JP2012240002A - 触媒の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面に銅層が被覆された白金粒子を少なくとも含む触媒を、外部電源を用いることなく、容易に量産することができる触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】銅イオンを含む酸水溶液を、白金担持導電体3aで懸濁した懸濁液11に銅材10を浸漬し、白金粒子32の表面に銅層を析出させる析出工程S21と、析出工程S21における白金粒子の表面の銅層の析出状態を評価する評価工程S20と、を含む。評価工程S20は、参照極16と、白金からなる作用極14とを懸濁液11に浸漬する浸漬工程S22を含み、作用極S11の表面に銅層を析出させながら、参照極16に対する作用極14の電位が一定電位となるまでの時間を測定する測定工程S23と、測定後の作用極に析出した銅層を除去する除去工程S24とからなる一連の工程を、繰り返し行い、繰り返し行われる前定工程S23における測定時間毎の変化量に基づいて、析出工程S21を終了する。
【選択図】図2

Description

本発明は、白金粒子及び白金粒子を担持した導電性担体からなる触媒の製造方法に係り、白金粒子の表面に銅層を好適に被覆することができる触媒の製造方法に関する。
従来から、めっき、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)などの表面処理は、一般的に、粒子などの基材表面を異種材料で被覆することにより、基材の性質を維持したまま、基材表面の性質のみを改質するために行われることがある。一方、この種の表面処理は、被覆材となる高価な金属材料の使用量の低減、利用率の向上、あるいは、特性劣化の抑制のために利用される。
例えば、燃料電池用電極には、粒状カーボンなどの導電性担体に白金粒子を担持させたものを触媒として用い、酸素センサなどには、白金粒子そのものが触媒として用いられる。このような白金粒子は、白金または白金合金からなる、数ナノメートルの粒子である。このような触媒は、白金粒子の表面およびその近傍が触媒として機能するため、高価な白金または白金合金の利用率の向上(使用量の低減)が望まれている。
さらに、燃料電池使用環境下において、このような触媒を用いた場合には、白金粒子が酸化、溶出し、再析出により粗大化することがあり、電池性能が低下することが知られている。そのため、白金粒子の表面の一部に薄い金層を形成し(白金粒子の表面に金を修飾し)、白金粒子の酸化、溶出を抑制する技術が提案されている。
例えば、(1)白金粒子を電極(作用極)上に固定し、この電極を窒素雰囲気中で、硫酸銅水溶液に浸漬し、電極に適切な還元電位を印加することにより、銅の単原子層を白金粒子の表面に析出させて銅被覆白金粒子を製造し、(2)電極と共に銅被覆白金粒子を精製水で濯ぎ、溶液内に存在する銅イオンを除去し、(3)銅被覆白金粒子を、HAuCl水溶液に浸漬することにより、単原子層の銅を金に置換する触媒の製造技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このように、特許文献1に記載の製造装置によれば、アンダーポテンシャルディポジション(UPD)法を用いて、白金粒子表面を銅単原子層で被覆し、この銅単原子層を金でガルバニック置換することにより、白金粒子の表面に金が修飾された触媒を得ることができる。
特表2009−510705号公報
ここで、特許文献1に示すように、白金粒子の表面に金が修飾された触媒を得る前段階として、UPD法を用いた銅単原子層(銅層)の析出は、通常、被覆すべき銅イオンを含む溶液中に、粒子が固定された作用極(WE)、さらには、この作用極に対する対極(CE)及び参照極(RE)を浸漬し、外部電源を用いて作用極を所定の電位に保持することにより行われる。
しかしながら、特許文献1に示すような装置では外部電源を用いるため装置が大型化し、この外部電源で、参照極に対する作用極の電位を調整せねばならず、その作業は煩雑である。さらには、作用極の表面に白金粒子を塗布し、これを固定しなければならず、触媒の量産には適さない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、表面に銅層を被覆した白金粒子を少なくとも含む触媒を、外部電源を用いることなく、容易に量産できる触媒の製造方法を提供することにある。
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の新たな知見を得た。具体的には、銅イオンを含む平衡状態の酸水溶液中に銅材(電極)の少なくとも一部を浸漬すると、銅材の電位は、その場所によらず銅の標準電極電位(約0.35V)に等しくなる。この銅材と白金粒子(または白金粒子が担持された導電性担体)とを接触させると、この白金粒子の電位は、銅材と同電位となる。この状態で白金粒子と酸水溶液とを接触させると、ほぼ瞬間的にUPDが起こり、白金粒子の表面に1原子層分の銅層が被覆される。このように、酸水溶液と接触している銅材そのものが、外部電源無しに、約0.35Vの電源として機能するという、これまでにない原理を利用したものである。
しかしながら、このような原理を利用した場合、酸水溶液(懸濁液)中に、白金粒子または導電性担体が浮遊しているため、全ての白金粒子が銅材に接触し、白金粒子の表面に銅層が被覆されたかどうかを判断することは、容易ではない。そこで、発明者らは、白金または白金合金からなる作用極を用いて、この作用極に、銅層が形成された白金粒子を接触させることにより、上述した原理と参照極に対する作用極の時間的な電位の変化を確認すれば、全ての白金粒子に銅層が被覆されたかを判断することができるとの新たな知見を得た。
本発明は、発明者らの新たな知見に基づくものであり、本発明に係る触媒の製造方法は、白金または白金合金からなる白金粒子の表面、または、白金粒子を担持した導電性担体の前記白金粒子の表面に、銅層を被覆した触媒の製造方法である。該製造方法は、銅イオンを含む酸水溶液を、前記白金粒子または前記導電性担体で懸濁した懸濁液に銅材を浸漬した状態で、前記懸濁液を攪拌して該銅材と前記白金粒子または前記導電性担体を接触させることにより、前記白金粒子の表面に銅層を析出させる析出工程と、該析出工程に合わせて、析出工程における前記白金粒子の表面の銅層の析出状態を評価する評価工程と、を含む。該評価工程は、参照極と、白金または白金合金からなる作用極と、を前記懸濁液に浸漬する浸漬工程を含み、前記懸濁液の攪拌で、前記銅層が形成された白金粒子を前記作用極に接触させることにより、前記作用極の表面に銅層を析出させながら、前記参照極に対する前記作用極の電位が一定電位となるまでの時間を測定する測定工程と、該測定工程後の前記作用極に析出した銅層を除去する除去工程とからなる一連の工程を、繰り返し行うものであり、繰り返し行われる前記測定工程における測定時間の変化量に基づいて、前記析出工程を終了することを特徴とする。
本発明によれば、銅イオンを含む酸水溶液を、前記白金粒子または前記導電性担体で懸濁した懸濁液に銅材を浸漬した状態で、前記懸濁液を攪拌することにより、懸濁液に含まれる白金粒子または導電性担体が、銅イオンを含む酸水溶液中において銅材に接触する。これにより、外部電源なしで、表面に1原子層分の銅層(銅単原子層)が被覆された白金粒子またはこれを担持した導電性担体を得ることができる。
すなわち、外部電源なしで、銅材(銅電極)の表面では、酸化反応としてCuの溶解反応(Cu→Cu2++2e-)が起こり、白金粒子表面では、Cuの析出反応(Pt+Cu2++2e-→Cu−Pt)が起こる。そして、銅材の表面では、酸素ガスの発生は生じないので、銅単原子層(銅層)は、白金粒子と剥離し難い。
攪拌中において、白金粒子が銅材に接触しない一部の白金粒子は、その表面に銅層は被覆されていない(析出していない)ので、これらすべての白金粒子の表面に、銅層が被覆されたかを確認するために、析出工程と並列して、析出工程における前記白金粒子の表面の銅層の析出状態を評価する評価工程を行う。
評価工程では、参照極、作用極、必要に応じて対極を浸漬する。作用極には、白金または白金合金からなる電極を用いる。懸濁液を攪拌することにより、銅材では、銅層が被覆されていない白金粒子が接触し、その表面に銅層(銅単原子層)が析出する。一方、作用極では、銅層(銅単原子層)が析出した白金粒子が接触し、その表面に銅層が析出する。
ここで、懸濁液の攪拌が進むに従って、表面に銅層が被覆された白金粒子の割合が増え、これに応じて、作用極の表面に析出する銅層の割合も増える。そして、作用極の浸漬した全表面に銅層が析出したときには、懸濁液の攪拌に拘わらず、参照極に対する作用極の電位が一定電位となる。すべての白金粒子に銅層が析出している状態では、作用極の電位が一定電位になるまでの時間(すなわち、作用極の銅層の析出開始から、作用極の全表面に銅層が析出するまでの時間)は略一定時間になる。この点を利用して、すべての白金粒子の表面の銅層の析出の完了を判断する。
すなわち、本発明では、測定工程と除去工程とからなる一連の工程を繰り返し、繰り返し行われる測定工程において測定された測定時間毎の変化量に基づいて、析出工程を終了する。すなわち、測定時間毎の変化量が、ほとんど無い(ぼぼゼロの)場合、換言すると、繰り返し行われる測定工程における、前回の測定時間と、今回の測定時間とがほぼ同じ場合、すべての白金粒子の表面の銅層の析出が完了したものとみなすことができる。このときに、例えば、懸濁液の攪拌を終了したり、懸濁液から銅材を取り出したり、または、懸濁液そのものを取り出すことにより、析出工程を終了する。
このようにして、さらに、外部電源を用いた従来のUPDにおいて、作用電極の表面に白金粒子または導電性担体を固定していたところ、このような固定を行わずに、酸水溶液中の白金粒子が銅材に接触するだけで、白金粒子の表面に銅層を被覆することができ、さらには、すべての白金粒子の表面に銅層が被覆されたことを容易に判断することができる。これにより、銅層が被覆された白金粒子または、これを担持した導電性担体を容易に量産することができる。
ここで、本発明でいう、白金粒子とは、白金原子を主材として含有した粒子であり、白金またはその合金からなる粒子である。また。銅材とは、銅電極として作用する(銅がイオン化する)材料からなる部材であり、銅またはその合金からなる部材である。また、本発明でいう触媒とは、白金粒子のみからなる触媒、または白金粒子が担持された導電性担体からなる触媒をいい、白金粒子を少なくとも含むものをいう。
また、評価工程において、繰り返し行われる測定工程の測定時間を比較することにより、白金粒子の表面の銅層の析出の終了を判断するため、上述した一連の工程を行う際には、懸濁液に浸漬される作用極の面積は、繰り返し行う浸漬工程に拘わらず常に一定であることが好ましい。
したがって、より好ましい態様としては、前記作用極として、少なくとも先端側が露出するように、基端側にガラス材が被覆された作用極を用い、前記浸漬工程において、前記先端側の露出した全ての部分が、前記懸濁液に浸漬するように、前記作用極を浸漬させる。このような態様にすることにより、繰り返し行う浸漬工程において、懸濁液に作用極の一定面積を容易に浸漬することができる。
さらに、参照極に用いる材料は、前記懸濁液に対して化学的に安定していれば、一般的に知られた標準水素電電極など、特に限定されるものではないが、好ましい態様では、前記参照極に銅からなる参照極を用い、前記浸漬工程において、該参照極に前記懸濁液中の前記酸水溶液が接触し、かつ、前記懸濁液中の前記白金粒子または前記導電性担体が接触しないように、前記参照極を浸漬させる。
この態様によれば、参照極に銅を用いることにより、作用極に銅層が被覆されたときに、参照極に対する作用極の電位が銅の標準電極電位(約0.35V)となるので、作用極に銅層が被覆されたことを容易に判断することができる。また、参照極は、白金粒子または導電性担体に接触しないように懸濁液中の酸水溶液に液絡しているので、参照極の表面が安定する(基準となる参照極の電位が変化しない)。これにより、参照極に対する作用極の電位を安定して測定することができる。
また、除去工程において、作用極の表面に付着した銅層を除去することができるのであれば、その除去方法は、機械的除去、化学的除去、または電気化学的除去など特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記除去工程において、前記参照極に対する前記作用極の電位を、銅の標準電極電位よりも高い電位に制御することにより、前記作用極の表面に被覆された銅層を除去する。
この態様によれば、参照極に対する作用極の電位を銅の標準電極電位よりも高い電位に制御することにより、懸濁液に作用極を浸漬した状態で、作用極の表面に形成された銅層が、懸濁液中(酸水溶液中)に溶出し、作用極の表面から銅層を迅速に除去することができる。これにより、作用極を取り出すことなく、作用極の銅表面を再度懸濁液に浸漬した状態にすることができる。
本発明によれば、表面に銅層が被覆された白金粒子を少なくとも含む触媒を、外部電源を用いることなく、容易に量産することができる。
本発明の実施形態に係る触媒の製造方法に用いる装置の模式的概略図。 本発明に係る触媒の製造方法を説明するためのフロー図。 図2に示すフローにおける触媒の状態を説明するための模式図であり、(a)は、析出工程前の触媒の断面図であり、(b)は、析出工程後の触媒の一部の拡大断面図。 図2に示す評価工程における作用極の表面の状態を説明するための模式図であり、(a)は、銅層被覆白金触媒が作用極に接触する前の状態を示した図であり、(b)は、その接触直後の状態を説明するための図であり、(c)は、作用極に銅層が析出した状態を説明するための図。 実施例における1回目の銅層析出時の作用極の電位と析出時間の関係を示した図。 実施例における2〜5回目の銅層析出時の作用極の電位と析出時間の関係を示した図。 銅層の析出状態を確認するためのサイクリックボルタンメトリの結果を示した図。
以下の本実施形態に係る触媒の製造方法を実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る触媒の製造方法に用いる装置の模式的概略図である。図2は、本発明に係る触媒の製造方法を説明するためのフロー図である。図3は、図2に示すフローにおける触媒の状態を説明するための模式図であり、(a)は、析出工程前の触媒の断面図であり、(b)は、析出工程後の触媒の一部の拡大断面図である。
図4は、図2に示す評価工程における作用極の表面の状態を説明するための模式図であり、(a)は、銅層被覆白金触媒が作用極に接触する前の状態を示した図であり、(b)は、その接触直後の状態を説明するための図であり、(c)は、作用極に銅層が析出した状態を説明するための図である。
本発明に係る触媒の製造方法は、表面に銅層が被覆された白金合金または白金からなる白金粒子を含む触媒の製造方法であり、以下に示す白金粒子表面に銅層を析出させる析出工程と、該析出工程における銅層の析出状態を評価する評価工程、および、評価後(析出工程完了後)に、銅層を金に置換する金置換工程を経て、触媒を製造することができる。
1.析出工程
図2に示すように、白金粒子表面に銅層を析出させる析出工程S21を行う。具体的には、白金粒子、または白金粒子を担持した導電性担体を準備する。本実施形態では、図3(a)に示す導電性担体31に白金粒子32を担持した白金担持導電体3aを準備する。白金粒子は、白金合金または白金からなり、白金合金として、例えば、PtFe合金、PtMo合金、PtCu合金、PtRu合金、PtSn合金、PtW合金、PtCo合金、PtNi合金、PtIr合金、PtAu合金などを挙げることができ、触媒として作用することができる白金合金であれば特に限定されるものではない。また、白金粒子の大きさは特に限定されるものではなく、例えば燃料電池用の電極触媒に用いる場合には、2〜10nmが好ましい。
また、白金粒子を担持する導電性担体の材料として、カーボン、チタン酸化物(TiO,Tiなど)、モリブデン酸化物、またはタンタル酸化物等を挙げることができ、その形態は、粉末状、板状、棒状、または網状のいずれの形態であってもよい。
このような白金粒子(または導電性担体に担持された白金粒子)の表面に、UPD法により銅単原子層(銅層)を析出させ、白金粒子表面に銅層を被覆する。具体的には、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガスなどの)雰囲気下で、図1に示す銅析出槽18に、銅イオンを含む酸水溶液を上述した白金担持導電体3aで懸濁した懸濁液11を投入し、この懸濁液11に平板状の銅材10の少なくとも一部を浸漬させる。この状態で、懸濁液11を攪拌器17で攪拌し、銅材10と導電性担体(または白金粒子)を接触させる。
この際に、酸水溶液(懸濁液11)に接触した銅材10は、銅の標準電極電位(約0.35V)に等しくなり、さらに銅材10に接触した白金粒子(または導電性担体を介した白金粒子)の電位は、銅材10と同じ電位になる。このような状態では、酸水溶液と銅材10間、および、白金粒子と銅材10間が接触している状態において、白金粒子に酸水溶液が接触しているので、図3(b)に示すように、ほぼ瞬間的に、少なくとも一部の白金粒子32の表面に銅単原子層(銅層)33が析出した銅層被覆白金担持導電体3bを得ることができる。
すなわち、外部電源なしで、銅材10の表面では、酸化反応としてCuの溶解反応(Cu→Cu2++2e-)が起こり、一部の白金粒子の表面では、第1の酸水溶液のCuイオンからCuの析出反応(Pt+Cu2++2e-→Cu−Pt)が起こる。
このように、銅材10を酸水溶液(懸濁液11)に接触させると、銅イオンが溶出する。この銅イオンが存在する酸水溶液中では、銅材10の表面で、銅の溶解と銅イオンの析出が起こる。これが平衡状態に達すると、このときの第1または第2の銅材の表面電位は、銅の標準電極電位となる。このような状態の銅材10に白金粒子(導電性担体を介してもよい)を接触させると、白金粒子の電位は、同電位となる。この電位(平衡電位)で、白金粒子の表面に銅単原子層が析出する。
ここで、銅材10は、少なくともその表面が銅または銅合金からなる部材であり(必ずしも、全体が銅または銅合金からならずともよい)、銅材−白金粒子−酸水溶液間を、直接的または間接的に、イオン的に導通することが可能なものである。
具体的には、銅材10は、高純度の銅が好ましく、白金粒子の電位を銅の標準電極電位(約0.35V)にすることが可能な限りにおいて、不可避的不純物を含む低純度銅や合金元素を含む銅合金であってもよい。例えば、酸化還元電位が銅よりも低い金属(例えば、Zn、Snなど)を含む銅合金は、本実施形態では、望ましいものではない。これは、銅よりも卑なる金属が優先的に溶出してしまう(または、溶出時に電極が銅の標準電極電位よりも低い電位となる)ためである。従って、銅よりも貴なる金属(例えば、Pt,Ag,Au、Pd,Irなど)を含む銅合金は、銅材10に好適に用いることができる。
銅材10に銅合金を用いる場合において、銅含有量が少なくなるほど、銅の溶出速度が遅くなる。また、銅の溶出が進むに従って、銅材表面の銅の比率が下がり、銅と白金粒子の直接的または間接的な接触が起き難くなる。従って、銅合金を用いる場合、銅材10の銅含有量が多ければ多いほど好ましい。なお、銅材10として、平板状の銅材を用いたが、銅または銅合金からなる粒状片、棒、細線、網(メッシュ)、塊などを挙げることができる。
また、懸濁液11を構成する酸水溶液は、白金粒子にUPDが可能な酸溶液であり、可溶性の銅塩を酸水溶液に溶解させることにより得られる。可溶性の銅塩として、例えば、硫酸銅(CuSO)、塩化銅(CuCl)、酢酸銅(Cu(CHCOO))、硝酸銅(Cu(NO)などを挙げることができる。
ここで、酸水溶液中の銅イオンの濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な濃度を選択することができる。本実施形態では、UPDにより白金粒子の表面に銅が析出した分だけ、後述する第1および第2の銅材から銅が溶出する。そのため、銅イオン濃度がμMレベルでも反応は進む。しかしながら、工業的には反応を速やかに進めることが好ましく、その場合には、銅イオン濃度は、1mM以上であることが好ましい。一方、銅イオン濃度が過剰になると、溶質が析出し易くなる。従って、銅イオン濃度は、飽和濃度以下であることが好ましく、さらに好ましくは、飽和濃度の90%以下である。
水溶液中に含まれる酸は、Cuを溶解可能なものであれば、特に限定されるものではなく、このような酸として、例えば、硝酸、硫酸、過塩素酸、塩酸、またはホウ酸などを挙げることができ、Cu塩と酸との組合せは、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
さらに、酸水溶液のpHが大きくなり過ぎると、一般的に、後述する銅材を所定の電位にするのが困難となる。また、水溶液中のpHが大きくなるほど、反応速度が低下する。従って、このような観点から、水溶液のpHは、4以下であることが好ましい。一方、pHが小さくなり過ぎると、導電性担体(例えばカーボン)の表面を酸化させる場合がある。従って、水溶液のpHは、1以上が好ましい。
酸水溶液には、白金粒子の白金または白金合金を被毒しない限りにおいては、銅イオン、酸および水以外の成分がさらに含まれていてもよい。他の成分としては、例えば可溶性の銅塩に由来する陰イオン、還元性の弱い有機溶媒(例えば、高級アルコール類)などがさらに含まれていてもよい。また、酸水溶液は、溶存酸素を取り除くため、反応中または反応前に充分に不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガス)でバブリングすることが好ましい。
以上のようにして、懸濁液11と接触している銅材10が0.35Vの電源として機能するため、単原子層の銅を析出させるために外部電源や参照極を準備する必要がない。また、白金粒子を作用極に塗布しこれを固定する必要がないので、量産性にも適している。さらに、銅材は対極としても作用するが、銅材の表面では、酸化反応として銅の溶解反応が起こるだけであるので、酸素ガスの発生を伴わず、銅層の剥離も抑制できる。
2.評価工程
攪拌中において、白金粒子が銅材に接触しない一部の白金粒子は、その表面に銅層は被覆されていない(析出していない)ので、これらすべての白金粒子の表面に、銅層が被覆されたかを確認するために、図2に示すように、析出工程S21と並列して、評価工程S20をおこなう。評価工程S20は、析出工程S21における白金粒子の表面の銅層の析出状態を評価する工程であり、評価工程S20は、浸漬工程S22、測定工程S23、除去工程S24、および判定工程S25からなる。
まず、浸漬工程S22では、図1に示すように、作用極14、対極15、および参照極16を準備する。作用極14は、ガラス材12が被覆された、白金または白金合金からなる白金線を用い、好ましくは、白金粒子と同じ材料からなる電極を用いる。対極15には、作用極14と同じくガラス材12が被覆された、白金線の先端側に白金または白金合金からなる白金板が接続された電極を用いる。さらに、参照極16には、銅線を用い、この銅線は、底面にガラスフリット(ガラスフィルタ)16bが取り付けられたガラス管16aに内挿入されている。ガラスフリット16bは、懸濁液中の白金担持導電体3aをガラス管16a内に通過させず、酸水溶液のみを通過させるものである。そして、図1に示すように、作用極14、対極15および参照極16を、上述した懸濁液11に浸漬する。
次に、上述した析出工程S21の攪拌に合わせて、測定工程S23を行う。具体的には、図4(a)に示すように、析出工程では、一部の白金担持導電体3aが、銅層被覆白金担持導電体3bとなり、これが作用極14の周りの懸濁液中に存在する。さらなる懸濁液の攪拌により、図4(b)に示すように、銅層被覆白金担持導電体3bを作用極14に接触させることにより、作用極14の表面に銅33’が析出する。これは、上述した白金粒子の表面に銅層が析出する原理と同じである。一方、作用極14に接触した銅層被覆白金担持導電体3bは、白金担持導電体3aに戻る(図3(a)参照)。
ここで、測定工程S23では、析出工程S21と浸漬工程S22とが共に開始されたとき(すなわち作用極に銅層が析出し始めたとき)を開始時刻として、時間を測定する。作用極14の浸漬した銅層が析出するに従って、参照極16に銅を用いているので、参照極16に対する作用極14の電位は、銅の標準電極電位に近づく。最終的には、図4(c)に示すように、作用極14の浸漬した全表面に銅層が析出したときには、懸濁液の攪拌に拘わらず、参照極16に対する作用極14の電位が一定電位(銅の標準電極電位)となるので、この時点を、測定の終了時刻とし、開始時刻から終了時刻までの時間t1を算出する。
次に、図2に示すように、除去工程S24において、作用極の表面に付着した銅層を除去する。本実施形態では、除去工程において、例えば、ポテンショスタットに各電極を接続し、参照極16に対する作用極14の電位を、銅の標準電極電位よりも高い電位(たとえば、0.7V)に制御することにより、作用極14の表面に被覆された銅層を除去する。ここで、対極15の浸漬している部分は、白金板であるので、白金線に比べて、作用極14の表面における銅層の除去効率をより高めることができる。このようにして、作用極14を懸濁液11から取り出すことなく、その表面から銅層を除去し、表面に白金が露出した作用極14を懸濁液11に再度浸漬した状態にすることができる。
また、ガラスフリット16bが取り付けられたガラス管16aにより、参照極16には、懸濁液11中の酸水溶液が接触するが、懸濁液中の白金担持導電体3aは接触しない。これにより、測定中において、基準となる参照極16の電位を安定させることができる。
ここで、測定工程S23と除去工程S24からなる一連の工程が、1度目の場合には、判定工程S25を行わず、測定工程S23と除去工程S24からなる一連の工程を繰り返す。そして、一連の工程を繰り返す際に、繰り返し行われる測定工程S23における測定時間(T1,T2,…Tn−1,Tn(n=繰り返し回数))毎の変化量に基づいて、析出工程の完了を決定する。
具体的には、図2に示すように、n−1回目の測定時間Tn−1と、n回目の測定時間Tnとを比較して、その差(すなわち変化量)が所定時間t(ただしt≒0)以下であるときは、すべての白金粒子に銅層が析出している状態と判断し、析出工程の完了を決定する(析出工程を終了する)。これは、全ての白金粒子に、銅層が析出したときには、作用極14の電位が一定電位になるまでの時間(すなわち、作用極の銅の析出の開始時刻から、作用極の全表面の銅層の析出が完了する時刻までの時間)は略一定になるので、前記変化量は、ほぼゼロとなるからである。析出工程の終了は、銅材10または懸濁液11を銅析出槽18から取り出したり、攪拌器17を停止したりすることにより行う。一方、変化量が所定時間tよりも大きい場合には、白金粒子の一部は、未だ銅層が析出されていないと判断し、析出工程を終了せずに、一連の工程を繰り返す。
3.金置換工程
金置換工程S26では、不活性ガス中において、析出工程S21で得られた銅層被覆白金担持導電体(懸濁液)を金イオン水溶液に攪拌することにより、前記銅層の銅を金に置換する。これにより、白金粒子32の表面に、金粒子が修飾される。ここで、金イオン水溶液として、AuCl を含む塩など、銅を金に置換することができる水溶液を用い、この水溶液に、塩酸や過塩素酸をさらに添加してもよい。
以下に本発明を実施例により説明する。
銅材を浸漬した硫酸銅水溶液(50mM CuSO/0.1M HSO)、90mlに、白金粒子を30質量%担持した白金担持カーボン(30mass%Pt/C)100mgに対して硫酸酸溶液200mlとなるように、白金担持カーボンを投入し、攪拌した。これにより、白金粒子の表面に銅層が被覆された白金担持カーボンを含む懸濁液を得た。この懸濁液を、収容槽に投入し、析出工程を行うための銅ロッド(φ5.5mm)×4本を浸漬した。一方、評価工程を行うために、ポテンショスタットに、ガラス材が一部被覆された白金線(粉末電位モニター)からなる作用極と、ガラスフリットによりCuSO/HSOを液絡した銅線からなる参照極と、白金板を露出するようにガラス被覆で被覆された対極とを浸漬した。そして、参照極に対する作用極の電位をモニタリングした。
次に、作用極の電位が0.81Vになってから、攪拌条件300rpmで懸濁液を攪拌し、参照極に対する作用極の電位を測定し、この電位が銅の標準電極電位(約0.35V)となるまで攪拌し、その時間をモニタリングした。この結果を、図5に示す。なお、このとき作用極には銅層が被覆されていた。その後、参照極に対する作用極の電位を、約0.7Vに制御し、作用極の表面に被覆された銅層を除去した。
そして、同様に、懸濁液を再度攪拌し、参照極に対する作用極の電位が銅の標準電極電位(約0.35V)となるまでの時間を測定し、その後、作用極の表面に被覆された銅層を除去する工程を、さらに4回(計5回)行った。この結果を、図6に示す。
得られた懸濁液をグラッシーカーボン電極に塗布し、電解液:0.1MHClO、参照電極:可逆水素電極、対極:白金板を用い、掃引速度100mV/Sで、図7に示すようなサイクリックボルタンメトリ(CV)を行い、銅が脱離する電気量から白金粒子表面の銅層の析出量を測定した。さらに、白金粒子の表面への水素吸着量が一定となるまでCVを繰り返し、水素吸着量を算出した。これにより、銅と水素の原子比を算出した。このような作業を、懸濁液を4回採取して行った。この結果を表1に示す。
Figure 2012240002
(結果および考察)
図5および図6に示すように1回目の測定時間から、回数が進むに従って、測定時間(銅の標準電極電位に到達する時間)が短くなった。これは、銅層が析出された白金粒子の割合が増加しているからであると考えられる。さらに、図6に示すように、4回目と5回目では、ほぼ同じ測定時間となった。すなわち、4回目と5回目の測定時間の変化量はほぼ0である。これは、ほぼ全ての白金粒子に銅層が析出したからであると考えられる。そして、表1に示すように、水素と銅の原子量比は、回数に拘らずほぼ1に近く、このことから、すべての白金粒子の表面には、銅が被覆されていることが確認された。したがって、この繰り返し行う測定時間の変化量に基づいて、析出工程の完了を判定すればよいことがわかる。
以上、本発明の実施の形態を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
3a:白金担持導電体、3b:銅層被覆白金担持導電体、10…銅材、11…懸濁液、12…ガラス材、14…作用極、15…対極、16…参照極、18:銅析出槽、16a:ガラス管、16b:ガラスフリット、S20:評価工程、S21:析出工程、S22:浸漬工程、S23:測定工程、S24:除去工程、S25:判定工程、S26:金置換工程、31:導電性担体、32:白金粒子、33:銅層、33’:銅

Claims (4)

  1. 白金または白金合金からなる白金粒子の表面、または、白金粒子を担持した導電性担体の前記白金粒子の表面に銅層を被覆した触媒の製造方法であって、
    該製造方法は、銅イオンを含む酸水溶液を、前記白金粒子または前記導電性担体で懸濁した懸濁液に銅材を浸漬した状態で、前記懸濁液を攪拌して該銅材と前記白金粒子または前記導電性担体を接触させることにより、前記白金粒子の表面に銅層を析出させる析出工程と、該析出工程に合わせて、析出工程における前記白金粒子の表面の銅層の析出状態を評価する評価工程と、を含み、
    該評価工程は、参照極と、白金または白金合金からなる作用極とを前記懸濁液に浸漬する浸漬工程を含み、
    前記懸濁液の攪拌で、前記銅層が形成された白金粒子を前記作用極に接触させることにより、前記作用極の表面に銅層を析出させながら、前記参照極に対する前記作用極の電位が一定電位となるまでの時間を測定する測定工程と、該測定工程後の前記作用極に析出した銅層を除去する除去工程とからなる一連の工程を、繰り返し行うものであり、
    繰り返し行われる前記測定工程における測定時間毎の変化量に基づいて、前記析出工程を終了することを特徴とする触媒の製造方法。
  2. 前記作用極として、少なくとも先端側が露出するように、基端側にガラス材が被覆された作用極を用い、
    前記浸漬工程において、前記先端側の露出した全ての部分が、前記懸濁液に浸漬するように、前記作用極を浸漬させることを特徴とする請求項1に記載の触媒の製造方法。
  3. 前記参照極に銅からなる参照極を用い、
    前記浸漬工程において、該参照極に前記懸濁液中の前記酸水溶液が接触し、かつ、前記懸濁液中の前記白金粒子または前記導電性担体が接触しないように、前記参照極を浸漬させることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒の製造方法。
  4. 前記除去工程において、前記参照極に対する前記作用極の電位を、銅の標準電極電位よりも高い電位に制御することにより、前記作用極の表面に被覆された銅層を除去することを特徴とする請求項3に記載の触媒の製造方法。
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