JP2012505969A - 5族金属源の炭化物でコーティングされた鋼物品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

1つの例示的実施形態には、微粒子ミックスに対して実施される化学被着プロセスを介して低クロム含有鋼物品上に硬質炭化物コーティングを形成するためのプロセスであって、化合物FeMoの形でのモリブデンまたは化合物FeTiの形でチタン、あるいはFeMoおよびFeTiの混合物をコーティングを形成するために用いられる微粒子ミックスに添加してよいプロセスが含まれる。

Description

本出願は、2008年10月16日に出願された米国仮特許出願第61/105,898号明細書の権利を主張するものである。
本開示が関わる分野は一般に、耐摩耗性鋼物品、詳細には、低クロム含有鋼基板に対する5族金属源炭化物の接着力を増大させて耐摩耗性鋼物品を形成するためのプロセスに関する。
自動車業界では、点火タイミング用のみならず車両の駆動輪に機械的動力を分配する目的でも、動力伝達チェーンが広く使用されている。2つのタイプの動力伝達チェーンとして、従来のローラーチェーンといわゆる「サイレントチェーン」がある。ローラーチェーンとサイレントチェーンは両方共、重要な構成要素として鋼製ピンを使用している。
車両の組立てとその後の作動中、鋼製ピンは摩耗を受ける。鋼基板の耐摩耗性を改善するためには、鋼基板に硬質コーティングを適用してもよい。例えば、耐摩耗性を改善させるために、ピンなどの小型鋼製品上に炭化バナジウム(VC)コーティングが設置されてきた。しかしながらピンの基板鋼の組成は、バナジウムでコーティングされた鋼製ピンに対して多大な影響を及ぼすかもしれない。例えば、約1.5重量パーセント以下のクロムを有する鋼基板材料は、炭化バナジウムコーティングと鋼の界面において充分な炭化物の拡散を形成せず、その結果鋼基板に対する炭化バナジウムの接着力が低下するかもしれないと考えられている。
基板鋼の適切な炭素含有量によってVCコーティングの厚みを確保し、強度および硬度を提供することができ、基板鋼中の適切なクロム含有量は、基板鋼製ピンに対するコーティングの優れた接着力にとって重要である、ということが見出された。
解決法として、FeCr粉末由来のクロムをピン表面のまわりに摂氏970度で被着させることにより、硬質炭化クロム層を有するピンを製造することができる。しかしながら、フェロクロムおよび元素クロム粉末の使用は、環境規制により排除または阻止されることが多い。
一つの例示的方法は、微粒子ミックスに対して実施される化学被着プロセスを介して低クロム含有鋼物品上に硬質炭化物コーティングを形成するためのプロセスであって、化合物FeMoの形をしたモリブデンを、コーティングの形成に使用される微粒子ミックスに対し添加してよいプロセスを開示している。
別の例示的方法は、微粒子ミックスに対して実施される化学被着プロセスを介して低クロム含有鋼物品上に硬質炭化物コーティングを形成するためのプロセスであって、化合物FeTiの形をしたチタンを、コーティングの形成に使用される微粒子ミックスに対し添加してよいプロセスを開示している。
さらに別の例示的方法は、微粒子ミックスに対して実施される化学被着プロセスを介して低クロム含有鋼物品上に硬質炭化物コーティングを形成するためのプロセスであって、化合物FeMoの形をしたモリブデンおよびFeTiの形をしたチタンを、コーティングの形成に使用される微粒子ミックスに対し添加してよいプロセスを開示している。
化学被着プロセスを介して低クロム含有鋼基板をコーティングするための例示的微粒子ミックスには、5族金属源、ハロゲン化物触媒およびFeMoまたはFeTiまたはFeMoとFeTiの混合物が含まれている。
低クロム含有鋼基板に炭化物コーティングを適用することによりチェーンなどの例示的鋼物品を形成してよく、ここで、この炭化物コーティングは、前段落の例示的微粒子ミックスから形成されてよい。
以下で提供する詳細な説明から、その他の例示的実施形態が明らかになる。詳細な説明および具体的実施例は、例示的実施形態を開示しているものの、例証のみを目的とするものであって本発明の範囲を限定することを意図していないということを理解すべきである。
本発明の例示的実施形態は、詳細な説明および添付図面から、さらに完全に理解することができる。
例示的実施形態に係る炭化物コーティングで被覆されたピンの理想的な断面である。 選択された物品上にコーティングを形成するための微粒子ミックスを含む例示的な回転式レトルトの縦断面図である。 微粒子ミックスおよび選択された物品を同様に示すレトルトの理想的端面断面図である。 全体として先行技術の設計を有するものの、図1に由来するピンを含むサイレントチェーンの一部分を示す。
1つまたは複数の実施形態の以下の説明は、それ自体単に例示的(例証的)なものにすぎず、いかなる形であれ、本発明、その応用分野または使用を限定することを意図したものではない。
ここで図1を参照すると、一つの例示的実施形態には、炭化物コーティング14を用いて少なくとも1つの表面13に沿って被覆された低クロム含有鋼コア12を有する物品10が含まれている。
本明細書の目的では、低クロム含有鋼コア12は約1.6%未満のクロムを含む。「鋼コア」という用語は、本明細書中で「鋼基板」と互換的に使用されてよく、炭化物コーティング14で被覆すべき低クロム含有鋼表面が物品に含まれる場合を表わしているにすぎない。本明細書中の全ての百分率は、重量百分率である。
鋼コア12中で使用してよい低クロム含有量の鋼の1つの例示的実施形態は、AISI52100(UNS−G−52986)鋼であり、その公称組成は以下の通りである:炭素0.98〜1.1重量パーセント;マンガン0.25〜0.45重量%;クロム1.3〜1.6重量パーセント;リン0.025重量パーセント以下;硫黄0.025重量パーセント以下;ケイ素0.15〜0.35重量パーセント;そして残りの重量パーセントの鉄。
この例証において、炭化物コーティング14を形成するために使用される微粒子ミックス16は、5族金属源、ハロゲン化物触媒およびフェロチタン(FeTi)粉末またはフェロモリブデン(FeMo)粉末(またはそれらの混合物)を含んでいてよい。その他の実質的に不活性な微粒子、例えば酸化アルミニウムも、微粒子ミックス16中に含まれていてよく、一実施形態においては、微粒子ミックス16の約50パーセント以下の量で存在してよい。
5族金属源は、国際純正応用化学連合により指定され勧告された18族分類に基づく元素周期表上に示された5族金属を含む。好ましくは、バナジウムおよびニオブを唯一の成員とする、微粒子ミックス中の5族金属は、41以下の原子番号を有する。
微粒子ミックス16に導入してよい利用可能なハロゲン化物触媒の非排他的リストには、塩化鉄、塩化アンモニウム、塩化ニオブ、塩化バナジウムまたはそれらの混合物が含まれる。ハロゲン化物触媒は、任意の有効量で使用してよく、ここで一つの実施形態における量は5族金属源の約0.6〜3重量%であってよい。
一実施形態において、微粒子ミックス16内に含まれるFeTiまたはFeMo粉末の量は、5族金属源の約0.5〜約4重量パーセントであってよい。換言すると、5族金属源に対するFeTiまたはFeMoあるいはFeTiとFeMoの組合せの重量比は、約0.02〜約0.04の範囲内であってよい。
1つの例示的微粒子ミックス16は、0.8〜3mmの粒子サイズを有するフェロバナジウム(FeV)粉末と、ここでは塩化鉄(FeCl)である約1%の選択されたハロゲン化物触媒とを含んでいてよい。さらに、微粒子ミックス16は同様にフェロモリブデン(FeMo)粉末も含んでいてよい。FeMo粉末は、約0.5〜約4重量パーセントのFeV粉末であってよい。酸化アルミニウムなどのその他の実質的に不活性な微粒子も微粒子ミックス16の中に含まれていてよく、一実施形態においてその量は、微粒子ミックス16の約50パーセント以下である。
ここで図2を参照すると、例示的実施形態の方法は、好ましくは、ブッシング30により炉28の壁24および26に回転可能な形で保持されたシャフト22を有し密閉された回転式コンテナ20またはレトルト20の中で実施されてよい。モーター(図示せず)はコンテナ20を所望の速度で回転してよく、一方炉28は、一実施形態においては摂氏870〜1093度(華氏約1600〜2000度)、または別の実施形態においては摂氏約927〜1038度(華氏約1700〜1900度)という温度に維持されてよい。コンテナ20の内部には、微粒子ミックス16そして、所望の厚みの炭化物コーティング14を形成するためにこの微粒子ミックス16で被覆すべき少なくとも1つの鋼物品10、この場合は鋼チェーンピン10が存在していてよい。所望の厚みは、約10〜20ミクロンの厚みと結びつけてよい少なくともHV2000の表面硬度を達成するものであってよい。前段落の例示的微粒子ミックス16については、炭化物コーティング14はバナジウム/炭化物コーティングである。
一実施形態においては、回転式コンテナ20から空気が抜き取られ、プロセスは、密閉した回転式コンテナ20内で実質的に空気の無い状態で行なわれる。別の実施形態においては、不活性ガス、好ましくはアルゴンまたは窒素がコンテナ20内に導入される。回転式コンテナ20の加熱および回転中、微粒子ミックス16中の5族金属源を解離させて、ハロゲン化物の形で鋼コア12の表面に被着させ得る5族金属を得てもよい。物品10の鋼コア12表面から炭素が引き出され、ハロゲン化物を移動させ、次にこれが微粒子ミックス16に戻って金属源由来の追加の5族金属と組合わさる。金属源中の金属の0.5〜2%と推定される5族金属源のわずかな割合だけがプロセス内で消費されて、10〜20ミクロンの一般に所望されるコーティング厚みを提供してよい。
微粒子ミックス16に添加されるFeMoまたはFeTi粉末中のモリブデンまたはチタンは、5族金属および鉄の中で高い溶解度を示す炭化物形成物質であり、したがって、形成されたコーティングのコア鋼基板12に対する界面接合を増大するかもしれない。
上述の通りの硬質コーティング14を形成するように1つまたは複数の物品10を処理した後、微粒子ミックス16および物品10を分離してよく、微粒子ミックス16を回転式コンテナ20内に再利用を目的として戻し、被覆すべき別の1つまたは複数の物品10の存在下でこれを加熱してよい。微粒子ミックス16は、数回の反復で補充される必要はないが、5族金属源および/または触媒を補充する可能性を含んでいてよく、一方連続的使用における大半(少なくとも50%)の微粒子ミックス16は、その目的で以前に使用された材料を含んでいてよい。一般に2%未満の5族金属源が一回の使用で消費されてよく、また表面において5族金属から移動したハロゲン化物は微粒子ミックス16に戻って追加の5族金属と組合わさることから、例示的方法には、物品10の少なくとも2回のバッチについて同じ微粒子バッチを使用し、施設の経済的状況が示唆し得る通りに追加のバッチを使用することが含まれていてよい。一般に、少なくとも5回の使用がきわめて実際的である。好ましくは、任意の所与の使用について、5族金属源中の5族金属と物品の比は、重量で1:2以上であり、好ましくは重量で1:1〜2:1であってよい。
炭化物コーティング14を含む物品10を、次に冷却し、微粒子ミックス16から分離してよい。その後、被覆された物品10を少なくともオーステナイト化温度に付すことによって生産後ステップにおいて物品10を熱処理し、コアを硬化させるため従来の要領で焼き入れし、好ましくはRc44−56という最終的コア硬度を達成してよい。その後従来の要領で物品10を研摩してよい。
図3は、コンテナ20の回転中に好ましくはバッフル32を用いて中味を混合する方法を示す、コンテナ20の端部断面である。微粒子ミックス16および被覆すべき1つまたは複数の物品10は、コンテナ20の回転中実質的に常時接触しており、これにより鋼チェーンピン10の表面上に所望の厚みで炭化物コーティング14を形成させてよく、ここで所望の厚みは主として、物品10が回転式コンテナ20内部で回転させられる時間により決定されてよい。容器、レトルトまたはコンテナ20は、回転させるのではなく揺動させるかまたはその他の形で撹拌してもよい。
図4では、各々ピン10用の2つの穴を有するプレートセットAおよびBを含む典型的なサイレントチェーンの一部分が示されている。この構成においては、4枚のプレートの並列セットAと3枚のプレートの並列セットBを整形してスプロケットを収容するかまたは、図示していない力分配装置を係合させてよい。チェーンの設計に応じて、プレートAまたはBの一部をピン10上に連接し、他のプレートをピンに固定しピン上を回転しないようにしてもよい。プレートとピンの界面に連接が存在するか否かに関わらず、いずれの場合でも有意な応力および摩耗がピンとプレートの界面において発生するかもしれない。
例示的プロセスにしたがって製造されたチェーンピンとより従来型のピンを比較すると、万力内で曲げた場合に、ピン10上の硬質コーティングはピン10からフレーキングすることがなく、一方、従来のプロセスで製造したピンはフレーキングを起こすということがわかった。このことは一般に、ピン10のコーティング14は摩滅することはあっても、従来のピンのコーティングに比べてより粘り強く接着することを意味すると考えられている。以上で記した通り、硬質コーティングのフレーキングまたは剥離は、チェーン部品の摩耗した接触表面にとって極めて破壊的であり得る。
本発明の実施形態についての以上の記述は、実際は単なる一例にすぎず、したがってその変形形態を、本発明の精神および範囲からの逸脱としてみなすべきではない。

Claims (15)

  1. − 低クロム含有鋼コアを提供するステップと;
    − 5族金属を含む5族金属源、ハロゲン化物触媒およびフェロモリブデンおよびフェロチタンのうちの少なくとも1つを含む粉末を含む微粒子ミックスを形成するステップであって、前記5族金属が41以下の原子番号を有するステップと;
    − 化学被着プロセスを介して前記鋼コアの少なくとも1つの表面上に前記微粒子ミックスを含む炭化物コーティングを形成するステップと;
    を含む方法。
  2. 前記5族金属源がフェロバナジウムを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記微粒子ミックス中の前記粉末と前記5族金属の重量比が約0.02〜0.04である、請求項2に記載の方法。
  4. コーティングを形成するステップが、
    − 前記微粒子ミックスおよび前記鋼コアを密閉コンテナに導入するステップと;
    − 摂氏約870度〜1093度の温度まで前記密閉コンテナを加熱するステップと;
    − 前記密閉コンテナ内部で既定の時間前記微粒子ミックスと前記鋼コアを接触させて、前記鋼コアの前記表面上に炭化物コーティングを所望の厚みで形成するステップと;
    を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記微粒子ミックスが、フェロモリブデンおよびフェロチタンの混合物を含み、前記微粒子ミックス中の前記混合物とフェロバナジウムの前記重量比が約0.02〜0.04の間である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記低クロム含有鋼コアの前記クロム含有量が約1.6重量パーセントを上回らない、請求項1に記載の方法。
  7. − 前記炭化物コーティングを含む前記鋼コアを冷却するステップと;
    − 前記微粒子ミックスから前記炭化物コーティングを含む前記鋼コアを分離するステップと;
    − 前記炭化物コーティングを含む前記鋼コアを少なくともそのオーステナイト化温度まで加熱するステップと;
    − 前記炭化物コーティングを含む前記鋼コアを焼き入れし、これにより前記物品がRc44〜56のコア硬度と少なくともHV2000の表面硬度を与えるようにするステップと;
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  8. 低クロム含有鋼物品の表面上に硬質コーティングを形成するために使用される微粒子ミックスであって、
    − 41以下の原子番号を有する5族金属を有する5族金属源と;
    − ハロゲン化物触媒と;
    − フェロモリブデンおよびフェロチタンのうちの少なくとも1つを含む粉末と、
    を含む微粒子ミックス。
  9. 前記微粒子ミックス中の前記5族金属源に対する前記粉末の前記重量比が約0.02〜0.04である、請求項8に記載の微粒子ミックス。
  10. 前記ハロゲン化物触媒が、前記5族金属源の約0.6〜3.0重量パーセントを構成する、請求項8に記載の微粒子ミックス。
  11. 前記5族金属源がフェロバナジウムを含む、請求項8に記載の微粒子ミックス。
  12. 前記ハロゲン化物触媒が塩化鉄、塩化アンモニウム、塩化ニオブ、塩化バナジウムおよびその混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の微粒子ミックス。
  13. − 低クロム含有鋼コアと;
    − 前記低クロム含有鋼コアに結合された炭化物コーティングであって、5族金属を含む5族金属源、ハロゲン化物触媒およびフェロモリブデンとフェロチタンの少なくとも1つを含む粉末を含む微粒子ミックスから形成される炭化物コーティングと;
    を含む鋼物品であって、
    前記5族金属が41以下の原子番号を有する、鋼物品。
  14. 前記低クロム含有鋼コアの前記クロム含有量が前記低クロム含有鋼コアの約1.6重量パーセントを上回らない、請求項13に記載の鋼物品。
  15. 前記微粒子ミックス中の前記5族金属に対する前記粉末の前記重量比が、約0.02〜0.04である、請求項13に記載の鋼物品。
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