JP2017150179A - 減振構造を有する柱梁構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の耐震構造と比べコスト的に遜色がなく、従来の制振構造や免震構造と比べても意匠・敷地的な条件に制約されず、また、小さな変形レベルから大きなエネルギーを吸収し効率的に減振効果を発揮可能な減振構造を有する柱梁構造を提供する。【解決手段】この減振構造を有する柱梁構造は、建物の梁端部および/または柱端部に塑性ヒンジ部15を設け、塑性ヒンジ部における剛性および/または降伏耐力が塑性ヒンジ部以外の剛性および/または降伏耐力と比べて小さくなるように梁端部および/または柱端部を構成することで減振構造を設け、塑性ヒンジ部は、塑性ヒンジ部における降伏が建物の変形角が少なくとも1/150で始まるように構成される。【選択図】図1

Description

本発明は、地震動に対する減振構造を有する柱梁構造に関する。
近年、大地震動に対しても、建築物には一定の機能維持や損傷の抑制が要求され、最大応答時の建物変形角を1/100程度に抑制することが課題となってきた。このため、制振構造や免震構造が普及しつつあるが、コスト、制振・免震装置の設置のための意匠上・敷地上の制約、および、想定以上の外乱に対する制振・免震装置の性能に起因する安全性の問題など、配慮すべき課題が多い。また、これらの装置を用いずに鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建物に対して通常の耐震設計を行う場合、最大応答時の建物変形角を1/100程度に抑制するためには、経済的および建築計画的に大きな支障が生じ得るかなり大きな建物強度を確保する必要がある。これは、通常の構造では降伏変形角が1/150〜1/100程度であるため、それ以前に大きなエネルギー吸収を期待できず、効率的に制振効果を発揮できないことによる。
既存建物の構造部材に改良を加えて制振効果を得ようとする技術については、例えば特許文献1,2が挙げられる。特許文献1は、鉄骨構造物における柱梁接合部で溶接部の延性不足を解消し、延性を平均で5倍程度向上させ、耐震性能を高める鉄骨構造物の柱梁接合部構造として図10に示す構造を提案する。特許文献2は、大地震時における鉄骨構造物の過大な変形の抑制およびエネルギー吸収能力の向上を期待できる制振構造として図11に示す構造を提案する。
特開平8-4112号公報 特開2003-129565号公報
特許文献1の構造では、図10のように、溶接(91)およびボルト(94)によりボックスコラム(96)に接合されたH型鋼の梁(97)において、その上下1対のフランジプレート(81、82)を切り欠いて切欠き(80)を設け、この切欠き(80)の範囲は2D以下である(D:梁背)。この切欠き(80)を設けた区間(98)ではフランジが均等に降伏し、塑性ヒンジ長が長くなるため、柱梁接合部の延性および建物の耐震性の向上を期待することができる。しかし、本構造は溶接部の延性不足を解消するために考案された技術であり、梁端部から離れた部分の断面を切り欠いているため、梁部材自体の曲げ耐力は切り欠きを設けない場合の耐力と比べ1〜2割程度しか小さくならず、降伏変形角もその程度しか小さくならない。このため、建物変形角が1/100〜1/75程度に達するまでには大きなエネルギー吸収を期待できず、効率的に制振効果を発揮できないという課題があった。
特許文献2の制振構造では、図11のように、柱(101)の近くの梁部分に板状の補強材(104)が備えられ、この補強材(104)の一端(4a)が柱に固定連結され、他端(4b)が柱から離れたところで梁(103)に固定連結されている。梁(103)はH形鋼からなり、水平な2つのフランジ(3a,3b)とこれらのフランジ間に位置する垂直なウェブプレート(3b)を有する。(102)はシェアプレートである。また、補強材(104)の両端の間の中間範囲は、梁の材軸方向には拘束されないように、梁材軸の直交方向には拘束されるように、梁(103)によって支持されている。地震時に梁に曲げ応力が生じると、梁の柱側端部が先行して降伏し、塑性変形が増大してエネルギー吸収を行う。このとき、補強材の中間範囲は梁と相対的に梁の材軸方向に移動可能であるためほとんど変形しない。そして、梁の塑性変形がさらに増大すると、補強材の中間範囲が抵抗し、梁のそれ以上の変形を防止する。よって、建物の過大な変形が抑制されると同時に大きなエネルギー吸収を期待できる。しかし、これら効果のメカニズムは複雑であり、効果を検証するためには多くのデータを要すると考えられるため、実用化の点において課題があった。また、補強材の両端の間の中間範囲には、梁材軸方向に多数のルーズホールが形成され、これらのルーズホールに挿入された座屈補剛ボルト(105)により梁と補強材が接合されているため、梁フランジには断面欠損が生じるとともに、構造詳細が煩雑となっている。このため、梁の曲げ耐力の低下やコストの増大等の課題があった。また、梁の塑性変形がある程度増大しないと補強材の中間範囲が抵抗しないため、効率的に制振効果を発揮できないという課題があった。
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、従来の耐震構造と比べコスト的に遜色がなく、従来の制振構造や免震構造と比べても意匠・敷地的な条件に制約されず、また、小さな変形レベルから大きなエネルギーを吸収し効率的に減振効果を発揮可能な減振構造を有する柱梁構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための減振構造を有する柱梁構造は、建物の梁端部および/または柱端部に塑性ヒンジ部を設け、前記塑性ヒンジ部における剛性および/または降伏耐力が前記塑性ヒンジ部以外の剛性および/または降伏耐力と比べて小さくなるように前記梁端部および/または前記柱端部を構成することで減振構造を設け、前記塑性ヒンジ部は、前記塑性ヒンジ部における降伏が前記建物の変形角が少なくとも1/150で始まるように構成されることを特徴とする。
この減振構造を有する柱梁構造によれば、塑性ヒンジ部における降伏は建物の変形角が少なくとも1/150で始まり、従来よりも小さい降伏変形角となるので、小さな変形レベルから大きなエネルギーを吸収し効率的に減振効果を発揮することができる。このように、従来の設計法と比べて優れたエネルギー吸収性能を発揮することができ、延いては大地震時における建物変形角(応答)を著しく低減することができる。また、減振構造は、構造部材の断面形状や配筋等に工夫を加えるだけで実現できるので、従来の耐震構造と比べコスト的に遜色がなく、従来の制振構造や免震構造と比べても意匠・敷地的な条件に制約されない。
上記目的を達成するためのもう1つの減振構造を有する柱梁構造は、建物の梁端部および/または柱端部に塑性ヒンジ部を設け、前記塑性ヒンジ部における剛性および/または降伏耐力が前記塑性ヒンジ部以外の剛性および/または降伏耐力と比べて小さくなるように前記梁端部および/または前記柱端部を構成することで減振構造を設け、前記塑性ヒンジ部の長さを梁端から梁成の1/2以下および/または柱端から柱成もしくは柱幅の1/2以下とすることを特徴とする。
この減振構造を有する柱梁構造によれば、塑性ヒンジ部の長さを梁端から梁成および/または柱端から柱成もしくは柱幅の1/2以下とすることで、建物の降伏変形角が従来よりも小さくなり、小さな変形レベルから大きなエネルギーを吸収し効率的に減振効果を発揮することができる。このように、従来の設計法と比べて優れたエネルギー吸収性能を発揮することができ、延いては大地震時における建物変形角(応答)を著しく低減することができる。また、減振構造は、構造部材の断面形状や配筋等に工夫を加えるだけで実現できるので、従来の耐震構造と比べコスト的に遜色がなく、従来の制振構造や免震構造と比べても意匠・敷地的な条件に制約されない。
上記減振構造を有する柱梁構造において、前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、前記塑性ヒンジ部における主筋の断面積を塑性ヒンジが生じない部分の主筋の断面積と比べ相対的に小さくすることで、塑性ヒンジ部を構成できる。
また、前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、前記梁および/または前記柱の一部の主筋のみが前記柱梁接合部に定着するようにすることで、塑性ヒンジ部を構成できる。
また、前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、前記梁端部と前記柱梁接合部との境界において、鉄筋の所定のかぶり厚を確保したうえで梁幅の中央近傍に曲げひび割れ誘発目地を設けることで、塑性ひずみを梁端部に集中させ、地震時におけるエネルギー吸収性能の向上および梁端部以外の損傷の制御を図ることができる。
また、前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、前記柱端部と前記柱梁接合部との境界において、鉄筋の所定のかぶり厚を確保したうえで柱幅および/または柱成の中央近傍に曲げひび割れ誘発目地を設けることで、塑性ひずみを柱端部に集中させ、地震時におけるエネルギー吸収性能の向上および柱端部以外の損傷の制御を図ることができる。
また、前記梁と前記柱とが鉄骨造であり、前記塑性ヒンジ部における梁部材および/または柱部材の断面積を塑性ヒンジが生じない部分と比べ相対的に小さくすることで、塑性ヒンジ部を構成できる。
また、前記梁と前記柱とが鉄骨造であり、前記塑性ヒンジ部以外で梁部材および/または柱部材を鋼板で補強することで、塑性ヒンジ部を構成できる。
本発明の減振構造を有する柱梁構造によれば、従来の耐震構造と比べコスト的に遜色がなく、従来の制振構造や免震構造と比べても意匠・敷地的な条件に制約されず、また、小さな変形レベルから大きなエネルギーを吸収し効率的に減振効果を発揮することができる。
第1実施形態による鉄筋コンクリート造の柱梁構造における梁の梁成方向の断面図(a)およびB-B線方向の柱梁接合部近傍の要部断面図(b)である。 第1実施形態による減振構造を有する柱梁構造および従来の一般的な設計法による柱梁構造における地震力と建物変形角との履歴曲線を概略的に示すグラフである。 図2の建物変形角を説明するための概略図である。 第1実施形態の第1変形例を説明するための図1(b)と同様の断面図である。 第1実施形態の第2変形例を説明するための図1(b)と同様の断面図(a)、第3変形例を説明するための図1(b)と同様の断面図(b)、さらに別の変形例を説明するための柱と梁との柱梁接合部を示す要部断面図(c)およびd-d線方向の梁断面図(d)である。 第1実施形態の第4変形例を説明するための柱と梁の要部側面図(a)およびb-b線方向の柱断面図(b)である。 第2実施形態を説明するための図1(b)と同様の断面図である。 第3実施形態による鉄骨造の柱梁構造における梁の梁成方向の断面図(a)およびBB-BB線方向の柱梁接合部近傍の要部断面図(b)である。 第3実施形態の変形例を説明するための図8(a)と同様の梁の断面図(a)、同じく図8(b)と同様のbb-bb線方向の断面図(b)およびcc-cc線方向の断面図(c)である。 特許文献1による鉄骨構造物の柱梁接合部構造を示す図である。 特許文献2による鉄骨構造物の制振構造を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態による鉄筋コンクリート造の梁の梁成方向の断面図(a)およびB-B線方向の柱梁接合部近傍の要部断面図(b)である。
図1(a)(b)の柱梁構造は、梁10が、梁コンクリート内に、梁上面10a側および梁下面10b側に複数本の主筋11が梁長手方向に配置された鉄筋コンクリート造からなるものである。各主筋11は柱梁接合部12まで延びて定着している。
図1(b)のように、各主筋11は、梁端部19において主筋断面積を縮小した主筋縮小部15を有し、この主筋縮小部15が塑性ヒンジ部を構成する。主筋縮小部15は、梁10と柱梁接合部12との境界13から所定長さLを有し、この所定長さLが塑性ヒンジ長Lである。
図1(a)(b)では、梁10の梁端部19における塑性ヒンジ部15の主筋11の断面積は、ヒンジを生じない部分と比べ相対的に小さく、また、塑性ヒンジ長Lは部材長に比べかなり短くなっている。
図1(a)(b)における塑性ヒンジ長Lは、梁成をHとすると、H×1/2以下であることが好ましい。塑性ヒンジ長LがH×1/2以下の範囲内であることで、降伏領域を構造的に問題のない範囲で短くして降伏に至るまでの部材剛性はほとんど変化させずに降伏時の建物変形角を小さくすることができる。すなわち、塑性ヒンジ部15が少なくとも1/150の建物変形角で確実に降伏する。
また、H×1/2以下でかつ構造的に問題のない範囲内で塑性ヒンジ長Lを徐々に小さくした場合、降伏変形角の減少に伴いエネルギーの吸収能力および大地震時における建物変形角(応答)の低減効果は増大し、例えば、塑性ヒンジ部以外の部材において中地震時と同等の応力状態を容易に再現することが可能である。
本実施形態では、塑性ヒンジ部15の断面積を相対的に小さくしない場合と比べ、降伏に至るまでの部材剛性はほとんど変わらず、降伏変形角が小さくなることから、小さい変形の段階から優れたエネルギー吸収性能を示す。すなわち、効率的に減振効果を発揮することができる。このため、本性能を有する建築構造を減振構造と称する。減振構造では、構造部材の断面形状や配筋に工夫を加えるだけで効率的な制振効果が得られるため、通常の耐震構造と比べコスト的に遜色がなく、制振構造や免震構造と比べても意匠・敷地的な条件に制約されない。
なお、一般的に制振構造は、建物がある程度変形しないとダンパー等による減衰効果が発揮されないため、大地震時における建物の揺れは通常の建物(耐震構造)と比べてそれほど変わらないが、柱梁等の構造部材への損傷は低減されるものである。これに対し、本実施形態のような減振構造は、柱梁等の構造部材に工夫を加えることにより、建物の降伏変形角を制御できるため、通常の建物(耐震構造)と比べ大地震時における建物の揺れを大幅に低減できるとともに、柱梁等の構造部材への損傷も低減されるものである。
図2は、本実施形態による減振構造を有する柱梁構造および従来の一般的な設計法による柱梁構造における地震力と建物変形角との履歴曲線を概略的に示すグラフである。従来の一般的な設計による柱梁構造とは、図1のような塑性ヒンジ部15を設けない構造である。図3は図2の建物変形角を説明するための概略図である。
図2に示すように、大地震時に建物に繰り返し荷重が加わった場合、本実施形態の減振構造を有する梁は、梁端部に設けた塑性ヒンジ部において、塑性ヒンジ部のない場合の降伏耐力Qyに対し、降伏耐力2/3Qyで降伏し、履歴曲線aを描きながら変形する。一方、従来の一般的な設計法による梁は、降伏耐力Qyで降伏し、履歴曲線bを描く。本実施形態の柱梁構造は、従来の梁と比べて、図2のcに示すように、部材の降伏に至るまでの剛性はほとんど変わらないため、降伏変形角が小さくなる。ここで、従来の一般的な設計法と対応する降伏変形角を1/150〜1/120とし、このときの降伏耐力Qyに対して本実施形態のように降伏耐力を2/3Qyとすると、その降伏変形角は1/200程度である。すなわち、本実施形態の柱梁構造における塑性ヒンジ部は、降伏変形角が少なくとも1/150となるように構成される。なお、建物変形角θnは、図3のように、建物のn階部分の高さをhn、地震時のn階部分の水平方向変位をδnとすると、次式(1)で表される。
θn=δn/hn (n=1,2,3,・・・) (1)
また、エネルギー吸収能力を表す指標としての等価減衰定数heqに関し、図2から両者の等価減衰定数heqを算定すると、本実施形態の柱梁構造に対応するheq´は、従来の一般的な設計法による梁のheqと比べて約1.7倍となる。なお、図2において等価減衰定数heq、heq´は次のようにして求めることができる。
本実施形態のheq´=履歴曲線aで囲まれる実線の面積/点oeiで囲まれる三角形の面積
従来のheq=履歴曲線bで囲まれる破線の面積/点ogiで囲まれる三角形の面積
以上のように、本実施形態によれば、梁端部に塑性ヒンジ部を設け、その降伏変形角を少なくとも1/150と小さくすることにより、従来の一般的な設計法の梁と比べて優れたエネルギー吸収性能を発揮することができ、延いては大地震時における建物変形角(応答)を著しく低減することができる。
本実施形態では、主筋11の降伏が断面積の縮小部15において生じるため、降伏時の曲げ耐力は、塑性ヒンジ部の断面積を相対的に小さくしない場合と比べ小さい。しかし、本実施形態による柱梁構造では、建物変形角が少なくとも1/150の小さな変形より降伏が始まるため、優れたエネルギー吸収性能を示す。このため、図2で説明したように、従来の柱梁構造と比べ大地震時における建物変形角(応答)を著しく低減できるとともに、大きなエネルギー吸収性能を得ることができる。したがって、構造部材の損傷の修復や性能の維持管理を含めたコスト面においても、高い品質を有している。
次に、図4〜図6を参照して第1実施形態の第1〜第4変形例を説明する。図4は第1実施形態の第1変形例を説明するための図1(b)と同様の断面図である。
図4の例は、異径継手を用いて塑性ヒンジ部の主筋断面積を縮小したものである。鉄筋コンクリート造の梁10の主筋11に、梁端部19の近傍において、異径継手部16が設けられている。異径継手部16の図の左端から、梁10と柱梁接合部12との境界13までの主筋11(径が細くなった)の長さが塑性ヒンジ長Lである。本例によれば、建物変形角が少なくとも1/150という小さい変形レベルから優れたエネルギー吸収を図ることができる。
図5は、第1実施形態の第2変形例を説明するための図1(b)と同様の断面図(a)、第3変形例を説明するための図1(b)と同様の断面図(b)、さらに別の変形例を説明するための柱と梁との柱梁接合部を示す要部断面図(c)およびd-d線方向の梁断面図(d)である。
図5(a)の例は、図1の構造において、梁10と柱梁接合部12との境界13に曲げひび割れ誘発目地としてスリット17を設けたものである。図5(b)の例は、図4の構造において、梁10と柱梁接合部12との境界13に曲げひび割れ誘発目地としてスリット17を設けたものである。図5(c)(d)は梁10と柱梁接合部12との両境界13に複数のスリット17を設けたものである。図5(a)(b)の例によれば、コンクリートの損傷低減による更なるエネルギー吸収性能の向上を図ることができる。また、スリット17は、例えば、図5(c)(d)のように、鉄筋の所定のかぶり厚を確保したうえで梁10の矩形断面の上端・下端の中央近傍に設けた、長方形状または台形状の複数のスリットとすることができる。
図6は、第1実施形態の第4変形例を説明するための柱と梁の要部側面図(a)およびb-b線方向の柱断面図(b)である。図6(a)(b)の例は、柱端部の境界33においても曲げひび割れ誘発目地としてスリット37を設けたものである。すなわち、柱30と柱梁接合部12との境界33に、鉄筋の所定のかぶり厚を確保したうえで柱30の矩形断面の各辺の中央近傍に長方形状または台形状の複数のスリット37が設けられている。柱のコンクリートの損傷低減による更なるエネルギー吸収性能の向上を図ることができる。
〈第2実施形態〉
図7は第2実施形態を説明するための図1(b)と同様の断面図である。第2実施形態は、図7のように、鉄筋コンクリート造の梁10において主筋の一部を非定着としたものである。すなわち、鉄筋コンクリート造の梁10の複数本の主筋11,11a,11のうちの中央の主筋11aを、梁10と柱梁接合部12との境界13まで配置し、柱梁接合部12に定着させず、主筋11,11を柱梁接合部12に定着させたものである。この境界13における主筋11、11による定着部18が塑性ヒンジ部を構成する。本実施形態によれば、建物変形角が少なくとも1/150という小さい変形レベルから優れたエネルギー吸収を図ることができる。
上述の第1,第2の実施形態では、鉄筋コンクリート造の柱梁構造において梁端部に塑性ヒンジ部を設けた例を説明したが、同様の塑性ヒンジ部の構成を柱端部に設けることができ、同様の効果を得ることができる。さらに、梁端部および柱端部の双方に塑性ヒンジ部を設けてもよい。
〈第3実施形態〉
図8は、第3実施形態による鉄骨造の梁の梁成方向の断面図(a)およびBB-BB線方向の柱梁接合部近傍の要部断面図(b)である。
図8(a)(b)の柱梁構造は、梁20がH形鋼からなる鉄骨造であり、梁上面20a側および梁下面20b側に水平方向に位置する上下一対のフランジ21,21と、一対のフランジ21,21を結合する垂直方向に位置するウェブ22とから構成される。
図8(b)のように、梁20の上下のフランジ21,21は、梁端部において断面積を縮小した断面縮小部25を有し、この断面縮小部25が塑性ヒンジ部を構成する。断面縮小部25は、梁20と柱梁接合部23との境界24から所定長さL2を有し、この所定長さが塑性ヒンジ長Lである。なお、梁20と柱梁接合部23とは、例えば、溶接により接合される。
また、図8(a)(b)では、梁20の梁端部における塑性ヒンジ部25のフランジ21の断面積は、ヒンジを生じない部分と比べ相対的に小さく、また、塑性ヒンジ長Lは部材長に比べかなり短くなっている。
図8(a)(b)における塑性ヒンジ長Lは、図1(a)(b)の場合と同様に、梁成をHとすると、H×1/2以下であることが好ましい。塑性ヒンジ長LがH×1/2以下の範囲内であることで、降伏領域を構造的に問題のない範囲で短くして降伏に至るまでの部材剛性はほとんど変化させずに降伏時の建物変形角を小さくすることができる。すなわち、塑性ヒンジ部25が少なくとも1/150の建物変形角で確実に降伏する。
本実施形態では、塑性ヒンジ部25の断面積を相対的に小さくしない場合と比べ、降伏に至るまでの部材剛性はほとんど変わらず、降伏変形角が小さくなることから、小さい変形の段階から優れたエネルギー吸収性能を示す。すなわち、効率的に減振効果を発揮することができる。このため、図1(a)(b)の場合と同様の減振構造を有する柱梁構造とすることができる。
また、本実施形態でも、大地震時に建物に繰り返し荷重が加わった場合、図2の履歴曲線aを描きながら変形し、同様のエネルギー吸収能力を示す。すなわち、梁端部に塑性ヒンジ部を設け、その降伏変形角を少なくとも1/150と小さくすることにより、従来の一般的な設計法の梁(鉄骨造)と比べて優れたエネルギー吸収性能を発揮することができ、延いては大地震時における建物変形角(応答)を著しく低減することができる。
本実施形態では、フランジ21の降伏が断面積の縮小部25において生じるため、降伏時の曲げ耐力は、塑性ヒンジ部の断面積を相対的に小さくしない場合と比べ小さい。しかし、本実施形態による柱梁構造では、建物変形角が少なくとも1/150の小さな変形より降伏が始まるため、優れたエネルギー吸収性能を示す。このため、図2で説明したように、従来の柱梁構造(鉄骨造)と比べ大地震時における建物変形角(応答)を著しく低減できるとともに、大きなエネルギー吸収性能を得ることができる。したがって、構造部材の損傷の修復や性能の維持管理を含めたコスト面においても、高い品質を有している。
図9は第3実施形態の変形例を説明するための図8(a)と同様の梁の断面図(a)、同じく図8(b)と同様のbb-bb線方向の断面図(b)およびcc-cc線方向の断面図(c)である。図9(a)〜(c)のように、本例はH形鋼からなる鉄骨造の梁20において、梁端部より塑性ヒンジ部27を除いてフランジ21,21を鋼板26,26で補強したものである。すなわち、H形鋼からなる梁20のフランジ21,21の上面および下面に補強鋼板26,26を配置し、溶接やボルトナット等で取り付ける。このとき、柱梁接合部23と梁20との境界24から所定長さLだけ鋼板26,26を短くする。この所定長さLの部分が塑性ヒンジ部27を構成し、所定長さLが塑性ヒンジ長Lである。本実施形態によれば、補強鋼板26とフランジ21との板厚合計と同厚のフランジ厚を有する梁と比べて、建物変形角が少なくとも1/150という小さい変形レベルから優れたエネルギー吸収を図ることができる。
なお、上述の第3の実施形態では、鉄骨造の柱梁構造において梁端部に塑性ヒンジ部を設けた例を説明したが、同様の塑性ヒンジ部の構成を柱端部に設けることができ、同様の効果を得ることができる。さらに、梁端部および柱端部の双方に塑性ヒンジ部を設けてもよい。
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、図1,図4〜図7の鉄筋コンクリート造による梁の構成は、図示のものに限定されず、たとえば、主筋の本数等は適宜変更可能であることはもちろんである。
本発明の減振構造を有する柱梁構造によれば、従来の耐震構造と比べコスト的に遜色がなく、従来の制振構造や免震構造と比べても意匠・敷地的な条件に制約されず、また、小さな変形レベルから大きなエネルギーを吸収し効率的に減振効果を発揮可能な減振構造を有するとともにコスト的に有利な建物構造を実現することができる。
10 梁
11,11a 主筋
12 梁接合部
13 境界
15 主筋縮小部、塑性ヒンジ部
16 異径継手部
17 スリット
18 定着部、塑性ヒンジ部
19 梁端部
30 柱
37 スリット
20 梁
21 フランジ
22 ウェブ
23 柱梁接合部
24 境界
25 断面縮小部、塑性ヒンジ部
26 補強鋼板
27 塑性ヒンジ部
L 塑性ヒンジ長
H 梁成

Claims (8)

  1. 建物の梁端部および/または柱端部に塑性ヒンジ部を設け、
    前記塑性ヒンジ部における剛性および/または降伏耐力が前記塑性ヒンジ部以外の剛性および/または降伏耐力と比べて小さくなるように前記梁端部および/または前記柱端部を構成することで減振構造を設け、
    前記塑性ヒンジ部は、前記塑性ヒンジ部における降伏が前記建物の変形角が少なくとも1/150で始まるように構成されることを特徴とする減振構造を有する柱梁構造。
  2. 建物の梁端部および/または柱端部に塑性ヒンジ部を設け、
    前記塑性ヒンジ部における剛性および/または降伏耐力が前記塑性ヒンジ部以外の剛性および/または降伏耐力と比べて小さくなるように前記梁端部および/または前記柱端部を構成することで減振構造を設け、
    前記塑性ヒンジ部の長さを梁端から梁成の1/2以下および/または柱端から柱成もしくは柱幅の1/2以下とすることを特徴とする減振構造を有する柱梁構造。
  3. 前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、
    前記塑性ヒンジ部における主筋の断面積を塑性ヒンジが生じない部分の主筋の断面積と比べ相対的に小さくする請求項1または2に記載の減振構造を有する柱梁構造。
  4. 前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、
    前記梁および/または柱の一部の主筋のみが前記柱梁接合部に定着する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の減振構造を有する柱梁構造。
  5. 前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、
    前記梁端部と前記柱梁接合部との境界において、鉄筋の所定のかぶり厚を確保したうえで梁幅の中央近傍に曲げひび割れ誘発目地を設ける請求項1乃至4のいずれか1項に記載の減振構造を有する柱梁構造。
  6. 前記柱と前記梁とが、鉄筋コンクリート造であり、柱梁接合部で接合し、
    前記柱端部と前記柱梁接合部との境界において、鉄筋の所定のかぶり厚を確保したうえで柱幅および/または柱成の中央近傍に曲げひび割れ誘発目地を設ける請求項1乃至5のいずれか1項に記載の減振構造を有する柱梁構造。
  7. 前記梁と前記柱とが鉄骨造であり、
    前記塑性ヒンジ部における梁部材および/または柱部材の断面積を塑性ヒンジが生じない部分と比べ相対的に小さくする請求項1または2に記載の減振構造を有する柱梁構造。
  8. 前記梁と前記柱とが鉄骨造であり、
    前記塑性ヒンジ部以外で梁部材および/または柱部材を鋼板で補強する請求項1または2に記載の減振構造を有する柱梁構造。
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