JP2014184631A - 流路ユニット、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、流路ユニットの製造方法 - Google Patents

流路ユニット、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、流路ユニットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】流路ユニットU0は、変形可能な振動板11と、壁の一部である振動板11の変形により液体Fに圧力が加わる圧力室21と、を備える。振動板11は、セラミック製の基材12と、該基材12の内部12cにある隙間CL1を充填し液体Fの通過を抑制する充填剤14と、を有する。液体噴射ヘッド1は、流路ユニットU0と、圧力室21に連通するノズル62と、を備える。液体噴射装置200は、液体噴射ヘッド1を搭載している。充填剤14は、光硬化樹脂、溶液F14の水分が吸水剤F13に吸収されたときに残留する物質、変性剤F15によって溶液F16から生成される固まり、熱硬化樹脂、の中から選ばれる一種以上の物質を含んでいてもよく、配位数6以上の原子を含んでいてもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、流路ユニット、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、流路ユニットの製造方法に関する。
インクジェットヘッド等の液体噴射ヘッドを構成する流路ユニットとして、例えば、液体流路用の空所を形成したグリーンシートと振動板用のグリーンシートとを一体焼成したものが知られている(特許文献1参照。)。液体流路には、例えば、壁の一部である振動板の変形によりインク等の液体に圧力が加わる圧力室、この圧力室への液体の供給路、及び、圧力室からノズルに連通する連通路が含まれる。液体噴射ヘッドは、前述の流路基板とノズルプレート等の接合基板とを接合することにより形成される。
特許第3144948号公報
近年のノズルは、印刷物等の出力物の高画質化及び高速化に向けて高密度化が進んでいる。また、この高密度化と相反する低コスト化も要求されている。ノズルを高密度化するには、ノズルのピッチを狭くする必要がある。ノズルピッチを狭くするには、圧力室の幅を狭くする必要がある。圧力室の幅が狭くなると、インク滴を吐出するための振動板の変位量が低下する。この変位量の低下を抑えるためには、振動板を薄くする必要がある。しかし、セラミック製の振動板を薄くすると、この薄い振動板から液の染み出しが発生することが判った。
上述した液漏れの問題は、液体噴射ヘッドに限らず、種々の流路ユニットにも同様に存在する。
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術を提供することにある。
本発明の態様の一つとして、本発明は、変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットであって、前記振動板は、セラミック製の基材と、該基材の内部にある隙間を充填し液体の通過を抑制する充填剤と、を有する態様を有する。
また、本発明は、前記流路ユニットと、前記圧力室に連通するノズルと、を備える、インクジェットヘッド等の液体噴射ヘッドの態様を有する。
更に、本発明は、前記液体噴射ヘッドを搭載した、インクジェットプリンター等の液体噴射装置の態様を有する。
更に、本発明は、変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットの製造方法であって、
前記振動板のセラミック製の基材となる部分を少なくとも含む前駆体を加熱して前記基材を形成する形成工程と、
前記基材の内部に形成される隙間に、液体の通過を抑制する充填剤を充填する充填工程と、
を含む、態様を有する。
更に、本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法、液体噴射装置の製造方法、等の態様を有する。
上述した態様において、セラミック製の基材の内部にある隙間に充填された充填剤は圧力室内の液体に由来する液が隙間を通過することを抑制する。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術を提供することができる。
なお、染み出る液は、圧力室内の液体そのものに限られず、溶媒など液体の成分の一部を含む。
本発明は、基材の内部にある隙間の全てが充填剤で充填されることに限定されず、隙間の一部のみ充填剤で充填されることも含まれる。また、本発明は、液体の振動板通過を充填剤が完全に防止することに限定されず、充填剤の無い場合と比べて液体の振動板通過が遅くなることも含まれる。
ところで、充填剤は、セラミック製の基材の内部にある隙間における液体の通過を抑制することができればよく、種々の物質が含まれる。例えば、充填剤にUV(紫外線)硬化樹脂等の光硬化樹脂が含まれてもよい。基材が透光性を有する場合、基材の内部にある隙間に液状の光硬化性樹脂を充填し、基材に光を当てると、基材の内部にある隙間に光硬化樹脂を含む材料が充填された状態になる。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
振動板が多価アルコール等の吸水剤を含む場合、充填剤には溶液の水分が吸水剤に吸収されたときに残留する物質が含まれてもよい。例えば、基材の内部にある隙間に溶液の少なくとも一部の成分が入ると、溶液の水分が吸水剤に吸収され、残留する物質を含む材料が基材の内部にある隙間に充填された状態になる。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
なお、溶液には、ノズルから噴射されるインク等の液体、充填剤を生成するための専用の液体、等が含まれる。
振動板が溶液から固まりを生成する変性剤を含む場合、充填剤には変性剤によって溶液から生成される固まりが含まれてもよい。例えば、基材の内部にある隙間に溶液の少なくとも一部の成分が入ると、変性剤によって溶液から固まりが生成され、この固まりを含む材料が基材の内部にある隙間に充填された状態になる。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
なお、固まりには、溶質と変性剤とが反応して生じた析出成分といった溶液の一部と変性剤とが結合した固まり、ゲルといった溶液全体を含む固まり、等が含まれる。溶液には、ノズルから噴射されるインク等の液体、充填剤を生成するための専用の液体、等が含まれる。
また、充填剤には、熱硬化樹脂が含まれてもよい。例えば、基材の内部にある隙間に液状の熱硬化性樹脂を充填し、基材を加熱すると、基材の内部にある隙間に熱硬化樹脂を含む材料が充填された状態になる。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
更に、充填剤には、配位数6以上の原子が含まれてもよい。充填剤に含まれる原子の配位数が6以上と大きいと、充填剤と基材との結合をより強固にすることができる。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
ところで、振動板の圧力室側となる第一の面側における充填剤の存在比(R1とする。)は、振動板の圧力室とは反対側の第二の面側における充填剤の存在比(R2とする。)よりも少なくてもよい。例えば、基材の内部にある隙間に液状の光硬化性樹脂を充填し、振動板の圧力室とは反対側の第二の面側に光を照射し、振動板の圧力室側で硬化しなかった光硬化性樹脂が抜けると、R1<R2となる。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
逆に、R1>R2でもよい。例えば、振動板が吸水剤を含む場合、圧力室に溶液を供給すると、溶液の水分が吸水剤に吸収されたときに残留する物質の存在比は、R1>R2となる。振動板が溶液から固まりを生成する変性剤を含む場合、この固まりの存在比は、R1>R2となる。従って、本態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
なお、上述した流路ユニットの製造方法の充填工程は、前記基材の環境を減圧すること、前記基材の環境を加圧すること、及び、前記振動板を振動させること、のうちの一つ以上を少なくとも行うことで前記充填剤の元になる液体を前記隙間に浸透させる浸透工程を含んでもよい。本態様は、充填剤の元になる液体の浸透効率を向上させることができる。
流路ユニットU0を模式的に例示する断面図。 液体噴射ヘッド1の構成を模式的に例示する分解斜視図。 (a)は図2のA1−A1の位置における液体噴射ヘッド1の断面図、(b)は図2のA2−A2の位置における液体噴射ヘッド1の断面図。 (a)〜(c)は液体噴射ヘッド1の製造工程を模式的に例示するための断面図。 (a)は液状熱硬化性物質F11を利用する流路ユニット製造工程を例示する図、(b)は流路ユニット製造途中の様子を模式的に例示する断面図。 (a)〜(e)は有機金属化合物を例示する図、(f)は加熱工程後の状態を例示する図。 含浸装置300を模式的に例示する図。 含浸処理を例示する図。 振動板振動処理時の様子を模式的に例示する断面図。 (a)は液状光硬化性樹脂F12を利用する流路ユニット製造工程を例示する図、(b)は流路ユニット製造途中の様子を模式的に例示する断面図、(c)は照射部L1を有する液体噴射装置200を模式的に例示する図、(d)は振動板11における充填剤の濃度分布を例示する図。 (a)は吸水剤F13を利用する流路ユニット製造工程を例示する図、(b)は流路ユニット製造途中の様子を模式的に例示する断面図、(c)は振動板11における充填剤の濃度分布を例示する図。 (a)は溶液F16から固まりを生成する変性剤F15を利用する流路ユニット製造工程を例示する図、(b)は流路ユニット製造途中の様子を模式的に例示する断面図、(c)はゲルで隙間CL1を充填した流路ユニットU0を模式的に例示する断面図。 (a)は液状熱硬化性樹脂F17を利用する流路ユニット製造工程を例示する図、(b)は流路ユニット製造途中の様子を模式的に例示する断面図、(c)は加熱部H1を有する液体噴射装置200を模式的に例示する図。 液体噴射装置200の構成の概略を例示する図。
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
(1)流路ユニット及び液体噴射ヘッドの概要の例示:
まず、流路ユニット及び液体噴射ヘッドの例を説明する。図1は、圧電素子3を設けた流路ユニットU0を模式的に例示する断面図であり、振動板11の要部を拡大して下段に示している。分かり易く示すため、セラミック結晶粒子13を振動板11の厚みと比べて大きくし、隙間CL1を粒子13と比べて大きくしている。むろん、振動板の厚みに対するセラミック結晶粒子の大きさは特に限定されず、粒子に対する隙間の大きさも特に限定されず、粒子の形状も特に限定されない。図1の上段では粒子13にハッチングを付し、図1の下段では充填剤14にハッチングを付している。図2は、流路ユニットU0を含む液体噴射ヘッド1の構成の概略を例示している。図3(a)は、液体噴射ヘッド1を図2のA1−A1の位置での断面図を示している。図3(b)は、液体噴射ヘッド1を図2のA2−A2の位置での断面図を示している。
上述した図中、符号D1は振動板11及び流路ユニットU0の厚み方向を示している。符号D3は、流路ユニットU0の長手方向を示し、例えば、長尺状の圧力室21の併設方向であり、圧力室21の幅方向とされる。符号D4は、流路ユニットU0の短手方向を示し、例えば、圧力室21の長手方向とされる。各方向D1,D3,D4は、互いに直交するものとするが、互いに交わっていれば直交していなくてもよい。分かり易く示すため、各方向D1,D3,D4の拡大率は異なることがあり、圧電素子3の面積率も異なることがあり、各図は整合していないことがある。
なお、本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限定するものではない。従って、圧力室の上以外の位置、例えば、下、左、右、等に振動板が配置されることも、本発明に含まれる。また、方向や位置等の同一、直交、等は、厳密な同一、直交、等のみを意味するのではなく、製造時等に生じる誤差も含む意味である。更に、接すること、及び、接合することは、間に接着剤等の介在するものが有ることと、間に介在するものが無いこととの両方を含む。
図1等に示す流路ユニットU0は、変形可能な振動板11と、壁の一部である振動板11の変形により液体Fに圧力が加わる圧力室21と、を備える。振動板11は、セラミック製の基材12と、該基材12の内部12cにある隙間CL1を充填し液体Fの通過を抑制する充填剤14と、を有する。
ここで、隙間CL1に充填剤が無い場合に圧力室21内に液体Fを満たしたときに振動板11の圧力室21とは反対側の第二の面(表面11a)から染み出る液の流量(単位時間当たりの液の重量)をQc(Qc>0)、隙間CL1に充填剤14を充填した場合に圧力室21内に液体Fを満たしたときに振動板11の第二の面(表面11a)から染み出る液の流量をQs(Qs≧0)とする。液体Fの通過を抑制するとは、Qs<Qcであることを意味する。むろん、Qs=0が理想である。また、基材の内部12cにある隙間CL1の全てが充填剤14で充填されることが理想であるが、隙間CL1の一部のみ充填剤14で充填されてもよい。振動板11の圧力室21側の第一の面(裏面11b)と反対の第二の面(表面11a)との厚み方向D1における中間位置11mの隙間CL1に充填剤14が充填されていると、充填剤14が長期間残り易いので好ましい。すなわち、厚み方向の少なくとも中間位置の隙間に充填剤が充填された振動板を有する流路ユニットは、高耐久性を有する。
図1に示す基材12は、グリーンシート、スラリー、といったセラミック前駆体から焼成されて形成され、多数のセラミック結晶粒子13が含まれている。粒子13同士の間には、僅かな隙間CL1が形成されている。基材12は、振動板11から隙間CL1を除いた部分を指すものとする。すなわち、基材の内部12cには、厚み方向D1へ繋がるような隙間CL1が形成されている。この隙間CL1に充填剤が充填されていない場合、圧力室内のインク等の少なくとも一部の成分が裏面11b(第一の面)から隙間CL1を通って表面(第二の面)11aに染み出してしまう。特に、圧電素子の駆動により基材が振動すると、液が染み出し易くなる。
図3(b)等を参照して、高画質化及び高速化に向けたノズルの高密度化と低コスト化との両立と液漏れについて説明する。ノズル62を高密度化するには、ノズル62のピッチPを狭くする必要がある。ノズルピッチPを狭くするには、圧力室21の幅Wを狭くする必要がある。圧力室の幅Wが狭くなると、液滴を吐出するための振動板の変位量が低下する。この変位量の低下を抑えるためには、振動板厚Tを例えば1〜3μm程度と薄くしなければならない。しかし、セラミック製の振動板を薄くすると、振動板から液の染み出しが発生する。グリーンシート、スラリー、といったセラミック製の振動板の前駆体は、粉体の形状を留めるためにバインダーが多く含まれている。また、粉体の焼成であるために焼成後の結晶粒界部に隙間CL1が発生し易い。このような隙間CL1による「液漏れ」は振動板が厚い場合には、途中で液が止まり、顕在化していなかったので、液漏れは振動板の厚みについて薄く極限を追求するようになって顕在化した問題と言える。
また、振動板を薄くしても液漏れが生じないようにするためSiウエハーを使うと、高価な半導体製造装置を用いる必要があり、液体噴射ヘッドのコストアップとなる。また、圧力室に面した振動板の表面をパラキシリレン系のポリマーでコーティングする方法は、使用中にコーティングが剥がれるという耐久性の問題と、パラキシリレン系のポリマーの付着により接合基板との接着強度が低下するという問題とがある。
更に、染み出る液は、原液インクと染料又は顔料濃度が大きく異なる場合がある。これは、インク中の粒子がフィルタリングされるためである。故に、液漏れを生む隙間CL1は微小な隙間であり抑制が難しく、液漏れを一部抑制できてもばらつきにより液体噴射ヘッドの歩留まりの低下を招く。
そこで、本流路ユニットU0の基材内部12cの隙間CL1には、充填剤14を充填している。この充填剤14は、圧力室21内の液体Fが隙間CL1を厚み方向D1へ通過することを抑制する。従って、本技術は、圧力室21内の液体Fに由来する液の振動板11からの染み出しを抑制することが可能である。
なお、隙間CL1に充填剤14が充填されているか否かは、断面EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピング分析、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、FT−IR(Fourier Transform Infrared)法、等により確認することができる。
図2に例示する液体噴射ヘッド1は、符号10,20,30の各部を有する流路ユニットU0と、圧力室21に連通するノズル62と、を備え、インク(液体)を噴射(吐出)するインクジェット式記録ヘッドである。図14に例示する液体噴射装置200は、前述のような液体噴射ヘッドを搭載したインクジェットプリンター(記録装置)である。
なお、液体噴射ヘッド1は、封止プレート40やリザーバープレート50を必ずしも備える必要は無い。例えば、封止プレートが無い場合にはリザーバープレートを接合基板にすることができ、リザーバープレートも無い場合にはノズルプレートを接合基板にすることができる。また、液体噴射ヘッドはいわゆるコンプライアンスプレート等の他のプレートを備えていてもよく、例えば、コンプライアンスプレートがリザーバープレートとノズルプレートとの間に配置されてもよい。更に、これらのプレートが複数のプレートで構成されてもよいし、複数のプレートの機能を一枚のプレートが備えていてもよい。
振動板部10は、振動板11、圧電素子3、リード電極84、等を有する圧電アクチュエーターである。振動板部10は、駆動信号SG1に応じて変形して圧力室21内の液体に圧力を加える。
振動板11は、スペーサー部20の一方の面(表面20a)を封止し、該スペーサー部20と接する裏面11bとは反対側の表面11aに圧電素子3、リード電極84、等が設けられている。振動板の裏面11bは、圧力室21の壁面の一部を構成する。すなわち、圧力室21の壁の一部である振動板11は、圧電素子3により駆動信号SG1に応じた変形をする。振動板11は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。
圧電素子3は、圧電体層82と、該圧電体層の圧力室21側に設けられた下電極(第一電極)81と、圧電体層82の他方側に設けられた上電極(第二電極)83とを有する圧力発生部である。図2に示す各圧電素子3は、各圧力室21に対応した位置にある。圧電素子3を駆動制御するための制御回路基板91は、例えば、上電極83に対してフレキシブル基板等といったケーブル類92を介して接続される。電極81,83の一方は、共通電極にされてもよい。上下電極の構成金属には、例えば、Pt(白金)、Au(金)、Ir(イリジウム)、Ti(チタン)、等の一種以上を用いることができる。圧電体層82には、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛、Pb(Zrx,Ti1-x)O3)といった強誘電体、非鉛系ペロブスカイト型酸化物、といったペロブスカイト構造を有する材料等を用いることができる。リード電極84は、下電極81に接続されてもよいし、上電極83に接続されてもよい。リード電極の構成金属には、Au、Pt、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)、Ti、等の一種以上を用いることができる。
スペーサー部20には、厚み方向D1へ貫通した圧力室21が形成されている。このスペーサー部20が振動板11と接続部30とに挟まれることにより、圧力室21が流路ユニットU0の内部に設けられる。スペーサー部20は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。
各圧力室21は、長手方向を流路基板の短手方向D4に向けた長尺状に形成され、流路基板の長手方向D3へ複数並べられている。圧力室21同士の間は、隔壁22とされる。圧力室21内の液体には、壁の一部である振動板11の変形により圧力が加わる。圧力室21の幅や長さは、裏面20b側の長さが表面20a側の長さよりも短くされてもよい。流路基板の長手方向D3へ並んだ圧力室21の列は、流路基板の短手方向D4へ複数並べられてもよい。
接続部30には、各圧力室21に連通する位置で厚み方向D1へ貫通した液体の供給孔31及びノズル連通孔32が形成されている。すなわち、接続部30は、孔31,32を除いてスペーサー部20における表面20aとは反対側の他方の面(裏面20b)を封止する。接続部30は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。各供給孔31は各圧力室21の長手方向(D4)の一端に対応する位置に設けられ、各ノズル連通孔32は各圧力室21の長手方向(D4)の他端に対応する位置に設けられている。孔31,32及び圧力室21は、流路ユニットU0の液体流路F1となる。
なお、振動板11、スペーサー部20及び接続部30には、例えば、ジルコニア(ZrOx)、酸化イットリウム(YOx)、アルミナ(AlOx)、といったセラミックス等の一種以上の絶縁性材料を用いることができる。
接続部30の裏面30bに接合される封止プレート40には、厚み方向D1へ貫通した液体の共通供給孔41、ノズル連通孔42、及び、リザーバー51への液体導入孔43(図3(a)参照)が形成されている。共通供給孔41は、長手方向を封止プレート40の長手方向D3に向けた長尺状に形成され、接続部の複数の供給孔31に連通する位置に設けられている。各ノズル連通孔42は、接続部の各ノズル連通孔32に連通する位置に設けられている。液体導入孔43は、流路ユニットU0に接しない位置に設けられている。封止プレートの裏面40bは、リザーバー51の壁面の一部を構成する。
リザーバープレート50には、厚み方向D1へ貫通したリザーバー51及びノズル連通孔52が形成されている。リザーバー51は、共通供給孔41と液体導入孔43とに連通した共通インク室である。各ノズル連通孔52は、封止プレートの各ノズル連通孔42に連通する位置に設けられている。
ノズルプレート60には、各ノズル連通孔52に連通する位置で厚み方向D1へ貫通したノズル62が形成されている。ノズルプレート60の裏面は、ノズル62から液滴を噴射するノズル面60bとされる。図2に示すノズルプレート60は、各圧力室21に連通するノズル62が所定方向(D3)へ所定間隔で並べられたノズル列を有している。複数のノズルは、千鳥状に配置されてもよい。
なお、上記プレート40,50,60を含む種々のプレートの材料には、例えば、ステンレスやニッケルといった金属、合成樹脂、セラミックス、等の一種以上を用いることができる。
上述した液体噴射ヘッド1において、インク等の液体Fは、液体導入孔43から導入されてリザーバー51内を満たし、共通供給孔41及び個別の供給孔31を通って圧力室21内を満たす。制御回路基板91からの駆動電圧(駆動信号SG1)に応じて振動板11を圧力室21側へ膨らませるように圧電素子3が変形すると、それに応じて振動板11も変形し、振動板11の変形により圧力室21内の液体Fの圧力が高まり、ノズル連通孔32,42,52を介してノズル62から液滴が噴射される。
(2)液体噴射ヘッド製造方法の概要の例示:
次に、図1〜3とともに図4を参照して、液体噴射ヘッドの製造方法を例示する。図4は、流路基板の短手方向D4に沿った垂直断面図である。
まず、例えばジルコニア等といったセラミック粉体とバインダーと溶媒を含むペーストから所望の厚みのグリーンシートを成形する。この成形には、ドクターブレード装置やリバースロールコーター装置等といった一般的な装置を用いることができる。スペーサー部20用のグリーンシート、及び、接続部30用のグリーンシートには、切断や切削や打ち抜き等といった機械加工やレーザー加工を施す。これにより、圧力室21を有するシート状のスペーサー部前駆体120が得られ、孔31,32を有するシート状の接続部前駆体130が得られる。振動板11用のグリーンシートは、必要無ければ加工は不要である。得られる振動板前駆体111とスペーサー部前駆体120と接続部前駆体130とを積層すると、図4(a)に示すような前駆体100となる。
以上が、振動板11のセラミック製の基材12となる部分を少なくとも含む前駆体100を形成する前駆体形成工程S1である。
次いで、上記前駆体100を一体焼成し、図4(b)に示すようにセラミック製の基材12を含む流路ユニット本体101を形成する(加熱工程S2)。焼成温度は、一体化されたセラミック製流路ユニット本体が形成される温度であれば特に限定されず、例えば、1300〜1500℃程度とすることができる。焼成前に、焼成温度よりも低い脱脂温度で加熱して前駆体100を脱脂してもよい。更に、脱脂前に、脱脂温度よりも低い乾燥温度で加熱して前駆体を乾燥させてもよい。得られる流路ユニット本体101は、特別な接着処理等を加える必要が無く、各部12,20,30の重ね合わせ面のシール性が得られる。
なお、流路ユニット本体は、セラミック粉体とバインダーと溶媒を含むスラリーを用いるゲルキャスト法等により形成してもよい。
前駆体を焼成すると、多数のセラミック結晶粒子が形成される。これらの粒子同士の間には、隙間が形成されることがある。ノズルを高密度化するため振動板を薄くすると、振動板の基材の内部に形成される隙間を通った圧力室内の液が圧電素子側に染み出す現象が生じる。そこで、液体噴射ヘッドの製造工程の途中で隙間に充填剤を充填することにしている。図4(c)の例では基材12の内部の隙間に充填剤を充填した振動板11を形成した後に圧電素子3を形成しているが、圧電素子形成後に充填剤の充填工程を行うことも可能である。この充填工程の詳細は、後述する。
充填工程を経て、振動板11を含む流路ユニットU0を形成した後、図4(c)に示すように、振動板11上に下電極81、リード電極84(図3(a)参照)、圧電体層82、及び、上電極83を形成する(圧電素子形成工程S3)。電極81,83,84は、スパッタ法等といった気相法で形成してもよいし、スピンコート法等といった液相法で形成した塗布膜を加熱する方法等で形成してもよい。スピンコート法等といった液相法によって圧電体層を形成する場合、例えば、PZTを構成する金属の有機物を分散媒に分散した前駆体溶液の塗布工程、例えば170〜180℃程度の乾燥工程、例えば300〜400℃程度の脱脂工程、及び、例えば550〜800℃程度の焼成工程の組合せを複数回行えばよい。不要箇所の電極や圧電体層は、パターニングにより除去してもよい。また、レジストパターンを振動板上に形成し、振動板全面上に電極や圧電体層を形成した後にレジストパターンとともに電極や圧電体層を除去してもよい。
その後、流路ユニットU0、封止プレート40、リザーバープレート50、及び、ノズルプレート60を接合し、制御回路基板91をケーブル類92で圧電素子3に接続する(ヘッド形成工程)。部材U0,40,50,60間の接合は、プレートと略同じ孔を形成した熱圧着用接着シートを部材間に挟んだ状態で部材同士を熱圧着する方法、液状の接着剤を部材間に塗布する方法、熱圧着性(自己圧着性)を有する部材を用いて部材同士を熱圧着する方法、等が可能である。制御回路基板91の接続は、部材U0,40,50,60間の一部又は全部を接合する前に行ってもよい。
以上により、図3(a),(b)で示したような液体噴射ヘッド1が製造される。
(3)流路ユニット及びその製造方法の第一の例:
次に、図5〜9を参照して、流路ユニットU0及びその製造方法の第一の例を説明する。
図5(a)は、液状熱硬化性物質F11を利用する流路ユニット製造工程を示している。まず、例えば、ジルコニア(ZrOx)に酸化イットリウム(YOx)をモル比で4〜8%添加した粉体をバインダー等に分散したペーストをシート状に成形してグリーンシートを形成し、必要に応じてグリーンシートを加工して、各前駆体111,120,130を形成して積層する(前駆体形成工程S11)。次いで、前駆体111,120,130を一体的に脱脂し(脱脂工程S12)、例えば1300〜1500℃程度で一体焼成する(焼成工程S13)。基材12とスペーサー部20と接続部30を接合した一体焼成物(101)の断面の様子を図5(b)の最上段に示している。この一体焼成物には、多数の結晶粒子13が形成され、粒子13間に隙間CL1が形成されている。
以上の工程S11〜S13は、基材12を形成する形成工程の例である。
次いで、液状熱硬化性物質F11を一体焼成物の少なくとも振動板になる部分の基材12に含浸させる(液状熱硬化性物質含浸工程S14)。このときの様子を図5(b)の上から2段目に示している。液状熱硬化性物質の縮合、架橋、等の結合反応は、隙間CL1のミクロ部への浸透後が好ましい。
液状熱硬化性物質F11には、有機金属化合物溶液、塩化金属溶液といったハロゲン化金属溶液、有機物溶液、等の一種以上を用いることができる。有機金属化合物には、図6(a)に例示する金属アルコキシド、図6(b),(c)に例示する金属キレート、図6(d)に例示する金属アシレート、図6(e)に例示する金属の酢酸塩といったカルボン酸塩、金属の炭酸アンモニウム塩、等が含まれる。図6(a)〜(d)中、「R」は炭化水素を表す。それぞれの「R」は、異なる炭化水素でもよい。また、図6(a)〜(e)中、「M」は金属を表す。
金属アルコキシドは、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、等を例示することができる。金属キレートは、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、等を例示することができる。金属アシレートは、チタンイソステアレート、オクチル酸ジルコニウム化合物、ステアリン酸ジルコニウム、等を例示することができる。
有機金属化合物は、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、炭素二重結合といった不飽和結合、エーテル結合、エステル結合、等の官能基を有するものが好ましい。このような有機金属化合物を用いると、焼成された基材と充填剤とを強固に結合することができる。
有機金属化合物を構成する金属は、Ti、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、等、配位数6以上の原子が好ましい。例えば、Tiは4価6配位の金属原子であり、Zrは4価8配位の金属原子である。充填剤に含まれる原子の配位数が6以上と大きいと、充填剤と基材との結合をより強固にすることができ、振動板からの液の染み出しを抑制するのに好適である。
液状熱硬化性物質は、例えば、上述した有機金属化合物等の分散質(溶質を含む)を分散媒(溶媒を含む)に分散(溶解を含む)させることにより作製することができる。分散媒中に熱硬化性の分散質を分散させた液状熱硬化性物質は、溶媒中に溶質が分子レベルで分散している、すなわち、溶媒中に溶質が溶解している溶液が特に好ましい。このような溶液は、隙間CL1に入り込み易いので、容易に基材12に含浸させることができる。また、分散媒中に熱硬化性の分散質を分散させた液状熱硬化性物質は、分散媒中にナノレベル、例えば、径10〜50nmの分散質が分散した分散系が好ましい。このような分散質を含む分散系も、隙間CL1に入り込み易いので、容易に基材12に含浸させることができる。塩化金属水溶液では、加水分解反応により10〜50nmの微粒子を得ることもできる。
ここで重要な点は、分散質を分散媒中に分子レベル又はナノレベルで確実に分散させることである。
分散質(溶質)は、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレート、といった有機ジルコニウム化合物、塩化ジルコニウム、炭酸アンモニウムジルコニウム、等のZr含有物質が特に好ましい。これは、Zrが8配位と高い配位数をとるうえ、振動板の主組成であるジルコニアと相性が良く、基材と強固に結合可能であるためである。また、Ti含有物質やHf含有物質でも分子レベル又はナノレベルの分散が可能であるうえ、高い配位数をとるため、基材と強固に結合可能である。
分散媒(溶媒)には、水、エタノール、イソプロパノール、ブチルグリコール、メトキシプロパノール、アセトン、等の一種以上を用いることができる。分散媒(溶媒)と分散質(溶質)は、出来上がる焼成体と含浸プロセスの組合せにより好適な組合せを選択すればよい。炭酸アンモニウムジルコニウムを用いる場合、反応を調整するために酒石酸を添加しても良い。
また、基材に充填剤を強固に結合させるため、必要に応じて加水分解と重縮合を行うことも可能である。この場合、水と金属アルコキシドの組合せ等を選択すればよい。
液状熱硬化性物質の含浸処理は、大気圧下で溶液槽380に入れた液状熱硬化性物質に流路ユニット本体101をディッピングする(図7参照)だけでもよいが、減圧処理と加圧処理の少なくとも一方を組み合わせてもよい。これらの処理とディッピングとの組合せで含浸処理を行うのは、比較的容易なプロセスで比較的有効な効果を得るためである。より強い効果、更なる適正化を進める場合は、図7に示すような含浸装置300を用い図8の例1〜5に示すような含浸処理も可能である。
図7は、上記処理を実行可能な含浸装置300を模式的に例示している。この含浸装置300は、圧力調整バルブ322を介して減圧用ポンプ320を接続した減圧チャンバー310と、圧力調整バルブ342を介して加圧用窒素ボンベ340を接続した加圧チャンバー330とを備えている。減圧チャンバー310には、外部との間で流路ユニット本体101又は溶液槽380を出し入れ可能な移動口兼開閉バルブ312が設けられている。加圧チャンバー330には、外部との間で流路ユニット本体101又は溶液槽380を出し入れ可能な移動口兼開閉バルブ332が設けられている。減圧チャンバー310と加圧チャンバー330との間には、チャンバー310,330間で流路ユニット本体101又は溶液槽380を移動可能な移動口兼開閉バルブ334が設けられている。
図8は、含浸処理の例1〜7を示している。もちろん含浸処理は、これら7つの例に限られるものではない。例1は、大気圧下で溶液槽380に流路ユニット本体101を入れてから所定時間後、溶液槽380から流路ユニット本体101を取り出して減圧チャンバー310内で所定時間減圧処理(例えば絶対圧0.1〜0.5気圧程度)を行う含浸処理を示している。減圧処理を行う工程は、基材の環境を減圧することで充填剤の元になる液体を隙間に浸透させる工程である。例2は、例1の処理後、流路ユニット本体101を減圧チャンバー310内から加圧チャンバー330内に移して所定時間加圧処理(例えば絶対圧2〜9気圧程度)を行う含浸処理を示している。加圧処理を行う工程は、基材の環境を加圧することで充填剤の元になる液体を隙間に浸透させる工程であり、減圧処理と組み合わせることも可能である。例3は、大気圧下で溶液槽に流路ユニット本体を入れてから所定時間後、溶液槽から流路ユニット本体を取り出して加圧チャンバー内で所定時間加圧処理を行う含浸処理を示している。これにより、浸透効率が向上する。例4は、減圧チャンバー内に入れた溶液槽に流路ユニット本体を入れてから所定時間減圧処理を行う含浸処理を示している。例5は、加圧チャンバー内に入れた溶液槽に流路ユニット本体を入れてから所定時間加圧処理を行う含浸処理を示している。例6は、流路ユニット本体101を用いて液体噴射ヘッドの状態に組み立て、液状熱硬化性物質F11を圧力室21内に供給した後、圧電素子3を繰り返し駆動させる駆動電圧(駆動信号SG1)を制御回路基板91から出して振動板を振動させる振動処理を行う含浸処理を示している。振動処理を行う工程は、振動板を振動させることで充填剤の元になる液体を隙間に浸透させる工程であり、減圧処理や加圧処理と組み合わせることも可能である。例7は、大気圧下で溶液槽に流路ユニット本体を入れて所定時間ディッピング処理を行う含浸処理を示している。
減圧処理、加圧処理、及び、振動処理のうちの一つ以上を少なくとも行うことで充填剤の元になる液体を隙間に浸透させる浸透工程が充填工程に含まれていると、充填剤の元になる液体の浸透効率が向上する。
図9は、上記例6の振動板振動処理時の様子を模式的に例示している。この例の圧電素子3は、制御回路基板91からの駆動電圧が”L”(ロー)である場合に撓みの少ない状態となり、前記駆動電圧が”H”(ハイ)である場合に撓みの多い状態となっている。この圧電素子3の変形により基材12が圧力室21側に撓むと、裏面11b側の隙間CL1が若干拡がる。駆動電圧”H”を繰り返し供給して基材12を繰り返し撓ませると、隙間CL1が拡がったり狭まったりするので、隙間CL1に液状熱硬化性物質F11が入り込み易くなる。また、繰り返しの撓みは圧力室21に繰り返しの加圧と減圧も生じさせる。従って、振動板を振動させながら溶液槽の液を浸透させる例6は、浸透効率が向上する。また、直流電圧”H”の印加を維持して図9の下段に示す状態を保っても、隙間CL1が拡がっているため、浸透効率が向上する。
なお、含浸工程は、焼成後であれば良く、他の部品組み込み後などでも処理が可能であれば後工程になるほど良い。
また、液体を振動板の隙間に浸透させると、液体の浸透状況や液体自体の状態等により振動板の状態が変化する。そこで、制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板を振動させるとき、振動板の状態に応じて駆動信号を調整してもよい。この処理は、例えば、浸透回数、浸透時間、振動板の電気抵抗や残留振動や固有振動周期といった電気的状態、等に基づいて駆動信号の電圧や周波数等を調整することにより行うことができる。振動板の状態に応じて駆動信号を調整する例も、液漏れが抑制される好適な例となる。
含浸工程の後、流路内における液状熱硬化性物質の余分な付着を除去する洗浄を行った後に流路ユニット本体を乾燥させる(洗浄工程S15)。このときの様子を図5(b)の上から3段目に示している。その後、含浸させた液を安定化させて移動を防ぐため加熱装置を用いて加熱処理を行い(加熱工程S16)、隙間CL1の液状熱硬化性物質F11を固形状の熱硬化物質に変化させて、流路ユニットU0を完成させる。この熱硬化物質(14)は、図5(b)の最下段に示すように、基材内部の隙間CL1を閉塞する。従って、加熱工程によって基材12の内部に形成される隙間CL1に充填される充填剤14は、厚み方向D1への液体Fの通過を抑制する。
以上の工程S14〜S16は、充填剤14を充填する充填工程の例である。
液状熱硬化性物質に有機金属化合物溶液やハロゲン化金属溶液を用いる場合、酸素を介する共有結合、すなわち、更に強固な結合を得るために例えば300〜600℃程度の加熱処理を行う。これにより、図6(f)に例示するように、熱硬化物である金属酸化物を含む充填剤14が液状熱硬化性物質F11から形成され、隙間CL1に充填される。また、基材12側の金属(例えばZr)と充填剤14側の金属Mとが酸素を介して共有結合し、基材12と充填剤14とが強固に結合した振動板11が形成される。
上記以外の液状熱硬化性物質を用いる場合、液状熱硬化性物質の熱硬化特性に応じた温度で加熱すればよい。
流路ユニット形成後、液体噴射ヘッドの状態に組み立てていない場合には、図4(c)で示したように圧電素子3を振動板11上に形成し、図3で示したようにノズルプレート等を接合すると、液体噴射ヘッドが形成される。
ここで、液状熱硬化性物質にジルコニウムアルコキシド溶液を用い、図8の例1〜7の含浸処理を行って各流路ユニットを作製し、これら各流路ユニットから各液体噴射ヘッドサンプルを作製した。例6については、含浸処理後の熱処理を100℃で行った。また、含浸処理を行っていない流路ユニット本体から比較例1の液体噴射ヘッドサンプルを作製した。更に、含浸処理を行っていない流路ユニット本体の圧力室内面にパラキシリレン系のポリマーでコーティングし、得られた流路ユニットから比較例2の液体噴射ヘッドサンプルを作製した。
各サンプルについて、インク滴を繰り返し噴射させ、102回、104回、106回、108回、及び、1011回噴射させた時点の液の染み出し状態を調べた。また、サンプルを複数個作製したときの歩留まりも調べた。インク滴噴出を開始しても直ぐに発生しない不良が多い。特に本願の主旨の一つである微細な欠陥による液漏れは102回を越えて発生する。そこで接着不良、大きなクラック、大きな欠陥と早い時点で発生する不良と微細な欠陥による不良を分離する為に102回時点の良品数/全サンプル数を初期の歩留まりとした。
結果を表1に示す。
Figure 2014184631

ここで、白丸、白抜きの三角、黒の三角、バツ印は、それぞれ、顕微鏡観察で液漏れが見られないこと、顕微鏡観察で液漏れの痕跡は見られるが止まっておりインク滴が正常に噴射されること、顕微鏡観察で僅かに液漏れが見られるがインク滴が正常に噴射されること、液漏れが見られ且つインク滴が正常に噴射されないことを表す。
また、例1〜7の流路ユニットサンプルについて、振動板の内部に溶液が浸透していることを断面EDXマッピング分析により確認した。一方、比較例は、表1に示すように、漏れ止まり現象が見られず、歩留まりも低い。従って、本技術によれば、インク漏れが抑制され且つ高耐久性の液体噴射ヘッドを高い歩留まりで得ることが可能であることが判る。
更に、大気圧の含浸処理の例7と比べて、減圧と加圧の少なくとも一方を伴う含浸処理の例2〜5は、耐久性及び歩留まりが高い。これは、減圧や加圧を伴う含浸処理により焼成体内部に効率良く溶液を浸透させることが出来るためと考えられる。
更に、振動板を振動させる処理を伴う含浸処理の例6は、最も歩留まりが高い。これは、振動板を動かすことにより溶液の浸透が促進され、また、最終工程に近い所での含浸処理のためインクの流れにより様々な隙間箇所が補強されるためと推測される。但し、耐久性は、減圧と加圧の少なくとも一方を伴う含浸処理の例2〜5よりも劣る。これは、硬化温度が100℃と低く、図6(f)に示すような強固な結合が得られないためと推測される。しかし、例6は、比較例よりも優れている。
追加の例8〜11として、減圧を伴う含浸処理の例1におけるジルコニウムアルコキシド溶液の代わりに炭酸アンモニウムジルコニウム溶液、酢酸チタニウム溶液、塩化ハフニウム(化学量論比HfCl4)溶液、市販のシランカップリング剤の溶液をそれぞれ用いた流路ユニットを作製し、これら各流路ユニットから各液体噴射ヘッドサンプルを作製した。
結果を表2に示す。
Figure 2014184631

また、例8〜11の流路ユニットサンプルについて、振動板の内部に溶液が浸透していることを断面EDXマッピング分析により確認した。
表2から、例8〜11は例1と同様な効果を有することが判る。分子レベル又はナノレベルで分散媒(溶媒)に分散させることにより微細な隙間にも溶液が浸透して隙間を埋めるためと考えられる。塩化ハフニウム水溶液では加水分解反応により10〜50nmの微粒子が得られ、この微粒子分散系でも一般的にインクに用いる染料又は顔料粒子よりも径が桁違いに小さいために隙間を埋める効果があると考えられる。シランカップリング剤を用いる場合、比較例よりも優れているが、Ti、Zr、Hfを含む溶液を用いる場合よりも耐久性が低い。これは、シロキサン結合がH2Oにより結合の弱いシラノールに変化しているためと考えられる。
以上説明したように、流路ユニットU0の基材内部12cの隙間CL1に充填された充填剤14は、圧力室21内の液体Fが隙間CL1を厚み方向D1へ通過することを抑制する。従って、本技術は、圧力室21内の液体Fに由来する液の薄い振動板11からの染み出しを抑制することが可能である。
また、薄い振動板からの液漏れが抑制されることにより、ノズルの高密度化、ひいては印刷物等の出力物の高画質化及び高速化を図ることができる。また、シンプルなプロセスで液体噴射ヘッドを製造することができるので、相反する要素である低コストとノズル高密度化の両立を図ることができる。更に、充填剤により振動板の強度を補強することができるので、耐久性、及び、耐溶媒性といった信頼性の向上を図ることができる。
更に、流路ユニットの他部品との接合面に液状熱硬化性物質といった溶液が付着しても、パラキシリレン系のポリマーのような接着力の低下は生じ難い。従って、液体噴射ヘッドの歩留まり向上を図ることができる。
更に、官能基を有し配位数の高い金属を含む有機金属化合物を用いると、金属やウエハー等の材料と強固に結合する。故に、色々な工程からの含浸処理が可能であり、各部品との接合部の強化や隙間部の補強を図ることができる。
なお、主目的である液漏れの抑制により耐久性や信頼性の向上を図ることができるので、民生のプリンターだけでなく、商業用や工業用の液体噴射装置への発展が期待される。
(4)流路ユニット及びその製造方法の第二の例:
図10(a)は、液状光硬化性樹脂F12を利用する流路ユニット製造工程を示している。基材12が透光性を有し、基材12の内部にある隙間CL1に液状の光硬化性樹脂F12を充填し、基材12に光を当てると、基材内部の隙間CL1に光硬化樹脂を含む充填剤14Aが充填された状態になる。ここで透光性とは、液状光硬化性樹脂F12を硬化せることができる波長の光(可視光以外の電磁波であってもよい)を透過させることができる性質をいう。液状光硬化性樹脂F12を硬化せることができる波長の光を透過させることができれば、そのほかの波長の光は透過しても、しなくてもよい。なお、ここで透過とは100%の光を透過させるものに限られず、一部を透過させ、残りを吸収や反射することも含む。
透光性の基材には、ジルコニア、酸化イットリウム、アルミナ、といったセラミックス等の一種以上の透光性を有する絶縁性材料を用いることができる。
液状光硬化性樹脂F12には、充填剤14Aを生成するための専用の液体、インク等の液体F、等が含まれる。例えば、液状光硬化性樹脂には、UV硬化性イミド樹脂やUV硬化性シリコーン樹脂やUV硬化性アクリル樹脂といったUV照射により硬化するUV硬化性樹脂、可視光線照射により硬化する光硬化性樹脂、等の一種以上を用いることができる。
図10(a)に示す製造工程は、図5(a)で示した製造工程と比べて工程S14,S16がそれぞれ工程S21,S22に代わっている。まず、例えば、ジルコニアに酸化イットリウムをモル比で4〜8%添加した粉体をバインダー等に分散したペーストをシート状に成形してグリーンシートを形成し、必要に応じてグリーンシートを加工して、各前駆体111,120,130を形成して積層する(前駆体形成工程S11)。次いで、図5(b)の最上段に示したような流路ユニット本体101を工程S12,S13で形成する。
次いで、液状光硬化性樹脂F12を一体焼成物(101)の少なくとも基材12に含浸させる(液状光硬化性樹脂含浸工程S21)。このときの様子を図10(b)の最上段に示している。本含浸工程S21でも、図8で示した例1〜7等の含浸処理を行うことができる。含浸工程の後、流路内における液状光硬化性樹脂の余分な付着を除去する洗浄を行った後に流路ユニット本体を乾燥させる(洗浄工程S15)。その後、含浸液の移動を防ぐため、照射部L1からの光を透光性の流路ユニット本体101に照射して液状光硬化性樹脂F12を固形状の光硬化樹脂に変え(光照射工程S22)、流路ユニットU0を完成させる。この光硬化樹脂(14A)は、図10(b)の最下段に示すように、基材内部の隙間CL1を閉塞し、液体Fの流通を抑制する。なお、振動板の表面11a側に照射部L1を配置すると振動板に近いので好適であるものの、振動板の裏面11b側等に配置されてもよい。液状光硬化性樹脂F12がUV硬化性である場合、照射部L1から紫外線を照射するなど、振動板を透過し液状光硬化性樹脂F12を硬化させることができる波長の光を照射すればよい。
光照射工程によって基材内部に形成される隙間CL1に充填される充填剤14Aは、光硬化樹脂を含んでおり、振動板厚み方向D1への液体の通過を抑制する。従って、本例は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例である。
上記照射部L1は、液体噴射ヘッドの製造工場に設置される照射装置でもよいが、液体噴射装置内に設置されてもよい。図10(c)は、光源といった照射部L1を有する液体噴射装置200を模式的に例示している。この液体噴射装置200は、液体噴射ヘッド1と、振動板11の圧力室21とは反対側の第二の面(表面11a)側にある照射部L1と、制御回路基板91と照射部L1とを制御する制御部201とを備えている。ただし、光照射前の液体噴射ヘッド1の少なくとも基材12は、液状光硬化性樹脂が含浸された状態とされている。この場合、制御部201が照射部L1に光を照射させる制御を行うと、表面11a側から透光性の振動板に光が照射され、隙間CL1の液状光硬化性樹脂F12が硬化して光硬化樹脂を含む固形状の充填剤14Aに変化する。また、照射部L1は自らが発光するものの他、発光しているものから鏡や光ファイバーなどを用いて光を導き、照射を行うものであってもよい。
以上のことから、液体噴射装置200の使用を開始した後に、圧力室21内のインク等の液体Fを液状光硬化性樹脂F12に置き換えて少なくとも振動板11に液状光硬化性樹脂F12を含浸させ、照射部L1から振動板11の表面11a側に光を照射すると、耐液漏れ性が向上する。また、インク等の液体F自体を光硬化性にすると、定期的など必要に応じて照射部L1から振動板表面11a側に光を照射する制御を制御部201で行うと、耐液漏れ性が向上する。
なお、上述したように制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板11を振動させながら光照射を行ってもよい。
また、光照射を行うと、振動板11に浸入した液体の成分の硬化により振動板の硬さ等が変化する。そこで、制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板11を振動させるとき、第一の例で述べた具体的処理等により、浸入した液体の成分の硬化状況に応じて駆動信号を調整してもよい。硬化状況に応じて駆動信号を調整する例は、液漏れが抑制される好適な例となる。
ところで、振動板の表面11a側から光を照射する場合、振動板の表面11a側における液状光硬化性樹脂が十分に硬化する一方、振動板の裏面11b側における液状光硬化性樹脂が十分には硬化しないことがある。この場合、裏面11b側の液状光硬化性樹脂が圧力室21へ流出し、図10(d)に例示するように光硬化樹脂を含む充填剤14Aの濃度分布が表面11a側に偏ることがある。なお、図10(d)において、横軸は振動板の厚み方向D1における位置を表し、縦軸は前記位置による充填剤14Aの濃度を表す。濃度分布はあくまでも例示であり、必ずしもこのような特性になるとは限らない。例えば、振動板の裏面11b側が硬化できておらず、振動板の途中(11bと11aの間)で充填剤14Aの濃度が0になる可能性もある。
充填剤の濃度は、振動板の単位体積当たりの充填剤の重量等で表される。ここで、表面11aと裏面11bとの中点から裏面(第一の面)11bまでの充填剤濃度の相加平均を平均濃度Cb、中点から表面(第二の面)11aまでの充填剤濃度の相加平均を平均濃度Caとする。第一の面(11b)側における充填剤の存在比R1は、R1=Cb/(Ca+Cb)となる。第二の面(11a)側における充填剤の存在比R2は、R2=Ca/(Ca+Cb)となる。なお、中点よりも裏面11b寄りの位置から裏面11bまでの充填剤濃度の相加平均を平均濃度Cbとし、中点よりも表面11a寄りの位置から表面11aまでの充填剤濃度の相加平均を平均濃度Caとしてもよい。
これらの場合、R1<R2となる。この例も、液漏れを抑制可能な好適な例である。
(5)流路ユニット及びその製造方法の第三の例:
図11(a)は、吸水剤F13を利用する流路ユニット製造工程を示している。振動板が多価アルコール等の吸水剤F13を含む場合、基材内部の隙間CL1に溶液F14の少なくとも一部の成分が入ると、溶液の水分が吸水剤F13に吸収される。これにより、溶液F14の水分が吸水剤F13に吸収されたときに残留する物質を含む充填剤14Bが基材内部の隙間CL1に充填された状態になる。
吸水剤F13には、グリセリンやジエチレングリコールといった多価アルコール、多糖類といった糖類、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩といった吸水性樹脂、塩化カルシウムやシリカゲルといった無機吸水剤、等を一種以上含むものを用いることができる。含浸のため可溶性吸収剤を希釈する場合、希釈用の溶媒は、水でもよいし、水でなくてもよい。例えば、多価アルコール類は、水分を吸収する(抱き込む)性質を有しており、保湿剤としてインク溶媒に用いることにより微細なノズル開口の目詰まりを防止する性能を発揮する。例えばグリセリンとジエチレングリコールを合わせて9〜20重量%程度含むインクを使用する場合、このインクから水分を吸収可能な含有比(例えばインクの多価アルコール含有比の1.5倍程度以上)の多価アルコールを吸水剤F13に含ませるとよい。
溶液F14には、インク等の液体F、充填剤14Bを生成するための専用の液体、等が含まれる。例えば、溶液F14には、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Ba(バリウム)といったアルカリ土類金属の塩、K(カリウム)といったアルカリ金属の塩、Cu(銅)、Zn(亜鉛)といった金属の塩、等を一種以上含む水溶液を用いることができる。これらの塩を含む水溶液は、インク等の液体にも用いられる。このような水溶液を用いる場合、溶液F14の水分が吸水剤F13に吸収されたときに残留する物質は、Ca塩といったアルカリ土類金属塩、K塩といったアルカリ金属塩、Cu塩といった金属塩、等の析出物又は濃縮液となる。
図11(a)に示す製造工程は、図5(a)で示した製造工程と比べて工程S14,S16がそれぞれ工程S23,S24に代わっている。まず、図5(b)の最上段に示したような流路ユニット本体101を工程S11〜S13で形成する。
次いで、吸水剤F13を一体焼成物(101)の少なくとも基材12に含浸させる(吸水剤含浸工程S23)。このときの様子を図11(b)の最上段に示している。本含浸工程S23でも、図8で示した例1〜7等の含浸処理を行うことができる。
なお、吸水剤F13を基材12に含浸させると、含浸した液体の成分の変化(硬化等)により振動板11の硬さ等が変化する。そこで、制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板11を振動させるとき、第一の例で述べた具体的処理等により、含浸した液体の成分の変化状況に応じて駆動信号を調整してもよい。変化状況に応じて駆動信号を調整する例は、液漏れが抑制される好適な例となる。
含浸工程の後、流路内における吸水剤の余分な付着を除去する洗浄を行った後に流路ユニット本体を乾燥させる(洗浄工程S15)。その後、圧力室21内に溶液F14を供給する(溶液供給工程S24)。この溶液F14の少なくとも一部の成分が基材内部の隙間CL1に入ると、溶液F14の水分が吸水剤F13に吸収され、図11(b)の最下段に示すように、残留する物質を含む材料(14B)が基材内部の隙間CL1に充填された状態になる。例えば、溶媒が水である溶液F14がアルカリ土類金属塩やアルカリ金属塩や金属塩を含むインクである場合、インクから水分が吸水剤F13に吸収されると、インクに含まれる塩が析出する。このインク残留物である析出物が隙間CL1を閉塞し、液体Fの流通を抑制する。
また、セラミック製の基材12の内部にある隙間CL1に含まれる吸水剤F13は、該吸水剤に対して水分が飽和状態でないときには圧力室21内の液体Fから水分を引き寄せるが、水分が飽和状態になると圧力室21内の液体Fから水分を引き寄せない。その結果、圧力室21内の液体Fに由来する液の隙間CL1を通る染み出しが抑制される。
溶液供給工程によって基材内部に形成される隙間CL1に充填される充填剤14Bは、溶液F14の水分が吸水剤F13に吸収されたときの残留物質を含んでおり、振動板厚み方向D1への液体の通過を抑制する。従って、本例は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例である。
なお、圧力室21内に溶液F14を供給する場合、図11(c)に例示するように、上記残留物質を含む充填剤14Bの濃度分布が裏面11b側に偏ることがある。なお、濃度分布はあくまでも例示であり、直線状の特性になるとは限らない。ここで、図10(d)と同様に、裏面(第一の面)11b側の平均濃度Cb、表面(第二の面)11a側の平均濃度Caを用い、第一の面(11b)側の存在比をR1=Cb/(Ca+Cb)、第二の面(11a)側の存在比をR2=Ca/(Ca+Cb)とする。
上記の場合、R1>R2となる。この例も、液漏れを抑制可能な好適な例である。
(6)流路ユニット及びその製造方法の第四の例:
図12(a)は、溶液F16から固まりを生成する変性剤F15を利用する流路ユニット製造工程を示している。振動板が変性剤F15を含む場合、基材内部の隙間CL1に溶液F16の少なくとも一部の成分が入ると、変性剤F15によって溶液F16から固まりが生成される。これにより、図12(b),(c)に示すように、固まりを含む充填剤14C,14Dが基材12の内部にある隙間CL1に充填された状態になる。
変性剤F15には、溶液F16の溶質と分散質の少なくとも一方と反応して析出する(固まりに変える)物質、溶液F16の分散質を凝集させる(固まりに変える)凝集剤、溶液F16の分散媒又は溶媒をゲル化させる(固まりに変える)物質、等を一種以上含むものを用いることができる。溶質と反応して析出する物質には、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、等が含まれる。例えば、溶液F16にCaイオンといったアルカリ土類金属のイオンが含まれる場合、リン酸ナトリウムといった水溶性のリン酸塩とからリン酸カルシウム等の難溶塩(固まり)が析出する。凝集剤には、硫酸アルミニウム、ミョウバン、ポリ塩化アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、有機高分子凝集剤、等が含まれる。例えば、溶液F16に顔料粒子といった凝集可能なコロイド粒子が含まれる場合、凝集剤によりコロイド粒子が凝集して固まりが生成される。分散媒をゲル化させる物質には、ブドウ糖多糖といったゲル化剤等が含まれる。生成する固まりには、溶媒や分散媒が固まることによる実質的な溶液全体の固まりが含まれる。
溶液F16には、インク等の液体F、充填剤を生成するための専用の液体、等が含まれる。例えば、溶液F16には、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Ba(バリウム)といったアルカリ土類金属の塩、Cu(銅)、Zn(亜鉛)といった金属の塩、等を一種以上含む水溶液を用いることができる。これらの塩を含む水溶液は、インク等の液体にも用いられる。このような水溶液を用いる場合、変性剤F15に上述した溶質と反応して析出する物質を用いると、この物質とアルカリ土類金属等とから難溶塩が析出する。
図12(a)に示す製造工程は、図5(a)で示した製造工程と比べて工程S14,S16がそれぞれ工程S25,S26に代わっている。まず、図5(b)の最上段に示したような流路ユニット本体101を工程S11〜S13で形成する。
次いで、変性剤F15を一体焼成物(101)の少なくとも基材12に含浸させる(変性剤含浸工程S25)。このときの様子を図12(b)の最上段に示している。本含浸工程S25でも、図8で示した例1〜7等の含浸処理を行うことができる。
なお、変性剤F15を基材12に含浸させると、含浸した液体の成分の変化(硬化等)により振動板11の硬さ等が変化する。そこで、制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板11を振動させるとき、第一の例で述べた具体的処理等により、含浸した液体の成分の変化状況に応じて駆動信号を調整してもよい。変化状況に応じて駆動信号を調整する例は、液漏れが抑制される好適な例となる。
含浸工程の後、流路内における変性剤の余分な付着を除去する洗浄を行った後に流路ユニット本体を乾燥させる(洗浄工程S15)。その後、圧力室21内に溶液F16を供給する(溶液供給工程S26)。この溶液F16の少なくとも一部の成分が基材内部の隙間CL1に入ると、変性剤F15によって溶液F16から固まりが生成され、この固まりを含む材料(14C,14D)が基材内部の隙間CL1に充填された状態になる。例えば、溶媒が水である溶液F16がアルカリ土類金属塩や金属塩を含むインクであり、変性剤F15がリン酸塩等の難溶塩を生成する材料である場合、この材料とアルカリ土類金属等とから難溶塩の固まりが析出する。このインク反応物である析出物が図12(b)に示すような充填剤14Cとして隙間CL1を閉塞し、液体Fの流通を抑制する。また、変性剤F15がゲル化剤である場合、隙間CL1に入った溶液F16がゲル化し、このゲルが図12(c)に示すような充填剤14Dとして隙間CL1を閉塞し、液体Fの流通を抑制する。
溶液供給工程によって基材内部に形成される隙間CL1に充填される充填剤14C,14Dは、変性剤F15によって溶液F16から生成される固まりを含んでおり、振動板厚み方向D1への液体の通過を抑制する。従って、本例は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例である。
なお、圧力室21内に溶液F16を供給する場合、図11(c)に例示したように、上記固まりを含む充填剤14C,14Dの濃度分布が裏面11b側に偏ることがある。この場合、R1>R2となる。この例も、液漏れを抑制可能な好適な例である。
(7)流路ユニット及びその製造方法の第五の例:
図13(a)は、液状熱硬化性樹脂F17を利用する流路ユニット製造工程を示している。基材12の内部にある隙間CL1に液状の熱硬化性樹脂を充填し、基材12を加熱すると、基材内部の隙間CL1に熱硬化樹脂を含む充填剤14Eが充填された状態になる。
液状熱硬化性樹脂F17には、充填剤14Eを生成するための専用の液体、インク等の液体F、等が含まれる。例えば、液状熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ケイ素樹脂、等の一種以上を用いることができる。
図13(a)に示す製造工程は、図5(a)で示した製造工程と比べて工程S14,S16がそれぞれ工程S27,S28に代わっている。まず、図5(b)の最上段に示したような流路ユニット本体101を工程S11〜S13で形成する。
次いで、液状熱硬化性樹脂F17を一体焼成物(101)の少なくとも基材12に含浸させる(液状熱硬化性樹脂含浸工程S27)。このときの様子を図13(b)の最上段に示している。本含浸工程S27でも、図8で示した例1〜7等の含浸処理を行うことができる。
含浸工程の後、流路内における液状熱硬化性樹脂の余分な付着を除去する洗浄を行った後に流路ユニット本体を乾燥させる(洗浄工程S15)。その後、加熱装置で流路ユニット本体101を加熱して液状熱硬化性樹脂F17を固形状の熱硬化樹脂に変え(加熱工程S28)、流路ユニットU0を完成させる。この熱硬化樹脂(14)は、図13(b)の最下段に示すように、基材内部の隙間CL1を閉塞し、液体Fの流通を抑制する。
加熱工程によって基材内部に形成される隙間CL1に充填される充填剤14Eは、熱硬化樹脂を含んでおり、振動板厚み方向D1への液体の通過を抑制する。従って、本例は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例である。
加熱装置は、液体噴射ヘッドの製造工場に設置されてもよいが、液体噴射装置内に設置されてもよい。図13(c)は、ヒーターといった加熱部H1を有する液体噴射装置200を模式的に例示している。この液体噴射装置200は、液体噴射ヘッド1と、振動板11の圧力室21とは反対側の第二の面(表面11a)側にある加熱部H1と、制御回路基板91と加熱部H1とを制御する制御部201とを備えている。ただし、加熱前の液体噴射ヘッド1の少なくとも基材12は、液状熱硬化性樹脂が含浸された状態とされている。この場合、制御部201が加熱部H1を通電制御すると、表面11a側から振動板が加熱され、隙間CL1の液状熱硬化性樹脂F17が硬化して熱硬化樹脂を含む固形状の充填剤14Eに変化する。
以上のことから、液体噴射装置200の使用を開始した後に、圧力室21内のインク等の液体Fを液状熱硬化性樹脂F17に置き換えて少なくとも振動板11に液状熱硬化性樹脂F17を含浸させ、加熱部H1で振動板11を表面11a側から加熱すると、耐液漏れ性が向上する。また、インク等の液体F自体を熱硬化性にすると、定期的など必要に応じて加熱部H1で振動板11を加熱する制御を制御部201で行うと、耐液漏れ性が向上する。
また、加熱部H1が無くても、圧電素子3の駆動電圧を”H”と”L”とに繰り返し切り替えることにより圧電素子3が発熱し、振動板11が昇温する。そこで、圧力室21内に液状熱硬化性樹脂F17に供給し、又は、インク等の液体F自体を熱硬化性にすると、定期的など必要に応じて圧電素子3の駆動電圧を”H”と”L”とに繰り返し切り替える制御を制御部201で行うことにより、振動板11が加熱される。これにより、隙間CL1にある液状熱硬化性樹脂F17、又は、熱硬化性の液体Fが硬化し、耐液漏れ性が向上する。
なお、振動板を加熱すると、振動板に浸入した液体の成分の熱硬化により振動板の硬さ等が変化する。そこで、制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板11を振動させるとき、第一の例で述べた具体的処理等により、浸入した液体の成分の熱硬化状況に応じて駆動信号を調整してもよい。熱硬化状況に応じて駆動信号を調整する例も、液漏れが抑制される好適な例となる。
(8)液体噴射装置の例:
図14は、上述した液体噴射ヘッド1を記録ヘッドとして有するインクジェット式の記録装置である液体噴射装置200の外観を示している。液体噴射ヘッド1を記録ヘッドユニット211,212に組み込むと、液体噴射装置200を製造することができる。図14に示す液体噴射装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、液体噴射ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シート290は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され液体噴射ヘッド1から噴射されるインク滴により印刷がなされる。
(9)応用、その他:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、記録装置は、印刷中に液体噴射ヘッドが移動しないように固定されて、記録シートを移動させるだけで印刷を行ういわゆるラインヘッド型のプリンターでもよい。
流体噴射ヘッドから吐出される液体は、液体噴射ヘッドから吐出可能な材料であればよく、染料等が溶媒に溶解した溶液、顔料や金属粒子といった固形粒子が分散媒に分散したゾル、等の流体が含まれる。このような流体には、インク、液晶、等が含まれる。液体噴射ヘッドは、プリンターといった画像記録装置の他、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造装置、有機ELディスプレーやFED(電解放出ディスプレー)等の電極の製造装置、バイオチップ製造装置、等に搭載可能である。
圧力室に圧力を与えるための圧電素子は、図3(a),(b)で示したような薄膜型に限定されず、圧電材料と電極材料とを交互に積層させた積層型、縦振動させて各圧力室に圧力変化を与える縦振動型、等でもよい。また、圧電アクチュエーターは、発熱素子の発熱で生じる気泡によってノズルから液滴を噴射させるアクチュエーター、振動板と電極との間に発生させた静電気によって振動板を変形させてノズルから液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーター、等でもよい。更には、そのほかの様々な流路ユニットに適用することができる。
振動板は、液体流路を形成するスペーサー部や接続部とは別に焼成されて形成されてからスペーサー部に接合されてもよい。スペーサー部や接続部は、金属、合成樹脂、等、セラミック製でなくてもよい。セラミック製の基材の内部にある隙間に充填剤が充填された振動板を有する流路ユニットであれば、本発明を適用可能である。
上述した充填剤は、組み合わせて使用することも可能である。
充填剤の形成方法も、様々考えられる。
例えば、基材内部に含浸させる溶液として、加熱不要の硬化性樹脂を用いてもよい。この場合、図13(a)に示した加熱工程S28を省略可能である。
充填剤形成用の溶液F14,F16は、圧力室21内ではなく、基材の表面11a側に供給されてもよい。
充填剤の形成工程は、前駆体焼成直後や液体噴射ヘッド形成後の他、液体噴射ヘッド形成前における流路ユニット本体とプレートとの接合直後等に行ってもよい。充填剤形成工程に加熱工程を伴う場合、液体噴射ヘッド形成後には例えば100℃程度以下の加熱しかできないが、液体噴射ヘッド製造工程の初期段階では例えば500〜600℃程度の高温加熱が可能である。
また、充填剤用の物質は、焼成前の前駆体に含まれていてもよい。例えば、吸水剤F13や変性剤F15が無機金属塩など耐熱性の物質である場合、この耐熱性物質を前駆体に混入しておけば、焼成後の基材12に吸水剤F13や変性剤F15が存在することになる。吸水剤F13が存在する場合、圧力室21内に溶液F14を供給すると、基材表面の吸水剤F13に溶液F14の水分が吸収され、残留物質を含む充填剤14Bが隙間CL1に充填される。基材12に変性剤F15が存在する場合、圧力室21内に溶液F16を供給すると、基材表面の変性剤F15により溶液F16から固まりが生成し、この固まりを含む充填剤14C,14Dが隙間CL1に充填される。
(10)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術等を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
1…液体噴射ヘッド、3…圧電素子、10…振動板部、11…振動板、11a…表面(第二の面)、11b…裏面(第一の面)、12…基材、12c…内部、13…粒子、14…充填剤、14A…光硬化樹脂を含む充填剤、14B…残留物質を含む充填剤、14C,14D…固まりを含む充填剤、14E…熱硬化樹脂を含む充填剤、20…スペーサー部、21…圧力室、30…接続部、31…供給孔、32…ノズル連通孔、40…封止プレート、50…リザーバープレート、51…リザーバー、60…ノズルプレート、62…ノズル、100…前駆体、101…流路ユニット本体、111…振動板前駆体、120…スペーサー部前駆体、130…接続部前駆体、200…液体噴射装置、300…含浸装置、CL1…隙間、D1…厚み方向、F…液体、F1…液体流路、F11…液状熱硬化性物質、F12…液状光硬化性樹脂、F13…吸水剤、F14…溶液、F15…変性剤、F16…溶液、F17…液状熱硬化性樹脂、SG1…駆動信号、U0…流路ユニット。

Claims (12)

  1. 変形可能な振動板と、
    壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、
    を備えた流路ユニットであって、
    前記振動板は、
    セラミック製の基材と、
    該基材の内部にある隙間を充填し液体の通過を抑制する充填剤と、
    を有する、流路ユニット。
  2. 前記基材は、透光性を有し、
    前記充填剤は、光硬化樹脂を含む、請求項1に記載の流路ユニット。
  3. 前記振動板は、吸水剤を含み、
    前記充填剤は、溶液の水分が前記吸水剤に吸収されたときに残留する物質を含む、請求項1又は請求項2に記載の流路ユニット。
  4. 前記振動板は、溶液から固まりを生成する変性剤を含み、
    前記充填剤は、前記変性剤によって溶液から生成される固まりを含む、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流路ユニット。
  5. 前記充填剤は、熱硬化樹脂を含む、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流路ユニット。
  6. 前記充填剤は、配位数6以上の原子を含む、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の流路ユニット。
  7. 前記振動板の前記圧力室側となる第一の面側における前記充填剤の存在比は、前記振動板の前記圧力室とは反対側の第二の面側における前記充填剤の存在比よりも少ない、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の流路ユニット。
  8. 前記振動板の前記圧力室側となる第一の面側における前記充填剤の存在比は、前記振動板の前記圧力室とは反対側の第二の面側における前記充填剤の存在比よりも多い、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の流路ユニット。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の流路ユニットと、
    前記圧力室に連通するノズルと、
    を備える、液体噴射ヘッド。
  10. 請求項9に記載の液体噴射ヘッドを搭載した、液体噴射装置。
  11. 変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットの製造方法であって、
    前記振動板のセラミック製の基材となる部分を少なくとも含む前駆体を加熱して前記基材を形成する形成工程と、
    前記基材の内部に形成される隙間に、液体の通過を抑制する充填剤を充填する充填工程と、
    を含む、流路ユニットの製造方法。
  12. 前記充填工程は、前記基材の環境を減圧すること、前記基材の環境を加圧すること、及び、前記振動板を振動させること、のうちの一つ以上を少なくとも行うことで前記充填剤の元になる液体を前記隙間に浸透させる浸透工程を含む、
    請求項11に記載の流路ユニットの製造方法。
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