JP2013216596A - 抗菌剤、抗菌剤分散液、およびこれを用いた抗菌加工製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】暗所でも高い抗菌性能を発揮し、かつ可視光照射下ではより高い抗菌性能を発揮し、病原菌などの菌を死滅させることができる抗菌剤を提供する。
【解決手段】本発明の抗菌剤は、10〜100nmの平均粒子径を有する酸化ジルコニウム粒子を含有し、好ましくは光触媒粒子をさらに含有する。このような光触媒粒子としては、例えば酸化タングステン粒子が挙げられる。本発明の抗菌剤は、好ましくは抗菌剤分散液の形態で用いられ、例えば抗菌加工製品の製造などに用いられる。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸化ジルコニウム粒子を含有する抗菌剤、抗菌剤分散液、およびこれを用いた抗菌加工製品に関する。
抗菌剤としては、一般に有機系抗菌剤および無機系抗菌剤が知られている。有機系抗菌剤は、効果の持続期間が1〜2ヶ月程度と短く、また部材の表面に抗菌性を付与する場合、有機系抗菌剤では使用中に抗菌性能が低下するとの不具合もある。
一方、無機系抗菌剤としては、銀イオン、銅イオンなどを含む抗菌剤が知られている。しかし、銀イオンや銅イオンは、光、熱、共存物質などの影響を受けやすいという問題点がある。
また、光触媒作用を利用した抗菌剤も知られており、特許文献1には、酸化タングステンからなる抗菌剤が開示されている。この抗菌剤は、酸化タングステンの光触媒作用により、光照射下では高い抗菌性能を発揮する。
しかし、酸化タングステンからなる抗菌剤は、暗所下では十分な抗菌性能を発揮せず、暗所下において抗菌性能を発揮させるには、24時間以上もの時間を要する。さらに、屋内では、蛍光灯に紫外線吸収剤を含むアクリルカバーなどを装着して用いることが多く、そのような環境下では抗菌性能が低下するという問題もある。
したがって、暗所や紫外線をカットした蛍光灯の光照射でも、高い抗菌性能を発揮する抗菌剤が求められている。
国際公開第2009/110233号
本発明の課題は、暗所でも高い抗菌性能を発揮し、かつ可視光照射下ではより高い抗菌性能を発揮し、病原菌などの菌を死滅させることができる抗菌剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)10〜100nmの平均粒子径を有する酸化ジルコニウム粒子を含有する、抗菌剤。
(2)前記酸化ジルコニウム粒子が非晶質である、(1)に記載の抗菌剤。
(3)前記酸化ジルコニウム粒子が、10〜100質量%の割合で含有される、(1)または(2)に記載の抗菌剤。
(4)光触媒粒子をさらに含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の抗菌剤。
(5)前記光触媒粒子の表面に、貴金属または貴金属前駆体が担持されている、(4)に記載の抗菌剤。
(6)前記貴金属が、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、IrおよびRhからなる群より選択される少なくとも1種である、(5)に記載の抗菌剤。
(7)前記光触媒粒子が、酸化タングステン粒子である、(4)〜(6)のいずれかに記載の抗菌剤。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗菌剤を含有する、抗菌剤分散液。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗菌剤を含有する抗菌剤層が表面に形成された、抗菌加工製品。
(10)上記(8)の抗菌剤分散液を基材表面に塗工して、抗菌剤層を形成する工程を含む、抗菌加工製品の製造方法。
本発明によれば、暗所でも高い抗菌性能を発揮し、かつ可視光照射下ではより高い抗菌性能を発揮し、病原菌などの菌を死滅させることができるという効果が得られる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の抗菌剤は、10〜100nmの平均粒子径を有する酸化ジルコニウム粒子を含有する。平均粒子径が100nmを超える場合、基材に塗布した際に、酸化ジルコニウム粒子を最蜜充填に近い状態で塗工できず、塗膜の密着性が損なわれる可能性がある。一方、平均粒子径が10nm未満の場合、分散安定性に優れる分散液を得るには、酸化ジルコニウム粒子の濃度を極めて薄くしなければならず、抗菌性を発現するのに十分な塗工量を得るのが困難になる。
10〜100nmの平均粒子径を有する酸化ジルコニウム粒子であれば、特に限定されず、X線回折測定において結晶質のものでも非晶質のものでもよい。基材への塗工後、より密着性に優れる塗膜が得られる点で、非晶質のものが好ましい。
また、本発明の抗菌剤は、酸化ジルコニウム粒子を、好ましくは10〜100質量%の割合で含有する。酸化ジルコニウム粒子がこのような割合で含有されると、より高い抗菌性能が発揮される。酸化ジルコニウム粒子は、より好ましくは15〜100質量%の割合で含有される。
酸化ジルコニウム粒子は、例えば、水に分散した酸化ジルコニウムゾルの形態で市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えば、ZSL−10T(第一稀元素化学工業(株)製)、ZR−30BF(日産化学工業(株)製)などが挙げられる。これらの中でも、鉱酸(硝酸など)を含むZSL−10Tを用いることが好ましい。
本発明の抗菌剤は、分散媒に分散した状態で分散液(抗菌剤分散液)として用いることができる。分散媒は、特に限定されず、通常、水を主成分とする水性溶媒が用いられる。具体的には、分散媒は、水単独であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、水の含有量は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。有機溶媒としては、例えば、水溶性アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなど)、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。なお、有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、例えば、上記のような酸化ジルコニウムゾルの市販品を用いる場合、この酸化ジルコニウムゾルに有機溶剤を添加してもよい。
抗菌剤分散液において、分散媒の含有量は、抗菌剤100質量部に対して、通常300〜20000質量部、好ましくは500〜10000質量部である。分散媒がこのような範囲で含有される場合、抗菌剤が沈降しにくく、また容積効率の点でも好ましい。
本発明の抗菌剤は、光触媒粒子をさらに含有してもよい。通常の抗菌剤では、抗菌作用により菌は死滅するが、基材表面に菌の死骸は残存する。このような場合、死骸の上に菌が付着すると、その菌は抗菌剤と接触しにくくなるため、死滅させることが困難となる。
一方、光触媒粒子が含有されると、光触媒作用により生成する活性酸素種により菌の死骸は完全に分解される。したがって、基材表面に菌の死骸が堆積しにくくなり、長期間にわたって高い抗菌性能を発揮することが可能となる。
光触媒粒子は、光(例えば紫外線、可視光線など)の照射により光触媒作用を発現する半導体であり、具体的には、特定の結晶構造を有する金属元素と、酸素、窒素、硫黄およびフッ素の少なくとも1種とからなる化合物などが挙げられる。金属元素としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceなどが挙げられる。
化合物としては、これら金属の1種類または2種類以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物などが挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化タングステンなどが好ましく、とりわけ室内光の大部分を占める可視光の照射でも高い活性を示すことから、酸化タングステンや、Cu、Feなどを担持した酸化チタンがさらに好ましく、これらの中でも酸化タングステンが特に好ましい。なお、光触媒粒子は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
酸化タングステンは、光触媒作用を有する粒子状の酸化タングステン粒子であれば、特に限定されず、例えば、三酸化タングステン(WO3)粒子などが挙げられる。なお、酸化タングステン粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化タングステン粒子の粒子径は、特に限定されない。例えば、光触媒という用途の観点から、平均粒子径で、通常50〜200nm、好ましくは80〜130nmである。
光触媒粒子は、分散媒に分散した状態で分散液として用いてもよい。分散媒としては、上述の抗菌剤分散液で説明した分散媒が用いられる。
光触媒分散液において、分散媒の含有量は、光触媒粒子100質量部に対して、通常200〜20000質量部、好ましくは300〜10000質量部である。分散媒がこのような範囲で含有される場合、光触媒粒子が沈降しにくく、また容積効率の点でも好ましい。
本発明において、酸化ジルコニウム粒子と光触媒粒子との混合は、以下の方法によって行われる。
(i)酸化ジルコニウム粒子含有分散液および光触媒分散液を別々に調製し、これらを混合する方法。
(ii)酸化ジルコニウム粒子含有分散液を調製し、そこに光触媒粒子を添加して、媒体撹拌式分散機などの分散機を用いて分散処理を行う方法。
(iii)光触媒分散液を調製し、そこに酸化ジルコニウム粒子を添加して、媒体撹拌式分散機などの分散機を用いて分散処理を行う方法。
(iv)酸化ジルコニウム粒子および光触媒粒子を混合し、そこに水などの分散媒を添加して、媒体撹拌式分散機などの分散機を用いて分散処理を行う方法。
本発明の抗菌剤に光触媒粒子を含有させる場合、光触媒粒子は、酸化ジルコニウム粒子100質量部に対して、好ましくは950質量部以下、より好ましくは800質量部以下の割合で含有される。
光触媒粒子には、好ましくは貴金属または貴金属前駆体が担持されている。本明細書において、貴金属とは、光触媒粒子の表面に担持されて電子吸引性を発揮し得る化合物を意味し、貴金属単体だけではなく、貴金属の酸化物、水酸化物なども包含される。また、貴金属の前駆体とは、光触媒粒子の表面で貴金属に遷移し得る化合物(例えば、光照射により貴金属に還元される化合物)を意味し、貴金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機酸塩、炭酸塩、リン酸塩などが挙げられる。貴金属が光触媒粒子の表面に担持されて存在すると、光の照射により伝導帯に励起された電子と価電子帯に生成した正孔との再結合が抑制され、光触媒作用をより高めることができる。
貴金属としては、好ましくはCu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、Ir、およびRhからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましくは、Cu、PtおよびAuからなる群より選択される少なくとも1種である。
貴金属または貴金属前駆体を光触媒粒子に担持させる場合、貴金属または貴金属前駆体は、金属原子換算で、光触媒粒子100質量部に対して、通常0.005〜0.6質量部、好ましくは0.01〜0.4質量部の割合で用いられる。このような割合で貴金属または貴金属前駆体が光触媒粒子に担持される場合、光触媒の活性がより向上する。
貴金属の前駆体を光触媒粒子分散液に添加する場合、その添加後、光触媒粒子分散液に光照射を行うのが好ましい。照射する光としては、光触媒粒子のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光であれば特に限定されず、可視光線でも紫外線でもよい。光触媒粒子分散液に光照射を行うことにより、光励起によって生成した電子によって前駆体が還元されて貴金属となり、光触媒粒子の表面に担持される。なお、光触媒粒子分散液に光照射を行なわなくても、得られた分散液により形成された抗菌剤層中の光触媒粒子に光が照射された時点で貴金属へ変換されるため、その光触媒能が損なわれることはない。光照射は、前駆体を光触媒粒子分散液に添加後であれば、どの段階で行ってもよい。
また、貴金属の前駆体を光触媒粒子分散液に添加する場合、より効率よく貴金属に転化させる目的で、光照射の前に、本発明の効果を損なわない範囲で、メタノール、エタノール、シュウ酸などを光触媒粒子分散液に加えてもよい。
本発明の抗菌加工製品は、上述の抗菌剤を含有する抗菌剤層が表面に形成されている。なお、基材(製品)と抗菌剤層との密着性を向上させる目的で、必要に応じて、抗菌剤層と基材(製品)との間に下地層を形成してもよい。
下地層は、変性シリコーンや変成シリコーンポリマーを含む下地層形成用コート液を基材表面に塗布することによって形成される。変性シリコーンや変成シリコーンポリマーとは、シリコーンの骨格構造であるポリシロキサンの側鎖、末端に有機基を導入したものである。導入する有機基によって、アクリル変性シリコーン、アラルキル変成シリコーン、フェニル変成シリコーン、フェノール変成シリコーン、ポリエーテル変成シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、モノアミン変性シリコーン、ジアミン変性シリコーン、ハイドロジェン変成シリコーンなどが挙げられ、本発明においては、いずれも下地層形成用コート液として用いることができる。 このような下地層形成用コート液として、例えば、ビストレイターNRC−350A(日本曹達(株)製)、ビストレイターNRC−317A(日本曹達(株)製)、ビストレイターNRC−318A(日本曹達(株)製)、ビストレイターNRC−300(日本曹達製)、ビストレイターNRC−300A(日本曹達(株)製)、ビストレイターNDC−150AおよびビストレイターNDC−155A(日本曹達(株)製)、などが挙げられる。
抗菌剤層および下地層の膜厚は、特に制限されるものではなく、その用途などに応じて、適宜設定すればよい。通常、20nm〜3mm程度の範囲である。
抗菌剤層は、基材(製品)の内表面または外表面であれば、どの部分に形成されていてもよく、特に、菌が接触しやすい面に形成されていることが好ましく、さらに光触媒粒子が含有される場合には、光(可視光線)が照射される面に形成されていることが好ましい。基材(製品)の材質は、形成される抗菌剤層を実用に耐え得る強度で保持できる限り、特に限定されず、例えば、プラスチック、金属、セラミックス、木材、コンクリート、紙など、あらゆる材料からなる製品を対象にすることができる。
さらに、プラスチックの基材としては、例えばポリ塩化ビニル系樹脂、ABS系樹脂、AES系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、非結晶性ポリエチレンテレフタレートコポリマー、完全非晶性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
本発明の抗菌加工製品としては、具体的には建築資材(天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床など)、自動車内装材(自動車インストルメントパネル、自動車用シート、自動車用天井材、自動車用ガラスなど)、家電製品(冷蔵庫、エアコンなど)、繊維製品(衣類、カーテンなど)、不特定多数の人が接触する物品(電車のつり革、デスクマット、テーブルクロス、エレベーターのボタン、階段や廊下の手摺など)などが挙げられる。
本発明の抗菌加工製品は、例えば、抗菌剤分散液を基材表面に塗工して、抗菌剤層を形成することによって得られる。抗菌剤分散液に含まれる分散媒は、通常、乾燥(自然乾燥、熱風乾燥など)などによって揮発させる。
さらに、下地層を設ける場合、下地層は公知の方法で形成される。例えば、基材(製品)の表面に、下地層形成用コート液をグラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛ロールコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ディッピング、バーコーティング、アプリケーターなどの公知の方法で塗布し、コート液中の分散媒を揮発させればよい。この下地層の上に、抗菌剤分散液を同様の方法で塗布、乾燥して抗菌剤層を形成すればよい。
本発明の抗菌加工製品は、屋外はもちろん、屋内においても高い抗菌性能を発揮する。さらに、光触媒粒子を含有する場合は、蛍光灯、ナトリウムランプ、白色LED、有機ELなどのような可視光源からの光しか受けない屋内環境においても、可視光線の照射によって長期間にわたり高い抗菌性能を発揮する。
したがって、本発明の抗菌剤分散液を、例えば、建築資材(天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床など)、自動車内装材(自動車インストルメントパネル、自動車用シート、自動車用天井材、自動車用ガラスなど)、家電製品(冷蔵庫、エアコンなど)、繊維製品(衣類、カーテンなど)、不特定多数の人が接触する物品(電車のつり革、デスクマット、テーブルクロス、エレベーターのボタン、階段や廊下の手摺など)などに塗布して乾燥させると、長期に渡り、大腸菌、炭疽菌、結核菌、コレラ菌、ジフテリア菌、破傷風菌、ペスト菌、赤痢菌、ボツリヌス菌、多剤耐性アシネトバクター、多剤耐性緑膿菌、NDM−1産生多剤耐性菌、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、レジオネラ菌などの病原菌の数を低減させることができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各物性の測定および抗菌性活性の評価については、以下の方法で行った。
(結晶型)
結晶型は、X線回折装置((株)リガク製の「RINT2000/PC」)を用いてX線回折スペクトルを測定し、そのスペクトルから決定した。
(BET比表面積)
BET比表面積は、比表面積測定装置(湯浅アイオニクス(株)製の「モノソーブ」)を用い、窒素吸着法によって測定した。
(平均粒子径)
平均粒子径(分散粒子径d50)は、マイクロトラックUPA粒度分析計(日機装(株)製)を用いて、動的散乱法により累積50%径を測定した。
(密着性)
抗菌剤層の密着性は、24mm幅の粘着セロハンテープ(ニチバン(株)製)を抗菌剤層の表面に貼着させて素早く剥したときに、抗菌剤層が同時に剥れるか否かによって評価した。
(抗菌性活性の測定)
抗菌剤層を表面に形成したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いて、大腸菌の生菌数を測定することにより評価した。抗菌剤層には、予め紫外線強度が1mW/cm2となるように(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)、ブラックライトを用いて紫外線を16時間照射し、これを抗菌性活性測定用試料とした。
次に、この抗菌性活性測定用試料を用いて、日本工業規格JIS R 1702:2006「ファインセラミックス−光照射下での光触媒抗菌加工製品の抗菌性試験方法・抗菌効果」10フィルム密着法に基づく方法で行った。すなわち、抗菌剤層に大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)の菌液(生菌数:3.0×105個)を播種し、被覆フィルムを載せて密着させ、これを室温(25±5℃)、暗所もしくは可視光照射下で6時間保存し、試料検体1個当たりの生菌数を測定した。
未塗工のポリエチレンフィルムについても同様の操作を行い、生菌数を測定した。なお、抗菌性活性測定用試料を2つ用いて同時に行い、これら2つの生菌数の平均値で評価を行った。抗菌活性値は以下の式で求めた。抗菌活性値が2以上であれば、一般的に抗菌活性を発現しているといえる。
抗菌活性値=log(N0/N)
0:未塗工のポリエチレンフィルムで評価を6時間行った後の生菌数の平均値
N:抗菌剤塗工フィルムで評価を6時間行った後の生菌数の平均値
可視光の照射は、市販の白色蛍光灯を光源とし、アクリル樹脂板(日東樹脂工業(株)製「N169」)を通して、被覆フィルムを載せた抗菌剤層の上から、蛍光灯に含まれる可視光のみが照射されるようにして行った。照射は、抗菌剤層近傍で500ルクス(トプコン社製照度計「ILLUMINACE METER IM−3」で測定)となるように行った。可視光照射6時間後の生菌数が少ないものほど、大腸菌の抗菌性、すなわち光触媒活性が高いと言える。
(実施例1)
樹脂基材としてPETフィルム(厚み100μm)に、下地層形成用コート液(日本曹達(株)製、商品名:NRC−350A)をバーコーター(3番)で塗布し、40℃で1分間乾燥して、フィルムの上に下地層を形成した。
次いで、平均粒子径24nmの非晶質酸化ジルコニウムゾル(濃度10質量%、商品名:ZSL−10T、第一稀元素化学工業(株)製)に、2−プロパノール、酢酸エチルおよび水を添加して混合し、抗菌剤分散液を得た。この抗菌剤分散液には、2質量%の非晶質酸化ジルコニウム粒子、20質量%の2−プロパノール、20質量%の酢酸エチル、および58質量%の水が含まれる。この抗菌剤分散液を、上記下地層に箱型アプリケーター(液厚21μm)を用いて塗布し、40℃で1分間乾燥して抗菌剤塗工フィルムを得た。
このフィルムの抗菌剤層の密着性を評価したところ、抗菌剤層の剥がれは見られなかった。
このフィルムの抗菌活性を評価したところ、暗所で6時間保存したときの生菌数は2.1×103個であった。また、未塗工のポリエチレンフィルムで同様の操作を行うと、生菌数は6.5×105個であった。これらの値から、抗菌活性値は2.5(log6.5×105/2.1×103)となる。結果を表1に示す。
(比較例1)
抗菌剤分散液を塗工しなかったこと以外は、実施例1と同様の手順で抗菌活性を評価した。暗所で6時間保存したときの生菌数は1.5×105個であった。また、未塗工のポリエチレンフィルムで同様の操作を行うと、生菌数は6.5×105個であった。これらの値から、抗菌活性値は0.6(log6.5×105/1.5×105)となる。結果を表1に示す。
実施例1と比較例1とを比べると、非晶質酸化ジルコニウム粒子を塗工した実施例1の方が、大腸菌に対して高い抗菌性能を発揮することがわかる。
次に、光触媒分散液を併用した場合の効果を検証した。
(製造例1)
酸化タングステン粒子と分散媒としての水とを混合して混合物を得た。湿式媒体撹拌ミルを用いてこの混合物に分散処理を施し、濃度42質量%の酸化タングステン粒子分散液を得た。
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の平均粒子径は180nmであった。また、この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、得られた固形分のBET比表面積は30m2/gであった。なお、分散処理前の混合物についても同様に真空乾燥して固形分を得、分散処理前の混合物の固形分と分散処理後の固形分について、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、同じピーク形状であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。得られた分散液を20℃で24時間保管しても、保管中に固液分離は見られなかった。
この酸化タングステン粒子分散液にヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液をヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子100質量部に対して0.12質量部となるように加え、さらに分散液全体に対するメタノールの濃度が1.0質量%となるようにメタノールを添加した。その後、撹拌しながら低圧水銀灯を照射することにより、光電着法により酸化タングステン粒子の表面に白金粒子を担持し、白金担持酸化タングステン粒子を光触媒粒子とする光触媒分散液を得た。
この光触媒分散液を20℃で24時間保管しても、保管後に固液分離は見られなかった。また、この分散液中の固形分濃度は26質量%であった。
(製造例2)
製造例1で得た光触媒分散液を撹拌しながら、そこに実施例1で使用した非晶質酸化ジルコニウムゾル(ZSL−10T)と水と2−プロパノールとを添加して、抗菌剤分散液を得た。この抗菌剤分散液には、2質量%の非晶質酸化ジルコニウム粒子、8質量%の白金担持酸化タングステン粒子、40質量%の2−プロパノール、および50質量%の水が含まれる。
(実施例2)
実施例1で使用した抗菌剤分散液の代わりに、製造例2で得られた抗菌剤分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で抗菌剤性フィルムを得た。このフィルムの抗菌剤層の密着性を評価したところ、抗菌剤層の剥がれは見られなかった。このフィルムの抗菌活性を評価したところ、暗所で6時間保存したときの生菌数は1.8×102個であった。また、未塗工のポリエチレンフィルムで同様の操作を行うと、生菌数は5.5×105個であった。これらの値から、抗菌活性値は3.5(log5.5×105/1.8×102)となる。結果を表1に示す。
次いで、可視光照射を6時間行ったときの生菌数は10個未満であった。また、未塗工のポリエチレンフィルムで同様の操作を行うと、生菌数は5.8×105個であった。これらの値から、抗菌活性値は4.8(log5.8×105/10)となる。結果を表1に示す。なお、抗菌活性値の算出においては、可視光照射6時間後の生菌数を10個とした。
(比較例2)
高純度ケイ酸エチルと2−プロパノールとを混合し、そこに水を添加してバインダーを調製した。バインダー中の成分の質量比は、2:8.6:1(高純度ケイ酸エチル:2−プロパノール:水)であった。次いで、水を加えて濃度を24質量%に調整した製造例1の光触媒分散液9.8gに、バインダー6gと2−プロパノール1.6gとを混合して光触媒含有塗工液を得た。この光触媒含有塗工液には、13.5質量%の白金担持酸化タングステン粒子、1.5質量%の高純度ケイ酸エチル(SiO2換算)、35質量%の2−プロパノール、4.6質量%のエタノール(高純度ケイ酸エチル由来)、および45.4質量%の水が含まれる。
製造例2で得られた抗菌剤分散液の代わりに、上記の光触媒含有塗工液を用いたこと以外は、実施例2と同様の手順で抗菌剤性フィルムを得た。このフィルムの抗菌剤層(光触媒層)の密着性を評価したところ、抗菌剤層(光触媒層)の剥がれは見られなかった。このフィルムの抗菌活性を評価したところ、暗所で6時間保存したときの生菌数は3.0×105個であった。また、未塗工のポリエチレンフィルムで同様の操作を行うと、生菌数は5.5×105個であった。これらの値から、抗菌活性値は0.3(log5.5×105/3.0×105)となる。結果を表1に示す。
次いで、可視光照射を6時間行ったときの生菌数は10個未満であった。また、未塗工のポリエチレンフィルムで同様の操作を行うと、生菌数は5.8×105個であった。これらの値から、抗菌活性値は4.8(log5.8×105/10)となる。結果を表1に示す。なお、抗菌活性値の算出においては、可視光照射6時間後の生菌数を10個とした。
実施例2と比較例2とを比べると、可視光照射下での抗菌性能はほぼ同等である。しかし、暗所所での抗菌性能は、非晶質酸化ジルコニウム粒子を含む実施例2の方が著しく高い抗菌性能を発揮することがわかる。
Figure 2013216596
(参考例1)
天井を構成する天井材の表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、天井材の表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
なお、病原菌は、大腸菌、炭疽菌、結核菌、コレラ菌、ジフテリア菌、破傷風菌、ペスト菌、赤痢菌、ボツリヌス菌、多剤耐性アシネトバクター、多剤耐性緑膿菌、NDM−1産生多剤耐性菌、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、レジオネラ菌などであり、以下の参考例2〜9も同様である。
(参考例2)
屋内の壁面に施工されたタイルの表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、タイルの表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
(参考例3)
窓ガラスの屋内側の表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、窓ガラスの屋内側の表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
(参考例4)
壁紙の表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、壁紙の表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
(参考例5)
屋内の床面の表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、床面の表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
(参考例6)
自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車の天井材などの自動車内装材の表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、自動車内装材の表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
(参考例7)
エアコンの表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、エアコンの表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
(参考例8)
冷蔵庫の表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、冷蔵庫の表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。
(参考例9)
タッチパネル、電車のつり革、デスクマット、テーブルクロス、エレベーターのボタン、階段や廊下の手摺、カーテンなど不特定多数の人が接触する基材表面に、実施例1で用いた抗菌剤分散液または製造例2の抗菌剤分散液を塗布して抗菌剤層を形成し、抗菌剤層を形成してから約6時間後、これらの基材表面に存在する病原菌を調べると、実施例1および2の結果から、99%以上が死滅していると推察される。

Claims (10)

  1. 10〜100nmの平均粒子径を有する酸化ジルコニウム粒子を含有する、抗菌剤。
  2. 前記酸化ジルコニウム粒子が非晶質である、請求項1に記載の抗菌剤。
  3. 前記酸化ジルコニウム粒子が、10〜100質量%の割合で含有される、請求項1または2に記載の抗菌剤。
  4. 光触媒粒子をさらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌剤。
  5. 前記光触媒粒子の表面に、貴金属または貴金属前駆体が担持されている、請求項4に記載の抗菌剤。
  6. 前記貴金属が、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、IrおよびRhからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の抗菌剤。
  7. 前記光触媒粒子が、酸化タングステン粒子である、請求項4〜6のいずれかに記載の抗菌剤。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌剤を含有する、抗菌剤分散液。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌剤を含有する抗菌剤層が表面に形成された、抗菌加工製品。
  10. 請求項8の抗菌剤分散液を基材表面に塗工して、抗菌剤層を形成する工程を含む、抗菌加工製品の製造方法。
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