隙間714を介して円柱部703が摺動自在に挿入される。715は上部支持部の中央に形成されたスパイク先端受け部である。但し、本実施例では、スパイク構造を介在しないで、オーディオ機器側の端面が平端な足部を、直接上部支持部702で支持してもよい。オーディオ機器(図示せず)から前記上部スリーブの上部支持部702、さらに床面(図示せず)に至る振動の経路を振動伝播経路ΦZとする。太い線径を有するスプリングコイル709は、オーディオ機器が発生する振動を床面に伝播する「音響管」(Sound tube)としての役割を担う。さらに、この振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを筒型形状部材で構成し、この筒型形状部材に良質の音響素材を用いると、「風鈴効果」が得られる点は、前述した実施例同様である。但し、本実施例において、音響効果は低下するが、風鈴効果を得るための筒型形状部材は必須ではない。たとえば、実施形態1で示すように、荷重を支持する部分は円板形状(図1bの3)でもよい。上部スリーブ701と一体化した円柱部703は、軸方向に移動可能であるが、半径方向の移動は軸受部713により規制される。上部スリーブ701に半径方向の荷重、あるいはモーメント荷重が加わった場合でも、円柱部703と中間支持部材708は軸方向のみに移動するため、スプリングコイル709はスムーズに伸縮でき、振動絶縁効果を失わない。軸受部の隙間Δは十分に小さく設定でき、たとえば、Δ<0.5mmでもインシュレータとしての機能は十分であり、Δ<0.2mmとすれば設置安定性は飛躍的に向上した。オーディオ機器に衝撃的な水平方向外乱荷重Fが加わった場合でも、上部支持部702の傾斜は僅少であり、安定にオーディオ機器を支持することができる。軸受部に固体潤滑材料を用いれば、より効果的である。また前述した実施例において、軸受部に狭い隙間を介在して、スパイク円柱部を軸方向に摺動自在に収納する構造(実施形態1、実施形態4、後述する図12〜図14の構造)の場合も同様に上述した効果(設置安定性)が得られる。また、たとえば、実施形態4で示すように、筒型形状部材156(図4)を設けた場合は、軸受部167の隙間Δを十分に小さくしても、筒型形状部材156の自由端168を拘束することにならないため、風鈴効果を損なわない。
[補足説明]
(1)スパイク内蔵のフローティグ方式
以上、本発明の実施例ではフローティグ方式インシュレータに用いる弾性部材にすべてスプリングコイルを用いた場合について説明した。弾性部材として、空気を封じ込めたエアーフローティング方式、磁力の反発力を利用した磁気浮上方式、ゴム材を用いたもの、発砲体である高弾性ポリスチレンフォーム、スプリングコイル以外の機械ばね、などが適用できる。
図12は、その構造の一例を示す正面断面図で、大きく分けて、スパイク構造部451とフローティング構造部452から構成される。453は上部支持部(スパイク側荷重支持部)、454はスパイク円柱部、455はボールによるスパイク円錐部である。ボール455の上半球はスパイク円柱部454に圧入されている。456は上部スリ−ブ(筒型形状部材)である。部材453〜456により、スパイク構造部451を構成している。457はオーディオ機器(想像線)、458は部材収納筒部、459は下部ベース、460は円盤形状の中間支持部材(フローティング側荷重支持部)、461は断面半円孤形状のスパイク先端受け部、462は軸受部である。本実施例では、スパイク構造部451はフローティング構造部452に対して、着脱可能に構成されている。463は、前述した各実施例の弾性部材に相当し、エアー、磁石などで構成されるフローティング方式インシュレータの要素部(想像線)である。
オーディオ機器457→上部支持部453→スパイク円柱部454→スパイク円錐部455に至る振動の経路を振動伝播経路ΦZとすると、この振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを筒型形状部材(上部スリーブ456)で構成する。かつ、この筒型形状部材に良質な音響素材(固有音響インピーダンスが107Ns/m3以上)を用いると、「風鈴効果」による顕著な音響特性の改善が図れる点は、前述した実施例同様である。風鈴効果はやや低下するが、中間支持部材460を、インシュレータの要素部463を包み込むような筒型形状部材で構成してもよい。この構成は本発明の各実施例に共通に適用できる。また、上部支持部453中央部に形成した第2スパイク先端受け部464aを利用して、オーディオ機器側に設置されたスパイク構造部464(想像線)を支持すれば、ダブルスパイク支持構造となり、より一層の振動遮断効果が得られる。本インシュレータ構造では、軸受部462の隙間を十分に小さくできるため、上部スリ−ブ456に加わる半径方向の外力・モーメントに対して、上部支持部453は常に水平状態を維持できる。そのため、十分に安定なダブルスパイク支持ができる。
(2)スパイクのオス側を弾性部材側に設けた場合
以上の実施例では、スパイクのオス側(凸部)をスパイク構造側(オーディオ機器に近い側)に設けて、スパイク先端受け部(凹部)を弾性部材側(床面に近い側)に設けた場合について示した。例外的ではあるが、オーディオ機器で用いられるスパイク方式は、上記配置が逆の場合もある。以下、スパイクの凹凸の配置を逆にした場合について説明する。
図13は、その構造の一例を示す正面断面図で、大きく分けて、スパイク構造部851とフローティング構造部852から構成される。853は上部支持部(スパイク側荷重支持部)、854はスパイク円柱部、855はこのスパイク円柱部の下端面に形成された断面半円孤形状のスパイク先端受け部(スパイクの凹部)、856は上部スリ−ブ(筒型形状部材)である。部材853〜856により、スパイク構造部851を構成している。857はオーディオ機器(想像線)、858は部材収納筒部、859は下部ベース、860は円盤形状の中間支持部材(フローティング側荷重支持部)、861はボールによるスパイク円錐部(スパイクの凸部)、862は軸受部である。ボール861の下半球は中間支持部材860の中央部に圧入されている。863は前述した各実施例の弾性部材に相当し、エアー、磁石、機械ばねなどで構成されるフローティング方式インシュレータの要素部(想像線)、864は第2スパイク先端受け部である。
(3)オーディオ機器側にスパイクを設置したフローティグ方式
図14は、スパイク構造部をオーディオ機器側に設置した場合を示す。501はスパイク構造部、502はフローティング構造部である。503はスパイク支持部、504はスパイク円柱部、505はスパイク円錐部、部材503〜504により、スパイク構造部501を構成している。506はオーディオ機器(想像線)、507は部材収納筒部、508は下部ベース、509は円盤形状のフローティング側荷重支持部、510は上部でスパイク受け皿を設置できるディスク部、511はフローティング側荷重支持部509に形成された凹部である。512はディスク部510の上部に形成された断面凹形状のスパイク受け皿収納部、513はスパイク受け皿、514はスパイク先端受け部である。515は軸受部、516はエアー、磁石などで構成されるフローティング方式インシュレータの要素部(想像線)である。ちなみに、本発明の前述した実施例で示したスパイク受け皿収納部(たとえば、図5のディスク115)は、スパイク受け皿を設置する代わりに直接オーディオ機器の底部(たとえば円柱形状の足)を受けてもよく、あるいは、他方式の硬質材料インシュレータなどを介在してオーディオ機器を支持してもよい。
スパイク先端受け部は、以下、本発明の各実施例に共通して適用できるが、スパイク先端を収納するための窪みが、硬質材料により断面円錐形状、あるいは断面半円孤形状で形成されるのが好ましい。たとえば、前記上端面にボルトを植え込み、ボルトの頭部がスパイク先端を支持できる形状でもよい。しかし、コスト面を配慮して、若干の音響特性の劣化を犠牲にするならば、たとえば、スパイク先端を受ける上端面を平坦面にして、この平坦面が弾性変形する部材(ゴム、樹脂など)でスパイク先端を受ける構造でもよい。要は、スパイク先端が横滑りすることなく安定して支持できる構造であれば、形状・材料は限定されず、「スパイク先端受け部」として適用できる。
本発明の各実施例ではスパイク構造部はスパイク円錐部、スパイク円柱部、スパイク側荷重支持部より構成されるものとした。断面真円の円錐と円柱で構成されるスパイクは標準的な形状であり、スパイク方式の本質的機能はこの形状に限定されるものではない。たとえば、円錐と円柱共、断面多角形形状でもよく、円錐部はピラミッド形状でもよい。本発明では、スパイク方式を構成する部材の断面形状がどのような形状でも、円錐部、円柱部と呼ぶことにする。円柱部はスパイク方式に必須ではなく、その長さは僅少、あるいは無くてもよく、円錐部だけでスパイクを構成してもよい。あるいは、図12、図13で前述したように、ボール(図12の455)を用いてスパイク方式を構成してもよい。ボールを用いた場合は、スパイク先端受け部は必ずしも窪み部を設ける必要がなく、平端面でもよい(図12と異なる)。この場合、スパイク円柱部454に埋め込まれたボール455を回転自在の軸受としての機能を持たせれば、中間支持部材460とスパイク円柱部454、すなわち、スパイク構造部451とフローティング構造部452は、互いに半径方向に拘束されなくなる。
その結果、各部品の加工精度を大幅に緩和できる。軸受としての機能を兼ねたボール(あるいは摺動抵抗の小さな軸受)と平端面(あるいは曲率の大きな断面半円孤面)の組み合わせから構成される上記スパイク方式の構成は、他の実施例(実施形態1、実施形態4〜7)に適用できる(図示せず)。
(4)「音響管」の効果について
さて、前述した実施例で説明した「音響管」(Sound tube)について、実施形態4(図6)を用いて、もう少し詳しく説明する。実施例を構成する弾性部材としてスプリングコイルを適用した理由は、太い線径のスプリングコイルはマクロに見れば、外径と巻数の選択により剛性の調節が容易な集中ばね、ミクロの現象で捉えれば、高周波の音波を伝搬する音響管(sound tube)の役割ができるという点に着目したものである。Nをスプリングコイルの有効巻数、Dをコイルの平均径、dをコイルの線径、Gを横弾性係数とすれば、ばね定数Kは
式(1)から、スプリングコイル163を音響管として利用するためには、コイルの線径dを十分に大きく設定し、かつ低周波域の大きな振動遮断作用を得るのを目的として、ばね剛性Kを小さくするためには、コイル外径Dと巻数Nを大きくすればよいことが分かる。本実施例で用いたスプリングコイル163の材料は、ばね材料として用いられる硬鋼線(SWC)を用いた。実験の結果、音響管としての効果を得るスプリングコイルの概略線径は、φ3〜φ6mmの範囲で選定すればよいことが分かった。
線径が太いスプリングコイル163を一様断面の「音響管」とみなしたとき、オーディオ機器が発生した高周波の音響振動は、らせん状の音響管内を矢印169のごとく伝搬していく。ここで、「オーディオ機器157→上部スリーブ156→スパイク円柱部154→スパイク円錐部155→中間支持部材162→音響管(スプリングコイル163)→下部ベース159→床面(図示せず)」に至る振動の伝達を振動伝播経路Φzとする。すなわち、オーディオ機器が発生した高周波振動は、前記振動伝播経路Φzを通じて外部へ逃すことで、素材が持つキャラクターを利用した再生音のチューニングが図れる。このチューニング作用を効果的に得るためには、オーディオ機器157から上部スリーブ156に入射した音波が、スムーズに音響管(スプリングコイル163)内に透過できるように、部材156、162はスプリングコイル163(鋼)と同レベルの固有音響インピーダンスが大きな材料(z>107Ns/m3)を用いればよい。すなわち、本実施例は、「低い周波数では振動を遮断し、逆に高い周波数では振動伝達を利用する」という既提案の基本的概念を具現化するものである。また、素材が持つキャラクターを利用した再生音のチューニングが図れる、という点は、風鈴を形成する筒型形状部材(上部スリーブ156)の材料が与える効果と同様である。但し、風鈴を形成する筒型形状部材が無い場合でも、部材162、154、155の選択により、再生音のチューニングが図れる。
たとえば、実施形態1では、スプリングコイルのサージング現象を防止するために、円筒形状の筒部から半径方向に延びて突設された複数の粘弾性片を用いた。粘弾性片の突設枚数は実施例では、45°間隔で8枚となっているが、枚数は限定されず、8枚以下でも良いし、8枚以上であってもよい。あるいは、羽根状の粘弾性片を用いるのではなく、実施形態2、3で示したように、円柱状の粘弾性部材をスプリングコイルに圧入する構造でもよい。また、薄板形状の粘弾性部材をスプリングコイル内面に密着させる構造でもよい。あるいは、スプリングコイルの素材に粘弾性材料を被覆させたものを用いてもよい。なお、粘弾性部材は、前述のような部材に限られるものでなく、弾力性は小さいが元の形状に復帰する復元力を有する低反発ゴムのような素材でもよい。あるいは、従来からサージング防止対策として用いられている液体の中にスプリングを浸した構成でもよい。たとえば、実施形態1において、粘弾性部材によるサージング防止部材9を用いないで、代わりにスプリング収納空間17に潤滑油を封じ込めることで、高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段になる。また、軸受部15の隙間16、あるいは、中間支持部10と部材収納筒部6の半径方向の隙間18に粘性流体である潤滑油を満たすことで、軸方向の減衰効果を得ることができる。粘性流体による減衰効果を得るために、スパイクの円筒面とこの円筒を収納するスパイク受けの間の狭い隙間に、粘性流体であるシリコンオイルを封入する方法は特許文献1により公知である。しかし、このオイルをスプリングコイルのサージング防止手段と兼ねるという概念は前例がない。さらに、潤滑油に磁性流体を用いて、リング状のマグネットをシール手段とすれば、非接触で漏れ防止が図れる。上述した方法は、本発明の各実施例に適用できる。
サージング防止対策を施したスプリングコイルは、従来から基本振動数に対する複数の高周波振動を抑制する無共振の「サージングレス金属ばね」と呼ばれる。したがって、このスプリングコイルを集中定数モデルとしてマクロでとらえれば、高周波振動を遮断する要素である。しかし本発明においては、スプリングコイルは分布定数モデルとして、ミクロの現象でとらえる必要がある。音響素材である上部支持部(たとえば、図6の162)とスプリングコイル(同図の163)の境界面近傍において、両部材の固有音響インピーダンスが同レベルで大きい材料であれば、オーディオ機器が発生した高周波の音響振動は前記境界面で完全遮断されず、上部支持部から前記境界面を経てスプリングコイル内部へ伝搬していく。
本発明における高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段には、質量と集中ばね定数だけで決まる単振動(1次の固有振動数)だけしか発生しない構造も含むものとする。また、エアー式、磁気式などの高次の共振現象が発生しないフローティング方式を用いる場合も、「高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段」に含まれるものとする。
実施例では、弾性部材として外径が軸方向で均一なスプリングコイルを用いたが、本発明のフローティング方式インシュレータに適用できる弾性部材はこれに限定されるものではない。たとえば、円錐コイルばね、皿バネ、あるいはこの皿ばねを多段に積み重ねた構造、竹の子ばね、輪ばね、渦巻きばね、薄板ばね、重ね板ばね、U字型ばねなど、オーディオ用インシュレータとして要求される形状、寸法などを考慮して選択すればよい。本発明では、これらの部材を総称して機械ばねと呼ぶ。
本発明の各実施例のすべてに共通であるが、実施例で示したインシュレータのオーディオ機器側(たとえば、実施形態1では上部支持部3)を床面側に設置して、逆に床面側(下部ベース7)をオーディオ機器側に配置する構成でもインシュレータとしての機能に支障はない。音響特性は変化するが、リスナーの好みに合せていずれかを選択すればよい。
実施例では、本発明のインシュレータをスピーカーに適用する場合を示したが、オーディオ機器であるCDプレイヤー、アナログプレイヤー、プリアンプ、パワーアンプ、これらのオーディオ機器を搭載するオーディオラック、あるいは様々な楽器(たとえば、アコースティック楽器)、ピアノなどのいずれにでも適用でき、また同様な効果が得られる。また、実施例では、インシュレータはすべて床面に垂直配置する場合を示したが、インシュレータの姿勢を水平にして、例えば壁面にオーディオ機器を水平配置する場合でも適用できる。
6・・・固定部(部材収納部)
9・・・振動発生防止手段(サージング防止部材)
10・・・荷重支持部(中間支持部材)
11・・・弾性部材(スプリングコイル)
14・・・スパイク先端受け部

Claims (18)

  1. 弾性部材の固定部と、前記弾性部材に設けられた荷重支持部と、前記弾性部材の高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段と、前記荷重支持部に形成されたスパイク先端受け部、あるいは、前記荷重支持部に装着されてスパイク先端を直接もしくは受け皿を搭載して支持できるディスク部から構成されることを特徴とするインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  2. 前記弾性部材は機械ばねであることを特徴とする請求項1記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  3. 搭載される搭載物の質量と前記弾性部材のばね剛性で決まる除振特性により20Hz以下での振動遮断作用を得るように前記弾性部材のばね剛性を設定したことを特徴とする請求項1記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  4. 機械ばねにスプリングコイルを用いて、このスプリングコイルの概略線径はφ3〜φ6mmの範囲であることを特徴とする請求項2記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  5. 前記荷重支持部から前記弾性部材に至る振動伝播経路は107Ns/m3以上の固有音響インピーダンスを有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  6. 前記ディスク部は、このディスク部に設置されるスパイク受け皿の横滑りが防止できるように断面が概略凹形状であることを特徴とする請求項1記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  7. スパイク円錐部と、スパイク円柱部と、オーディオ機器の荷重を支持するスパイク側荷重支持部によりスパイク構造部を構成し、前記スパイク先端受け部で前記スパイク円錐部を支持すると共に、前記固定部に形成された筒部に狭い隙間を介して軸方向に摺動可能に前記スパイク円柱部が収納されていることを特徴とする請求項1記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  8. オーディオ機器側に設置されたスパイク円錐部と、スパイク円柱部と、スパイク側荷重支持部より構成される部分をスパイク構造部としたとき、このスパイク構造部と請求項1で記載されるインシュレータを組み合わせて前記オーディオ機器を支持したことを特徴とするインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  9. 前記スパイク側荷重支持部から前記弾性部材内部に至る振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを有し、かつこの振動伝播経路ΦRは概略筒型形状部材で構成されることを特徴とする請求項7、あるいは請求項8記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  10. 前記概略筒型形状部材は固有音響インピーダンスが107Ns/m3以上の材料で構成されることを特徴とする請求項9記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  11. 前記概略筒型形状部材は銅合金を用いたことを特徴とする請求項10記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  12. 前記銅合金は錫の含有率が1%〜25%の範囲であることを特徴とする請求項11記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  13. 前記固定部の下部中央部に突設して形成された筒部と、この筒部に軸方向に設けられた貫通穴と、この貫通穴を通して前記荷重支持部に装着された締結部材と、この締結部材により前記固定部及び前記荷重支持部の相対的な軸方向距離の上限値を規制したことを特徴とする請求項1記載のオーディオ用インシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  14. フローティング方式インシュレータと直列に配置されたスパイク方式インシュレータでオーディオ機器を支持することを特徴とするインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  15. スパイク方式インシュレータにおいて、オーディオ機器の荷重を支持する荷重支持部からスパイク円錐部に至る振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを有し、かつこの振動伝播経路ΦRは前記スパイク円錐部、もしくは、このスパイク円錐部の上部を収納する概略筒型形状部材で構成されることを特徴とするインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  16. 弾性部材の固定部と、前記弾性部材に設けられた第1荷重支持部と、前記弾性部材の高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段と、前記第1荷重支持部に装着された円柱部と、この円柱部に設けられたオーディオ機器の荷重を支持する第2荷重支持部と、前記固定部に形成された筒部に狭い隙間を介して軸方向に摺動可能に前記円柱部が収納されていることを特徴とするインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  17. 前記スパイク側荷重支持部に形成された第2スパイク先端受け部でオーディオ機器側に設置されたスパイク円錐部の先端を支持することにより、ダブルスパイク支持構造としたことを特徴とする請求項7記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
  18. 狭い隙間をΔとしたとき、Δ<0.5mmに設定したことを特徴とする請求項7、あるいは、請求項16記載のインシュレータ及びインシュレータによるオーディオ機器の支持方法。
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