JP2014190834A - 光電場増強デバイスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学異方位性を抑制した高感度な光電場増強デバイスを提供する。
【解決手段】励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、その照射により上記表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強する光電場増強デバイスにおいて、基板10上にランダムに配列された針状微細凹凸構造12を形成し、その針状微細凹凸構造12が形成された基板平面の垂直方向に対して斜め方向から金属を蒸着することによって、針状微細凹凸構造12の先端部に平板状の金属微細構造14を形成する。
【選択図】図1B
【解決手段】励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、その照射により上記表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強する光電場増強デバイスにおいて、基板10上にランダムに配列された針状微細凹凸構造12を形成し、その針状微細凹凸構造12が形成された基板平面の垂直方向に対して斜め方向から金属を蒸着することによって、針状微細凹凸構造12の先端部に平板状の金属微細構造14を形成する。
【選択図】図1B
Description
本発明は、局在プラズモンを誘起しうる微細な金属構造を備えた光電場増強デバイスおよびその製造方法に関するものである。
金属表面における局在プラズモン共鳴現象による電場増強効果を利用したセンサデバイスやラマン分光用デバイス等の電場増強デバイスが知られている。ラマン分光法は、物質に単波長光を照射して得られる散乱光を分光して、ラマン散乱光のスペクトル(ラマンスペクトル)を得る方法であり、物質の同定等に利用されている。
ラマン分光法には、微弱なラマン散乱光を増強するために、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scaterring)と呼ばれる、局在プラズモン共鳴によって増強された光電場を利用したラマン分光法がある(非特許文献1参照)。これは、金属体、特に表面にナノオーダの凹凸を有する金属体に物質を接触させた状態で光を照射すると、局在プラズモン共鳴による光電場増強が生じ、金属体表面に接触された試料のラマン散乱光強度が増強されるという原理を利用するものである。被検体を担持する担体(基板)として、表面に金属凹凸構造を備えた基板を用いることにより表面増強ラマン分光法を実施することができる。
表面に金属微細凹凸構造を備えた基板としてはSi基板の表面に凹凸を設け、その凹凸表面に金属膜を形成した基板が主に用いられている(特許文献1から特許文献3参照)。
また、Al基板の表面を陽極酸化して一部を金属参加物層(Al2O3)とし、陽極酸化の過程で金属酸化物層内部に自然形成され、金属酸化物層の表面において開口した複数の微細孔内に、金属が充填された基板も提案されている(特許文献4参照)。
Optics Express Vol.17、No.21 18556
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に記載のように、光リソグラフィーおよびエッチングを用いて微細凹凸構造を作製したり、特許文献4に記載のように、陽極酸化を用いて金属凹凸構造を作製したりしたのでは、微細凹凸構造や金属凹凸構造の作製方法が複雑かつ大面積化が困難なため、単位面積当たりの基板コストが高くなると考えられる。
一方、特許文献5では、基板に対し斜め方向から透明物質を蒸着し、異方性を有する微細凹凸構造を形成し、その上に、貴金属を同じく斜め方向から蒸着することで光電場増強基板を作製している。この方法では、蒸着のみの作製工程ではあるが、蒸着方向を数回変更させて蒸着する必要があり、簡易な作製方法とは言い難い。また、微細凹凸構造が異方性を有しているため、貴金属からなる微細構造も異方性を有し、励起光の偏光方向によりプラブモンの共鳴波長が異なり、ラマン散乱光強度が偏光方向に大きく依存する。そのため、本基板を使用する際には励起光の偏光を調整する必要があり、定量測定時の信号強度バラツキの要因となってしまう。
また、特許文献6、7では、基板上にアルミニウムを製膜し、該基板を純水で煮沸することで、基板上にベーマイトと呼ばれる針状の微細凹凸構造を形成し、そのベーマイト上に金を蒸着することで、金属からなる微細凹凸構造を形成している。この金属微細凹凸構造は光学的に等方性を有しており、どのような偏光の励起光に対してもほぼ同程度の強度のラマン散乱光を得ている。
しかしながら、基板に対し垂直方向から金を蒸着しているため、図12に示すように、ベーマイト微細凹凸構造100の凹部に金101が充填されている。このように凹部に金が充填されていると、基板側からのSERS計測を行った場合、基板側に出てくるラマン光がその凹部の金に吸収や散乱されて減少してしまう。また、凸部の金の塊が孤立した微細構造ではなく、それぞれの塊が接し、1枚の薄膜に近い状態になってしまう。そうした場合、プラズモンの局在化が低下し、増強度の低下につながってしまう。
また、特許文献8〜特許文献10においても、特許文献5と同様に、斜め方向から蒸着することで光電場増強基板を作製している。しかしながら、微細凹凸構造に光学等方性を持たせる方法については開示されていない。
本発明は、上記の問題に鑑み、光学異方位性を抑制した高感度な光電場増強デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の光電場増強デバイスは、励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、その照射により上記表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強する光電場増強デバイスであって、基板上にランダムに配列された針状微細凹凸構造と、その針状微細凹凸構造の先端部に形成された平板状の金属微細構造とを備えたことを特徴とする。
また、上記本発明の光電場増強デバイスにおいては、平板状の金属微細構造の平均厚みに対する平均長さの比を2以上とできる。
また、針状微細凹凸構造を、金属の水和物から形成することができる。
また、上記金属としてアルミニウムまたはチタンを用いることができる。
また、針状微細凹凸構造を、金属酸化物の水和物から形成することができる。
また、金属酸化物として酸化アルミニウム、酸化チタンまたは酸化マグネシウムを用いることができる。
また、平板状の金属微細構造を金、銀、銅、プラチナまたはアルミニウムから形成することができる。
また、針状微細凹凸構造と平板状の金属微細構造との間にクロム、チタン、ニッケル、鉄、銀、アルミニウムまたは金属の亜酸化物からなる金属膜を設けることができる。
本発明の光電場増強デバイスの製造方法は、励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、その照射により上記表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強する光電場増強デバイスの製造方法であって、基板上にランダムに配列された針状微細凹凸構造を形成し、その針状微細凹凸構造が形成された基板平面の垂直方向に対して斜め方向から金属を蒸着することによって、針状微細凹凸構造の先端部に平板状の金属微細構造を形成することを特徴とする。
また、上記本発明の光電場増強デバイスの製造方法においては、基板平面の垂直方向に対して65°以上傾けた方向から金属を蒸着することができる。
また、金属の蒸着膜厚を10nm以上60nm未満として蒸着を行うようにできる。
また、金属を蒸着する前に、クロム、チタン、ニッケル、鉄、銀、アルミニウムまたは金属の亜酸化物を針状微細凹凸構造に蒸着することができる。
本発明の光電場増強デバイスおよびその製造方法によれば、励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、その照射により上記表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強する光電場増強デバイスにおいて、基板上にランダムに配列された針状微細凹凸構造を形成し、その針状微細凹凸構造が形成された基板平面の垂直方向に対して斜め方向から金属を蒸着することによって、針状微細凹凸構造の先端部に平板状の金属微細構造を形成するようにしたので、光学異方性を抑制した高感度な光電場増強デバイスとすることができる。
また、斜めから金属を蒸着することで、針状微細凹凸構造上に孤立した平板状の金属微細構造を形成でき、これにより電場増強度を高め、基板側から高感度に光を検出することができる。
針状微細凹凸構造上に平板状の金属微細構造を形成することは、球状構造に比べると、プラズモンのQ値が上がり電場増強に好ましい。
また、針状微細凹凸構造の先端部に平板状の金属微細構造が形成されることで、柱状や球状構造上に形成されるよりも金属構造体との接触面積が小さくなり、接触面からのプラズモンのエネルギーロスを低減することができる。
以下、図面を参照して本発明の光電場増強デバイスおよびその製造方法の一実施形態について説明する。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
図1Aは、本発明の光電場増強デバイスの一実施形態である光電場増強基板1を示す斜視図であり、図1Bは、図1Aに示した光電場増強基板1の側面の一部IBの拡大図である。本実施形態の光電場増強基板1は、励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、その照射により表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強するものである。
具体的には、光電場増強基板1は、図1Aおよび図1Bに示すように、透明な基板10の表面に形成された針状の微細凹凸構造を有する針状微細凹凸構造層12と、その針状微細凹凸構造層12の先端部の形成された平板状の金属微細構造を有する金属微細構造層14とを備えたものである。
基板10は、ガラスや樹脂で構成された基板本体11を備え、この基板本体11上に針状微細凹凸構造層12が形成されている。
針状微細凹凸構造層12は、金属酸化物の水和物または金属の水和物からなるものである。具体的には、たとえばアルミナ水和物が挙げられ、より詳細には、アルミナ1水和物であるベーマイト(Al2O3・H2OあるいはAlOOHと表記される)や、アルミナ3水和物(水酸化アルミニウム)であるバイヤーライト(Al2O3・3H2OあるいはAl(OH)3と表記される。)が挙げられる。また、その他にも、チタンや酸化チタン、酸化マグネシウムの水和物(Ti・H2O、TiO2・H2O、MgO・H2O)からも構成することができる。
針状微細凹凸構造層12は、透明であり、かつ図1Bに示すように、大きさ(頂角の大きさ)や向きが様々な針状の構造体がランダムに配列されたものである。
ここで、針状構造とは、基板面から遠ざかるにつれ、基板面に平行な面の微細構造断面積が減少していくような構造のことをいう。また、針状の構造体のランダム性については、
針状微細凹凸構造層12を上面から撮影したSEM画像を2値化した画像をフーリエ変換した場合に、そのフーリエ変換強度分布において、ベースライン強度の標準偏差値をノイズとした値に対し、2倍以上の強度ピークを有することがない構造とすることが望ましい。図2は、SEM画像を2値化した画像をフーリエ変換した結果の一例を示すものである。
針状微細凹凸構造層12を上面から撮影したSEM画像を2値化した画像をフーリエ変換した場合に、そのフーリエ変換強度分布において、ベースライン強度の標準偏差値をノイズとした値に対し、2倍以上の強度ピークを有することがない構造とすることが望ましい。図2は、SEM画像を2値化した画像をフーリエ変換した結果の一例を示すものである。
この針状微細凹凸構造層12の針状微細凹凸は、平均周期(平均ピッチ)および平均深さが励起光の波長より短く、この上に後述する金属微細構造層14が形成可能なものであればよい。励起光としては、通常可視光を用いる。なお、ここで、針状微細凹凸構造層12において、平均周期は針状構造体の最隣接の先端同士の距離の平均値であり、平均深さは針状構造体の先端部から隣接する底部までの距離の平均値である。
具体的には、針状微細構造の平均周期および平均深さは数10nm〜数100nmオーダーであるが、特に、平均周期および平均深さともに200nm以下であることが望ましい。さらに、増強された光電場を効率よく発生させるためには、平均周期および平均深さともに10〜150nmであることがより好ましい。
金属微細構造層14は、図1Bに示すように、針状微細凹凸構造層12の先端部に形成された多数の平板状の金属微細構造から構成されるものである。この平板状の金属微細構造は、針状微細凹凸構造層12が形成された基板平面の垂直方向に対して斜め方向から金属を蒸着することによって形成されたものである。平板状の金属微細構造の形状はさまざまであるが、平板状の金属微細構造の平均厚さに対する平均長さのアスペクト比(平均長さ/平均厚さ)が2以上であることが望ましい。なお、平均厚さと平均長さの算出方法については、後で詳述する。
また、平板状の金属微細構造のそれぞれは、孤立して形成されたものであり、平板状の金属微細構造同士の間には隙間が設けられている。したがって、金属微細構造層14全体としては、導電性をもたず絶縁された状態となっている。
平板状の金属微細構造の材料としては、励起光の照射を受けて局在プラズモンを生じるものであればよいが、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、プラチナ(Pt)、またはこれらを主成分とする合金であることが好ましい。特には、AuあるいはAgがより好ましい。
次に、本実施形態の光電場増強基板1の製造方法について説明する。図3は、本実施形態の光電場増強基板1の製造工程を示すものであり、工程毎の断面図である。
基板本体11として、ガラス基板(BK−7:コーニング社製Eagle2000)を用いた。
この基板本体11をアルカリ洗浄液(セミコクリーン)を用いて超音波洗浄(45kHz)した後、基板本体11にスパッタ装置(キャノンアネルバ社製)を用いて、50nmのアルミニウム層20を成膜した。なお、表面形状測定器(TENCOR社製)を用いて、アルミニウム厚みを測定し、厚み50nm(±10%)であることを確認した。
その後、ウォーターバス(西精機株式会社)の中に純水を用意して沸騰させ、その沸騰水の中にアルミニウム層20が形成された基板本体11を浸水させて、10分間経過後に取出した。この際、アルミニウム層20が形成された基板本体11を沸騰水に浸水させて3〜4分程度でアルミニウムが透明化したことを確認した。これは煮沸処理(ベーマイト処理)により、アルミニウムが、バイヤーマイトまたはベーマイトとからなる針状微細凹凸構造となったためである。この針状微細凹凸構造層12の表面を、SEM(日立製S4100)にて観察した結果を図4に示す。図4の上図が上面図、下図が断面図である。
図4下図の断面図によれば、花びらのようなベーマイトの花弁構造となっていることがわかる。さらに上面から観察で、花弁構造が接合し、その接合部分を頂点とした針状の構造となっていることがわかる。
ベーマイトはこのような針状の構造となっているため、基板本体11から遠ざかるにつれベーマイトの断面が減少していき、実効屈折率が連続的に減少していくことから、反射防止膜としても機能するものである。
なお、ここでは、水熱反応させる金属としてアルミニウムを用いたが、上述したような他の金属であってもよい。また、アルミナ(Al2O3)のような金属酸化物であっても、同様に針状微細凹凸構造を形成することが可能である。また、これらの金属を基板本体11に積層する方法として、本実施形態ではスパッタ法を用いているが、加熱蒸着法やソルゲル法を用いてもよい。
また、水熱反応として、アルミニウム層20が形成された基板本体11の煮沸を行っているが、アルミニウム層20が形成された基板本体11を高温の水蒸気と反応させる工程であってもよい。針状微細凹凸構造を作製する方法としては、金属または金属酸化物を水熱反応させることでできるベーマイトの作製方法が、簡単かつ大面積なデバイスを作製できるためより好ましい。
最後に、針状微細凹凸構造層12が形成された基板平面の垂直方向に対して80°傾けた方向から、金(Au)をEB(Electric Beam)蒸着により25nm成膜することによって、針状微細凹凸構造層12上に平板状の金属微細構造を有する金属微細構造層14を形成した。
なお、上述したような80°の方向からの斜め蒸着は、具体的には、図5に示すように、水平設置された蒸着源に対して基板10を傾けることによって行われ、図5におけるθを80°とすればよい。また、以下、このθを蒸着角度という。
また、ここでの蒸着膜厚は、上述した基板本体11と同様にして洗浄を行った別のガラス基板にテープでマスクし、そのマスクしたガラス基板を針状微細凹凸構造層12が形成された基板10と同時に蒸着装置に配置してそのガラス基板上に金属を蒸着させ、テープを剥がした後の蒸着された金属膜の段差を厚みとして測定したものである。
図6に、金属微細構造層14を形成した光電場増強基板1を、SEM(日立製S4100)によって観察した結果を示す。図6の上図が上面図であり、下図が断面図である。図6の上面図における薄いグレーの部分が平板状の金属微細構造であり、濃いグレーの部分は金属微細構造層14の下地である針状微細凹凸構造層12の表面である。
図6に示すように、蒸着角度80°の斜め蒸着により金属微細構造層14を形成した場合、平板状の金属微細構造同士の間に隙間ができており、下地の針状微細凹凸構造層12の表面が見えていることがわかる。さらに、断面図のSEM像から、蒸着角度80°の斜め蒸着によって、針状微細凹凸構造の先端部に平板状の金属微細構造(点線で示す部分)が形成されていることがわかる。
この蒸着角度80°の斜め蒸着によって平板状の金属微細構造が形成された光電場増強基板1の電気抵抗を測定したところ、金からなる平板状の金属微細構造が孤立した塊を形成しているため絶縁の状態であった。
一方、比較のため、本実施形態と同様の針状微細凹凸構造層の表面に、基板の平面の垂直方向(蒸着角度0°)から、金(Au)をEB(Electric Beam)蒸着により32nm成膜することによって、金属微細凹凸構造を形成した光電場増強基板を得た。図7に、その金属微細凹凸構造を形成した光電場増強基板を、SEM(日立製S4100)によって観察した結果を示す。図7の上図が上面図であり、下図が断面図である。
図7に示すように、蒸着角度0°蒸着によって金属微細凹凸構造を形成した場合には、針状微細凹凸構造層上の全体に隙間なく金が蒸着されていることがわかる。また、この蒸着角度0°蒸着によって金属微細凹凸構造が形成された光電場増強基板の電気抵抗を測定したところ、23Ωと導通した状態であった。
なお、図6に示すように、平板状の金属微細構造は、針状微細凹凸構造の先端部のみに金属が凝集しているため、平板状の金属微細構造が針状微細凹凸構造から剥がれ易い状態となる。したがって、針状微細凹凸構造を形成した後、平板状の金属微細構造を形成する前に、クロム、チタン、ニッケル、鉄、銀、アルミニウムまたは亜酸化銅(Cu2O)などの金属の亜酸化物を針状微細凹凸構造に蒸着し、これらの金属膜を形成することが望ましい。これにより、針状微細凹凸構造と平板状の金属微細構造との密着性を高めることができ、構造の耐久性を高めることができる。
次に、上述したようにして作成した光電場増強基板1を用いてラマン散乱光を測定した結果について説明する。
光電場増強基板1上に被検体として、エタノールにロータミン6Gを溶かした溶液(100×10−6mol/L)を滴下し、乾燥させた測定サンプルを用い、ラマン散乱光を測定した。
ラマン散乱光は、顕微レーザラマン分光装置(HIROBA社製、HR800)を用いて検出した。励起光としては、ピーク波長785nmのレーザ光を用い、倍率60倍の対物レンズで観察した。対物レンズ直後のレーザーパワーは0.5mWであった。また、照射時間は3秒であった。
図8は、顕微レーザラマン分光装置により検出されたラマンシフトスペクトル分布を示すグラフである。ここでは、図9に示すように、蒸着傾き方向に対し、励起光の偏光を平行D1と垂直D2とした場合の2通りのラマンシフトスペクトル分布を検出した。図8におけるグラフG1は、蒸着角度80°の場合であって、励起光の偏光方向が平行D1の場合のラマンシフトスペクトル分布であり、グラフG2は、蒸着角度80°の場合であって、励起光の偏光方向が垂直D2の場合のラマンシフトスペクトル分布である。また、図8におけるグラフG3は、蒸着角度0°の場合であって、励起光の偏光方向が平行D1の場合のラマンシフトスペクトル分布であり、グラフG4は、蒸着角度0°の場合であって、励起光の偏光方向が垂直D2の場合のラマンシフトスペクトル分布である。
図8に示すグラフG1〜G4から分かるように、斜め蒸着を用いることにより、ラマン強度が9倍に増強することがわかった。また、平板状の金属微細構造がランダムな形状で形成されているため光学等方性を有し、これにより偏光によるスペクトル強度の変化も3割以下に抑制されていることがわかった。具体的には、たとえば、グラフG1においてバックグラウンドノイズを除去した後の1360cm−1のピーク強度は2955であり、グラフG2においては2193であり、25%程度のダウンに抑制できていることがわかった。
次に、平板状の金属微細構造を形成する際における蒸着膜厚と蒸着角度とを変更して作製した光電場増強基板を用いてラマン分光測定を行った結果について説明する。上述した光電場増強基板1の製造方法と同様にして、蒸着角度と膜厚を以下の条件で光電場増強基板1を作製し、上記と同様にラマン測定を行った結果を図10示す。図10の縦軸は、得られたスペクトルのバックグラウンドノイズを除去した後の1360cm−1におけるピーク強度を表している。
グラフL1は、蒸着角度80°、蒸着膜厚12nm、24nm、38nm、54nm、励起光の偏光を平行D1とした場合であり、グラフL2は、蒸着角度80°、蒸着膜厚12nm、24nm、38nm、54nm、励起光の偏光方向を垂直D2とした場合である。
グラフL3は、蒸着角度75°、蒸着膜厚10nm、24nm、37nm、46nm、58nm、74nm、励起光の偏光を平行D1とした場合であり、グラフL4は、蒸着角度75°、蒸着膜厚10nm、24nm、37nm、46nm、58nm、74nm、励起光の偏光方向を垂直D2とした場合である。
グラフL5は、蒸着角度70°、蒸着膜厚15nm、33nm、49nm、61nm、77nm、97nm、励起光の偏光を平行D1とした場合であり、グラフL6は、蒸着角度70°、蒸着膜厚15nm、33nm、49nm、61nm、77nm、97nm、励起光の偏光を垂直D2とした場合である。
グラフL7は、蒸着角度65°、蒸着膜厚18nm、40nm、61nm、75nm、95nm、120nm、励起光の偏光を平行D1とした場合であり、グラフL8は、蒸着角度65°、蒸着膜厚18nm、40nm、61nm、75nm、95nm、120nm、励起光の偏光を垂直D2とした場合である。
また、蒸着角度0°の場合のピーク強度を図中の星で示している。図10に示すように、蒸着角度0°の場合のピーク強度に対して2倍以上の信号強度を得るためには、蒸着膜厚を10nm以上60nm未満かつ蒸着角度を65°以上とすればよい。なお、このとき針状微細凹凸構造の先端の間隔は平均で100nmであり、その平均厚みは150nmであった。
なお、蒸着膜厚が薄い状態における信号強度減少の原因は、蒸着膜厚が薄いために、針状微細凹凸構造上に形成される平板状の金属微細構造の平均厚さに対する平均長さのアスペクト比(平均長さ/平均厚さ)が小さくなっているためと考えられる。図10に蒸着膜厚が10nm付近でもっとも信号強度が小さい蒸着角度75°の光電場増強基板のSEM像を図11に示す。
図11に示すSEM像から平板状の金属微細構造のアスペクト比(平均長さ/平均厚さ)を算出すると2であることがわかった。この結果から、上述したように平板状の金属微細構造のアスペクト比(平均長さ/平均厚さ)は2以上であることが好ましいことがわかった。なお、上記平均長さおよび平均厚さについては、具体的には、図6の下図に示すような断面のSEM画像において、平板状の金属微細構造の部分(点線で示す部分)を画像処理で抽出し、その抽出した平板状の金属微細構造の部分を楕円近似し、SEM画像内に現れている全ての楕円の長軸の平均を算出することによって平均長さが算出され、全ての楕円の短軸の平均を算出することによって平均厚さが算出される。
ただし、蒸着膜厚を増加させるとアスペクト比は大きくなっていくが、サイズが大きくなりすぎると、平板状の金属微細構造同士が接触してしまい、感度が低下する。60nm以上の蒸着膜厚において、光電場増強基板の抵抗を測定したところ抵抗が50Ω以下と通電しており、平板状の金属微細構造同士が接触しているため、感度が低下していると考えられる。したがって、蒸着膜厚は、上述したように60nm未満であることが好ましいといえる。
10 基板
11 基板本体
12 針状微細凹凸構造層
14 金属微細構造層
11 基板本体
12 針状微細凹凸構造層
14 金属微細構造層
Claims (12)
- 励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、前記照射により前記表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強する光電場増強デバイスであって、
基板上にランダムに配列された針状微細凹凸構造と、
該針状微細凹凸構造の先端部に形成された平板状の金属微細構造とを備えたことを特徴とする光電場増強デバイス。 - 前記平板状の金属微細構造が、平均厚みに対する平均長さの比が2以上であることを特徴とする請求項1記載の光電場増強デバイス。
- 前記針状微細凹凸構造が、金属の水和物から形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の光電場増強デバイス。
- 前記金属が、アルミニウムまたはチタンであることを特徴とする請求項3記載の光電場増強デバイス。
- 前記針状微細凹凸構造が、金属酸化物の水和物から形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の光電場増強デバイス。
- 前記金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化チタンまたは酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項5記載の光電場増強デバイス。
- 前記平板状の金属微細構造が、金、銀、銅、プラチナまたはアルミニウムから形成されたものであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の光電場増強デバイス。
- 前記針状微細凹凸構造と前記平板状の金属微細構造との間にクロム、チタン、ニッケル、鉄、銀、アルミニウムまたは金属の亜酸化物からなる金属膜が設けられていることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の光電場増強デバイス。
- 励起光の照射により表面に局在プラズモンが誘起され、前記照射により前記表面に載置された試料から発せられる信号光の強度を増強する光電場増強デバイスの製造方法であって、
基板上にランダムに配列された針状微細凹凸構造を形成し、
該針状微細凹凸構造が形成された前記基板平面の垂直方向に対して斜め方向から金属を蒸着することによって、前記針状微細凹凸構造の先端部に平板状の金属微細構造を形成することを特徴とする光電場増強デバイスの製造方法。 - 前記基板平面の垂直方向に対して65°以上傾けた方向から金属を蒸着することを特徴とする請求項9記載の光電場増強デバイスの製造方法。
- 前記金属の蒸着膜厚を10nm以上60nm未満として蒸着を行うことを特徴とする請求項9または10記載の光電場増強デバイスの製造方法。
- 前記金属を蒸着する前に、クロム、チタン、ニッケル、鉄、銀、アルミニウムまたは金属の亜酸化物を前記針状微細凹凸構造に蒸着することを特徴とする請求項9から11いずれか1項記載の光電場増強デバイスの製造方法。
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