JP2017000107A - 新規カルボキシペプチダーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】人体に安全な新規なポリペプチドの提供。【解決手段】以下の(A)、(B)又は(C)のポリペプチド:(A)特定のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(B)特定のアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を示し、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチド;(C)特定のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチド。カルボキシペプチダーゼ活性を有し、至適反応pHが8.0〜8.3で、安定pHが5.5〜8.0であり、至適反応温度が49〜50℃で、温度安定性が5〜30℃であり、分子量が約36kDaであり、機能が金属キレーターにより阻外され、セリプロテアーゼ阻外剤では阻外されない性質を有するポリペプチド。【選択図】なし

Description

本発明は、カルボキシペプチダーゼに関する。
アミノ酸は、タンパク質の構成成分として知られているが、アミノ酸単体またはオリゴペプチドとしても、疾病の予防・治療や、食品の品質改良や味の改善に用いられる。これらのアミノ酸やオリゴペプチドは、微生物や植物、動物等に由来するタンパク質を分解することにより製造される。
カルボキシペプチダーゼは、ポリぺプチド鎖のカルボキシ末端から1個〜数個のアミノ酸単位でペプチド結合を切断する活性を有している。切断されたアミノ酸や生成するオリゴペプチドは医薬品や食品として用いられることから、その製造に使用するカルボキシペプチダーゼも、医薬品や食品と同等の人体に対する安全性が求められる。
従来、サーマス アクアティカス(Thermus aquaticus)由来(特許文献1)、キサントモナス エスピー(Xanthomonas sp.)由来(特許文献2)のカルボキシペプチダーゼが知られている。しかし、これらの微生物自体の人体への安全性が不明であり、これらの微生物に由来するカルボキシペプチダーゼも医薬品や食品に適用するためには十分に安全とはいえない。
また、ストレプトマイセス グリセウス(Streptomyces griseus)由来のカルボキシペプチダーゼが知られている(非特許文献1)が、活性を維持できるpH範囲がpH7〜8と限定されているので、幅広いpH範囲においてタンパク質からアミノ酸やオリゴペプチドを生産することには適さない。非特許文献2には、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌を培養してペプチダーゼを生産することが記載されている。
特開昭63−216481号公報 特開平5−236960号公報
J.Biol.Chem.1972;247(13):4144−54 Protein Expr.Purif.2008;62:244-248
人体に安全な、新規なカルボキシペプチダーゼを提供することを課題とする。
本発明者らは、検討の結果、人体への安全性が確立している微生物から新規なカルボキシペプチダーゼを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(A)、(B)、または(C)のポリペプチド:
(A)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(B)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を示し、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチド;
(C)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加したアミノ酸配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドに関する。
また、本発明は、下記(1)〜(7)の理化学的性質:
(1)作用:カルボキシペプチダーゼ活性を有する
(2)至適反応pH:8.0〜8.5
(3)安定pH:5.5〜8.0
(4)至適反応温度:49〜50℃
(5)温度安定性:5〜30℃
(6)分子量:約36kDa
(7)阻害剤:金属キレーターにより阻害され、セリンプロテアーゼ阻害剤により阻害されない
を有するポリペプチドに関する。
ストレプトマイセス(Streptomyces)属の微生物に由来することが好ましい。
ストレプトマイセス属の微生物がストレプトマイセス シンナモネース(Streptomyces cinnamoneus)であることが好ましい。
また、本発明は、以下の(a)、(b)、(c)または(d)のDNA:
(a)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA;
(b)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号2に示す塩基配列と85%以上の配列同一性を示し、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(d)配列表の配列番号2に示す塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAに関する。
また、本発明は、前記DNAを含むベクターに関する。
また、本発明は、前記ベクターを含む形質転換体に関する。
また、本発明は、前記形質転換体を培養する工程、および培養物からポリペプチドを精製する工程を含む、ポリペプチドの製造方法に関する。
本発明のカルボキシペプチダーゼは人体に無害である。さらに、至適反応pHの範囲が広いことから、幅広いpH範囲でタンパク質からアミノ酸やオリゴペプチドの生産が可能である。
実施例1の結果を示す。 実施例2の結果を示す。 実施例3の結果(作用温度)を示す。 実施例3の結果(温度安定性)を示す。 実施例4の結果(作用pH)を示す。 実施例4の結果(pH安定性)を示す。 実施例5の結果を示す。 実施例6の結果を示す。 実施例7の結果を示す。
本発明のポリペプチドは、下記(1)〜(7)の理化学的性質を有する。
(1)作用:カルボキシペプチダーゼ活性を有する
(2)至適反応pH:8.0〜8.5
(3)安定pH:5.5〜8.0
(4)至適反応温度:49〜50℃
(5)温度安定性:5〜30℃
(6)分子量:約36kDa
(7)阻害剤:金属キレーターにより阻害され、セリンプロテアーゼ阻害剤により阻害されない
以下に、理化学的性質を個別に説明する。
(1)作用
カルボキシペプチダーゼ活性は、ベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを基質として、40℃の条件で1分間当たり1μmolのロイシンを生成する活性をいう。
(2)至適反応pH
至適反応pHはpH8.0〜8.5である。至適反応pHは、ベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを基質として、pH8.0で反応させた場合と比較して90%の活性を維持するpHをいう。
(3)安定pH
安定pHはpH5.5〜8.0である。安定pHでは、ポリペプチドを一定のpHで16時間置いた後でも、元の活性の90%以上が保たれる。
(4)至適反応温度
至適反応温度は49〜50℃である。至適反応温度は、ベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを基質として、51℃で反応させた場合と比較して90%の活性を維持する温度をいう。
(5)温度安定性
温度安定性は5〜30℃である。温度安定性は、ポリペプチドを一定の温度で30分置いた後でも、保温前の活性の90%以上が保たれる温度をいう。
(6)分子量
本発明のポリペプチドは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において約36kDaの分子量を示す。
(7)阻害剤
本発明のポリペプチドは、1,10−フェナンスロリン、EDTAなどの金属キレーターにより阻害され、PMSF、ベンズアミジン(benzamidine)などのセリンプロテアーゼ阻害剤により阻害されない。ここで、阻害の有無は、試験物質の存在下でベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを基質としてアミノ酸分解反応を行った場合のカルボキシペプチダーゼ活性が、試験物質が存在しない場合のカルボキシペプチダーゼ活性と比較して50%以下である場合に阻害されていると判断し、これを超える場合に阻害されないと判断する。
本発明のポリペプチドは、カルボキシペプチダーゼ活性を有する微生物などの生物から単離できる。本発明のポリペプチドの由来生物としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、エッシェリヒア(Escherichia)属、バシラス(Bacillus)属等が挙げられ、中でもストレプトマイセス属が好ましい。本発明のポリペプチドの由来生物としてはストレプトマイセス シンナモネース(Streptomyces cinnamoneus)がより好ましく、ストレプトマイセス シンナモネース TH−2株が最も好ましい。ストレプトマイセス シンナモネース TH−2株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)において、FERM P−17329の寄託番号で寄託されており、当該機関より入手可能である。
また、本発明のポリペプチドは、以下の(A)、(B)、または(C)のポリペプチドである。
(A)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(B)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を示し、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチド;
(C)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加したアミノ酸配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチド。
本発明のポリペプチドと、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがさらにより好ましい。アミノ酸配列の配列同一性は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と、評価対象のアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を総アミノ酸数で除して100を乗じた値で表される。なお、ストレプトマイセス アルブルス(Streptomyces albulus)は配列番号1に示すアミノ酸配列と74.03%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドを有するが、当該ポリペプチドがカルボキシペプチダーゼ活性を有するかどうか不明である。
欠失、挿入、置換および/または付加されたアミノ酸配列の個数は、68個以下であることが好ましく、45個以下であることがより好ましく、22個以下であることがさらに好ましく、9個以下であることがさらにより好ましい。特に好ましくは5個、4個、3個、または2個以下である。
また、本発明のポリペプチドは、前記ポリペプチドの成熟ポリペプチドであってもよい。成熟ポリペプチドとしては、配列表の配列番号1の105〜455番目のアミノ酸からなるポリペプチド、または、配列表の配列番号1の105〜455番目のアミノ酸からなるポリペプチドと好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上の配列同一性を有するポリペプチドが挙げられる。
また、本発明のDNAは、以下の(a)、(b)、(c)または(d)のDNAである。
(a)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA;
(b)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号2に示す塩基配列と85%以上の配列同一性を示し、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(d)配列表の配列番号2に示す塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAは、配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAで、かつカルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAである。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法により行うことができる。ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄して得られるDNAをあげることができる。65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄して得られるDNAであることが好ましく、65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄して得られるDNAであることがより好ましく、65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄して得られるDNAであることがさらに好ましい。
本発明のDNAと、配列番号2に示す塩基配列との配列同一性は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがさらにより好ましい。なお、ストレプトマイセス アルブルス(Streptomyces albulus)のゲノムには配列番号2に示す塩基配列と80.47%の配列同一性を有する塩基配列が存在するが、当該塩基配列がカルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするかどうか不明である。
塩基配列の配列同一性は、配列表の配列番号2に示した塩基配列と評価したい塩基配列とを比較し、両方の配列で塩基が一致した位置の数を比較総塩基数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
配列表の配列番号2に示した塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAは、公知の遺伝子改変方法に準じて調製することができる。
欠失、挿入、置換および/または付加される塩基の数は、205個以下であることが好ましく、136個以下であることがより好ましく、68個以下であることがさらに好ましく、27個以下であることがさらにより好ましく、特に好ましくは20個、10個、5個、4個、3個、または2個以下である。
本発明のポリペプチドをコードするDNAをベクターに挿入することにより、ポリペプチドを発現するベクターを作製できる。また、このベクターで宿主生物を形質転換することにより形質転換体を作製でき、この形質転換体を培養することにより本発明のポリペプチドを発現させることができる。
ベクターは宿主生物内でポリペプチドを発現できるものであればよく、例えばプラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられる。
宿主は前記ベクターにより形質転換され、ポリペプチドを発現することができる生物であればよい。宿主としては、ストレプトマイセス属、エッシェリヒア属、バシラス属、ピキア(Pichia)属等が挙げられる。中でもストレプトマイセス属が好ましく、ストレプトマイセス シンナモネース、ストレプトマイセス リビダンス(Streptomyces lividans)がより好ましい。具体的には、ストレプトマイセス リビダンス1326株が挙げられる。ストレプトマイセス リビダンス1326株は、別名がストレプトマイセス ビオラセオルーバー(Streptomyces violaceoruber)1326株であり、その培養物や精製物を食品に使用した場合の安全性が確認されている。
また、本発明は、細胞を培養する工程、および、培養物からポリペプチドを精製する工程を含む、ポリペプチドの製造方法に関する。細胞は、本発明のポリペプチドを本来発現する細胞であってもよく、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含むベクターを含む形質転換体であってもよい。培養物としては、細胞若しくは菌体の破砕物、培養上清、培養細胞、培養菌体が挙げられる。
細胞培養のための培地は、細胞が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、細胞の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、キシロース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物が挙げられる。その他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、必要に応じて植物油、界面活性剤、シリコンなどの消泡剤を添加してもよい。
培養条件は、培地の種類、培養方法などにより適宜選択すればよく、細胞が増殖し、ポリペプチドを産生できる条件であれば特に制限はない。通常、液体培地中で振盪培養または通気攪拌培養などの好気的条件下で、25〜35℃、好ましくは27〜30℃で24〜96時間行われる。pHは、3.0〜9.0、好ましくは6.0〜8.0に調節される。pHの調整は、無機酸または有機酸、アルカリ溶液などを用いて行うことができる。
タンパク質が宿主菌体内に蓄積する場合には、培養終了後、遠心分離によって形質転換細胞を回収し、得られた菌体を超音波処理などによって破砕した後、遠心分離などによって無細胞抽出液を得る。これを出発材料とし、塩析法や、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーなどの一般的なタンパク質精製法により精製することができる。発現したタンパク質が細胞外に分泌される場合には、培養上清から同様に精製することができる。
本発明のポリペプチドによりタンパク質を分解してアミノ酸やオリゴペプチドを生産することができる。タンパク質としては、カゼイン、コラーゲン、ダイズタンパクなどが挙げられる。本発明のポリペプチドを使用して生産されるアミノ酸としては、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンなどが挙げられる。また、本発明のポリペプチドを使用して生産されるオリゴペプチドとしては、C末端のアミノ酸がロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンなどでないオリゴペプチドが挙げられる。
タンパク質の分解は、例えば、40℃、pH7.5の条件により行うことができる。
本発明のポリペプチドを使用して生産されるアミノ酸およびオリゴペプチドは、疾病の予防・治療や、食品の品質改良や味の改善に用いられる。予防・治療対象の疾病としては、例えば高血圧、糖尿病が挙げられる。食品の品質改良としては、例えば苦味分解、旨味増強が挙げられる。
(実施例1)カルボキシペプチダーゼの精製、および分子量の検討
配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNAを放線菌用の発現ベクター(非特許文献2に記載のpTONA5a)に挿入し、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)1326株を宿主として、非特許文献2に記載の方法で培養し、カルボキシペプチダーゼを菌体外に分泌発現させた。この培養上清を、簡易ゲルろ過カラム(GEヘルスケア社製、PD−10カラム)に供し、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を含むカルボキシペプチダーゼを精製した。
精製したカルボキシペプチダーゼの分子量を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により検討した。カルボキシペプチダーゼ6.4μgをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、泳動後のゲルをジェルコード(ライフテクノロジーズ社製)により染色した。結果を図1に示す。約36kDaの付近にカルボキシペプチダーゼに由来するバンドが確認された。
なお、配列番号1のポリペプチドは455アミノ酸からなるが、このポリペプチドは修飾を受け、成熟タンパク質は351アミノ酸からなる。成熟タンパク質のN末端アミノ酸配列を解析した結果、Val−Thr−Asp−Asp−Alaであった。
(実施例2)基質特異性の検討
基質として以下のジペプチドまたはトリペプチド:Z−Gly−Gly−Leu、Z−Gly−Leu、Lys−Leu、Leu−His、Phe−Gly、Z−Gly−Phe、Phe−Ser、Z−Gly−Glu、Z−Pro−Leu、His−Arg、Leu−Pro、N−Ac−Leu、Phe−NH2、Leu−NH2を使用した場合のカルボキシペプチダーゼの活性を測定した。
カルボキシペプチダーゼの活性測定用反応液の組成を表1に示す。
基質としては、ジペプチドあるいはジペプチドとトリペプチドのベンジルオキシカルボニル派生物を使用した。カルボキシペプチダーゼ酵素液として、ゲルろ過カラムPD−10でろ過した培養上清液を含む20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を使用した。
反応は40℃で30分行った。次に反応液を95℃で5分加熱し、酵素を失活させた。その後、反応液を20μl採取し、180μlのLAAO(L−アミノ酸オキシダーゼ、0.2mg/ml)を含む混合物に入れ、40℃で30分反応させた後、505nmの波長の吸光度を測定した(4AP−LAAO法、Arima J.et al.,Appl Microbiol Biotechnol,70:541−547(2006))。カルボキシペプチダーゼ活性の1単位は、1分間あたり1μmoLのアミノ酸を遊離させる酵素量として定義した。結果を図2に示す。なお、Z−Gly−Glu、Z−Pro−Leu、His−Arg、Leu−Pro、N−Ac−Leu、Phe−NH2、およびLeu−NH2はカルボキシペプチダーゼにより加水分解されなかった。
(実施例3)作用温度および温度安定性の検討
カルボキシペプチダーゼによる加水分解反応を40〜60℃で行った際の活性を測定した。基質としてベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを使用し、加水分解反応を40〜60℃で行った以外は、実施例2に記載の反応液および反応条件により測定し、51℃で測定した活性に対する相対活性を算出した。結果を図3に示す。
また、カルボキシペプチダーゼをリン酸緩衝液(pH7.0)中で25〜45℃で30分保持した後の活性を測定した。基質としてベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを使用し、実施例2に記載の反応液および反応条件により測定し、5℃で30分保持した活性に対する相対活性を算出した。結果を図4に示す。
(実施例4)作用pHおよびpH安定性の検討
カルボキシペプチダーゼによる加水分解反応の反応pHを変動させた際の活性を測定した。基質としてベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを使用し、反応緩衝液を変更した以外は、実施例2に記載の反応液および反応条件により測定した。反応緩衝液として、酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0〜5.6)、リン酸カリウム緩衝液(pH5.5〜8.0)、およびTris−HCl緩衝液(pH7.0〜8.5)を使用した。測定結果から、Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に対する相対活性を算出した。結果を図5に示す。
また、カルボキシペプチダーゼをpH5.5〜8の条件で16時間保持した後の活性を測定した。基質としてベンジルオキシカルボニル−グリシル−ロイシンを使用し、実施例2に記載の反応液および反応条件により測定した。測定結果から、Tris−HCl緩衝液(pH7.0)に対する相対活性を算出した。結果を図6に示す。
(実施例5)タンパク質分解試験1
プロテアーゼと組み合わせて処理した場合のカルボキシペプチダーゼの活性を測定した。基質としてカゼイン(濃度6mg/mL)、大豆タンパク質(濃度6mg/mL)、ゼラチン(濃度6mg/mL)を使用した。カゼインおよび大豆タンパク質はカルボキシペプチダーゼとビオプラーゼSP(酵素量10mg/mLを33μL)を組み合わせて処理した。ゼラチンはカルボキシペプチダーゼとコラゲナーゼ(酵素量10mg/mLを33μL)を組み合わせて処理した。カルボキシペプチダーゼの添加量は反応液中に7.1μgまたは71.0μgとし、カルボキシペプチダーゼを添加しないものと比較した。実施例2の組成にて、40℃、6時間反応を行った。次に80℃30分加熱し、酵素を失活させた。遊離したアミノ酸の濃度をニンヒドリン法により測定した。ニンヒドリン呈色による570nmの吸光度を測定した。アミノ酸濃度1.0mMは1.0mMのロイシンのニンヒドリン呈色に相当する。結果を図7に示す。
(実施例6)タンパク質分解試験2
基質としてカゼイン(濃度6mg/mL)、大豆タンパク質(濃度6mg/mL)、ゼラチン(濃度6mg/mL)を使用した場合のカルボキシペプチダーゼの活性を測定した。実施例5に記載の反応条件により加水分解反応を行い、反応液をゲルろ過分析により解析した。ゲルろ過分析は下記の条件により行った。カゼインの分解結果を図8Aに、大豆タンパク質の分解結果を図8Bに、ゼラチンの分解結果を図8Cに、それぞれ示す。図8A〜Cにおいて、実線は各タンパクをプロテアーゼ処理したものを示し、点線はプロテアーゼ処理後にカルボキシペプチダーゼで処理したものを示す。
ゲルろ過分析条件:
検出波長:215nm
流速:0.5ml/mL
溶媒:20mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl
カラム:Superdex peptide(GEヘルスケア社製)
Inj.:0.2mL
(実施例7)タンパク質分解試験3
基質としてカゼイン、大豆タンパク質、ゼラチンを使用した場合のカルボキシペプチダーゼの活性を測定した。実施例5に記載の反応条件により加水分解反応を行い、遊離したアミノ酸の種類および量を、EZ:faast キット(フェノメネックス社製)およびFID付きガスクロマトグラフィーを使用して測定し、酸分解した際の遊離アミノ酸量に対する割合を算出した。結果を図9に示す。検討したアミノ酸の種類の中でも、特にロイシン(L)、メチオン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)の遊離が多いことが確認された。

Claims (8)

  1. 以下の(A)、(B)、または(C)のポリペプチド:
    (A)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
    (B)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を示し、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチド;
    (C)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加したアミノ酸配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチド。
  2. 下記(1)〜(7)の理化学的性質:
    (1)作用:カルボキシペプチダーゼ活性を有する
    (2)至適反応pH:8.0〜8.5
    (3)安定pH:5.5〜8.0
    (4)至適反応温度:49〜50℃
    (5)温度安定性:5〜30℃
    (6)分子量:約36kDa
    (7)阻害剤:金属キレーターにより阻害され、セリンプロテアーゼ阻害剤により阻害されない
    を有するポリペプチド。
  3. ストレプトマイセス(Streptomyces)属の微生物に由来する請求項2に記載のポリペプチド。
  4. ストレプトマイセス属の微生物がストレプトマイセス シンナモネース(Streptomyces cinnamoneus)である請求項3に記載のポリペプチド。
  5. 以下の(a)、(b)、(c)または(d)のDNA:
    (a)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA;
    (b)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
    (c)配列表の配列番号2に示す塩基配列と85%以上の配列同一性を示し、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
    (d)配列表の配列番号2に示す塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、カルボキシペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
  6. 請求項5に記載のDNAを含むベクター。
  7. 請求項6に記載のベクターを含む形質転換体。
  8. 請求項7に記載の形質転換体を培養する工程、および培養物からポリペプチドを精製する工程を含む、ポリペプチドの製造方法。
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