JP2017118868A - 新規飼料添加用乳酸菌 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、低温環境下においても、高品質なサイレージ等の発酵飼料を提供することを課題としている。【解決手段】優れた低温増殖能を有する新規な乳酸菌IWT192株、IWT192株を含有するサイレージ等の飼料やその調製方法および、IWT192株を含有する飼料調製用添加剤を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、新規乳酸菌株、それを含有する飼料またはサイレージ、飼料調製用添加剤またはサイレージ調製用添加剤および当該添加剤を用いるサイレージの調製方法に関する。
我が国の畜産は輸入飼料への依存度が高く、不安定な国際飼料相場や市場供給量に影響を受けやすいことから、畜産物を安定供給するために、飼料自給率の向上が大きな課題となっている。そこで、飼料自給率向上と遊休水田の有効活用の両者を見据え、トウモロコシを中心とした輸入飼料の代替としてイネ発酵粗飼料や飼料用米サイレージの利用拡大への取り組みが積極的に推進されている。具体的には、飼料用イネ専用品種において、高糖含量・高消化性・極晩生を特徴とする「たちすずか」等の新たな品種の普及が急速に進んでおり、飼料用イネの収穫適期も多様化している。また、国産自給飼料や地域食品副産物を活用した完全混合飼料(Total Mixed Ration、以下「TMR」という。)の利用促進が図られており、寒冷地でも通年にわたり高品質な発酵飼料を安定して貯蔵できる技術が求められている。さらに、これらの通年安定貯蔵技術は、国外の飼料生産現場でも要望されている。
サイレージは、乳酸菌の力を巧妙に利用して調製される家畜の貯蔵飼料である。乳酸菌はその発酵品質のみならず、栄養価値や反芻家畜の生理代謝に影響を及ぼす決め手となるが、サイレージ材料の草に共生する酪酸菌、好気性細菌、糸状菌および酵母等の微生物は、乳酸菌の発酵を競合的に阻害し、サイレージの品質の劣化や栄養損失を招く原因となる。寒冷期や寒冷・高標地域において調製されたサイレージは、乳酸発酵が緩慢で低乳酸高pH型となる場合が多く、このようなサイレージや発酵TMRは、大腸菌群およびカビ等の有害微生物が高レベルで生息し、カビ毒等の有害物質による家畜の生産性低下や、衛生管理面から解決すべき重要な課題となっている。
牧草を円柱上に成形しラップしてサイレージ化する手段であるロールベールは、その開封後、フレッシュTMRや発酵TMRとして二次利用することや、小規模農家において、開封後に一定期間好気条件下で保管せざるを得ない場合も多いことから、開封後の二次発酵による変敗防止の技術への要望が高い。特に、発酵後にも比較的に高い糖含量を有する飼料用イネ「たちすずか」については、極晩生の収穫適期であることから、冬季貯蔵において発酵が緩慢となる場合が知られており、カビ発生や二次発酵の原因微生物の1つと考えられる酵母の増殖が顕著となる問題が生じている。
従来、これら課題に対する報告がいくつかなされている。具体的には、特許文献1には、イネ発酵粗飼料の発酵促進に貢献するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)畜草1号株(FERM P−18930)が、特許文献2には、ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)(NCIMB−40788)の、畜産飼料の二次発酵抑制効果が、さらに、非特許文献1には、ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)のある供試菌株が、イネ発酵飼料におけるアルコール産生を抑制することが報告されている。しかしながら、これらは必ずしも満足できるものではなく、低温条件下での有効性については全く言及されていない。
特に、サイレージに従来使用されてきた乳酸菌ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)において、低温増殖性能を有する菌株については、今まで全く報告例がなかった。
特開2004−041064号公報 特開2000−503201号公報
Lett.Appl.Microbiol.,44(5),538−543
ラクトバチルス(Lactobacillus)属乳酸菌の一般的な至適生育温度は30〜40℃であり、一部の菌種の中の菌株で4℃等の生育例が示されているものの、一般的特徴とはいいがたい。また、家畜向け発酵飼料調製に活用する乳酸菌において、低温増殖能があることと、低温環境で十分な乳酸等の有機酸生成能をもつことは同一性質ではなく、容易に飼料調製分野に応用できるかを判別することはできない。さらに、低温環境条件に着目をして、低温増殖性乳酸菌種をイネ発酵粗飼料等のサイレージ調製に応用した報告は未だなされていない。
そこで、本発明は、低温(概略5℃程度)において増殖性に優れた乳酸菌、当該乳酸菌を含有するサイレージ等の飼料やその調製用添加剤および、当該添加剤を添加するサイレージの調製方法を提供することを課題としている。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、飼料調製用優良乳酸菌のスクリーニングの中から、低温増殖能に優れた乳酸菌株を見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)IWT192株(NITE P−02168)。
2.1.記載の乳酸菌を含有する飼料。
3.1.記載の乳酸菌を含有するサイレージ。
4.1.記載の乳酸菌を含有する飼料調製用添加剤。
5.1.記載の乳酸菌を含有するサイレージ調製用添加剤。
6.5.記載のサイレージ調製用添加剤をサイレージ材料に添加することを特徴とするサイレージの調製方法。
7.6.記載のサイレージ材料が飼料用イネであるサイレージの調製方法。
本発明の乳酸菌IWT192株は、4℃環境下において分離・選抜された特徴ある菌株であり、低温増殖能に優れる。これにより、低温環境下においても乳酸や酢酸等の有機酸産生増加による発酵促進効果が得られ、良質な畜産飼料を生産することが可能となる。また、飼料栄養価の品質が高いので、牛等の家畜の摂取量が安定化し健康を維持することができる。さらに、サイレージを開封し好気下においた時の二次発酵や、飼料として供給後に生じるTMRの二次発酵等、飼料の二次発酵やカビの発生も抑制できるので、家畜の飼養ならびに衛生管理に大きく寄与するという新たな効果も得られる。
実施例2における乳酸菌IWT192株の低温増殖能を示す図である。 実施例3における乳酸菌IWT192株の発酵促進効果を示す図である。 実施例4の乳酸菌IWT192株を使用した実規模ロールベール実証試験における、開封後のサイレージの温度変化を示す図である。 実施例6の乳酸菌IWT192株を使用した実規模バンカーサイロ貯蔵の実証試験における、バンカーサイロ内の発酵飼料の温度変化を示す図である。 実施例7の乳酸菌IWT192株を使用したTMR製造への活用検討における、フレッシュTMRの温度変化を示す図である。 実施例8の乳酸菌IWT192株を使用した飼料用米サイレージへの活用検討における、「Δ温度」に到達する時間(h)を示す図である。
本発明は、優れた低温増殖能を有し、かつ、良質な発酵飼料の製造に適した性質を有する新規のラクトバチルス属の菌株に関する。
また本発明は、前記菌株を含有してなる飼料調製用添加剤、前記菌株を添加することを特徴とするサイレージ等の飼料やその調製方法に関する。
以下、本発明について詳細に説明する。
(新規な乳酸菌の菌株)
本発明における新規の乳酸菌の菌株とは、優れた低温増殖能を有し、かつ、良質な発酵飼料の製造に適した性質を有するものである。この乳酸菌IWT192株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託されており、その受託番号は、NITE P−02168である。
乳酸菌IWT192株の菌学的性質として、「良質な発酵飼料の製造に適した性質」を挙げることができ、具体的には、優れた低温増殖能を挙げることができる。ここで、優れた低温増殖能とは、酸産生能と生残性であり、乳酸や有機酸を多く含む良質な発酵飼料を、低温環境下で製造する上で必須な性質である。なお、低温とは概略5℃程度を意味する。また、優れた酸産生能としては、効率の良い乳酸発酵能、代謝性の高いL型乳酸生成能を有するものである。さらに、乳酸菌IWT192株は、発酵飼料の発酵過程における好気性細菌や大腸菌群等の有害微生物の増殖を抑制するものである。
本発明における乳酸菌IWT192株は、発酵飼料の原料や発酵飼料、具体的には、牧草・飼料作物サイレージ等の分離源の希釈液を寒天培地に塗布し、概略4℃、嫌気条件で菌株を分離培養した後、低温増殖能や生理生化学的性質等を調べることで、選抜したものである。
(発酵飼料およびその調製方法)
本発明のサイレージ等の発酵飼料は、この乳酸菌IWT192株を含有するものであり、そのサイレージ等の発酵飼料の調製方法について説明する。
本発明では、サイレージ等の発酵飼料を製造する際に、発酵飼料用原料に乳酸菌IWT192株を添加することによって、低温環境下においても高品質の発酵飼料を得ることができる。
本発明においては、乳酸菌IWT192株を発酵飼料原料に添加することが必須である。添加の方法としては、原料中に偏りなく、均一になるように行うことが望ましい。例えば、乳酸菌IWT192株を水に懸濁し噴霧する方法、混合撹拌する方法等で行うことができる。添加する乳酸菌IWT192株の量としては、原料1kgに対して10〜10菌数レベルで添加することが望ましい。具体的には10〜10菌数レベルで添加することが望ましい。なお、菌株の添加時期は、サイレージ発酵を開始する前に行うことが望ましいが、サイレージ発酵の途中の段階で添加を行ってもよい。
上記発酵としては、通常のサイレージ発酵と同様の条件で行うことができ、嫌気条件で、外気温において30日以上で行うものである。具体的には、サイロを用いる通常の方法、ロールベールサイレージ法、フレコンバック法等で行うことができる。
本発明に用いることができる発酵飼料原料としては、サイレージ原料である牧草や飼料作物(例えば、イネ、イタリアンライグラス、スーダングラス、オーチャード、アルファルファ、ソルゴー、コメ、トウモロコシ、ソルガム等)、発酵TMR飼料原料(例えば、濃厚飼料、乾草、ビートパルプ、ビタミン・ミネラル製剤、作物副産物、食品副産物等を混合した原料)等を挙げることができる。飼料用イネとしては、高糖分・高消化性能を有する「たちすずか」、「たちあやか」、「つきすずか」等を好適に使用することができる。
乳酸菌IWT192株を添加したサイレージ発酵によって得られる発酵飼料は、低pHであり、乳酸含量が多い良質の発酵飼料であり、発酵飼料の発酵過程における大腸菌群、酵母及びカビ等の有害微生物の増殖が抑制されたものである。なお、具体的に、製造される発酵飼料としては、サイレージ、TMR発酵飼料等を挙げることができる。
(発酵飼料調製用添加剤)
本発明においては、乳酸菌IWT192株を含有してなるサイレージ等の発酵飼料調製用添加剤の形態にして提供することができる。発酵飼料調製用添加剤の形態としては、乳酸菌IWT192株を凍結乾燥状態にして粉末状の形態、賦形剤等と混ぜて固形にした形態、カプセルに充填する形態、液体アンプルの形態等を挙げることができる。好ましくは、凍結乾燥製剤の形態が好適である。
発酵飼料調製用添加剤の使用形態としては、直接発酵飼料の原料に添加することもできるが、水等に溶解したものを用いることが望ましい。
また、本発明の発酵飼料調製用添加剤の使用量としては、原料1kgに対して、乳酸菌IWT192株を10〜10菌数レベルで添加することが望ましい。具体的には、乳酸菌IWT192株を10〜10菌数レベルで添加することが望ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。
<実施例1>乳酸菌IWT192株の分離と同定
(1)菌株の分離
完全混合飼料(TMR)サンプル10gを滅菌蒸留水100mLに懸濁後、ホモジナイザ(Pro・mediaSH-2M、株式会社エルメックス製)で1分間均質化処理し、TMRサイレージ抽出液を得た。本抽出液を乳酸桿菌向けMRS培地(BD、Difco、Lactobacilli MRS Broth)に塗布し、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学株式会社製)による嫌気条件下において4℃で17日間培養し、形成した単一コロニーを菌株として分離した。得られたコロニーを3回培養純化した。また、各コロニーから得た27菌株をバージーズマニュアル(Bergey's Manual)に従って同定したところ、ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)は27菌株中2株であった。得られた27菌株を、MRS(de Man、Rogosa、Sharpe)液体培地において4℃で7日間培養し、培養液の600nmの吸光度やpHを測定することにより、各菌体の増殖性を評価し、最も増殖性に優れたIWT192株を選抜し、これを−80℃で保存した。
(2)菌株の性質
上記の培養物から分離した菌株について、菌学的諸性質や生理的・生化学的性質等を調べた。主要な菌学的性質を、ラクトバチルス・ブクネリの基準株「JCM1115」と併せ表1に示す
乳酸菌IWT192株は、ラクトバチルス・ブクネリの基準株「JCM1115」と16S rRNA遺伝子と相同性が99.9%一致しており、0.1%の16S rRNA遺伝子配列が異なる。
また、乳酸菌IWT192株は、「実施例2」において詳細に説明するように、基準株「JCM1115」と概略4℃の低温増殖能に大きな違いがある。
さらに、API 50CHキット(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)による糖資化性解析において、乳酸菌IWT192株はラクトバチルス・ブクネリの基準株「JCM1115」と、Methyl-β-D-xylopyranoside、D-Lactose、D-Turanoseの資化性が異なっており、乳酸菌IWT192株にのみ顕著にこれらの3糖の利用性が認められた(30℃、48時間培養)。
以上のことから、本発明の乳酸菌IWT192株は新株であると決定した。
<実施例2>乳酸菌IWT192株の低温増殖能の確認
次いで、乳酸菌IWT192株の低温増殖能について詳細に検討した。
乳酸菌は次の4つの乳酸菌を使用した。
「IWT192」:ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)IWT192株(NITE P−02168)
「FG1」:ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)畜草1号株(FERM P−18930)
「JCM1115」:ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)JCM1115
「SP」:ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)NK01株
上記4つの乳酸菌を、10℃(A)と4℃(B)の温度条件下、MRS(de Man、Rogosa、Sharpe)液体培地において、全ての菌株を10℃(A)で3日、4日、5日、7日、10日間、4℃(B)で7日、9日、12日、15日、21日間培養した。菌体の増殖について、600nmの吸光度を測定することにより評価し、その結果を図1に示した。
その結果、図1が示すように、ラクトバチルス・ブクネリの基準株であるJCM1115株やSP株には、低温(4℃)における増殖能は認められなかった。また、従来サイレージに使用されている、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)畜草1号株も同様に、低温(4℃)における増殖能は認められなかった。
一方、本発明の新規乳酸菌IWT192株は、極めて優れた低温増殖能を有するものであることが確認された。
<実施例3>乳酸菌IWT192株の発酵促進効果の確認
次いで、乳酸菌IWT192株の発酵促進効果について詳細に検討した。
乳酸菌は「IWT192株」と「FG1」(畜草1号株)を使用した。
各乳酸菌株をそれぞれ添加した飼料用イネ「たちすずか」のイネ発酵粗飼料を、パウチ法により5℃(A)あるいは20℃(B)の温度条件下で、30日、60日、90日間貯蔵して調製した。貯蔵後の発酵飼料の品質について、イネ発酵粗飼料サンプル100gを蒸留水500mlに24時間冷蔵浸漬して得た抽出液を用いて調査した。pHをpHメーター(F−16、株式会社堀場製作所製)で、乳酸含量(g/Kg FM)、酢酸含量(g/Kg FM)、エタノール含量(g/Kg FM)を高速液体クロマトグラフィー(Waters社製)でそれぞれ測定し、その結果を図2に示した。なお、図2中の「FM」は得られた発酵飼料(乾燥していないもの)を意味する。
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下のとおりである。
カラム:HPX−87H(BIO RAD社製)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折検出器
移動相:0.01規定硫酸
送液速度:0.6ml/分
その結果、図2が示すように、畜草1号株の添加により、20℃貯蔵区では従来技術を反映した発酵促進効果が得られたものの、5℃貯蔵区では20℃貯蔵区と同じ発酵促進効果は得られなかった。
一方、本発明の新規乳酸菌IWT192株添加区では、5℃貯蔵条件下においても、乳酸や酢酸等の有機酸産生増加やpHの低下が認められ、極めて優れた発酵促進効果を有するものであることが確認された。
特に、5℃貯蔵区における乳酸産生量は、20℃貯蔵区の畜草1号株と同等の産生量を示し、本発明の乳酸菌IWT192株が低温条件で優れたサイレージ発酵性を有していることがわかった。
また、両温度貯蔵区において、IWT192株添加区では、畜草1号株添加区よりもエタノール産生が抑制されていることが明らかとなり、二次発酵に関与する酵母類の増殖を制御し、酵母によるエタノール産生を抑制していることを示唆するものであった。
<実施例4>乳酸菌IWT192株を使用した実規模ロールベール実証試験
次いで、実規模ロールベール実証試験について説明する。
乳酸菌は「IWT192株」と「SP株」を使用した。
各乳酸菌株をそれぞれ添加した飼料用イネ「たちすずか」のイネ発酵粗飼料および無添加処理したイネ発酵粗飼料をそれぞれ3検体、ロールベールサイレージ法により冬季寒冷期間を含む6ヶ月間貯蔵して、下記のサンプル1とサンプル2をそれぞれ調製した。
「サンプル1」:2013年10月〜2014年4月貯蔵調製
「サンプル2」:2014年10月〜2015年4月貯蔵調製
開封直後と5日後の発酵飼料の品質については、イネ発酵粗飼料「サンプル1」を100g使用して、これを蒸留水500mlに24時間冷蔵浸漬して得た抽出液を用いて調査した。pHはpHメーター(F−16、株式会社堀場製作所製)で、乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、エタノール、1,2-プロパンジオールの含有量(g/Kg、未乾燥物)を高速液体クロマトグラフィー(Waters社製)で測定した。
また、サイレージに含まれる微生物数については、イネ発酵粗飼料「サンプル2」を使用して測定した。
それぞれ3検体の平均値を表2、3に示した。
また、開封後のイネ発酵粗飼料「サンプル1」の温度変化を、下記式で表される「Δ温度」により表し、図3に示した。
式:Δ温度=サイレージ温度−環境温度(約22℃)
なお、有機酸類、エタノール、1,2−プロパンジオールの高速液体クロマトグラフィーによる分析条件は以下のとおりである。
カラム:HPX−87H(BIO RAD社製)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折検出器
移動相:0.01規定硫酸
送液速度:0.6ml/分
その結果、表2が示すように、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加したロールベールサイレージは、開封直後の乳酸、酢酸、1,2-プロパンジオール含量が無添加区や「SP株」添加区より有意に高く、エタノール含量が低かったことから、本発明の新規乳酸菌IWT192株が、極めて優れた発酵促進効果と有害微生物制御効果を有するものであることが確認された。
また、表2及び3が示すように、乳酸菌IWT192株添加区は、開封0日において、大腸菌群、カビ及び酵母が未検出であった。また、他区と比べて乳酸菌数が多かった。開封5日後でも、低pHと高有機酸含量が維持されており、カビ、酵母、一般好気性細菌、バチルス属細菌及びクロストリジウム属細菌等の微生物の増加を抑制し、その結果、二次発酵やカビ発生が抑制され発酵飼料栄養価の品質維持効果に優れていることも明らかとなった。乳酸菌IWT192株添加区は、開封0日及び5日後において、プロピオン酸に加えて酪酸も未検出であったことから、検出されたクロストリジウム属細菌は酪酸型発酵による品質悪化レベルには至らない極めて低レベルであると考えられ、十分に良好な品質であると言える。
さらに、乳酸菌IWT192株添加区は開封直後と開封5日後において、二次発酵の原因微生物とされる酵母数が、無添加区や「SP株」添加区より顕著に少ないことが確認された。この結果、図3が示すように二次発酵による発熱も認められず、本発明の新規乳酸菌IWT192株は、二次発酵抑制機能にも優れた発酵飼料生産菌であることが示された。
<実施例5>実規模ロールベールにおけるカビ廃棄率低減効果の検証試験
次いで、乳酸菌IWT192株を使用した実規模ロールベールにおける、カビ廃棄率低減効果の検証試験について説明する。
乳酸菌は「IWT192株」と「SP株」を使用した。
各乳酸菌株をそれぞれ添加した飼料用イネ「たちすずか」のイネ発酵粗飼料および無添加処理したイネ発酵粗飼料をそれぞれ3検体、ロールベールサイレージ法により冬季寒冷期間を含む8ヶ月間貯蔵した。開封後、1検体から45Kgのサンプルを採取し、当該サンプルの目視によるカビ発生確認部位の重量を計測し、カビ廃棄率(%)を算出した。
それぞれ3検体のカビ廃棄率(%)の平均値を表4に示した。
その結果、表4が示すように、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加したロールベールサイレージはカビ廃棄率が0%であり、無添加区や「SP株」添加区より有意に高く、IWT192株添加ロールベールに比べてカビ発生による廃棄率が有意に低いことが確認された。これは、本発明の新規乳酸菌IWT192株は、カビ発生によるロールベールのロス削減効果に優れていることが示された。
<実施例6>乳酸菌IWT192株を使用した実規模バンカーサイロ貯蔵の実証試験
次いで、実規模バンカーサイロ貯蔵の実証試験について説明する。
乳酸菌は「IWT192株」を使用した。
乳酸菌株を添加した飼料用イネ「たちすずか」のイネ発酵粗飼料および無添加処理したイネ発酵粗飼料を、バンカーサイロに1年間貯蔵した。貯蔵後開封直後の発酵飼料の品質について、バンカーサイロの中央上部、中央下部、横サイド上部、横サイド下部の4箇所で採取したサンプルを、実施例4と同様の手法により測定した。平均値を表5に示した。なお、表5中の「1,2-PD」は1,2-プロパンジオールを、「nd」は未検出を意味する。
また、開封時から約1ヶ月間、毎日幅20cm分の発酵飼料を取り出し、バンカーサイロ内の発酵飼料の温度変化を調査した。その結果を図4に示した。
その結果、表5が示すように、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加したバンカーサイロによる発酵飼料は、開封直後の酢酸、1,2-プロパンジオール含量が無添加区より有意に高く、エタノール含量が低かったことから、本発明の新規乳酸菌IWT192株は、バンカーサイロにおいても、極めて優れた有害微生物制御効果を奏することが確認された。
また、図4が示すように、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加したバンカーサイロにおいては、二次発酵による発熱も認められず、最後まで良好な品質の発酵飼料を取り出すことができた。一方、無添加区のバンカーサイロにおいては、開封後7日目頃から品温が徐々に上昇し、3週間後にはバンカーサイロ内の発酵飼料の温度が約40℃となり、発酵飼料の品質が著しく低下し、大量に廃棄せざるを得ない状況となった。
バンカーサイロ貯蔵法は、ロールベールサイレージ法に比べると、気密性が低く、開封後の取出し期間が長いため、発酵飼料の品質が低下しやすい貯蔵方法であり、しかも、発酵飼料原料がイネの場合は、茎部が強固な中空構造であるため詰込み密度を高くすることが難しく、イネは糖含量が少なく貯蔵発酵が進みにくいことから、イネ発酵粗飼料をバンカーサイロで調製することは困難とされてきた。しかしながら、高糖分である極短穂系イネ品種に本発明の新規乳酸菌IWT192株を使用することにより、バンカーサイロにおいても、二次発酵が抑制された、高品質のイネ発酵飼料を調製できることが明らかとなった。
<実施例7>乳酸菌IWT192株を使用したTMR製造への活用検討
次いで、TMR製造への活用検討について説明する。
乳酸菌は「IWT192株」と「SP株」を使用した。
各乳酸菌株をそれぞれ添加した飼料用イネ「たちすずか」のイネ発酵粗飼料および無添加処理したイネ発酵粗飼料を、ロールベールサイレージ法により冬季寒冷期間を含む8ヶ月間貯蔵した。開封後、各発酵飼料を使用してフレッシュTMR(1/3たちすずかイネ発酵粗飼料 + 2/3配合飼料 + 水、水分50%)を調製し、25℃の恒温器にて貯蔵した。調製後のフレッシュTMRの温度変化を図5に示した。
その結果、図5が示すように、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加したイネ発酵粗飼料を使用したフレッシュTMRは、明確な温度上昇が認められず、フレッシュTMRとして「たちすずか」イネ発酵粗飼料を二次利用した場合においても、IWT192株の二次発酵抑制機能は持続することが明らかとなった。
混合調製したTMRをそのまま当日牛に給与する形態であるフレッシュTMRは、発熱を伴った変敗が生じやすいという短所があり、特に気温の高い夏季において、当日の朝に給与したTMRが夕方には飼槽の中で発熱していることも珍しくない。フレッシュTMRの発熱は栄養価の低下や、嗜好性の悪化による飼料摂取量低下の原因になり、生産性を低下させるため、飼育現場で問題となる。
しかしながら、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加したイネ発酵粗飼料を使用したフレッシュTMRは、無添加区やSP株添加区のイネ発酵粗飼料を二次利用したフレッシュTMRに比べて、温度上昇が顕著に抑制されており、二次発酵抑制機能に優れていることが確認されたので、上記問題解決に有用であると思われる。
<実施例8>乳酸菌IWT192株を使用した飼料用米サイレージへの活用検討
次いで、飼料用米サイレージへの活用検討について説明する。
乳酸菌は「IWT192株」を使用した。
破砕処理後、水分約30%に加水調整した飼料用米「べこごのみ」を無添加およびIWT192株添加処理後にフレコンバックに冬季寒冷期間を含む4ヶ月間貯蔵した。貯蔵後のサンプルに含まれる成分と微生物について、実施例4と同様の手法により測定した。サンプルの平均値を表6に示した。なお、表6中の「nd」は未検出を意味する。
さらに、本飼料用米サイレージの開封後、下記式で表される「Δ温度」に到達する時間(h)を、図6に示した。
式:Δ温度=サイレージ温度−環境温度(約21℃)
その結果、表6が示すように、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加した飼料用米サイレージは、開封直後の酢酸含量が無添加区よりも高く、良好な発酵品質を示した。また、酵母数が無添加区よりも少なく、乳酸菌数が多いことが認められた。さらに、開封8日後でも、低pHと高有機酸含量が維持され、酵母数が低減していることにより、発酵飼料栄養価の品質維持効果に優れていることも明らかとなった。
また、図6が示すように、無添加区では約1日程度でΔ温度3℃の上昇が、開封後40時間程度でΔ温度15℃までの急激な発熱が認められた。一方、IWT192株では開封後8日間の期間内において温度上昇は全く認められなかった。
以上のことから、飼料用米サイレージ調製においても、IWT192株の優れた二次発酵抑制効果が確認された。
<実施例9>乳酸菌IWT192株を使用した高糖分・高消化性飼料用イネの活用検討
次いで、高糖分・高消化性飼料用イネ(つきすずか)の活用検討について説明する。
乳酸菌は「IWT192株」を使用した。
高糖分・高消化性飼料用稲「つきすずか」を無添加、IWT192株添加処理を行い、小規模パウチ法により調製後、約6週間、15℃と25℃の温度条件下で貯蔵した。貯蔵後のサンプルに含まれる成分と微生物について、実施例4と同様の手法により測定した。サンプルの平均値を表7に示した。なお、表7中の「nd」は未検出を意味する。
その結果、表7が示すように、本発明の新規乳酸菌IWT192株を添加した発酵飼料は、両貯蔵温度条件において、無添加区よりも低いpH値を示し、乳酸、酢酸含量が有意に高かった。また、IWT192株添加区においてカビ、酵母、大腸菌は未検出であり、無添加区と比較して一般好気性細菌数、バチルス属細菌数が少なく、乳酸菌数が多いことが認められた。15℃貯蔵において、無添加区で認められたクロストリジウム属細菌は、IWT192株添加区においては未検出であった。
以上のことから、低pHと高有機酸含量が維持されており、二次発酵の原因とされる酵母・カビ数の低減が認められ、発酵飼料栄養価の品質維持効果に優れていることが明らかとなった。
本発明のラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)IWT192株(NITE P−02168)は、低温増殖能に優れるので、低温環境下においても高品質のサイレージ等の発酵飼料を生産でき、二次発酵やカビ発生の心配がないことから、畜産分野において広範囲な利用が期待される。

Claims (7)

  1. ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)IWT192株(NITE P−02168)。
  2. 請求項1記載の乳酸菌を含有する飼料。
  3. 請求項1記載の乳酸菌を含有するサイレージ。
  4. 請求項1記載の乳酸菌を含有する飼料調製用添加剤。
  5. 請求項1記載の乳酸菌を含有するサイレージ調製用添加剤。
  6. 請求項5記載のサイレージ調製用添加剤をサイレージ材料に添加することを特徴とするサイレージの調製方法。
  7. 請求項6記載のサイレージ材料が飼料用イネであるサイレージの調製方法。
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