JP2017128838A - 炭素繊維前駆体繊維束および炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素繊維前駆体繊維製造用ポリアクリロニトリル系重合体を口金から吐出するに先立ち、ゲル状物などの異物を濾過前の紡糸溶液中から精度良く濾過出来るだけではなく、フィルター濾材の目詰まりを抑制して、安定して高品質な炭素繊維前駆体繊維束および高強度な炭素繊維束を製造出来る方法を提供する。【解決手段】ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、紡糸に先立ち、所定の濾過精度(μm)と、所定の濾材厚み(μm)ないし所定の濾材目付(g/m2)を有するフィルター濾材を用い、濾過速度(cm/時間)が、上記濾過精度、および濾材厚み(μm)ないし濾材目付(g/m2)との間で所定の関係式を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、高性能かつ高品位な炭素繊維束を得るための炭素繊維前駆体繊維束の製造方法、および炭素繊維束の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されており、更なる高性能化と低コスト化両立の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル系炭素繊維は、その前駆体となるポリアクリロニトリル系重合体からなる紡糸溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得た後、それを180〜400℃の温度の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維束へ転換し、少なくとも1000℃の温度の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
炭素繊維は脆性材料であり、わずかな表面欠陥、内在欠陥により強度低下を引き起こすため、欠陥の生成に関しては、繊細な注意が払われてきた。原料中の粉塵などの異物を取り除くことは当然のことながら、紡糸溶液が一部滞留、熱劣化することで出来たゲル状物を口金から吐出前に取り除くことが強度低下だけではなく、口金から吐出時、製糸・焼成工程での糸切れを低減するためにも行われてきた。例えば、5μm以下の開孔径を持つフィルターを用いて濾過する方法(特許文献1参照)や濾過精度が5μm以下の金属焼結フィルターを用いて濾過する方法(特許文献2参照)、開孔径を段階的に小さくして多段濾過する方法(特許文献3参照)が提案されている。
また、炭素繊維は製造費用が高額であるため、その生産コストを低減させるための手法が種々検討されている。本発明者らは、炭素繊維の生産コストを低減するため、特定の分子量分布を有するポリアクリロニトリル系重合体を用いることで、紡糸速度を高め、かつ、紡糸ドラフト率を高めることが出来る技術を提案している(特許文献4参照)。
特開昭58―220821号公報 特開昭59―88924号公報 特開2004―27396号公報 特開2008―248219号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2のように単にフィルターの開孔径や濾過精度を小さくする方法では、フィルターの目詰まりが早くなってしまいフィルターの濾圧上昇速度が著しく増大する。換言すれば、フィルター寿命が短く、フィルター交換の都度、製糸工程の停機を行う必要があるという問題点があった。また、特許文献3の方法では、多段で濾過を行うため、フィルター装置を設置するスペースが余分に必要となってしまうため、限られたスペースでは大量生産が困難となる。
また、特許文献4のポリアクリロニトリル系重合体をフィルターで濾過する際には、フィルター濾過時の圧力上昇が起こり易く、フィルター寿命が短くなり易いという問題点があった。
本発明は、前記した従来技術が有する問題を解決すること、すなわち、ゲル状物などの異物を濾過前の紡糸溶液中から精度良く濾過出来るだけではなく、フィルター濾材の目詰まりを抑制して、安定して高品質な炭素繊維前駆体繊維束および炭素繊維束を製造出来る方法を提案することを目的とする。

上記の目的を達成するために、本発明の一実施態様に係る炭素繊維前駆体繊維束の製造方法は、次の構成を有するものである。すなわち、本発明の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法は、ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、紡糸に先立ち、濾過精度B(μm) と濾材厚みC(μm) を有するフィルター濾材を用い、濾過速度A(cm/時間) が下記式(1)および下記式(2)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維束の製造方法である。
≦ −100×B+0.3×C+150 ・・・(1)
0.1 ≦ A ≦ 15 ・・・(2)。
また、上記の目的を達成するために、本発明の別の実施態様に係る炭素繊維前駆体繊維束の製造方法は、次の構成を有するものである。すなわち、本発明の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法は、ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、紡糸に先立ち、濾過精度B(μm) と濾材目付D(g/m) を有するフィルター濾材を用い、濾過速度A(cm/時間) が下記式(3)〜(5)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維束の製造方法である。
D − 600/(α×β) ≧ 0 ・・・(3)
α = 1−1(1+exp(7−A)) ・・・(4)
β = 1−1(1+exp(−0.23×B)) ・・・(5)。
なお、本発明の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法は、前記式(1)〜(5)の全ての式を満足する条件で紡糸溶液を濾過することも好適である。
本発明によれば、用いるポリアクリロニトリル系重合体の分子量分布を問わず、紡糸溶液中の異物を効率的に除去出来るだけではなく、フィルターの目詰まりを抑制することで高性能かつ高品位な安定して高い品質の炭素繊維束が得られる炭素繊維前駆体繊維束を製造することが出来る。さらに、高強度な炭素繊維束を製造することが出来る。
本発明者らは、高い品質を維持しつつフィルターの目詰まりを抑制することが可能な炭素繊維前駆体繊維束の製造方法について、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
本発明の炭素繊維前駆体繊維束は、ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して得られる。本発明で用いられるポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られる単独重合体だけではなく、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を用いたポリアクリロニトリル系共重合体であっても良い。
ポリアクリロニトリル系重合体を得るのに用いる単量体は、アクリロニトリルが90〜100質量%であり、共重合可能な単量体は10質量%未満であることが好ましい。共重合可能な単量体を加えることで耐炎化反応が促進されるが、その量が少ないほど、炭素繊維前駆体繊維束を炭素繊維束に転換するための焼成工程での繊維同士の融着を抑制することが出来、得られる炭素繊維束の優れた品質および性能を維持することが出来るため、共重合可能な単量体の量は0.1〜2質量%であることがさらに好ましい。共重合可能な単量体の量が0.1質量%以上では耐炎化反応の促進効果が十分なことが多く、また共重合量が2質量%以下であると耐炎糸内部まで十分に耐炎化反応を進行させやすく、後述する赤外スペクトルのピーク強度比の範囲を満たす場合が多い。
アクリロニトリルと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。
本発明では、重量平均分子量(以下、Mwと略記する)が30万〜50万であるポリアクリロニトリル系重合体が好ましく用いられる。Mwが30万以上のポリアクリロニトリル系重合体の場合、繊維軸方向の分子鎖同士の繋がりが向上するため、紡糸および焼成工程での高い延伸に耐えることが出来、炭素繊維としての強度を高くすることが出来る。また、Mwが50万以下のポリアクリロニトリル系重合体を用いる場合には分子鎖同士の絡み合いを適度な範囲と出来るので、かかる高分子量のポリアクリロニトリル系重合体を用いる場合にも紡糸溶液中の重合体濃度を下げる必要は無く、高い生産性を維持することが出来る。また、かかるポリアクリロニトリル系重合体は、そのZ平均分子量(以下、Mzと略記する)とMwとの比で示される多分散度Mz/Mwが1.5〜6.0であることが好ましく、2.7〜6.0であるのがさらに好ましい。
本発明において、上記の各種平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略記する)法で測定され、ポリスチレン換算値として得られるものである。また、多分散度Mz/Mwは、次の意味を有する。すなわち、数平均分子量Mn(以下、Mnと略記する)は、高分子化合物に含まれる低分子量物の寄与を敏感に受ける。これに対して、Mwは高分子化合物に含まれる高分子量物の寄与を敏感に受け、Mzは高分子量物の寄与をさらに敏感に受ける。そのため、多分散度であるMw/MnやMz/Mwを用いることにより、分子量分布の広がりを評価することができる。Mw/Mnが1であるとき単分散であり、この値が大きくなるにつれて分子量分布が低分子量側を中心にブロードになることを示すのに対して、Mz/Mwは大きくなるにつれて、分子量分布が高分子量側を中心にブロードになることを示す。上記のように、Mw/MnとMz/Mwの示すところが異なるため、Mw/Mnが大きくても、必ずしもMz/Mwが大きくなるということではない。
Mz/Mwが1.5以上では、延伸性が高く、炭素繊維前駆体繊維束として満足出来る配向状態とすることが出来る。また、Mz/Mwが6.0以下であればポリアクリロニトリル系重合体の絡み合いを適切な範囲に抑えることが出来、紡糸溶液を口金から吐出する際に吐出が困難になるようなトラブルを抑制することが出来る。Mz/Mwが2.7〜6.0の範囲では、歪み硬化が強く発現し、紡糸溶液の安定性が向上し、生産性を大幅に向上することが出来、好ましい。
多分散度Mz/Mwが2.7〜6.0であるポリアクリロニトリル系重合体を用いることにより、紡糸ドラフトを高め、紡糸速度を高めることが出来る。紡糸ドラフトとは、紡糸溶液が紡糸口金を離れて最初に接触する駆動源を持ったローラーの表面速度(以下、凝固糸の引き取り速度と略称することがある)を、紡糸口金孔内の紡糸溶液の線速度(以下、吐出線速度と略称することがある)で割った値をいう。この吐出線速度とは、単位時間当たりに吐出される紡糸溶液の体積(以下、吐出量と略称することがある)を口金孔の総面積で割った値をいう。したがって、吐出線速度は、紡糸溶液の吐出量と紡糸口金のホール数および孔径の関係で決まる。紡糸溶液は、紡糸口金を出て凝固浴に接して次第に凝固して凝固糸となる。このとき第一ローラーにより凝固浴中を通過中の紡糸糸条は引っ張られているが、紡糸糸条よりも未凝固紡糸溶液の方が伸び易いので、紡糸ドラフトとは、ほぼ紡糸溶液が固化するまでに引き伸ばされる倍率と同義となる。すなわち、紡糸ドラフトは次式で表されるものである。
・紡糸ドラフト=(凝固糸の引き取り速度)/(吐出線速度)。
紡糸ドラフトを高めることが出来ると、吐出線速度を上げずに凝固糸の引き取り速度を高めることが出来るので、紡糸速度を上げることが可能となる。また、限界紡糸ドラフトとは、糸切れを発生させずに凝固糸を巻き取ることが出来る限界の速度のことであり、この限界紡糸ドラフトが高いほど、紡糸速度を上げることが可能となるので好ましい。
多分散度Mz/Mwを2.7〜6.0とすることで紡糸ドラフトを高めることが出来るメカニズムは、必ずしも明確になった訳ではないが、次のように考えられる。紡糸口金孔直後でポリアクリロニトリル系重合体溶液が伸長変形する際に、超高分子量物と高分子量物が絡み合い、超高分子量物を中心に絡み合い点間の分子鎖が緊張することにより伸長粘度の急激な増大、すなわち、歪み硬化がおこる。ポリアクリロニトリル系重合体溶液の細化に伴い細化部分の伸長粘度が高くなり、流動安定化するため紡糸ドラフトを高めることが出来、紡糸速度を高めることが出来る。
前記したポリアクリロニトリル系重合体を、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、硝酸、塩化亜鉛水溶液、ロダンソーダ水溶液などポリアクリロニトリル系重合体が可溶な溶媒に溶解し、紡糸溶液とする。ポリアクリロニトリル系重合体の製造に溶液重合を用いる場合、重合に用いられる溶媒と紡糸溶媒を同じものにしておくと、得られたポリアクリロニトリル系重合体を分離し、紡糸溶媒に再溶解する工程が不要となり、好ましい。
本発明では、上記したような紡糸溶液を紡糸するに先立ち、フィルター装置に通し、重合体原料および各工程において混入した不純物を除去する。本発明におけるフィルター装置とは、紡糸溶液中に存在する異物を濾過して除去する設備を意味し、濾過処理を施す紡糸溶液をフィルター装置内に導くための流入路と、紡糸溶液を濾過するためのフィルター濾材と、濾過された紡糸溶液をフィルター装置外に導くための流出路と、これらを収納するための容器とより構成される。ここで、フィルター濾材とは、フィルター装置内に収納される紡糸溶液の濾過手段である。
フィルター濾材の形態としては、リーフディスク型、キャンドル型、プリーツキャンドル型などが用いられる。フィルター濾材が一定の曲率を持つキャンドル型、プリーツキャンドル型に対し、リーフディスク型フィルターはフィルター濾材をほぼ平面状に使用出来るため、開孔径分布が広がりにくく、洗浄性も維持し易いという利点があり、好ましい。
本発明で使用されるフィルター濾材は、紡糸溶液中に存在する異物を除去するための直接的役割を担う部分であり、定められた開孔径を狭いばらつきで保有することが求められ、加えて、被処理物質に対する化学的安定性と耐熱性とある程度の耐圧性とが要求される。このようなフィルター濾材としては、金属の繊維を織って作製した金網や、ガラス不織布、焼結金属繊維組織よりなるフィルター濾材などが好ましく使用される。また、フィルター濾材の材質は、紡糸溶液に不活性であり、かつ溶媒への溶出成分がなければ特に限定されるものではないが、強度や価格の観点から金属が好ましい。具体的な金属としては、ステンレス鋼(SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等)、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)の他、ニッケル、チタン、コバルトベースの種々合金が選択される。金属繊維の製造方法は、特に多数本の線材を束としてまとめて線引き細径化したのち、各線を分離して線材を細径化するいわゆる集束繊維製造方法や、コイル切削法、ビビリ振動切削法などが挙げられる。金網の場合には、繊維束ではなく、単繊維である必要があるため、伸線と熱処理を繰り返す方法などによって得られる。
紡糸溶液の濾過に際して、濾過精度が小さいほど紡糸溶液中の異物を除去し易くなるが、フィルター濾材の目詰まりが起こり易くなる。また、フィルター厚みが厚くなるほど紡糸溶液中の異物を除去し易くなるが、フィルター濾材での圧力損失が大きくなり、製造プロセスの安定性が低下する。これまで、上記のような傾向は知られていたが、フィルター濾材ごとに最適な濾過条件が異なっており、紡糸溶液の濾過について一般化出来る知見は得られていなかった。そのため、フィルター濾材の変更時には、濾過条件の最適化に膨大な時間とコストが必要となっていた。
そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、一実施態様として、濾過精度B(μm) と濾材厚みC(μm) を有するフィルター濾材を用い、濾過速度A(cm/時間) が下記式(1)および下記式(2)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することにより、紡糸溶液中の異物の効率的な除去とフィルターの目詰まり抑制を両立し、安定して高い品質の炭素繊維前駆体繊維束を製造することが出来ることを見出した。
≦ −100×B+0.3×C+150・・・(1)
0.1 ≦ A ≦ 15 ・・・(2)。
ここで、濾過速度A(cm/時間)とは、フィルター濾材の単位面積(cm)を通過する単位時間あたりの紡糸溶液の濾過量(cm/時間)のことであり、単位時間あたりの紡糸溶液の濾過量(cm/時間)をフィルター濾材の総面積(cm)で割ることにより計算することが出来る。また、濾過精度B(μm) とはフィルター濾材を通過する間に95%を捕集することが出来る球粒子の粒子径(直径)であり、JIS規格の方法(JIS−B8356−8)により測定出来る。また、JIS規格の方法(JIS−K3832)で求められるバブルポイントと濾過精度の関係を予め調べておけば、バブルポイントの値から濾過精度を推定することも出来る。濾材厚みC(μm)はフィルター濾材の垂直断面を切り出し、顕微鏡等で観察した任意の5箇所の平均値を用いることにより算出する。フィルター濾材が単層ではなく積層されている場合は、各層の厚みの平均値を足し合わせた値を濾材厚みCと定義する。なお、異物の除去に関与せずフィルター濾材の強度向上のみを目的とする保護層が含まれる場合は、保護層を除いた厚みを濾材厚みCと定義する。
濾過速度Aが式(1)および式(2)で規定された範囲内である場合、炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立することが出来る。
濾材厚みCが一定の値であった場合、炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立可能な濾過速度Aの上限を測定すると、その3乗は濾過精度Bと負の相関があり、その係数は100となる。濾過精度Bの値を小さくすることで式(1)が成立するようにすると、炭素繊維前駆体繊維束の品位低下を抑制出来る。また、濾過速度Aの値を小さくすることで式(1)が成立するようにすると、フィルターの目詰まりを抑制出来る。
濾過精度Bが一定の値であった場合、炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立可能な濾過速度Aの上限を測定すると、その3乗は濾材厚みCと正の相関があり、その係数は0.3となる。濾材厚みCの値を大きくすることで式(1)が成立するようにすると、炭素繊維前駆体繊維束の品位低下を抑制出来る。また、濾過速度Aの値を小さくすることで式(1)が成立するようにすると、フィルターの目詰まりを抑制出来る。
濾過速度Aが0.1より大きい場合、濾材総面積の大幅な増加や紡糸速度の極端な低下を伴わないので、経済的な設備で製造することが出来る。また、濾過速度Aが15より小さい場合、濾材通過時の圧力損失を一定範囲内とすることが出来るので、製造プロセスの安定性を維持することができる。濾過速度Aは8より小さいことが好ましく、3より小さいことが更に好ましい。
濾過速度Aが式(1)および式(2)で規定された範囲内に含まれている場合に、炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立出来るメカニズムについて、次のように考えられる。
すなわち、濾過精度Bの値が大きいほど異物を捕捉しにくくなるが、濾過速度Aを小さくすることで異物の変形によるフィルター濾材からのすり抜けを抑えられるため、式(1)および式(2)を満たす範囲では異物の捕捉率低下を抑えることが出来ると考えられる。また、濾過精度Bの値が小さいほどフィルター濾材中の流路に異物が引っかかることにより異物の捕捉率が上がるが、異物の変形によって流路が完全に塞がることでフィルター濾材は目詰まりし易くなる。しかし、濾過速度Aを小さくすることで異物の変形を抑えられるため、異物の変形によってフィルター濾材中の流路が完全に塞がることを抑制出来、フィルター濾材の目詰まりを抑制することが出来ると考えられる。
以上の理由から、式(1)および式(2)を満たす範囲では炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立することが出来る。濾材厚みCについては、濾材厚みCが大きいほど異物を捕捉し易くなるため、式(1)および式(2)を満たす範囲であれば、濾過速度Aを大きくしても異物の捕捉率は低下しない。
さらに、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明の別の実施態様として、濾過速度A(cm/時間)とフィルター濾材の濾過精度B(μm) 、濾材目付D(g/m)が下記式(3)〜(5)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することにより、紡糸溶液中の異物の効率的な除去とフィルターの目詰まり抑制を両立し、安定して高い品質の炭素繊維前駆体繊維束を製造することが出来ることを見出した。
D − 600/(α×β) ≧ 0 ・・・(3)
α = 1−1/(1+exp(7−A)) ・・・(4)
β = 1−1/(1+exp(−0.23×B)) ・・・(5)。
本発明において、濾材目付D(g/m)とはフィルター濾材本体を保護する目的で積層されていることがあるメッシュ層を除く、フィルター濾材本体の総目付のことであり、任意の面積に切り出したフィルター濾材の質量を測定し、この質量を面積で割ることにより算出することができる。
濾材目付Dが大きいほど異物の捕捉率が高まり、逆に小さいほど異物が捕捉しきれずにすり抜けやすくなる。そこで、濾材目付Dが炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制に与える影響を、濾過速度Aおよび濾過精度Bを変更しながら測定したところ、任意の濾過速度および濾過精度において炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立可能な最低の濾材目付(以下、最低濾材目付と記載)が存在することが確認された。本実験結果によると、該最低濾材目付は式(3)の左辺第2項に示すように互いに独立な媒介変数αおよびβを用いて表すことができ、αは式(4)で示される濾過速度Aの関数として、βは式(5)で示される濾過精度Bの関数として定義される。かかるα×βが大きいほど最低濾材目付は小さく、α×βが小さいほど最低濾材目付は大きくなる。個別の変数の動きとしては、濾過速度Aが大きいほどαは小さくなり最低濾材目付としては大きく、濾過速度Aが小さいほどαは大きくなり最低濾材目付としては小さくなる。また、同様に、濾過精度Bが大きいほどβは小さくなり最低濾材目付としては大きく、濾過精度Bが小さいほどβは大きくなり最低濾材目付としては小さくなる。式(3)〜(5)を満足する条件で濾過を行うことで、炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制が両立できるメカニズムは必ずしも明らかになったわけではないが、次のように考えられる。すなわち、濾過精度が小さいほど異物がフィルター濾材中の流路に引っかかりやすく、効果的に異物を捕捉することができる反面、フィルターが目詰まりしやすくなるが、濾過速度が十分小さいと、圧損によるフィルター濾材中における異物の変形ならびに広がりが抑制されるため、フィルター濾材中の流路が目詰まりしにくくなるものと考えられる。
また、紡糸溶液中のポリアクリロニトリル系重合体に多分散度Mz/Mwが2.7〜6.0であるポリアクリロニトリル系重合体を用いた場合、式(1)および式(2)、あるいは式(3)〜(5)を満足する条件においては、炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立することが出来る上、紡糸速度の向上により更に生産性を上げることが可能である。
多分散度Mz/Mwが2.7〜6.0であるポリアクリロニトリル系重合体を用いた場合においても炭素繊維前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立することが出来るメカニズムについて、必ずしも明確になった訳ではないが、次のように考えられる。
前記の特定の分子量分布を有するポリアクリロニトリル系重合体においては、濾過精度Bが小さいほど剪断速度が高まり、フィルター濾材中への分子量の高い成分の堆積による目詰まりが起こり易くなるが、式(1)および式(2)、あるいは式(3)〜(5)を満たす範囲では剪断速度を一定以下とすることが出来、分子量の高い成分の堆積を抑制することが出来る。また、濾材厚みCあるいは濾材目付Dが大きいほどフィルター濾材中へ分子量の高い成分が堆積し易くなるが、式(1)および式(2)、あるいは式(3)〜(5)を満たす範囲では剪断速度を一定以下とすることが出来、分子量の高い成分の堆積を抑制することが出来る。
また、本発明においては、濾過精度B(μm)が下記式(6)を満たすことが好ましい。
B≧3 ・・・(6)。
濾過精度Bが3以上である場合、フィルターの目詰まり抑制をより効果的にすることが出来る。この現象の理由は必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。濾過速度Aを小さくすることで異物の変形を抑えられ、異物の変形によってフィルター濾材中の流路が完全に塞がることを抑制出来るが、濾過精度Bの値が大きいほど濾過圧力が低くなり易く、異物の変形度合いが小さくなるため、フィルター目詰まり抑制効果が現れ易くなる。
また、紡糸溶液中のポリアクリロニトリル系重合体に多分散度Mz/Mwが2.7〜6.0であるポリアクリロニトリル系重合体を用いた場合、[式(1)および式(2)]および/または、[式(3)〜(5)]に加えて式(6)を満足する条件においては、フィルターの目詰まり抑制効果を更に効果的にすることが出来る。そのメカニズムについては、次のように考えられる。
すなわち、濾過精度Bが3以上である場合、フィルター濾材通過時に受ける剪断速度を更に低い範囲に抑えることが出来、分子量の高い成分の堆積の抑制をより効果的にすることが出来るため、[式(1)および式(2)]および/または、[式(3)〜(5)]で見られたフィルター目詰まり抑制効果が更に顕著に見られるようになると考えられる。
本発明では、上述のようにして濾過した紡糸溶液を湿式、または乾湿式紡糸法により紡糸することにより、炭素繊維前駆体繊維束を製造する。なかでも特に、乾湿式紡糸法は、前記した特定の分子量分布を有するポリアクリロニトリル系重合体の特性を発揮させるため、好ましく用いられる。
紡糸溶液を凝固浴中に導入して凝固させ、得られた凝固糸を、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を通過させることにより、炭素繊維前駆体繊維束が得られる。また、上記の工程に乾熱延伸工程や蒸気延伸工程を加えても良い。凝固糸は、水洗工程を省略して直接浴中延伸を行っても良いし、溶媒を水洗工程により除去した後に浴中延伸を行っても良い。浴中延伸は、通常、30〜98℃の温度に温調された単一または複数の延伸浴中で行うことが好ましい。
このようにして得られた炭素繊維前駆体繊維束が含む単繊維の平均繊度は、0.5〜1.5dtexであることが好ましく、0.5〜1.1dtexであることがより好ましく、0.5〜0.8dtexであることがさらに好ましい。単繊維繊度を0.5dtex以上とすることで、ローラーやガイドとの接触による糸切れ発生を抑え、製糸工程および炭素繊維束の焼成工程のプロセス安定性を維持することが出来る。また、単繊維繊度を1.5dtex以下とすることで、耐炎化後の各単繊維における内外構造差を小さくし、続く炭素化工程でのプロセス性や得られる炭素繊維束の引張強度および引張弾性率を向上させることが出来る。単繊維繊度が1.1dtex以下であれば、耐炎化処理速度をそれほど低下させなくても内外構造差が抑制しやすく、0.8dtex以下とすれば十分である。
得られる炭素繊維前駆体繊維束は、通常、連続繊維の形状である。また、その1糸条あたりのフィラメント数は、好ましくは1,000〜36,000本である。
本発明の炭素繊維前駆体繊維束は異物が減少した、高品位な炭素繊維前駆体繊維束となっているため、焼成工程(具体的には、耐炎化処理、予備炭素化処理、および炭素化処理を行う工程)において高いプロセス安定性を維持でき、高品位な炭素繊維束を得ることが可能である。さらに、以下に述べる焼成工程を通過させることにより、異物減少による高強度化効果を最大化することが出来る。具体的には、炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化工程に供する際に、得られた耐炎化繊維が、赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比が0.70〜0.75の範囲、かつ、赤外スペクトルの1370cm−1のピーク強度に対する1254cm−1のピーク強度の比が0.50〜0.65の範囲になるように制御することが好ましい。赤外スペクトルにおける1453cm−1のピークはアルケン由来であり、耐炎化の進行とともに減少していく。1370cm−1のピークと1254cm−1のピークは耐炎化構造(それぞれナフチリジン環および水素化ナフチリジン環構造と考えられる。)に由来するピークであり、耐炎化の進行とともに増加していく。得られた耐炎化繊維の比重が1.35の場合に、1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比が、0.63〜0.69程度である。耐炎化工程においては、ポリアクリロニトリルに由来するピークをなるべく減少させて炭化収率を高めるようにすることが一般的であるが、本発明の好ましい様態ではあえて多くのアルケンを残すように、耐炎化工程の条件を設定する。このような構造を有する耐炎化繊維を予備炭素化工程に供することにより、得られる炭素繊維束の引張強度を効果的に高めることが出来る。さらに、1370cm−1のピーク強度に対する1254cm−1のピーク強度の比が0.50〜0.65となるように耐炎化条件を設定することも好ましい態様である。1254cm−1のピークは耐炎化が不十分な部分で多く見られ、明確な理由は明らかではないが、この構造が多いと、得られる炭素繊維の引張強度が低下する傾向にある。かかるピーク強度比は耐炎化の進行とともに減少していき、特に初期の減少が大きいが、耐炎化条件次第では、時間を増やしてもかかるピーク強度比が0.65以下とならないこともある。
この2つのピーク強度比を目的の範囲内で両立させるためには、基本的には、炭素繊維前駆体繊維束を構成するポリアクリロニトリル系重合体に含まれる共重合成分の量が少ないこと、炭素繊維前駆体繊維束の繊度を小さくすること、および耐炎化温度を後半に高くすることに主に注目して条件設定すればよい。赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比が0.98〜1.10の範囲となるまで熱処理し(第1耐炎化工程)、続いて、第1耐炎化工程よりも高い温度で、赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比を0.70〜0.75の範囲、かつ、赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1254cm−1ピーク強度の比が0.50〜0.65の範囲となるまで耐炎化時間を5〜14分、好ましくは5〜10分として熱処理(第2耐炎化工程)することが好ましい。第2耐炎化工程の耐炎化時間を短くするためには耐炎化温度を高く調整すればよいが、適切な耐炎化温度はポリアクリロニトリル前駆体繊維束の特性に依存する。炭素繊維束中心温度が好ましくは280〜310℃、より好ましくは280〜300℃、さらに好ましくは285〜295℃になるようにすることが、上述の赤外スペクトルの範囲に制御するために好ましい。耐炎化温度は一定である必要はなく、多段階の温度設定でも構わない。得られる炭素繊維の引張強度を高めるためには、耐炎化温度は高く、耐炎化時間を短くすることが好ましい。第1耐炎化工程は、耐炎化時間が好ましくは8〜25分、より好ましくは8〜15分で、上述の範囲となるような耐炎化温度で耐炎化することが好ましい。
ここで述べる耐炎化時間とは耐炎化炉内に繊維束が滞留している時間を意味し、耐炎化繊維束とは予備炭素化前の繊維束を意味する。また、ここで述べるピーク強度とは、耐炎化繊維を少量サンプリングして赤外スペクトルを測定して得られたスペクトルをベースライン補正した後の各波長の吸光度のことであり、特にピーク分割などは行わない。また、試料の濃度は0.67質量%となるようにKBrで希釈して測定する。このように、耐炎化条件設定を変更するたびに赤外スペクトルを測定して、後述の好ましい製造方法にしたがって試行錯誤的に条件検討すればよい。耐炎化繊維の赤外スペクトルピーク強度比を適切に制御することで、炭素繊維の引張強度を制御することができる。
本発明において、耐炎化とは空気中の酸素雰囲気濃度±5質量%の酸素雰囲気濃度で200〜400℃で熱処理することをいう。
本発明において、耐炎化のトータルの処理時間は、好ましくは13〜20分の範囲で適宜選択することができる。また、得られる炭素繊維束の引張強度を向上させる目的から、得られる耐炎化繊維束の比重が好ましくは1.28〜1.32、より好ましくは1.30〜1.32の範囲となるように耐炎化の処理時間を設定する。より好ましい耐炎化の処理時間は耐炎化温度に依存する。耐炎化繊維束の比重は1.28以上なければ炭素繊維束の引張強度が低下することがあり、耐炎化繊維束の比重が1.32以下であれば引張強度を高めることができる。耐炎化繊維束の比重は耐炎化の処理時間と耐炎化温度により制御する。また、第1耐炎化工程から第2耐炎化工程に切り替えるタイミングは比重1.21〜1.23の範囲とすることが好ましい。この際も赤外スペクトルでの規定範囲を優先して制御する。これらの耐炎化の処理時間や耐炎化温度の好ましい範囲は炭素繊維前駆体繊維束の特性やポリアクリロニトリル系重合体の共重合組成によって変化する。
耐炎化工程において、炭素繊維前駆体繊維束の比重が1.22以上であって、かつ、220℃以上で熱処理される間に繊維に与えられる熱量の積算値を、好ましくは50〜150J・h/g、より好ましくは70〜100J・h/gとするのがよい。耐炎化工程後半に与えられる熱量の積算値をかかる範囲に調整することで、得られる炭素繊維の引張強度を高めやすい。熱量の積算値は、耐炎化温度T(K)と耐炎化炉の滞留時間t(h)、およびポリアクリルニトリル系前駆体繊維束の熱容量1.507J/g・℃を用いて、下式により求めた値である。
熱量の積算値(J・h/g)=T×t×1.507
ここで耐炎化工程に温度条件が複数ある場合には、各温度での滞留時間から熱量を計算して、積算すればよい。
前記耐炎化工程に引き続いて、好ましくは予備炭素化工程を行った後、不活性雰囲気中、最高温度1000〜3000℃において炭素化するのが好ましい。炭素化工程の温度は、得られる炭素繊維のストランド弾性率を高める観点からは、高い方が好ましいが、高すぎると高強度領域の強度が低下する場合があり、両者を勘案して設定するのがよい。より好ましい温度範囲は1200〜2000℃であり、さらに好ましい温度範囲は、1200〜1600℃である。
以上のようにして得られた炭素繊維束は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。液相電解酸化の方法については特に指定はなく、公知の方法で行えばよい。
かかる電解処理の後、得られた炭素繊維束に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、複合材料に使用されるマトリックス樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明の炭素繊維束は、引張強度が7.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは7.7GPa、さらに好ましくは7.9GPaである。ここで、引張強度は炭素繊維束の樹脂含浸ストランド引張試験によって評価した値である。本発明の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維は異物が低減しているため、破壊原因となる欠陥を僅かしか含まない炭素繊維が得られ、先述した特定の焼成工程を通過させることによる高強度化の効果が発現しやすく、引張強度が7.5GPa以上の炭素繊維束を得ることができる。
本発明の炭素繊維束の好ましい態様において、樹脂含浸ストランド引張試験における引張弾性率(単に、ストランド弾性率とも略記する。)は240〜440GPaであり、好ましくは280〜400GPaであり、より好ましくは310〜400GPaである。引張弾性率が240〜440GPaであれば、引張弾性率と引張強度のバランスに優れるために好ましい。引張弾性率は、後述する<炭素繊維のストランド引張試験>に記載の方法により求めることができる。このとき、歪み範囲を0.1〜0.6%とする。炭素繊維束の引張弾性率は、主に炭素繊維束の製造工程におけるいずれかの熱処理過程で繊維束に張力を付与するか、炭素化温度を変えることにより制御できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例で用いた測定方法を次に説明する。
<各種分子量:Mz、Mw、Mz/Mw>
測定しようとする重合体が、濃度0.1質量%でジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解した検体溶液を作製した。作製した検体溶液について、GPC装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線から分子量分布曲線を求め、Z平均分子量Mz、重量平均分子量Mwを算出した。さらに、Mz、Mwの値からMz/Mwを算出した。
・カラム:極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速:0.5ml/分
・温度:75℃
・試料濾過:メンブレンフィルター(0.45μmカット)
・注入量:200μl
・検出器:示差屈折率検出器。
分子量分布曲線は、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも6種類用いて、溶出時間―分子量の検量線を作成し、その検量線上において、該当する溶出時間に対応するポリスチレン換算の分子量を読み取ることにより求めた。
実施例では、GPC装置として(株)島津製作所製CLASS−LC2010を、カラムとして東ソー(株)製TSK−GEL−α―M(×2)+東ソー(株)製TSK−guard Column αを、ジメチルホルムアミドおよび臭化リチウムとして和光純薬工業(株)製を、メンブレンフィルターとしてミリポアコーポレーション製0.45μm−FHLP FILTERを、示差屈折率検出器として(株)島津製作所製RID−10AVを、検量線作成用の単分散ポリスチレンとして、分子量184000、427000、791000、1300000、1810000、および4210000のものを、それぞれ用いた。
<炭素繊維前駆体繊維束の品位の判定>
6000フィラメントの炭素繊維前駆体繊維束を1m/分の速度で走行させながら、繊維束中の単繊維切れ(以下、毛羽と呼ぶ)および単繊維切れの集合体(以下、毛玉と呼ぶ)の個数の総和を数え、三段階評価した。評価基準は、次の通りである。なお、炭素繊維前駆体繊維束が3000フィラメントの場合は毛羽・毛玉の数を1.4倍に、炭素繊維前駆体繊維束が12000フィラメントの場合は毛羽・毛玉の数を0.7倍とすることで、評価基準を合わせることが出来る。なお、数値は小数点以下を四捨五入し整数とした。
・◎:繊維600m中、1個以下
・○:繊維600m中、2〜4個
・△:繊維600m中、5〜30個。
<フィルター寿命の判定>
紡糸時のフィルター濾材の圧力損失が、濾過開始時から1MPa増加するまでの単位濾過面積あたりの濾液通過量を測定し、三段階評価した。評価基準は、次の通りである。
・◎:50L/cm以上
・○:25L/cm以上50L/cm未満
・△:25L/cm未満。
<紡糸限界ドラフトの評価>
濾過された紡糸溶液を40℃の温度で紡糸口金から一旦空気中に吐出し、2mmの空間を通過させた後、3℃の温度にコントロールした20質量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により紡糸する際、吐出線速度を2m/分となるように口金への送液量を調整し、凝固糸の巻き取り速度を変更することで糸切れの発生する速度を測定。糸切れの発生した巻き取り速度を吐出線速度で割った値を紡糸限界ドラフトとして評価した。
<炭素繊維のストランド引張試験>
炭素繊維樹脂含浸ストランドの引張弾性率、引張強度および応力−ひずみ曲線は、JIS R7608(2008)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求めた。ストランド弾性率Eは歪み範囲0.1〜0.6%の範囲で測定し、初期弾性率は歪み0における応力−ひずみ曲線の傾きから求めた。なお、試験片は、次の樹脂組成物を炭素繊維束に含浸し、130℃の温度で35分間熱処理の硬化条件により作製した。
[樹脂組成]
・3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート(100質量部)
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3質量部)
・アセトン(4質量部)。
また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の算術平均値をその炭素繊維のストランド引張弾性率および引張強度とした。なお、後述の実施例および比較例においては、上記の3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製、“BAKELITE(登録商標)”ERL−4221を用いた。ひずみは伸び計を用いて測定した。
<比重測定>
1.0〜3.0gの繊維を採取し、120℃で2時間絶乾した。次に絶乾質量A(g)を測定した後、エタノールに含浸させ十分脱泡してから、溶媒浴中の繊維質量B(g)を測定し、繊維比重=(A×ρ)/(A−B)により繊維比重を求めた。
<赤外スペクトルの強度比>
測定に供する耐炎化繊維は、凍結粉砕後に2mgを精秤して採取し、それをKBr300mgと良く混合して、成形用治具に入れてプレス機を用いて40MPaで2分間加圧することで測定用錠剤を作製した。この錠剤をフーリエ変換赤外分光光度計にセットし、1000〜2000cm−1の範囲でスペクトルを測定した。なお、バックグラウンド補正は、1700〜2000cm−1の範囲における最小値が0になるようにその最小値を各強度から差し引くことで行った。なお、上記フーリエ変換赤外分光光度計として、パーキンエルマー製Paragon1000を用いた。
<炭素繊維束の品位の判定>
炭素繊維前駆体束と同様の方法で、6000フィラメントの炭素繊維束を1m/分の速度で走行させながら、繊維束中の単繊維切れ(以下、毛羽と呼ぶ)および単繊維切れの集合体(以下、毛玉と呼ぶ)の個数の総和を数え、三段階評価した。評価基準は、次の通りである。なお、炭素繊維束が3000フィラメントの場合は毛羽・毛玉の数を1.4倍に、炭素繊維束が12000フィラメントの場合は毛羽・毛玉の数を0.7倍とすることで、評価基準を合わせることが出来る。なお、数値は小数点以下を四捨五入し整数とした。
・◎:繊維600m中、1個以下
・○:繊維600m中、2〜4個
・△:繊維600m中、5〜30個。
[実施例1]
アクリロニトリル100質量部、イタコン酸1質量部、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1質量部をジメチルスルホキシド370質量部に均一に溶解し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を窒素置換した後、攪拌しながら下記の重合条件Aの熱処理を行い、溶液重合法により重合して、ポリアクリロニトリル系重合体溶液を得た。
(重合条件A)
(1)61℃の温度で4時間保持
(2)61℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(3)80℃の温度で6時間保持。
得られたポリアクリロニトリル系重合体溶液を用いて、それに含まれるポリアクリロニトリル系重合体の各種分子量を測定した。次いで、得られたポリアクリロニトリル系重合体溶液を用いて重合体濃度が20質量%となるように調整し、紡糸溶液を作製した。
得られた紡糸溶液をフィルター装置に流入させ、濾過を行った。使用したフィルター濾材は、濾過精度Bが1μm、濾材厚みCが800μm、濾材目付Dが2500g/mの金属焼結フィルターであり、濾過速度Aが3cm/時間の濾過条件で濾過した。
濾過された紡糸溶液を、孔数1500の紡糸口金から一旦空気中に吐出し、空間を通過させた後、ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により紡糸し凝固糸とした。また、その凝固糸を水洗した後、90℃の温水中で3倍の浴中延伸倍率で延伸し、さらにシリコーン油剤を付与し、160℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥を行い、4倍の水蒸気延伸倍率条件で加圧水蒸気延伸を行い、単繊維繊度0.8dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例2]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材厚みCが3200μm、濾材目付Dが6400g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[比較例1]
フィルター濾材を、濾過精度Bが10μm、濾材厚みCが1600μm、濾材目付Dが3200g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例3]
濾過条件において、濾過速度Aを6cm/時間に変更し、紡糸口金の孔数を3000に変更した他は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[比較例2]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材厚みCが3200μm、濾材目付Dが6400g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例3と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例4]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材厚みCが6400μm、濾材目付Dが12800g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例3と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[比較例3]
濾過条件において、濾過速度Aを12cm/時間に変更した他は、実施例3と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[比較例4]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材厚みCが6400μm、濾材目付Dが12800g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、比較例3と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例5]
アクリロニトリル100質量部、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.01質量部、およびジメチルスルホキシド200質量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を窒素置換した後、攪拌しながら下記の重合条件Bの熱処理を行い、溶液重合法により重合して、ポリアクリロニトリル系重合体溶液の一次溶液を得た。
(重合条件B)
(1)30℃から61℃へ昇温(昇温速度120℃/時間)
(2)61℃の温度で3時間保持。
得られた一次溶液を水に注いで重合体を沈殿させ、それを80℃の温水で2時間洗浄後、70度の温度で4時間乾燥して、乾燥重合体を得た。得られた乾燥重合体のMzとMwは、それぞれ580万と340万であった。
得られた一次溶液の重合体濃度は、1.5質量%であった。ここでは、得られたポリアクリロニトリル系重合体の一次溶液中に残存する未反応アクリロニトリルを重合させるために、その一次重合溶液中に、ジメチルスルホキシド170質量部、イタコン酸1質量部、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部、連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1質量部を均一に溶解し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を窒素置換した後、攪拌しながら下記の重合条件Aの熱処理を行い、溶液重合法により重合して、ポリアクリロニトリル系重合体の二次溶液を得た。
(重合条件A)
(1)61℃の温度で4時間保持
(2)61℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(3)80℃の温度で6時間保持。
得られた二次溶液を用いて、それに含まれるポリアクリロニトリル系重合体の各種分子量を測定した。次いで、得られた二次溶液を用いて重合体濃度が20質量%となるように調整し、紡糸溶液を作製した。紡糸溶液を、上記のようにして得た紡糸溶液に変更した他は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例6]
フィルター濾材を、濾過精度Bが2μm、濾材厚みCが400μm、濾材目付Dが1700g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例5と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例7]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材厚みCが3200μm、濾材目付Dが6400g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例5と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例8]
濾過条件において、濾過速度Aを6cm/時間に変更し、紡糸口金の孔数を3000に変更した他は、実施例5と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[比較例5]
フィルター濾材を、濾過精度Bが10μm、濾材厚みCが1600μm、濾材目付Dが3200g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例8と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例9]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材厚みCが6400μm、濾材目付Dが12800g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例8と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
[実施例10]
フィルター濾材を、濾過精度Bが6μm、濾材厚みCが1800μm、濾材目付Dが6400g/mの金属焼結フィルターに変更し、濾過条件において、濾過速度Aを3cm/時間に変更し、紡糸口金の孔数を1500に変更した他は、実施例8と同様にして炭素繊維前駆体繊維束を得た。
上記した実施例および比較例におけるポリアクリロニトリル系重合体のMwおよびMz/Mw、紡糸条件ならびに用いたフィルターのスペック、紡糸結果を表1−1、表1−2に示す。
[実施例11〜27および比較例6〜9]
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた各炭素繊維前駆体繊維束を、それぞれ表2に示す耐炎化温度および耐炎化時間の条件を用いて、空気雰囲気のオーブン中で、延伸比1で延伸しながら耐炎化処理した。第1炉耐炎化後の繊維束および耐炎化繊維束の特性は表2に示す通りであった。得られた耐炎化繊維束を、温度300〜800℃の窒素雰囲気中において、延伸比1.15で延伸しながら予備炭素化処理を行い、予備炭素化繊維束を得た。得られた予備炭素化繊維束を、窒素雰囲気中において、最高温度1500℃、張力14mN/dTexで炭素化処理を行った。得られた炭素繊維束に、表面処理およびサイジング剤塗布処理を行って最終的な炭素繊維束としたものの物性および品位を表3に示す。比較例6〜9については、炭素繊維前駆体繊維束の品位が悪く、耐炎化〜予備炭素化〜炭素化の各工程において毛羽が散発したため、工程の監視が常に必要であった。
Figure 2017128838
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Claims (11)

  1. ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、紡糸に先立ち、濾過精度B(μm)と濾材厚みC(μm)を有するフィルター濾材を用い、濾過速度A(cm/時間)が下記式(1)および下記式(2)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
    ≦ −100×B+0.3×C+150 ・・・(1)
    0.1 ≦ A ≦ 15 ・・・(2)
  2. ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、紡糸に先立ち、濾過精度B(μm)と濾材目付D(g/m)を有するフィルター濾材を用い、濾過速度A(cm/時間)が下記式(3)〜(5)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
    D − 600/(α×β) ≧ 0 ・・・(3)
    α = 1−1/(1+exp(7−A)) ・・・(4)
    β = 1−1/(1+exp(−0.23×B)) ・・・(5)
  3. 前記式(1)〜(5)の全ての式を満足する条件で、紡糸溶液を濾過する、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
  4. 濾過精度B(μm)が下記式(6)を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
    B≧3 ・・・(6)
  5. 前記ポリアクリロニトリル系重合体は、Mwが30万〜50万であり、Mz/Mwが1.5〜6.0である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
  6. 前記ポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルに共重合成分を単量体全体の0.1〜2質量%共重合させてなるポリアクリロニトリル系共重合体である、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維束の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で炭素繊維前駆体繊維束を得た後に、該炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化処理および炭素化処理する、炭素繊維束の製造方法。
  8. 炭素繊維前駆体繊維束を、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1453cm−1ピーク強度の比が0.98〜1.10の範囲となるまで8〜25分間耐炎化する第1耐炎化工程を行い、さらに、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1453cm−1ピーク強度の比を0.70〜0.75の範囲、かつ、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1254cm−1ピーク強度の比を0.50〜0.65の範囲となるまで5〜14分間耐炎化する第2耐炎化工程を行って耐炎化繊維束を得て、その後、耐炎化繊維束を1000〜3000℃の不活性雰囲気中で炭素化する炭素化工程を行う、請求項7に記載の炭素繊維束の製造方法。
  9. 耐炎化のトータルの処理時間を13〜20分の範囲とする、請求項8に記載の炭素繊維束の製造方法。
  10. 耐炎化中の繊維の比重が1.22以上の範囲において220℃以上の空気中で熱処理される際に与えられる熱量の積算値が50〜150J・h/gの範囲内となるように耐炎化する、請求項8または9に記載の炭素繊維束の製造方法。
  11. 耐炎化繊維束の比重が1.28〜1.32の範囲となるように耐炎化する、請求項8〜10のいずれかに記載の炭素繊維束の製造方法。
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