JP2013155116A - 腹足類に属する軟体動物忌避シート - Google Patents

腹足類に属する軟体動物忌避シート Download PDF

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有希 村杉
Noriyoshi Asada
典良 麻田
Toru Takahashi
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Abstract

【課題】天然物由来の忌避剤を使用して安全性が高く、ナメクジやカタツムリなどに対する忌避効果が良好で、植物への散水時における忌避剤の溶出或いは継時劣化による忌避剤の飛散がないので忌避効果の持続性があり、且つ、使用上の利便性が良好なシート状である腹足類に属する軟体動物忌避シートを提供する。
【解決手段】シート状部材の少なくとも一方の表面に、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出した抽出物を含有する水系樹脂層が積層されている。このツバキ科植物種子の搾油残渣からの抽出物は、サポニンを主成分として含有している。また、水系樹脂層を構成する水系樹脂は、水系熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、植物の新芽、花、葉、果実などを食害し、農園芸分野に多大の被害を与えるナメクジやカタツムリなどの腹足類に属する軟体動物が植物に近づくことを防止するための軟体動物忌避シートに関するものである。
植物の栽培には頻繁に散水が行われ、植物の周囲の土壌を湿潤した環境に維持している。このような湿潤した環境には、ナメクジやカタツムリなどの腹足類に属する軟体動物が発生しやすい。これらのナメクジやカタツムリなどは、植物の新芽、花、葉、果実などを好んで食するため農園芸分野の被害が問題となる。
従来からナメクジやカタツムリなどの防除には、誘引性接触毒としてパラホルムアルデヒドやメタアルデヒドなどの合成薬剤を散布することが行われてきた。しかし、これらの合成薬剤においては、強い防除効果の反面、植物への損傷、散布時の人体、家畜、ペットへの接触毒性、或いは、環境汚染などの問題が指摘され、天然物由来の忌避剤への転換が図られている。
例えば、下記特許文献1においては、ツバキ科植物の種子から搾油した後の搾り粕の造粒物がナメクジやカタツムリなどの忌避効果が良好で、且つ、効果の持続性があるとしてこれを腹足類に属する軟体動物忌避剤として使用することが提案されている。この忌避効果は、ツバキ科植物種子の搾り粕に多く含まれるサポニンによるものと考えられているが、このツバキ科植物種子の搾り粕は古くから肥料としても利用され、また、天然物であるので土に帰る忌避剤として安全性が高く有効である。
一方、ツバキ科植物種子の搾り粕の造粒物を忌避剤として使用する場合、散布に手間と費用がかかり、また、造粒物の継時的な劣化によりサポニンが飛散して忌避効果が消失するという問題がある。
そこで、下記特許文献2においては、合成樹脂材料などからなるテープ或いはシートにサポニンを付着させてなる忌避用テープ或いは忌避用シートが提案されている。これらの忌避用テープ或いは忌避用シートは、植木鉢に巻き付け或いは植木鉢の下に敷くなど使用上の利便性が良好である。
特開平8−175925号公報 特開2002−171892号公報
ところで、上記特許文献2の忌避用テープ或いは忌避用シートにおいては、サポニンを含有した合成樹脂材料でテープ或いはシートの基材を成形する、又は、テープ或いはシートの表面に単にサポニンを塗布するというものである。
ここで、サポニンは後述のように水溶性物質であり、合成樹脂材料中にサポニンを含有させてテープ或いはシートの基材を成形することは難しく、また、忌避効果を良好に発現させるために高濃度のサポニンを含有させることは非常に困難であるという問題がある。更に、テープ或いはシートの表面に単にサポニンを塗布するだけでは、水溶性のサポニンが植物への散水時に溶出してしまい効果の持続性に欠けるという問題がある。
そこで、本発明は、以上のようなことに対処して、天然物由来の忌避剤を使用して安全性が高く、ナメクジやカタツムリなどに対する忌避効果が良好で、植物への散水時における忌避剤の溶出或いは継時劣化による忌避剤の飛散がないので忌避効果の持続性があり、且つ、使用上の利便性が良好なシート状である腹足類に属する軟体動物忌避シートを提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、水溶性のサポニンと相溶性の良い水系樹脂に良好な忌避効果と効果の持続性を維持できる量のサポニンを含有してシート表面に塗布することで上記目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係る腹足類に属する軟体動物忌避シートは、請求項1の記載によると、シート状部材の少なくとも一方の表面に、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出した抽出物を含有する水系樹脂層が積層されている。
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載の腹足類に属する軟体動物忌避シートにおいて、前記抽出物は、サポニンを主成分として含有することを特徴とする。
また、本発明に係る腹足類に属する軟体動物忌避シートは、請求項3の記載によると、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出したサポニンを主成分とする抽出物と、水系樹脂とを含有するコーティング液を調整するコーティング液調整工程と、
前記コーティング液をシート状部材の少なくとも一方の表面に塗布する塗布工程と、
前記シート状部材の表面に塗布された前記コーティング液を乾燥及び/又は熱処理して水系樹脂層を形成する水系樹脂層形成工程とを経て製造される。
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項1〜3のいずれか1つに記載の腹足類に属する軟体動物忌避シートにおいて、前記水系樹脂層を構成する水系樹脂は、水系熱硬化性樹脂であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の腹足類に属する軟体動物忌避シートにおいて、前記水系樹脂層は、0.5g/m〜48g/mの範囲内の前記抽出物を含有していることを特徴とする。
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項1〜5のいずれか1つに記載の腹足類に属する軟体動物忌避シートにおいて、前記水系樹脂層は、前記水系樹脂と前記抽出物との固形分比率が1:4〜19:1の範囲内で構成されてなることを特徴とする。
上記構成によれば、シート状部材の少なくとも一方の表面には、水系樹脂から形成された水系樹脂層が積層されている。この水系樹脂層には、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出した抽出物が含有されており、この抽出物がナメクジやカタツムリなどに対する忌避効果を発揮する。この抽出物は、天然物由来の忌避剤であり従来のパラホルムアルデヒドやメタアルデヒドなどの合成薬剤に比べ安全性が高い。
ここで、本発明に使用する忌避剤は、上述のように、水或いはアルコールを用いて抽出されたものであり親水性或いは水溶性を示すものである。従って、本発明に使用する水系樹脂との相溶性が良好であり、水系樹脂中への忌避剤の含有量を多くすることができるので高い忌避効果と効果の持続性を良好にすることができる。
また、忌避剤と水系樹脂との相溶性が良好であることにより、植物への散水時における忌避剤の溶出がなく、また、水系樹脂層の継時劣化が起こりにくく忌避剤の飛散がない。このことにより、忌避効果の持続性が更に良好となる。
更に、本発明においては、シート状であることにより、ツバキ科植物種子の搾り粕の造粒物のように散布の手間と費用がかからず、また、植木鉢や植物の幹に巻き付け或いは植木鉢やプランターの下に敷くなど使用上の利便性が良好である。
よって、本発明においては、天然物由来の忌避剤を使用して安全性が高く、ナメクジやカタツムリなどに対する忌避効果が良好で、植物への散水時における忌避剤の溶出或いは継時劣化による忌避剤の飛散がないので忌避効果の持続性があり、且つ、使用上の利便性が良好なシート状である腹足類に属する軟体動物忌避シートを提供することができる。
また、水系樹脂層を構成する水系樹脂は水系熱硬化性樹脂であってもよく、このことにより、水系樹脂層が形成された後は、水系樹脂層の強度や耐水性が増して忌避効果の持続性が更に向上する。
また、水系樹脂層は、0.5g/m〜48g/mの範囲内の抽出物を含有することが好ましい。この範囲内の抽出物を忌避剤として含有することにより、軟体動物忌避シートの高い忌避効果と効果の持続性が更に向上する。
また、水系樹脂層は、水系樹脂と抽出物との固形分比率が1:4〜19:1の範囲内で構成されていることが好ましい。固形分比率がこの範囲内にあることにより、水系樹脂中での抽出物の安定性が更に向上し、軟体動物忌避シートの高い忌避効果と効果の持続性が更に向上する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において、忌避しようとする腹足類に属する軟体動物とは、腹足綱の軟体動物の総称であって所謂、巻貝に相当する。本発明においては、特に農園芸分野で食害を及ぼすナメクジやカタツムリなどを対象として忌避することを目的とする。
本発明に係る腹足類に属する軟体動物忌避シート(以下「軟体動物忌避シート」という)は、シート状部材の少なくとも一方の表面に、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出した抽出物を含有する水系樹脂層が積層されている。
ここで、シート状部材とは、フィルム、テープ、板、紙、不織布、織物、編物、網などの構造物をいい、シート状であればその材料、構造、その他どのようなものであってもよい。本発明においては、農園芸分野で使用することを考慮して合成樹脂フィルム或いは生分解性樹脂フィルムなどが好ましい。例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリ乳酸フィルムなどを使用することができる。
本発明に係る軟体動物忌避シートの表面には、水系樹脂層が積層されており、この水系樹脂層は、両方の表面に積層されていてもよく、或いは、一方の表面にのみ積層されていてもよい。両方の表面に水系樹脂層が積層されている場合には、機能面積が広くより強い忌避効果が現れる。また、一方の表面にのみ水系樹脂層が積層されている場合には、そのまま使用してもよく、或いは、水系樹脂層が積層されていない側の表面に粘着樹脂層などを積層して植木鉢などに接着して使用するようにしてもよい。
本発明において、水系樹脂層を形成する水系樹脂とは、樹脂成分が水中に溶解或いは分散した状態で水系樹脂層の形成に使用され、水系樹脂層の形成後には非水性或いは難水溶性の水系樹脂層を形成するものをいう。従って、樹脂層形成前から非水性であるような、例えば、有機溶剤系樹脂や熱溶融性樹脂などは含まない。また、水系樹脂層形成後に当該樹脂層が水に容易に溶解するような、例えば、非架橋のデンプン樹脂などは含まない。
本発明にいうところの水系樹脂としては、例えば、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂アイオノマー、アクリル樹脂エマルション、ポリエステル樹脂エマルション、ポリウレタン樹脂エマルション、シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂ディスパーション、ポリエステル樹脂ディスパーション、ポリウレタン樹脂ディスパーション、シリコーン樹脂ディスパーションなどを挙げることができる。
また、本発明にいう水系樹脂は、水系熱硬化性樹脂であることが好ましい。水系熱硬化性樹脂とは、水溶性或いは水分散性のポリマー或いはプレポリマーが相互に架橋し、又は、架橋剤との熱硬化反応により、三次元網目構造を形成して水系樹脂層形成後の強度や耐水性が更に向上する樹脂をいう。
例えば、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの初期縮合物の熱重合反応による水系メラミン樹脂や水系尿素樹脂、ブロック化イソシアネートを反応基として有するウレタンプレポリマーの水系重合樹脂、ウレタンプレポリマーとブロック化イソシアネート架橋剤との架橋反応による水系ウレタン樹脂、カルボキシル基を有する水溶性アクリル樹脂とエチレンイミン系架橋剤或いはエポキシ系架橋剤などとの架橋反応による反応性アクリル樹脂などを挙げることができる。
次に、本発明において、水系樹脂層は、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出した抽出物を含有している。ここで、ツバキ科植物とは、双子葉植物ツバキ目に属する植物であって、例えば、椿、茶、山茶花などを挙げることができる。
これらのツバキ科植物の種子からは良質の植物油が搾油される。本発明においては、この搾油後の残渣から抽出した抽出物をナメクジやカタツムリなどに対する忌避剤として使用する。この抽出物は天然物由来であり人や環境に対して安全性の高い忌避剤である。
この抽出物を得る方法は、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出する。抽出には一般に使用される抽出法を用いればよく、例えば、椿の種子を圧搾法により一次搾油し、更に、溶剤抽出法により二次搾油した後の搾油残渣(搾り粕)から水或いはメタノールなどのアルコールを抽出剤として忌避剤を抽出する。その後、抽出剤を除去して抽出液を濃縮し、そのまま忌避剤とする、或いは、スプレードライ法などで乾燥して紛体の忌避剤を得る。
このように、抽出剤として水或いはメタノールなどのアルコールを用いるため、抽出された忌避剤は水溶性或いは親水性の高い物質である。この忌避剤中の主成分については、サポニンであるものと考えられているが、サポニン以外の成分、例えば、タンニンなども含まれている可能性があり、これらの複合作用により忌避効果が更に向上することも考えられる。
ここで、サポニンとは、トリテルペンやステロイドにオリゴ糖(二個以上の糖が結合したもの)が結合した配糖体の一種であり、植物界に広く分布する二次代謝物である。このサポニンは、上述のトリテルペンやステロイドの部位を疎水部とし、オリゴ糖の部位を親水部とする緩和な界面活性様作用を示す。このサポニンのナメクジやカタツムリなどに対する忌避効果は、各方面で既に確認されている。
例えば、本発明者らは、ツバキ科植物種子の搾油残渣の水抽出物を特定のクロマトグラフィーにより高度に精製したサポニンがナメクジやカタツムリなどに対して高い忌避効果があることを確認している(特開2011−105602号公報を参照)。このサポニンは、オリゴ糖を含む分子量800〜1600のサポニンである。本発明においても、本発明者らによる高度に精製された当該サポニンを使用することにより、より少ない使用量で高度の忌避効果を得ることが可能となる。
本発明において、水系樹脂と忌避効果を有するサポニンとを併用することにより、忌避効果が高く、且つ、効果の持続性が良好となる理由については定かではないが、次のように考えることができる。
上述のように、サポニンは、トリテルペンやステロイドの部位からなる疎水部とオリゴ糖の部位からなる親水部とを有する水溶性の物質である。従って、水系樹脂層の形成前において水系樹脂との相溶性が良好である。つまり、サポニンは、水系樹脂が水溶性樹脂の場合であっても、又は、水系エマルション樹脂或いは水系サスペンション樹脂の場合であっても、その連続層である水に容易に溶解し、水系樹脂層の形成工程で都合がよい。
また、水系樹脂層の形成後においては、サポニンの疎水部が水系樹脂層のポリマー分子中の疎水部と親和性を有し、形成された水系樹脂層中におけるサポニンの安定性が向上する。更に、サポニンは親水部を有して水系樹脂層から徐々に放出されることにより、忌避効果が高く、且つ、効果の持続性が増すものと考えられる。
ここで、軟体動物忌避シートの忌避効果を高く、且つ、効果の持続性を維持するためには、水系樹脂層に含まれるサポニンを主成分とする抽出物(以下「サポニン抽出物」という)の量、及び、水系樹脂層を構成する水系樹脂の量とサポニン抽出物の量との関係を考慮することが好ましい。
本発明において、水系樹脂層に含まれるサポニン抽出物の量は特に限定するものではないが、サポニン抽出物をその固形分量として水系樹脂層の単位面積当たり、0.5g/m〜48g/mの範囲内で含有することが好ましく、更に、1g/m〜30g/mの範囲内で含有することがより好ましい。サポニン抽出物を水系樹脂層の単位面積当たり、0.5g/m〜48g/mの範囲内で含有することにより、軟体動物忌避シートの製造が容易となり、また、軟体動物忌避シートの忌避効果をより高く、且つ、効果の持続性をより長く維持することができる。
また、本発明において、水系樹脂層を構成する水系樹脂の量とサポニン抽出物の量との関係は特に限定するものではないが、水系樹脂とサポニン抽出物との固形分比率を1:4〜19:1の範囲内で構成することが好ましく、更に、固形分比率を1:1〜9:1の範囲内で構成することがより好ましい。水系樹脂とサポニン抽出物との固形分比率を1:4〜19:1の範囲内で構成することにより、軟体動物忌避シートの製造が容易となり、また、軟体動物忌避シートの忌避効果をより高く、且つ、効果の持続性をより長く維持することができる。
次に、軟体動物忌避シートを作製する方法について説明する。本発明において、軟体動物忌避シートを作製する方法は特に限定するものではなく、どのような方法により作製してもよい。
例えば、水系樹脂とサポニン抽出物とを含有するコーティング液を合成樹脂フィルムなどのシート状部材にコーティングして乾燥或いは熱処理してシート状部材の表面に水系樹脂層を形成するようにしてもよく、或いは、サポニン抽出物を含有した水系樹脂を転写フィルム上に成形後、合成樹脂フィルムなどのシート状部材にラミネートするようにしてもよい。
ここでは、一例として、コーティング法による軟体動物忌避シートの作製方法について説明する。
A.コーティング液調整工程
本発明においては、コーティング液の溶媒は、主として水を使用する。また、必要により、各種アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどの親水性溶媒を水に併用するようにしてもよい。
水系樹脂は、上述のように、各種ポリマー或いはプレポリマーの水溶液、エマルション、サスペンションを使用する。このような水系樹脂を成分とするコーティング液において、コーティング液中の固形分濃度は、特に限定するものではないが、例えば、40重量%〜60重量%であることが好ましい。これらの濃度には、水系樹脂の固形分量及びサポニン抽出物の固形分量が含まれる。
ここで、コーティング液中の水系樹脂の使用量は、特に限定するものではないが、水系樹脂層の形成を容易なものとするには、例えば、上記コーティング液中の固形分濃度に対して、20重量%〜95重量%、好ましくは、50重量%〜90重量%であることがよい。
一方、コーティング液中のサポニン抽出物の使用量は、特に限定するものではないが、水系樹脂層の形成を容易なものとするには、例えば、上記コーティング液中の固形分濃度に対して、5重量%〜80重量%、好ましくは、10重量%〜50重量%であることがよい。
このように、水系樹脂の固形分量とサポニン抽出物の固形分量の比率を上記範囲にすることにより、水系樹脂とサポニン抽出物との固形分比率を1:4〜19:1の範囲内、好ましくは、1:1〜9:1の範囲内とすることができる。
上述のようにして、水を主体とした溶媒に水系樹脂及びサポニン抽出物を混合してコーティング液を調整する。また、このコーティング液には、必要により、水系樹脂の架橋剤、架橋触媒、分散剤、沈殿防止剤、顔料、フィラー、可塑剤、柔軟剤などの各種添加剤を併用するようにしてもよい。また、作製したコーティング液の粘度は、塗布手段に合わせて、必要により増粘剤などにより調整する。
B.塗布工程
合成樹脂フィルムなどのシート状部材に上記コーティング液を塗布するには、一般のコーティング手法を採用すればよく、塗布されるシート状部材の材質と性状、及び、コーティング液の粘度と性状によって適宜選定すればよい。例えば、ナイフコーター方式、バーコーター方式、グラビアコーター方式、リバースロールコーター方式、キスコーター方式、含浸コーター方式などを挙げることができる。
また、コーティング液の塗布量は、コーティング液中の水系樹脂量及びサポニン抽出物の量により適宜選定すればよい。例えば、一般にウエット状態で5g/m以上あれば塗布が可能であるが、好ましくは、ウエット状態で25g/m〜100g/mであることがよい。
上述のコーティング液中の固形分濃度、40重量%〜60重量%と上記コーティング液の塗布量、ウエット状態で25g/m〜100g/mから、コーティングによって塗布される固形分量(水系樹脂固形分量とサポニン抽出物固形分量を含む)は、10g/m〜60g/mとなる。
更に、上述のように、サポニン抽出物の量がコーティング液中の固形分濃度に対して、5重量%〜80重量%、好ましくは、10重量%〜50重量%であることを考慮すると、水系樹脂層の単位面積当たり、0.5g/m〜48g/mの範囲内、好ましくは、1g/m〜30g/mの範囲内でサポニン抽出物(固形分量)が塗布されることが好ましい。
C.水系樹脂層形成工程
表面にコーティング液を塗布されたシート状部材は、乾燥により溶媒である水が除去され、サポニン抽出物を含有した水系樹脂層が形成される。また、必要により更に熱処理することで、水系樹脂の皮膜強度向上や熱硬化反応による三次元網目構造の形成が行われ、水系樹脂層の強度や耐水性が更に向上する。
ここで、乾燥温度及び熱処理温度は、溶媒として使用する水の量、水系樹脂の種類と使用量、サポニン抽出物の使用量、及び、架橋剤の種類と架橋反応温度などによって適宜選定すればよい。
以下、本発明に係る軟体動物忌避シートを各実施例において具体的に説明する。なお、本発明は、下記の各実施例によって限定されるものではない。
まず、本実施例1で使用するサポニン抽出物を準備した。具体的には、処理能力100kg/hrのバッチ式搾油ベンチ・プラントを用いて、茶種子の搾油を行なった。まず、茶種子60kgを60℃で20分間予熱した後、粗砕ロールを用いて粗砕した。これを直に圧扁ロールに掛けて一次搾油し、残った壊状フレークにヘキサンを作用させて二次搾油を行った。
搾油後の搾り粕からメタノールを用いて抽出した抽出液を蒸留してメタノールを除去し、得られた濃縮液をスプレードライ法で乾燥して抽出紛体を得た。
A.コーティング液調整工程
本実施例1においては、水系樹脂として、ポリアクリル酸エステル樹脂エマルション(ボンコートR−3380−E、DIC Corporation製、樹脂固形分45重量%)を使用した。また、サポニン抽出物として、上述の方法で作製した抽出紛体を使用した。
水を溶媒として上記ポリアクリル酸エステル樹脂エマルションを56重量%(コーティング液中の樹脂固形分としては25.2重量%)、及び、上記抽出紛体を25重量%含有するコーティング液を調整した。粘度調整にために増粘剤を添加した以外は、架橋剤その他の添加剤は混合しなかった。
B.塗布工程
本実施例1においては、シート状部材として厚み25μmのポリエステルフィルムを使用した。このポリエステルフィルムの一方の表面に上記コーティング液調整工程で調整したコーティング液をナイフコーター方式で塗布した。この時の塗布量は、35g/mであった。
C.水系樹脂層形成工程
次に、上記塗布工程で一方の表面にコーティング液を塗布されたポリエステルフィルムを120℃の乾燥ゾーンと150℃の乾熱処理ゾーンを通過してサポニン抽出物を含有したポリアクリル酸エステル樹脂層を形成した。形成されたポリアクリル酸エステル樹脂層においては、サポニン抽出物の含有量が8.75g/mであり、ポリアクリル酸エステル樹脂とサポニン抽出物との固形分比率が1:1であった。
上記実施例1に対して、比較例1としてサポニン抽出物を含有しないコーティング液を調整した。比較例1においては、コーティング液にサポニン抽出物が含有されていないことを除き、他の条件は上記実施例1と同様にして作製した。
このようにして作製した実施例1に係る軟体動物忌避シート、及び、比較例1に係る対照シートの忌避効果については後述する。
A.コーティング液調整工程
本実施例2においては、水系樹脂として、ポリウレタン樹脂エマルション(ボンディックH−6030、DIC Corporation製、樹脂固形分45重量%)を65重量%(コーティング液中の樹脂固形分としては29重量%)及び架橋剤としてブロック化イソシアネートを使用した。また、サポニン抽出物として、上記実施例1と同様の抽出紛体を15重量%使用した。その他、粘度調整にために増粘剤を添加した。
B.塗布工程
本実施例2においては、シート状部材として上記実施例1と同様のポリエステルフィルムを使用した。このポリエステルフィルムの一方の表面に上記コーティング液調整工程で調整したコーティング液をナイフコーター方式で塗布した。この時の塗布量は、40g/mであった。
C.水系樹脂層形成工程
次に、上記塗布工程で一方の表面にコーティング液を塗布されたポリエステルフィルムを120℃の乾燥ゾーンと150℃の乾熱処理ゾーンを通過してサポニン抽出物を含有したポリウレタン樹脂層を形成した。形成されたポリウレタン樹脂層においては、サポニン抽出物の含有量が6g/mであり、ポリウレタン樹脂とサポニン抽出物との固形分比率が2:1であった。
このようにして作製した実施例2に係る軟体動物忌避シートの忌避効果については後述する。
A.コーティング液調整工程
本実施例3においては、水系樹脂として、熱反応型水溶性ウレタンオリゴマー(エラストロンE−37、第一工業製薬株式会社製、樹脂固形分25重量%)を70重量%(コーティング液中の樹脂固形分としては17.5重量%)及び重合触媒を使用した。また、サポニン抽出物として、上記実施例1と同様の抽出紛体を18重量%使用した。その他、粘度調整にために増粘剤を添加した。
B.塗布工程
本実施例2においては、シート状部材として上記実施例1と同様のポリエステルフィルムを使用した。このポリエステルフィルムの一方の表面に上記コーティング液調整工程で調整したコーティング液をナイフコーター方式で塗布した。この時の塗布量は、40g/mであった。
C.水系樹脂層形成工程
次に、上記塗布工程で一方の面にコーティング液を塗布されたポリエステルフィルムを120℃の乾燥ゾーンと160℃の乾熱処理ゾーンを通過してサポニン抽出物を含有したポリウレタン樹脂層を形成した。形成されたポリウレタン樹脂層においては、サポニン抽出物の含有量が7.2g/mであり、ポリウレタン樹脂とサポニン抽出物との固形分比率が1:1であった。
このようにして作製した実施例3に係る軟体動物忌避シートの忌避効果については後述する。
以上のようにして作製した実施例1〜実施例3の軟体動物忌避シート、及び、比較例1の対照シートについて、ナメクジに対する忌避効果を以下のようにして評価した。
直径25cmの丸型プランターに園芸用黒土を詰め、高さ15cm程度のナスの苗木を植えたものを複数個準備し、被検証物としてハウス栽培した。散水は、通常のハウス栽培と同様に1回/日程度行なった。試験期間は5月〜6月に設定した。
まず、実施例1〜実施例3の軟体動物忌避シート、及び、比較例1の対照シートをそれぞれ1辺30cmの正方形にして各プランターの下に配置した。なお、軟体動物忌避シート及び対照シートのいずれも配置しないものをコントロールとして比較した。
試験期間中に、試験開始日から1週間毎に各プランターの周辺部に、それぞれ5匹のナメクジを置き、その挙動を観察した。観察においては、プランターの周辺部から逸走したナメクジが明らかに忌避行動をとったものとして、その匹数を数えて点数とした。なお、忌避挙動を示さなかったものとは、プランターの外壁に登ったものや苗木に登るなど、何ら異常を示さなかったものをいう。
その評価結果を表1に示す。表1における判断基準は、忌避行動をとった匹数が4匹以上のものを忌避効果良好とした。

表1から分かるように、実施例1〜実施例3においては、いずれも、試験開始から5週間に亘り、ナメクジに対する良好な忌避効果を発揮した。更に、表1には示していないが5週間経過以降も継続して忌避効果の持続性を確認した。一方、比較例1においては、試験開始当初からコントロールと同様、ナメクジに対する忌避効果を確認できなかった。
また、本発明者らは、カタツムリについても、ナメクジに対すると同様の評価を行ない同様の結果を確認した。これらのことから、本願発明に係る軟体動物忌避シートは、ナメクジやカタツムリなどに対する高度の忌避効果と効果の持続性を有することが分かる。
よって、本発明においては、天然物由来の忌避剤を使用して安全性が高く、ナメクジやカタツムリなどに対する忌避効果が良好で、植物への散水時における忌避剤の溶出或いは継時劣化による忌避剤の飛散がないので忌避効果の持続性があり、且つ、使用上の利便性が良好なシート状である腹足類に属する軟体動物忌避シートを提供することができる。

Claims (6)

  1. シート状部材の少なくとも一方の表面に、ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出した抽出物を含有する水系樹脂層が積層されてなる腹足類に属する軟体動物忌避シート。
  2. 前記抽出物は、サポニンを主成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の腹足類に属する軟体動物忌避シート。
  3. ツバキ科植物種子の搾油残渣から水或いはアルコールを用いて抽出したサポニンを主成分とする抽出物と、水系樹脂とを含有するコーティング液を調整するコーティング液調整工程と、
    前記コーティング液をシート状部材の少なくとも一方の表面に塗布する塗布工程と、
    前記シート状部材の表面に塗布された前記コーティング液を乾燥及び/又は熱処理して水系樹脂層を形成する水系樹脂層形成工程とを経て製造されてなる腹足類に属する軟体動物忌避シート。
  4. 前記水系樹脂層を構成する水系樹脂は、水系熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の腹足類に属する軟体動物忌避シート。
  5. 前記水系樹脂層は、0.5g/m〜48g/mの範囲内の前記抽出物を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の腹足類に属する軟体動物忌避シート。
  6. 前記水系樹脂層は、前記水系樹脂と前記抽出物との固形分比率が1:4〜19:1の範囲内で構成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の腹足類に属する軟体動物忌避シート。
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