JP2012189190A - 摺動式等速自在継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工工数および部品点数の削減でコスト低減を図り、外側継手部材の軽量化が図れ、ブーツの成形性および組み付け性、内部部品の抜け止め性能を向上させる。
【解決手段】三本のトラック溝12の内側壁に互いに対向するローラ案内面14が形成された外側継手部材10と、径方向に突出した三本の脚軸22を有するトリポード部材20と、その脚軸22に回転自在に支持されると共に外側継手部材10のトラック溝12に転動自在に挿入されてローラ案内面14に沿って案内されるローラ30とを備え、外側継手部材10の開口部11を閉塞するブーツ50の大径端部51を開口部11の外周面に装着したトリポード型等速自在継手であって、ブーツ50の大径端部51の内周面の全周に亘って、外側継手部材10の径方向内側に向けて張り出してトラック溝12から突出するフランジ部54を設ける。
【選択図】図1
【解決手段】三本のトラック溝12の内側壁に互いに対向するローラ案内面14が形成された外側継手部材10と、径方向に突出した三本の脚軸22を有するトリポード部材20と、その脚軸22に回転自在に支持されると共に外側継手部材10のトラック溝12に転動自在に挿入されてローラ案内面14に沿って案内されるローラ30とを備え、外側継手部材10の開口部11を閉塞するブーツ50の大径端部51を開口部11の外周面に装着したトリポード型等速自在継手であって、ブーツ50の大径端部51の内周面の全周に亘って、外側継手部材10の径方向内側に向けて張り出してトラック溝12から突出するフランジ部54を設ける。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車、航空機、船舶や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば4WD車やFR車などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれて駆動側と従動側の二軸間で軸方向変位および角度変位を許容する摺動式等速自在継手に関する。
自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達するドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれる等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的に、エンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
このドライブシャフトに組み付けられる摺動式等速自在継手の一つに、トルク伝達部材としてローラを用いたローラタイプのトリポード型等速自在継手(TJ)がある。また、他の摺動式等速自在継手には、トルク伝達部材としてボールを用いたボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)がある。
トリポード型等速自在継手は、一端に開口部を有するカップ状をなし、内周面に軸方向に延びる三本のトラック溝が形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成された外側継手部材と、径方向に突出した三本の脚軸を有するトリポード部材と、そのトリポード部材の脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラとで主要部が構成されている。
この種の等速自在継手は、トリポード部材およびローラからなる内部部品が外側継手部材に軸方向摺動自在に収容された構造を具備する。また、トリポード部材の軸孔にはシャフトの一端がスプライン嵌合により連結され、このシャフトの他端には、固定式等速自在継手の内側継手部材がスプライン嵌合により連結されている。さらに、この等速自在継手では、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材の開口部とシャフトとの間に蛇腹状のブーツを装着した構造が一般的である。
このトリポード型等速自在継手を自動車に組み付けるに際しては、トリポード型等速自在継手をエンジン側(インボード側)に組み付けた後、固定式等速自在継手を駆動車輪側(アウトボード側)に組み付けるのが一般的である。エンジン側のトリポード型等速自在継手を組み付けた際、駆動車輪側の固定式等速自在継手は車体側の懸架装置に組み付けられておらず完全に垂れ下がった状態となり、さらにロアアームのみに組み付けられて容易に傾く状態もしくはどこにも固定されていないハブベアリング及びナックルが組みつけられることでスライドアウト方向へ大きな荷重がかかる場合がある。
このような状態になると、トリポード型等速自在継手の内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じることがある。このようなスライドオーバー時には、内部部品のローラが傾いた状態になったりすることで内部部品を外側継手部材に挿入し直すことが困難となる。そこで、従来では、このスライドオーバーを防止するため、以下のような抜け止め機構が採用されている。
抜け止め機構の一つとしては、ブーツの内周面で外側継手部材の開口部近傍部位に環状凹溝を設け、その環状凹溝にストッパ部材を嵌着した構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構造とすることにより、内部部品の軸方向変位時、ローラがストッパ部材と干渉することでローラの軸方向変位量を規制することにより、内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止するようにしている。
また、ボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手における抜け止め機構としては、ブーツの内周面に、外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起をトラック溝軸方向で楔となるように設けた構造のものがある(例えば、特許文献2参照)。このような構造とすることにより、内部部品の軸方向変位時、ボールが突起と干渉することでボールの軸方向変位量を規制することにより、内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止するようにしている。なお、この特許文献2では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用した場合も開示されている。
さらに、ローラタイプのトリポード型等速自在継手における抜け止め機構としては、ブーツの端部内周面に径方向内側へ突出する軸抜け防止用ストッパ部を一体に形成した構造のものがある(例えば、特許文献3参照)。この軸抜け防止用ストッパ部は、円周方向で外側継手部材のトラック溝と対応する部位のみに形成されている。このような構造とすることにより、内部部品の軸方向変位時、ローラが軸抜け防止用ストッパ部と干渉することでローラの軸方向変位量を規制することにより、内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止するようにしている。
前述の特許文献1に開示された従来の等速自在継手では、ローラの軸方向変位量を規制するストッパ部材をブーツの端部に組み付けるため、ブーツの内周面で外側継手部材の開口部近傍部位に環状凹溝を形成しなければならず、ブーツの内周面を溝加工する必要があり、また、ストッパ部材も必要となることから、加工工数および部品点数の増加により製品のコストアップを招くことになる。
また、特許文献2に開示された従来の等速自在継手では、外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起をブーツの内周面に設けているため、その突起が外側継手部材のトラック溝に入り込んだ分だけ、内部部品の軸方向摺動範囲が狭くなる。この内部部品の軸方向摺動範囲は外側継手部材のトラック溝の軸方向長さで決まる。その結果、内部部品の軸方向摺動範囲を確保するためには、外側継手部材の軸方向寸法を長くする必要があり、その分、外側継手部材の重量が増大することになる。
さらに、特許文献3に開示された従来の等速自在継手では、径方向内側へ突出する軸抜け防止用ストッパ部を、ブーツの円周方向で外側継手部材のトラック溝と対応する部位のみに一体に形成しているため、ブーツの成形が非常に困難であってコストアップを招くことになる。また、ブーツを外側継手部材の開口部に装着する際に、軸抜け防止用ストッパ部とトラック溝とを位置合わせする必要があり、そのブーツの組み付け作業も煩雑となる。また、内部部品の軸方向変位時、一つのローラが一つの軸抜け防止用ストッパ部に干渉することでそのストッパ部が軸方向荷重を受けるため、ストッパ部の剛性が低くて抜け止め性能が低い。
本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、加工工数および部品点数の削減でコスト低減を図り、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく軽量化が図れ、ブーツの成形性および組み付け性、さらに内部部品の抜け止め性能を向上させ得る摺動式等速自在継手を提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、一端に開口部を有するカップ状をなし、軸方向に延びるトラック溝が内周面の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材と、その外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入された転動体を介して外側継手部材との間で角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、転動体および内側継手部材を含む内部部品が外側継手部材に軸方向摺動自在に収容され、外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部をその開口部の外周面に装着した摺動式等速自在継手であって、ブーツの端部内周面の全周に亘って、外側継手部材の径方向内側に向けて張り出してトラック溝から突出するフランジ部を設けたことを特徴とする。
本発明における摺動式等速自在継手では、ブーツの端部内周面の全周に亘って、外側継手部材の径方向内側に向けて張り出してトラック溝から突出するフランジ部を設けたことにより、内部部品の軸方向変位時、その内部部品がフランジ部と干渉することで内部部品の軸方向変位量を規制することによって、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止する。特に、この摺動式等速自在継手をドライブシャフトとして自動車に組み付けるに際して、固定式等速自在継手、ハブベアリングおよびナックルの荷重が摺動式等速自在継手のスライドアウト方向にかかった場合に有効で、この等速自在継手の組み付け性が向上する。
一方、従来のような環状凹溝形成のための加工、ストッパ部材のような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。また、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材の軽量化が図れる。
さらに、本発明のフランジ部は、ブーツの端部内周面の全周に亘って連続的に形成されているのでブーツの成形が容易で、ブーツを外側継手部材の開口部に装着する際に、フランジ部とトラック溝との位置合わせが不要であり、ブーツの組み付けも簡易となる。また、内部部品の軸方向変位時、ブーツの全周に亘って連続的に形成されたフランジ部で軸方向荷重を受けるので、フランジ部の剛性が高く内部部品の抜け止め性能を向上させることができる。
本発明におけるフランジ部は、外側継手部材の開口部の端面に接するように設けられている構造が望ましい。このようにすれば、継手が作動角をとった時、フランジ部がブーツの変形を阻害することなく、継手の良好な作動性を確保することができる。
本発明におけるフランジ部は、ブーツの射出成形により一体的に形成されていることが望ましい。このようにすれば、ブーツの端部内周面の全周に亘って、外側継手部材の径方向内側に向けて張り出してトラック溝から突出するフランジ部を容易に形成することができる。
本発明におけるフランジ部は、その軸方向厚みが径方向外側から径方向内側へ向けて小さくなるように設定されていることが望ましく、特に、ブーツ側端面あるいは外側継手部材側端面の少なくとも一方をテーパ状とすることが好ましい。このようにすれば、ブーツの成形時に脱型し易いために生産性の向上が図れてコスト的に有効である。また、フランジ部の根元部分を厚くできるので、フランジ部全体の剛性が向上して内部部品の抜け止め性能が向上する。
本発明におけるブーツは、エラストマー(弾性体)を素材とすることが望ましく、特に、その素材としては、樹脂あるいはゴムのいずれかが好適である。このように素材を選定すれば、ブーツが角度変化した時の伸縮を無理なく吸収することができる。なお、このブーツの素材の弾性率は30〜150MPaであることが望ましい。この弾性率が30MPaより小さいと、フランジ部の剛性が小さ過ぎて内部部品が飛び出すスライドオーバーを防止することが困難となり、また、弾性率が150MPaよりも大きいと、ブーツ全体の剛性が大き過ぎて継手が作動角をとる時の変形抵抗が大きくなり継手のトルクが増大したり、耐久寿命が短くなる要因となる。
本発明における外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、内側継手部材は、先端がトラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、転動体は、脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラである構造を具備することが望ましい。つまり、このような構造を具備するローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用可能である。
また、本発明における内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、転動体は、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールであり、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在してボールを保持するケージを備えた構造が望ましい。つまり、このような構造を具備するボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手に適用可能である。
本発明によれば、ブーツの端部内周面の全周に亘って、外側継手部材の径方向内側に向けて張り出してトラック溝から突出するフランジ部を設けたことにより、内部部品の軸方向変位時、その内部部品がフランジ部と干渉することで内部部品の軸方向変位量を規制することによって、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止することができる。
従来のような環状凹溝形成のための加工、ストッパ部材のような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。また、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材の軽量化が図れる。
さらに、フランジ部がブーツの端部内周面の全周に亘って連続的に形成されているのでブーツの成形が容易で、ブーツの装着時にフランジ部とトラック溝との位置合わせが不要であり、ブーツの組み付けも簡易となる。また、内部部品の軸方向変位時、ブーツの全周に亘って連続的に形成されたフランジ部で軸方向荷重を受けるので、フランジ部の剛性が高く内部部品の抜け止め性能を向上させることができる。
このように、ブーツの端部内周面の全周に亘って、外側継手部材の径方向内側に向けて張り出してトラック溝から突出するフランジ部を設けたことにより、内部部品の抜け止め性能を向上させ、低廉化および軽量化が容易に図れる摺動式等速自在継手を提供できる。
本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、シングルローラタイプのトリポード型等速自在継手を例示する。なお、本発明は、このシングルローラタイプ以外に、作動時の低振動化を可能としたダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手にも適用可能である。また、本発明は、トリポード型等速自在継手以外に、ボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手のような他の摺動式等速自在継手にも適用可能である。
図1および図2はシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手の基本構成を示し、図1は継手の軸線に対する縦断面図、図2はブーツ装着前の状態での継手のA矢視図である(但し、一つのローラ30のみを断面で示す)。この実施形態のトリポード型等速自在継手は、外側継手部材10と、内側継手部材であるトリポード部材20と、転動体であるローラ30とで主要部が構成されている。
外側継手部材10は、一端に開口部11を有するカップ状をなし、その底部中央に軸部13が一体的に形成されている。外側継手部材10の内周面には、軸方向に延びる三本の直線状トラック溝12が円周方向等間隔に形成される。各トラック溝12は、その内側両壁に互いに対向する一対のローラ案内面14を有する。ローラ案内面14は円弧状断面を有し、外側継手部材10の軸線方向に直線状に延びる。外側継手部材10の外周面は、軽量化のため、トラック溝12間と対応する部位が減肉されて凹部15が軸方向に形成されている。この外側継手部材10の内部には、トリポード部材20とローラ30からなる内部部品60が軸方向摺動自在に収容されている。
トリポード部材20は、円筒状をなすボス21の外周面に三本の脚軸22が円周方向等間隔(120°間隔)で放射状に一体形成されたものである。脚軸22は、その先端がトラック溝12の底部付近まで半径方向に延在し、その外周面は一般的に円筒面とされている。ボス21の軸孔にシャフト40の軸端がスプライン嵌合により連結され、環状のスナップリング41によりトリポード部材20に対して抜け止めされている。
外側継手部材10のトラック溝12のローラ案内面14と脚軸22の外周面との間に針状ころ31を介してローラ30が回転自在に配設される。ローラ30の外周面は縦断面円弧状とされ、ローラ案内面14とアンギュラ接触により二箇所で接触する場合と、サーキュラ接触により一箇所で接触する場合がある。一方、ローラ30の内周面は、円筒状に形成されている。このローラ30と脚軸22との間に、複数の針状ころ31が、保持器のない、いわゆる単列総ころ状態で配設されている。脚軸22の外周面は針状ころ31の内側転動面を構成し、ローラ30の内周面は針状ころ31の外側転動面を構成している。
これら針状ころ31は、脚軸22の付け根部に外嵌されたインナワッシャ32と半径方向内側で接すると共に、脚軸22の先端部に外嵌されたアウタワッシャ33と半径方向外側で接している。このアウタワッシャ33は、脚軸22の先端部に形成された環状溝23に丸サークリップ等の止め輪34を嵌合させることにより抜け止めされている。
この等速自在継手では、トリポード部材20の脚軸22と外側継手部材10のローラ案内面14とがローラ30を介して二軸の回転方向に係合することにより、駆動側から従動側へ回転トルクが等速で伝達される。また、ローラ30が脚軸22に対して回転しながらローラ案内面14上を転動することにより、外側継手部材10とトリポード部材20との間の相対的な軸方向変位や角度変位が許容される。
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材10とシャフト40との間に、外側継手部材10の開口部11を閉塞するゴムまたは樹脂製のブーツ50を装着した構造を具備する。このように、外側継手部材10およびブーツ50の内部空間に潤滑剤を封入することにより、外側継手部材10に対してシャフト40が作動角をとりながら回転する動作時において、継手内部の摺動部位、つまり、外側継手部材10、トリポード部材20およびローラ30で構成される摺動部位での潤滑性を確保するようにしている。
ブーツ50は、外側継手部材10の開口部11の外周面にブーツバンド71により締め付け固定された大径端部51と、トリポード部材20から延びるシャフト40の外周面にブーツバンド72により締め付け固定された小径端部52と、大径端部51と小径端部52とを繋ぎ、その大径端部51から小径端部52へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部53とで構成されている。
この実施形態の等速自在継手では、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーを防止するため、図1および図3に示すように、ブーツ50の大径端部51の内周面の全周に亘って、外側継手部材10の径方向内側に向けて張り出してトラック溝12から突出するフランジ部54を設けた抜け止め構造を採用している。この内部部品60の抜け止め構造では、フランジ部54の先端内径を内部部品60の最大外径よりも小さく設定することにより、内部部品60の軸方向変位時にフランジ部54が内部部品60の干渉可能となる。図示の実施形態では、フランジ部54の先端内径が内部部品60のローラ30位置と対応するようにフランジ部54を径方向内側へ大きく突出させている。
この等速自在継手では、ブーツ50の大径端部51の内周面の全周に亘って、外側継手部材10の径方向内側に向けて張り出してトラック溝12から突出するフランジ部54を設けたことにより、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60がフランジ部54と干渉することで内部部品60の軸方向変位量を規制することによって、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーを防止する。特に、このトリポード型等速自在継手をドライブシャフトとして自動車に組み付けるに際して、固定式等速自在継手、ハブベアリングおよびナックルの荷重がトリポード型等速自在継手のスライドアウト方向にかかった場合に有効で、この等速自在継手の組み付け性が向上する。
一方、従来のような環状凹溝形成のための加工、ストッパ部材のような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。また、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材10の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品60の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材10の軽量化が図れる。
さらに、この実施形態のフランジ部54は、ブーツ50の大径端部51の内周面の全周に亘って連続的に形成されているのでブーツ50の成形が容易で、ブーツ50を外側継手部材10の開口部11に装着する際に、フランジ部54とトラック溝12との位置合わせが不要であり、ブーツ50の組み付けも簡易となる。また、内部部品60の軸方向変位時、ブーツ50の全周に亘って連続的に形成されたフランジ部54で軸方向荷重を受けるので、フランジ部54の剛性が高く内部部品60の抜け止め性能を向上させることができる。
この内部部品60の軸方向変位時、フランジ部54の先端がブーツ蛇腹側に変形することになる。この変形に伴ってフランジ部周りのブーツ外径が径方向外側へ膨出するように変形する可能性がある。そこで、図4に示すように、ブーツバンド73のブーツ蛇腹側を軸方向に延設し、そのブーツバンド73の軸方向寸法を図1の実施形態におけるブーツバンド71よりも大きくするようにしてもよい。これにより、ブーツバンド73でフランジ部周りのブーツ外径を径方向内側へ押さえ込むことで、内部部品60の軸方向変位時、フランジ部54の先端の変形に伴ってフランジ部周りのブーツ外径が径方向外側へ膨出するように変形することを阻止する。
この実施形態におけるフランジ部54は、そのブーツ側端面と反対側の外側継手部材側端面55が外側継手部材10の開口部11の端面に接するように設けられている。このような位置にフランジ部54を設けることにより、継手が作動角をとった時、フランジ部54がブーツ50の蛇腹部53の変形を阻害することなく、継手の良好な作動性を確保することができる。
この実施形態におけるフランジ部54は、ブーツ50の射出成形により一体的に形成されている。このように、フランジ部54をブーツ50の射出成形と同時に形成することにより、ブーツ50の大径端部51の内周面の全周に亘って、外側継手部材10の径方向内側に向けて張り出してトラック溝12から突出するフランジ部54を容易に形成することができる。
このフランジ部54は、その軸方向厚みが径方向外側から径方向内側へ向けて小さくなるように設定されている。フランジ部54のブーツ側端面と反対側の外側継手部材側端面55が外側継手部材10の開口部11の端面に接するようにしていることから、そのフランジ部54のブーツ側端面56をテーパ状としている。このような構造とすることにより、ブーツ50の成形時に脱型し易いために生産性の向上が図れてコスト的に有効である。また、フランジ部54の根元部分を厚くできるので、フランジ部全体の剛性が向上して内部部品60の抜け止め性能が向上する。
このブーツ50は、エラストマー(弾性体)を素材としている。その素材としては、樹脂あるいはゴムのいずれかが好適である。このように素材を選定することにより、ブーツ50が角度変化した時の伸縮を無理なく吸収することができる。なお、このブーツ50の素材の弾性率は30〜150MPaである。この弾性率が30MPaより小さいと、フランジ部54の剛性が小さ過ぎて内部部品60が飛び出すスライドオーバーを防止することが困難となり、また、弾性率が150MPaよりも大きいと、ブーツ全体の剛性が大き過ぎて継手が作動角をとる時の変形抵抗が大きくなり継手のトルクが増大したり、耐久寿命が短くなる要因となる。
図1の実施形態では、フランジ部54の先端内径が内部部品60のローラ30位置と対応するようにフランジ部54を径方向内側へ大きく張り出しているが、フランジ部54は必要最小限でトラック溝12から突出すればよく、図5に示すように、フランジ部57の先端内径が内部部品60の脚軸22位置と対応するようにフランジ部57を径方向内側へ小さく張り出すようにしてもよい。このフランジ部57も、そのブーツ側端面と反対側の外側継手部材側端面58が外側継手部材10の開口部11の端面に接するように設けられ、ブーツ側端面59をテーパ状としている。
以上の実施形態では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用した場合について説明したが、図6および図7に示すボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手にも適用可能である。図6は継手の軸線に対する縦断面図、図7はブーツ装着前の状態での継手のC矢視図である。このダブルオフセット型等速自在継手は、図6および図7に示すように、外側継手部材110、内側継手部材120、転動体であるボール130およびケージ170で主要部が構成されている。
この等速自在継手は、一端に開口部111を有するカップ状をなし、軸方向に延びる直線状トラック溝112が内周面の複数箇所に形成された外側継手部材110と、軸方向に延びる直線状トラック溝122が外側継手部材110のトラック溝112と対をなして外周面の複数箇所に形成された内側継手部材120と、外側継手部材110のトラック溝112と内側継手部材120のトラック溝122との間に配されたボール130と、外側継手部材110の内周面と内側継手部材120の外周面との間に介在してボール130を保持するケージ180とを備えた構造である。
なお、この実施形態では、6個ボールの等速自在継手を例示するが、8個ボールの等速自在継手にも適用可能であり、ボール130の個数は任意である。この外側継手部材110の内部には、内側継手部材120、ボール130およびケージ180からなる内部部品160が軸方向摺動自在に収容されている。また、内側継手部材120の軸孔にシャフト140の軸端がスプライン嵌合により連結され、環状のスナップリング141により内側継手部材120に対して抜け止めされている。
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材110とシャフト140との間に、外側継手部材110の開口部111を閉塞するゴムまたは樹脂製のブーツ150を装着した構造を具備する。ブーツ150は、外側継手部材110の開口部111の外周面にブーツバンド171により締め付け固定された大径端部151と、内側継手部材120から延びるシャフト140の外周面にブーツバンド172により締め付け固定された小径端部152と、大径端部151と小径端部152とを繋ぎ、その大径端部151から小径端部152へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部153とで構成されている。
この実施形態の等速自在継手では、内部部品160の軸方向変位時、その内部部品160が外側継手部材110の開口部111から飛び出すスライドオーバーを防止するため、図6および図8に示すように、ブーツ150の大径端部151の内周面の全周に亘って、外側継手部材110の径方向内側に向けて張り出してトラック溝112から突出するフランジ部154を設けた抜け止め構造を採用している。この内部部品160の抜け止め構造では、フランジ部154の先端内径を内部部品160の最大外径よりも小さく設定することにより、内部部品160の軸方向変位時にフランジ部154が内部部品160の干渉可能となる。図示の実施形態では、フランジ部154の先端内径が内部部品160の内側継手部材120位置と対応するようにフランジ部154を径方向内側へ大きく張り出している。このフランジ部154による内部部品160の抜け止め作用および効果については、前述のトリポード型等速自在継手の実施形態と同様であるため、重複説明は省略する。
この実施形態においても、図9に示すように、ブーツバンド173のブーツ蛇腹側を軸方向に延設し、そのブーツバンド173の軸方向寸法を図6の実施形態におけるブーツバンド171よりも大きくするようにしてもよい。これにより、ブーツバンド173でフランジ部周りのブーツ外径を径方向内側へ押さえ込むことで、内部部品160の軸方向変位時、フランジ部154の先端の変形に伴ってフランジ部周りのブーツ外径が径方向外側へ膨出するように変形することを阻止することができる。
この実施形態においても、フランジ部154は、そのブーツ側端面と反対側の外側継手部材側端面155が外側継手部材110の開口部111の端面に接するように設けられている点、ブーツ150の射出成形により一体的に形成されている点、その軸方向厚みが径方向外側から径方向内側へ向けて小さくなるように設定されている点(特に、フランジ部154のブーツ側端面156をテーパ状としている点)が、前述のトリポード型等速自在継手の実施形態と同様であり、その作用効果も同様であるため、重複説明は省略する。
また、ブーツ150についても、エラストマー(弾性体)を素材としている点、その素材としては、樹脂あるいはゴムのいずれかが好適である点、ブーツ150の素材の弾性率は30〜150MPaである点が、前述のトリポード型等速自在継手の実施形態と同様であり、その作用効果も同様であるため、重複説明は省略する。
図6の実施形態では、フランジ部154の先端内径が内部部品160の内側継手部材120位置と対応するようにフランジ部154を径方向内側へ大きく張り出しているが、フランジ部154は必要最小限でトラック溝112から突出すればよく、図10に示すように、フランジ部157の先端内径が内部部品160のボール130位置と対応するようにフランジ部157を径方向内側へ小さく張り出すようにしてもよい。このフランジ部157も、そのブーツ側端面と反対側の外側継手部材側端面158が外側継手部材110の開口部111の端面に接するように設けられ、ブーツ側端面159をテーパ状としている。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
10 外側継手部材
11 開口部
12 トラック溝
14 ローラ案内面
20 内側継手部材(トリポード部材)
22 脚軸
30 転動体(ローラ)
50 ブーツ
51 端部(大径端部)
54 フランジ部
60 内部部品
11 開口部
12 トラック溝
14 ローラ案内面
20 内側継手部材(トリポード部材)
22 脚軸
30 転動体(ローラ)
50 ブーツ
51 端部(大径端部)
54 フランジ部
60 内部部品
Claims (10)
- 一端に開口部を有するカップ状をなし、軸方向に延びるトラック溝が内周面の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入された転動体を介して前記外側継手部材との間で角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、前記転動体および内側継手部材を含む内部部品が前記外側継手部材に軸方向摺動自在に収容され、前記外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部を前記開口部の外周面に装着した摺動式等速自在継手であって、
前記ブーツの端部内周面の全周に亘って、前記外側継手部材の径方向内側に向けて張り出して前記トラック溝から突出するフランジ部を設けたことを特徴とする摺動式等速自在継手。 - 前記フランジ部は、外側継手部材の開口部の端面に接するように設けられている請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記フランジ部は、ブーツの射出成形により一体的に形成されている請求項1又は2に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記フランジ部は、その軸方向厚みが径方向外側から径方向内側へ向けて小さくなるように設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記フランジ部は、ブーツ側端面あるいは外側継手部材側端面の少なくとも一方をテーパ状とした請求項1〜4のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記ブーツの素材をエラストマーとした請求項1〜5のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記ブーツの素材を樹脂あるいはゴムのうちから選択される一つとした請求項1〜6のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記ブーツの素材の弾性率が30〜150MPaである請求項1〜7のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、前記内側継手部材は、先端が前記トラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、前記転動体は、前記脚軸に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材のトラック溝に挿入されて前記ローラ案内面に沿って案内されるローラである請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
- 前記内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が前記外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、前記転動体は、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールであり、前記外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在して前記ボールを保持するケージを備えた請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2011055529A JP2012189190A (ja) | 2011-03-14 | 2011-03-14 | 摺動式等速自在継手 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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| JP2012189190A true JP2012189190A (ja) | 2012-10-04 |
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ID=47082588
Family Applications (1)
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| JP2011055529A Withdrawn JP2012189190A (ja) | 2011-03-14 | 2011-03-14 | 摺動式等速自在継手 |
Country Status (1)
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|---|---|
| JP (1) | JP2012189190A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2014214766A (ja) * | 2013-04-23 | 2014-11-17 | 株式会社ジェイテクト | シャフトに外嵌された外嵌部材の抜け防止構造及び摺動式等速ジョイント |
| JP2016008626A (ja) * | 2014-06-23 | 2016-01-18 | 株式会社ジェイテクト | ボール型等速ジョイント組立体及びそのブーツ |
| JP2016007998A (ja) * | 2014-06-26 | 2016-01-18 | マツダ株式会社 | 車両の動力伝達構造 |
-
2011
- 2011-03-14 JP JP2011055529A patent/JP2012189190A/ja not_active Withdrawn
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