JP2016176101A - プレス成形用表面処理鋼板およびプレス成形品 - Google Patents

プレス成形用表面処理鋼板およびプレス成形品 Download PDF

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亮介 大友
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敬祐 小澤
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実佳子 武田
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Abstract

【課題】亜鉛系めっき層上の酸化亜鉛をできるだけ低減してその上に形成される塗膜との良好な密着性を確保することのできるプレス成形品、およびこうしたプレス成形品を実現するためのプレス成形用表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】本発明のプレス成形用表面処理鋼板は、熱間でプレス成形してプレス成形品を得るための表面処理鋼板であって、素地鋼板の少なくとも片面に、亜鉛系めっき層を有すると共に、該亜鉛系めっき層の表面にSn層を有しており、前記Snの付着量が片面あたり0.5〜20g/m2である。
【選択図】なし

Description

本発明は、主に自動車の車体や各種自動車用部品等に適用されるような、強度が必要とされるプレス成形品、およびこのようなプレス成形品を製造するための素材として有用な表面処理鋼板に関する。
近年、自動車の燃費向上対策の一つとして、車体の軽量化が進められており、自動車に使用される鋼板をできるだけ高強度とすることが必要となる。こうしたことから、引張強度が980MPaを超える高強度鋼板を用いた自動車用部品が多く適用されている。一方、鋼板の高強度化に伴って、部品加工時の金型寿命低下が生じたり、スプリングバックによる部品形状のばらつきが拡大する等の問題がある。
このような課題を解決するために、鋼板をAc1変態点以上の温度、即ち約900℃程度以上の温度に加熱してオーステナイト化し、鋼板よりも低温の金型によってプレス成形する熱間プレス成形法が開発されている。こうした熱間プレス成形法によれば、鋼板の低強度状態でプレス成形されるので、部品加工時の金型寿命低下が生じたり、スプリングバックによる部品形状のばらつきが拡大するという上記問題も解消される。
熱間プレス成形法においては、焼入れ性の良好な鋼板を用い、鋼板と金型の温度差を利用した急冷熱処理、即ち焼入れを実施することで、高強度のプレス成形品を製造できる。こうした熱間プレス成形法は、特に引張強度で1470MPa以上のプレス成形品を製造するための工法として広まりつつある。尚、このような熱間プレス成形法は、ホットプレス法の他、ホットスタンプ法、ホットスタンピング法、ダイクエンチ法等、様々な名称で呼ばれている。
ところで自動車用部品のうち、高耐食性が求められるサイドメンバ、サイドシル、クロスメンバ、ピラー下部等は、犠牲防食効果を発揮させることが必須となる。よって、これらの自動車用部品の製造には、部品材料として亜鉛系めっき鋼板が多用されている。
耐食性が要求されるような各種自動車部品は、従来から、亜鉛系めっき鋼板に冷間加工を施して製造されてきた。これに対し、近年では、亜鉛系めっき鋼板を用い、上記熱間プレス成形法によって成形することで、高強度で且つ高耐食性を示す部品が製造されつつある。
しかしながら、亜鉛系めっき鋼板を用いて熱間プレス成形を行うと、めっき層を構成する亜鉛が加熱によって酸化されやすくなり、プレス成形後の鋼板の表面には亜鉛の酸化皮膜(酸化亜鉛)が生成する。そのため、部品成形後に防錆のために施される電着塗装膜等の塗膜の密着性が悪化する。その結果、製品としての価値が低減し、自動車部品として適用できないという問題がある。
酸化亜鉛の生成に伴う上記問題を解決する技術として、これまでにも様々提案されている。例えば、特許文献1には、亜鉛系めっき層の上に酸化亜鉛層を実質的に存在しない構成とすることによって、化成処理、塗装後の塗装密着性を確保した熱間プレス成形品が提案されている。この技術において、亜鉛系めっき層上の酸化亜鉛を低減するため、プレス成形後に、めっき層表面にショットブラストや液体ホーニングを行うことが提案されている。
特開2004−323897号公報
上記特許文献1のように、めっき層表面にショットブラストや液体ホーニングを行なうことは、それだけ生産工程数が増加することになり、また酸化亜鉛を除去するにはそれ相当の時間を要することになる。その結果、良好な生産性が実現できないという点で、実操業的な技術とはいえない。
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、亜鉛系めっき層上の酸化亜鉛をできるだけ低減してその上に施される塗膜との良好な密着性を確保することのできるプレス成形品、およびこうしたプレス成形品を実現するためのプレス成形用表面処理鋼板を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明のプレス成形用表面処理鋼板は、熱間でプレス成形してプレス成形品を得るための表面処理鋼板であって、素地鋼板の少なくとも片面に、亜鉛系めっき層を有すると共に、該亜鉛系めっき層の表面にSn層を有しており、前記Snの付着量が片面あたり0.5〜20g/m2である点に要旨を有する。
本発明のプレス成形用表面処理鋼板において、前記Sn層としては、Snめっき層、Sn溶射層またはSnスパッタ蒸着層が例示できる。また前記亜鉛系めっき層としては、亜鉛めっき層、合金化された亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層が例示できる。
本発明のプレス成形用表面処理鋼板で用いる素地鋼板は、その化学成分組成については、特に限定されないが、プレス成形品としての基本的な機械的特性を発揮させるためには、下記の化学成分組成を有するものが好ましい。即ち、質量%で、
C :0.15〜0.4%、
Si:0%超、3%以下、
Mn:0〜3%、
Al:0%超、0.1%以下、および
B :0〜0.01%
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる化学成分組成を有する素地鋼板であることが好ましい。
前記素地鋼板は、必要によって、更に、質量%で(a)Ti:0%超、0.1%以下、(b)Cr、NiおよびCuよりなる群から選択される1種以上:合計で0%超、1%以下等を含有させることも有用である。
本発明には、上記プレス成形用表面処理鋼板を熱間プレス成形して得られたプレス成形品も包含される。
本発明には、素地鋼板の少なくとも片面に、亜鉛系めっき層を有すると共に、該亜鉛系めっき層の表面に二酸化スズ層を有するプレス成形品も包含される。
本発明によれば、素地鋼板の少なくとも片面に、亜鉛系めっき層を有すると共に、該亜鉛系めっき層の表面に所定量のSn層を有する表面処理鋼板を採用することによって、熱間プレス成形時での亜鉛系めっき層における酸化を防止し、良好な塗膜密着性を確保することのできるプレス成形品が得られる。
図1は、塗膜剥離試験で用いたサンプルの概略説明図である。
本明細書において塗膜密着性とは、亜鉛系めっき層の上に通常施される電着塗装膜等の塗膜との密着性を意味する。亜鉛系めっき層の上には、通常、耐食性向上のためリン酸亜鉛皮膜等の化成処理皮膜と、その上に上記塗膜が形成される。よって、本発明における塗膜密着性とは、上記化成処理皮膜を有する場合は、上記化成処理皮膜を介した上での塗膜との密着性を意味する。尚、化成処理皮膜は当該皮膜を構成する結晶のアンカー効果により、上記塗膜との密着性は良好であるため、化成処理皮膜・塗膜間での密着性が問題になることはない。
本発明者らは、亜鉛系めっき鋼板を使用して熱間プレスを行なったプレス成形品において、亜鉛系めっき層中の酸化亜鉛が塗膜密着性を劣化させる原因について検討した。その結果、次のような知見が得られた。
プレス成形品が、組立て、塗装されて自動車として使用される場合、雨水等が浸潤したときに酸化亜鉛が存在すると、塗膜下の腐食が発生しやすい状態となる。特に海塩や路上に散布された融雪剤に含まれる塩類を含んだ塩水腐食環境において、塗膜下に発生した亜鉛錆部では、pH>10の塩基性となり、酸化物や水酸化物からなる亜鉛錆部は溶解してしまう。このように、特に塩化物イオンを含む腐食環境下において塗膜密着性が顕著に劣化する理由は、塗膜に浸潤した水、および水に含まれる溶存酸素と塩化物イオンにより、酸化亜鉛の下に存在する亜鉛系めっき層の腐食が進行するためと考えられる。
そこで本発明者らは、上記のような腐食環境下であっても、酸化亜鉛の生成を抑制し得る熱間プレス成形用鋼板の構成について、様々な角度から検討した。その結果、亜鉛系めっき層の上(表面)にSn層を有する構成とすることによって、上記のような腐食環境下での塗膜密着性が改善できることを見出し、本発明を完成した。上記Sn層は後記する方法で比較的簡単に形成することができ、また熱間プレス成形後に除錆等の余分な工程を経なくても良いので、プレス成形品を製造するときの生産性も良好となる。しかも、Sn層と亜鉛系めっき層との密着性は、基本的に良好である。
亜鉛系めっき層の上にSn層を有する構成とすることによって、塗膜密着性が向上する理由については、その全てを解明し得た訳ではないが、おそらく以下のような機構によるものと推定される。
熱間プレス成形時に亜鉛系めっき層上のSnは、プレス時の雰囲気中に含まれる酸素によって酸化されて二酸化スズに変化する。塗膜密着性の劣化が顕著に発生する塩基性環境下では、二酸化スズは、亜鉛の酸化物や水酸化物よりも安定であるため、錆の溶解にともなう塗膜下での腐食の進行が抑制され、塗膜密着性が向上すると考えられる。
本明細書において、Sn層とは、Snを含む層であれば特に限定されず、純Sn、Snを主体とする合金(例えば、Snを約50質量%以上含むSn−Cu系合金、Sn−Pb系合金)等が挙げられる。
上記Sn層による塗膜密着性向上効果を十分に発揮させるためには、Sn(金属Sn量換算)の付着量(以下、「Sn付着量」と呼ぶことがある)を、片面あたりで0.5g/m2以上とする必要がある。好ましくは1.0g/m2以上であり、より好ましくは1.5g/m2以上である。上記Sn付着量は、片面あたりの量である。尚、Sn層がSn合金からなる場合には、上記「Sn付着量」は、合金中に含まれるSnのみの付着量(金属Sn量換算)を意味する。
本発明の表面処理鋼板では、両面の耐食性が必要となる場合もある。その場合には、表面処理鋼板は素地鋼板の両面に亜鉛系めっき層が形成されると共に、夫々の亜鉛系めっき層上に上記した付着量のSn層が形成される。夫々の面でのSn付着量は、最終製品であるプレス成形品の要求特性に応じて、同一であっても良いし異なっていても良い。
Sn付着量の上限は、塗膜密着性への寄与を考慮すると特に限定されないが、Sn付着量が多すぎると熱間プレス成形時に金型へのSn凝着が発生することがある。これは、Sn付着量が多くなりすぎると、熱間プレス成形時に低融点の金属Snが多量に金型表面に残存するためと推定される。このため、熱間プレス成形前の加熱条件、即ち加熱温度、所定温度までの加熱時間、加熱パターン等に応じてSn付着量の上限を設ける必要がある。
例えば、室温から900℃程度までを、2分〜5分程度かけて比較的ゆっくりと加熱する場合には、Sn付着量は20g/m2以下とする必要がある。好ましくは15g/m2以下であり、より好ましくは10g/m2以下である。また室温から900℃程度までを3秒〜1分間かけて比較的急速に加熱する場合には、Sn付着量はできるだけ少なくても良く、Sn付着量は10g/m2以下であることが好ましい。より好ましくは5g/m2以下である。
Sn層の形成方法としては、電気めっき法や溶融めっき法等のめっき法の他、溶射法等が挙げられる。これらの方法によって、Snめっき層、Sn溶射層を形成することによって、所望とする特性を発揮するSn層が形成できる。或いは、鋼板をブランクに切断してから、スパッタ蒸着によってSnスパッタ蒸着層を形成することもできる。これらのうち、連続ラインで鋼板を製造する場合には、安価に均一なSn層が得られるという観点からすれば、電気めっき法や溶融めっき法等のめっき法を採用することが望ましい。
一方、素地鋼板表面に形成される亜鉛系めっき層の種類は特に限定されず、亜鉛めっき層、合金化された亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層等を採用することができる。上記亜鉛めっき層としては、例えば純亜鉛めっき層の他、少量のAl等を含む亜鉛めっき層が挙げられる。上記合金化された亜鉛めっき層は、上記亜鉛めっき層を合金化することによって得られるものである。また、上記亜鉛合金めっき層は、亜鉛を主体とし、他の合金元素を含むものであり、例えばFe−Zn合金めっきやZn−Ni合金めっき等が挙げられる。この亜鉛合金めっき層は、Znを75質量%以上含むことが好ましい。尚、上記Sn層を形成する方法として電気めっき法を採用する場合には、その下地層としてZn−Ni合金めっき層等の亜鉛合金めっき層を採用することが、Sn層形成時におけるウィスカの生成抑制という観点から好ましい。
上記亜鉛系めっき層の形成方法は特に限定されず、電気亜鉛めっき法、溶融亜鉛めっき法の他、合金化溶融亜鉛めっき法を採用でき、めっき層の種類やめっき膜厚に応じて適宜採用すれば良い。
亜鉛系めっき層を形成するときのめっき条件は特に限定されず、一般的に行われているめっき条件に従えば良い。例えば溶融めっき層を形成するときのめっき条件は、めっき槽の浴温度は420〜480℃程度、浸漬時間は1〜10秒程度である。まためっき処理後に更に合金化処理を行うときの条件は、例えば大気や窒素雰囲気下で、好ましくは470℃以上、650℃以下で、5秒以上、10分以下で保持して行うことができる。より好ましい温度は、490℃以上、600℃以下であり、より好ましい保持時間は、10秒以上、5分以下である。また合金化温度から室温までの冷却条件は、特に問わないが、通常は平均冷却速度10〜50℃/秒程度の冷却を行う。
亜鉛系めっき層の付着量(以下、「亜鉛めっき付着量」と呼ぶことがある)は、耐食性を確保するために片面あたり30g/m2以上であることが好ましい。亜鉛めっき付着量を片面あたり30g/m2以上とすることで、十分な耐食性を得ることができる。より好ましくは40g/m2以上であり、更に好ましくは50g/m2以上である。
一方、亜鉛めっき付着量が多すぎても、その量に応じた耐食性が発揮されるとは限らず、無駄にコストが大きくなるため、目安として片面あたり100g/m2以下であることが好ましい。亜鉛系めっき層が素地鋼板の両面に形成される場合には、最終製品であるプレス成形品の要求特性に応じて、夫々の面での亜鉛めっき付着量は、上記の範囲内で同一であっても良いし異なっていても良い。
本発明の表面処理鋼板に用いられる素地鋼板の種類は特に限定されず、熱延鋼板または冷延鋼板、更には必要に応じてこれら鋼板に焼鈍等の熱処理を施した鋼板のいずれも採用できる。具体的には、(1)熱延鋼板、または当該熱延鋼板の表面に形成される酸化皮膜を除去した鋼板、(2)上記(1)の熱延鋼板を更に冷間圧延した冷延鋼板、(3)前記(1)、(2)の各鋼板を更に熱処理した鋼板、(4)前記(3)での熱処理後に表面を洗浄した鋼板等を素地鋼板として用いることができる。尚、上記焼鈍等の熱処理では、素地鋼板の硬さが調節され、製造性、通板安定性等を改善できる。
上記のうち例えば熱延鋼板を製造する方法は特に限定されないが、具体例としては、熱間圧延前の加熱温度:約1100〜1300℃、仕上げ圧延温度:800〜950℃、巻取り温度:500〜700℃等の条件を採用することができる。また上記冷延鋼板は、前記熱延鋼板に対し、例えば冷延率:3〜70%程度の冷間圧延を施して得ることができる。
上記素地鋼板の板厚は特に限定されず、熱延鋼板の場合では、2.0〜3.5mm程度であり、冷延鋼板の場合には、0.8〜1.8mm程度である。
上記素地鋼板は、熱間プレス成形品を製造するための高強度鋼板として通常の化学成分組成を有するものであれば良いが、C、Si、Mn、AlおよびBについては、適切な範囲に調整するのが良い。これらの化学成分の好ましい範囲およびその設定理由は下記の通りである。尚、本明細書では、化学成分組成について「%」とは、質量%を意味する。
(C:0.15〜0.4%)
Cは、熱間プレス成形により得られるプレス成形品の強度を確保する上で重要な元素である。こうした観点からC量は、0.15%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.18%以上であり、更に好ましくは0.20%以上である。一方、C量が過剰になると、プレス成形品の溶接性やプレス成形品製造時の延性の確保が困難となる。よってC量は、0.4%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.38%以下、更に好ましくは0.35%以下である。
(Si:0%超、3%以下)
Siは、熱間プレス成形時に残留オーステナイトを形成させる作用を発揮する。この残留オーステナイトは、塑性変形中にマルテンサイトに変態することで、加工硬化率を上昇させる変態誘起塑性を発揮し、最終製品であるプレス成形品の延性、耐衝撃性が向上する。またSiは、固溶強化によって、延性をあまり劣化させずに強度を高める作用も発揮する。こうした作用は、Si量が増加するにつれて大きくなるが、その作用を有効に発揮させるためには、Si量は0.5%以上とすることが好ましい。より好ましくは1%以上であり、更に好ましくは1.2%以上である。一方、Si量が過剰になると、プレス成形品の靭性が劣化する。よってSi量は、3%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.5%以下であり、更に好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1.8%以下である。
(Mn:0〜3%)
Mnは、必要によって添加される元素であるが、素地鋼板の焼入れ性を高め、加熱後の冷却中に、フェライト、パーライト、ベイナイトの生成を抑制し、高強度の確保に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Mn量は0.5%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以上、更に好ましくは1.0%以上である。一方、熱間圧延の負荷等を考慮すると、Mn量は、3%以下とすることが好ましく、より好ましくは2.8%以下、更に好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.1%以下である。
(Al:0%超、0.1%以下)
Alは、脱酸元素として有用な元素である。こうした観点から、Alを好ましくは0%超、より好ましくは0.01%以上含み得る。しかしながら、Al量が過剰になるとAl23の生成により延性等の劣化が生じ得る。よってAl量は、0.1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.08%以下であり、更に好ましくは0.05%以下である。
(B:0〜0.01%)
Bは、必要によって添加される元素であるが、鋼板の焼入れ性を向上させるために有効な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、B量は0.0002%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0003%以上、更に好ましくは0.0005%以上である。一方、B量が過剰になるとその効果が飽和するため、B量は0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.005%以下である。
本発明で用いる素地鋼板の基本的な化学成分組成は、上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。尚、「実質的に鉄」とは、鉄以外にも本発明の素地鋼板、即ち表面処理鋼板の特性を阻害しない程度の微量成分、例えばMg、Ca、Sr、Baの他、La等の希土類元素、およびZr、Hf、Ta、W、Moの炭化物形成元素も許容できる他、P、S、N、O、H等の不可避不純物も含み得る。また、必要によって、更に(a)Ti:0%超、0.1%以下、(b)Cr、NiおよびCuよりなる群から選択される1種以上:合計で0%超、1%以下等を含有させることも有用であり、含有される元素の種類に応じて、プレス成形品の特性が更に改善される。これらの元素を含有させるときの好ましい範囲およびその設定理由は下記の通りである。
(Ti:0%超、0.1%以下)
Tiは、Nを固定し、Bを固溶状態で維持させることで焼入れ性の改善効果を発揮させる。こうした効果を発揮させるためには、Tiは0.04%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上であり、更に好ましく0.06%以上である。しかしながら、Ti量が過剰になって0.1%を超えると、TiCを多量に形成し、析出強化により強度が上昇するが延性が低下する。こうしたことから、Tiを含有させるときの上限は0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.09%以下であり、更に好ましくは0.08%以下である。
(Cr、NiおよびCuよりなる群から選択される1種以上:合計で0%超、1%以下)
Cr、NiおよびCuは、フェライト変態、パーライト変態およびベイナイト変態を抑制するため、加熱後の冷却中に、フェライト、パーライトおよびベイナイトの生成を防止し、残留オーステナイトの確保に有効に作用する。こうした効果を発揮させるためには、合計で0.01%以上含有させることが好ましいが、合金添加コストが上昇することから、合計で1%以下とすることが好ましい。これらの元素含有量のより好ましい下限は、合計で0.05%以上であり、更に好ましくは0.06%以上である。より好ましい上限は、合計で0.9%以下であり、更に好ましくは0.8%以下である。
本発明のプレス成形品は、素地鋼板の少なくとも片面に、亜鉛系めっき層を有すると共に、該亜鉛系めっき層の上に二酸化スズ層を有する。上記二酸化スズ層の上には、部品としての耐食性や塗装の均一性を確保するためのカチオン電着塗装等の処理により塗膜が形成される。また必要に応じて、上記塗膜の下地層として耐食性向上のために通常用いられるリン酸亜鉛皮膜等の化成処理皮膜が施されても良い。前述したとおり化成処理皮膜と上記塗装膜との密着性は良好であるため、リン酸亜鉛皮膜処理が施された場合であっても、二酸化スズ層による塗膜密着性向上効果は十分に発揮される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
下記表1に示したA〜Gの化学成分組成を有する鋼材を溶製し、鋳造してスラブを得た後、熱間圧延を行って板厚:2.3mmの熱延鋼板を得た。この熱延鋼板に冷間圧延を行って板厚:1.4mmの冷延鋼板を作製した。該冷延鋼板に対して、後記表2、3に示す条件で溶融亜鉛めっき処理を行い、鋼板の両面に亜鉛めっき層を有する亜鉛めっき鋼板を作製した。また、一部の材料については溶融めっき浴から引き上げた後、直ちに合金化処理を施して、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。
Figure 2016176101
前記亜鉛めっき処理と合金化処理は、雰囲気制御が可能で加熱冷却機構と亜鉛めっき浴となる坩堝を備え、めっき処理、合金化処理が一貫工程で可能な実験炉を用いて行った。前記めっき処理は、460℃の0.13%Al−Zn浴に3秒間浸漬した。前記合金化処理は5%H2−N2(露点−45℃)の雰囲気で、550℃で20秒間保持することで行った。合金化処理後の冷却はArガスの吹き付けにより行った。このときの冷却開始から室温までの平均冷却速度は10〜15℃/秒とした。
亜鉛めっき鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき付着量は、ガスワイピングにより調整し、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分光分析により測定した。亜鉛めっき付着量は片面あたり、31〜73g/m2とした。
上記の方法で製造した亜鉛めっき鋼板、および合金化亜鉛めっき鋼板を、50mm×150mmの大きさに切断し、真空スパッタ蒸着により、亜鉛めっき層上にSn層を有するサンプルを作製した。このときのSn付着量は、成膜時間で調整し、0.21〜10.9g/m2とした。比較例として、Sn層を形成しないサンプルも作製した。
上記の方法で作製した各サンプルを、通電加熱方式で加熱した。加熱パターンは、室温から900℃まで30秒かけて加熱した後、N2ガスの吹き付けにより急速冷却することにより、熱間プレス成形を模擬した加熱処理とした。
(加熱後の二酸化スズの同定)
加熱処理後の上記サンプルにおける表面組成をX線回折で分析した。このとき用いたX線回折装置は、「X線回折装置 RAD−RU300」(商品名 理学電機社製)とし、線源はCo−Kα線を用い、θ―2θ法により測定して、ICDD(Inter Centre for Diffraction Data:国際回折データセンター)カードNo.41−1445と比較することによって、二酸化スズの有無を確認した。尚、この評価方法によれば、検出限界未満になると、二酸化スズが微量に存在していても、「二酸化スズは無し」と評価される。
(塗膜密着性の評価)
加熱処理後の上記サンプルに対し、アルカリ脱脂洗浄、リン酸亜鉛処理をした後、電着塗装を行った。このときのリン酸亜鉛処理は、日本パーカライジング(株)製のパルボンドL3065(PBL−L3065)を用い、2分間の浸漬により付着量を3g/m2前後に調整した。電着塗装は、日本ペイント(株)製のカチオン電着塗料(パワーニックスエクセル1220)を用いて電圧170Vにて塗装、180℃で15分焼付けを行い、膜厚を15μmに調整した。
以上のように作製したサンプルを、5質量%NaCl水溶液に、50℃で700時間浸漬した。浸漬の際には、サンプルの端部はシールを行い、端部からの腐食や浸漬水の浸潤の効果が無視できるようにした。浸漬終了後、図1に示す評価対象について、セロハンテープによる塗膜剥離試験を行い、電着塗装が剥離した部分の面積率を測定した。評価対象の領域は、熱間プレス成形を模擬した上記加熱処理時において均熱が保たれているサンプル長手方向の中央100mm部×幅方向40mm部(評価面積:40mm×100mm=4000mm2)とした。評価面積に占める塗膜剥離面積率を画像処理によって評価し、5%以下を合格とした。
これらの結果を、亜鉛めっき付着量、合金化の有無およびSn付着量等と共に、下記表2、3に示す。
Figure 2016176101
Figure 2016176101
この結果から、次のように考察できる。まず実験No.3〜5、8〜10、13〜15、18〜20、23〜25、28〜30、32〜34、36〜38、40〜42、44〜46、48〜50、52〜54は、本発明で規定する要件を満足するものであり、鋼板の成分組成にかかわらず、いずれも良好な塗膜密着性が達成されていることが分かる。これらは、亜鉛系めっき層の上に適切な付着量のSn層を有する鋼板を用いた例であり、加熱後の表面に二酸化スズが形成されることによって、亜鉛めっき層中の亜鉛の酸化が抑制され、良好な塗膜密着性が達成されていると考えられる。
これに対し、実験No.1、2、6、7、11、12、16、17、21、22、26、27、31、35、39、43、47、51は、本発明で規定する要件を満たしておらず、塗膜密着性が劣化している。
詳細には、実験No.1、6、11、16、21、26、31、35、39、43、47、51は、亜鉛系めっき層の上にSn層を形成しなかった例であり、加熱後の表面に二酸化スズが形成されず、亜鉛めっき層中の亜鉛の酸化が抑制されず、塗膜密着性が劣化している。
また実験No.2、7、12、17、22、27では、亜鉛系めっき層の上にSn層を形成したが、Sn付着量が不足するため、加熱後の表面に十分な二酸化スズが形成されず、亜鉛めっき層中の亜鉛の酸化が抑制されず、塗膜密着性が劣化している。

Claims (8)

  1. 熱間でプレス成形してプレス成形品を得るための表面処理鋼板であって、素地鋼板の少なくとも片面に、亜鉛系めっき層を有すると共に、該亜鉛系めっき層の表面にSn層を有しており、前記Snの付着量が片面あたり0.5〜20g/m2であるプレス成形用表面処理鋼板。
  2. 前記Sn層は、Snめっき層、Sn溶射層またはSnスパッタ蒸着層である請求項1に記載のプレス成形用表面処理鋼板。
  3. 前記亜鉛系めっき層は、亜鉛めっき層、合金化された亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層である請求項1または2に記載のプレス成形用表面処理鋼板。
  4. 前記素地鋼板は、化学成分組成が、質量%で、
    C :0.15〜0.4%、
    Si:0%超、3%以下、
    Mn:0〜3%、
    Al:0%超、0.1%以下、および
    B :0〜0.01%
    を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載のプレス成形用表面処理鋼板。
  5. 前記素地鋼板は、更に、質量%で、Ti:0%超、0.1%以下を含有する請求項4に記載のプレス成形用表面処理鋼板。
  6. 前記素地鋼板は、更に、質量%で、Cr、NiおよびCuよりなる群から選択される1種以上:合計で0%超、1%以下を含有する請求項4または5に記載のプレス成形用表面処理鋼板。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のプレス成形用表面処理鋼板を熱間プレス成形して得られるプレス成形品。
  8. 素地鋼板の少なくとも片面に、亜鉛系めっき層を有すると共に、該亜鉛系めっき層の表面に二酸化スズ層を有するプレス成形品。
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