JP2017014323A - 温度応答性ポリマーの製造方法、温度応答性ポリマー、細胞培養器の製造方法、細胞培養器 - Google Patents

温度応答性ポリマーの製造方法、温度応答性ポリマー、細胞培養器の製造方法、細胞培養器 Download PDF

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泰秀 中山
良輔 岩井
Ryosuke Iwai
良輔 岩井
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Yasushi Nemoto
泰 根本
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Abstract

【課題】本発明は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することを可能にする新規な製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む第一混合物に紫外線を照射する第一重合工程と、第一重合工程における重合物の数平均分子量が所定値以上となった時点で、第一混合物にアニオン性モノマーを添加して第二混合物を調製する添加工程と、第二混合物に紫外線を照射する第二重合工程と、を含むことを特徴とする、温度応答性ポリマーの製造方法、該製造方法により製造された温度応答性ポリマー、該温度応答性ポリマーを用いた細胞培養器の製造方法、及び該製造方法により製造された細胞培養器。【選択図】なし

Description

本発明は、特に、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することが可能な温度応答性ポリマーの製造方法、該製造方法により製造された温度応答性ポリマー、該温度応答性ポリマーを用いた細胞培養器の製造方法、及び該製造方法により製造された細胞培養器に関する。
温度応答性ポリマーは、所定の温度(下限臨界溶液温度:Lower Critical Solution Temperature、以下、「曇点」ともいう。)未満では水に溶解するが、所定の温度以上では不溶化して沈殿する、という物性を備えるポリマーである。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の重合体である、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)は、約32℃の曇点を有する温度応答性ポリマーとして知られている。
従来のPDMAEMAの製造方法では、DMAEMAを含む混合物を調製して(調製工程)、その後、この混合物に紫外線を照射する(照射工程)ことによってDMAEMAをラジカル重合させることによって、PDMAEMAを製造する(非特許文献1、2参照)。
ここで、PDMAEMAの側鎖に結合する、カチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエトキシ基を含むエステル基の一部を、加水分解によりアニオン性のカルボキシル基に変換することによって、物性を変化させたPDMAEMA由来のポリマーを製造する需要も存在していた。
しかしながら、上記従来のPDMAEMAの製造方法を用いて、カチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエトキシ基、及びアニオン性のカルボキシル基を有するPDMAEMA由来のポリマーを製造する場合、側鎖にエステル基を介してカチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエトキシ基を有するDMAEMAを、紫外線を照射することによって、ラジカル重合させた後、エステル基の一部を加水分解することによって、アニオン性のカルボキシル基を生じさせる必要があり、製造に要する工程が多いという問題があった。
かかる問題を解決するため、特許文献1では、DMAEMAを水存在下でラジカル重合させることによって、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを製造している(特許文献1参照)。
特開2014−162865号公報
Wetering P et al, J Controlled Release 49, p59-69, 1997. Wetering P at al, Macromolecules 31, p8063-8068, 1998.
ここで、上記従来の温度応答性ポリマーの製造方法以外の別の製造方法の開発も重要な意義を有していた。そこで、本発明は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することを可能にする新規な製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明の温度応答性ポリマーの製造方法は、
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む第一混合物に紫外線を照射する第一重合工程と、
前記第一重合工程における重合物の数平均分子量が所定値以上となった時点で、前記第一混合物にアニオン性モノマーを添加して第二混合物を調製する添加工程と、
前記第二混合物に紫外線を照射する第二重合工程と、
を含むことを特徴とする。
また、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記所定値が5000Daであることが好ましく、20000Daであることが更に好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記第一重合工程、前記添加工程、及び前記第二重合工程に亘って紫外線を照射することが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法では、前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の温度応答性ポリマーは、上記の本発明の温度応答性ポリマーの製造方法により製造されることを特徴とする。
本発明の温度応答性ポリマーは、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーブロックと、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックと、を含むことを特徴とする。
また、本発明の温度応答性ポリマーは、前記ホモポリマーブロックの数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーは、前記アニオン性モノマーの繰り返し単位に対する前記2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの繰り返し単位の割合が、0.5〜32であることが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーは、数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaであり、重量平均分子量(Mw)と前記数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.1〜10.0であることが好ましい。
更に、本発明の温度応答性ポリマーは、前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の細胞培養器の製造方法は、上記の本発明の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する冷却工程と、
前記曇点以下の温度を有する前記温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる流延工程と、
前記温度応答性ポリマーが前記培養面に流延された前記細胞培養器を、前記曇点超の温度まで加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明の細胞培養器は、上記の本発明の細胞培養器の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明の細胞培養器は、上記の本発明の本発明の温度応答性ポリマーを被覆してなることを特徴とする。
本発明の温度応答性ポリマーの製造方法によれば、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することができる。
本発明の温度応答性ポリマーによれば、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間を顕著に遅延させることができる。
本発明の細胞培養器の製造方法によれば、温度応答性ポリマーを被覆した細胞培養器を、簡便な方法で製造することができる。
本発明の細胞培養器によれば、正電荷と負電荷との好適なバランスを実現して、細胞の活性を高く維持した状態で、培養操作を行うことができ、また、管腔状や塊状の構造を有する細胞構造体を、簡便に製造することができる。
以下、図面を参照して、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法、本発明の温度応答性ポリマー、本発明の細胞培養器の製造方法、及び本発明の細胞培養器の実施形態について詳細に例示説明する。
(温度応答性ポリマーの製造方法)
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法では、まず、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む第一混合物に紫外線を照射する(第一重合工程)。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
DMAEMAとしては、市販品としてよい。
第一混合物に含まれ得る他のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミド、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、特に、イオンバランスの調整を安定的に行うことを可能にする観点から、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミドが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、他のモノマーの使用量のDMAEMAの使用量に対する割合(モル数)は、0.001〜1とすることが好ましく、0.01〜0.5とすることが更に好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、メタノール、エタノール等が挙げられ、特に、DMAEMAのエステル結合に対して不活性であるため、トルエン、ベンゼンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01m〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1m〜5mW/cm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、無用な化学結合の切断等による分解を抑制しつつ、安定的に、適切な速度(時間)で重合反応を進行させることができる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜40℃あることが好ましく、20〜30℃あることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において反応を行うことができ、また、光とは別の手段(加熱等)により反応を抑制することが可能となる。
反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
この工程において、DMAEMAは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマー(ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA))となり、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを含むホモポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、DMAEMAと他のモノマーとを含むポリマーブロックが形成される。
次いで、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法では、第一重合工程における重合物(具体的には、ポリマー化した2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)の数平均分子量が所定値以上となった時点で、第一混合物にアニオン性モノマーを添加して第二混合物を調製する(添加工程)。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、前述の第一混合物に含まれ得る溶媒(トルエン、ベンゼン、メタノール等)等を含んでよい。
また、アニオン性モノマーは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体等が挙げられ、特に、化学的安定性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第二混合物に含まれ得る他のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミド、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、特に、電気的に中性であり、且つ親水性である、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、他のモノマーの使用量のDMAEMAの使用量に対する割合(モル)は、0.01〜10とすることが好ましく、0.1〜5とすることが更に好ましい。
この工程では、例えば、バイアルに不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、上記第二混合物を添加する。
数平均分子量の所定値は、曇点低減の効果を十分に得る観点から、好適には5,000であり、更に好適には20,000であり、特に好適には100,000である。
なお、第一重合工程後の第一混合物中におけるポリマー化したPDMAEMAの数平均分子量は、所定の時点で重合系から少量の反応混合物を採取して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)や光散乱法(SLS)等の当業者に周知の方法により、測定することができる。
この工程において、重合中のDMAEMAを含むホモポリマーに加えて、アニオン性モノマーも重合系に含められることとなり、バイアル内の重合系が、DMAEMAの単独重合系から、DMAEMAとアニオン性モノマーとの共重合系に、変わることとなる。
そして、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーの製造方法では、第二混合物に紫外線を照射する(第二重合工程)。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、第二混合物を添加した後のバイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
第二重合工程における、紫外線の波長、紫外線の照射強度、用いる不活性ガス、反応温度、反応時間等の諸条件は、第一重合工程における条件と同様としてよい。
この工程において、DMAEMAとアニオン性モノマーとが、紫外線の照射により、ラジカル重合して、第一重合工程において形成したDMAEMAを含むホモポリマーブロックの重合鎖α末端に連続する形態で、DMAEMAとアニオン性モノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、DMAEMAとアニオン性モノマーと他のモノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。
上記の通り、DMAEMAを含むホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーが得られる。
なお、本発明の実施形態の製造方法では、当業者に理解される通り、種々の分子量及び分子構造を有するポリマーの混合物が生成するところ、DMAEMAを含むホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーを主成分として得る観点から、第一重合工程、添加工程、及び第二重合工程に亘って、同一の条件下で重合を行うことが好ましい。
(温度応答性ポリマー)
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、上記本発明の実施形態の製造方法により製造される。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、主として2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを含み、任意選択的にジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸等の親水性モノマー等の他のモノマー単位を含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主として2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとアニオン性モノマー(重合鎖ω末端)とを含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むコポリマーブロックとを含む。
好適には、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、DMAEMAのホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、更に好適には、これらブロックからなる。
ここで、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーとしては、重合鎖α末端のポリマーブロック(例えば、DMAEMAのホモポリマーブロック)の数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
上記温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
特に、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーは、重合鎖α末端に、高分子量(例えば、5000Da以上)を有するDMAEMAのホモポリマーブロックを備えるため、DMAEMAの側鎖の温度依存的なグロビュール転移が生じやすく、曇点を効果的に低減することが可能となると考えられる。
また、この温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる細胞培養器を調製することができる。
更に、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基(2−N,N−ジメチルアミノ基)の官能基数と、アニオン性官能基(カルボキシル基)の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
(細胞培養器の製造方法)
本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法は、上記の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する冷却工程と、曇点以下の温度を有する温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる流延工程と、温度応答性ポリマーが培養面に流延された細胞培養器を、曇点超の温度まで加熱する加熱工程と、を含む。
本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法では、まず、上記の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する(冷却工程)。
この工程では、例えば、温度応答性ポリマーを約4℃の冷蔵庫に入れることによって、上記温度応答性ポリマーを曇点以下の温度まで冷却することができる。
次いで、本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法では、曇点以下の温度を有する温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる(流延工程)。
この工程では、例えば、曇点以下の温度を有する温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面を傾けることによって、又はスパチュラを用いてポリマーを延ばすことによって、温度応答性ポリマーを流延させることができる。
細胞培養器としては、市販の細胞培養用のプレート、ディッシュ、フラスコ等が挙げられる。細胞培養器の材質としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレン、ガラス等が挙げられる。
そして、本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法では、温度応答性ポリマーが培養面に流延された細胞培養器を、曇点超の温度まで加熱する(加熱工程)。
この工程は、例えば、流延工程後の細胞培養器を37℃のインキュベーター中で静置することによって、上記温度応答性ポリマーを曇点超の温度まで加熱することができる。
本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法によれば、温度応答性ポリマーを細胞培養器の表面に被覆するための特別な処理、例えば、放射線グラフト重合などを施すことを要しない。すなわち、本発明の実施形態の細胞培養器の調製は、該培養器を用いる研究者自身により、簡便な方法で(特殊な装置を要することなく)、低コストで行うことができる。
(細胞培養器)
本発明の実施形態の細胞培養器は、上記の本発明の実施形態の細胞培養器の製造方法により製造される。
この細胞培養器によれば、一般的な37℃のインキュベーター中で細胞を培養して、組織を形成させた後、曇点以下の条件にすることにより、トリプシン処理等の細胞剥離操作を行うことなく、例えば、細胞シート状の構造を有する細胞を回収することができる。
そのため、この細胞培養器を用いて細胞を培養すれば、室温程度の条件下での細胞培養の操作が可能となる。
更に、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーによれば、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を簡便に形成させることができる。
これは、上記温度応答性ポリマーが側鎖に有する疎水性基及びカチオン性基が、何らかの相互作用をしながら、細胞に刺激を与えていると推定される。また、カチオン性基とアニオン性基とを有する温度応答性ポリマーでは、PDMAEMAのカチオン性官能基による細胞毒性が、アニオン性ポリマーのアニオン性官能基による電気的に中和により、緩和される。こうして、上記温度応答性ポリマーは、正電荷と負電荷とのバランスを好適にして、細胞傷害性を抑制し(哺乳類細胞の細胞膜の表面は負電荷を帯びているため、カチオン性物質は細胞傷害性を有することが多い)、且つ、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを好適にして、細胞の遊走や配向を可能にしているものと推定される。この細胞培養器によれば、細胞の活性を高く維持した状態で、培養操作を行うことが可能となる。
また、この細胞培養器によれば、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
本発明の実施形態の細胞培養器では、該細胞培養器の培養面が、単位面積当たりに有する、本発明の温度応答性ポリマーの量が、5.0〜50ng/mm2であることが好ましく、15〜40ng/mm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、細胞構造体を形成させやすくするという効果が得られやすい。
(細胞培養方法)
以下に、本発明の実施形態の温度応答性ポリマー、及び本発明の実施形態の細胞培養器を用いた細胞培養方法について記載する。
上記細胞培養方法は、上記の本発明の実施形態の細胞培養器に細胞を播種する播種工程と、播種された細胞を培養する培養工程とを含む。播種条件及び培養条件は、細胞種や実験目的に基づいて、当業者は適切に定めることができる。そして、この細胞培養方法は、細胞種に限定されることなく、血管細胞、脂肪幹細胞、肝細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、心筋細胞、腎細胞、神経細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞等の様々な細胞に適用することができる。
ここで、一例の細胞培養方法では、播種される細胞の密度が、1,500個/mm2以下(培養面の面積が200mm2である24ウェル細胞培養プレートに1.0mLの細胞浮遊液を加えることにより播種する場合、3.0×105個/mL以下)であることが好ましい。なお、播種される細胞は、生きた細胞とする。
上記細胞密度とすれば、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
上記一例の細胞培養方法は、血管内皮細胞、脂肪細胞、脂肪幹細胞、線維芽細胞など間葉系の細胞に対して、特に好適に適用することができる。初代細胞の場合は、コロニーを形成する接着性細胞を選択すれば良く、当業者によって適宜選択可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
下記の試験において、市販の試薬は、特に断りのない限り更に精製することなく用いた。
(試験1)ポリマーの製造
分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの製造(実施例製法1)
容量50mLの軟質ガラス製の透明なバイアル瓶に、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)10.0gを加えて、磁気撹拌器を用いて撹拌した。
そして、この混合物(液体)に対してG1グレードの高純度(純度:99.99995%)の窒素ガスを10分間パージ(流速:2.0L/分)することにより、この混合物を脱酸素した。
その後、この混合物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて5時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。
ここで、反応物の一部を採取して、ポリマー化したDMAEMAの数平均分子量を測定したところ、97,0000(分散=4.1)あった。
数平均分子量が5,000以上であることを確認した直後に、バイアル瓶に不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、メタクリル酸1.4gを加えて、再度磁気撹拌器を用いて撹拌した。なお、ここで加えるメタクリル酸に対しては予め不活性ガスでバブリングを行なった。
この混合物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて、16時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。反応物は、混合直後に粘性を帯び、1時間後に固化して、重合体が反応生成物として得られた。この反応生成物を2−プロパノールに溶解させ、溶液を透析チューブに移した。そして、透析を72時間行い、反応生成物を精製した。
反応生成物を含む溶液を、セルロース混合エステル製の0.2μmフィルター(東洋濾紙社製、型番:25AS020)で濾過し、得られた濾液を凍結乾燥させることにより、DMAEMAのホモポリマーブロックと、DMAEMAとメタクリル酸とのコポリマーブロックとからなる温度応答性ポリマーが得られた(収量:6.8g、転化率60%)。
このポリマーの数平均分子量(Mn)を、GPC(島津社製、型番:LC−10vpシリーズ)を用いて、ポリエチレングリコール(Shodex社製、TSKシリーズ)を標準物質として測定し、Mn=450,0000(Mw/Mn=2.2)と決定した(実施例ポリマー1)。
実施例ポリマー1の核磁気共鳴スペクトル(NMR)を、核磁気共鳴装置(Varian社製、型番:Gemini300)を用いて、重水(D2O)を標準物質として測定した。下記には、実施例ポリマー1に共通する代表的なピークを示す。
1H-NMR (in D2O) δ 0.8-1.2 (br, 3H, -CH2-C(CH3)-), 1.6-2.0 (br, 2H, -CH2-C(CH3)-), 2.2-2.4 (br, 6H, -N(CH3)2), 2.5-2.7 (br, 1.9H,-CH2-N(CH3)2), 4.0-4.2 (br, 1.9H, -O-CH2-).
ここで、α位に結合したメチル基(δ 0.8-1.2)のプロトン数(DMAEMAユニットの場合もメタクリル酸ユニットの場合も3個)Aと、側鎖のエステル結合の酸素に結合しているエチル基(δ 4.0-4.2)のメチルプロトン数(DMAEMAユニットの場合は2個で、メタクリル酸ユニットの場合は0個)Bとから、DMAEMAの側鎖が有するアミノ基の官能基数と、メタクリル酸の側鎖のカルボキシル基の官能基数との比を算出した。
その結果、実施例ポリマー1の場合94:6となった。これは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを含む2成分混合系におけるイオン複合体で言うC/A比に換算すると、C/A比=15.6となる。
詳細な条件及び結果を表1に示す。
(試験2)ポリマーの曇点の測定
実施例ポリマー1の3%水溶液を調製し、この水溶液の660nmにおける吸光度を、20℃〜40℃の間で測定した。
その結果、20℃〜30℃では、水溶液は透明であり、吸光度がほぼ0であったが、31℃付近から水溶液中に白濁が見られるようになり、32℃で吸光度が急激に上昇した。これにより、上記ポリマーは、約32℃の曇点を有することを確認した。
なお、実施例ポリマーを37℃まで昇温させると、ポリマー水溶液は、良好な応答性で、懸濁し、その後、水溶液全体が固化した。この固化物を室温(25℃)で維持したところ、数十時間の間、固化した状態のままであった。その後、固化物が徐々に溶解して、均質な水溶液に変化した。固化したポリマーは4℃まで冷却すると、速やかに溶解した。そして、上記昇温及び降温の操作を繰り返し行なっても、応答性に変化は生じなかったことから、ポリマーが可逆的に相転移を生じさせることが確認された。
詳細な条件及び結果を表1に示す。
(試験3)ポリマーの凝集体の粒子径測定
実施例ポリマー1を20℃の液体とし、静的光散乱装置(シスメックス社製、型番:ゼーターセイザー・ナノ)を用いて、光散乱により、ポリマー分子の凝集体の粒子径を測定したところ、250nmであった。曇点未満の温度である20℃においても、比較的粒子径の大きい凝集体、すなわち、沈殿しやすく、沈殿後に拡散しにくい凝集体を形成していることが示唆された。実施例ポリマー1は、細胞培養器に容易に被覆することができる可能性が示唆された。
詳細な条件及び結果を表1に示す。
(試験4)細胞培養器の製造
実施例ポリマー1の水溶液を調製し(最終濃度、ポリマー4μg/200μL)、この水溶液を4℃まで冷却した。この水溶液を、ポリスチレン製の24ウェル細胞培養プレート(イワキ社製、マイクロプレート、型番:3815−024、1ウェル当たりの底面積:200mm2)の各ウェルに、この溶液を200μLずつ、室温下で加えて、素早く穴の底面の全面に流延させた。そして、この細胞培養皿を、細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO2)中で3時間インキュベートした。こうして、培養面であるウェルに実施例ポリマー1を被覆してなる24ウェル細胞培養プレート(細胞培養器)が得られた。
(試験5)細胞培養
実施例ポリマー1を用いて製造した上記の24ウェル細胞培養プレートの各ウェルに、室温条件下において、ラット皮下脂肪由来の間葉系幹細胞を、完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FCS)溶液、DMEM:ギブコ社製、型番11965、FCS:インビトロゲン社製、ロット番号852546)中に浮遊させ、細胞密度を3.75〜15×104個/mLに調整した培養液を1mLずつ加えた(1.87×103〜7.50×103個/mm2)。この細胞を37℃の細胞培養インキュベーター中で24時間培養した。
1時間後に、細胞は培養皿の全面に接着し、コンフルエントな層を形成した。更に培養を続けたところ、9時間後に、培養面の外周側から細胞の剥離が起こり、細胞が収縮して、培養面の中心部に向かって凝集する現象が起こった。
本発明の温度応答性ポリマーの製造方法によれば、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することができる。
本発明の温度応答性ポリマーによれば、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間を顕著に遅延させることができる。
本発明の細胞培養器の製造方法によれば、温度応答性ポリマーを被覆した細胞培養器を、簡便な方法で製造することができる。
本発明の細胞培養器によれば、室温程度の条件下での細胞培養の操作を可能とすることができ、また、管腔状や塊状の構造を有する細胞構造体を、簡便に製造することができる。

Claims (15)

  1. 2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む第一混合物に紫外線を照射する第一重合工程と、
    前記第一重合工程における重合物の数平均分子量が所定値以上となった時点で、前記第一混合物にアニオン性モノマーを添加して第二混合物を調製する添加工程と、
    前記第二混合物に紫外線を照射する第二重合工程と、
    を含むことを特徴とする、温度応答性ポリマーの製造方法。
  2. 前記所定値が5000Daである、請求項1に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  3. 前記所定値が20000Daである、請求項1に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  4. 前記第一重合工程、前記添加工程、及び前記第二重合工程に亘って紫外線を照射する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  5. 前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーの製造方法により製造されることを特徴とする、温度応答性ポリマー。
  7. 2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーブロックと、
    2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックと、
    を含むことを特徴とする、温度応答性ポリマー。
  8. 前記ホモポリマーブロックの数平均分子量が5000Da以上である、請求項7に記載の温度応答性ポリマー。
  9. 前記ホモポリマーブロックの数平均分子量が20000Da以上である、請求項8に記載の温度応答性ポリマー。
  10. 前記アニオン性モノマーの繰り返し単位に対する前記2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの繰り返し単位の割合が、0.5〜32である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマー。
  11. 数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaであり、
    重量平均分子量(Mw)と前記数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.1〜10.0である、
    請求項7〜10のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマー。
  12. 前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7〜11のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマー。
  13. 請求項6〜12のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーを、その曇点以下の温度まで冷却する冷却工程と、
    前記曇点以下の温度を有する前記温度応答性ポリマーを、細胞培養器の培養面に流延させる流延工程と、
    前記温度応答性ポリマーが前記培養面に流延された前記細胞培養器を、前記曇点超の温度まで加熱する加熱工程と、
    を含むことを特徴とする、細胞培養器の製造方法。
  14. 請求項13に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、細胞培養器。
  15. 請求項6〜12のいずれか一項に記載の温度応答性ポリマーを被覆してなることを特徴とする、細胞培養器。
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