JP2017139385A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

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前田  徹
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Kazumasa Shimauchi
一誠 嶋内
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Abstract

【課題】相対密度を大きくしても、磁石特性に優れる希土類磁石を製造できる希土類磁石製造方法を提供する。【解決手段】希土類元素と鉄族元素とを含む希土類−鉄系合金から構成される原料粉末を準備する準備工程と、前記原料粉末に、水素を含む雰囲気中、不均化温度以上の温度で水素化処理を施して、水素化粉末を作製する水素化工程と、前記水素化粉末の粉末粒子同士を塑性変形によって固めた造粒粉を作製する造粒工程と、前記造粒粉を加圧成形して成形体を作製する成形工程と、前記成形体に、不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、再結合温度以上の温度で脱水素処理を施して、再結合材を作製する脱水素工程とを備える希土類磁石の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、永久磁石などに利用される希土類磁石を製造する希土類磁石の製造方法に関する。
モータや発電機などに希土類磁石が利用されている。従来の希土類磁石は、磁石用粉末を焼結した焼結磁石や、磁石用粉末をバインダ樹脂で固化したボンド磁石が主流である。代表的には、NdFe14Bを主相とするNd−Fe−B系合金を用いたネオジム磁石がある。その他、ボンド磁石の磁石用粉末として、SmFe17を主相とするSm−Fe−N系合金が検討されている。
焼結磁石やボンド磁石以外の希土類磁石として、特許文献1に記載される圧粉磁石がある。圧粉磁石は、Nd−Fe−B系合金やSm−Fe系合金などからなる原料粉末に水素化(HD:Hydrogenation−Disproportionation)処理を施してFeを含む成分を分離し、得られた水素化粉末を金型で成形し、この成形体に脱水素(DR:Desorption−Recombination)処理を施して再結合する工程を経て製造される。Sm−Fe−N系磁石では、更に脱水素処理後に窒化する工程を経る。
上述の水素化粉末は、軟質なFeを含む成分を含むため、塑性変形性に優れる。このような水素化粉末を用いれば、相対密度が大きい成形体を形成でき、最終的に緻密な圧粉磁石が得られる。
特開2011−241453号公報
保磁力などの磁石特性により優れる希土類磁石が望まれる。
理論的には、磁石成分の割合が大きいほど磁石特性に優れる。上述のように水素化粉末を用いれば、相対密度が大きい成形体を形成でき(特許文献1の実施形態1,2)、磁石成分の割合が大きい圧粉磁石が得られる。しかし、相対密度が大きい成形体、特に80%以上、更に90%以上である成形体に脱水素処理や窒化処理を施しても、相対密度がより小さい成形体を用いた低密度な圧粉磁石に比較して、保磁力などの磁石特性を十分に向上できないとの知見を得た。また、成形圧力をより大きくすると(例、980MPa(10ton/cm)超)、相対密度を短時間で高められて生産性に優れるものの、保磁力などの磁石特性を向上し難く、上述の低密度な圧粉磁石よりも保磁力が低い場合もある(後述の試験例参照)。
そこで、本発明の目的の一つは、相対密度を大きくしても、磁石特性に優れる希土類磁石を製造できる希土類磁石の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る希土類磁石の製造方法は、
希土類元素と鉄族元素とを含む希土類−鉄系合金から構成される原料粉末を準備する準備工程と、
前記原料粉末に、水素を含む雰囲気中、不均化温度以上の温度で水素化処理を施して、水素化粉末を作製する水素化工程と、
前記水素化粉末の粉末粒子同士を塑性変形によって固めた造粒粉を作製する造粒工程と、
前記造粒粉を加圧成形して成形体を作製する成形工程と、
前記成形体に、不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、再結合温度以上の温度で脱水素処理を施して、再結合材を作製する脱水素工程とを備える。
上記の希土類磁石の製造方法は、相対密度を大きくしても、磁石特性に優れる希土類磁石を製造できる。
試験例1で作製した試料No.1−7の再結合材の断面を光学顕微鏡で観察した顕微鏡写真である。 試験例1で作製した試料No.1−107の再結合材の断面を光学顕微鏡で観察した顕微鏡写真である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、上述の水素化粉末を用いて相対密度が大きい成形体、特に相対密度が80%以上、更に90%以上である成形体に脱水素処理や窒化処理を施した場合に、保磁力などの磁石特性を十分に向上できない原因を検討した。その結果、相対密度が大きい成形体では、水素化粉末が塑性変形し易いために、成形体表面を形成する粉末粒子が金型と擦れ合って延びることで成形体表面の気孔を塞いだり、成形体内部を形成する粉末粒子同士が互いに押し潰すように変形することで成形体内部の気孔を塞いだりし易いとの知見を得た。成形圧力を大きくするほど、上述の気孔を塞ぐ問題が生じ易いとの知見を得た。上記気孔を塞ぐ原因の一つとして、水素化粉末が流動性に劣ることが考えられる。金型による水素化粉末の圧縮動作に伴って、金型内の水素化粉末が十分に流動すれば、金型内の水素化粉末に金型のパンチの押圧力が均一的に作用できる。しかし、流動し難い場合、金型のパンチの押圧力が金型内の水素化粉末に局所的に作用して不均一に押圧され易くなる結果、成形体内部の気孔を潰し易くなると考えられる(後述の図2参照)。また、不均一な押圧によって粉末粒子間の間隔が局所的に狭くなることも考えられる。上記間隔が狭い状態で脱水素処理が施されると、脱水素処理後の熱収縮によっても上記気孔を押し潰し易くなると考えられる。更に、水素化粉末が流動し難いと、脱型時に金型との摩擦力が大きくなり、成形体表面の気孔を潰し易くなると考えられる。
上述の成形体の気孔は、脱水素処理時には成形体から水素を排出する排出路に、窒化処理時には成形体に窒素を導入する導入路に利用される。上述のように成形体表面や成形体内部の気孔が塞がれると、上記水素や窒素といった気体の通路を十分に備えられず、脱水素処理時には水素の排出、窒化処理時には窒素の導入が行い難くなる。窒素原子の原子径が水素原子よりも大きいことからも、窒素の導入が行い難くなる。脱水素処理や窒化処理の加熱温度をより高くしたり、処理時間をより長くしたりすれば、脱水素・再結合や窒化を十分に行える。しかし、高温、長時間で脱水素処理を行うと、再結合合金の結晶が粒成長する。保磁力は結晶サイズに反比例するため、粗大な結晶組織を有することで、相対密度が大きく、磁石成分の割合が大きいにも関わらず、保磁力などの磁石特性が低くなる。
そこで、造粒粉を作製して流動性の改善を図ったところ、特定の造粒粉とすれば、高い相対密度に応じた高い保磁力を有する希土類磁石が得られた。
本発明は、上記の知見に基づくものである。
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る希土類磁石の製造方法は、
希土類元素と鉄族元素とを含む希土類−鉄系合金から構成される原料粉末を準備する準備工程と、
前記原料粉末に、水素を含む雰囲気中、不均化温度以上の温度で水素化処理を施して、水素化粉末を作製する水素化工程と、
前記水素化粉末の粉末粒子同士を塑性変形によって固めた造粒粉を作製する造粒工程と、
前記造粒粉を加圧成形して成形体を作製する成形工程と、
前記成形体に、不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、再結合温度以上の温度で脱水素処理を施して、再結合材を作製する脱水素工程とを備える。
上記の希土類磁石の製造方法は、以下の理由により、上記水素化粉末を用いて相対密度を大きくする場合でも、保磁力などの磁石特性に優れる希土類磁石を製造できる。
成形に供する粉末を、水素化粉末の粉末粒子同士の塑性変形で固められた造粒粉、いわば有機バインダなどのバインダを用いていないバインダレス造粒粉とする。造粒粉の各粒子(2次粒子)は水素化粉末の粉末粒子(1次粒子)よりも大きく、流動性に優れる。例えば成形圧力を980MPa超、更に1470MPa(15ton/mm)以上などの高圧にして、相対密度が大きい成形体、例えば相対密度が80%以上、更に90%以上の成形体を製造する場合でも良好に流動できる。
かつ、この成形体は、造粒粉の界面に沿って形成される気孔を有する。造粒粉の各粒子は水素化粉末の粉末粒子よりも大きいため、上記気孔の断面積も大きくなり易く、成形時や脱型時などでも完全に塞がれ難い。従って、この成形体は、その表面から内部に連続する開気孔を成形体全体に亘って十分に有することができる。これらの開気孔は、脱水素処理時の水素の排出路、窒化処理時の窒素の導入路に利用できる。これらの気体の通路を利用できるため、脱水素処理や窒化処理を処理対象の全体に亘って均一的にかつ十分に施せて、磁石成分(再結合合金や窒化された合金)の割合を高められ、保磁力などの磁気特性の向上を有効に行える。
このように上記水素や窒素などの気体の通路を十分に備える成形体であれば、脱水素処理時や窒化処理時に温度を過度に高めたり、処理時間を過度に長くしたりすることなく、脱水素・再結合や窒化を進行できる。そのため、高温、長時間の脱水素処理に起因する再結合合金の結晶の粗大化を抑制し、微細な結晶組織を有する再結合材を得られる。
上記の希土類磁石の製造方法では、上記再結合材を素材とすることで、磁石成分の割合に応じた保磁力などを有することができるからである。
また、バインダレス造粒粉とすることで、バインダの含有による磁石成分の割合の低下、バインダの残滓に起因する磁石特性の低下を招くことが無いからである。
(2)上記の希土類磁石の製造方法の一例として、
前記造粒工程は、
前記水素化粉末を用いて粉末圧延を行って圧延材を作製する圧延工程と、
前記圧延材を粉砕して、所定の大きさの前記造粒粉を得る分級工程とを備える形態が挙げられる。
上記形態は、所望の大きさのバインダレス造粒粉を容易に量産できる。上記形態では、代表的には薄い板状片からなる造粒粉を形成できる。
(3)上記粉末圧延を行う希土類磁石の製造方法の一例として、前記造粒粉のアスペクト比を3以下とする形態が挙げられる。
アスペクト比は、板状である造粒粉の各粒子における厚さ(圧延材の厚さに実質的に等しい)に対する最大長さの比、最大長さ/厚さとする。測定方法は後述する。
上記形態は、以下の理由により、保磁力などの磁石特性により優れる希土類磁石を製造できる。上記形態で用いる造粒粉は、最大長さが比較的小さい板状片といえる。このような造粒粉で形成される成形体は、造粒粉の界面が十分に多く、この界面に沿って形成される上述の気体の通路を十分に有することができる。また、造粒粉の各粒子は、水素化粉末の粉末粒子の界面に沿って形成される気孔を有し、この気孔も上述の気体の通路に利用できる。造粒粉の各粒子に備える気体の通路の最短距離を、造粒粉の各粒子の最大長さ程度にすることができる。このように上記気体の通路を十分に有するため、相対密度を大きくする場合でも、高温、長時間の条件とはせずに脱水素処理などを行えるからである。
(4)上記の希土類磁石の製造方法の一例として、前記成形体の相対密度を90%以上とする形態が挙げられる。
上記成形体の相対密度は、成形体の真密度に対する成形体の実際の密度とする。具体的には(成形体の密度/成形体の真密度)×100(%)とする。
成形体の密度は、例えば、含油状態でアルキメデス法によって求めたり、単純な形状であれば寸法及び質量を測定して計算によって求めたりすることができる。
成形体の真密度は、例えば、成形体を形成する水素化合金の構成相の構成比率及び構成相の組成、結晶構造を分析することで求めたり、水素化合金を粉末状態でピクノメータ法などによって実測することで求めたりすることができる。
本発明に係る希土類磁石の製造方法において造粒は、バインダレスで実施するため、成形体における水素化合金以外の領域は実質的に空隙であり、成形体の相対密度は水素化合金の体積比率と相関する値である。
上記形態は、相対密度が十分に大きく、磁石成分の割合を大きくできるため、保磁力などの磁石特性により優れる希土類磁石を製造できる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[希土類磁石の製造方法]
実施形態に係る希土類磁石の製造方法は、水素化粉末を成形した後に脱水素処理を行って再結合材を製造する工程を経て、圧粉磁石を製造する。実施形態の希土類磁石の製造方法は、成形に供する粉末を水素化粉末のままとせず、水素化粉末を用いて作製した特定の造粒粉とする点を特徴の一つとする。特定の造粒粉で成形体を形成すると、相対密度が大きく、保磁力や残留磁化などの磁気特性にも優れる希土類磁石を製造できる。
実施形態の希土類磁石の製造方法の概略を述べると、原料粉末を準備する準備工程と、原料粉末に水素化処理を施す水素化工程と、水素化粉末を用いて上記特定の造粒粉を作製する造粒工程と、造粒粉を成形する成形工程と、成形体に脱水素処理を施す脱水素工程とを備える。以下、工程ごとに詳細に説明する。
(準備工程)
準備工程では、希土類元素と鉄族元素とを含む希土類−鉄系合金から構成される原料粉末を準備する。
・希土類−鉄系合金
希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド及びアクチノイドから選択される1種以上の元素が挙げられる。希土類元素として、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、及びYから選択される少なくとも1種の元素を含むと、磁石特性に優れる希土類磁石が得られて好ましい。Nd又はSmを含むと、磁石特性により優れる希土類磁石が得られる。
希土類元素の含有量は、10質量%以上40質量%未満が挙げられる。Ndを含む組成では、Ndの含有量は25質量%以上(更に28質量%以上)35質量%以下が挙げられる。Smを含む組成では、Smの含有量は24質量%以上26.5質量%以下が挙げられる。Nd又はSmの含有量が上記の範囲内であれば、化学量論組成がNdFe14B又はSmFe17などの希土類−鉄系合金とすることができる。
鉄族元素は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選択される1種以上の元素が挙げられる。具体的には、Feを希土類−鉄系合金の主体(50質量%超)とする形態、FeとCoとの双方を含む形態などが挙げられる。FeとCoとを含む形態では、保磁力の更なる向上が望める。
Ndを含む組成では、上述の希土類元素及び鉄族元素以外に、ホウ素(B)、炭素(C)、及び窒素(N)から選択される少なくとも1種の元素を含むことが挙げられる。BやC、Nの含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下、更に0.5質量%以上1.5質量%以下が挙げられる。
希土類−鉄系合金は、更に、遷移金属元素、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、及び珪素(Si)から選択される1種以上の元素を含むことができる。遷移金属元素は、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)などが挙げられる。これらの添加元素の含有量(複数の場合には合計含有量)は、0.1質量%以上20質量%以下、更に0.1質量%以上5質量%以下が挙げられる。これらの元素を含有すれば、保磁力の向上(例、Gaなど)などの効果が望める。これらの添加元素は、例えばFeの一部に置換されて存在する。
その他、希土類−鉄系合金は、不可避不純物の含有を許容する。
希土類−鉄系合金の具体的な組成として、例えば以下が挙げられる。
〔Ndを含む組成〕
Nd−Fe−B系化合物(例、NdFe14B)を主相とするNd−Fe−B系合金、Nd−Fe−C系化合物(例、NdFe14C)を主相とするNd−Fe−C系合金、Nd−Fe−Co−B系化合物(例、Nd(Fe13Co)B)を主相とするNd−Fe−Co−B系合金、Nd−Fe−Co−C化合物(例、Nd(Fe13Co)C)を主相とするNd−Fe−Co−C系合金など
〔Smを含む組成〕
Sm−Fe系化合物(例、SmFe17,SmTiFe11)を主相とするSm−Fe系合金など
・原料粉末
上記希土類−鉄系合金から構成される原料粉末の大きさは適宜選択できる。例えば、原料粉末の粉末粒子の最大径を10μm以上0.5mm以下とすることができる。最大径がこの範囲であれば、水素化処理を施したり、造粒粉を形成したりし易い。最大径が上記範囲で小さいほど、水素化処理を短時間でより確実に行い易いため、最大径を0.4mm以下、更に0.3mm以下、0.15mm(150μm)以下とすることができる。最大径が上記範囲で大きいほど取り扱い易く作業性に優れるため、最大径を30μm以上、更に40μm以上、50μm以上とすることができる。
原料粉末の最大径は、粉末の製造条件を調整したり、別途粉砕したりするなどして調整することができる。粉砕は、ArやNなどの不活性ガス雰囲気で行うと、希土類−鉄系合金の酸化を防止できる。
原料粉末の最大径とは、原料粉末の粉末粒子を任意の方向から平面視したときに最も長い部分の長さとする。
原料粉末の形状は、特に問わない。球状、棒状、薄片状などの種々の形状とすることができる。
原料粉末の製造方法は、組成などに応じて選択することができる。具体的な方法として、急冷凝固法、還元拡散法、溶解鋳造法、ガスアトマイズ法などが挙げられる。急冷凝固法は、ストリップキャスト法、メルトスパン法などが挙げられる。
(水素化工程)
水素化工程では、上述の原料粉末に、水素を含む雰囲気中、不均化温度以上の温度で水素化処理を施して水素化粉末を作製する。
水素化粉末は、希土類−鉄系合金が希土類元素の水素化合物の相と、鉄を含有する鉄含有物の相とに相分解した組織を有する水素化合金によって構成される。希土類元素の水素化合物は、NdH、SmHなどが挙げられる。鉄含有物は、純鉄(Fe)が挙げられる。原料粉末が上述のNdを含む組成などである場合には、代表的には、純鉄と、FeBやFeCなどの鉄化合物とを含む。水素化合金は、相分解前の希土類−鉄系合金よりも柔らかく、かつ希土類元素の水素化合物の相よりも柔らかい純鉄の相が存在するため、塑性変形性に優れる。このような水素化粉末を造粒工程や成形工程で加圧すると、粉末粒子同士を塑性変形によって結合できる。
水素化合金は、10体積%以上40体積%未満の希土類元素の水素化合物の相と、残部が鉄を含有する鉄含有物の相とからなる組織を有すると、鉄含有物の相が主成分(60体積%以上90体積%以下)であるため、塑性変形性、成形性に優れて好ましい。
水素化処理の条件は、例えば、以下が挙げられる。
(雰囲気)Hガス雰囲気、HガスとArやNなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気
(温度)水素化処理に供する希土類−鉄系合金の水素不均化温度以上、上記希土類−鉄系合金が溶融固着しない温度以下
組成にもよるが、例えば600℃以上1100℃以下
(保持時間)30分以上300分以下
水素化粉末の形状、大きさは、原料粉末の形状、大きさを実質的に維持する。従って、水素化粉末が所望の形状、大きさなどとなるように原料粉末の形状、大きさなどを調整するとよい。
水素化粉末を製造するまでの工程は、公知の技術を適宜参照できる。
(造粒工程)
造粒工程では、上述の塑性変形性に優れる水素化粉末を用いて、水素化粉末の粉末粒子同士を塑性変形によって固めた造粒粉を作製する。
即ち、バインダを用いないバインダレス造粒粉を作製する。この造粒粉によって成形体を形成することで、バインダ含有に起因する成形体の相対密度の低下が実質的に生じず、相対密度が十分に大きい成形体を製造できる。例えば、相対密度が80%以上、更に90%以上である成形体を製造できる。また、バインダを除去する工程も不要である。
・粉末圧延法
上記のバインダレス造粒粉を製造するには、水素化粉末を集めて塑性加工を施すことが挙げられる。特に、粉末圧延を好適に利用できる。粉末圧延を利用すれば、水素化合金から構成される帯材を連続して容易に製造でき、長尺な帯材も製造できる。得られた(長い)帯材を適宜粉砕した後、分級すれば、水素化粉末よりも大きい粉末を容易に製造でき、この粉末を造粒粉とすることができる。以上の点から、粉末圧延は、バインダレス造粒粉を容易に量産できる。そこで、造粒工程は、水素化粉末を用いて粉末圧延を行って圧延材を作製する圧延工程と、この圧延材を粉砕して、所定の大きさの造粒粉を得る分級工程とを備えることができる。
・・圧延工程
粉末圧延とは、一対の圧延ロールの軸が平行するように配置され、圧延ロール間の間隔を狭める方向に所定の圧力が印加された状態で、圧延ロール間に粉末を供給することで、粉末粒子同士が塑性変形によって結合された帯材や帯片(長さが比較的短いもの)を製造可能な塑性加工法である。粉末圧延には、市販の装置を利用できる。粉末圧延の雰囲気は適宜選択できるが、不活性雰囲気とすると、水素化粉末や圧延材の酸化を防止できて好ましい。
粉末圧延で作製する圧延材の相対密度(圧延材の密度/圧延材の真密度)をある程度低くすることが好ましい。具体的には、相対密度を35%以上75%以下とすることが挙げられる。相対密度を35%以上とすれば、粉末粒子同士が十分に結合できて圧延材を製造可能であり、かつ粉砕時に造粒状態を維持できる程度の強度を有する圧延材が得られる。この圧延材を粉砕、分級することで、所望の大きさの造粒粉が得られる。相対密度を75%以下とすれば、粉末粒子が過度に押し潰されて加工硬化による硬さの増大を低減でき、成形性に優れる造粒粉を得易い。強度、成形性などを考慮すると、相対密度を40%以上70%以下、更に45%以上65%以下とすることができる。相対密度が上記範囲を満たすように圧延条件(圧延時の印加圧力など)を調整するとよい。この圧延材は、代表的には、圧延材の厚さ方向に複数の水素化粉末の粉末粒子が積層され、かつ圧延材の厚さ方向に交差する方向(例、直交方向である圧延材の長手方向)に各粉末粒子が塑性変形して延びた構造を有する。圧延材の相対密度の測定は、上述の成形体の相対密度の測定方法と同様にすることができる。
圧延材の厚さは、水素化粉末の大きさにもよるが、例えば、100μm以上2000μm以下程度が挙げられる。上記厚さを100μm以上程度とすれば、水素化粉末よりも十分に大きい造粒粉を製造し易い。また、圧延材の厚さが薄いほど、粉末粒子が押し潰されて加工硬化し易くなるが、上記厚さが100μm以上程度であれば、粉末粒子の塑性変形量が過度に多くならず、水素化粉末の柔らかさを維持でき、成形性に優れる造粒粉を得易い。上記厚さを更に200μm以上、300μm以上とすることができる。上記厚さが2000μm以下程度であれば、圧延ロール間に粉末を噛み込み易く、圧延材の製造性に優れる。上記厚さを1000μm以下、800μm、600μm以下とすることができる。
・・分級工程
上述の粉末圧延では、ある程度長い圧延材を製造できる。長いままでは成形工程で成形し難いため、成形し易いように粉砕して、所定の大きさに分級する。粉砕には、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、ブラウンミル、ピンミル、ディスクミル、ジョークラッシャーなどの公知の粉砕装置を用いることができる。
上記圧延材を粉砕すると、代表的には、圧延材の厚さに実質的に等しい厚さを有する板状片が得られる。この板状片のうち、少なくとも水素化粉末以下の小さいものを除去し、水素化粉末よりも大きいものを抽出して造粒粉とすると、流動性に優れる造粒粉を成形に供することができる。また、造粒粉がある程度大きいと、造粒粉の界面に沿って形成される上述の気体の通路が成形時や脱型時などに押し潰され難く、上記気体の通路を維持し易い。このことから、上記板状片のうち、例えばその厚さの1倍以上程度の最大長さを有するものを抽出することが好ましい。一方、造粒粉が大き過ぎると、造粒粉の各粒子に備える気体の通路の最短距離が長くなり、高温、長時間の条件で脱水素処理や窒化処理を行う必要があり、再結合合金の結晶粗大化を招き、ひいては磁石特性が低下し得る。このことから、上記板状片のうち、例えばその厚さの4倍未満程度の最大長さを有するものを抽出することが好ましい。
より具体的には、造粒粉の各粒子の厚さに対する造粒粉の各粒子の最大長さの比であるアスペクト比を1以上3以下とすることが好ましい。この範囲でアスペクト比が大きいほど、上述のように造粒粉の界面に沿って形成される気体の通路を確保し易く、アスペクト比を1.2以上、更に1.5以上とすることができる。この範囲でアスペクト比が小さいほど、上述のように造粒粉の各粒子に備える気体の通路を短くし易く、アスペクト比を2.8以下、更に2.5以下とすることができる。アスペクト比が上記範囲を満たす板状片を抽出するとよい。この抽出には、公知の分級機などを利用できる。
抽出した板状片は、代表的には、上述の圧延材の構造を実質的に維持しており、板状片の厚さ方向に複数の水素化粉末の粉末粒子が積層され、かつ板状片の厚さ方向に交差する方向(例、直交方向)に各粉末粒子が塑性変形して延びた状態である。
・その他の方法
別の方法として、水素化粉末を用いて、相対密度が上述のようにある程度低い疎な予備成形体を作製する予備成形工程と、この予備成形体を粉砕して、所定の大きさの造粒粉を得る分級工程とを備えることができる。予備成形体の成形には、一般的な一軸のプレス成形や、静水圧プレスなどを利用できる。分級工程では、上述の粉末圧延法を利用する場合と同様に板状片となるように予備成形体を粉砕し、この板状片の厚さに対する板状片の最大長さの比が1以上3以下を満たす板状片を抽出することが挙げられる。
(成形工程)
成形工程では、上述の造粒粉を加圧成形して、所定の形状、大きさの成形体を作製する。
成形工程で作製する成形体の相対密度は、脱水素処理後の再結合材、窒化処理後の窒化材に実質的に維持される。そのため、この成形体の相対密度が大きいほど、磁石成分の割合を大きくすることができ、保磁力が高いなどといった磁石特性に優れる希土類磁石を製造できる。磁石特性の向上を考慮すると、成形体の相対密度は、80%以上、更に82%以上、84%以上、特に90%以上とすることが好ましい。造粒粉が流動性に優れることから、成形体の相対密度を91%以上、更に92%以上とすることができる。一方、成形体は、脱水素処理や窒化処理を良好に施せるように、上述の気体の通路に利用する気孔をある程度有する必要がある。そのため、成形体の相対密度は、97%以下、更に95%以下とすることが好ましい。
成形圧力を大きくするほど、相対密度が大きい成形体を短時間で成形でき、製造性にも優れる。成形に供する造粒粉は、上述のように流動性に優れるため、成形圧力を大きくしても、造粒粉の界面に沿って形成される気孔を塞ぎ難く、上述の気体の通路を十分に備える成形体を形成できる。例えば、成形圧力は、980MPa(10ton/cm)超、更に1176MPa(12ton/cm)以上、1470MPa(15ton/cm)以上とすることができる。
成形は、酸素濃度が5体積%以下、更に1体積%以下の低酸素雰囲気で行うと、造粒粉の酸化を抑制できる。低酸素雰囲気は、Arなどの不活性ガス雰囲気、減圧雰囲気(例、10Pa以下の真空雰囲気)などとすることができる。
成形には、所望の形状の金型を利用するとよい。金型は、代表的には、貫通孔を有するダイと、ダイの内周面と共に成形空間を形成し、上記貫通孔に挿入して粉末(ここでは造粒粉)を加圧圧縮する一対の上下パンチとを備えるものが挙げられる。金型の内面に潤滑剤を塗布しておくと、造粒粉や成形体と金型との摩擦を低減でき、金型との摺動に伴う気孔の閉塞を低減できる。
造粒粉として、上述の粉末圧延を用いて作製したものを用いる場合、成形体の少なくとも一部に造粒粉の構造に類似する部分を含み得る。具体的には、複数の水素化粉末の粉末粒子が積層され、かつその積層方向に交差する方向(例、直交方向)に各粉末粒子が塑性変形して延びた状態の構造を有する。
(脱水素工程)
脱水素工程では、上述の特定の造粒粉を用いて作製した成形体に、不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、再結合温度以上の温度で脱水素処理を施して、再結合材を作製する。
再結合材は、上述の水素化処理によって希土類元素の水素化合物の相と鉄含有物の相とに相分解された水素化合金が脱水素処理によって再結合されて、原料粉末と同じ希土類−鉄系化合物を主相とする希土類−鉄系合金で形成される。
脱水素処理の条件は、例えば、以下が挙げられる。
(雰囲気)非水素雰囲気
具体的には、ArやNといった不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気(例、標準の大気圧よりも圧力が低い真空雰囲気)
(温度)上記水素化合金の再結合温度以上
組成にもよるが、例えば600℃以上1000℃以下
(保持時間)10分以上600分以下
減圧雰囲気は、特に真空度が100Pa以下、最終真空度が10Pa以下、更に1Pa以下の雰囲気とすると、希土類元素の水素化合物が残存し難い。また、上記の温度範囲とすると、再結合合金の結晶の成長を抑制して、微細な結晶組織とすることができる。
(窒化工程)
再結合材の組成に応じて、再結合材に、窒素含有雰囲気中、再結合材の窒化温度以上の温度で窒化処理を施すことができる。例えば、再結合材がSm−Fe系合金で構成される場合、上記窒化処理によって、Sm−Fe系合金をSm−Fe−N系合金にすることができる。この場合の希土類磁石の製造方法は、再結合材に上記窒化処理を施して、窒化材を作製する窒化工程を備える。
窒化処理の条件は、例えば、以下が挙げられる。
(雰囲気)窒素含有雰囲気とは、窒素元素を含む雰囲気であって、窒素(N)及びアンモニア(NH)の少なくとも一方を含む雰囲気とする。
具体的には、NHガス雰囲気、NHガスとHガスとの混合ガス雰囲気、Nガス雰囲気、NガスとHガスとの混合ガス雰囲気
(温度)200℃以上550℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下
(保持時間)10分以上1000分以下、好ましくは30分以上800分以下
(効果)
実施形態の希土類磁石の製造方法では、水素化粉末によって特定の造粒粉を作製し、この造粒粉を成形するため、成形体の相対密度を大きくしても、特に90%以上としても、脱水素処理時や窒化処理時に気体の通路となる開気孔を十分に有する成形体を製造できる。このような成形体であれば、脱水素処理や窒化処理を高温、長時間の条件とすることなく行えて、再結合合金の結晶を微細に維持できる。従って、実施形態の希土類磁石の製造方法は、相対密度が大きく、保磁力などの磁石特性に優れる希土類磁石を製造できる。この効果を後述の試験例で具体的に説明する。
[希土類磁石]
上述の再結合材や上述の窒化材を着磁することで、希土類磁石が得られる。この希土類磁石は、主として希土類−鉄系合金によって構成される。希土類磁石を形成する希土類−鉄系合金の具体的な組成は、Ndを含む組成では上述した原料の希土類−鉄系合金の組成と同様であり、Smを含む組成ではSm−Fe−N系合金(主相の例、SmFe17)、Sm−Ti−Fe−N系合金(主相の例、SmTiFe11)、Sm−Mn−Fe−N系合金などが挙げられる。上述の再結合材や上述の窒化材が、上述の相対密度が大きい成形体、特に相対密度が90%以上の成形体を用いて製造されることで、磁石成分の割合に応じた高い保磁力や高い残留磁化などを有して、磁石特性に優れる希土類磁石となる。
[試験例1]
希土類磁石として、種々の製造条件で圧粉磁石を作製し、磁石特性を調べた。
≪試料の作製≫
この試験では、Nd−Fe−Co−B系合金から構成される圧粉磁石(試料No.1−1〜No.1−7,No.1−101〜No.1−107)と、Sm−Fe−N系合金から構成される圧粉磁石(試料No.1−11〜No.1−14,No.1−111〜No.1−114)とを作製する。
着磁前の磁石用素材の製造過程は以下のとおりである。
造粒工程を備える試料において造粒工程では、粉末圧延を行って圧延材を作製し、この圧延材を粉砕して板状片とし、分級して所定の大きさのものを抽出することを行う。
〔Nd系〕
(試料No.1−1〜No.1−7、粉末圧延/分級有り)
準備工程→水素化工程→造粒工程→成形工程→脱水素工程
(試料No.1−101〜No.1−107、粉末圧延/分級なし)
準備工程→水素化工程→成形工程→脱水素工程
〔Sm系〕
(試料No.1−11〜No.1−14、粉末圧延/分級有り)
準備工程→水素化工程→造粒工程→成形工程→脱水素工程→窒化工程
(試料No.1−111〜No.1−114、粉末圧延/分級なし)
準備工程→水素化工程→成形工程→脱水素工程→窒化工程
〔Nd系〕
ストリップキャスト法によって、30.5質量%Nd−5.0質量%Co−1.0質量%B−残部がFe及び不可避不純物からなり、厚さ300μmの薄帯を作製し、この薄帯を粗粉砕する。この薄帯は、Nd(Fe13Co)Bを主相とするNd−Fe−Co−B系合金から構成される。粗粉砕は、不活性雰囲気下で市販の粉砕機を用いて行う。ここでは、粉砕後の薄片を適宜な篩目によって分級する。そして、薄片のうち、その最大径が106μm以上355μm以下を満たすものを抽出して、原料粉末とする。
(水素化工程)
原料粉末に水素化処理を施して、水素化粉末を作製する。水素化処理の条件は、水素雰囲気、850℃×150分とする。
(造粒工程)
造粒工程を備える試料No.1−1〜No.1−7については、市販の粉末圧延機を用いて、相対密度が40%以上55%以下を満たし、厚さ350μmの圧延材を作製する。ここでは、印加圧力を5ton、圧延速度を0.5m/minとすることで、上記の相対密度を満たす圧延材を作製する。
得られた圧延材は、ある程度長さがある連続した帯材である(例、長さ50cm弱)。市販の粉砕機を用いて上記圧延材を粉砕した後、以下の条件で分級する。
〈分級条件α〉圧延材の厚さの1倍程度の篩目(355μm)以上、圧延材の厚さの2倍程度の篩目(710μm)以下
この分級条件によって抽出した、厚さ350μm、最大長さが355μm超710μm未満の板状片を造粒粉とする。
〈分級条件β〉圧延材の厚さの1倍程度の篩目(355μm)以上、圧延材の厚さの3倍程度の篩目(1180μm)以下
この分級条件によって抽出した、厚さ350μm、最大長さ355μm超1180μm未満の板状片を造粒粉とする。
〈分級条件γ〉圧延材の厚さの1倍程度の篩目(355μm)以上、圧延材の厚さの5倍程度の篩目(1700μm)以下
この分級条件によって抽出した、厚さ350μm、最大長さ355μm超1700μm未満の板状片を造粒粉とする。
作製した造粒粉のアスペクト比を表1に示す。アスペクト比は、100個以上の造粒粉の各粒子について、アスペクト比=(最大長さ/厚さ)を求め、100個以上の平均値とする。
(成形工程)
上述の造粒粉、又は造粒していない水素化粉末を金型で加圧成形して成形体を作製する。ここでは、成形圧力を980MPa〜1961MPa(10ton/cm〜20ton/cm)から選択される大きさとし、直径10mm、高さ10mmの円柱状に形成する。表1に成形圧力(ton/cm)を示す。ここでは金型内に潤滑剤を塗布している。
作製した円柱状の成形体の相対密度を表1に示す。成形体の相対密度(%)は、(成形体の密度/成形体の真密度)×100とする。成形体の密度は、成形体のサイズ(直径、高さ、mm)と質量(g)とから算出する。算出した値を成形密度(g/cm)として表1に示す。成形体をX線回折して、水素化合金の構成相と原子構成比とから成形体の真密度を求める。NdH(真密度=5.96g/cm)、α−FeCo合金(同7.93g/cm)、FeB(同7.31g/cm)で構成され、原子構成比=NdH:FeCo:FeB=2:12:1とすると、成形体の真密度は、7.10g/cmと計算される。
(脱水素工程)
作製した円柱状の成形体に脱水素処理を施して、再結合材(磁石用素材の一例)を作製する。脱水素処理の条件は、真空雰囲気、850℃×250分とする。得られた再結合材の相対密度を、成形体と同様にして測定したところ、成形体の相対密度を実質的に維持している。
〔Sm系〕
還元拡散法によって、24.5質量%Sm−残部がFe及び不可避不純物からなり、平均粒径50μmの球状の粉末を作製する。平均粒径は、市販のレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて体積基準の粒度分布を求め、小径側からの累積が50%となる粒径値とする。この粉末は、SmFe17を主相とするSm−Fe系合金から構成される。
(水素化工程)
原料粉末に水素化処理を施して、水素化粉末を作製する。水素化処理の条件は、水素雰囲気、850℃×150分とする。
(造粒工程)
造粒工程を備える試料No.1−11〜No.1−14については、試料No.1−1などと同様に、市販の粉末圧延機を用いて、相対密度が40%以上55%以下を満たし、厚さ250μmの圧延材を作製する。ここでは、印加圧力を5ton、圧延速度を1m/minとすることで、上記の相対密度を満たす圧延材を作製する。
試料No.1−1などと同様に、市販の粉砕機を用いて上記圧延材を粉砕した後、以下の条件で分級する。
〈分級条件χ〉圧延材の厚さの1倍程度の篩目(250μm)以上、圧延材の厚さの2倍程度の篩目(500μm)以下
この分級条件によって抽出した、厚さ250μm、最大長さが250μm超500μm未満の板状片を造粒粉とする。
〈分級条件ψ〉圧延材の厚さの1倍程度の篩目(250μm)以上、圧延材の厚さの3倍程度の篩目(850μm)以下
この分級条件によって抽出した、厚さ250μm、最大長さ250μm超850μm未満の板状片を造粒粉とする。
〈分級条件ω〉圧延材の厚さの1倍程度の篩目(250μm)以上、圧延材の厚さの5倍程度の篩目(1400μm)以下
この分級条件によって抽出した、厚さ250μm、最大長さ250μm超1400μm未満の板状片を造粒粉とする。
作製した造粒粉のアスペクト比を表1に示す。アスペクト比は、試料No.1−1などと同様にして求める。
(成形工程)
試料No.1−1などと同様にして、上述の造粒粉、又は造粒していない水素化粉末を金型で加圧成形して、直径10mm、高さ10mmの円柱状の成形体を作製する。成形圧力(ton/cm)を表1に示す。
作製した円柱状の成形体の相対密度、成形密度を表1に示す。成形体の相対密度(%)、成形密度(g/cm)は、試料No.1−1などと同様にして求める。成形体の真密度は、7.32g/cmと計算される。
(脱水素工程)
作製した円柱状の成形体に脱水素処理を施して、再結合材を作製する。脱水素処理の条件は、真空雰囲気、750℃×250分とする。
(窒化工程)
作製した再結合材に窒化処理を施して、窒化材(磁石用素材の一例)を作製する。窒化処理の条件は、NHガスとHガスとの混合ガス雰囲気(アンモニアガスと水素ガスとの混合比は、体積比で1:1)、400℃×720分とする。得られた窒化材の相対密度を、成形体と同様にして測定したところ、成形体の相対密度を実質的に維持している。
≪磁気特性の評価≫
各試料の磁石用素材に磁界の強さ4777kA/m、磁束密度5Tのパルス磁場を印加して着磁する。着磁には、市販の着磁装置(日本電磁測器株式会社製、高圧コンデンサ式SR型)を用いる。着磁した各試料について、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いてB−H曲線を測定して、残留磁化及び保磁力を求める。残留磁化(T)及び保磁力(kA/m)を表1に示す。
表1に示すように、成形圧力を大きくするほど相対密度を大きくできることが分かる。この理由の一つとして、水素化粉末は塑性変形性に優れることが考えられる。しかし、試料No.1−101〜No.1−103,No.1−111,No.1−112をみれば、水素化粉末をそのまま成形して相対密度を高めると、相対密度が増加しているにも関わらず、保磁力や残留磁化が低下する傾向にあることが分かる。
これに対し、特定の造粒粉を用いた試料No.1−1〜No.1−6(以下、Nd系造粒試料と呼ぶことがある)、No.1−11〜No.1−14(以下、Sm系造粒試料と呼ぶことがある)はいずれも、成形圧力を大きくして相対密度が80%以上の成形体(最終的には希土類磁石)を作製しているものの、造粒を行っていない同一の組成の試料No.1−101〜No.1−103、No.1−111,No.1−112(以下、比較試料群と呼ぶことがある)に比較して、保磁力が高く、飽和磁化も高いことが分かる。
定量的には、Nd系造粒試料は、相対密度が80%以上という高密度である場合に、保磁力が1114kA/m(≒14kOe)以上、飽和磁化が0.65T以上を満たす。特に、相対密度が88%以上である試料は、飽和磁化が更に高く、0.70T以上であり、磁石特性により優れる。
Sm系造粒試料は、相対密度が80%以上という高密度である場合に、保磁力が796kA/m(≒10kOe)以上、飽和磁化が0.57T以上を満たす。特に、相対密度が90%以上である試料は、飽和磁化が更に高く0.60T以上であり、磁石特性により優れる。
この試験からは、粉末圧延を行って造粒粉を製造する場合、アスペクト比が特定の範囲を満たす造粒粉を用いることが好ましいといえる。詳しくは、Nd系造粒試料No.1−1〜No.1−6とNo.1−104〜No.1−106との比較、Sm系造粒試料No.1−11〜No.1−14とNo.1−113,No.1−114との比較を行うと、Nd系造粒試料ではアスペクト比が4.5未満、Sm系造粒試料ではアスペクト比が4.3未満、好ましくはいずれの試料も3以下であると、保磁力及び飽和磁化が高い希土類磁石を製造し易いことが分かる。
試料No.1−7,No.1−107はそれぞれ、成形圧力15ton/cmとした試料No.1−2,1−102に対して、脱水素処理の条件を825℃×6時間に変えた試料である。図1,図2は、脱水素処理を施して得られた円柱状の再結合材について、軸方向の中間位置で、軸方向に直交する平面で切断した横断面(断面形状が円形にみえる切断面)を光学顕微鏡で観察した観察像である。図1は、試料No.1−7の顕微鏡写真、図2は、試料No.1−107の顕微鏡写真である。図1,図2において、円形状の部分が再結合材であり、再結合材の内部に複数分散する黒い粒は気孔である。
図1に示すように、特定の造粒粉を用いた試料No.1−7は、横断面の全域に亘って、比較的大きな黒い粒が均一的に存在し、気孔が均一的に存在することが分かる。これに対し、特定の造粒粉を用いていない試料No.1−107は、横断面における表層側には比較的大きな黒い粒が存在するものの中央部には黒い粒が少なく、気孔が閉塞されていることが分かる。特定の造粒粉を用いずに、成形圧力を大きくして相対密度を高めると、表面側から中央部に向かうにつれて気孔が潰されるなどして少なくなることで、脱水素処理時に水素の排出が行い難かったと考えられる。
これらのことから、特定の造粒粉を用いたNd系造粒試料は、相対密度を大きくしても、成形体の全体に亘って均一的に気孔を有しており、この気孔を気体の通路に利用できることで脱水素処理を良好に行えて、高い相対密度に応じて、高い保磁力や高い飽和磁化を有することができた、と考えられる。また、特定の造粒粉を用いることで、成形工程での加圧圧縮時や脱型時、脱水素工程などの熱処理時などによって閉塞され難い程度の大きさの気孔を有する成形体を形成できる、といえる。Sm系造粒粉試料についても同様に考えられる。
以上のことから、相対密度が大きい圧粉磁石を製造する場合に、粉末圧延などによって水素化粉末の粉末粒子同士を塑性変形によって固めた造粒粉を用いることで、保磁力などの磁石特性に優れる希土類磁石が製造できることが示された。
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、試験例1の原料粉末の製造方法、組成、大きさ、水素化処理・脱水処理・窒化処理の条件、造粒粉の大きさ、成形条件(成形圧力など)、成形体の相対密度、造粒方法などを適宜変更できる。
本発明の希土類磁石の製造方法は、永久磁石などに利用される希土類磁石の製造に利用できる。製造した希土類磁石は、永久磁石、例えば、各種のモータ、特にハイブリッド自動車やハードディスクドライブなどに具備される高速モータに用いられる永久磁石に利用できる。

Claims (4)

  1. 希土類元素と鉄族元素とを含む希土類−鉄系合金から構成される原料粉末を準備する準備工程と、
    前記原料粉末に、水素を含む雰囲気中、不均化温度以上の温度で水素化処理を施して、水素化粉末を作製する水素化工程と、
    前記水素化粉末の粉末粒子同士を塑性変形によって固めた造粒粉を作製する造粒工程と、
    前記造粒粉を加圧成形して成形体を作製する成形工程と、
    前記成形体に、不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、再結合温度以上の温度で脱水素処理を施して、再結合材を作製する脱水素工程とを備える希土類磁石の製造方法。
  2. 前記造粒工程は、
    前記水素化粉末を用いて粉末圧延を行って圧延材を作製する圧延工程と、
    前記圧延材を粉砕して、所定の大きさの前記造粒粉を得る分級工程とを備える請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記造粒粉のアスペクト比を3以下とする請求項2に記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記成形体の相対密度を90%以上とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
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