以下、本発明の電力変換装置を車載DCDCコンバータとして具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置10は、入力側及び出力側の間を電気的に絶縁しつつ、入力側に接続される直流電源としての低圧電池100の電圧を昇圧し、電力変換回路20を介して出力側へと供給する絶縁型のものである。本実施形態において、低圧電池100は、2次電池である。
電力変換回路20は、トランスTrと、MOSFETである第1〜第6スイッチング素子Q1〜Q6とを備えている。トランスTrは、互いに磁気結合される第1コイルL1及び第2コイルL2を有し、第1コイルL1は、センタータップを有している。本実施形態において、第2コイルL2の巻数は、第1コイルL1の巻数のN/2倍である。すなわち、第2コイルL2の巻数が、第1コイルL1のいずれか一方の端からセンタータップまでの巻数のN倍となっている。なお以降、第1コイルL1のいずれか一方の端からセンタータップまでの巻数と、第2コイルL2の巻数との比を巻数比Nとする。
第1コイルL1の第1端は、第1スイッチング素子Q1のドレインに接続され、第1コイルL1の第2端は、第2スイッチング素子Q2のドレインに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q1のソースと第2スイッチング素子Q2のソースとが接続されている。
低圧電池100は、正極側入力端子100a、負極側入力端子100b及びチョークコイルL3を介して、電力変換回路20と接続されている。具体的には、チョークコイルL3の第1端には、正極側入力端子100aを介して低圧電池100の正極が接続され、チョークコイルL3の第2端には、第1コイルL1のセンタータップが接続されている。一方、第1スイッチング素子Q1のソースと第2スイッチング素子Q2のソースとの接続点には、負極側入力端子100bを介して低圧電池100の負極が接続されている。また、正極側入力端子100aには、第1コンデンサ101の第1端が接続され、第1コンデンサ101の第2端には、負極側入力端子100bが接続されている。すなわち、第1コンデンサ101には、低圧電池100が並列接続されている。
第2コイルL2の第1端には、第3スイッチング素子Q3のソース及び第4スイッチング素子Q4のドレインが接続されている。第2コイルL2の第2端には、第5スイッチング素子Q5のソース及び第6スイッチング素子Q6のドレインが接続されている。第3スイッチング素子Q3のドレイン及び第5スイッチング素子Q5のドレインには、正極側出力端子200aが接続されている。第4スイッチング素子Q4のソース及び第6スイッチング素子Q6のソースには、負極側出力端子200bが接続されている。第3〜第6スイッチング素子Q3〜Q6により、第2コイルL2から出力される交流電流を直流電流に変換して出力する整流回路が構成されている。正極側出力端子200aには、第2コンデンサ201の第1端が接続され、第2コンデンサ201の第2端には、負極側出力端子200bが接続されている。
車両には、電力変換装置10とともに、高圧電池300及びその周辺構成が備えられている。本実施形態において、高圧電池300は、2次電池であり、その端子電圧が低圧電池100の端子電圧よりも高いものである。
高圧電池300には、システムメインリレー302を介して第3コンデンサ301が並列接続されている。第3コンデンサ301の第1端には、正極側出力端子200aが接続され、第3コンデンサ301の第2端には、負極側出力端子200bが接続されている。なお本実施形態において、第3コンデンサ301の静電容量は、第2コンデンサ201の静電容量よりも大きく設定されている。
電力変換装置10は、低圧電池100(第1コンデンサ101)の電圧を入力電圧値Vinとして検出する入力電圧検出部102と、チョークコイルL3に流れる電流をリアクトル電流値Iinとして検出する入力電流検出部103とを備えている。本実施形態において、入力電圧検出部102は、負極側入力端子100bと第1コイルL1とを接続する電気経路のうち、第1コンデンサ101の第2端との接続点よりも第1コイルL1側に設けられている。
電力変換装置10は、電力変換回路20から出力される電流を出力電流値IHとして検出する出力電流検出部104と、第2コンデンサ201の電圧を出力電圧値VHとして検出する出力電圧検出部202とを備えている。本実施形態において、出力電流検出部104は、第4スイッチング素子Q4及び第6スイッチング素子Q6のそれぞれのソースの接続点と負極側出力端子200bとを接続する電気経路のうち、第2コンデンサ201の第2端との接続点よりも第4スイッチング素子Q4及び第6スイッチング素子Q6側に設けられている。
検出された入力電圧値Vin、出力電圧値VH、リアクトル電流値Iin及び出力電流値IHは、制御部30(「操作部」に相当)に入力される。制御部30は、入力された各検出値Vin,VH,Iin,IHに基づいて演算を行い、各スイッチング素子Q1〜Q6に対して、オンオフを指示する制御信号を出力する。特に制御部30は、第1,第2スイッチング素子Q1,Q2に対して制御信号としての第1,第2PWM信号を出力する。これにより、システムメインリレー302がオンされるのに先立ち、第2コンデンサ201を充電するプリチャージ制御を行う。プリチャージ制御は、第1,第2スイッチング素子Q1,Q2のオンオフ操作により、チョークコイルL3の磁気エネルギの蓄積、及びチョークコイルL3に蓄積された磁気エネルギの放出を交互に繰り返すことで低圧電池100から第2コンデンサ201へと電力を供給するものである。詳しくは、制御部30は、第2コンデンサ201への充電の進行度合いに応じて、第1〜第3モードのいずれかを選択してプリチャージ制御を行う。
続いて、図2を用いて、制御部30が実行するプリチャージ制御について説明する。
まず、第1モードのプリチャージ制御を行う第1モード制御部400について説明する。第1モード制御部において、コンパレータ401の反転入力端子には、第1モードにおけるリアクトル電流値Iinの指令値である第1指令電流値Iref1が入力される。コンパレータ401の非反転入力端子には、リアクトル電流値Iinが入力される。
コンパレータ401は、反転入力端子に入力された第1指令電流値Iref1と、非反転入力端子に入力されたリアクトル電流値Iinとの比較を行う。コンパレータ401の出力信号は、RSフリップフロップ402のR端子に入力される。RSフリップフロップ402のS端子には、クロック403からクロック信号が入力される。
RSフリップフロップ402の出力信号は、Duty制限部404により第1,第2時比率D1,D2の上限値及び下限値が設定された上で、モード選択部410に入力される。本実施形態において、第1時比率D1とは、第1スイッチング素子Q1の1制御周期Tsに対するオン操作期間Ton1の比率「Ton1/Ts」のことである。また、第2時比率D2とは、第2スイッチング素子Q2の1制御周期Tsに対するオン操作期間Ton2の比率「Ton2/Ts」のことである。
モード選択部410は、出力電圧値VH及び入力電圧値Vinに基づいて、第1〜第3モードのそれぞれで算出された第1,第2時比率D1,D2の中から、いずれかのモードの第1,第2時比率D1,D2を選択し、第1,第2スイッチング素子Q1,Q2に対して第1,第2PWM信号を出力する。なお本実施形態において、モード選択部410が出力部に相当する。
図3(a)に、第1モードでプリチャージ制御を行う場合のPWM信号を示す。図3では、スイッチング素子のオン操作を指示する論理Hの信号を「ON」にて示し、スイッチング素子のオフ操作を指示する論理Lの信号を「OFF」にて示している。
本実施形態の第1モードでは、第1時比率D1及び第2時比率D2として、RSフリップフロップ402の出力信号に基づいて算出された共通の時比率が設定されている。また、第1モードでは、第1PWM信号と第2PWM信号との位相差が「Ts/2」に設定されている。第1PWM信号及び第2PWM信号は、共に、長さT1のオン操作期間と、長さ「Ts−T1」のオフ操作期間とにより1制御周期Tsが構成され、オン操作期間の長さT1は「Ts/2」未満に設定されている。すなわち、「T1/Ts」により示される各時比率D1,D2は、0.5未満である。したがって、第1モードでは、長さがT1の期間βと、長さが「Ts/2−T1」の期間γが交互に繰り返されることとなる。
第1モードでは、期間βにおいて第2コンデンサ201への充電が行われるとともに、チョークコイルL3に流れる電流が増加する。一方、期間γでは、期間βにおいて増加した電流が回路中で消費される。なお、オン操作期間の長さT1は、期間γにおいてチョークコイルL3に流れる電流がゼロとなるように設定されている。
続いて、第2モードのプリチャージ制御を行う第2モード制御部420について説明する。図2に示す第2モード制御部420において、演算部421には、入力電圧値Vinが入力される。演算部421は、下式(1)により第2時比率D2を算出する。
上式(1)において、Iref2は、第2モードにおけるリアクトル電流値Iinの指令値である第2指令電流値を示し、Lは、チョークコイルL3の自己インダクタンスを示す。第2指令電流値Iref2は、第1指令電流値Iref1と同じ値に設定されてもよいし、異なる値に設定されてもよい。
演算部421の出力値は、Duty制限部422により第2時比率D2の上限値が設定された上で、モード選択部410に入力される。なお、Duty制限部422では、第2時比率D2が0.5未満の値となるような上限値(例えば0.45)が設定されている。一方、本実施形態において、第2モード制御部420からは、0.5(50%)に固定された第1時比率D1がモード選択部410へと出力される。
図3(b)に、第2モードでプリチャージ制御を行う場合のPWM信号を示す。第2モードにおいて、第1PWM信号は、長さT2h(=Ts/2)のオン操作期間と、長さ(Ts−T2h)のオフ操作期間とが交互に繰り返される。また、第2PWM信号は、長さT2l(<Ts/2)のオン操作期間と、長さ(Ts−T2l)のオフ操作期間とが交互に繰り返される。第1PWM信号の論理Hへの立ち上がりタイミングと、第2PWM信号の論理Hへの立ち上がりタイミングとは同期されている。
第2モードでは、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の双方がオンされる期間αと、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のうち第2スイッチング素子Q2のみがオフされる期間βと、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の双方がオフされる期間γとが、順に繰り返される。第2モードでは、期間αにおいて、チョークコイルL3に流れる電流が増加し、期間βにおいて、チョークコイルL3に流れる電流が増加若しくは減少する。そして、期間γにおいて、期間α及び期間βにおいて増加した電流、又は、期間βにおいてゼロとならなかった電流が回路中で消費される。なお、オン操作期間の長さT2h及びT2lは、期間γにおいてチョークコイルL3に流れる電流がゼロとなるように設定されている。
続いて、第3モードのプリチャージ制御を行う第3モード制御部430について説明する。図2に示す第3モード制御部430において、加算器431は、指令電圧値VH*から出力電圧値VHを減算することにより、電圧偏差を算出する。本実施形態において、プリチャージ制御中における指令電圧値VH*は、固定値(例えば230V)に設定されている。
PI制御器432は、算出された電圧偏差に基づく比例積分制御により、定電圧指令値Irefvを算出する。定電圧指令値Irefvは、定電圧制御を行うために設定される。算出された定電圧指令値Irefvは、選択部433に入力される。一方、選択部433には、定電流制御についての指令値である定電流指令値Irefcも入力される。本実施形態において、定電流指令値Irefcは、固定値に設定されている。なお本実施形態において、加算器431及びPI制御部432が定電圧設定部に相当する。
選択部433は、定電圧指令値Irefv及び定電流指令値Irefcのうち小さい方を第3指令電流値Iref3として出力する。加算器434は、第3指令電流値Iref3からリアクトル電流値Iinを減算することにより、電流偏差を算出する。なお、リアクトル電流値Iinに代えて、出力電流値IH、入力電圧値Vin及び出力電圧値VHに基づいて算出されたリアクトル電流値を加算器434に入力してもよい。これは、損失を無視すると、「Vin×Iin=VH×IH」の関係が成立することに基づく。
算出された電流偏差を入力として、平均電流モード制御により第1,第2時比率D1,D2が算出される。詳しくは、算出された電流偏差は、比例積分制御が行われるPI制御器435に入力される。PI制御器435の出力値には、乗算器436において「N/(2×VH)」が乗算される。乗算器436の出力値がフィードバック時比率Dfbrとなる。フィードバック時比率Dfbrは、リアクトル電流値Iinを第3指令電流値Iref3にフィードバック制御するためのフィードバック操作量となる。
加算器437は、フィードバック時比率Dfbrとフィードフォワード時比率Dffrとを加算することにより、第1,第2時比率D1,D2を算出する。フィードフォワード時比率Dffrは、第1FF算出部438又は第2FF算出部439によって算出される。第1FF算出部438は、下式(2)により、第1フィードフォワード時比率Dff1を算出して出力する。
第2FF算出部439は、第1フィードフォワード時比率Dff1よりも小さい第2フィードフォワード時比率Dff2を出力する。第2フィードフォワード時比率Dff2は、0.5以上の値に設定され、本実施形態では、0.55(55%)に設定されている。なお、第2フィードフォワード時比率Dff2を0.5以上の値に設定するのは、第3モード制御において、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のうち少なくとも一方をオン操作するためである。これにより、チョークコイルL3に流れる電流が行き場を失い、入力側においてアバランシェ損失が発生することを回避する。
加算器437から出力された第1,第2時比率D1,D2は、Duty制限部440に入力される。Duty制限部440には、上限値設定部441で求められた上限値D_maxも入力される。この上限値D_maxは、入力電圧値Vin及び出力電圧値VHで定まるものである。Duty制限部440では、算出された第1,第2時比率D1,D2が上限値D_maxよりも大きければ、第1,第2時比率D1,D2を上限値D_maxとして出力する。Duty制限部440の出力値は、モード選択部410に入力される。
図3(c)に、第3モードでプリチャージ制御を行う場合のPWM信号を示す。第3モードでは、第1PWM信号と第2PWM信号との位相差が「Ts/2」に設定されている。第1PWM信号と第2PWM信号とは、共に、長さT3のオン操作期間と、長さ「Ts−T3」のオフ操作期間とにより、1制御周期Tsが構成され、オン操作期間の長さT3は、半制御周期「Ts/2」より大きい。すなわち、「T3/Ts」により示される第1,第2時比率D1,D2は、0.5よりも大きい。したがって、第3モードでは、長さが「T3−Ts/2」である期間αと、長さが「Ts−T3」である期間βとが、交互に繰り返されることとなる。
第3モードでは、期間αにおいてチョークコイルに流れる電流が増加する。一方、期間βにおいて、チョークコイルに流れる電流が減少し、電流の減少に伴い、第2コンデンサ201への充電が行われる。
第3モードにおいて、オン操作期間の長さT3、すなわち上式(2)から定まる第1フィードフォワード時比率Dff1は、期間αにおけるチョークコイルL3に流れる電流の増加量と、期間βにおけるチョークコイルL3に流れる電流の減少量とが等しくなるとの条件を満たすように設定されている。
続いて、図4を用いて、モード選択部410により実行されるモード選択処理について説明する。
この一連の処理では、まずステップS10において、起動要求を取得したか否かを判定する。この起動要求の指令信号は、例えば、上位の制御装置であるECU等から送信される。
ステップS10において起動要求を取得していないと判定した場合には、一連の制御を行わず、待機状態を継続する。
一方、起動要求を取得したと判定した場合には、ステップS11に進み、出力電圧値VHを取得する。その後ステップS12において、取得した出力電圧値VHが第1所定値V1以下であるか否かを判定する。なお第1所定値V1は、入力電圧値Vinに基づいて可変設定される。
ステップS12において出力電圧値VHが第1所定値V1以下であると判定した場合には、ステップS13に進み、第1モードでの制御を行う。一方、ステップS12において否定判定した場合には、ステップS14に進み、出力電圧値VHが第2所定値V2(>V1)以下であるか否かを判定する。
ステップS14において出力電圧値VHが第2所定値V2以下であると判定した場合には、ステップS15に進み、第2モードで制御を行う。一方、ステップS14において出力電圧値VHが第2所定値V2よりも大きいと判定した場合には、ステップS16に進み、第3モードで制御を行う。
ステップS13,S15,S16の完了後、ステップS17に進み、制御の終了判定を行う。制御を終了すると判定した場合には、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。制御を終了すると判定しない場合には、ステップS18に進み、終了要求を取得したか否かを判定する。この終了要求の指令信号は、ECU等の上位の制御装置から送信される。終了要求を取得したと判定した場合には、プリチャージ制御を終了して起動要求がなされるまで待機する。一方、ステップS18において終了要求を取得しなければ、ステップS11に戻る。
続いて、制御部30が行う間欠制御について説明する。この制御は、第3モードが選択されている場合において、出力電圧値VHが指令電圧値VH*よりも高いとの条件、又は第3指令電流値Iref3が停止閾値I2よりも小さいとの条件のうちいずれかが成立している場合、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の双方をオフ操作してプリチャージ制御を一時的に停止させるものである。間欠制御は、プリチャージ制御中において、第2コンデンサ201の電圧が上昇しやすいことに鑑みて行われる。つまり、プリチャージ制御中においては、システムメインリレー302がオフ操作されているため、第2コンデンサ201から持ち出される電力が小さい。このため、第2コンデンサ201の充電電流が小さい場合であっても、出力電圧値VHが指令電圧値VH*を超えるおそれがある。このため、間欠制御が行われる。
ただし、第3モード制御中において間欠制御が行われると、電力変換装置10の信頼性が低下するおそれがある。つまり、第3モード制御は、平均電流モード制御に基づくものであり、平均電流モード制御は、電流連続モード(CCM)であることを仮定した制御である。このため、第3モード制御では、上述したように、電流連続モードであることを前提として、リアクトル電流値Iinを第3指令電流値Iref3にフィードフォワード制御するための第1フィードフォワード時比率Dff1が設定されている。したがって、常時「Dffr=Dff1」とされる構成では、チョークコイルL3に断続的に電流が流れたり、チョークコイルL3に電流が常時流れるもののその電流値が小さくなったりする場合、実際の第1フィードフォワード時比率Dff1が、フィードフォワード制御する上で適切な時比率よりも大きくなりやすい。その結果、フィードバック時比率Dfbrが、リアクトル電流値Iinと第3指令電流値Iref3との乖離を解消しようとする方向に変化する場合であっても、リアクトル電流値Iinが第3指令電流値Iref3よりも大きくなる状態が継続される。このため、リアクトル電流値Iinを第3指令電流値Iref3まで迅速に低下させることができなくなる。
そして、リアクトル電流値Iinが第3指令電流値Iref3よりも大きくなる状態において、間欠制御が行われると、チョークコイルL3に流れている電流が行き場を失い、電力変換装置10の入力側の回路に過電流が流れる。その結果、アバランシェ損失が発生し、第1,第2スイッチング素子Q1,Q2等の電力変換装置10の構成部品の信頼性が低下するおそれがある。またこの場合、チョークコイルL3や第1コイルL1における急激な鎖交磁束の変化により、磁気部品であるチョークコイルL3やトランスTrが振動し、異音が発生するおそれもある。ここで図5(a)に、常時「Dffr=Dff1」とされる構成において間欠制御が行われる場合の各波形の推移を示す。なお図5において、ILはチョークコイルL3に流れる電流の交流成分を示し、ICは第2コイルL2側に流れる電流を示す。図5(a)に示すように、第3モード制御中に間欠制御が行われることにより、リアクトル電流値Iinが過度に大きくなっている。
アバランシェ損失の発生を回避するために、例えば、フィードフォワード時比率Dffrを常時第1フィードフォワード時比率Dff1よりも小さい値に設定することも考えられる。ただしこの場合、第2モード制御から第3モード制御への移行直後におけるリアクトル電流値の立ち上がりが遅れるといった不都合が生じる。図5(b)には、第3モード制御への移行直後におけるリアクトル電流値Iinの立ち上がりが遅れることを示した。
こうした問題を解決すべく、本実施形態では、図6に示すフィードフォワード時比率の切替処理を行う。この処理は、制御部30によって例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS20において、現在の制御モードが第3モード制御であるか否かを判定する。
ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS21に進み、定電圧指令値Irefvが定電流指令値Irefcよりも小さいか否かを判定する。この処理は、定電流制御から定電圧制御に切り替えられる状況であるか否かを判定するための処理である。
ステップS21において肯定判定した場合には、ステップS22に進み、第3指令電流値Iref3が所定電流値I1よりも小さいとの条件、又は出力電圧値VHが指令電圧値VH*未満であるとの条件のいずれかが成立しているか否かを判定する。
ステップS22において否定判定した場合には、ステップS23に進み、加算器437に出力するフィードフォワード時比率Dffrを、第1FF算出部438により算出された第1フィードフォワード時比率Dff1とする。
一方、ステップS22において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、加算器437に出力するフィードフォワード時比率Dffrを、第2FF算出部439により算出された第2フィードフォワード時比率Dff2とする。ステップS22〜S24の処理によれば、第2モード制御から第3モード制御への移行直後の電流応答性の低下を回避しつつ、リアクトル電流値Iinが第3指令電流値Iref3よりも大きくなりやすい第3モード制御中においても、リアクトル電流値Iinを第3指令電流値Iref3まで迅速に低下させることができる。なお本実施形態において、ステップS22,S24の処理が低下部に相当する。
ステップS23,S24の処理の完了後、ステップS25に進む。ステップS25では、出力電圧値VHが指令電圧値VH*よりも高いとの条件、又は第3指令電流値Iref3が停止閾値I2よりも小さいとの条件のうちいずれかが成立しているか否かを判定する。この処理は、間欠制御を行う状況であるか否かを判定するための処理である。本実施形態において、停止閾値I2は、所定電流値I1よりも小さい値に設定されている。これにより、間欠制御が開始される前において、フィードフォワード時比率Dffを的確に低下させることができる。なお、出力電圧値VHに関する条件は、以下に説明する理由のために設定されている。
例えば第2コンデンサ201が電力変換回路20から外れてしまった場合等、電力変換回路20の出力側の負荷が急減することがある。この場合、電力変換回路20の出力電流の行き場がなくなることから、出力電圧値VHが急激に上昇する。この急激な上昇を、定電圧制御が第3指令電流値Iref3の値を絞ることにより抑制しようとするものの、定電圧制御の応答遅れにより、第3指令電流値Iref3は急減しない。したがって、第3指令電流値Iref3に関する条件のみでは、間欠制御に迅速に移行できないことがある。このため、出力電圧値VHを直接モニタして間欠制御を行う。これにより、出力電圧値VHの急激な上昇を回避する。
ステップS26において肯定判定した場合には、ステップS26に進み、間欠制御を行う。なお本実施形態において、間欠制御中は第3指令電流値Iref3を0に設定する。なお本実施形態において、ステップS25,S26の処理が供給停止部に相当する。
図7(a)を用いて、第3モード制御時における切替処理の効果について説明する。
図示されるように、時刻t1まで、第3指令電流値Iref3(=Irefc)にリアクトル電流値Iinを制御する定電流制御が行われる。そして時刻t1において、定電流制御から定電圧制御に切り替えられる。その後時刻t2において、第3指令電流値Iref3が所定電流値I1未満となる。これにより、加算器437に出力されるフィードフォワード時比率Dffrが、第1フィードフォワード時比率Dff1から第2フィードフォワード時比率Dff2に切り替えられる。その結果、その後間欠制御が開始される時刻t3までに、リアクトル電流値Iinを第3指令電流値Iref3まで低下させることができる。
ここで図7(b)に、第3モード制御中において、加算器437に出力されるフィードフォワード時比率Dffrが常時第1フィードフォワード時比率Dff1とされる例を示す。この場合、フィードフォワード時比率Dffrが大きいため、間欠制御が開始される時刻t3においても、リアクトル電流値Iinが第3指令電流値Iref3よりも大きい。このため、間欠制御が行われることにより、過電流が発生し、電力変換装置10の信頼性が低下する。
続いて図8に、実機での計測結果を示す。図示されるように、本実施形態によれば、第2モード制御から第3モード制御への移行直後の電流応答性の低下を回避できる。また、リアクトル電流値Iinが第3指令電流値Iref3よりも大きくなりやすい第3モード制御中においても、間欠制御に起因した過電流が発生しない。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
第3モード制御中において、第3指令電流値Iref3が所定電流値I1よりも小さいとの条件、又は出力電圧値VHが指令電圧値VH*未満であるとの条件のいずれかが成立していると判定された場合、加算器437に出力されるフィードフォワード時比率Dffrを、第1フィードフォワード時比率Dff1から第2フィードフォワード時比率Dff2(<Dff1)に切り替えた。このため、平均電流モード制御が行われる電力変換装置10において、リアクトル電流値Iinを第3指令電流値Iref3まで迅速に追従させることができる。
所定電流値I1を、停止閾値I2よりも大きい値に設定した。このため、間欠制御の開始前において、リアクトル電流値Iinと第3指令電流値Iref3との乖離を小さくすることができ、アバランシェ損失の発生を回避できる。
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施形態では、第3モード制御中に間欠制御が行われる場合に発生する過電流の回避を1つの目的として、フィードフォワード時比率Dffrの切替処理が行われることを説明したが、この目的に限らない。図9(a)に示すようにチョークコイルL3に流れる電流が不連続になる等、低負荷になる状況においては、図9(b)に示すように第3指令電流値Iref3に対してリアクトル電流値Iinが定常的に乖離する現象が生じ得る。この場合であっても、第3指令電流値Iref3が所定電流値I1未満である場合にフィードフォワード時比率Dffrを第2フィードフォワード時比率Dff2に切り替えることにより、第3指令電流値Iref3とリアクトル電流値Iinとの定常的な乖離を回避できる。
・入力電流検出部の設置位置としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、図10に示すように、正極側入力端子100aとチョークコイルL3とを接続する電気経路のうち、第1コンデンサ101の第1端との接続点よりも正極側入力端子100a側に入力電流検出部110を設けたり、チョークコイルL3側に入力電流検出部111を設けたりしてもよい。
・リアクトル電流値の算出手法としては、入力側に設けられた入力電流検出部の検出値に基づくものに限らない。例えば以下に説明するものであってもよい。第3,第5スイッチング素子Q3,Q5のドレイン同士の接続点と正極側出力端子200aとを接続する電気経路のうち、第2コンデンサ201の第1端との接続点よりも第3,第5スイッチング素子Q3,Q5側に電流検出部112を設ける。この構成において、電流検出部112の検出値、出力電圧値VH及び入力電圧値Vinに基づいて、リアクトル電流値を算出してもよい。
・先の図6のステップS22において、出力電圧値VHと比較する閾値を、指令電圧値VH*に代えて、指令電圧値VH*よりも大きい値又は小さい値としてもよい。
・先の図6のステップS22の処理を、第3指令電流値Iref3に関する条件、及び出力電圧値VHに関する条件の双方が成立しているか否かを判定する処理に置き換えてもよい。
また、ステップS22において、第3指令電流値Iref3に関する条件、又は出力電圧値VHに関する条件のうち、いずれかを除いてもよい。
・上記実施形態では、フィードフォワード時比率Dffrを2段階に切り替えたがこれに限らず、3段階以上に切り替えてもよい。この場合、例えば、ステップS22において肯定判定されていることを条件として、第3指令電流値Iref3が小さかったり、又は出力電圧値VHが高かったりするほど、フィードフォワード時比率Dffrをその値が小さくなるように切り替えてもよい。また、フィードフォワード時比率Dffrの切替手法としては、段階的に切り替えるものに限らず、連続的に切り替えるものであってもよい。
・先の図6のステップS25において、出力電圧値VHに関する条件を除いてもよい。
・上記実施形態では、昇圧機能を有する電力変換装置を用いたがこれに限らず、昇圧機能とともに、入力側の電圧を降圧して出力側に供給する降圧機能を備えるものであってもよい。