JP2014196407A - ゴム組成物及びゴム組成物の製造方法 - Google Patents

ゴム組成物及びゴム組成物の製造方法 Download PDF

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【課題】タイヤの低発熱性と耐摩耗性の向上を実現し得るゴム組成物を提供する。【解決手段】2種以上のジエン系ゴムを含むゴム成分合計100重量部に対し、0重量部超100重量部以下のシリカを含み、前記ジエン系ゴムがそれぞれガラス転移温度の異なる2相以上に分かれ、また、少なくとも1相が−50℃以上のガラス転移点を有する相であり、そのうち少なくとも1相が連続構造を有し、配合されたゴムの単位体積あたりのシリカの80重量%以上が、−50℃以上のガラス転移点を有する1相以上のうちの1相に含まれ、該相に含まれるシリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm2以下である、ことを特徴とするゴム組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、シリカを含むゴム組成物及びゴム組成物の製造方法に関するものである。
近年、環境問題への関心の高まりに関連して、自動車の低燃費化とタイヤの耐久性に関する要求が高まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても、転がり抵抗の低減(低発熱性)と耐摩耗性の向上の双方が求められている。
タイヤの転がり抵抗を減少する手法として、タイヤ構造を最適化する手法も検討されてきたが、タイヤに適用するゴム組成物としてよりエネルギー損失の低いゴム組成物を用いることが、現在、一般的な手法として行われている。ゴム組成物のエネルギー損失を低減するためには、ゴム成分由来のエネルギー損失及び/または充填剤由来のエネルギー損失を低減することを要する。前者を低減するために最も有効な手段は、ゴム成分のガラス転移点を低温側にシフトさせエネルギー損失を減じることであるが、ガラス転移点の低温側へのシフトは、同時に湿潤路面での摩耗特性をも低下させてしまう、という問題がある。後者を低減するために最も有効な手段は充填剤の使用量を減じることであるが、充填剤の安易な減量はタイヤの摩耗性の大幅な悪化を引き起こすことから容易ではない。すなわち、「転がり抵抗の低減」と、「耐摩耗性の向上」及び「湿潤路面での摩耗特性の向上」とは相反する機能といえる。
湿潤路面での摩耗特性及び耐摩耗性を両立させつつ、タイヤの転がり抵抗を低減するための技術として、ポリマーの変性技術が挙げられる。ポリマー変性技術は、ポリマーと充填剤間の化学結合の形成により、充填剤表面に存在するバウンドラバーといわれる強固なゴム層を増加させることにもつながり、ゴム耐摩耗性能も向上する。この技術は、微量の化学修飾で大きな効果が得られることから、環境的ならびに経済的にも有利である。ポリマー変性技術によるタイヤ転がり抵抗の低減機構は、その変性官能基が充填剤表面と反応することにより、通常凝集することが多い充填剤が分離し、その分散性が向上することでエネルギー損失が減ると考えられている。しかし、変性官能基と充填剤との相互作用を変性官能基の分子設計により強くすると、エネルギー損失低減効果及び耐摩耗性改良効果は頭打ちになることが報告されている(非特許文献1)。以上の点から、変性技術のみで得られるエネルギー損失低減及び耐摩耗性改良効果は制限されると考えられる。
Morikawa,A., Sonw,T., Shibata,M., Tadaki,T., International Rubebr Conference 2005 Yokohama, 26-S1-I-01 (2005) 芥川恵造「有限要素法によるゴムのナノスケール力学シミュレーション技術」日本ゴム協会誌第82巻第5号p.227−232(2009)
本発明の課題は、タイヤの低発熱性と耐摩耗性の向上を実現し得るゴム組成物を提供することにある。また、タイヤの低発熱性と耐摩耗性の向上を実現し得るゴム組成物の製造方法を提供することにある。
本発明のゴム組成物は、2種以上のジエン系ゴムを含むゴム成分合計100重量部に対し、0重量部超100重量部以下のシリカを含み、前記ジエン系ゴムがそれぞれガラス転移温度の異なる2相以上に分かれ、そのうち少なくとも1相が連続構造を有し、また、少なくとも1相が−50℃以上のガラス転移点を有する相であり、配合されたゴムの単位体積あたりのシリカ全量の80重量%以上が−50℃以上のガラス転移点を有する1相以上の相に含まれ、該相に含まれるシリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下である、ことを特徴とする。
本発明における「平均凝集アグリゲート面積」とは、下記の方法で測定された面積をいうものとする。すなわち、加硫後のゴム組成物試料の上面を、集束イオンビームを用いて、該試料の上面に対し角度38°をなす方向に切削した後、切削により形成された該試料の平滑面を、該平滑面に対し垂直な方向から走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧5kVで撮影する。得られた画像を、Otsu法により該試料のゴム部分と充填材であるシリカ部分との2値化像に変換して得られた2値化像に基づき、シリカ部分の凝集アグリゲート面積を求め、シリカ部分の全表面積と凝集アグリゲートの個数とから、単位面積(3μm×3μm)あたりのシリカ部分の平均凝集アグリゲート面積を数平均(相加平均)により算出する。算出に当たり、画像の端(辺)に接している粒子はカウントせず、20ピクセル以下の粒子は、ノイズと見なしカウントしない。
本発明におけるゴム組成物は、それぞれ異なるガラス転移点を有する2相以上に分かれ、−50℃以上の高いガラス転移点を有する相(以下、「高Tg相」と表記する)にシリカが偏在する。一般に高Tg相は、−50℃未満の低いガラス転移点を有する相(以下、「低Tg相」と表記する)と比して、高速の引張力がかかる状態でその硬度を増し、その耐摩耗性が向上しやすいという性質を有する。本発明では、高Tg相にさらにシリカを偏在させることで、当該相をより高い耐摩耗性を有する相としている。一方、低Tg相は、高Tg相と比して柔軟性が高く、タイヤに使用した場合に、その転がり抵抗を低下させる、という性質を有する。
このように、本発明のゴム組成物は、前記高Tg相と前記低Tg相とがブレンドされることで、それぞれの特性を損なうことなく構成されたものであり、これが使用されるタイヤの耐摩耗性と低発熱性の向上を同時に達成するものである。特に少なくとも一方の相を連続構造とすることで、該相の特性が効率よく発揮されるものである。
しかし、このようにシリカを高Tg相に偏在させた場合、高Tg相に歪みが集中する、という問題が生じることが分かった。この問題について、この領域に存在するシリカの凝集塊を小さくすることで、すなわち、シリカ部分の平均凝集アグリゲート面積を2000nm以下とすることで、該歪みを低減し、該組ゴム組成物を使用したタイヤの耐摩耗性と低発熱性が顕著に改善されることが分かった。
本発明によれば、タイヤの低発熱性と耐摩耗性の向上を実現し得るゴム組成物を提供することができる。
ゴム組成物の歪み分布を、ナノスケール有限要素法により計算した解析画像である。(A)シリカ平均凝集アグリゲート面積が2000nm超、(B)シリカ平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下。
以下に、本発明を、その一実施形態に基づき詳細に説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、本発明のゴム組成物は、2種以上のジエン系ゴムを含むゴム成分合計100重量部に対し、0重量部超100重量部以下のシリカを含み、前記ジエン系ゴムがそれぞれガラス転移温度の異なる2相以上に分かれ、そのうち少なくとも1相が連続構造を有し、配合されたシリカの80重量%以上が、−50℃以上のガラス転移点を有する1相以上のうちの1相に含まれ、該相に含まれるシリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下である、ことを特徴とする。
ここで、平均凝集アグリゲート面積の測定法は、前述の通りであり、加硫後のゴム組成物試料の上面を、集束イオンビームを用いて、該試料の上面に対し角度38°をなす方向に切削した後、切削により形成された該試料の平滑面を、該平滑面に対し垂直な方向から走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧5kVで撮影する。得られた画像を、Otsu法により該試料のゴム部分と充填材であるシリカ部分との2値化像に変換して得られた2値化像に基づき、シリカ部分の凝集アグリゲート面積を求め、シリカ部分の全表面積と凝集アグリゲートの個数とから、単位面積(3μm×3μm)あたりのシリカ部分の平均凝集アグリゲート面積を数平均(相加平均)により算出するものである。但し、算出に当たり、画像の端(辺)に接している粒子はカウントせず、20ピクセル以下の粒子は、ノイズと見なしカウントしない。
本発明に係る平均凝集アグリゲート面積の測定にあたり、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)と走査電子顕微鏡(SEM)とを一つの装置にしたFIB−SEMを用いることが好ましい。また、走査電子顕微鏡(SEM)として、極低加速電圧走査電子顕微鏡を用いることが好ましい。
FIB−SEMとしては、FEI社製、商品名「NOVA200」(登録商標)、SII Nano Technology Inc.製、商品名「SMI-3050MS2」(登録商標)などが挙げられ、FEI社製、商品名「NOVA200」(登録商標)が好ましい。
2値化像への変換は、Otsu法による画像処理装置を用いる。
本発明に係る平均凝集アグリゲート面積の測定において、加硫後のゴム組成物試料の上面を、集束イオンビームを用いて、該試料の上面に対し角度38°をなす方向に切削した後、切削により形成された該試料の平滑面を、該平滑面に対し垂直な方向から走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧5kVで撮影する。この方法では、従来の明るさの違いや、ピントのずれ等の影響なしで、試料の平坦な断面につき、断面の表面情報のみを含んだ高精度の画像を取得することができる。これにより、得られた高精度画像に基づき、高分子材料中の充填剤の分散状態を数値化して、シリカを含有する加硫後のゴム組成物の平均凝集アグリゲート面積を、定量的に評価することが可能となった。試料をFIBで切削した場合、FIBの照射方向に平行な方向に形成される切削面が凹凸のない平滑面となり、FIBの照射方向に垂直な方向に形成される切削面は凹凸を有する粗面となる。従って、本発明において撮影に供される平滑面とは、FIBの照射方向に平行な方向に形成される切削面を意味する。
次に、Otsu法を用いて、得られた画像の2値化の閾値を決定する。これによる該試料のゴム部分と充填材であるシリカ部分との2値化像に変換して得られた2値化像に基づき、シリカ部分の凝集アグリゲート面積を求め、シリカ部分の全表面積と凝集アグリゲートの個数とから、単位面積(3μm×3μm)あたりのシリカ部分の平均凝集アグリゲート面積を数平均(相加平均)により算出する。算出に当たり、画像の端(辺)に接している粒子はカウントせず、20ピクセル以下の粒子は、ノイズと見做しカウントしない。
本発明のゴム組成物におけるシリカの凝集アグリゲートとは、1又は複数のアグリゲートが凝集したものをいい、単一のアグリゲートも包含される。ここで、アグリゲート(一次凝集体)とは、シリカの基本粒子同士が融着し,連鎖状ないしは不規則な鎖状に枝分かれした複雑な凝集形態を示すものであり、数十〜数百ナノメーターのサイズである。
本発明における凝集アグリゲートは、通常数十ミクロンから数百ミクロンの大きさと考えられているアグロメレート(二次凝集体)と比較してはるかに小さく、両者は全く異なる概念である。
上記シリカの平均凝集アグリゲート面積は、2000nm以下とし、特に、1950nm以下、さらに1900nm以下であることが好ましい。シリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下であると、シリカが偏在する高Tg相に歪みが集中することなく、ゴム組成物に良好な耐摩耗性と、低発熱性が付与される。なお、平均凝集アグリゲート面積は小さいほど好ましい。
図1は、ナノスケール有限要素法により、ゴム組成物の歪み分布計算を行った解析画像を示す写真である。(A)シリカ平均凝集アグリゲート面積が2000nm超の一例であり、(B)シリカ平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下の一例を示す。(A)の例においては、2相の非連続相に大きな歪みの集中が発生し、低発熱性及び耐破壊性が悪化しやすい。これに対して、(B)のように、2相が共連続構造をとり、かつ、シリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下であると、歪みの集中が低減され、低発熱性及び耐破壊性が改善する。
[ゴム成分]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、全体として2種類以上のジエン系ゴムを含み、それぞれガラス転移点の異なる2相以上のゴム相に分かれる。本明細書において、ガラス転移点が−50℃以上のゴム相を高Tg相、−50℃未満の相を低Tg相と表記する。
高Tg相に含まれるゴム成分としては、未変性及び末端変性スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)のうち少なくとも1つを含有することが好ましい。特に、末端変性SBRが好適に使用できる。ここでいう「末端変性」とは、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの極性基を含有する極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を重合体の末端に結合させること、または末端スズ変性をいい、これにより配合するシリカとの親和性が高くなる。このような末端変性重合体を使用することにより、配合するシリカが高度に高Tg相に偏在しやすい、という効果が得られる。
以下、末端変性SBRの製造方法について例示する。上記末端変性前のSBRは、アニオン重合又は配位重合により得られるが、アニオン重合により製造することが好ましい。
このアニオン重合に使用する重合開始剤は、アルカリ金属化合物であるが、リチウム化合物が好ましい。リチウム化合物としては、ヒドロカルビルリチウムが好ましい。ヒドロカルビルリチウムを用いることにより、重合開始末端がヒドロカルビル基であるSBRが得られる。
ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが良く、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンジエンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられる。
また、所望により、ランダマイザーとして、一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタンなどのエーテル類及び第3アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−tert−アミレート、カリウム−tert−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−tert−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
アニオン重合によるSBRの製造方法としては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族,脂環族,芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、有機リチウム化合物を重合開始剤として、所望により上述のランダマイザーの存在下で、スチレンと1,3−ブタジエンをアニオン重合させることにより、目的のSBRが得られる。この重合反応における温度は、通常−80〜150℃、好ましくは−20〜100℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つ十分な圧力で操作することが望ましい。またより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
末端変性SBRは、例えば、上述のようにして得られた無変性SBRの重合反応完了後、重合停止前にSBRの重合活性末端に、極性基含有単量体をグラフト重合等で結合させることにより得られる。上記極性基含有単量体としては、シリカとの相互作用のあるものが好ましく、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの極性基を含有する極性基含有単量体が挙げられる。特に、アミノ基、アルコキシシリル基を含有する単量体が好適に用いられる。
また、末端変性SBRは、アニオン重合の開始剤として上記極性基を有する有機リチウム化合物を用いても得られる。
末端スズ変性SBRは、上述のようにして得られた無変性SBRの重合反応完了後、重合停止前にSBRの重合活性末端に、変性剤としてのスズ化合物を反応させることにより得られる。上記スズ化合物としては、例えば四塩化スズ,トリブチルスズクロリド,トリオクチルスズクロリド,ジオクチルスズジクロリド,ジブチルスズジクロリド,塩化トリフェニルスズなどが挙げられる。
また、末端スズ変性SBRは、アニオン重合の開始剤としてスズ原子を有するリチウム化合物を用いても得られる。スズ原子を有するリチウム化合物としては、トリブチルスズリチウム,トリオクチルスズリチウムなどのトリオルガノスズリチウム化合物が挙げられる。
末端変性SBRは、スチレン成分が5〜50重量%の範囲で含まれることが好ましく、10〜40重量%の範囲で含まれることがより好ましく、15〜35重量%の範囲で含まれることがさらに好ましい。また、ブタジエン部分のビニル含有量が70重量%以下であることが好ましい。
低Tg相に含まれるゴム成分としては、イソプレンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴムからなる群のうち、少なくとも1つを含有することが好ましい。これらのゴム成分は、低Tgであり、タイヤの低発熱性を向上させることを可能とする。なお、配合されるシリカは、低Tg相には極力存在しないようにすることが望まれるため、上記ゴム成分は未変性のものを使用することが好ましい。
本発明のゴム組成物全体に占める高Tg相の配合量は、30〜90重量%、特に30〜75重量%、さらに30〜65重量%とすることが好ましい。高Tg相の配合量を30重量%以上とすることで、十分な耐摩耗性を付与することができる。一方高Tg相の配合量を90重量%以下とすることで、低発熱性を維持することが可能となる。
[シリカ]
本発明のゴム組成物に用いられるシリカとしては市販のあらゆるものが使用でき、なかでも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましく、湿式シリカを用いるのがさらに好ましい。湿式シリカは、沈降法シリカとゲル法シリカに類別されるが、混練のせん断によりゴム組成物中に分散されやすく、分散後の表面反応による補強性に優れる沈降法シリカが特に好ましい。
また、シリカのCTAB吸着比表面積(JIS K6217法に準拠して測定)としては、140m2/g未満であることが好ましく、60m2/g以上かつ140m2/g未満であることがより好ましい。
CTAB吸着比表面積がこの範囲内である沈降法シリカとしては、Rhodia(株)製、商品名「Zeosil 1115」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=110m2/g)、商品名「Zeosil 115」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=110m2/g)、商品名「Zeosil 125」(登録商標)(CTAB吸着比表面積=115m2/g)等が好適に挙げられる。
本発明のゴム組成物は、所望により、上述のシリカに加えてカーボンブラックを含有しても良い。カーボンブラックを含有することにより、電気抵抗を下げて帯電を抑止する効果を享受できる。このカーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック、特にSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)が30〜250m2/gであることが好ましい。このカーボンブラックは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分合計100重量部に対して、0重量部超200重量部以下のシリカを含む。好適には、40〜150重量部、より好適には50〜100重量部のシリカを含有する。シリカを0部超配することで、ゴム組成物の耐摩耗性を向上させることができる。シリカを100重量部以下とすることで、低発熱性が阻害されにくい。
また、本発明のゴム組成物において、ゴム成分100重量部に対して、シリカ及び所望により加えられるカーボンブラック等からなる充填材を40〜200重量部含有することが好ましい。40重量部以上であれば、ゴム組成物の補強性向上の観点から好ましく、200重量部以下であれば、低発熱性の観点から好ましい。
前記充填材中、シリカが40重量%以上であることが耐摩耗性と低発熱性の両立の観点から好ましく、50重量%以上であることがさらに好ましい。
本発明のゴム組成物において、配合されるシリカのうち80重量%以上、好適には85重量%以上、より好適には90重量%以上が1相以上の高Tg相に含まれる。高Tg相にシリカが偏在することで、高Tg相の耐摩耗性がより高まる一方で、低Tg相に含まれるシリカの量が少ないことから、低Tg相の低発熱性効果が維持される。高Tg相のゴム成分として変性SBRを使用し、低Tg相のゴム成分として未変性ポリマーを使用し、後述の方法でシリカを混練することで、高Tg相にシリカが偏在するゴム組成物を実現することができる。なお、高Tg相に含まれるシリカの割合は多ければ多いほど好ましい。
ここで、高Tg相及び低Tg相におけるシリカの分配率は、下記の方法で計測することが可能である。すなわち、加硫後のゴム組成物試料の上面を、集束イオンビームを用いて、該試料の上面に対し角度38°をなす方向に切削した後、切削により形成された該試料の平滑面を、該平滑面に対し垂直な方向から走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧5kVで撮影する。得られた画像を、Otsu法により該試料の2相のゴム部分と充填材であるシリカ部分との2値化像に変換して得られた2値化像に基づき、シリカ面積全体に対する各相に含まれるシリカ面積の割合を求める。
[シランカップリング剤]
本発明のゴム組成物に用いられるシランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤をいずれも使用可能であるが、ポリスルフィド化合物及びチオエステル化合物から少なくとも1種選ばれるシランカップリング剤であることが好ましい。ポリスルフィド化合物及びチオエステル化合物は、混練中のやけ(スコーチ)が起こりにくく、加工性を良好にできるため好ましい。シランカップリング剤は一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、シリカの1〜20重量%であることが好ましい。1重量%未満ではゴム組成物の低発熱性向上の効果が発揮しにくくなり、20重量%を超えると、ゴム組成物のコストが過大となり、経済性が低下するからである。更にはシリカの5〜15重量%であることがより好ましく、シリカの5〜10重量%であることが特に好ましい。
[加硫促進剤]
本発明のゴム組成物に好適に用いられる加硫促進剤としては、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類及びキサントゲン酸塩類が挙げられる。
本発明のゴム組成物に用いられるグアニジン類としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられ、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン及び1−o−トリルビグアニドは、反応性が高いので好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられるスルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−エチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−プロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−2−エチルヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジメチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジオクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらの内、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドは、反応性が高いので好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられるチアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−(4−メチル−2−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、2−メルカプト-ナフト[1,2−d]チアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの内、2−メルカプトベンゾチアゾール及びジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドは、反応性が高く好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられるチウラム類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトライソプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンチルチウラムジスルフィド、テトラヘキシルチウラムジスルフィド、テトラヘプチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラノニルチウラムジスルフィド、テトラデシルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラプロピルチウラムモノスルフィド、テトライソプロピルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラペンチルチウラムモノスルフィド、テトラヘキシルチウラムモノスルフィド、テトラヘプチルチウラムモノスルフィド、テトラオクチルチウラムモノスルフィド、テトラノニルチウラムモノスルフィド、テトラデシルチウラムモノスルフィド、テトラドデシルチウラムモノスルフィド、テトラステアリルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらの内、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びテトラベンジルチウラムジスルフィドは、反応性が高いので好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられるジチオカルバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘプチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ジデシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジヘプチルジチオカルバミン酸銅、ジオクチルジチオカルバミン酸銅、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸銅、ジデシルジチオカルバミン酸銅、ジドデシルジチオカルバミン酸銅、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジペンチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘプチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジドデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジイソプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジブチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジペンチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘキシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘプチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジオクチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸第二鉄、ジデシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジドデシルジチオカルバミン酸第二鉄、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸第二鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。これらの内、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛及びジメチルジチオカルバミン酸銅は、反応性が高いため好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられるチオウレア類としては、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3−ジ(o−トリル)チオ尿素、1,3−ジ(p−トリル)チオ尿素、1,1−ジフェニル−2−チオ尿素、2,5−ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1−(1−ナフチル)−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、p−トリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素等が挙げられる。これらの内、N,N’−ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素及びN,N’−ジメチルチオ尿素は、反応性が高いので好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられるキサントゲン酸塩類としては、メチルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛、プロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ペンチルキサントゲン酸亜鉛、ヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ヘプチルキサントゲン酸亜鉛、オクチルキサントゲン酸亜鉛、2−エチルヘキシルキサントゲン酸亜鉛、デシルキサントゲン酸亜鉛、ドデシルキサントゲン酸亜鉛、メチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの内、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛は、反応性が高いので好ましい。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して、加硫促進剤を0.1〜10重量部配合することが好ましく、0.2〜5重量部配合することがさらに好ましい。
[有機酸化合物]
本発明のゴム組成物には、有機酸化合物が配合されていてもよい。配合される有機酸化合物としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、エナント酸、カプロン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ネルボン酸等の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸並びにロジン酸や変性ロジン酸等の樹脂酸などから選ばれる有機酸、前記有機酸の金属塩又はエステル、フェノール誘導体などが挙げられる。
本発明においては、加硫促進助剤としての機能を十分に発揮する必要があることから有機酸化合物中の50モル%以上がステアリン酸であることが好ましい。
[ゴム成分の多相構造]
本発明のゴム組成物における2相以上のゴム成分は、その少なくとも一相が連続構造を有することを要する。連続構造とは例えば、数μm四方のゴムサンプルを測定した際に、連続的に配置されていることをいう。2相以上のゴム成分は、実質的に高Tg相及び低Tg相を1相ずつ有する2相構造であることが好ましい。特に、高Tg相が連続構造を有することが好ましい。高Tg相が組成物全体に連続的に配されることにより、ゴム組成物全体の耐摩耗性を効率よく向上させることが可能となる。
さらに、高Tg相に加えて低Tg相も連続構造を有する、共連続構造をとることがより好ましい。両相がいずれも連続構造を有することで、両相の特性(耐摩耗性、低発熱性)がより発揮されやすい。
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物における、2種以上のジエン系ゴム合計100重量部に対し、0重量部超100重量部以下のシリカを含み、前記ジエン系ゴムがそれぞれガラス転移温度の異なる2相以上に分かれ、そのうち少なくとも1相が連続構造を有し、配合されたシリカの80重量%以上が、−50℃以上のガラス転移点を有する1相以上の相に含まれ、該相に含まれるシリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下であるゴム組成物の製造方法には、何ら制限は無く、どのような混練方法で製造しても良いが、以下の製造方法が、効率よく当該ゴム組成物を生成できるため好ましい。
第1段階として、高Tg相を形成するゴム成分を有するゴム組成物(組成物A)及び低Tg相を形成するゴム成分を有するゴム組成物(組成物B)を別々に形成する。末端変性SBRとシリカの全部又は一部、シランカップリング剤の全部又は一部及び加硫促進剤を加えて混練する(組成物A)。一方、別途、イソプレンゴム等のゴム成分と加硫促進剤を加えて混練する(組成物B)。次いで、第2段階として、必要に応じて残りのシランカップリング剤、加硫促進剤及び有機酸化合物を加え、組成物Aと組成物Bとを混練する。
あるいは、加硫促進剤は、使用する種類によって、第1段階で添加しても、第2段階で添加してもよい。
通常、ゴム組成物に配合される亜鉛華等の加硫活性剤、老化防止剤等の各種配合剤は、必要に応じ、混練の第1段階又は第2段階、あるいは第1段階と第2段階の中間段階において混練される。
上述の製造方法において、第1段階、第2段階の混練段階は、ゴム成分、充填剤、カップリング剤などの、加硫剤以外の原材料を配合し、混練する工程であり、充填剤のゴム組成物への分散を行い、ゴム成分を補強する為の工程である。
本発明における混練装置としては、二軸押出機、ロール、インテンシブミキサー等の公知の混練装置がいずれも使用可能である。
第1段階、第2段階の混練段階におけるゴム組成物の最高温度は120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。なお、混練時間は1〜20分であることが好ましく、1〜15分であることがより好ましく、1〜10分であることがさらに好ましい。
また、架橋に関わる薬品(加硫剤、加硫促進剤)を配合して混練する加硫工程におけるゴム組成物の最高温度は60〜140℃であることが好ましく、70〜140℃であることがより好ましく、70〜120℃であることがさらに好ましい。なお、混練時間は0.5〜15分であることが好ましく、0.5〜10分であることがより好ましく、0.5〜5分であることがさらに好ましい。
本発明のゴム組成物は、上記の混練条件、加硫条件を適宜組み合わせることにより製造可能となるものである。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、加硫ゴム組成物の平均凝集アグリゲート面積及び低発熱性(tanδ指数)を下記の方法により評価した。
<加硫ゴム組成物のシリカの平均凝集アグリゲート面積>
加硫後のゴム組成物試料として、加硫ゴムシートをカミソリでカットすることにより作製した。その形状は5mm×5mm×厚み1mmであった。
FIB−SEM(FEI社製、NOVA200)を用いて、該試料の上面を、電圧30kVの条件で集束イオンビームを用いて、該試料の上面に対し角度38°をなす方向に切削した。切削により形成された該試料の平滑面を、該平滑面に対し垂直な方向からSEMを用いて、加速電圧5kVで撮影した。得られた画像を、Otsu法により該試料のゴム部分と充填材であるシリカ部分との2値化像に変換して得られた2値化像に基づき、シリカ部分の凝集アグリゲート面積を求め、シリカ部分の全表面積と凝集アグリゲートの個数とから、単位面積(3μm×3μm)あたりのシリカ部分の平均凝集アグリゲート面積を数平均(相加平均)により算出した。算出に当たり、画像の端(辺)に接している粒子はカウントせず、20ピクセル以下の粒子は、ノイズと見做しカウントしなかった。
<2相のゴム成分のシリカ分配率>
ミクロトームにより切削された試料の平滑面をAFM(ASYLUM RESEARCH社製MFP-3D)を用いて、測定範囲2μm×2μmで測定した。得られた画像をヒストグラムより2種のポリマーとシリカ部分に3値化像に変換して得られた3値化像に基づき、2種のポリマーそれぞれに含まれるシリカ面積を求め、シリカ総量からシリカの分配率を算出した。2種のポリマー境界面にある場合は、そのシリカがより多く接しているポリマー側に含まれるとした。算出に当たり、画像の端(辺)に接している粒子はカウントせず、9ピクセル以下の粒子は、ノイズと見做しカウントしなかった。
<低発熱性(tanδ指数)>
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度60℃、動歪み5%、周波数15Hzでtanδを測定した。比較例2のtanδの逆数を100として下記式にて指数表示した。指数値が大きい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
低発熱性指数={(比較例1の加硫ゴム組成物のtanδ)/(供試加硫ゴム組成物のtanδ)}×100
<耐摩耗性>
調製した各加硫ゴムから円板状(直径16.2mm×厚さ6mm)に切り抜いた試験片を用い、JIS−K6264−2:2005に準じて、DIN摩耗試験を行った。室温でDIN摩耗試験を行った際の摩耗量(mm)を測定した。比較例2の摩耗量の逆数を100とした場合の各摩耗量の逆数を指数として示す。指数値が大きい程、耐摩耗性が良好であることを示す。
表1及び表2に示す配合、製造条件で、実施例1〜3及び比較例1〜8のゴム組成物を調製した。表中に略記された化合物名は、詳細には以下の化合物を示す。
(1)イソプレンゴム:JSR(株)製、商品名「IR2200」
(2)未変性SBR:JSR(株)製、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、商品名「SBR1500」
(3)末端変性SBR:JSR(株)製、商品名「HPR355」
(4)シリカ:東ソー・シリカ(株)製、商品名「AQ」、BET法による窒素吸着比表面積(NSA)=220m2/g)
(5)シランカップリング剤:ビス(3−トリエトシキシリルプロピル)ジスルフィド)、ダイソー(株)製シランカップリング剤、商品名「CABRUS」
(6)アロマ油:プロセスオイル、出光興産(株)製、商品名「ダイアナプロセスオイル」
(7)老化防止剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
(8)加硫促進剤:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーDM」
<実施例1>
第1段階として、配合表にある硫黄、加硫促進剤以外を萬バリーミキサーで混練し、次いで第1段階と第2段階の間の中間段階として、160℃で40分間混練した。さらに、第2段階として、上記に硫黄、加硫促進剤を添加し、混練した。その後、145℃で40分間混練することで、加硫ゴム組成物を得た。
このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表1に示す。
<実施例2>
イソプレンゴム及び末端変性SBRの配合量をそれぞれ50重量部、50重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表1に示す。
<実施例3>
イソプレンゴム及び末端変性SBRの配合量をそれぞれ30重量部、70重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表1に示す。
<実施例4>
イソプレンゴム及び末端変性SBRの配合量をそれぞれ20重量部、80重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表1に示す。
<比較例1>
シリカ及びシランカップリングの配合量をそれぞれ40重量部及び4.0重量部に変更し、中間段階に相当する練りを行わず、第2段階として上記に硫黄、加硫促進剤を添加し、かつ、加硫条件を190℃10分間とした以外は、実施例1と同様にして比較例1のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表2に示す。
<比較例2>
加硫条件を190℃10分とした以外は、実施例1と同様にして比較例2のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表2に示す。
<比較例3>
中間段階に相当する練りを行わず、第2段階として硫黄、加硫促進剤を添加し、加硫条件を190℃10分間とした以外は、実施例1と同様にして比較例3のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表2に示す。
<比較例4>
末端変性SBRの代わりに未変性SBRを使用し、加硫条件を190℃10分とした以外は、実施例1と同様にして比較例4のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表2に示す。
<比較例5>
イソプレンゴム及び末端変性SBRの配合量をそれぞれ50重量部、50重量部に変更し、中間段階に相当する練りを行わず、第2段階として上記に硫黄、加硫促進剤を添加し、加硫条件を190℃10分間とした以外は、実施例1と同様にして比較例5のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表2に示す。
<比較例6>
イソプレンゴム及び末端変性SBRの配合量をそれぞれ30重量部、70重量部に変更し、中間段階に相当する練りを行わず、第2段階として上記に硫黄、加硫促進剤を添加し、加硫条件を190℃10分とした以外は、実施例1と同様にして比較例6のゴム組成物を得た。このゴム組成物から得られた加硫ゴム組成物のシリカ平均凝集アグリゲート面積、シリカ分配率、tanδ指数及び耐摩耗性を上記の方法により評価した。結果を表2に示す。
表1及び表2より明らかなように、実施例1〜3のゴム組成物は、比較例1〜6のゴム組成物と比較して、いずれも耐摩耗性及び低発熱性(tanδ指数)が良好であった。イソプレンゴムの配合量の低い実施例4においては、低発熱性は比較例2より軽度に低減したものの、耐摩耗性が向上する効果が見られた。
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性と低発熱性に優れるので、乗用車用、小型トラック用、軽乗用車用、軽トラック用及び大型車両用(トラック・バス用、建設車両用等)等の各種空気入りタイヤの各部材、特に空気入りラジアルタイヤのトレッド用部材として好適に用いられる。

Claims (8)

  1. 2種以上のジエン系ゴムを含むゴム成分合計100重量部に対し、0重量部超100重量部以下のシリカを含み、
    前記ジエン系ゴムがそれぞれガラス転移温度の異なる2相以上に分かれ、そのうち少なくとも1相が連続構造を有し、また、少なくとも1相が−50℃以上のガラス転移点を有する相であり、
    配合されたゴムの単位体積あたりのシリカ全量の80重量%以上が、−50℃以上のガラス転移点を有する少なくとも1相の相に含まれ、該相に含まれるシリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下である、ことを特徴とするゴム組成物。
  2. シリカの80重量%以上を含む相が、未変性及び末端変性スチレン−ブタジエン共重合体のうち少なくとも1つを含む、請求項1記載のゴム組成物。
  3. 前記2相以上の相のうち少なくとも1相のガラス転移点が−50℃未満であり、該相がイソプレンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴムからなる群のうち少なくとも1つを含む、請求項1記載のゴム組成物。
  4. 前記ジエン系ゴムが、2相以上の共連続構造を有する、請求項1記載のゴム組成物。
  5. ゴム組成物全体に占める、−50℃以上のガラス転移点を有する相の配合量が30〜75重量%である、請求項1記載のゴム組成物
  6. ゴム組成物全体に占める、−50℃以上のガラス転移点を有する相の配合量が30〜65重量%である、請求項5記載のゴム組成物
  7. ポリスルフィド化合物及びチオエステル化合物から選択される少なくとも1種のシランカップリング剤及び加硫促進剤をさらに含む、請求項1記載のゴム組成物。
  8. 2種以上のジエン系ゴムを含むゴム成分合計100重量部に対し、0重量部超100重量部以下のシリカを配合し、
    前記ジエン系ゴムがそれぞれガラス転移温度の異なる2相以上に分かれ、そのうち少なくとも1相が連続構造を有し、かつ、
    配合されたシリカの80%以上が−50℃以上のガラス転移点を有する1相以上のうちの1相に含まれ、該相に含まれるシリカの平均凝集アグリゲート面積が2000nm以下となるようにする、ことを特徴とするゴム組成物の製造方法。
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