JP2017176937A - 塗膜乾燥方法および塗膜乾燥炉 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗膜の乾燥において、塗膜の乾燥時間を短縮し、省エネルギーを図るとともに、乾燥後の塗膜の品質を確保する。
【解決手段】ワークの表面に塗装により形成された塗膜を乾燥するための塗膜乾燥方法であって、熱風および熱源の少なくともいずれかにより塗膜の温度を上昇させて塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥工程(S10)と、過熱水蒸気により、表面部が硬化した塗膜の温度を、第1の乾燥工程よりも速い昇温速度で、塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させる第2の乾燥工程(S20)とを含む。
【選択図】図2
【解決手段】ワークの表面に塗装により形成された塗膜を乾燥するための塗膜乾燥方法であって、熱風および熱源の少なくともいずれかにより塗膜の温度を上昇させて塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥工程(S10)と、過熱水蒸気により、表面部が硬化した塗膜の温度を、第1の乾燥工程よりも速い昇温速度で、塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させる第2の乾燥工程(S20)とを含む。
【選択図】図2
Description
本発明は、例えば自動車の車体等のワークの表面に塗装により形成された塗膜の乾燥に用いられる塗膜乾燥方法および塗膜乾燥炉に関する。
従来、自動車の車体の表面に塗装により形成された塗膜の乾燥は、熱風を用いた乾燥炉により行われている。乾燥炉においては、例えば山型状の通路が構成され、かかる通路内に、赤外線ヒータ等の熱源によって生成された熱風による加熱空間が形成される(例えば、特許文献1参照。)。塗装された車体がコンベヤ等の搬送装置によって搬送されながら乾燥炉内(通路内)の加熱空間を通過することで、塗膜の乾燥、つまり塗膜の焼付けが行われる。特許文献1には、乾燥炉内の加熱空間において、乾燥の対象物であるワークを予熱するゾーンと、ワークを所定の温度に保つゾーンとを有し、これらのゾーンを高低差をつけて配置するとともに、ゾーン毎に温度等を制御する乾燥炉が開示されている。
車体の塗膜の乾燥においては、塗膜を硬化させるため、車体において塗膜が形成された部位の全体の温度を、所定の乾燥温度まで上昇させる必要がある。しかしながら、従来の熱風を用いた乾燥によれば、車体の部位によって温度上昇の度合に差が発生してしまうため、温度上昇が最も緩やかな部位、つまり温度上昇が最も遅い部位に合わせて乾燥時間を設定する必要がある。このため、加熱しやすい部位(温度上昇が速い部位)にとって余剰な乾燥時間が発生しており、その分の熱エネルギーは無駄となるため、エネルギー効率の面で改善の余地がある。
そこで、車体の塗膜の乾燥に、過熱水蒸気を用いることが考えられる(例えば、特許文献2参照。)。過熱水蒸気は熱風に比べて比熱が高いこと等から、過熱水蒸気を用いることで、車体の温度上昇の速度を速くすることができ、塗膜の乾燥時間を短縮させることができる。車体が乾燥炉内を搬送されながら塗膜の乾燥が行われる構成において、乾燥時間の短縮は、乾燥炉の炉長の短縮に繋がる。なお、特許文献2には、電着塗装が施された車体を過熱水蒸気により乾燥させる技術が開示されている。
しかしながら、過熱水蒸気を用いて塗膜を乾燥させた場合、熱風による乾燥の場合との比較において、乾燥後の塗膜表面の光沢等といった品質を維持するのが困難であるという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、塗膜の乾燥時間を短縮することができ、省エネルギーを図ることができるとともに、乾燥後の塗膜の品質を確保することができる塗膜乾燥方法および塗膜乾燥炉を提供することを目的とする。
本発明に係る塗膜乾燥方法は、ワークの表面に塗装により形成された塗膜を乾燥するための塗膜乾燥方法であって、熱風および熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を上昇させて前記塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥工程と、過熱水蒸気により、表面部が硬化した前記塗膜の温度を、前記第1の乾燥工程よりも速い昇温速度で、前記塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させる第2の乾燥工程と、を含むものである。
また、本発明の他の態様に係る塗膜乾燥方法は、前記第2の乾燥工程の後に、熱風および熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を前記硬化温度まで上昇させ、前記塗膜を完全に硬化させる第3の乾燥工程をさらに含むものである。
また、本発明の他の態様に係る塗膜乾燥方法は、前記第2の乾燥工程の後に、前記第2の乾燥工程により前記塗膜の表面に付着した水分を除去する水分除去工程をさらに含むものである。
また、本発明の他の態様に係る塗膜乾燥方法は、前記水分除去工程は、前記塗膜の表面にエアを吹き付けることにより、前記水分を除去するものである。
本発明に係る塗膜乾燥炉は、ワークの表面に塗装により形成された塗膜を乾燥するための塗膜乾燥炉であって、入口および出口を有し、前記ワークを通過させる炉内通路を備え、前記炉内通路は、該炉内通路内に供給される熱風および前記炉内通路内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を上昇させて前記塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥ゾーンと、前記第1の乾燥ゾーンよりも前記出口側に設けられ、過熱水蒸気発生装置により発生させた過熱水蒸気により、表面部が硬化した前記塗膜の温度を、前記第1の乾燥ゾーンよりも速い昇温速度で、前記塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させる第2の乾燥ゾーンと、を有するものである。
また、本発明の他の態様に係る塗膜乾燥炉は、前記第2の乾燥ゾーンよりも前記出口側に設けられ、前記炉内通路内に供給される熱風および前記炉内通路内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を前記硬化温度まで上昇させ、前記塗膜を完全に硬化させる第3の乾燥ゾーンをさらに有するものである。
また、本発明の他の態様に係る塗膜乾燥炉は、前記第2の乾燥ゾーンよりも前記出口側に設けられ、エアノズルから噴出するエアを前記塗膜の表面に吹き付けることにより、前記第2の乾燥ゾーンにより前記塗膜の表面に付着した水分を除去する水分除去ゾーンをさらに含むものである。
本発明によれば、塗膜の乾燥時間を短縮することができ、省エネルギーを図ることができるとともに、乾燥後の塗膜の品質を確保することができる。
本発明は、例えば自動車の車体等のワークの表面に塗装により形成された塗膜を乾燥するに際し、塗膜の乾燥の初期の段階では熱風によって塗膜の表面部(表層部)を硬化させ、その後、過熱水蒸気を用いることで塗膜を急昇温させるというものである。これにより、本発明は、乾燥後(硬化後)の塗膜の品質を確保しながら、過熱水蒸気の特性を活かして塗膜の乾燥時間の短縮を図り、エネルギー効率の向上を図ろうとするものである。
本発明の実施の形態では、本発明に係る塗膜乾燥方法および塗膜乾燥炉を、自動車の車体の表面に塗装により形成された塗膜の乾燥に適用した場合を例にとって説明する。ただし、本発明に係る塗膜乾燥方法および塗膜乾燥炉は、このような適用例に限定されることなく、自動車の部品その他機械部品等の塗膜を乾燥するための技術として広く適用可能である。
自動車の製造ラインにおいては、自動車の車体に塗装を施す塗装工程が行われた後、車体の表面に塗装により形成された塗膜を乾燥させて硬化させることが行われる。自動車の車体の塗装工程としては、例えば、電着塗料のプールに車体を浸けることで行われる電着塗装と、電着塗装の塗面を均す中塗り塗装と、ベース塗装およびクリア塗装を含む上塗り塗装との各塗装の工程が順に行われる。本実施形態では、中塗り塗装の後に行われる乾燥工程における本技術の適用例を説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る塗膜乾燥炉1は、工場内の製造ラインにおいて、自動車の車体2の塗装工程としての中塗り塗装の工程の後工程として行われる乾燥工程(焼付け工程)の設備として設けられている。すなわち、本実施形態に係る塗膜乾燥炉1は、自動車の車体2をワークとし、車体2の表面に中塗り塗装により形成された塗膜を乾燥するためのものである。
本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る塗膜乾燥炉1は、工場内の製造ラインにおいて、自動車の車体2の塗装工程としての中塗り塗装の工程の後工程として行われる乾燥工程(焼付け工程)の設備として設けられている。すなわち、本実施形態に係る塗膜乾燥炉1は、自動車の車体2をワークとし、車体2の表面に中塗り塗装により形成された塗膜を乾燥するためのものである。
塗膜乾燥炉1は、車体2を通過させる炉内通路3を備える。炉内通路3は、一端側に設けられた入口4および他端側に設けられた出口5を有するトンネル状の炉本体により構成されている。炉内通路3は、全体として山型状の通路形状をなすように構成されている。詳細には、炉内通路3は、入口4から出口5にかけて、入口4が臨む搬入通路部6と、車体2を加熱して塗膜を乾燥させる加熱通路部7と、出口5が臨む搬出通路部8とを順に有し、通路の中間部を構成する加熱通路部7を、搬入通路部6および搬出通路部8よりも高い位置に位置させることで、全体として山型状に構成されている。なお、炉内通路3を構成する炉本体の周囲には、炉内の温度を保持するための断熱材等が設けられている。
搬入通路部6においては、入口4から通路内に搬入された車体2が、炉内通路3における進行方向(図1において右方向)に水平状に搬送される。加熱通路部7においては、その内部に車体2表面の塗膜を乾燥させるための加熱空間が形成されている。加熱通路部7の入口4側には、車体2の進行方向について上り傾斜状の通路部7aが設けられており、加熱通路部7の出口5側には、車体2の進行方向について下り傾斜状の通路部7bが設けられている。搬出通路部8においては、加熱通路部7を経た車体2が、水平状に搬送されて出口5から通路外に搬出される。
車体2は、炉内通路3の通路形状に沿った所定の移動経路に沿って搬送され、炉内通路3内を通過する。このため、塗膜乾燥炉1においては、炉内通路3内には、車体2を搬送するための搬送装置9が設けられている。
搬送装置9は、炉内通路3の上手側(入口4側)から下手側(出口5側)に連続するように設けられたコンベヤ装置であり、炉内通路3内において、搬入通路部6、加熱通路部7、および搬出通路部8からなる炉内通路3の山型の通路形状に沿って配設されている。搬送装置9は、車体2を載置支持するコンベヤパレット10を移動させることで、コンベヤパレット10上の車体2を所定の速度で搬送する。
車体2は、その前側を搬送装置9の搬送による進行方向に向けてコンベヤパレット10上に載っている。ただし、コンベヤパレット10上における車体2の向きは特に限定されない。また、炉内通路3に対する車体2の搬送装置の構成は、特に限定されない。車体2の搬送装置としては、例えば、車体2を吊るした状態で支持するハンガーをコンベヤ等で移動させる構成等のものであってもよい。
以上のような構成の塗膜乾燥炉1において、中塗り塗装の工程を経て表面に塗膜が形成された車体2が、搬送装置9による搬送移動によって、塗膜未硬化状態(塗膜未乾燥状態)で、入口4から炉内通路3内に搬入される。炉内通路3内に搬入された車体2は、搬送装置9により所定の速度で移動しながら、搬入通路部6から加熱通路部7を経ることで、塗膜の乾燥処理を受け、塗膜が完全に硬化した状態で、出口5から炉内通路3外に搬出される。
以上のような構成を備えた本実施形態の塗膜乾燥炉1において、炉内通路3は、加熱通路部7における加熱空間のゾーンとして、上手側から下手側にかけて順に設けられた第1の乾燥ゾーン11と、第2の乾燥ゾーン12と、第3の乾燥ゾーン13とを有する。隣り合うゾーン間は、例えば、炉内通路3内にエアカーテンを形成することにより仕切られている。
第1の乾燥ゾーン11は、炉内通路3内に供給される熱風および炉内通路3内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより車体2の塗膜(以下単に「塗膜」ともいう。)の温度を上昇させて塗膜の表面部(表層部)を硬化させるゾーンである。第1の乾燥ゾーン11は、加熱通路部7において上手側に設けられた最初の加熱ゾーンであり、塗膜の乾燥工程における初期乾燥を行う。
第1の乾燥ゾーン11においては、炉内通路3の第1の乾燥ゾーン11内に供給される熱風および第1の乾燥ゾーン11内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより塗膜の乾燥が行われる。第1の乾燥ゾーン11では、塗膜の乾燥に過熱水蒸気は用いられない。
炉内通路3内に熱風を供給するための構成としては、公知の構成が適宜用いられる。かかる構成としては、例えば次のような構成が挙げられる。
図1に示すように、炉内通路3の外部にバーナ14および熱交換器15が設けられている。外部の空気を導入するバーナ14の燃焼により得られた燃焼ガスが熱交換器15に導かれ、熱交換器15における熱交換により、加熱空気つまり熱風が生成される。バーナ14および熱交換器15により生成された熱風は、ファン(ブロア)16が設けられた送風ダクト17により導かれ、炉内通路3内の例えば天井部等の所定の位置に一または複数設けられた吹出口(図示略)から吹き出される。送風ダクト17の一端側は炉内通路3内の吹出口に接続され、送風ダクト17の他端側は熱交換器15の出口側に接続されている。
炉内通路3内においては、例えば吹出口と対向する位置に、一または複数の吸込口(図示略)が設けられている。吸込口には、循環ダクト18の一端側が接続されており、循環ダクト18の他端側は、熱交換器15の入口側に接続されている。炉内通路3内の空気は、吸込口から吸い込まれ、循環ダクト18を介してファン16により循環させられたり排気されたりする。
また、炉内通路3内に設けられる熱源としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲンランプ等の赤外線ヒータ19が用いられる。赤外線ヒータ19は、例えば、炉内通路3の通路の長手方向に沿うように炉内通路3の内壁面に適宜配設される。
以上のように第1の乾燥ゾーン11内を加熱して塗膜を乾燥させるための熱風および熱源については、熱風および熱源のいずれか一方のみが用いられてもよいし、熱風および熱源の両方が用いられてもよい。第1の乾燥ゾーン11において、車体2の塗膜の表面部のみを硬化させることは、炉内の温度や熱風や熱源の温度等による塗膜の温度、乾燥時間等を指標として、塗膜の性質等に応じた調整により行われる。なお、第1の乾燥ゾーン11において、熱風の温度は、例えば200℃程度であり、炉内通路3内の温度は、例えば150〜250℃程度の温度に保持される。
第2の乾燥ゾーン12は、第1の乾燥ゾーン11よりも出口5側に設けられ、過熱水蒸気発生装置20により発生させた過熱水蒸気により、表面部が硬化した塗膜の温度を、第1の乾燥ゾーン11よりも速い昇温速度で、塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させるゾーンである。第2の乾燥ゾーン12は、加熱通路部7において第1の乾燥ゾーン11に対して下手側に隣り合うように設けられた加熱ゾーンであり、塗膜の乾燥工程における中期乾燥を行う。
第2の乾燥ゾーン12においては、過熱水蒸気発生装置20により生成された過熱水蒸気により塗膜の乾燥が行われる。すなわち、第2の乾燥ゾーン12においては、第1の乾燥ゾーン11により表層部が硬化した塗膜を過熱水蒸気によりさらに加熱して急昇温させ、塗膜の乾燥が進められる。
炉内通路3内に過熱水蒸気を供給するための構成としては、過熱水蒸気発生装置20を含み、公知の構成が適宜用いられる。かかる構成としては、例えば次のような構成が挙げられる。
図1に示すように、炉内通路3の外部に過熱水蒸気発生装置20が設けられている。過熱水蒸気発生装置20は、誘導加熱等により、給水装置21から供給された水を水蒸気に変え、過熱水蒸気を生成する。過熱水蒸気発生装置20により生成された過熱水蒸気は、過熱水蒸気供給ダクト22を介して、炉内通路3内の所定の位置に設けられた一または複数の吹出ノズル(図示略)から吹き出される。第2の乾燥ゾーン12内は、吹出ノズルから供給される過熱水蒸気が雰囲気として充満した状態となっている。
また、第2の乾燥ゾーン12においては、炉内通路3内の過熱水蒸気を循環させるための循環ダクト23が設けられている。循環ダクト23には、ファン(ブロア)24およびヒータ装置25が設けられている。循環ダクト23の一端側および他端側は、それぞれ炉内通路3内と連通接続されており、ファン24の動作によって、炉内通路3内の過熱水蒸気が循環ダクト23の一端側から吸い出される。吸い出された過熱水蒸気は、ヒータ装置25により加熱され、循環ダクト23の他端側から炉内通路3内に循環供給される。なお、第2の乾燥ゾーン12においては、炉内通路3内の空気を外部に排出する排気ダクトが適宜設けられる。
過熱水蒸気によれば、熱風や熱源等との比較において、車体2の塗膜の温度を急昇温させることができる。ここで、過熱水蒸気の特性等について説明する。
過熱水蒸気とは、100℃で蒸発した飽和水蒸気を常圧でさらに高温加熱した無色透明のH20ガスである。過熱水蒸気加熱は、次のような特性を有する。過熱水蒸気は、大きな熱容量を有し、加熱媒体として優れている(比熱が熱風の約2倍である。)。伝熱作用は熱伝導、放射、凝縮伝達の複合であることから、熱伝導が主体の熱風に比べ、伝熱性が高い。低温部に優先的に凝縮する特性により、加熱ムラが抑制される。常温での利用が可能であるため、安全に使用できる。無害、無毒性である。雰囲気の酸素濃度を1%以下にすることが可能なため、材料の酸化が防止できる(閉空間のみ)。過熱蒸気の水分と熱による加水分解で有機物を低分子化してガス化できる。
上記のとおり過熱水蒸気加熱によれば、熱風に比べて高い伝熱性が得られる。特に、被加熱物の表面で過熱水蒸気が凝縮する際に生じる凝縮熱は、539[cal/g]と大きく、被加熱物に大量の熱を与えることができるため、急速に加熱することが可能となる。このため、第2の乾燥ゾーン12においては、過熱水蒸気を用いた加熱を行うことで、塗膜の温度を急昇温させることができる。
第2の乾燥ゾーン12において、塗膜の温度は、塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度である。ここで、塗膜についての所定の硬化温度は、塗料の性質等にもよるが、例えば約140℃である。
以上のように、第2の乾燥ゾーン12においては、第1の乾燥ゾーン11により表面部が硬化された塗膜を、過熱水蒸気により急昇温させて塗膜を硬化することが行われる。なお、第2の乾燥ゾーン12において、過熱水蒸気の温度は、例えば200〜300℃であり、炉内通路3内の温度は、例えば150〜250℃程度の温度に保持される。
第3の乾燥ゾーン13は、第2の乾燥ゾーン12よりも出口5側に設けられ、炉内通路3内に供給される熱風および炉内通路3内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより塗膜の温度を塗膜の硬化温度まで上昇させ、塗膜を完全に硬化させるゾーンである。第3の乾燥ゾーン13は、加熱通路部7において第2の乾燥ゾーン12に対して下手側に隣り合うように設けられた加熱ゾーンであり、塗膜の乾燥工程における後期乾燥を行う。
第3の乾燥ゾーン13においては、第1の乾燥ゾーン11と同様に、過熱水蒸気は用いられず、炉内通路3の第3の乾燥ゾーン13内に供給される熱風および第3の乾燥ゾーン13内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより塗膜の乾燥が行われる。したがって、第3の乾燥ゾーン13において、炉内通路3内に熱風を供給するための構成としては、例えば、第1の乾燥ゾーン11に熱風を供給するための構成が共用されたり、第1の乾燥ゾーン11と同様の構成が第3の乾燥ゾーン13に対して設けられたりする。
図1に示す例においては、第1の乾燥ゾーン11と同様の構成が第3の乾燥ゾーン13に対して設けられている。これらの構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、炉内通路3内に設けられる熱源としても、第1の乾燥ゾーン11と同様に赤外線ヒータ19が設けられている。
第3の乾燥ゾーン13においては、車体2の塗膜を最終的に完全に硬化させるため、塗膜硬化条件を満たすように、塗膜の温度を硬化温度以上まで昇温させ、その温度を所定の時間保持することが行われる。このため、本実施形態の塗膜乾燥炉1において、第3の乾燥ゾーン13の炉長は、第1の乾燥ゾーン11および第2の乾燥ゾーン12よりも長い。
以上のように、第3の乾燥ゾーン13においては、第2の乾燥ゾーン12により急昇温された塗膜を、第1の乾燥ゾーン11と同様に熱風および熱源の少なくともいずれかを用いて完全硬化させることが行われる。なお、第3の乾燥ゾーン13においては、第1の乾燥ゾーン11と同様に、熱風の温度は、例えば200℃程度であり、炉内通路3内の温度は、例えば150〜250℃程度の温度に保持される。
以上のような構成を備えた本実施形態の塗膜乾燥炉1により行われる塗膜乾燥方法について、図2に示すフロー図、および図3に示す塗膜温度上昇のイメージのグラフを示す図を用いて説明する。なお、図3に示すグラフにおいて、横軸は時間(塗膜の昇温時間)[分]を示し、縦軸は塗膜の温度[℃]を示す。
本実施形態に係る塗膜乾燥方法は、ワークとしての車体2の表面に中塗り塗装により形成された塗膜を乾燥するためのものである。したがって、まず、中塗りの塗装の工程により表面に塗膜が形成された車体2が、搬送装置9により搬送され、塗膜未硬化状態で、入口4から炉内通路3内に進入する(図1、矢印A1参照)。
炉内通路3内に進入した車体2は、搬入通路部6を経て加熱通路部7の通路部7aを上り第1の乾燥ゾーン11に達する。第1の乾燥ゾーン11においては、上述したように、塗膜表面を硬化させるため、熱風や赤外線ヒータなどの熱源による初期乾燥が行われる。すなわち、第1の乾燥ゾーン11において行われる乾燥工程が、熱風および熱源の少なくともいずれかにより塗膜の温度を上昇させて塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥工程(図2、S10)に相当する。
図3に示すグラフG1において、昇温時間0〜t1[分]の時間範囲D1が、第1の乾燥工程の時間帯を示す。第1の乾燥工程では、その開始時(0[分])で、約30℃の塗膜の温度の上昇が開始し、第1の乾燥工程の開始からt1[分](例えば3[分])経過後、塗膜の温度が約50[℃]に達する。
このように、塗膜の温度が約30℃から徐々に上昇して約50℃に達することで、塗膜の表面部が硬化する。つまり、本実施形態に係る第1の乾燥工程において、塗膜の表面部のみが硬化する温度は約50[℃]である。第1の乾燥工程を終えた時点では、塗膜の表面の硬化部分以外の部分、つまり塗膜の硬化した表層部の内部は未硬化状態である。第1の乾燥工程において、塗膜の表面部のみを硬化させることは、炉内の温度や熱風や熱源の温度等による塗膜の温度、乾燥時間等を指標として、塗膜の性質等に応じた調整により行われる。
続いて、第1の乾燥ゾーン11を経た車体2は、第2の乾燥ゾーン12に進入する。第2の乾燥ゾーン12においては、上述したように、過熱水蒸気による塗膜の急昇温(例えば100[℃]程度まで)が実施される。すなわち、第2の乾燥ゾーン12において行われる乾燥工程が、過熱水蒸気により、表面部が硬化した塗膜の温度を、第1の乾燥工程よりも速い昇温速度で、塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させる第2の乾燥工程(図2、S20)に相当する。
図3に示すグラフG1において、昇温時間t1〜t2[分]の時間範囲D2が、第2の乾燥工程の時間帯を示す。第2の乾燥工程では、第1の乾燥工程の終了時(t1[分])で約50℃の塗膜の温度が急勾配で上昇し、第1の乾燥工程の開始からt2[分](例えば5[分])経過後、塗膜の温度が約100[℃]に達する。
このように、塗膜の温度が約50℃から上昇して約100℃に達することで、表面部が硬化した塗膜の硬化が進む。つまり、本実施形態に係る第2の乾燥工程において、塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度であって、過熱水蒸気により急上昇させることで塗膜が達する温度は約100[℃]である。第2の乾燥工程を終えた時点では、塗膜は不完全な硬化状態にある。
なお、第2の乾燥工程において、第2の乾燥ゾーン12における過熱水蒸気の水分量[%]については、特に限定されるものではないが、昇温の速度を速くして高温の状態を得る観点からは、過熱水蒸気の水分量[%]は多い方が好ましい。例えば、水分量60〜100[%]が好ましく、より好ましくは水分量100[%]である。この点、過熱水蒸気の水分量[%]が多いほど、初期における塗膜の温度上昇が速く、高温になるという実験結果が得られている。具体的には、水分量40[%]の場合に、12〜14[sec]で約65[℃]、水分量80[%]の場合に、9〜10[sec]で約90[℃]という実験結果が得られている。
そして、第2の乾燥ゾーン12を経た車体2は、第3の乾燥ゾーン13に進入する。第3の乾燥ゾーン13においては、上述したように、塗膜の硬化条件である硬化温度以上まで熱風や赤外線ヒータなどにより塗膜を昇温させ、その温度状態のまま塗膜硬化時間を確保し、塗膜を完全硬化させることが行われる。すなわち、第3の乾燥ゾーン13において行われる乾燥工程が、第2の乾燥工程の後に、熱風および熱源の少なくともいずれかにより塗膜の温度を硬化温度まで上昇させ、塗膜を完全に硬化させる第3の乾燥工程(図2、S30)に相当する。
図3に示すグラフG1において、昇温時間t2〜t3[分]の時間範囲D3が、第3の乾燥工程の時間帯を示す。第3の乾燥工程では、第2の乾燥工程の終了時(t2[分])で約100℃の塗膜の温度が上昇し、塗膜の温度が所定の硬化温度である完全硬化温度(約140[℃])に達する。第3の乾燥工程では、塗膜の温度が硬化温度以上の状態が、塗膜硬化条件としての所定の時間(例えば20分程度)の間保持される。なお、第3の乾燥工程において塗膜の温度が硬化温度に達した後も、塗膜の温度は他の乾燥工程に対して比較的緩やかな勾配で上昇する。
このように、塗膜の温度が約100℃から上昇して完全硬化温度である約140℃に達し、その温度以上の状態が所定の時間以上保持されることで、塗膜が完全に硬化する。つまり、本実施形態において、塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度は約140[℃]である。
第3の乾燥ゾーン13における第3の乾燥工程を経た車体2は、塗膜が完全に硬化した状態で、加熱通路部7の通路部7bを下り、搬出通路部8を通過して出口5から炉内通路3外へと進出する(図1、矢印A2参照)。炉内通路3外に出た車体2は、例えば上塗り塗装の工程等の次の工程へと進む。
以上のような本実施形態の塗膜乾燥炉1および塗膜乾燥方法によれば、塗膜の乾燥時間を短縮することができ、エネルギー効率を向上させることができるとともに、乾燥後の塗膜の品質を確保することができる。このような効果について具体的に説明する。
まず、塗膜の乾燥時間の短縮に関しては、塗膜の乾燥の工程において全体を通じて熱風や熱源のみによる乾燥を行った場合との比較において、本実施形態に係る乾燥技術によれば、熱風に比べて比熱が高く伝熱性が高い過熱水蒸気を用いることにより、塗膜の昇温時間を短くすることができる。
図3において、本実施形態に係る塗膜の温度上昇のイメージを示すグラフG1に対する比較例として、塗膜の乾燥の工程において全体を通じて熱風や熱源のみによる乾燥を行った場合の塗膜の温度上昇のイメージを、破線のグラフG2で示す。つまり、比較例は、本実施形態に係る塗膜の乾燥の工程に対し、塗膜の乾燥時間、つまり車体2の搬送速度と塗膜乾燥炉1の加熱部分の炉長を同じとし、全体として、本実施形態に係る第1の乾燥工程等のように過熱水蒸気を用いずに熱風や熱源による乾燥を行った場合の例である。
図3のグラフG2に示すように、比較例の場合、塗膜の温度は、乾燥の開始時(0[分])における温度(約30℃)から、塗膜の完全硬化温度(約140℃)まで、一定の昇温速度で上昇している。これに対し、グラフG1に示すように、本実施形態の乾燥技術によれば、第2の乾燥工程として過熱水蒸気を用いた乾燥を行っていることから、塗膜の温度が完全硬化温度に達するまでの時間を短くすることができる。
具体的には、図3に示すように、本実施形態に係るグラフG1および比較例のグラフG2について、塗膜の温度が完全硬化温度に達する時間をそれぞれta[分]、tb[分]とした場合、tb−ta[分]の時間分(時間範囲T1参照)、乾燥時間が短縮されている。こうした塗膜の乾燥時間の短縮は、実際の自動車の製造ラインにおいては、例えば、比較例の乾燥方法の場合に全体で40分程度となるときに、5分程度の短縮となると考えられ、大幅な時間短縮が図られることになる。
このように、本実施形態の乾燥技術によれば、過熱水蒸気による急昇温ゾーンを取り入れることにより、塗膜硬化条件である所定の硬化温度まで到達する時間を短縮することができる。これにより、炉長の短縮が可能となり、使用ガス量の低減を図ることができ、エネルギー費の低減が可能となる。炉長の短縮は、工場内におけるスペースの有効活用に貢献する。
また、過熱水蒸気は、上述のとおり低温部に優先的に凝縮する特性を有することから、乾燥工程において、車体2の部位による温度上昇の度合の差、つまり加熱ムラを抑制することができる。これにより、車体2において加熱しにくい部位(温度上昇が遅い部位)が存在することによる、加熱しやすい部位(温度上昇が速い部位)にとっての余剰な乾燥時間を無くすことができ、エネルギー効率を向上させることができる。なお、車体2において加熱しにくい部位としては、例えば、サイドドアやバックドア等の開閉部(いわゆる蓋物)と、開閉部の縁部が被さる車体フレーム部分との対向面部分が存在する。この対向面部分に形成された塗面同士は、隙間を形成する合わせ面となることから、熱風にさらされにくく、温度上昇が遅い部位となる。
次に、本実施形態の乾燥技術により乾燥後の塗膜の品質が確保されることについて説明する。実際に、塗膜の乾燥の工程の開始当初から過熱水蒸気を用いた場合における乾燥後の塗膜表面の拡大写真を、図4(a)に示す。図4(a)に示す写真は、過熱水蒸気を水分量40[%]として乾燥させた場合の例である。また、図4(b)は、熱風のみにより塗膜の乾燥を行った場合における乾燥後の塗膜表面の拡大写真である。なお、図4(a)、(b)は、いずれも顕微鏡による300倍の拡大写真である。
図4(a)に示すように、塗膜の乾燥の工程の開始当初から過熱水蒸気を用いた場合、塗膜の表面に凝縮水により生じた凹部が斑点状に表れており、塗膜の表面に凹凸が形成されている。この塗膜表面は、マットな質感で艶がなく、外観品質上問題となる。一方、図4(b)に示すように、熱風のみにより塗膜の乾燥を行った場合、塗膜の表面に凹凸は形成されていない。この塗膜表面は、艶があり、外観品質上問題とならない。
そこで、本実施形態の乾燥技術は、過熱水蒸気の凝縮水により乾燥後の塗膜表面に凹凸が形成されることを回避すべく、塗膜の乾燥の工程の初期段階では、第1の乾燥工程(第1の乾燥ゾーン11)によって、塗膜表面の形状に影響を与えない熱風や熱源による乾燥を行うことで、塗膜の表面部を硬化させ、その後、第2の乾燥工程(第2の乾燥ゾーン12)において過熱水蒸気を用いた乾燥を行っている。これにより、上述したような過熱水蒸気の特性を活かして乾燥時間の短縮を図りながら、乾燥後の塗膜の品質について、図4(b)に示すような熱風のみの場合と同等の品質が得ることができ、乾燥後の塗膜の品質を確保することができる。すなわち、第1の乾燥工程(第1の乾燥ゾーン11)における塗膜の表面部の硬化としては、第2の乾燥工程(第2の乾燥ゾーン12)において、塗膜が、過熱水蒸気による影響として、乾燥後の塗膜の形状を変化させる影響を受けない程度に、主に表面側から硬化する塗膜を膜厚方向について部分的に硬化させることが行われる。
また、本実施形態の乾燥技術は、第2の乾燥工程(第2の乾燥ゾーン12)によって過熱水蒸気を用いた乾燥を行った後、第3の乾燥工程(第3の乾燥ゾーン13)によって、塗膜が完全に硬化するまで、熱風や熱源による乾燥を行う。これにより、過熱水蒸気の特性を活かすことができ、エネルギー面で効率的な乾燥を行うことが可能となる。
この点、本実施形態の乾燥技術においては、第3の乾燥工程を行わずに、熱風や熱源により塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥工程を行った後、過熱水蒸気を用いた第2の乾燥により、塗膜を完全に硬化させてもよい。この場合、第2の乾燥工程において塗膜の温度が100[℃]を超えた後、完全硬化温度に至るまでも過熱水蒸気による乾燥が行われることになる。しかしながら、塗膜の温度が100[℃]を超えた状態においては、凝縮伝熱等の点で過熱水蒸気による特性が活かせないため、過熱水蒸気によるメリットは減殺され、逆に熱風や熱源による乾燥の場合に比べてエネルギー費の面で不利となる可能性がある。そこで、上述のとおり、過熱水蒸気による第2の乾燥工程の後に、熱風や熱源による第3の乾燥工程を行うことが、省エネルギーの観点から好ましい。
以上のように、本実施形態の乾燥技術によれば、熱風や熱源よりも均一加熱性と大きな熱容量を有する過熱水蒸気を用いることにより、車体2の部位間の昇温差の縮小と乾燥時間の短縮を達成することができ、エネルギー費の削減を図ることができる。また、塗膜表面の形状に影響を与えない熱風や赤外線ヒータなどの熱源による初期乾燥により塗膜表面の硬化を行うことで、過熱水蒸気による塗膜表面の形状変化を抑制することができ、車両品質に要求される見栄え品質を確保することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る塗膜乾燥方法は、第1実施形態との比較において、第2の乾燥工程の後に、第2の乾燥工程により塗膜の表面に付着した水分を除去する水分除去工程をさらに含む点で異なる。本実施形態については、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については同一の符号を用いて説明を省略する。
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る塗膜乾燥方法は、第1実施形態との比較において、第2の乾燥工程の後に、第2の乾燥工程により塗膜の表面に付着した水分を除去する水分除去工程をさらに含む点で異なる。本実施形態については、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する部分については同一の符号を用いて説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態に係る塗膜乾燥炉51は、炉内通路3の加熱通路部7において、第2の乾燥ゾーン12よりも出口5側に設けられた水分除去ゾーン54を有する。水分除去ゾーン54は、エアノズル55から噴出するエアを車体2の塗膜の表面に吹き付けることにより、第2の乾燥ゾーン12により塗膜の表面に付着した水分を除去するゾーンである。なお、図5においては、第1の乾燥ゾーン11、第2の乾燥ゾーン12、および第3の乾燥ゾーン13のそれぞれに対して設けられる構成の図示を省略している。
本実施形態では、水分除去ゾーン54は、第2の乾燥ゾーン12と第3の乾燥ゾーン13との間に設けられている。つまり、水分除去ゾーン54は、第2の乾燥ゾーン12に対して下手側に隣り合うように、かつ、第3の乾燥ゾーン13に対して上手側に隣り合うように設けられている。水分除去ゾーン54の上手側および下手側それぞれにおけるゾーン間は、例えば、炉内通路3内にエアカーテンを形成することにより仕切られている。
水分除去ゾーン54内には、車体2の塗膜に吹き付けるエアを噴出するエアノズル55が設けられている。エアノズル55は、車体2の塗膜に対するエアの吹き付け位置等により一または複数設けられる。エアノズル55は、炉内通路3の外部から供給されるエアを噴出する。
エアノズル55にエアを供給するための構成としては、公知の構成が適宜用いられる。かかる構成としては、例えば次のような構成が挙げられる。
図5に示すように、炉内通路3の外部にエア供給用の循環ダクト56が設けられている。循環ダクト56には、ファン(ブロア)57およびヒータ装置58が設けられている。循環ダクト56の一端側および他端側は、それぞれ炉内通路3内と連通接続されており、ファン57の動作によって、炉内通路3内の空気が循環ダクト56の一端側から吸い出される。吸い出された空気は、ヒータ装置58により加熱され、循環ダクト56の他端側から炉内通路3内に循環供給される。なお、水分除去ゾーン54においては、炉内通路3内の空気を外部に排出する排気ダクトが適宜設けられる。また、エアノズル55にエアを供給するための構成としては、炉内通路3内の空気を循環させることなく、エアノズル55に対するエアの供給および水分除去ゾーン54からの排気を行う構成であってもよい。
このように、本実施形態の塗膜乾燥炉51においては、エアノズル55に供給されるエアとして、ヒータ装置58により加熱された熱風が供給される。なお、エアノズル55に供給されるエアは、加熱されたものでなくてもよいが、第2の乾燥ゾーン12において塗膜の表面に付着した水分を効率的に除去する観点からは、例えば100[℃]以上の熱風である方が好ましい。水分除去ゾーン54において、熱風の温度は、例えば200℃程度であり、炉内通路3内の温度は、例えば150〜250℃程度の温度に保持される。
また、本実施形態に係る塗膜乾燥炉51において、エアノズル55により車体2の塗膜に吹き付けるエアは、連続的あるいは断続的に吹き付けられる。ここで、エアノズル55からの断続的なエアの噴出は、例えば、循環ダクト56に設けた開閉弁の動作制御により実現される。
以上のような構成を備えた本実施形態の塗膜乾燥炉51により行われる塗膜乾燥方法について、図6に示すフロー図を用いて説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る塗膜乾燥方法においては、第1の乾燥ゾーン11における第1の乾燥工程(S10)、および第2の乾燥ゾーン12における第2の乾燥工程(S20)が行われた後、水分除去ゾーン54において水分除去工程が行われる(S25)。
過熱水蒸気を用いた乾燥によれば、塗膜の表面に凝縮水が付着する。このため、過熱水蒸気を用いた第2の乾燥工程が行われた後には、硬化した塗膜の表面に凝縮水が付着することが考えられる。そこで、水分除去工程では、過熱水蒸気を用いた第2の乾燥工程により塗膜の表面に付着した水分を除去することが行われる。本実施形態では、水分除去工程において、塗膜の表面の水分の除去は、塗膜の表面にエアノズル55から噴出されるエアを吹き付けることにより行われる。
そして、水分除去工程が行われた後、第3の乾燥工程が行われ(S30)、塗膜が完全に硬化した状態となる。
以上のように、本実施形態の乾燥技術によれば、過熱水蒸気を用いる第2の乾燥ゾーン12による第2の乾燥工程の後に、水分除去ゾーン54による水分除去工程を行うことから、第2の乾燥工程の後において、塗膜の昇温速度を速くすることができ、塗膜の乾燥時間を短くすることができ、塗膜の乾燥を効率的に行うことが可能となる。これにより、エネルギー効率の更なる向上を図ることができる。
なお、水分除去工程において、塗膜表面の水分を除去するための方法は、車体2の塗膜に対するエアの吹付けに限定されるものではなく、例えば、ヒータ等の熱源により加熱する方法等であってもよい。また、水分除去工程における塗膜表面の水分の除去としては、塗膜表面の水分を完全に除去する場合に限らず、第2の乾燥工程直後における塗膜表面の水分を、第3の乾燥工程における塗膜表面の水分の蒸発の速さよりも速く減少させる処理であればよい。
また、本実施形態に係る塗膜乾燥炉51の水分除去ゾーン54において、エアノズル55によるエアの吹付けは、例えば、上述したような車体2における加熱しにくい部位に対して重点的に行われることが好ましい。車体2における加熱しにくい部位は、第1の乾燥ゾーン11等において熱風にさらされにくい部位であるため、エアノズル55からのエアについても、他の部位よりエアを受けにくい部位となる。
車体2における加熱しにくい部位としては、例えば、図7(a)におけるA−A位置の部分断面図に相当する図7(b)に示すように、車体2のロッカ61と、ロッカ61に対して上側(図7(b)において上側)かつ車幅方向の外側(図7(b)において右側)から被さるサイドドア62の下縁部との対向面部分が挙げられる。
ロッカ61は、車体2の下部の左右両側において車体2の前後方向を長手方向として配設され、車体2の骨格構造の一部をなす部分である。ロッカ61は、車幅方向の内側(図7(b)において左側)の部分を構成するインナパネル63と、車幅方向外側の部分を構成するアウタパネル64とを有する。ロッカ61のインナパネル63およびアウタパネル64は、いずれも略ハット形状の横断面形状を有し、その横断面形状における開口側を互いに対向させ、略ハット形状の鍔部分に相当するフランジ部同士がスポット溶接等によって互いに固定されることで、横断面において閉断面形状をなす中空状のフレーム部分を構成する。
このようなロッカ61に対し、サイドドア62が、その下縁部における下端内側面部65を、ロッカ61のアウタパネル64に対向させる。サイドドア62の下端内側面部65は、アウタパネル64の外形に沿うように窪んでおり、アウタパネル64の上面部64aおよび外側面部64bのそれぞれに対向する面部65a,65bを有する。そして、例えば、アウタパネル64の上面部64a、およびサイドドア62の下端内側面部65の面部65a,65bが、塗膜66が形成された部位となる。このようにロッカ61とサイドドア62の下縁部との対向面部分に形成された塗面同士は、隙間67を形成する合わせ面となることから、熱風にさらされにくい部位となる。
このようなロッカ61とサイドドア62の下縁部との対向面部分に対し、本実施形態に係る水分除去ゾーン54においては、車体2にエアを吹き付けるエアノズル55が、例えば、図7(b)に示すように、ロッカ61とサイドドア62の下縁部との間の隙間67に対して直接的にエアを吹き入れるに配置されることが好ましい。図7(b)に示す例では、エアノズル55は、そのエアの吹出し方向(矢印F1)を車幅方向内向きの斜め上方向とし、ロッカ61とサイドドア62の下縁部との対向面部分の隙間67に対して下側からエアを吹き付けるように配置されている。
また、車体2における加熱しにくい部位の他の例としては、図7(a)におけるB−B位置の部分断面図に相当する図7(c)に示すように、車体2のセンターピラー71と、センターピラー71の下半部の前部に対して車体2の前側(図7(c)において左側)かつ車幅方向の外側(図7(c)において下側)から被さるサイドドア62の後縁部との対向面部分が挙げられる。
センターピラー71は、ロッカ61の長手方向の略中央部から上方へ向けて延設され、車体2の骨格構造の一部をなす部分である。センターピラー71は、車幅方向の内側(図7(c)において上側)の部分を構成するインナパネル73と、車幅方向外側の部分を構成するアウタパネル74とを有する。センターピラー71のインナパネル73は、板厚方向を略車幅方向(図7(c)において上下方向)とする凹凸状の板状部材である。センターピラー71のアウタパネル74は、略ハット形状の横断面形状を有し、その横断面形状における開口側をインナパネル73に対向させる。センターピラー71のインナパネル73およびアウタパネル74は、前後のフランジ部同士がスポット溶接等によって互いに固定されることで、横断面において閉断面形状をなす中空状のフレーム部分を構成する。
このようなセンターピラー71に対し、サイドドア62が、その後縁部における後端内側面部75を、センターピラー71のアウタパネル74に対向させる。サイドドア62の後端内側面部75は、アウタパネル74の外形に沿うように凹凸状をなし、アウタパネル74の外側面部74aの略前半部における各面部のそれぞれに対向する面部を有する。そして、例えば、アウタパネル74の外側面部74aおよびサイドドア62の後端内側面部75が、塗膜76が形成された部位となる。センターピラー71とサイドドア62の後縁部との対向面部分に形成された塗面同士は、隙間77を形成する合わせ面となることから、熱風にさらされにくい部位となる。
このようなセンターピラー71とサイドドア62の後縁部との対向面部分に対し、本実施形態に係る水分除去ゾーン54においては、車体2にエアを吹き付けるエアノズル55が、例えば、図7(c)に示すように、センターピラー71とサイドドア62の後縁部との間の隙間77に対して直接的にエアを吹き入れるに配置されることが好ましい。図7(c)に示す例では、エアノズル55は、そのエアの吹出し方向(矢印F2)を車幅方向内向きの斜め後方向とし、センターピラー71とサイドドア62の後縁部との対向面部分の隙間77に対して前側からエアを吹き付けるように配置されている。
以上のように、本実施形態に係る塗膜乾燥炉51の水分除去ゾーン54において、エアノズル55によるエアの吹付けを、車体2における加熱しにくい部位に対して重点的に行うことにより、過熱水蒸気により塗膜の表面に生じた水分の除去ムラを低減することができ、塗膜の乾燥をより効率的に行うことが可能となる。なお、車体2における加熱しにくい部位に対して配置されるエアノズル55は、その配置位置に固定された状態で設けられてもよいし、車体2の他の部位に対してもエアの吹付けを行うように所定の移動機構によって移動可能に設けられてもよい。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る塗膜乾燥方法および塗膜乾燥炉は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態においては、自動車の塗装工程として中塗り塗装の後に行われる乾燥工程としての適用例を説明したが、本発明に係る塗膜の乾燥技術は、例えば電着塗装の工程や上塗り塗装としてのクリア塗装の工程等、他の塗装工程の後に行われる塗膜の乾燥工程においても適用することができる。ただし、塗装工程によって、その後に行われる乾燥工程における炉内の温度等は適宜調整される。
1 塗膜乾燥炉
2 車体(ワーク)
3 炉内通路
4 入口
5 出口
11 第1の乾燥ゾーン
12 第2の乾燥ゾーン
13 第3の乾燥ゾーン
19 赤外線ヒータ(熱源)
20 過熱水蒸気発生装置
51 塗膜乾燥炉
54 水分除去ゾーン
55 エアノズル
2 車体(ワーク)
3 炉内通路
4 入口
5 出口
11 第1の乾燥ゾーン
12 第2の乾燥ゾーン
13 第3の乾燥ゾーン
19 赤外線ヒータ(熱源)
20 過熱水蒸気発生装置
51 塗膜乾燥炉
54 水分除去ゾーン
55 エアノズル
Claims (7)
- ワークの表面に塗装により形成された塗膜を乾燥するための塗膜乾燥方法であって、
熱風および熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を上昇させて前記塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥工程と、
過熱水蒸気により、表面部が硬化した前記塗膜の温度を、前記第1の乾燥工程よりも速い昇温速度で、前記塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させる第2の乾燥工程と、を含む
ことを特徴とする塗膜乾燥方法。 - 前記第2の乾燥工程の後に、熱風および熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を前記硬化温度まで上昇させ、前記塗膜を完全に硬化させる第3の乾燥工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の塗膜乾燥方法。 - 前記第2の乾燥工程の後に、前記第2の乾燥工程により前記塗膜の表面に付着した水分を除去する水分除去工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗膜乾燥方法。 - 前記水分除去工程は、前記塗膜の表面にエアを吹き付けることにより、前記水分を除去する
ことを特徴とする請求項3に記載の塗膜乾燥方法。 - ワークの表面に塗装により形成された塗膜を乾燥するための塗膜乾燥炉であって、
入口および出口を有し、前記ワークを通過させる炉内通路を備え、
前記炉内通路は、
該炉内通路内に供給される熱風および前記炉内通路内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を上昇させて前記塗膜の表面部を硬化させる第1の乾燥ゾーンと、
前記第1の乾燥ゾーンよりも前記出口側に設けられ、過熱水蒸気発生装置により発生させた過熱水蒸気により、表面部が硬化した前記塗膜の温度を、前記第1の乾燥ゾーンよりも速い昇温速度で、前記塗膜が完全に硬化する所定の硬化温度以下の温度まで上昇させる第2の乾燥ゾーンと、を有する
ことを特徴とする塗膜乾燥炉。 - 前記第2の乾燥ゾーンよりも前記出口側に設けられ、前記炉内通路内に供給される熱風および前記炉内通路内に設けられた熱源の少なくともいずれかにより前記塗膜の温度を前記硬化温度まで上昇させ、前記塗膜を完全に硬化させる第3の乾燥ゾーンをさらに有する
ことを特徴とする請求項5に記載の塗膜乾燥炉。 - 前記第2の乾燥ゾーンよりも前記出口側に設けられ、エアノズルから噴出するエアを前記塗膜の表面に吹き付けることにより、前記第2の乾燥ゾーンにより前記塗膜の表面に付着した水分を除去する水分除去ゾーンをさらに含む
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の塗膜乾燥炉。
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|---|---|
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20200630 |