JP2017148895A - 耐折損性にすぐれたwc基超硬合金製ドリル - Google Patents
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Abstract
【課題】硬さと剛性を低下させることなく靱性を向上させ、耐欠損性を高めたWC基超硬合金製ドリルを提供する。【解決手段】WC基超硬合金製ドリルであって、WC基超硬合金は、その成分組成を、WC−x質量%Co−y質量%Cr3C2−z質量%VCで表したとき、6≦x≦14、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.6、(y+z)≦0.1xを満足し、また、前記WC基超硬合金のWC接着度Cを、C=1−Vbα・exp(0.391・L)で表したとき、この式におけるWC基超硬合金の結合相体積率の値Vbは0.11≦Vb≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.3≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cを有するWC基超硬合金製ドリル。【選択図】図1
Description
本発明は、高送り穴あけ加工等の重切削加工条件において、すぐれた耐折損性を発揮するWC基超硬合金製ドリル(単に、「ドリル」という場合もある)に関する。
WC基超硬合金は硬さが高く、すぐれた耐摩耗性を発揮することから、従来から、各種切削工具、治工具、機械部品などに広く用いられている。
近年では、電子機器の小型軽量化等に伴ってプリント基板の穴径が極小化しており、それに対応できる極細径の穴あけ加工用のWC基超硬合金製ドリルが求められており、さらに、穴あけ加工の省力化、低コスト化に対する要求から、また、穴あけ機の高性能化と相俟って、高送り穴あけ加工が行われるようになってきている。
しかし、従来のWC基超硬合金製ドリルで高送り穴あけ加工を行うと、WC基超硬合金の靱性不足が原因で、ドリルの折損が発生し易くなるという問題が発生している。
そこで、WC基超硬合金製ドリルの靱性向上、耐折損性改善を目的として、例えば、特許文献1に記載されるような提案がなされている。
近年では、電子機器の小型軽量化等に伴ってプリント基板の穴径が極小化しており、それに対応できる極細径の穴あけ加工用のWC基超硬合金製ドリルが求められており、さらに、穴あけ加工の省力化、低コスト化に対する要求から、また、穴あけ機の高性能化と相俟って、高送り穴あけ加工が行われるようになってきている。
しかし、従来のWC基超硬合金製ドリルで高送り穴あけ加工を行うと、WC基超硬合金の靱性不足が原因で、ドリルの折損が発生し易くなるという問題が発生している。
そこで、WC基超硬合金製ドリルの靱性向上、耐折損性改善を目的として、例えば、特許文献1に記載されるような提案がなされている。
特許文献1には、「硬質物質として炭化タングステンを含有し、さらに結合相としてCoを含有する炭化タングステン基超硬合金を製造するに際して、上記の硬質物質粉末の表面にCoを被覆した被覆粉末のみを原料として使用することによるコバルト偏析に起因する空孔欠陥寸法の小さい切削工具用炭化タングステン基超硬合金の製造法」が開示されており、WC基超硬合金中の結合相量を変えることなく、WC粉末表面にCoを被覆した粉末を使用することで、Co偏析に起因する空孔欠陥を低減し、焼結性を改善し、その結果として、WC基超硬合金の靭性向上を図ることが提案されている。
「International Journal of Refractory Metals & Hard Materials」Vol.21,No.5−6(2003)p.241−244「Contiguity And The Fracture Process Of WC−Co Alloys」
「International Journal of Refractory Metals & Hard Materials」Vol.24(2006)p.75−79「On the contiguity of carbide phase in WC−Co hardmetals」
しかし、上記特許文献1で提案されている方法では合金の空孔欠陥の低減化は図られるものの、空孔欠陥が改善された状態からさらに靭性を向上させるまでには至っていない。
つまり、WC基超硬合金中の結合相成分であるCo量を増加させることで靭性が改善されるとしても剛性が低下するため、たわみを起因とする折損が発生したり、穴位置精度が低下するという問題があった。
これはWC粉末表面が酸化されやすいため、WCの周囲にバインダをコーティングしたとしてもWC−結合相界面の親和性向上ができなかったことが原因と考えられる。
したがって、上記特許文献1で提案されているWC基超硬合金から構成されたドリルを、高送り穴あけ加工などの重切削加工に供した場合には、切れ刃に大きな機械的負荷がかかるため、依然として靭性不足であって、折損を発生し易いという問題点があった。
つまり、WC基超硬合金中の結合相成分であるCo量を増加させることで靭性が改善されるとしても剛性が低下するため、たわみを起因とする折損が発生したり、穴位置精度が低下するという問題があった。
これはWC粉末表面が酸化されやすいため、WCの周囲にバインダをコーティングしたとしてもWC−結合相界面の親和性向上ができなかったことが原因と考えられる。
したがって、上記特許文献1で提案されているWC基超硬合金から構成されたドリルを、高送り穴あけ加工などの重切削加工に供した場合には、切れ刃に大きな機械的負荷がかかるため、依然として靭性不足であって、折損を発生し易いという問題点があった。
そこで、本発明者らは、高送り穴あけ加工等の重切削加工条件に供した場合でも、すぐれた耐欠損性を発揮するWC基超硬合金製ドリルを提供すべく、WC基超硬合金における硬質成分であるWC粒子−WC粒子相互の接着度(以下、単に、「WC接着度」という)について着目し、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
前記非特許文献1に示されるように、WC基超硬合金中のWC接着度Cは、一般的に、
C=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)
という理論式で定義されている。
ここで、
C:WC基超硬合金組織中でWC同士が接着している頻度の指標。
NWC−WC:WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子とWC粒子の界面数。
NWC−Co:合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子と結合相の界面数。
つまり、前記理論式によれば、WC粒子と結合相との界面を増やすためには、前記のWC接着度Cの値を小さくすれば良いことがわかる。
C=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)
という理論式で定義されている。
ここで、
C:WC基超硬合金組織中でWC同士が接着している頻度の指標。
NWC−WC:WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子とWC粒子の界面数。
NWC−Co:合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子と結合相の界面数。
つまり、前記理論式によれば、WC粒子と結合相との界面を増やすためには、前記のWC接着度Cの値を小さくすれば良いことがわかる。
また、前記非特許文献2によれば、WC接着度を計算する理論式に、過去の種々のデータを当てはめた場合に、
C=1−Vb α・exp(0.391・L)
というWC接着度の実験式を導き出すことができる。
ここで、
C:前記理論式の場合と同様、WC基超硬合金組織中でWC同士が接着している頻度の指標
Vb:WC基超硬合金の結合相体積率。
例えば、結合相がCoからなる場合、Coの体積率。
α:実験的に求めた係数であり、前記実験式では、α=0.644。
L:WC基超硬合金組織中WC粒子の粒度分布により変わるパラメーターであり、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)に依存する。
C=1−Vb α・exp(0.391・L)
というWC接着度の実験式を導き出すことができる。
ここで、
C:前記理論式の場合と同様、WC基超硬合金組織中でWC同士が接着している頻度の指標
Vb:WC基超硬合金の結合相体積率。
例えば、結合相がCoからなる場合、Coの体積率。
α:実験的に求めた係数であり、前記実験式では、α=0.644。
L:WC基超硬合金組織中WC粒子の粒度分布により変わるパラメーターであり、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)に依存する。
前記非特許文献2に記載される実験式によれば、例えば、WC粒子が均粒であるとLは小さい値となり、一方、一部粗大なWCが含まれる場合や、微粒と粗粒が同量混在している場合にはLは大きな値となる。
そして、Lの数値の大小によるWC基超硬合金の組織の違いを、模式図として示すと、例えば、図1、図2となる。
即ち、図1は、WC粒子が均粒からなる均粒組織を有し、Lが0.7未満であって、WC接着度Cが大であり、一方、図2は、粗粒と微粒の混粒からなる混粒組織を有し、Lが0.7を超えるため、WC接着度Cが小さな値となっている。
そして、Lの数値の大小によるWC基超硬合金の組織の違いを、模式図として示すと、例えば、図1、図2となる。
即ち、図1は、WC粒子が均粒からなる均粒組織を有し、Lが0.7未満であって、WC接着度Cが大であり、一方、図2は、粗粒と微粒の混粒からなる混粒組織を有し、Lが0.7を超えるため、WC接着度Cが小さな値となっている。
本発明者は、前記非特許文献2の実験式に着目し、WC基超硬合金の組織とドリルの耐折損性の関係を調査したところ、Lの値を小さくすれば、例えば、図1に示されるようにWC接着度Cは大きくなるため、WC粒子−WC粒子相互の界面での破壊が生じやすくなり、満足できる耐欠損性は得られないこと、一方で、Lの値を大きくすれば、例えば、図2に示されるようにWC接着度Cは小さくなり、WC粒子−結合相間の結合割合は高くなるものの、粗粒のWC粒子の存在が破壊の起点となるため、やはり耐折損性は十分でないことを確認した。
そこで、WC粒子を均粒にすることによってLの値を相対的に小さな値にすると同時にWC接着度Cを小さな値に維持し、結合相がWC粒子周囲に十分に回り込むようにすることでWC粒子−結合相間の結合割合を高めることができれば、WC基超硬合金の硬さと剛性を低下させることなく靱性を向上させ、ドリルの耐欠損性を高めることができるとの結論を得たのである。
そして、前記Lの値、WC接着度Cの値を共に小さくするための方策として、本発明者らは、焼結原料としてのWC原料粉末の選定、WC原料粉末の混合条件の調整、焼結条件の調整によって、従来のWC基超硬合金の結合相体積率Vbと同量の結合相体積率VbのWC基超硬合金において、前記WC接着度Cを小さな値となし得ることを見出したのである。
そこで、WC粒子を均粒にすることによってLの値を相対的に小さな値にすると同時にWC接着度Cを小さな値に維持し、結合相がWC粒子周囲に十分に回り込むようにすることでWC粒子−結合相間の結合割合を高めることができれば、WC基超硬合金の硬さと剛性を低下させることなく靱性を向上させ、ドリルの耐欠損性を高めることができるとの結論を得たのである。
そして、前記Lの値、WC接着度Cの値を共に小さくするための方策として、本発明者らは、焼結原料としてのWC原料粉末の選定、WC原料粉末の混合条件の調整、焼結条件の調整によって、従来のWC基超硬合金の結合相体積率Vbと同量の結合相体積率VbのWC基超硬合金において、前記WC接着度Cを小さな値となし得ることを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) WC基超硬合金製ドリルであって、
前記WC基超硬合金は、その成分組成を、
WC−x質量%Co−y質量%Cr3C2−z質量%VC
で表したとき、6≦x≦14、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.6、(y+z)≦0.1xを満足し、
また、前記WC基超硬合金のWC接着度Cを、
C=1−Vb α・exp(0.391・L)で表したとき、
上記の式におけるWC基超硬合金の結合相体積率の値Vbは0.11≦Vb≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.30≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cを有することを特徴とするWC基超硬合金製ドリル。
(2) 前記WC基超硬合金が、TaCおよびNbCのうちのいずれか1種または2種を、合計量で0.2質量%以下含有することを特徴とする前記(1)に記載のWC基超硬合金製ドリル。
(3) 前記(1)または(2)に記載のWC基超硬合金製ドリルにおいて、少なくとも先端切れ刃面の表面に硬質被覆層が形成されている表面被覆WC基超硬合金製ドリル。」
を特徴とするものである。
「(1) WC基超硬合金製ドリルであって、
前記WC基超硬合金は、その成分組成を、
WC−x質量%Co−y質量%Cr3C2−z質量%VC
で表したとき、6≦x≦14、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.6、(y+z)≦0.1xを満足し、
また、前記WC基超硬合金のWC接着度Cを、
C=1−Vb α・exp(0.391・L)で表したとき、
上記の式におけるWC基超硬合金の結合相体積率の値Vbは0.11≦Vb≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.30≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cを有することを特徴とするWC基超硬合金製ドリル。
(2) 前記WC基超硬合金が、TaCおよびNbCのうちのいずれか1種または2種を、合計量で0.2質量%以下含有することを特徴とする前記(1)に記載のWC基超硬合金製ドリル。
(3) 前記(1)または(2)に記載のWC基超硬合金製ドリルにおいて、少なくとも先端切れ刃面の表面に硬質被覆層が形成されている表面被覆WC基超硬合金製ドリル。」
を特徴とするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
Co:
Coは、WC基超硬合金の結合相形成成分として含有させるが、Co含有量xが6質量%未満では十分な靱性を保持することはできず、一方、Co含有量xが14質量%を超えると急激に軟化し、切削工具として必要とされる所望の硬さが得られず、変形および摩耗進行が顕著になることから、WC基超硬合金中のCo含有量xを6〜14質量%と定めた。
Coは、WC基超硬合金の結合相形成成分として含有させるが、Co含有量xが6質量%未満では十分な靱性を保持することはできず、一方、Co含有量xが14質量%を超えると急激に軟化し、切削工具として必要とされる所望の硬さが得られず、変形および摩耗進行が顕著になることから、WC基超硬合金中のCo含有量xを6〜14質量%と定めた。
Cr3C2:
Cr3C2は、結合相を形成するCo中にCrが固溶し、硬質相を形成するWC相の成長を抑制して、WC相の粒径を微細化させ、WC基超硬合金を微粒・均粒組織とし、靱性を高める。しかし、この作用は、Cr3C2含有量yが、0.4質量%未満では不充分であり、一方、その含有量yが0.8質量%を超えると、CrとWの複合炭化物を析出し、靱性が低下し、また、欠損発生の起点となる。
したがって、WC基超硬合金中のCr3C2含有量yは、0.4〜0.8質量%と定めた。
Cr3C2は、結合相を形成するCo中にCrが固溶し、硬質相を形成するWC相の成長を抑制して、WC相の粒径を微細化させ、WC基超硬合金を微粒・均粒組織とし、靱性を高める。しかし、この作用は、Cr3C2含有量yが、0.4質量%未満では不充分であり、一方、その含有量yが0.8質量%を超えると、CrとWの複合炭化物を析出し、靱性が低下し、また、欠損発生の起点となる。
したがって、WC基超硬合金中のCr3C2含有量yは、0.4〜0.8質量%と定めた。
VC:
VCは、Cr3C2と同様、V成分を含有させることによってWC基超硬合金を微粒組織とすることで靱性を高めることから、WC基超硬合金中へVCを含有させることができるが、VCの含有量zが、0.6質量%を超えると、WCと結合相の密着力を弱める効果が強くなり、また、VCの析出により靱性を低下させ、欠損発生の起点となる。
したがって、WC基超硬合金中の成分としてVCを含有させる場合には、その含有量zは、0.6質量%以下とする。
VCは、Cr3C2と同様、V成分を含有させることによってWC基超硬合金を微粒組織とすることで靱性を高めることから、WC基超硬合金中へVCを含有させることができるが、VCの含有量zが、0.6質量%を超えると、WCと結合相の密着力を弱める効果が強くなり、また、VCの析出により靱性を低下させ、欠損発生の起点となる。
したがって、WC基超硬合金中の成分としてVCを含有させる場合には、その含有量zは、0.6質量%以下とする。
Cr3C2とVCの合計含有量(y+z):
WC基超硬合金中の含有成分であるCr3C2とVCは、いずれも靱性の向上に寄与する成分であるが、Co含有量xに対するCr3C2とVCの合計含有量(y+z)の比の値が0.1を超えると、過剰の炭化物が生成し、靱性を低下させるとともに、欠損を発生しやすくなるので、(y+z)≦0.1xとすることが必要である。
WC基超硬合金中の含有成分であるCr3C2とVCは、いずれも靱性の向上に寄与する成分であるが、Co含有量xに対するCr3C2とVCの合計含有量(y+z)の比の値が0.1を超えると、過剰の炭化物が生成し、靱性を低下させるとともに、欠損を発生しやすくなるので、(y+z)≦0.1xとすることが必要である。
TaC、NbC:
本発明のWC基超硬合金は、その成分として、さらに、TaCおよびNbCのうちのいずれか1種または2種を、合計で0.2質量%以下含有することができる。
Ta、Nbはいずれも、結合相を形成するCo中に固溶して硬さを高める効果を有するが、その合計含有量が0.2質量%を超えると、炭化物析出により靱性を低下させ、欠損発生の起点となる。
したがって、WC基超硬合金中の成分としてTaC、NbCを含有させる場合には、その合計含有量は、0.2質量%以下とすることが望ましい。
なお、前記したCr3C2、VC、TaC、NbCの含有量は、WC基超硬合金について蛍光X線分析によって測定したCr量、V量、Ta量、Nb量を、いずれも炭化物換算した数値である
本発明のWC基超硬合金は、その成分として、さらに、TaCおよびNbCのうちのいずれか1種または2種を、合計で0.2質量%以下含有することができる。
Ta、Nbはいずれも、結合相を形成するCo中に固溶して硬さを高める効果を有するが、その合計含有量が0.2質量%を超えると、炭化物析出により靱性を低下させ、欠損発生の起点となる。
したがって、WC基超硬合金中の成分としてTaC、NbCを含有させる場合には、その合計含有量は、0.2質量%以下とすることが望ましい。
なお、前記したCr3C2、VC、TaC、NbCの含有量は、WC基超硬合金について蛍光X線分析によって測定したCr量、V量、Ta量、Nb量を、いずれも炭化物換算した数値である
WC接着度C:
前記非特許文献2に示されるように、従来のWC基超硬合金おけるWC接着度Cは、
実験式:C=1−Vb α・exp(0.391・L)
により求めることができた。
ここで、Vbは、WC基超硬合金の結合相体積率(例えば、結合相がCoからなる場合、Coの体積率)であり、Lは、WC基超硬合金組織中WC粒子の粒度分布により依存するパラメーターL(例えば、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度))であり、上記式における係数αは、α=0.644であった。
つまり、従来のWC基超硬合金においては、WC接着度Cは、VbとLの値によって、一義的に決定されるものであって、WC接着度をさらに小さくすることはできなかった。
しかし、本発明では、焼結原料としてのWC原料粉末の選定、WC原料粉末の混合条件の調整、焼結条件の調整を行うことによって、係数αの値を小さくすることにより、WC接着度Cを従来よりもさらに小さい値とし得ることを見出した。
言い換えれば、VbとLの値が従来のWC基超硬合金と同じであっても、係数αの値を小さくすることによりWC接着度の小さいWC基超硬合金を作製し得ることを見出したのである。
そして、上記係数αの値が小さく、WC接着度が小さいWC基超硬合金によってドリルを構成することにより、硬さと剛性の低下がなく、すぐれた靱性を有するWC基超硬合金製ドリルを得ることができるのである。
前記非特許文献2に示されるように、従来のWC基超硬合金おけるWC接着度Cは、
実験式:C=1−Vb α・exp(0.391・L)
により求めることができた。
ここで、Vbは、WC基超硬合金の結合相体積率(例えば、結合相がCoからなる場合、Coの体積率)であり、Lは、WC基超硬合金組織中WC粒子の粒度分布により依存するパラメーターL(例えば、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度))であり、上記式における係数αは、α=0.644であった。
つまり、従来のWC基超硬合金においては、WC接着度Cは、VbとLの値によって、一義的に決定されるものであって、WC接着度をさらに小さくすることはできなかった。
しかし、本発明では、焼結原料としてのWC原料粉末の選定、WC原料粉末の混合条件の調整、焼結条件の調整を行うことによって、係数αの値を小さくすることにより、WC接着度Cを従来よりもさらに小さい値とし得ることを見出した。
言い換えれば、VbとLの値が従来のWC基超硬合金と同じであっても、係数αの値を小さくすることによりWC接着度の小さいWC基超硬合金を作製し得ることを見出したのである。
そして、上記係数αの値が小さく、WC接着度が小さいWC基超硬合金によってドリルを構成することにより、硬さと剛性の低下がなく、すぐれた靱性を有するWC基超硬合金製ドリルを得ることができるのである。
図1(a)に、従来のWC基超硬合金が有する組織の模式図を示し、図1(b)に、本発明によって得られるWC基超硬合金の組織の模式図を示す。
図1において、従来のWC基超硬合金(図1(a))ではVb=0.14.6、L=0.54であり、また、本発明のWC基超硬合金(図1(b))ではVb=0.15.6、L=0.51であって、両者のVb値とL値に大きな違いはないが、従来のWC基超硬合金(図1(a))におけるα値、WC接着度Cは、それぞれ、0.66、0.67であり、一方、本発明のWC基超硬合金(図1(b))におけるα値、WC接着度Cは、それぞれ、0.37、0.42であって、本発明のWC基超硬合金のWC接着度Cは、従来のWC基超硬合金の接着度より低いため、硬さと剛性を低下させることなく高靭性を備える。
図1において、従来のWC基超硬合金(図1(a))ではVb=0.14.6、L=0.54であり、また、本発明のWC基超硬合金(図1(b))ではVb=0.15.6、L=0.51であって、両者のVb値とL値に大きな違いはないが、従来のWC基超硬合金(図1(a))におけるα値、WC接着度Cは、それぞれ、0.66、0.67であり、一方、本発明のWC基超硬合金(図1(b))におけるα値、WC接着度Cは、それぞれ、0.37、0.42であって、本発明のWC基超硬合金のWC接着度Cは、従来のWC基超硬合金の接着度より低いため、硬さと剛性を低下させることなく高靭性を備える。
本発明におけるWC基超硬合金の製造においては、WC基超硬合金の結合相体積率の値Vbを0.11≦Vb≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lを0.3≦L≦0.7の範囲内とした場合、係数αは0.3≦α≦0.55の範囲内の値となることから、WC接着度Cが0.2〜0.55の範囲のWC基超硬合金を得ることができる。
WC接着度Cが0.2未満であっても技術的な不都合はないが、製作コストが高くなり、一方、WC接着度Cが0.55を超えると、WC−WC界面を起点とする折損の頻度が増加するから、本発明では、WC接着度Cを0.3〜0.55の範囲内とするが、より好ましい範囲は、0.35〜0.5である。
WC接着度Cが0.2未満であっても技術的な不都合はないが、製作コストが高くなり、一方、WC接着度Cが0.55を超えると、WC−WC界面を起点とする折損の頻度が増加するから、本発明では、WC接着度Cを0.3〜0.55の範囲内とするが、より好ましい範囲は、0.35〜0.5である。
本発明において、WC基超硬合金の結合相体積率Vbが0.11未満であると衝撃を吸収する結合相の不足のため、欠損の頻度が増加する。一方、Vbが0.25を超えると結合相の体積率が相対的に増加するため、硬さ、剛性が低下することから、上記Vbの値を0.11≦Vb≦0.25と定めた。
また、本発明において、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値LをL>0.7とした場合には、粗粒と微粒の混粒からなる混粒組織となり、粗粒WCを起点とする欠損の頻度が増加するから、組織を均粒組織とするためにLを0.7以下とする。
一方、Lの値が0.3未満であっても不具合はないが、後記する方法により技術的な困難なくWC接着度を低減させうる現時点での最小のLが0.3であることから0.3≦L≦0.7と定めた。
また、上記範囲内のLとするためには、WC基超硬合金の製造に際し、例えば、素原料WCの粒度分布を0.3≦L≦0.7とすることが望ましい。
一方、Lの値が0.3未満であっても不具合はないが、後記する方法により技術的な困難なくWC接着度を低減させうる現時点での最小のLが0.3であることから0.3≦L≦0.7と定めた。
また、上記範囲内のLとするためには、WC基超硬合金の製造に際し、例えば、素原料WCの粒度分布を0.3≦L≦0.7とすることが望ましい。
また、本発明において、α値0.55を超えると、均粒WCかつWC接着度を低減させることが困難であるから、αは0.55以下とする。なお、α値に下限はないが、後記する方法により技術的な困難性なくWC接着度を低減させ得る現時点での最小のα値が0.30であることから、0.30≦α≦0.55と定めた。
ここで、前記WC接着度C、結合相体積率Vb、α、Lの値は、次のような測定法により求めることができる。
WC接着度C:
C=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)の式から求めることができるが、「NWC−WC」は、「WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子とWC粒子の測定された界面数」であり、また、「NWC−Co」は、「WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子と結合相(Co)の測定された界面数」である。
結合相体積率Vb:
WC基超硬合金のSEM写真を撮影し、画像解析することにより測定・算出することができる。
(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)L:
WC基超硬合金中のWC粒子の面積をEBSD分析により数値化し、その後、各面積を球状近似してWC粒度分布を算出し、算出した粒度分布より平均WC粒度と標準偏差を求めることができる。
α:
後記する本発明のWC基超硬合金の製造方法によって実験的に得られた係数であり、上記で求めたC,Vb,Lの数値をC=1−Vb α・exp(0.391・L)の式に代入し、最小二乗法で算出した実験値から求まる係数である。
WC接着度C:
C=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)の式から求めることができるが、「NWC−WC」は、「WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子とWC粒子の測定された界面数」であり、また、「NWC−Co」は、「WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引いた時、その線上にあるWC粒子と結合相(Co)の測定された界面数」である。
結合相体積率Vb:
WC基超硬合金のSEM写真を撮影し、画像解析することにより測定・算出することができる。
(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)L:
WC基超硬合金中のWC粒子の面積をEBSD分析により数値化し、その後、各面積を球状近似してWC粒度分布を算出し、算出した粒度分布より平均WC粒度と標準偏差を求めることができる。
α:
後記する本発明のWC基超硬合金の製造方法によって実験的に得られた係数であり、上記で求めたC,Vb,Lの数値をC=1−Vb α・exp(0.391・L)の式に代入し、最小二乗法で算出した実験値から求まる係数である。
焼結原料としてのWC原料粉末:
焼結原料としてのWC原料粉末は、焼結時に容易に解砕し新生面が得られる粉末であることが必要である。
つまり、WC接着度Cの値を下げるための方策として、WC−Co界面の濡れ性を出来るだけ邪魔しないようにして、WC−Co(結合相)の界面をできるだけ多く形成することが必要であり、そのためには、WC−Co(結合相)界面に酸化物等が介在しないようにすることが必要である。
焼結原料としてのWC原料粉末は、通常、納入の段階から既に最表面は薄い酸化膜で覆われており、また混合時の粉砕で新生面を形成してしまうと、表面は容易に酸化されてしまうことから、WC接着度Cを下げる為には、新生面の酸化を防ぐことが重要である。
そして、焼結時には、炉内雰囲気は非酸化性もしくは真空中であるから、焼結時に新生面が形成されるようにすれば、酸化は生じにくいということになり、その結果として、同一結合相量Vb、同一粒度分布Lであっても、WC接着度Cを下げることができる。
焼結原料としてのWC原料粉末は、焼結時に容易に解砕し新生面が得られる粉末であることが必要である。
つまり、WC接着度Cの値を下げるための方策として、WC−Co界面の濡れ性を出来るだけ邪魔しないようにして、WC−Co(結合相)の界面をできるだけ多く形成することが必要であり、そのためには、WC−Co(結合相)界面に酸化物等が介在しないようにすることが必要である。
焼結原料としてのWC原料粉末は、通常、納入の段階から既に最表面は薄い酸化膜で覆われており、また混合時の粉砕で新生面を形成してしまうと、表面は容易に酸化されてしまうことから、WC接着度Cを下げる為には、新生面の酸化を防ぐことが重要である。
そして、焼結時には、炉内雰囲気は非酸化性もしくは真空中であるから、焼結時に新生面が形成されるようにすれば、酸化は生じにくいということになり、その結果として、同一結合相量Vb、同一粒度分布Lであっても、WC接着度Cを下げることができる。
上記で述べたように、焼結時に新生面が形成されるようにするためには、WC原料粉末としては、結晶性が悪く、ポリ粒子の様な多量に粒界や転位等の欠陥を含んだものを使うことが好適である。
WC原料粉末の結晶性の悪さは、XRDピーク(101)の半価幅r(度)から求めることができるが、半価幅r(度)は、WC原料粉末の粒度、WC原料粉末中の微粉量等によっても影響を受けるので、任意の平均WC原料粉末粒度における結晶性の悪さを評価するためには、WCの平均粒径(F.S.S.S)q(μm)とXRDピーク(101)の半価幅r(度)の関係がr>−0.01ln(q)+0.175を満たす粉末を使用する。
WC原料粉末の結晶性の悪さは、XRDピーク(101)の半価幅r(度)から求めることができるが、半価幅r(度)は、WC原料粉末の粒度、WC原料粉末中の微粉量等によっても影響を受けるので、任意の平均WC原料粉末粒度における結晶性の悪さを評価するためには、WCの平均粒径(F.S.S.S)q(μm)とXRDピーク(101)の半価幅r(度)の関係がr>−0.01ln(q)+0.175を満たす粉末を使用する。
WC原料粉末の混合条件:
WC原料粉末は、溶媒中で混合され、その後乾燥されるが、この乾燥工程では、混合粉末は大気中にさらされ、形成された新生面は酸化されることになるので、WC原料粉末の混合工程では、新生面を形成させないこと、また、新生面の酸化を防ぐような混合条件の調整が必要であり、例えばビーズミルなどにより、粉砕エネルギーが弱く、新生面を出さないような方法で混合を行う。
より具体的にいえば、直径0.8mmの超硬合金製メディアを用い、メディアの総重量は、スラリー2Lに対して2kgとし、ローター回転数1500rpm、混合時間は1時間とすることによって、WC原料粉末が新生面を出さないような混合を行うことができる。
WC原料粉末は、溶媒中で混合され、その後乾燥されるが、この乾燥工程では、混合粉末は大気中にさらされ、形成された新生面は酸化されることになるので、WC原料粉末の混合工程では、新生面を形成させないこと、また、新生面の酸化を防ぐような混合条件の調整が必要であり、例えばビーズミルなどにより、粉砕エネルギーが弱く、新生面を出さないような方法で混合を行う。
より具体的にいえば、直径0.8mmの超硬合金製メディアを用い、メディアの総重量は、スラリー2Lに対して2kgとし、ローター回転数1500rpm、混合時間は1時間とすることによって、WC原料粉末が新生面を出さないような混合を行うことができる。
焼結条件:
前記のとおり選定し、また、前記の混合を行ったWC原料粉末を含む焼結原料を、必要に応じて、成形体とし、これを焼結することによって、WC基超硬合金を作製するが、焼結過程ではWC粒子に対して引張の応力がかかるよう焼結条件を調整する。
つまり、焼結時の雰囲気は、真空もしくは非酸化性雰囲気であるため、焼結過程でWC原料粉末に亀裂を入れて新生面を出せば新生面が酸化されない。そして、これによって、焼結時にWC−Co界面の濡れを妨げる酸化物がなくなり、CoのWC周囲への回り込みが向上し、WC接着度Cが下がることになる。
例えば、焼結に際し、一度固相反応が起こる1200℃の温度で保持した後、30℃/min以上で急冷し、その後、液相焼結が起こる温度(例えば、1400℃)に昇温・保持し、冷却することによって、焼結時に新生面を形成することができ、WC接着度の小さい本発明のWC基超硬合金を作製することができる 。
前記のとおり選定し、また、前記の混合を行ったWC原料粉末を含む焼結原料を、必要に応じて、成形体とし、これを焼結することによって、WC基超硬合金を作製するが、焼結過程ではWC粒子に対して引張の応力がかかるよう焼結条件を調整する。
つまり、焼結時の雰囲気は、真空もしくは非酸化性雰囲気であるため、焼結過程でWC原料粉末に亀裂を入れて新生面を出せば新生面が酸化されない。そして、これによって、焼結時にWC−Co界面の濡れを妨げる酸化物がなくなり、CoのWC周囲への回り込みが向上し、WC接着度Cが下がることになる。
例えば、焼結に際し、一度固相反応が起こる1200℃の温度で保持した後、30℃/min以上で急冷し、その後、液相焼結が起こる温度(例えば、1400℃)に昇温・保持し、冷却することによって、焼結時に新生面を形成することができ、WC接着度の小さい本発明のWC基超硬合金を作製することができる 。
本発明では、前記の製造方法でWC基超硬合金を作製することによって、
C=1−Vb α・exp(0.391・L)
の式において、WC基超硬合金の結合相体積率の値Vbは0.11≦Vb≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.3≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cが0.2〜0.55、好ましくは、0.35〜0.5である硬さ、剛性、靱性にすぐれたWC基超硬合金を作製することができる。
C=1−Vb α・exp(0.391・L)
の式において、WC基超硬合金の結合相体積率の値Vbは0.11≦Vb≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.3≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cが0.2〜0.55、好ましくは、0.35〜0.5である硬さ、剛性、靱性にすぐれたWC基超硬合金を作製することができる。
本発明では、上記で得たWC基超硬合金でドリルを構成することによって、硬さ、剛性、靱性にすぐれ、ドリルの耐欠損性を向上させたWC基超硬合金製ドリルを得ることができるが、WC基超硬合金製ドリルの少なくとも刃先表面に、例えば、硬質被覆層を設けることによって、さらに、耐摩耗性にすぐれた表面被覆WC基超硬合金製ドリルを得ることができる。
なお、前記の硬質被覆層としては、例えば、TiとAlの複合窒化物からなり、TiとAlの合量に占めるAlの含有割合が0.1〜0.6(ただし、原子比)である硬質被覆層を、0.5〜6μmの平均層厚で形成することが好ましい。
なお、前記の硬質被覆層としては、例えば、TiとAlの複合窒化物からなり、TiとAlの合量に占めるAlの含有割合が0.1〜0.6(ただし、原子比)である硬質被覆層を、0.5〜6μmの平均層厚で形成することが好ましい。
本発明のWC基超硬合金製ドリルは、その成分である、Co、Cr3C2、VC、あるいはさらに、TaC、NbCが特定の組成範囲を有し、また、本発明のWC基超硬合金製ドリルは、WC基超硬合金の結合相体積率の値Vbと、係数αと、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lによって、
C=1−Vb α・exp(0.391・L)
(但し、0.11≦Vb≦0.25、0.3≦α≦0.55、0.3≦L≦0.7を満足する)で定まる小さなWC接着度Cを有するものであるから、硬さと剛性の低下が抑制されるとともに靱性にすぐれるため、高送り穴あけ加工等の重切削加工に供した場合でも、すぐれた耐欠損性を発揮するのである。
C=1−Vb α・exp(0.391・L)
(但し、0.11≦Vb≦0.25、0.3≦α≦0.55、0.3≦L≦0.7を満足する)で定まる小さなWC接着度Cを有するものであるから、硬さと剛性の低下が抑制されるとともに靱性にすぐれるため、高送り穴あけ加工等の重切削加工に供した場合でも、すぐれた耐欠損性を発揮するのである。
本発明のWC基超硬合金製ドリルについて、実施例により具体的に説明する。
まず、焼結用の粉末として、WC粉末、Co粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末を用意する。
このうち、WC粉末については、結晶性が悪く、粒界や転位等の欠陥を多量に含んだWC粉末を使用する。
結晶性の良否は、WC粉末のXRDピーク(101)の半価幅r(度)および半価幅r(度)に影響を与えるWCの平均粒径(F.S.S.S.)q(μm)によって影響を受けるため、本発明では、結晶性が悪く、粒界や転位等の欠陥を多量に含んだWC粉末として、r>−0.01ln(q)+0.175の関係を満足するWC粉末を使用した。
このWC粉末を、表1に示す配合組成となるように配合して、焼結用粉末を作製した。
表1には、各種粉末の配合組成(質量%)を示すとともに、WC粉末の平均粒径(F.S.S.S.)q(μm)、XRDピーク(101)の半価幅r(度)の値を示す。
なお、Co粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末の平均粒径(F.S.S.S.)は、いずれも、0.5〜7μmの範囲内である。
このうち、WC粉末については、結晶性が悪く、粒界や転位等の欠陥を多量に含んだWC粉末を使用する。
結晶性の良否は、WC粉末のXRDピーク(101)の半価幅r(度)および半価幅r(度)に影響を与えるWCの平均粒径(F.S.S.S.)q(μm)によって影響を受けるため、本発明では、結晶性が悪く、粒界や転位等の欠陥を多量に含んだWC粉末として、r>−0.01ln(q)+0.175の関係を満足するWC粉末を使用した。
このWC粉末を、表1に示す配合組成となるように配合して、焼結用粉末を作製した。
表1には、各種粉末の配合組成(質量%)を示すとともに、WC粉末の平均粒径(F.S.S.S.)q(μm)、XRDピーク(101)の半価幅r(度)の値を示す。
なお、Co粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末の平均粒径(F.S.S.S.)は、いずれも、0.5〜7μmの範囲内である。
表1に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、ビーズミル内に投入し、直径0.8mmの超硬合金製メディアを用い、メディアの総重量は、スラリー2Lに対して2kgとし、ローター回転数1500rpm、混合時間は1時間とすることによって、WC原料粉末が新生面を出さないようなビーズミル混合を行って混合粉末を作製し、ついで、100MPaの圧力でプレス成形して、直径が5mmの丸棒圧粉体を作製した。
ついで、これらの丸棒圧粉体を、3Pa以下の真空雰囲気中、固相反応がおこる1150〜1250℃の温度範囲に昇温し、該温度で0.5〜1時間保持後、WC粒子に引張応力を付与するため20〜50℃/minの冷却速度で700〜800℃の温度範囲まで急冷し、ついで、液相焼結が起こる1380〜1450℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持し炉冷する焼結を行うことにより、本発明のWC基超硬合金焼結体を作製した。
ついで、これらのWC基超硬合金焼結体を研削加工し、溝形成部の外径をそれぞれ4mmとすることにより、表3に示す本発明のWC基超硬合金製ドリル1〜9(以下、本発明ドリル1〜9という)を製造した。
比較のために、比較例のWC基超硬合金製ドリル1〜9(以下、比較例ドリル1〜9という)を製造した。
その製造手順は、次のとおりである。
まず、表2に示されるXRDピーク(101)の半価幅r(度)および平均粒径(F.S.S.S.)q(μm)を有し、同じく表2に示す配合割合のWC粉末を用意し、これをCo粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末と配合して、表2に示す配合組成の焼結用粉末を作製した。
ついで、表2に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、ボールミルにて15時間湿式混合することによって混合粉末を作製し、ついで、100MPaの圧力でプレス成形して、直径が6mmの丸棒圧粉体を作製した。
ついで、上記の丸棒圧紛体を、3Pa以下の真空雰囲気中で1380〜1450℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、WC基超硬合金からなる焼結体を作製した。
ついで、これらのWC基超硬合金焼結体を研削加工し、溝形成部の外径をそれぞれ5mmとすることにより、表4に示す比較例ドリル1〜9を製造した。
その製造手順は、次のとおりである。
まず、表2に示されるXRDピーク(101)の半価幅r(度)および平均粒径(F.S.S.S.)q(μm)を有し、同じく表2に示す配合割合のWC粉末を用意し、これをCo粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末と配合して、表2に示す配合組成の焼結用粉末を作製した。
ついで、表2に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、ボールミルにて15時間湿式混合することによって混合粉末を作製し、ついで、100MPaの圧力でプレス成形して、直径が6mmの丸棒圧粉体を作製した。
ついで、上記の丸棒圧紛体を、3Pa以下の真空雰囲気中で1380〜1450℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、WC基超硬合金からなる焼結体を作製した。
ついで、これらのWC基超硬合金焼結体を研削加工し、溝形成部の外径をそれぞれ5mmとすることにより、表4に示す比較例ドリル1〜9を製造した。
本発明ドリル1〜9及び比較例ドリル1〜9について、WC接着度の値C,結合相体積率の値Vb,係数α,(WC粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lを測定した。
まず、WC接着度の値Cは、C=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)の式から求めるが、この式における「NWC−WC」は、WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引き、その線上にあるWC粒子とWC粒子の界面数を測定することによって求め、また、「NWC−Co」は、WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引き、その線上にあるWC粒子と結合相(Co)の界面数を測定することによって求め、求められた「NWC−WC」と「NWC−Co」から、WC接着度の値Cを求めた。
また、結合相体積率の値Vbは、WC基超硬合金のSEM写真を撮影し、画像解析することにより測定・算出した。
また、(WC粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは、WC基超硬合金中のWC粒子の面積をEBSD分析により数値化し、その後、各面積を球状近似してWC粒度分布を算出し、算出した粒度分布より平均WC粒度と標準偏差を求め、(WC粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値を算出した。
係数αは、C=1−Vb α・exp(0.391・L)の式に、求めたC,Vb,Lを代入することによって求めた。
表3、表4に、その結果を示す。
まず、WC接着度の値Cは、C=2NWC−WC/(2NWC−WC+NWC−Co)の式から求めるが、この式における「NWC−WC」は、WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引き、その線上にあるWC粒子とWC粒子の界面数を測定することによって求め、また、「NWC−Co」は、WC基超硬合金組織のSEM像上に任意の直線を引き、その線上にあるWC粒子と結合相(Co)の界面数を測定することによって求め、求められた「NWC−WC」と「NWC−Co」から、WC接着度の値Cを求めた。
また、結合相体積率の値Vbは、WC基超硬合金のSEM写真を撮影し、画像解析することにより測定・算出した。
また、(WC粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは、WC基超硬合金中のWC粒子の面積をEBSD分析により数値化し、その後、各面積を球状近似してWC粒度分布を算出し、算出した粒度分布より平均WC粒度と標準偏差を求め、(WC粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値を算出した。
係数αは、C=1−Vb α・exp(0.391・L)の式に、求めたC,Vb,Lを代入することによって求めた。
表3、表4に、その結果を示す。
上記本発明ドリル、比較例ドリルのうち、本発明ドリル3、4、9および比較例ドリル8、9,10について、以下の高送り穴あけ加工試験を行った。
≪高送り穴あけ加工試験≫
被削材:ADC12の厚さ150mmの板材、
回転速度:5100rpm、
送り:0.40mm/rev.
湿式水溶性切削油使用高送り穴あけ加工試験、
≪高送り穴あけ加工試験≫
被削材:ADC12の厚さ150mmの板材、
回転速度:5100rpm、
送り:0.40mm/rev.
湿式水溶性切削油使用高送り穴あけ加工試験、
前記穴あけ加工試験において、3000穴を上限として穴あけ加工数50個毎に先端切れ刃面の摩耗状況等を観察した。
正常摩耗の場合には、切れ刃の最大逃げ面摩耗幅が、0.2mmを超えた時点で使用寿命とし、それまでの穴あけ加工数を測定した。
また、ドリル折損が原因で使用寿命に至った場合には、それまでの穴あけ加工数を測定した。
表5に、それぞれの穴あけ加工試験A〜Cの結果を示す。
正常摩耗の場合には、切れ刃の最大逃げ面摩耗幅が、0.2mmを超えた時点で使用寿命とし、それまでの穴あけ加工数を測定した。
また、ドリル折損が原因で使用寿命に至った場合には、それまでの穴あけ加工数を測定した。
表5に、それぞれの穴あけ加工試験A〜Cの結果を示す。
また、前記本発明ドリル3、4、9および比較例ドリル8、9,10について、アークイオンプレーティングにより、表6に示す硬質被覆層を形成することにより、本発明被覆ドリル3、4、9および比較例被覆ドリル8、9、10を作製した。
本発明被覆ドリル3、4、9および比較例被覆ドリル8、9、10について、以下の高送り穴あけ加工試験を行った。
≪高送り穴あけ加工試験≫
被削材:S50Cの厚さ150mmの板材、
回転速度:5100rpm、
送り:0.50mm/rev.
湿式水溶性切削油使用高送り穴あけ加工試験、
前記穴あけ加工試験において、1000穴を上限として穴あけ加工数50個毎に先端切れ刃面の摩耗状況等を観察した。
正常摩耗の場合には、切れ刃の最大逃げ面摩耗幅が、0.2mmを超えた時点で使用寿命とし、それまでの穴あけ加工数を測定した。
また、ドリル折損が原因で使用寿命に至った場合には、それまでの穴あけ加工数を測定した。
表6に、その結果を示す。
≪高送り穴あけ加工試験≫
被削材:S50Cの厚さ150mmの板材、
回転速度:5100rpm、
送り:0.50mm/rev.
湿式水溶性切削油使用高送り穴あけ加工試験、
前記穴あけ加工試験において、1000穴を上限として穴あけ加工数50個毎に先端切れ刃面の摩耗状況等を観察した。
正常摩耗の場合には、切れ刃の最大逃げ面摩耗幅が、0.2mmを超えた時点で使用寿命とし、それまでの穴あけ加工数を測定した。
また、ドリル折損が原因で使用寿命に至った場合には、それまでの穴あけ加工数を測定した。
表6に、その結果を示す。
表5、表6に示される試験結果によれば、本発明ドリル、本発明被覆ドリルは、折損が発生することもなく、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較例ドリル、比較例被覆ドリルは、折損の発生あるいは切れ刃の最大逃げ面摩耗幅が短時間で増加し寿命に至る、もしくは摩耗量増加に起因したチッピングが発生し使用寿命に至ることは明らかである。
これに対して、比較例ドリル、比較例被覆ドリルは、折損の発生あるいは切れ刃の最大逃げ面摩耗幅が短時間で増加し寿命に至る、もしくは摩耗量増加に起因したチッピングが発生し使用寿命に至ることは明らかである。
以上のとおり、本発明ドリル、本発明被覆ドリルは、高硬度を備えるとともに、すぐれた靱性を有することから、高送り穴あけ加工に供した場合、すぐれた耐摩耗性に加え、すぐれた耐折損性を備え、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮し、工具の長寿命化を図ることができるものと期待される。
Claims (3)
- WC基超硬合金製ドリルであって、
前記WC基超硬合金は、その成分組成を、
WC−x質量%Co−y質量%Cr3C2−z質量%VC
で表したとき、6≦x≦14、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.6、(y+z)≦0.1xを満足し、
また、前記WC基超硬合金のWC接着度Cを、
C=1−Vb α・exp(0.391・L)で表したとき、
上記の式におけるWC基超硬合金の結合相体積率の値Vbは0.11≦Vb≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.30≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cを有することを特徴とするWC基超硬合金製ドリル。 - 前記WC基超硬合金が、TaCおよびNbCのうちのいずれか1種または2種を、合計量で0.2質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のWC基超硬合金製ドリル。
- 請求項1または2に記載のWC基超硬合金製ドリルにおいて、少なくとも先端切れ刃面の表面に硬質被覆層が形成されている表面被覆WC基超硬合金製ドリル。
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| JP2024543099A (ja) * | 2021-11-20 | 2024-11-19 | ハイペリオン マテリアルズ アンド テクノロジーズ インコーポレイテッド | 改善された超硬合金 |
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- 2016-02-24 JP JP2016033033A patent/JP2017148895A/ja active Pending
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