JP2015120102A - 排煙脱硫装置と排煙脱硫方法 - Google Patents

排煙脱硫装置と排煙脱硫方法 Download PDF

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Abstract

【課題】石灰石−石膏法排煙脱硫装置において、摩耗成分を含有する脱硫吸収液を使用しても、新たな運転動力を必要とすることなく、吸収塔内壁の摩耗を防止する排煙脱硫装置及び排煙脱硫方法の提供である。【解決手段】ボイラを含む燃焼装置からの排ガスを導入し、石灰石又は石灰を含むスラリを含有する吸収液を噴霧して排ガス中の硫黄酸化物を吸収、除去する吸収塔1を備えた排煙脱硫装置において、噴霧吸収液が直接衝突する内壁部分に、該噴霧液を受けて内壁への衝突速度を緩和する液体を貯留した樋20を設ける。噴霧液は内壁に衝突する前に樋20内の液体に当たることで内壁への衝突速度が低下し、内壁の摩耗速度が減少する。樋20は、水平に並列配置された吸収液配管2の両端のスプレノズル3aからの噴霧液が直接衝突する部分に設けると良い。また、樋20内の液面高さを、所定の摩耗速度を満たす衝突速度となるようにすれば、摩耗の抑制効果が向上する。【選択図】図3

Description

本発明は、脱硫吸収液として用いる石灰石(炭酸カルシウム)又は石灰を含むスラリ状の吸収液中にSiO2、Al23などの摩耗成分が含まれる石灰石−石膏法排煙脱硫装置及び排煙脱硫方法に係わり、特に脱硫吸収塔における内壁の耐摩耗性向上に好適な排煙脱硫装置及び排煙脱硫方法に関する。
火力発電所等においては、大気汚染防止のため、化石燃料の燃焼に伴い発生する排ガス中の硫黄酸化物(SOx、主にSO2)の除去装置として、石灰石中に含まれる炭酸カルシウム(CaCO3)を硫黄酸化物の吸収剤として用いる石灰石−石膏法排煙脱硫装置が広く実用化されている。図11には、従来技術の排煙脱硫装置における吸収塔1(側面図)を示し、図12には吸収塔の吸収液配管部分の平面図(一部)を示す。また、図13には、図11の内壁近傍のスプレ部4の拡大図を示す。
火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から排出される硫黄酸化物を含む排ガスは、図示していない脱硫ファンにより入口ダクト12から矢印X方向(ほぼ水平方向)に流れて吸収塔1に導入された後、上昇し、出口ダクト13から矢印Y方向に排出される。この間、石灰石又は石灰を含むスラリなどの吸収剤を含んだ吸収液が吸収液配管2に取り付けられた複数のスプレノズル3から噴霧される。噴霧された吸収液は、一旦吸収塔1の底部の循環タンク6に溜まり、酸化用撹拌機7によって撹拌されながら、図示しない空気供給管から供給される空気中の酸素により酸化され、石膏を生成する。循環タンク6にあるスラリ状の吸収液の一部は、吸収液循環配管8を経由して、吸収塔1内の上部の吸収液配管2に供給され、一部は図示しない吸収液抜き出し管より図示しない廃液処理・石膏回収系へと送られる。
脱硫吸収液として用いられる石灰石スラリ(以下、吸収液スラリという)は、吸収液配管2を通じ、吸収塔1内に一定間隔で設置されているスプレノズル3から一定角度で噴射され、排ガスとの気液接触により、下記(1)〜(4)で示す脱硫反応が生じる。
SO+H2O→H2SO3(1)
2H2SO3+CaCO3→Ca(HSO3) 2+H2O+CO2 (2)
Ca(HSO3) 2+O2+2H2O→CaSO4・2H2O+H2SO4 (3)
2SO4+CaCO3+H2O→CaSO4・2H2O+CO2 (4)
スプレノズル3から噴射される吸収液スラリ中には、脱硫反応に寄与する成分であるCaCO3以外に、脱硫反応により生じる石膏、石灰石中の不純物である二酸化ケイ素(SiO2)や酸化アルミニウム(Al23)などが含まれている。これらSiO2、Al23は硬度が高く、スプレノズル3から噴射される吸収液が衝突する吸収塔の内壁が摩耗する主要因となる。
図12に示す例では、複数の吸収液配管2が吸収塔1内に同一水平面上に並列配置されており、各吸収液配管2の両端部に設けられたスプレノズル3aが他のスプレノズル3bに比べて内壁に近接しているため、これらのスプレノズル3aからの噴霧液は、他のスプレノズル3bからの噴霧液に比べて内壁への衝突速度が非常に大きいと言える。従って、内壁に近接するスプレノズル3aによる摩耗の対策を講ずることが摩耗の大幅な低減に有用である。
一般に、日本国内において使用される排煙脱硫装置では、スラリ中に含まれるSiO2、Al23などの摩耗成分が合計0.5%(質量%、以下同じ)程度であり、様々な摩耗対策が取られている。
図14には、従来技術による摩耗抑制法の例を示す。この例では、図13に示す場合と比べて、内壁に近接するスプレノズル3aを傾けて設置し、内壁面への吸収液スラリ流の衝突角度をθ1からθ2(θ2<θ1)に小さくすることで摩耗を抑制している。これは、摩耗速度が吸収液スラリ流の壁面材料に対する衝突角度に依存しており、脱硫塔の内壁に主に用いられるステンレス鋼では、衝突角度が小さい方が、摩耗速度が抑制されることに基づくことによる。また、耐摩耗性の高いライニング施工も実施されており、摩耗による損傷の防止を図っている。
例えば、下記特許文献1には、スプレノズルの設置間隔をスプレ有効範囲と等しくして噴射される吸収液の拡がり角度を通常の90〜100度から50〜60度に小さくすることで、脱硫塔内壁への衝突角度を小さくして、吸収塔壁面に衝突する吸収液の量が多くならないようにした方法が開示されている。
また、下記特許文献2には、吸収塔の側壁内面全周にガス抜け防止材を設置して、ガス抜け防止材の周方向に沿って不連続に堰を設けた排煙脱硫装置の構成が開示されている。ガス抜け防止材により吸収塔の側壁を伝わってショートパスする排ガスを吸収塔の中心方向に向けることで、排ガスの偏流を防止すると共に、ガス抜け防止材の内周端部に生じる液膜が堰を設けていない部分に流れるため、液膜の形成を妨げて圧力損失の上昇を抑制することができる。
特開2001−9237号公報 特開2011−218273号公報
近年、排煙脱硫装置の需要が増加している東南アジア地域では、採掘される石灰石の純度が低く、石灰石中のSiO2、Al23などの摩耗成分濃度が25%のものが主流である。吸収液スラリでは、希釈によりその濃度は減少するが、摩耗成分濃度は5%前後となるため、従来の日本国内の火力発電所のプラントと比較して脱硫塔内壁の摩耗速度が大幅に増加すると予想されている。
また、実機による試験により、摩耗成分濃度が5%となる石灰石−石膏法排煙脱硫装置においては、従来適用されている耐摩耗性のライニング材(厚さ5mm程度)でも摩耗速度が年間1mm程度(従来の摩耗速度は年間0.1mm以下)となること、材料の摩耗速度の衝突角度に対する依存性が小さいこと等が明らかとなっており、特許文献1に記載の排煙脱硫装置及び方法では十分な摩耗抑制効果が期待できない。
この対策として、吸収塔内壁の吸収液スラリが衝突する部分の構造を、取替えが容易なものとすることも可能であるが、短期間でのメンテナンスが必要となるため、経済的ではない。高価な材料や新たな設備を使用することなく、脱硫塔内壁の摩耗を抑制できることが望まれる。
特許文献2に記載の構成では、堰を設けた部分から堰を設けていない部分に吸収液が流れることで、ガス抜け防止材の内周端部に生じる液膜は一様な厚みとはならないことから、圧力損失の上昇を抑制できる。しかし、ガス抜け防止材や堰は単に側壁を伝わって流下する吸収液スラリを集めて流すだけで、脱硫塔の内壁に吸収液スラリが衝突することによる摩耗の問題については何ら考慮されていない。
本発明の課題は、石灰石−石膏法排煙脱硫装置において、摩耗成分が含まれる脱硫吸収液を使用しても、新たな運転動力を必要とすることなく、吸収塔内壁の摩耗を防止する排煙脱硫装置及び排煙脱硫方法を提供することである。
上記本発明の課題は、吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分に、液体を貯留した貯留部を設けることにより達成される。更に、その貯留高さを、所定の摩耗速度を満たす吸収液スラリの衝突速度となる高さ以上にすると、より効果的である。
具体的に、上記本発明の課題は、下記の構成を採用することにより達成できる。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを導入し、石灰石又は石灰を含むスラリを含有する吸収液を噴霧して排ガス中に含有される硫黄酸化物を吸収、除去する吸収塔を備えた排煙脱硫装置において、吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分に、噴霧吸収液を受けて吸収液の吸収塔内壁への衝突速度を緩和する液体を貯留した貯留部を設けた排煙脱硫装置である。
請求項2記載の発明は、前記吸収塔は、吸収液を噴霧する複数のスプレノズルと、同一水平面上に並列配置され、前記複数のスプレノズルを有する複数の吸収液配管とを備え、前記貯留部は、各吸収液配管の両端部に設置されるスプレノズルからの噴霧吸収液が直接衝突する部分に設けられている請求項1記載の排煙脱硫装置である。
請求項3記載の発明は、吸収液中の摩耗成分濃度が所定濃度の場合の吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分の摩耗速度と吸収液の衝突速度との関係及び貯留部内の液体の貯留高さと噴霧吸収液が液体を介して間接的に吸収塔内壁に衝突する部分の摩耗速度との関係から求められた、貯留部内の液体の貯留高さと吸収液の衝突速度との関係から、前記貯留部内の液体の貯留高さを、所定の摩耗速度を満たす衝突速度となる高さ以上とした請求項1又は請求項2に記載の排煙脱硫装置である。
請求項4記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを、石灰石又は石灰を含むスラリを含有する吸収液を噴霧する構成を備えた吸収塔に導入し、排ガス中に含有される硫黄酸化物を吸収、除去する排煙脱硫方法において、吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分に、液体を貯留し、噴霧吸収液を前記液体で受けることで吸収塔内壁への衝突速度を緩和させる排煙脱硫方法である。
請求項5記載の発明は、前記吸収塔は、吸収液を噴霧する複数のスプレノズルと、同一水平面上に並列配置され、前記複数のスプレノズルを有する複数の吸収液配管とを備え、各吸収液配管の両端部に設置されるスプレノズルからの噴霧吸収液が直接衝突する部分に液体を貯留する請求項4記載の排煙脱硫方法である。
請求項6記載の発明は、吸収液中の摩耗成分濃度が所定濃度の場合の吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分の摩耗速度と吸収液の衝突速度との関係及び液体の貯留高さと噴霧吸収液が液体を介して間接的に吸収塔内壁に衝突する部分の摩耗速度との関係を求め、これらの関係から液体の貯留高さと吸収液の衝突速度との関係を算出し、前記液体を、所定の摩耗速度を満たす衝突速度となる高さ以上に貯留する請求項4又は請求項5に記載の排煙脱硫方法である。
(作用)
吸収塔内壁に吸収液スラリが衝突することによる摩耗は、吸収液スラリ中のSiO2、Al23等の摩耗成分濃度、衝突速度、衝突角度に影響される。一方で、これらの条件は各プラントにおける脱硫率等の運用条件や使用する石灰石の純度などに影響されるため、変更することは容易ではない。
表1は、低品位石灰石の例である東南アジア産石灰石と高品位石灰石の例である国内産石灰石の成分を比較したものである。
Figure 2015120102
表1から明らかなように、脱硫塔の内壁によく用いられるステンレス鋼に影響を与える摩耗成分であるSiO2、Al23の含有量が国内産のものと比較して大幅に増加していることが分かる。吸収液スラリ中では、これらの成分濃度は希釈されることで低下するものの、吸収液スラリ中の摩耗成分濃度は高品位石灰石を使用した場合の約0.5%以下に対して1%を越える。
図4には、吸収液スラリ中の摩耗成分濃度と吸収塔内壁の壁面材料の一例であるステンレス鋼(SUS316L)の摩耗速度との関係を示す。図5に示す装置を用いて、スラリタンク21から吸収液スラリをポンプ23によりスプレノズル25にスラリライン27を介して供給し、テストピース29に噴霧した。測定条件として、吸収液スラリの温度は常温(JISに準ずる)、試験時間は24時間(6時間×4日)、吸収液スラリの流速(噴射速度)を15m/s、噴射角度を45°とし、摩耗速度を24時間試験後の摩耗深さから算出した。摩耗深さは、表面粗さ計により測定した。
図中の横軸は摩耗成分濃度、縦軸は摩耗成分濃度0.5%時の摩耗速度を1とした場合の相対摩耗速度を示している。この図から、東南アジアなどで採掘される低品位石灰石を使用して、吸収液スラリ中の摩耗成分濃度が1%以上となる場合には、高品位石灰石を使用した場合の約2倍の摩耗速度となることが分かる。
一方、図6は吸収液スラリ中の摩耗成分濃度が5%の場合における摩耗速度の衝突角度依存性を示したものである。使用した装置や測定条件などは図4の場合と同様である。
図中の横軸は吸収液スラリ流の衝突角度、縦軸は衝突角度45度における摩耗速度を1とした場合の相対摩耗速度を表している。なお、衝突角度45度を基準とした理由は、この角度が通常の噴射角度だからである。
この図から明らかなように、吸収液スラリの衝突角度を低減させた場合でも、摩耗速度はほとんど変化せず、摩耗の抑制効果は限定的である。摩耗速度を抑制するには、吸収液スラリ流の吸収塔内壁への衝突速度を低下させることが効果的である。
しかし、吸収液スラリの噴霧条件は、吸収塔の大きさやスプレノズルの設置間隔等により最適になるように設定されていることから、変更することは容易ではない。
吸収液スラリは吸収塔内全体に噴霧されるが、殆どの吸収液は内壁に衝突せず、内壁に衝突する場合でも吸収液同士が衝突した後、間接的に衝突する場合が多い。また、一旦内壁に衝突してもそのまま流下するため、吸収液が直接衝突する内壁部分は限られる。しかし、噴霧吸収液が内壁に直接衝突する部分は特に摩耗が生じやすい。
そこで、請求項1又は請求項4に記載の発明によれば、噴霧吸収液が吸収塔内壁に直接衝突しないように、その部分に液体を貯留した貯留部を設け、この液体に吸収液スラリを衝突させることによって、噴霧吸収液が間接的に内壁に衝突する。従って、各プラントにおける脱硫率等の運用条件などを変更することなく、噴霧吸収の内壁への衝突速度を低下させ、内壁の摩耗速度を減少させることが可能となる。
特許文献2に記載の構成では、ガス抜け防止材や堰があるものの、これらは単に側壁を伝わって流下する吸収液スラリを集めて流す作用に留まる。堰などは噴霧吸収液が直接衝突する内壁部分に設置し、更に液を溜められるものでなければ内壁への吸収液スラリの衝突速度を低下させる作用は望めない。
液体としては、固体物が含まれることもある液状物でも良く、油や海水や工業用水なども含まれるが、これらの液体は生成する石膏を汚染するため、脱硫に用いる吸収液スラリを用いることが好ましい。吸収液スラリを用いることで、新たな動力を必要とせずに吸収塔内壁の摩耗を抑制することが可能である。
また、吸収塔内に同一水平面上に並列配置された吸収液配管に設けられた複数のスプレノズルの中では、各吸収液配管の両端部に設置されるスプレノズルが他のスプレノズルに比べて吸収塔内壁に近接するため、内壁への衝突速度が大きく、吸収塔内壁の摩耗は、これら内壁に近接するスプレノズルからの噴霧液による影響が大きいと言える。
従って、請求項2又は請求項5に記載の発明によれば、請求項1又は請求項4に記載の発明の作用に加えて、各吸収液配管の両端部に設置されるスプレノズルからの噴霧吸収液が直接衝突する部分に貯留部を設けることで、効果的に吸収塔内壁の摩耗を防止できる。
図7には、摩耗成分濃度が5%の場合における摩耗速度の吸収液スラリ流速依存性を示す。図中の横軸は吸収液スラリの材料への衝突速度(衝突流速)、縦軸は衝突速度15m/sを基準とした場合の摩耗速度の相対比である。使用した装置や測定条件などは図4の場合と同様である。なお、衝突速度=噴射速度とした。
この結果より、摩耗速度は衝突速度の約3乗に比例しており、衝突速度の低減が摩耗抑制に有効であることが分かる。すなわち、吸収液スラリが衝突する内壁部分に、液体を溜めた貯留部を設けることで、噴霧された吸収液スラリは直接内壁には衝突せず、まず貯留部内の液体に衝突することで、速度が低下する。従って、摩耗速度は大幅に低減される。また、衝突速度が5m/s以下であれば摩耗量は実質的に無視できる値まで減少する。
一般に、吸収液スラリ流によるステンレス鋼の摩耗の発生には、臨界流速があることが知られており、下記の式(5)で表すことができる。
W=k(Vsinθ−A)×(Vcosθ−BVsinθ) (5)
ここで、W:損傷量(摩耗量に同じ)(mg/Kg)、V:粒子(摩耗成分粒子)の衝突速度(m/s)、θ:衝突角度(degree)、k:定数、A:垂直(材料面に対して垂直、図13のPの向き)方向に摩耗成分粒子が侵入するために必要な垂直速度の閾値、Bsinθ:水平方向(材料面に対して平行、図13のQの向き)に材料を押しのける(変形を与える)ために必要な水平速度の閾値である。
図7の結果から、摩耗成分を5%含有する条件における閾値は流速5m/s前後であることが分かる。貯留部の液量が少なく、貯留高さ(液面高さ)が低いと、吸収液スラリ流の衝突速度を緩和する効果が減少してしまうが、閾値であるこの衝突速度以下まで衝突速度を減少させることが可能な高さに貯留することで摩耗速度の抑制が可能である。
液面高さと吸収液の衝突速度との関係は、以下のように求めることができる。まず、図8に示す装置を用いて、液面高さと摩耗速度との関係を求めた。スラリタンク31内にテストピース29を沈め、吸収液スラリの液面高さH(液面とテストピース29の衝突部位35間の距離)を変えてノズル25の先端部が液面に一致するようにノズル25を図示しない支持部材で支持しながら吸収液スラリを噴射した。図8(a)には正面断面図を図8(b)には側面断面図を示している。液面高さHはテストピース29の位置を変えることで変更した。測定条件は、図4の場合と同様に、吸収液スラリの温度は常温、試験時間は24時間(6時間×4日)、噴射速度を15m/s、噴射角度を45°とし、摩耗速度を24時間試験後の摩耗深さから算出した。摩耗深さは、表面粗さ計により測定した。図9に結果を示す。
従って、この関係と図7のグラフから貯留高さと吸収液の衝突速度との関係を算出することで、衝突速度5m/s以下を達成する貯留高さを求めることができる。
なお、吸収塔内壁の壁面材料や吸収液スラリ中の摩耗成分濃度は、使用環境や運用条件によっても異なる。液体の貯留高さが高いと衝突の緩和作用が大きくなることから吸収液の衝突速度が低くなるため、貯留高さを、所定の摩耗速度(ほぼゼロに限らず、許容範囲で足りる)を満たす衝突速度となる高さ以上にすれば良い。
従って、請求項3又は請求項6に記載の発明によれば、請求項1又は請求項4、請求項2又は請求項5に記載の発明の作用に加えて、貯留部に、所定の摩耗速度を満たす衝突速度となる貯留高さ以上に液体を貯留することで、優れた摩耗抑制効果が発揮される。
なお、円筒形の脱硫塔では、部位により内壁に近接するスプレノズルの内壁までの距離が異なるが、その最大距離に応じて貯留部の構造を変更する(例えば、内壁からの突出長さを変える)ことで、対応が可能である。
本発明によれば、石灰石−石膏法排煙脱硫装置において、激しい摩耗損傷が懸念される、石灰石の純度が低い低品位石灰石を用いた場合でも、吸収塔内壁の壁面材料を変更することなく、高い耐摩耗性を付与することが可能である。また、吸収塔内壁の年間の摩耗速度を減少させることができるため、ライニング施工時に想定される短期間での補修メンテナンスが不要となる。
すなわち、請求項1又は請求項4に記載の発明によれば、噴霧吸収液が直接内壁には衝突せず、貯留部内の液体に当たってから衝突することで内壁への衝突速度が低下するため、内壁の摩耗速度を減少させることができる。
請求項2又は請求項5に記載の発明によれば、請求項1又は請求項4に記載の発明の作用に加えて、吸収塔内壁に近接するスプレノズルからの噴霧液の衝突速度が低下するため、効果的に吸収塔内壁の摩耗を防止できる。
また、請求項3又は請求項6に記載の発明によれば、請求項1又は請求項4、請求項2又は請求項5に記載の発明の効果に加えて、液体の貯留高さを、所定の摩耗速度を満たす衝突速度となる高さ以上にすることで、より吸収塔内壁の摩耗の抑制効果を向上させることができ、また摩耗速度が無視できる程度の衝突速度にすることもできる。
本発明の一実施例である排煙脱硫装置の吸収塔の側面図である。 図1の吸収塔の吸収液配管部分の平面図である。 図1の内壁近傍のスプレ部の拡大図である。 吸収液スラリ中の摩耗成分濃度と吸収塔内壁の壁面材料の摩耗速度との関係を示した図である。 吸収液スラリ中の摩耗成分濃度と摩耗速度との関係を求めるために使用した装置の模式図である。 吸収液スラリ中の摩耗成分濃度が5%の場合における摩耗速度の衝突角度依存性を示した図である。 吸収液スラリ中の摩耗成分濃度が5%の場合における摩耗速度の吸収液スラリ流速依存性を示した図である。 貯留部の液面高さと摩耗速度との関係を求めるために使用した装置の模式図である。 貯留部内の液面高さと摩耗速度との関係を示した図である。 貯留部内の液面高さと吸収液スラリの衝突速度との関係を示した図である。 従来技術の排煙脱硫装置の吸収塔の側面図である。 図11の吸収塔の吸収液配管部分の平面図である。 図11の内壁近傍のスプレ部の拡大図である。 図11の内壁近傍のスプレ部の別の例の拡大図である。
以下に、本発明の実施の形態を示す。
図1には、本発明の一実施例である排煙脱硫装置の吸収塔1の側面図を示す(内部も示している)。図2には、図1の吸収塔の吸収液配管2部分の平面図(一部)を示し、図3には、図1の内壁近傍のスプレ部5の拡大図を示す。
火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から排出される硫黄酸化物を含む排ガスは、図示していない脱硫ファンにより入口ダクト12から矢印X方向(ほぼ水平方向)に流れて吸収塔1に導入された後、上昇し、出口ダクト13から矢印Y方向に排出される。この間、石灰石又は石灰を含むスラリなどの吸収剤を含んだ吸収液が吸収液配管2を通じ、吸収塔1内に一定間隔で設置されているスプレノズル3から噴霧され、排ガスとの気液接触により、前記(1)〜(4)で示す脱硫反応が生じる。
スプレノズル3から微細な液滴として噴霧される吸収剤の液滴と排ガスとを接触させることで、排ガス中のばいじんやHCl、HF等の酸性ガスと共に、排ガス中のSOxはスプレノズル3の吸収液滴表面で化学的に吸収、除去される。
SOxを吸収した吸収液は、一旦吸収塔1の底部の循環タンク6に溜まり、酸化用撹拌機7によって撹拌されながら、図示しない空気供給管から供給される空気中の酸素により酸化され、石膏を生成する。ボイラ等からの排ガスに含まれるSOx量に応じて、図示しない吸収剤スラリ(主に石灰石スラリ)供給ラインから吸収剤が供給される。炭酸カルシウム及び石膏が共存する循環タンク6にあるスラリ状の吸収液の一部は、図示しない吸収液循環ポンプにより昇圧され、吸収液循環配管8を経由して、吸収塔1内の上部の吸収液配管2に供給され、一部は図示しない吸収液抜き出し管より図示しない廃液処理・石膏回収系へと送られる。
このように、吸収液スラリは吸収塔1内全体に噴霧されるが、殆どの吸収液は内壁に衝突せず、内壁に衝突する場合でも吸収液同士が衝突した後、間接的に衝突する場合が多い。また、一旦内壁に衝突してもそのまま流下するため、吸収液スラリが直接衝突する内壁部分は限られ、特に塔中心から外側にある、内壁に近接するスプレノズル3からの噴霧吸収液が内壁に直接衝突しやすい。
図2に示す例では、複数の吸収液配管2が吸収塔1内に同一水平面上に並列配置されており(図示例では平行である)、各吸収液配管2の両端部に設けられたスプレノズル(色の付いたスプレノズル)3aが他のスプレノズル3bに比べて内壁に近接しているため、これらのスプレノズル3aからの噴霧液は、他のスプレノズル3bからの噴霧液に比べて内壁への衝突速度が非常に大きいと言える。
そこで、本実施例では、スプレノズル3aからの吸収液スラリが衝突する内壁部分に、吸収液スラリを溜めた樋(貯留部)20を設け、樋20内の吸収液スラリにスプレノズル3から噴霧される吸収液スラリを当てることによって内壁への衝突速度を低下させ、内壁の摩耗速度を減少させている。なお、本実施例では、分かりやすいように各吸収液配管2の両端部に設けられたスプレノズル3aを吸収塔1の内壁に近接するノズルとしているが、各吸収液配管2の両端部のスプレノズル3aに限らず、それ以外のスプレノズル3bであっても、内壁に近くて内壁部分への衝突速度が、基準とする衝突速度(摩耗が実質的に無視できる程度の速度であり、例えば、摩耗成分濃度が5%の場合は5m/s)以上となるスプレノズル3a(又は3b)を対象とすると良い。
また、吸収液配管2は上下方向に複数段(図示例では3段)設置されているため、各段に樋20を設置すると良い。なお、樋20の位置は、吸収液スラリの噴霧条件によっても違ってくるが、各プラントにおける運用条件はほぼ決まっているため、各プラントに合わせて特に摩耗が激しいと予測される位置に設置すると良い。
本実施例により、噴霧された吸収液スラリは直接内壁には衝突せず、まず樋20内の吸収液スラリに衝突することで、流速が低下する。その後、間接的に内壁に衝突するため、摩耗速度は大幅に低減される。例えば、樋20は断面L字型や断面コの字型(断面U字型でも良い)の部材から形成される。素材は、ポリプロピレン(PP)樹脂、炭化ケイ素(SiC)などで良い。
樋20内には液体を溜めれば良く、液体として固体物が含まれることもある液状物や油、海水、工業用水等も含まれるが、循環タンク6内に液体が流入する場合を考慮すると、生成する石膏を汚染するため、脱硫に用いる吸収液スラリを用いることが好ましい。この場合は、新たな動力を必要とせずに吸収塔内壁の摩耗を抑制することが可能である。
摩耗対策の対象とするスプレノズル3は、例えば吸収液スラリ中の摩耗成分(SiO2及びAl23)濃度が5%の場合(低品位石灰石を用いた場合に想定される濃度)には、吸収塔1の設計上の壁面への吸収液スラリの衝突速度(先の基準とする衝突速度)が5m/s以上のものとする。なお、この基準となる衝突速度は、各予想環境において実施する予備試験により決定される。すなわち、各プラントのスラリ中の摩耗成分濃度を用いた摩耗試験により、決定される。
また、スプレノズル3と内壁との距離は、円筒形の吸収塔に設置される場合は部位により異なる。図3(a)には、各吸収液配管2の両端部のスプレノズル3aのうち、内壁に最も近接するスプレノズル3aaを示し、図3(b)には、各吸収液配管2の両端部のスプレノズル3aのうち、内壁に最も遠いスプレノズル3abを示しており、図3(a)、図3(b)共に衝突角度θが45°の場合を示している。
まず、樋20及び液面の高さ方向の位置は、最も近接するスプレノズル3aaを基準とする。スプレノズル3aaと液面間の距離L3が壁面1aとスプレノズル3aa間の距離L2よりも小さくなるようにする(L3<L2)。その理由は、衝突角度θが45°の場合はL3をL2よりも大きくすると、噴射されたスラリ吸収液が液面に到達せずに壁面1aに直接衝突してしまうからである。そして、樋20及び液面の水平方向の位置は、対象とするスプレノズル3a(この例では衝突速度が5m/s以上のもの)のうち、最も遠いスプレノズル3abを基準とする。樋20の上部の突出長さL1が、スプレノズル3abから噴射されたスラリ吸収液が液面に到達する位置と壁面1a間の距離Lよりも大きくなるようにする(L4<L1)。L4<L1とすることで、樋20内の液で噴射されたスラリ吸収液を受けることができる。
なお、円筒形の脱硫塔では、部位により内壁に近接するスプレノズル3の内壁までの距離が異なるため、その最大距離に応じて上記L1を変更すれば良い。
また、図7からも明らかなように、衝突速度が5m/s以下であれば摩耗量は実質的に無視できる値まで減少する。図10には、貯留部内の液面高さと吸収液スラリの衝突速度(衝突流速)との関係を示す。このグラフは、吸収塔1の内壁材料(SUS316L)表面の液面高さと摩耗速度の減少を実験的に評価した結果である。横軸は吸収液スラリの液面高さを示し、縦軸は各液面高さ条件における摩耗速度から衝突速度を算出したものである。各液面高さ条件における摩耗速度は、図9に示した通りである。図9には液面高さが17mm程度までしか示していないが、それ以降は予測値により求めることができる。
なお、図3ではスプレノズル3aaと液面間の距離L3があり、実際はスプレノズル3aと液面との間に空間部を有するが、図8に示す装置ではノズル25の先端部が液面に一致する条件とした。その理由は、前記空間部があってもスプレノズル3aから噴霧される吸収液が受ける空気抵抗や排ガス流れや重力などによって減速又は増速される吸収液の速度に比べて、液に流入してから減速する速度変化の方が大きいため、前記空間部による吸収液の速度変化は無視できるという前提による。
また、噴射された吸収液スラリが液面で跳ね返ってから壁面1aに当たる場合は減速度合が大きいため、摩耗にはほとんど影響しないと思われる。従って、この条件では液中に進入した吸収液スラリがそのまま進んで壁面1aに衝突する場合を想定している。そして、衝突角度の条件を揃えるために図8のノズル25は拡散して噴射するノズルではなく、真下に噴射するノズルを用いた。ノズル25の先端とテストピース29との距離は十分短いため、図8におけるHは壁面1aに設ける液の厚み(壁面1aに対して垂直方向の高さ)にほぼ相当し、ここで、吸収液スラリの衝突角度は45°であることから、この厚みが液面高さH1になるという考え方である。なお、吸収液スラリの噴射角度を変えた場合は、図8に示す装置の条件もそれに合わせて変えれば、図9に示すデータが取れることは言うまでもない。
そして、図10からも分かるように、樋20内に吸収液スラリを溜めた場合、摩耗抑制の閾値である流速5m/s以下まで衝突速度を低下させるためには、吸収液スラリの液面高さH1を22.5mm以上とすることが必要であるが、誤差等を考慮すると25mm以上確保すれば良い。従って、高さ(貯留高)が25mm以上の樋20を用いて、吸収液スラリを液面高さH1が25mm以上になるように溜めておくことで、摩耗速度の大幅な低減が可能である。スプレノズル3からは常時吸収液スラリが噴霧されているので、排煙脱硫装置の運転前に樋20内に吸収液スラリを貯留しておけば、その後補給する必要もない。
以上説明したように、本実施例で示した吸収塔1の内壁構造は、複数のスプレノズル3の中で内壁に近接するスプレノズル3aからの吸収液スラリが直接衝突する部分に吸収液スラリを溜めた樋20を形成することで、吸収液スラリの衝突速度を低下させ、摩耗を抑制するものである。本実施例により、内壁の摩耗による損傷は大幅に低減される。
なお、本実施例は、摩耗成分であるSiO2、Al23を1%以上含有する低品位石灰石を吸収液に用いた場合のみならず、高品位石灰石を吸収液に用いた場合の排煙脱硫装置や除塵塔にも適用可能である。
排煙脱硫装置に限らず、その他の排煙装置にも利用可能性がある。
1 吸収塔 2 吸収液配管
3 スプレノズル 4,5 内壁近傍のスプレ部
6 循環タンク 7 攪拌機
8 吸収液循環配管 12 入口ダクト
13 出口ダクト 20 樋
21 スラリタンク 23 ポンプ
25 スプレノズル 27 スラリライン
29 テストピース 31 スラリタンク
35 衝突部位

Claims (6)

  1. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを導入し、石灰石又は石灰を含むスラリを含有する吸収液を噴霧して排ガス中に含有される硫黄酸化物を吸収、除去する吸収塔を備えた排煙脱硫装置において、
    吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分に、噴霧吸収液を受けて吸収液の吸収塔内壁への衝突速度を緩和する液体を貯留した貯留部を設けたことを特徴とする排煙脱硫装置。
  2. 前記吸収塔は、吸収液を噴霧する複数のスプレノズルと、同一水平面上に並列配置され、前記複数のスプレノズルを有する複数の吸収液配管とを備え、
    前記貯留部は、各吸収液配管の両端部に設置されるスプレノズルからの噴霧吸収液が直接衝突する部分に設けられていることを特徴とする請求項1記載の排煙脱硫装置。
  3. 吸収液中の摩耗成分濃度が所定濃度の場合の吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分の摩耗速度と吸収液の衝突速度との関係及び貯留部内の液体の貯留高さと噴霧吸収液が液体を介して間接的に吸収塔内壁に衝突する部分の摩耗速度との関係から求められた、貯留部内の液体の貯留高さと吸収液の衝突速度との関係から、前記貯留部内の液体の貯留高さを、所定の摩耗速度を満たす衝突速度となる高さ以上としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排煙脱硫装置。
  4. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを、石灰石又は石灰を含むスラリを含有する吸収液を噴霧する構成を備えた吸収塔に導入し、排ガス中に含有される硫黄酸化物を吸収、除去する排煙脱硫方法において、
    吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分に、液体を貯留し、噴霧吸収液を前記液体で受けることで吸収塔内壁への衝突速度を緩和させることを特徴とする排煙脱硫方法。
  5. 前記吸収塔は、吸収液を噴霧する複数のスプレノズルと、同一水平面上に並列配置され、前記複数のスプレノズルを有する複数の吸収液配管とを備え、
    各吸収液配管の両端部に設置されるスプレノズルからの噴霧吸収液が直接衝突する部分に液体を貯留することを特徴とする請求項4記載の排煙脱硫方法。
  6. 吸収液中の摩耗成分濃度が所定濃度の場合の吸収塔内壁の噴霧吸収液が直接衝突する部分の摩耗速度と吸収液の衝突速度との関係及び液体の貯留高さと噴霧吸収液が液体を介して間接的に吸収塔内壁に衝突する部分の摩耗速度との関係を求め、これらの関係から液体の貯留高さと吸収液の衝突速度との関係を算出し、前記液体を、所定の摩耗速度を満たす衝突速度となる高さ以上に貯留することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の排煙脱硫方法。
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