JP2014012881A - チタン板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な強度と熱交換器用のプレートにプレス加工可能な高成形性とを兼ね備えたチタン板を提供する。
【解決手段】α相の結晶粒組織を含有し、工業用純チタンからなるチタン板であって、α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差60°〜70°の範囲における最大ピークが0.010以上0.040以下の割合であることを特徴とする。方位差60°〜70°である双晶粒界が多く存在することにより、強度を有しつつ成形性が向上する。
【選択図】図2

Description

本発明は、工業用純チタンからなるチタン板に関し、特に成形加工を施されてプレート式熱交換器用プレートとして使用されるチタン板およびその製造方法に関する。
一般に、チタン板は、比強度および耐食性に優れているので、化学、電力、食品製造プラント等の熱交換器用部材、カメラボディ、厨房機器等の民生品や、オートバイ、自動車等の輸送機器部材、家電機器等の外装材に使用されている。チタン板は、前記用途の中でも、近年適用が進みつつあるプレート式熱交換器に使用される場合、高い熱交換効率が要求されるため、表面積を増やすべくプレス成形によって波状に加工されて適用されている。そのため、熱交換器用のチタン板は、深い波目を付けるために優れた成形性が必要とされている。
前記の各種用途に多用される純チタン板は、JIS H4600の規格で規定され、Fe,O等の不純物濃度や強度等によってJIS1種、2種、3種等の等級があり、等級が増す程、最低強度が高くなり、用途に応じてそれらの使い分けがなされている。従来は、高い成形性が求められる部材には、強度で劣るものの延性が高いことから、FeやOの濃度が低いJIS1種の純チタン板が用いられていた。しかし、近年は、熱交換器効率の向上に加えて、高強度化・軽量化の要求もますます増大している。その要求に応えるためには、より強度レベルの高いJIS2種(耐力215MPa以上)、あるいはJIS3種の適用が必要になるが、これらの純チタン板の強度レベルになると成形性が劣るため、熱交換器への適用が困難である。また、一般にチタン材料は、Fe,O等の不純物濃度を高くしたり、結晶粒微細化によって高強度化が図られるが、これらの方法では成形性が大きく低下する。
金属材料が成形されるためには塑性変形される必要があり、そのためには転位のすべり変形もしくは双晶変形が必要となる。純チタンは、稠密六方晶(hcp構造)からなるα相の結晶粒組織を主体に構成される。チタンのα相で容易に活動するすべり系は、柱面すべり{10−10}<11−20>であり、その他、底面すべり{0001}<11−20>、錘面すべりがある。また、プレス成形時の変形では、{11−22}<11−23>の双晶が活動できる。しかしながら、純チタンは、bcc構造の鉄鋼材料やfcc構造のアルミニウムに比べて活動すべり系の数が少なく、また、複数のすべり系が容易に活動し難いとされ、塑性変形が難しい。このことから、成形性を向上させるためには、複数のすべり系/双晶系を活動させることが重要と考えられる。
そこで、次のような、成形性を向上させたチタン板の技術が提案されている。例えば特許文献1には、最終焼鈍後の集合組織(C軸の角度)および結晶粒径を規定(30μm以上)し、強度と成形性のバランスを向上させたチタン板が提案されている。また、特許文献2には、冷間圧延後に大気焼鈍で結晶粒径を所定の範囲の大きさとし、酸洗と圧下率0.2〜1.0%の軽圧下(スキンパス)圧延を施すことにより、プレス成形性を向上させたチタン板が提案されている。さらに、特許文献3には、最終焼鈍後に圧下率0.7〜5%のスキンパス圧延を施して、集合組織(C軸のずれ角度)を調整して、規定の蓄積ひずみ量とすることにより、プレス成形性を向上させたチタン板が提案されている。
特許第4088183号公報 特許第4584341号公報 特開2011−026649号公報
しかしながら、前記の従来技術には、熱交換器に適用されるためには改善の余地がある。特許文献1にはスキンパス圧延を行うことが記載されていないため、圧延で調質された場合には特性が変化する。一方、特許文献2では、スキンパス圧延における圧下率が低く、強度が不十分である。また、特許文献3は、Fe,Oが比較的高濃度になると冷間圧延時に耳割れを生じ易く、生産性が低下する虞がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、JIS2種相当以上の耐力の高い強度と熱交換器に適用可能な高成形性とを兼ね備えたチタン板およびその製造方法を提供することが課題である。
本発明者らは鋭意研究の結果、チタン材の結晶粒組織における特定の方位関係を満たす、方位差60°〜70°の間に存在する双晶粒界の存在割合が強度と成形性のバランスの増大に寄与することを見出した。さらに、本発明者らは、方位差が82°〜87°の間に存在する双晶粒界が、前記の強度と成形性のバランスを向上させる効果を低下させることを実験的に見出した。
すなわち、本発明に係るチタン板は、α相の結晶粒組織を含有し、工業用純チタンからなり、前記α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差60°〜70°の範囲における最大ピークが0.010以上0.040以下の割合であることを特徴とする。さらに、本発明に係るチタン板は、前記α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差82°〜87°の範囲における最大ピークが0.010未満の割合であることが好ましい。
かかる構成のチタン板は、α相の結晶粒界に特定の方位差を多く含むことで、十分な強度を有しつつ、成形性が向上し、さらに別の特定の方位差を制限することで、強度と成形性のバランスが損なわれない。
さらに、本発明に係るチタン板は、前記α相の平均結晶粒径が10μm以上120μm以下であることが好ましい。
かかる構成により、チタン板は、前記のα相の結晶粒界の方位差分布を得易くなる。
また、本発明に係るチタン板は、Fe:0.020〜0.120質量%、O:0.030〜0.160質量%を含有し、残部がチタンおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
かかる構成により、チタン板は、強度がいっそう向上する。
本発明に係るチタン板は、成形加工を施されてプレート式熱交換器用プレートとして使用される。
かかる構成により、チタン板は深い波目を付けて表面積を多くして、熱交換効率に優れた熱交換器のプレートとすることができる。
本発明に係るチタン板の製造方法は、最終冷間圧延の後に、α相結晶粒が平均粒径10μm以上120μmの範囲になるように、600〜890℃で焼鈍し、40℃/s以上で200℃以下まで冷却する最終焼鈍工程を行うことを特徴とする。また、本発明に係るチタン板の製造方法は、前記最終焼鈍工程の後に、1パスの圧下率0.5%以上かつ総圧下率5%以下で圧延する軽圧下圧延工程をさらに行うことが好ましく、さらに、前記軽圧下圧延工程を、前記最終冷間圧延における圧延方向に平行に圧延することが好ましい。
かかる手順により、最終焼鈍で結晶粒を適度な大きさとすることで、その後の冷却時等に双晶変形が起き易く、さらに急速に冷却することによりひずみを十分に導入して、α相の結晶粒界に特定の方位差を多く含んだチタン板が得られる。さらに所定の圧延方向に、また適度な圧下率で圧延することで予ひずみを付与して、強度と成形性をいっそう向上させたチタン板が得られる。
本発明に係るチタン板によれば、JIS2種相当以上の耐力の高い強度を有しつつ、プレート式熱交換器用プレートにプレス加工可能な高成形性を備えることができる。また、本発明に係るチタン板の製造方法によれば、前記効果を有するチタン板を安定して得ることができる。
チタン板におけるTi六方晶の(0001)の配向度合いを説明するための概念図である。 本発明に係る実施例および比較例の結晶粒間の方位差分布を表すグラフであり、(a)は試験材No.2,10の方位差60°〜70°における分布、(b)は試験材No.2,15の方位差82°〜87°における分布である。 実施例でプレス成形性の評価を行うために用いたプレス成形金型を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔チタン板〕
本発明に係るチタン板は、一般的な工業用純チタンが適用される、熱交換器用部材、輸送機器部材、家電機器等の外装材に用いることができ、特に強度と共に高い成形性が要求されるプレート式熱交換器用プレートに好適である。
本発明に係るチタン板は、α相の結晶粒組織を含有し、例えばJIS H 4600に規定される1種の純チタンのような工業用純チタンからなり、α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差60°〜70°の範囲における最大ピークが0.010以上0.040以下の割合である。
(α相の結晶粒界の方位差分布)
圧延プロセスによって製造される従来のチタン製品では、図1に示すように、C軸((0001)軸)が圧延面に垂直な方向(ND)に配向し、さらに圧延面法線から圧延幅方向(TD)へ両側にそれぞれ約30°〜40°に傾いた位置にそれぞれ分布しており、その方向に集積する傾向がある。したがって、チタン材は、同様な方向に方位が揃った結晶粒組織の集合であるため、結晶粒間の方位差が小さい(15°以内の)小傾角粒界が多く、それ以上の方位差となる結晶粒間は、C軸が圧延面法線から圧延幅方向へ両側にそれぞれ傾いた位置に集積していることに対応した方位差となる結晶粒間の割合が突出して比較的多く存在する組織からなり、その他の方位差となる結晶粒間は存在割合がほぼ均一に0.01(1%)未満である。小傾角粒界は、塑性変形の際に、転位の移動の抵抗とはなり難いため、耐力の増大には寄与し難い。小傾角粒界の存在割合は、O(酸素)含有量増大や結晶粒微細化によっては大きく変化しない。チタン材は、O含有量が増大すると、本質的にすべり系の活動が生じ難くなると考えられ、転位の移動自体に対する抵抗増大で耐力が増大するが、結果的に変形能が低下して、成形性が劣化する。また、チタン材は、結晶粒が微細化すると、小傾角粒界以外の大傾角粒界による転位の移動の抵抗力により、耐力が増大する。一方で、このようなチタン材は、粒径が小さいために粒内を転位が移動して粒界で止められるまでの移動距離が小さく、粒界に堆積する転位量が減少するため、隣り合う結晶粒の2次すべり系が効率的に活性化せず、均一な2次すべり系が働き難いため、均一な塑性変形が起こり難いと考えられる。さらに通常の大傾角粒界は、粒界エネルギーが高く粒界強度が低いため、ひずみが集中した際のクラック発生、破壊の起点になり易いと想定され、チタン材の成形性を劣化させる。
本発明に係るチタン板は、転位の移動の抵抗となる結晶粒界のうち、方位差が60°〜70°の範囲の関係を有する双晶粒界を他の方位差の粒界に対して高頻度にしたものとする。これにより、塑性変形時の転位の抵抗となると共に、隣り合う結晶粒の2次すべり系を効率的に活性化し、均一に2次すべり系が働き易くなることで、チタン板は塑性変形し易くなると考えられる。さらに、双晶粒界は粒界エネルギーが低く粒界強度が高いために、そのような粒界では粒界破断が起こり難くなり、チタン板は、強度の増大に対する延性の劣化が抑制され、強度と成形性のバランスが向上すると考えられる。但し、双晶粒界の頻度が高過ぎると、結晶粒径が小さくなることにつながり、微細粒で認められる、均一な塑性変形が起こり難い現象が顕著になり、却って成形性を劣化させることになるため、双晶粒界の頻度は以下の範囲とする。
α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差60°〜70°の範囲における最大ピークが、0.010未満の割合では、双晶粒界の頻度が不足して強度向上効果が得られないため、0.010以上とし、0.012以上が好ましい。一方、前記範囲における最大ピークが0.040を超える割合になると、強度が過大となって延性が低下し、また結晶粒が微細化して均一な塑性変形が起こり難くなって、強度と成形性のバランスが低下するため、0.040以下とし、0.025以下が好ましい。このようなα相組織は、後記するように、チタン板の製造において、最終焼鈍時の冷却速度を制御すること、または最終焼鈍の後に予ひずみを付与することで得られる。
一方、同じく大傾角粒界であっても、方位差が82°〜87°の範囲の関係を有する双晶粒界は、前記の方位差が60°〜70°の範囲の関係を有する双晶粒界とは異なり、強度を低下させる。この理由は十分には明らかでないが、双晶の種類によって、隣り合う結晶粒の方位差が変化することにより、2次すべり系の活性化の程度が変化しているか、あるいは双晶粒界の頻度の増大による微細粒化が顕著に影響し易いと考えられる。具体的には、α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差82〜87°の範囲における最大ピークが、0.010以上の割合では、強度と成形性のバランスの向上効果が十分に得られないため、0.010未満が好ましく、0.008以下がより好ましい。このようなα相組織は、後記するように、チタン板の製造において、最終焼鈍の後の予ひずみの付与の方向を制御することで得られる。
α相の結晶粒界の方位差分布は、チタン板の圧延面に平行な面に、走査電子顕微鏡(SEM)で電子線を走査しながら電子後方散乱回折(Electron Backscatter Diffraction:EBSD)法にてEBSDパターンを測定、解析することで得られる。
本発明に係るチタン板は、α相の平均結晶粒径が10μm以上120μm以下であることが好ましい。また、本発明に係るチタン板は、Fe:0.020〜0.120質量%、O:0.030〜0.160質量%を含有し、残部がチタンおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
(α相の平均結晶粒径:10μm以上120μm以下)
チタン板は、平均結晶粒径が10μm未満では、ひずみ導入時に双晶変形が起こり難くなり、方位差60〜70°の範囲における最大ピークが十分に得られない。したがって、本発明に係るチタン板は、α相の平均結晶粒径が10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。一方、チタン板は、α相の結晶粒径が大きくなると、肌荒れが発生し易くなる。したがって、本発明に係るチタン板は、α相の平均結晶粒径が120μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。α相の結晶粒径は、円相当径であり、SEM等の公知の手段で測定して、平均を算出される。α相の結晶粒径は、チタン板のFe含有量の調整や、後記するように、製造において最終焼鈍条件等を制御することで得られる。
(Fe:0.020〜0.120質量%、O:0.030〜0.160質量%)
チタン板は、Fe,Oの含有量が少ないと強度が低下する。Fe,O不足による強度不足を補おうとすると、導入すべきひずみ量が大きくなり、結果として成形性が低下する。そのため、Fe含有量は0.020質量%以上が好ましく、0.025質量%以上がより好ましく、0.030質量%以上がさらに好ましい。また、O含有量は0.030質量%以上が好ましく、0.050質量%以上がより好ましく、0.070質量%以上がさらに好ましい。一方、Fe含有量が多くなると、インゴットの偏析が大きくなって生産性が低下する。また、β相の析出量が増大することによって結晶粒が微細化するため、方位差が60°〜70°の範囲における最大ピークが不足し、成形性が低下する。そのため、Fe含有量は0.120質量%以下が好ましく、0.080質量%以下がより好ましく、0.070質量%以下がさらに好ましい。また、O含有量が多くなると、チタン板が脆くなって冷間圧延時の割れが生じ易くなり、生産性が低下し、また成形性が低下する。そのため、O含有量は0.160質量%以下が好ましく、0.140質量%以下がより好ましく、0.125質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係るチタン板は、Fe,O、およびTi(チタン)以外に、C,H,N,Si,Cr,Ni等を不可避的不純物として含有してもよい。C:0.015質量%以下、N:0.02質量%以下、H:0.005質量%以下、その他の元素:各0.1質量%以下であれば、本発明の効果を阻害するものではなく許容される。
〔チタン板の製造方法〕
本発明に係るチタン板は、従来のチタン板と同様に、公知の方法にて、インゴットを分塊圧延し、熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍を行って製造される。冷間圧延工程では、素材の冷間圧延性(耳割れの発生し易さ、変形荷重等)に応じて適切な圧下率と焼鈍条件を選択し、冷間圧延と中間焼鈍が繰り返される。最終焼鈍工程は、冷間圧延で硬化した素材(チタン)を再結晶させて成形性を付与するために行う。そのため、最終焼鈍工程の直前に実施する冷間圧延(最終冷間圧延)は、再結晶するために必要な加工率で、具体的には50%以上の圧下率で行う。また、焼鈍(中間焼鈍、最終焼鈍)後にチタン板表面にスケールが付着する場合は、次工程(中間焼鈍であれば後続の冷間圧延)の前に、スケール除去工程として、例えばソルト熱処理、酸洗処理等を行う。
本発明に係るチタン板は、最終冷間圧延工程および最終焼鈍工程を所定の条件で行うことにより、α相の結晶粒組織を前記にて規定されたものとすることができる。以下、本発明に係るチタン板の製造方法における最終冷間圧延工程および最終焼鈍工程について説明する。
(最終冷間圧延)
本発明に係るチタン板は、最終焼鈍工程の直前に実施する冷間圧延(最終冷間圧延)において、冷間圧延率を調整して、α相の平均結晶粒径を制御することが好ましい。最終冷間圧延の圧下率は50%以上88%以下が好ましい。圧下率が50%未満では、その後の最終焼鈍において条件を調整しても、前記したように再結晶し難く、また、最終焼鈍後において再結晶粒径が粗大化し易く、α相の結晶粒径を120μm以下に制御することが困難となる。一方、最終冷間圧延の圧下率が88%を超えると、冷延時の耳割れが起こり易くなり、歩留りが低下する等の工業的な問題が発生する。また、最終焼鈍後において再結晶粒径が微細化し易くなり、α相の結晶粒径が10μm未満となる。
(最終焼鈍)
本発明に係るチタン板は、最終焼鈍において、温度および時間を調整して、α相の平均結晶粒径を制御することが好ましい。そのために、焼鈍温度は600〜890℃とする。温度が600℃未満では、再結晶が進行せず、結晶粒径も小さいため、十分に双晶が導入されない。一方、温度が890℃を超えると、β相の分率が増大してα相粒の粒成長が阻害され、結晶粒径が微細化する。さらに、温度がβ変態点温度を超えると、冷却後にα相粒が針状組織となって、顕著に微細な組織となり、プレス成形性が阻害される。保持時間は、一例として連続焼鈍炉であれば15分間以内とすることが好ましく、さらに焼鈍温度に応じて設定される。すなわち焼鈍温度が高い程、再結晶の進行が速く、結晶粒径も急速に大きくなるため、短時間とする。また、前記したように、チタン板のFe含有量が多いと結晶粒が微細化する傾向があるので、最終焼鈍は高温で、また長時間とすることが好ましい。
さらに本発明に係るチタン板は、最終焼鈍後の冷却速度を速くする。これにより、チタン板は、冷却時のひずみによって、双晶が導入されてα相の結晶粒界の方位差分布が前記の規定範囲となる。通常の塑性加工(引張、圧延等)によって導入されるひずみは、異方性があるために、そのひずみモードで発生する双晶も異方性を持ち、結晶粒分布内で不均一になり易い。それに対して、冷却時のひずみは、面内等方的に発生し易くなるために異方性が低減し、導入される双晶も結晶粒分布内で均一になり易い。したがって、チタン板は、冷却時にひずみを導入されることにより、強度と成形性のバランスが向上する効果が顕著に得られる。具体的には、前記条件の最終焼鈍後に、40℃/s以上で冷却することが好ましく、60℃/s以上がより好ましく、100℃/s以上がさらに好ましい。前記の冷却速度は、200℃以下になるまでとし、さらなる冷却における速度は特に規定しない。このような急速冷却を行うために、最終焼鈍は連続炉で行うことが好ましい。
最終焼鈍のその他の条件は特に規定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、雰囲気は、大気、真空、Ar等の不活性ガス、還元性ガスのいずれでもよい。なお、特に大気雰囲気で焼鈍(大気焼鈍)した場合は、前記したように、酸洗処理等のスケール除去工程を行う。
(スキンパス圧延)
さらに、本発明に係るチタン板は、従来のチタン板と同様に、最終焼鈍後に引張(ストレッチ)や圧延等を行って、平坦性を高くするだけでなく、ひずみを付与して強度と成形性を向上させてもよい。冷却時に導入されるひずみ量には上限があるため、最終焼鈍後にストレッチや圧延等を行ってひずみを付与することが好ましく、これにより、チタン板は、さらに強度と成形性のバランスの向上効果が得られる。
ここで、最終焼鈍後の引張や圧延によるひずみを付与する方向を、最終焼鈍の直前の圧延すなわち最終冷間圧延における圧延方向と平行にすることによって、方位差が60°〜70°の範囲の関係を有する双晶粒界のみの頻度が増大する。一方、このひずみを付与する方向が最終冷間圧延における圧延方向に垂直(圧延幅方向)であると、方位差が82°〜87°の範囲の関係を有する双晶粒界の頻度も増大する。したがって、予ひずみを付与する場合には、その付与方向は最終冷間圧延における圧延方向と同じ方向が好ましい。
最終焼鈍後に付与する総ひずみ量は、強度と成形性を向上させるために0.5%以上が好ましい。一方、ひずみ量が5%を超えると、強度が過大となって成形性が低下する。ひずみ付与には、一例として軽圧下圧延(スキンパス圧延)が挙げられ、この場合、総圧下率を5%以下とする。また、スキンパス圧延の1回(1パス)あたりのひずみ量が小さいと、圧延板の板厚中心部まで本発明で規定される方位差分布の結晶組織が得られ難い。したがって、スキンパス圧延における1パスの圧下率は0.5%以上とすることが好ましく、0.8%以上がさらに好ましい。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〔試験体作製〕
表1に示すFe,O組成の純チタン(JIS H4600)熱延板(板厚4.0mm)に、通常の冷間圧延および中間焼鈍をした後、表1に示す圧下率で最終冷間圧延をして、大気雰囲気下で表1に示す条件の最終焼鈍、および酸洗工程により、板厚0.5mmの冷間圧延板を得た。この冷間圧延板に、さらに表1に示す方向(予ひずみ方向)および圧下率の圧延によって軽圧下を付与して試験材とした。なお、表1に示す予ひずみの付与方向(最終焼鈍後の圧延方向)は、最終冷間圧延における圧延方向に対する方向で表し、RD:圧延方向、TD:圧延幅方向を示す。また、表1において予ひずみの圧下率0の試験体は、最終焼鈍後の圧延をしていない。
(α相の平均結晶粒径の測定)
試験材の表面(板面)を研磨して、表層部、板厚1/4部、および板厚中心部のそれぞれの圧延面において、0.5mm角(圧延方向、板幅方向に各0.5mm)の領域を、EBSDによる組織観察を行った。EBSD測定は、FE−SEM(Carl-Zeiss製、ULTRA55)およびEBSD検出器(Oxford Instruments製、NordlysII)を使用した。測定データについて、EBSDデータ解析ソフトChannel 5のプログラム:Tangoを用いて解析した。Tangoにて、Boundary ComponentとしてGrain Boundariesを選択し、方位差5°以上の境界を結晶粒界と設定して、Grain Area Determinationの操作を行って、各結晶粒の円相当直径およびその平均を算出した。得られた平均値を表1に示す。
(α相の結晶粒界の方位差分布の測定)
平均結晶粒径の測定におけるEBSD測定結果より、隣接する結晶粒間の方位差の分布を解析し、方位差60°〜70°、82°〜87°の各範囲における最大頻度を求めた。詳しくは、Tangoにて、Boundary ComponentとしてGrain Boundariesを選択し、Legend機能を用いて、方位差0°から94.5°まで0.5°刻みで頻度を求めた。方位差60°〜70°、82°〜87°の各範囲における頻度を表1に示す。なお、これらの範囲においてピークが観察される場合(双晶粒界の存在に対応)は、そのピーク強度を、ピークが観察されない場合(双晶粒界が存在しない)は、前記範囲における最大値を測定した。また、試験材No.2,10の結晶粒間の方位差60°〜70°における分布を図2(a)に、試験材No.2,15の結晶粒間の方位差82°〜87°における分布を図2(b)に、それぞれ示す。
〔評価〕
(強度)
試験材から、試験材の圧延方向が荷重軸と一致する方向にJISZ2201に規定される13号試験片を採取し、室温でJIS H4600に基づいて引張試験を実施して0.2%耐力(YS)を測定し、表1に示す。合格基準は0.2%耐力が215MPa以上とした。
(成形性)
試験材に対してプレート式熱交換器の熱交換(プレート)部分を模擬して、図3に示す形状の成形金型を用いて80tプレス機によってプレス成形を行い、成形性を評価した。成形金型は、100mm×100mmの成形部に、最大高さ6.5mmの稜線部を17mmピッチで4本有し、前記稜線部は頂点にR=2.5mmのR形状に形成されている。プレス成形は、試験材の両面に厚さ0.05mmのポリシートを敷き、圧延方向が図3(a)における上下方向と一致するように下側の金型の上に試験材を配置し、フランジ部を板押さえで拘束して、プレス速度1mm/秒で金型を押し込んだ。0.1mm刻みで押し込み、試験材に割れが発生しない最大の押込み深さ量(mm)Yを求めた。
前記引張試験で測定した圧延方向における0.2%耐力(MPa)YSと、押込み深さ量Yに基づいて、式(1)で表される成形性指標(mm)Fが正の値(F>0)となるものを合格とした。押込み深さ量および成形性指標Fを表1に示す。
F=Y−(9.844−0.016YS) ・・・(1)
Figure 2014012881
表1に示すように、試験材No.1〜9,15,16は、α相の結晶粒界の方位差分布が本発明の範囲内であり、図2(a)に示すように方位差60°〜70°において存在割合が突出した結晶粒間すなわち双晶粒界が存在するので、十分な強度と成形性を有していた。特に試験体No.1〜9は、方位差82°〜87°の分布が抑えられていたため、方位差60°〜70°の双晶粒界によって強度と成形性のバランスが十分に得られた。さらに、試験体No.1〜3,5〜9は、最終焼鈍後に、最終冷間圧延における圧延方向と同じ方向に圧延して予ひずみを付与したため、強度と成形性がいっそう向上した。なお、試験材No.9は、最終焼鈍時間が長く、結晶粒が大きくなったため、表面に肌荒れを生じた。
一方、試験体No.15,16は、最終焼鈍後の圧延による予ひずみの付与の方向を、試験体No.2,8が最終冷間圧延における圧延方向と同じ方向であるのに対して、直交する方向(圧延幅方向)としたものである。その結果、方位差60°〜70°の分布が試験体No.2,8と同程度に増大したものの、同時に、図2(b)に示すように方位差82°〜87°の分布も増大したため、試験体No.2,8と比較して成形性が低下した。
これらに対して、試験体No.10〜13は、方位差60°〜70°の分布が少なく、双晶粒界が不足したため、強度が不足して成形性とのバランスが不十分であった。試験体No.10,11は、最終焼鈍後の冷却が一般的な冷却速度で遅かったために冷却時にひずみが十分に導入されず、さらに試験体No.10は、その後の圧延もしなかったために、図2に示すように方位差60°〜70°の分布が試験材No.2と比較して少なかった。また、試験体No.12は最終焼鈍温度が低く、試験体No.13は最終焼鈍の温度に対する保持時間が不十分であったために、それぞれ再結晶が十分に進行せず、結晶粒が小さく、その後の急速冷却や軽圧下によっても十分に双晶が導入されなかった。さらに試験体No.12は、強度が特に不足した。一方、試験体No.14は、最終焼鈍後の圧下が過剰で方位差60°〜70°の分布が過大となり、過剰な双晶粒界により強度が過大となって延性が低下して、成形性が低下した。

Claims (8)

  1. α相の結晶粒組織を含有し、工業用純チタンからなるチタン板であって、
    前記α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差60°〜70°の範囲における最大ピークが0.010以上0.040以下の割合であることを特徴とするチタン板。
  2. 前記α相の結晶粒界の方位差分布において、方位差82°〜87°の範囲における最大ピークが0.010未満の割合であることを特徴とする請求項1に記載のチタン板。
  3. 前記α相の平均結晶粒径が10μm以上120μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン板。
  4. Fe:0.020〜0.120質量%、O:0.030〜0.160質量%を含有し、残部がチタンおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のチタン板。
  5. 成形加工を施されてプレート式熱交換器用プレートとして使用されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のチタン板。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のチタン板を製造する方法であって、
    最終冷間圧延の後に、α相結晶粒が平均粒径10μm以上120μmの範囲になるように、600〜890℃で焼鈍し、40℃/s以上で200℃以下まで冷却する最終焼鈍工程を行うことを特徴とするチタン板製造方法。
  7. 前記最終焼鈍工程の後に、1パスの圧下率0.5%以上かつ総圧下率5%以下で圧延する軽圧下圧延工程をさらに行うことを特徴とする請求項6に記載のチタン板製造方法。
  8. 前記軽圧下圧延工程を、前記最終冷間圧延における圧延方向に平行に圧延することを特徴とする請求項7に記載のチタン板製造方法。
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