以下、本発明に係る工具ヘッド用交換装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、工作機械10と、本実施の形態に係る工具ヘッド用交換装置(以下、単に交換装置とも表記する)12とを併せて示した模式的斜視構成図である。ここで、交換装置12は、工作機械10に着脱自在に装着される多軸ヘッド14を交換するためのものである。
先ず、工作機械10につき説明する。
工作機械10は、ワークWが搬送される搬送ライン16の近傍に配設され、前記ワークWに対して所定の機械加工を施すための多軸ヘッド14を複数個(本実施の形態では6個)具備する。各多軸ヘッド14には、複数個の工具18が図示しない回転駆動源の作用下に回転動作可能に設けられる。通常、工具18としてはドリルやリーマ、タップ等が選定され、この場合、ワークWに対しては穿孔加工が施される。また、ワークWとしては、例えば、内燃機関を構成するシリンダブロックやシリンダヘッド、又はミッションを収容するミッションケース等が挙げられる。
工作機械10は、インデックスモータ20を中心として放射状に延在する複数本(本実施の形態では6本)のアーム22を有し、前記多軸ヘッド14の各々は、各アーム22の先端に支持される。後述するように、アーム22は、インデックスモータ20の作用下に、該インデックスモータ20を中心として所定の角度で旋回する。
要部拡大図である図2に示すように、工作機械10には、アーム22の下方で上下2段に設置されて多軸ヘッド14を懸吊する円環状の懸吊レール24a、24bが設けられる。一方、多軸ヘッド14の背面には、懸吊レール24a、24bのそれぞれに係合するフック部26a、26bが設けられる。
なお、図3に示すように、フック部26aには一対の摺動ローラ28a、28bが設けられる。同様に、フック部26bには一対の摺動ローラ30a、30bが設けられる。従って、多軸ヘッド14は、上下左右の合計4箇所に設けられたフック部26a、26b、及び摺動ローラ28a、28b、30a、30bを介して、懸吊レール24a、24bに対し、摺動可能に係合される。この状態においては、多軸ヘッド14の上面中央に設置された直方体状の被係止片32が、アーム22の先端に設けられた一対の係止部材34a、34b間に係止される(図2参照)。ここで、図2においては、図1に示されるヘッドカバー35を省略している。
被係止片32と係止部材34a、34bとの間には若干の遊びがあり、このため、多軸ヘッド14を、この遊びの範囲で懸吊レール24a、24bに沿って摺動させることが可能である。
前記インデックスモータ20は、アーム22、ひいては各多軸ヘッド14を懸吊レール24a、24bに沿って旋回させ、これにより所定位相に割り出すインデックス機構を構成する。
すなわち、インデックスモータ20が付勢されると、その回転駆動力によってアーム22が所定の角度(例えば、60°ごと)で間欠的に旋回する。上記したように、多軸ヘッド14に設置された被係止片32がアーム22に設けられた係止部材34a、34bに挟まれているため、アーム22が旋回することに追従して多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに沿って旋回する。これにより、図1に示すように、複数個の多軸ヘッド14中の所望の1個を、ワークWに臨む加工位置(加工位相)に割り出すことができる。同時に、該多軸ヘッド14と180°離間した別の多軸ヘッド14が、交換位置(交換位相)に割り出される。
このように構成される工作機械10は、基本的には公知のものであるが、本実施の形態においては、図3に示すように、多軸ヘッド14の下端部から突出して鉛直下方に延在する4個の係合突起部36(第1係合部)と、該係合突起部36に比して一層長尺な2個のガイドピン38とが設けられる。これら係合突起部36及びガイドピン38は、双方とも略円柱形状をなす。
次に、交換装置12につき説明する。この場合、交換装置12は、図1及び図2に示すように、工作機械10に設けられた交換テーブル40と、多軸ヘッド14を搬送可能な搬送台車42とを備える。
図示しない支持フレームに支持された交換テーブル40は、前記交換位相に配置される。この交換テーブル40には、摺動溝43がそれぞれ形成された第1案内レール44a、44bと、第1ラック46とが設けられる。なお、第1ラック46は、第1案内レール44aの上端面に接合されている。
搬送台車42は、図示しないストッカと交換テーブル40との間を往復するとともに、この際、ストッカと交換テーブル40との間で多軸ヘッド14を受け渡しする。すなわち、ストッカには、予備の多軸ヘッド14が複数個保管されている。ワークWに対して機械加工を施すに際し、工作機械10に予め装着された多軸ヘッド14ではなく、ストッカに保管された予備の多軸ヘッド14が必要であるときには、搬送台車42によって予備の多軸ヘッド14が交換テーブル40まで搬送される。
ここで、搬送台車42は、無人搬送車(自動搬送車)である図示しないAGV(Automated Guided Vehicle)に連結・牽引される。AGVに対しては、図示しない制御回路から制御信号が送信される。この制御信号を受けたAGVが所定の経路を自動走行することに追従して、搬送台車42がストッカから交換テーブル40に向かって、又はその逆方向に走行する。AGVは、搬送台車42と一体的に構成するようにしてもよい。
この搬送台車42は、移動用ローラ48(図1参照)が設けられた4本の脚部50と、該脚部50によって支持された天板52とを有する。この中の天板52には、多軸ヘッド14を工作機械10に対して着脱するための着脱機構54が設けられる。
図2に詳細を示すように、天板52には、第2案内レール56a、56bが設けられる。これら第2案内レール56a、56b同士の幅は、第1案内レール44a、44b同士の幅に合致する。また、第2案内レール56aの上端面には、第2ラック58が接合される。第2ラック58のピッチは、第1ラック46のピッチに合致する。
着脱機構54は、上端面の幅方向両端部に側方スライダ60が設けられた基盤62を有する。側方スライダ60は、前記第2案内レール56a、56bに形成された摺動溝64に対して摺動可能に係合されており、このため、基盤62は、第2案内レール56a、56bに案内されながら移動することが可能である。
着脱機構54の一部切欠断面斜視図である図4に示すように、基盤62の上端面には、略円柱形状をなす昇降案内用ポスト66a、66b(昇降案内用部材)が立設される。昇降案内用ポスト66aには第1ブラケット68が昇降可能に冠着され、昇降案内用ポスト66bには第2ブラケット70が昇降可能に冠着される。すなわち、第1ブラケット68、第2ブラケット70において、昇降案内用ポスト66a、66bを臨む下端面には、鉛直上方に向かって陥没した係合用凹部72がそれぞれ形成されており、昇降案内用ポスト66a、66bの先端部は、それぞれ、係合用凹部72に摺動可能に係合されている。
係合用凹部72は、第1ブラケット68、第2ブラケット70の軸線方向に沿って延在する溝として形成することが好適であるが、昇降案内用ポスト66a、66bを摺動可能に挿入することが可能な有底穴であってもよい。
後述する支持盤74が最下方に位置するときには、昇降案内用ポスト66a、66bの先端底面は、係合用凹部72の天井面に当接していてもよいが、若干離間していてもよい。なお、係合用凹部72の深さ(開口から天井面までの距離)は、支持盤74が最上方に位置するときに昇降案内用ポスト66a、66bの先端部が係合用凹部72から離脱しないように設定される。
基盤62の略中央部には、工作機械10を臨む側に第1斜面76及び第2斜面77が形成されたカム78が設けられる。なお、第1斜面76及び第2斜面77はともに、工作機械10に近接する側から離間する側となるに従って上昇するように形成されている。以下、工作機械10に近接する側を「前方」、離間する側を「後方」と指称する。
また、第1斜面76の傾斜角度は、第2斜面77に比して大きく設定されている。すなわち、カム78の斜面は、前方側で大きく傾斜する第1斜面76と、後方側で小さく傾斜する第2斜面77とを含む。
カム78の後方には、進退用モータ80(図2参照)と、該進退用モータ80の回転軸及びギアトレイン(いずれも図示せず)の作用下に回転動作するピニオン82とが、ハウジング84に収容された状態で配設される。すなわち、進退用モータ80は、ピニオン82を回転動作させるための回転付勢手段である。
進退用モータ80は、前記制御回路に対し、無線通信を介して信号の授受が可能である。又は、図示しない信号線を介して進退用モータ80を前記制御回路に電気的に接続するようにしてもよい。
ピニオン82の一部はハウジング84から露呈し、第2ラック58に噛合している。以上の進退用モータ80、ギアトレイン、ピニオン82、第2ラック58及び第1ラック46により、基盤62を前方又は後方に移動させるための進退機構が構成される。なお、第1ラック46及び第2ラック58と、ピニオン82とがラック・アンド・ピニオンを構成することはいうまでもない。
基盤62の上端面には、さらに、図示しないシリンダが設置される。このシリンダのロッド86(図3参照)は、カム78の第2斜面77の幅方向に沿って伸縮する。後述するように、このロッド86は、支持盤74を上昇位置に維持するロック機構として機能する。
基盤62の上方には、支持盤74が配置される。この支持盤74の前方端面には、図4及び図5に示すように、2個のガイドストッパ88a、88bが設けられる。
図5から諒解されるように、ガイドストッパ88a、88bの各々には、前方から後方に向かって陥没するようにV字溝89が形成されている。換言すれば、V字溝89は、前方に向かうにつれて幅方向寸法が大きくなるように拡開している。V字溝89の幅方向寸法W1は、開口で最大であり、且つ前記ガイドピン38の直径D1に比して大きく設定されている。
図3〜図5に示すように、支持盤74の前方端部には、4個の係合孔90(第2係合部)が厚み方向に沿って貫通形成されている。これら係合孔90は、前記係合突起部36を挿入するためのものであり、その直径は、係合突起部36(図3参照)の直径に比して若干大径である。
支持盤74の後端部には、該後端部を始点として略中央に至るまで切欠92が形成されており(図4参照)、この切欠92の終点には、ローラ用連結プレート94を介して昇降用ローラ96(摺動部材)が設けられる。支持盤74の略鉛直下方に指向して突出した昇降用ローラ96は、前記カム78の第1斜面76(又は第2斜面77)に対向する。この昇降用ローラ96が基盤62の上端面、又はカム78に当接することにより、支持盤74が基盤62に支持される。
支持盤74の幅方向両端部には、下端面に第3案内レール98a、98bが敷設されるとともに、上端面に第4案内レール100a、100bが敷設される。第3案内レール98a、98bには、鉛直上方に向かうに従って陥没した逆凹溝102がそれぞれ形成され、一方、第4案内レール100a、100bには、鉛直下方に向かうに従って陥没した凹溝104が形成される。
第3案内レール98a、98bの逆凹溝102には、2個の下方スライダ106の上向凸部108が摺動可能に係合する。また、第4案内レール100a、100bの凹溝104には、2個の上方スライダ110の下向凸部112が摺動可能に係合する。すなわち、第3案内レール98a、98b及び第4案内レール100a、100bは、下方スライダ106及び上方スライダ110によって挟持されている。
ここで、下方スライダ106及び上方スライダ110は、双方とも前記第1ブラケット68、前記第2ブラケット70に連結されている。このことから諒解されるように、支持盤74は、下方スライダ106及び上方スライダ110が連結された第1ブラケット68、第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに冠着されることによって、基盤62に支持されている。
第1ブラケット68及び第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに沿って上昇又は降下すると、これに追従して下方スライダ106及び上方スライダ110も上昇又は下降し、さらに、下方スライダ106及び上方スライダ110によって第3案内レール98a、98b及び第4案内レール100a、100bが挟持された支持盤74が上昇又は下降する。
本実施の形態に係る交換装置12は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。
工作機械10に装着された6台の多軸ヘッド14のうち、所定の多軸ヘッド14を交換する(取り外す)必要が生じると、先ず、前記制御回路からの信号、又は管理者による入力操作等に基づき、AGVの制御部に制御信号が発信される。この制御信号を受けたAGVは、多軸ヘッド14を保持していない搬送台車42を走行させ、交換テーブル40の先端に到達させる。これにより、搬送台車42の天板52と、交換テーブル40とが互いに当接して対向する。この際、図5に示すように、支持盤74に設けられたガイドストッパ88a、88bがガイドピン38、38に対向する位置となる。
制御回路は、この間、インデックス機構を構成するインデックスモータ20を付勢することにより、アーム22を間欠的に旋回させる。この旋回に追従し、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに沿って旋回する。図2に示すように、多軸ヘッド14に設置された被係止片32が、アーム22に設けられた係止部材34a、34bに挟まれているからである。
この旋回の結果、交換すべき多軸ヘッド14が交換位置(交換位相)に割り出される。このことを認識した制御回路は、インデックスモータ20を滅勢することでアーム22を停止させる。
次に、AGVが、搬送台車42が交換テーブル40に到着したことを通知する信号を制御回路に送信する。この信号を受けた制御回路は、交換対象となる多軸ヘッド14が交換位相に割り出されていることを確認した上で、進退用モータ80を付勢する。これにより、前記ギアトレインを介してピニオン82が回転動作する。
ピニオン82が第2ラック58に噛合しているため、ピニオン82が設けられた基盤62が工作機械10へ向かって前進動作を開始する。この際、側方スライダ60が第2案内レール56a、56bの摺動溝64に沿って摺動することにより、基盤62が第2案内レール56a、56bに案内される。
進退用モータ80の駆動作用下に基盤62がさらに前進動作すると、基盤62及び支持盤74が搬送台車42の天板52から交換テーブル40に移る。基盤62が一層前進動作すると、ピニオン82が第2ラック58から離脱するとともに第1ラック46に噛合する。以降、ピニオン82が第1ラック46に沿って前進することに伴い、基盤62が継続して工作機械10側に前進する。
基盤62がさらに前進すると、側方スライダ60は、第2案内レール56a、56bの摺動溝64から離脱して第1案内レール44a、44bの摺動溝43に係合する。従って、基盤62は、これ以降、第1案内レール44a、44bに案内される。
支持盤74は、基盤62と同期して工作機械10側に前進する。下方スライダ106及び上方スライダ110が連結された第1ブラケット68、第2ブラケット70が、基盤62の上端面に立設された昇降案内用ポスト66a、66bに冠着されているからである。支持盤74は、図3に示すように、多軸ヘッド14の下方側に位置するまで前進する。
このように、交換装置12の着脱機構54は、ラック・アンド・ピニオンによって搬送台車42及び交換テーブル40を移動する、いわゆる自走式のものとして構成されている。
交換装置12においては、支持盤74のガイドストッパ88a、88bが最前方に位置する(図5参照)。このため、支持盤74が多軸ヘッド14の下方側の所定位置まで前進すると、ガイドストッパ88a、88bがガイドピン38に当接する。
ここで、例えば、多軸ヘッド14の交換位相への割り出しが正確に行われていない場合、図6に仮想線で示すように、ガイドストッパ88a、88bに形成されたV字溝89に対し、ガイドピン38が相対的に位置ズレを起こす。従って、V字溝89の幅方向寸法W1をガイドピン38の直径D1と同等に設定した場合、図7に示すように、ガイドピン38がガイドストッパ88a、88bの先端に当接してV字溝89に進入しない懸念がある。
これに対し、本実施の形態では、V字溝89の幅方向寸法W1をガイドピン38の直径D1に比して大きく設定するようにしている。従って、図6に示すようにガイドピン38が位置ズレを起こした場合であっても、ガイドピン38がV字溝89に進入し、該V字溝89の側壁に沿って案内されて該V字溝89の後方端である底に到達する。
このようにしてガイドピン38がV字溝89に進入し、且つ該V字溝89の底に到達する最中に、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに沿って若干摺動する。その結果、多軸ヘッド14の姿勢が矯正される。すなわち、本実施の形態によれば、多軸ヘッド14にガイドピン38を設けるとともに、該ガイドピン38の直径D1よりも大きく開口したV字溝89が形成されたガイドストッパ88a、88bを支持盤74に設けるようにしているので、多軸ヘッド14を、支持盤74に対して正確に位置合わせすることができる。
以上のようにしてガイドストッパ88a、88bがガイドピン38、38に当接すると、支持盤74が堰止された状態となる。このため、該支持盤74が停止する。
その一方で、進退用モータ80が継続して付勢されることにより、基盤62が前進動作を続行する。なお、この際には、下方スライダ106及び上方スライダ110が第3案内レール98a、98bの逆凹溝102、第4案内レール100a、100bの凹溝104を摺動する。このため、基盤62は、支持盤74が停止しているにも関わらず前進可能である。
同時に、図8に示すように、支持盤74に設けられた昇降用ローラ96がカム78の第1斜面76に沿って摺動するとともに、第1斜面76に案内されながら上昇する。その結果、支持盤74が基盤62から離間するように上昇する。第1斜面76の傾斜角度が大きいため、この時点では、昇降用ローラ96の移動距離を小さくしつつ、すなわち、比較的短時間で、支持盤74をある程度まで上昇させることができる。
なお、この際には、図9に示すように、第1ブラケット68及び第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに案内されながら上昇する。このため、支持盤74の上昇が妨げられることはない。
昇降用ローラ96がさらに摺動すると、図10に示すように、昇降用ローラ96が第1斜面76から第2斜面77に移る。第2斜面77の傾斜角度が小さいので、昇降用ローラ96が第2斜面77に沿って摺動するときには、第1斜面76を摺動しているときに比して昇降用ローラ96の移動距離が大きくなりはするものの、多軸ヘッド14を上昇させるために必要な力が低減する。従って、基盤62を前方又は後方に移動させるための進退機構、換言すれば、動力源である進退用モータ80として、発生する力が比較的小さい小型であるもの、このために消費電力が小さなものを採用することができる。これにより、省エネルギ化を図ることができる。
また、図8〜図10に示す一連の動作は、以下のように要約することができる。
基盤62を前方又は後方に移動させるための進退機構(動力源)である進退用モータ80が、例えば、発生する力が比較的小さい小型で消費電力が小さなものであっても、支持盤74が多軸ヘッド14に比して著しく軽量であるため、短時間で支持盤74をある程度まで上昇させることができる。
一方、図10に示す時点では、支持盤74と多軸ヘッド14の重量が合わさるためにかなりの重量物となる。しかしながら、進退用モータ80が上記のように発生する力が比較的小さい小型で消費電力が小さなものであっても、第1斜面76に比して第2斜面77の傾斜角度が小さいため、多軸ヘッド14を上昇させるために要する力が小さくなる。従って、進退用モータ80が上記したような発生する力が比較的小さい小型で消費電力が小さなものであっても、小電力で多軸ヘッド14を上昇させることが可能である。
以上のような理由から、消費電力の小さな進退用モータ80で多軸ヘッド14が工作機械10から離脱する位置となるに至るまでに要する時間を短縮し得るとともに、そのエネルギを低減することができる。
昇降用ローラ96が第2斜面77の頂部に到達する途中、換言すれば、基盤62が前進することに伴って支持盤74が上昇する途中で、係合突起部36が係合孔90に係合する。これにより、多軸ヘッド14が支持盤74に保持される。上記したように、多軸ヘッド14と支持盤74とが互いに対して正確に位置合わせされているため、係合孔90と係合突起部36との位置が合致している。従って、多軸ヘッド14を確実に支持盤74で保持することができる。
基盤62がさらに前進することに伴って支持盤74が一層上昇し、昇降用ローラ96がさらに摺動して第2斜面77の頂部に到達すると、図10に示すように、これに追従して、支持盤74に保持された多軸ヘッド14も上昇する。その結果、フック部26a、26b(摺動ローラ28a、28b、30a、30b)が懸吊レール24a、24bから離脱する。換言すれば、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bから取り外される。
この際には、ロック機構が動作する。すなわち、前記シリンダのロッド86が伸張し、昇降用ローラ96と、カム78の第2斜面77との間に介在する。このロッド86が楔(ストッパ)として機能することにより、昇降用ローラ96が位置決めされる。すなわち、昇降用ローラ96が第2斜面77に沿って降下すること、ひいては多軸ヘッド14を保持した支持盤74が降下して多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに再懸吊されることを防止することができる。
次に、制御回路は、進退用モータ80を再付勢し且つその回転軸が逆向きに回転するように制御信号を発信する。これにより、ピニオン82が逆向きに回転し、交換テーブル40の第1ラック46に沿って相対的に後退する。その結果、基盤62が搬送台車42に向かって後退する。この際、支持盤74の昇降用ローラ96がロッド86によって押圧されるため、支持盤74は、多軸ヘッド14を保持し且つ上昇した位置にある状態で、基盤62と同期して後退する。
なお、一時停止用の位置センサ(図示せず)を設け、該位置センサによって着脱機構54が所定の位置に後退したことが検出されたとき、該着脱機構54を一時停止させるようにしてもよい。この一時停止の最中に、前記シリンダのロッド86を収縮させるとともに昇降用ローラ96を第2斜面77に沿って降下させ、支持盤74を降下させ、この状態で、着脱機構54の後退を再開すればよい。
交換装置12は、ピニオン82が第1ラック46から第2ラック58に移ることにより、交換テーブル40から搬送台車42に移る。その後、ピニオン82が第2ラック58の所定の位置まで後退したとき、制御回路は、進退用モータ80を滅勢させる制御信号を発信する。これにより、交換装置12が停止する。このようにして工作機械10から取り外された多軸ヘッド14は、必要に応じ、ストッカに搬送されて保管される。勿論、この際には、制御回路の制御作用下にAGVが駆動されるとともに、搬送台車42が交換テーブル40からストッカまで移動する。
工作機械10に取り付けるべき新たな多軸ヘッド14は、支持盤74に保持された状態で、搬送台車42によってストッカから交換テーブル40まで搬送される。なお、支持盤74は、上記に準拠して既に上昇している。
搬送台車42が交換テーブル40に対して近接し且つ対向すると、上記と同様に、制御回路の制御作用下に進退用モータ80が付勢される。これにより第2ラック58に噛合したピニオン82が回転動作を開始することに追従して、基盤62及び支持盤74が工作機械10側に向かって前進する。
そして、図示しない位置センサによって基盤62が所定の位置に到達したことが検出されると、前記シリンダが付勢され、ロッド86が収縮する。これにより昇降用ローラ96がロッド86から解放され、カム78の第2斜面77及び第1斜面76に沿って降下する。その結果、支持盤74が基盤62に接近するように降下する。この際には、第1ブラケット68及び第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに案内されながら降下するとともに、下方スライダ106及び上方スライダ110が第3案内レール98a、98bの逆凹溝102、第4案内レール100a、100bの凹溝104を摺動する(図2、図4及び図9参照)。このため、支持盤74は、基盤62が停止しているにも関わらず前進可能である。
支持盤74が前進すると、ガイドストッパ88a、88bのV字溝89にガイドピン38が進入する。上記と同様に、ガイドピン38がV字溝89の底に到達することにより多軸ヘッド14の姿勢が矯正され、その結果、多軸ヘッド14が工作機械10に対して正確に位置合わせされる。また、ガイドストッパ88a、88bがガイドピン38、38に当接するので、該支持盤74のそれ以上の前進が阻止される。
また、支持盤74が降下しているので、該支持盤74に保持された多軸ヘッド14も降下する。その結果、フック部26a、26b(摺動ローラ28a、28b、30a、30b)が懸吊レール24a、24bに装着され、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに懸吊される。さらに、多軸ヘッド14の上面中央に設置された被係止片32が、アーム22の先端に設けられた係止部材34a、34b間に係止される(図2参照)。
支持盤74がさらに降下することに伴って、係合突起部36が係合孔90から離脱する(図8参照)。これにより、多軸ヘッド14が支持盤74から解放される。以上により、多軸ヘッド14の交換が終了する。多軸ヘッド14が工作機械10に移されたため、交換装置12は、いわゆる空状態である。
次に、制御回路は、進退用モータ80(図2参照)を再付勢し且つその回転軸が逆向きに回転するように制御信号を発信する。これにより、ピニオン82が逆向きに回転し、交換テーブル40の第1ラック46に沿って相対的に後退する。その結果、基盤62が搬送台車42に向かって後退する。下方スライダ106及び上方スライダ110が連結された第1ブラケット68、第2ブラケット70が、基盤62の上端面に立設された昇降案内用ポスト66a、66bに冠着されているので、この際、支持盤74が基盤62に同期して後退する。
交換装置12は、第1ラック46から、搬送台車42の第2ラック58に移る。その後、ピニオン82が第2ラック58の所定の位置まで後退したとき、制御回路は、進退用モータ80を滅勢させる制御信号を発信する。これにより、交換装置12が停止する。
以上の交換作業を行う間、交換位相と反対側の加工位相に設定された多軸ヘッド14では、ワークWに対する加工が継続して行われる(図1参照)。すなわち、前記制御回路は、インデックス機構を回転制御して交換対象となる多軸ヘッド14を交換位相に割り出すとともに、加工を行うための多軸ヘッド14を加工位相に割り出す。換言すれば、加工に供する必要のある多軸ヘッド14と反対位相にある多軸ヘッド14を優先的に交換対象として選択する。これにより、交換作業中であってもワークWへの加工を継続することができるので、ワークWに対する加工効率、ひいてはシリンダブロックやシリンダヘッド、ミッションケース等の加工製品の生産効率が大幅に向上する。
以上のように、本実施の形態では、懸吊レール24a、24bによって懸吊支持された多軸ヘッド14を、インデックス機構によって所定の交換位相に割り出すことが可能なようにして工作機械10を構成するとともに、この交換位相に、搬送台車42を連結配置するようにしている。このように交換テーブル40を工作機械10側に設けたことにより、搬送台車42に搭載した交換装置12(着脱機構54)を工作機械10に対して容易に連結することができる。
しかも、交換装置12は、基盤62に設けられたカム78の第1斜面76及び第2斜面77に対し、支持盤74に設けられた昇降用ローラ96を摺動させるという簡素な構成により、多軸ヘッド14の交換、換言すれば、多軸ヘッド14の懸吊レール24a、24bに対する取り付け及び取り外しを行うことが可能である。すなわち、多軸ヘッド14の交換作業を、簡素な構成の交換装置12によって容易に実行することができる。このため、交換装置12の十分な簡素化、ひいては小型化及び軽量化を図ることができる。
また、本実施の形態では、ラック・アンド・ピニオンによって着脱機構54を搬送台車42から交換テーブル40に、又はその逆方向に移動(自走)させるようにしている。このため、駆動力が大きなシリンダ等を設ける必要がない。このことも、交換装置12の十分な簡素化、小型化及び軽量化に寄与する。
その上、支持盤74に設けられたガイドストッパ88a、88bが、多軸ヘッド14に設けられたガイドピン38の相対的な位置ズレを吸収することが可能であるので、多軸ヘッド14を、支持盤74に対して精度よく位置合わせすることができる。このため、多軸ヘッド14を支持盤74によって確実に保持し、多軸ヘッド14を支持盤74ごと上昇又は降下することが容易に可能となる。
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
例えば、支持盤74にカムを設ける一方、基盤62に昇降用ローラ96を設けるようにしてもよい。以下、これを第2の実施形態として説明する。なお、図1〜図10に示す構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。ただし、カム、第1斜面及び第2斜面については、上述のカム78、第1斜面76及び第2斜面77との区別を容易にするべく、各々参照符号を120、122、124とする。
図11は、第2の実施形態に係る工具ヘッド用交換装置の要部概略縦断面側面図である。上記したように、この場合、基盤62における支持盤74を臨む上端面に昇降用ローラ96が設けられるとともに、支持盤74における基盤62を臨む下端面にカム120が設けられる。
この場合、カム120の第1斜面122は後方に配設され、一方、第2斜面124は前方に配置される。すなわち、この場合、カム120の斜面は、前方から後方になるにつれて上昇するように設定される。
また、昇降用ローラ96は、当初、第1斜面122の近傍に配置される。従って、この場合も、昇降用ローラ96は、第1斜面122、第2斜面124の順序で摺動する。
ここで、多軸ヘッド14の前面(加工を行う側の面)側には、工具18やスピンドル、該スピンドルを回転動作させるためのギアトレイン等が設けられる。従って、前面と背面とでは、前面の方が重量が大きい。このため、場合によっては、図11に示すように、懸吊レール24a、24bに支持された多軸ヘッド14が前傾姿勢となることがある。なお、図11においては、理解を容易にするために前傾した状態を誇張して示している。
多軸ヘッド14が前傾姿勢のままであると、該多軸ヘッド14を上昇させても、摺動ローラ28a、28b又は摺動ローラ30a、30bが懸吊レール24a、24bに引っ掛かり、多軸ヘッド14を懸吊レール24a、24bから離脱させることが容易でなくなる懸念がある。
しかしながら、第2の実施形態によれば、多軸ヘッド14が前傾姿勢となっていても、水平姿勢に変化させることができる。従って、多軸ヘッド14を懸吊レール24a、24bから離脱させることが容易である。
この点につき説明すると、図1〜図10に示した実施の形態と同様に、進退用モータ80が付勢されることにより、基盤62が前進動作する。これに伴い、基盤62に設けられた昇降用ローラ96がカム120の第1斜面122に案内されながら摺動する。その結果、支持盤74が昇降用ローラ96によって下方から支承される。すなわち、支持盤74が持ち上げられる。この持ち上げにより、図12に示すように、多軸ヘッド14が水平姿勢となる。勿論、上記の実施の形態と同様に、第1斜面122の傾斜角度が大きいため、この時点では、昇降用ローラ96の移動距離を小さくしつつ、すなわち、短時間で支持盤74をある程度まで上昇させることができる。
昇降用ローラ96が第1斜面122を摺動する最中、換言すれば、基盤62が前進することに伴って支持盤74が上昇する途中で、係合突起部36が係合孔90に係合する。これにより、多軸ヘッド14が支持盤74に保持される。
昇降用ローラ96がさらに摺動すると、図13に示すように、昇降用ローラ96が第1斜面122から第2斜面124に移る。第2斜面124の傾斜角度が小さいので、昇降用ローラ96が第2斜面124に沿って摺動するときには、第1斜面122を摺動しているときに比して昇降用ローラ96の移動距離が大きくなりはするものの、多軸ヘッド14を上昇させるために必要な力が低減する。従って、上記した実施の形態と同様に、基盤62を前方又は後方に移動させるための進退機構、換言すれば、動力源である進退用モータ80として、発生する力が比較的小さい小型であるもの、このために消費電力が小さなものを採用することができる。これにより、省エネルギ化を図ることができる。
基盤62がさらに前進することに伴って支持盤74が一層上昇し、昇降用ローラ96がさらに摺動して第2斜面122の頂部近傍に到達すると、図13に示すように、支持盤74に保持された多軸ヘッド14も上昇して、フック部26a、26b(摺動ローラ28a、28b、30a、30b)が懸吊レール24a、24bから離脱する。換言すれば、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bから取り外される。この際には、上記と同様にロック機構が動作し、ロッド86がストッパとして機能することにより、昇降用ローラ96が位置決めされる。
以上のように、第2の実施形態によれば、多軸ヘッド14が前傾姿勢となっていたとしても、懸吊レール24a、24bから離脱させることが容易である。
図11〜図13に示す一連の動作は、以下のように要約することができる。
基盤62を前方又は後方に移動させるための進退機構(動力源)である進退用モータ80が、例えば、発生する力が比較的小さい小型で消費電力が小さなものであっても、支持盤74が多軸ヘッド14に比して著しく軽量であるため、短時間で支持盤74をある程度まで上昇させることができる。
一方、図13に示す時点では、支持盤74と多軸ヘッド14の重量が合算されるため、かなりの重量物となる。しかしながら、進退用モータ80が上記のように発生する力が比較的小さい小型で消費電力が小さなものであっても、第1斜面122に比して第2斜面124の傾斜角度が小さいため、多軸ヘッド14を上昇させるために要する力が小さくなる。従って、進退用モータ80が上記したような発生する力が比較的小さい小型で消費電力が小さなものであっても、小電力で多軸ヘッド14を上昇させることが可能である。
以上のような理由から、消費電力の小さな進退用モータ80で多軸ヘッド14が工作機械10から離脱する位置となるに至るまでに要する時間を短縮し得るとともに、そのエネルギを低減することができる。
なお、上記した2つの実施の形態のいずれにおいても、斜面が1つのみであるカムを採用するようにしてもよい。又は、昇降用ローラ96に代替して第2のカムを設け、この第2のカムの斜面を、前記カム78、120の第1斜面76、122、第2斜面77、124に沿って摺動させるようにしてもよい。
また、進退機構は、ピニオン82、第1ラック46及び第2ラック58からなるラック・アンド・ピニオンに限定されるものではなく、例えば、ボールねじ等であってもよい。
さらに、係合穴を第1係合部として多軸ヘッド14に形成するとともに、係合突起部36を第2係合部として支持盤74に形成するようにしてもよい。
さらにまた、ガイドストッパ88a、88bを多軸ヘッド14に設けるとともに、ガイドピン38を支持盤74の先端に設けるようにしてもよい。この場合においても、ガイドストッパ88a、88bのV字溝89の開口の幅方向寸法をガイドピン38の直径に比して大きく設定すればよい。
そして、昇降用ローラ96等の摺動部材を位置決めするためのロック機構は、例えば、基盤62又は支持盤74の一方に係合穴を形成するとともに、支持盤74又は基盤62の残余の一方に、前記係合穴に対して進退自在なピンを設けることで構成するようにしてもよいし、その他の機構であってもよい。また、ロック機構を設けることは特に必須ではない。
いずれにおいても、交換装置12は、交換テーブル40に設けるようにしてもよい。すなわち、搬送台車42は必須ではない。この場合、例えば、ストッカに保管された多軸ヘッド14をロボットで把持して交換装置12に載置するようにすればよい。