JP2017187465A - スーパーコンティニウム光生成光源、スーパーコンティニウム光生成方法、多光子励起蛍光顕微鏡及び多光子励起方法 - Google Patents
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Abstract
Description
スーパーコンティニウム光を生成して出射させる光源(スーパーコンティニウム光生成光源)は、超短パルス光を発振させるパルス光発振部と、非線形光学素子とを備えている。パルス発振部には超短パルスレーザー発振器が使用される場合が多く、非線形光学素子としては非線形ファイバのような導波路型のものが使用されることが多い。パルス光発振部から発振された超短パルス光が導波路に入射すると、導波路内を伝搬する際に自己位相変調、相互位相変調、四光波混合、ラマン散乱などの非線形光学効果により広帯域化し、スーパーコンティニウム光となって出射する。
このような状況ではあるものの、レーザー光としての性質を保持しつつある程度広いスペクトル成分を有するスーパーコンティニウム光の優れた特性は、他の分野において好適に利用できる可能性があると考えられる。
本願発明は、上記の点を解決課題として為されたものであり、新たな用途に利用できるスーパーコンティニウム光を出射するスーパーコンティニウム光生成光源を提供することを目的としている。
超短パルス光を発振するパルス光発振部と、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させる導波路と
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
照射面で対象物を多光子励起可能となるようにスーパーコンティニウム光を出射させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記パルス光発振部及び前記導波路は、ピーク強度が1kW以上100kW以下であるスーパーコンティニウム光を出射させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において3dB以内の波長平坦性を有するスーパーコンティニウム光を出射させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記パルス光発振部は、パルス幅が1ピコ秒以下であって且つ1000nm以上1100nm以下の波長域に中心波長を有する超短パルス光を発振するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4の構成において、前記導波路は、前記超短パルスレーザー光を1パルス内での波長の経時的変化が連続的であるスーパーコンティニウム光にするものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至5の構成において、前記導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域において正常分散特性を示すファイバであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記超短パルスレーザー光の中心波長が、前記正常分散特性を示すファイバの群速度分散スペクトルのピーク波長に対して±50nmの範囲内であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項1乃至5いずれかの構成において、前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるパルス圧縮部を備えたという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項6又は7の構成において、前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるパルス圧縮部を備えたという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、スーパーコンティニウム光を生成して出射させるスーパーコンティニウム光生成源であって、
超短パルス光を発振するパルス光発振部と、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させる導波路と
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるパルス圧縮部を備えたという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項11記載の発明は、スーパーコンティニウム光を生成して出射させるスーパーコンティニウム光生成方法であって、
パルス光発振部により超短パルス光を発振するステップと、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を導波路に入射させ、導波路における非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させるステップと
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
照射面で対象物を多光子励起可能となるようにスーパーコンティニウム光を出射させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項12記載の発明は、前記請求項11の構成において、ピーク強度が1kW以上100kW以下であるスーパーコンティニウム光を出射させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項13記載の発明は、前記請求項11又は12の構成において、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において3dB以内の波長平坦性を有するスーパーコンティニウム光を出射させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項14記載の発明は、前記請求項11乃至13いずれかの構成において、前記パルス光発振部から発振される超短パルス光は、パルス幅が1ピコ秒以下であって且つ1000nm以上1100nm以下の波長域に中心波長を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項15記載の発明は、前記請求項11乃至14いずれかの構成において、前記導波路は、前記超短パルスレーザー光を1パルス内での波長の経時的変化が連続的であるスーパーコンティニウム光にするものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項16記載の発明は、前記請求項11乃至15いずれかの構成において、前記導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域において正常分散特性を示すファイバであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項17記載の発明は、前記請求項16構成において、前記超短パルスレーザー光の中心波長が、前記正常分散特性を示すファイバの群速度分散スペクトルのピーク波長に対して±50nmの範囲内であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項18記載の発明は、前記請求項11乃至15いずれかの構成において、前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項19記載の発明は、前記請求項16又は17の構成において、前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項20記載の発明は、スーパーコンティニウム光を生成して出射させるスーパーコンティニウム光生成方法であって、
パルス光発振部により超短パルス光を発振するステップと、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を導波路に入射させ、導波路における非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させるステップと
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項21記載の発明は、前記請求項1乃至10いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成光源を備えた多光子励起蛍光顕微鏡であって、
前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を対象物上に照射するための光学系と、
対象物を当該スーパーコンティニウム光で多光子励起したときに放出される蛍光を検出する検出部とを備えているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項22記載の発明は、生成されたスーパーコンティニウム光により蛍光物質を多光子励起して蛍光を発生させる多光子励起方法であって、
パルス光発振部により超短パルス光を発振する発振ステップと、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を導波路に入射させ、導波路における非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させる変換ステップと、
出射したスーパーコンティニウム光をパルス圧縮してピーク強度を増加させる圧縮ステップと、
圧縮ステップによりピーク強度を増加させたスーパーコンティニウム光の全部又は一部を蛍光物質に照射して蛍光物質を多光子励起する照射ステップと
を備えており、
変換ステップは、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう導波路により超短パルスレーザー光を変換するステップであるという構成を有する。
また、請求項2又は12記載の発明によれば、上記効果に加え、ピーク強度が1kW以上100kW以下であるので、生体試料の蛍光観察に好適に使用することができる。
また、請求項3又は13記載の発明によれば、上記効果に加え、3dB以内の波長平坦性を有するので、より汎用性の高いスーパーコンティニウム光生成光源となる。
また、請求項4又は14記載の発明によれば、上記効果に加え、高い波長平坦性を容易に実現することができる。
また、請求項5又は15記載の発明によれば、線形チャープであるスーパーコンティニウム光が生成されるので、その特性を種々の用途に活かすことができる。
また、請求項6又は16記載の発明によれば、上記効果に加え、850〜1550nmの波長域のスーパーコンティニウム光が容易に生成できたり、ピーク強度の大きなスーパーコンティニウム光を容易に生成できたりする効果が得られる。
また、請求項7又は請求項17記載の発明によれば、上記効果に加え、超短パルスレーザー光の中心波長が、正常分散特性を示すファイバの群速度分散スペクトルのピーク波長に対して±50nmの範囲内であるので、線形チャープであるスーパーコンティニウム光をより容易に得ることができる。
また、請求項8、10、18又は20記載の発明によれば、上記効果に加え、導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるので、高いピーク強度のスーパーコンティニウム光を得ることができる。
また、請求項9又は請求項19記載の発明によれば、上記効果に加え、導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるので、高いピーク強度のスーパーコンティニウム光を得ることができる。この際、正常分散特性を示すファイバにより線形チャープとされたスーパーコンティニウム光をパルス圧縮するので、より容易に圧縮を行うことができる。
また、請求項21記載の発明によれば、上記効果に加え、850nm以上1550nm以下の波長域において、異なる吸収波長をもつ複数の蛍光タンパクを同時に多光子励起することが一台のレーザーで可能となる。なお、当然ながら波長調節機構を設け、任意の波長を切り出して単色励起の多光子励起蛍光観察を行うこともできる。従来、多色同時励起には複数のレーザーを必要としたため、本発明に依れば省スペースで汎用性の高い多光子励起蛍光顕微鏡を実現できる。
この実施形態のSC光生成光源の大きな特徴点は、対象物を多光子励起可能な光子密度以上となる光子密度のSC光を出射するものとなっている点である。即ち、実施形態のSC光生成光源は、多光子励起用の光源として構成されたものとなっている。
このような実施形態の多光子励起用のSC光生成光源の好ましい利用例として、多光子励起蛍光顕微鏡が想定されている。
多光子励起を実現するには、光子密度を時間的及び空間的に高める必要がある。このため、光源には、フェムト秒のようなごく短い時間しか発光しない超短パルスレーザー発振器が使用される。レーザー発振器が発生させる全強度を短い時間に集中させることで、多光子励起に必要とされる高い光子密度を実現するためである。
周知のように、蛍光分子によって励起波長は異なり、また発生する蛍光の波長も異なる。したがって、異なる試料を観察する場合、殆どの場合、異なる波長の励起光を照射する必要がある。従来の多光子励起蛍光顕微鏡において、異なる波長の励起光を照射するためには、出射波長の異なる超短パルスレーザー発振器が必要になるから、理屈の上では、観察する蛍光分子の種類毎に超短パルスレーザー発振器が必要になる。周知のように超短パルスレーザー発振器は非常に高価な機器であり、蛍光分子の種類毎に超短パルスレーザー発振器を備えることは、実現可能な範囲を遙かに超えている。
また、特許文献6の多光子励起蛍光顕微鏡では、二つの超短パルスレーザー発振器から発振される超短パルスレーザー光を集光スポットにおいて時間的及び空間的に重ね合わせる必要がある。非常に複雑で大がかりな機構や制御系が必要になり、コスト上の問題に加え、調整作業の困難性も問題となる。
発明者は、このような多光子励起蛍光顕微鏡において、SC光を採用することで上記各課題をクリアすることができるのではないかと考え、鋭意研究を行った。実施形態のSC光生成光源は、この研究の成果に基づいている。
パルス光発振部1には、超短パルスレーザー発振器が使用される。この超短パルスレーザー発振器は、フェムト秒オーダーの超短パルスを発振するものであり、より好ましくは1ps(ピコ秒)以下のパルス幅のものが使用される。超短パルスレーザー発振器の出射光の中心波長は、1000〜1100nm程度であることが好ましい。具体的には、Ybのような希土類ドープファイバを用いた超短パルスファイバレーザー発振器、半導体レーザーで励起されるYb:KYWのようなYb系結晶を用いた超短パルスレーザー発振器が使用される。
この実施形態では、パルス光発振部1と導波路2との間に偏光制御素子3が設けられている。偏光制御素子3は、導波路2の非線形光学効果をより高めるためのものであり、超短パルス光を導波路2の特性に応じて所望の偏光状態として導波路2に入射させるためのものである。偏光制御素子3としては、1/2波長板や1/4波長板といった波長板が使用されている。偏光制御素子3は、超短パルスレーザー光を導波路2の特性に応じて所定の向きの直線偏光光に変換して導波路2に入射させる。本実施形態では直線偏光を用いて説明するが、この限りではない。
図2は、図1に示す実施形態のSC光生成光源の一例(実施例)について、出射された光をスペクトルアナライザで分析した結果を示す図である。図2の(1)は、パルス波形即ち時間経過に伴う出射光の強度(波長積分)を示した図である。また、図2の(2)は、(1)のパルス波形の出射光のスペクトル分布を示した図であり、1パルスでの各波長のエネルギー(時間積分)を波長の大きさで規格化して示した図である。
図3(1)には、実施例2として、パルス光発振部1に、中心波長1100nm、パルス幅1psの光パラメトリック増幅システム(OPA)を用いた例が示されている。この例では、850〜1550nm程度の波長範囲において3dB以内の波長平坦性が得られている。
また、図3(2)には、実施例3として、パルス光発振部1に中心波長1030nm、パルス幅170fsのYbドープファイバレーザー発振器を用いた例が示されている。この例では、950〜1150nm程度の波長範囲において3dB以内の波長平坦性が得られている。
実施形態のSC光生成光源は、出射波長の範囲内において正常分散特性を示す非線形ファイバを導波路2として使用している。図4は、実施形態のSC光生成光源が備える導波路2の波長分散特性を示した図である。
波長分散特性は光ファイバの基本的特性の一つであり、通信の分野では波長分散を小さくすることが重要であるが、SC光生成に用いる非線形光ファイバは、波長分散を非線形光学効果により逆に高めることで広帯域化を図るものであるといえる。このような波長分散特性には、正常分散特性と異常分散特性とが知られている。
このように出射波長範囲において正常分散特性を示す導波路2を使用することで、出射されるSC光はスペクトルの抜けや極端なスパイク(極狭帯域の強いスペクトル)のない好適な波長成分の光となる。この点を確認した比較実験の結果について、以下に説明する。
図6(2)に示すように、参考例では、スパイク状の波長ピークが多く観察されており、フラットなスペクトル分布のSC光にはなっていない。即ち、少なくとも950〜1150nmにおいて3dB以下の波長平坦性は確保されていない。これは、GVDが正の値であることから、超短パルスのうちの最初の(時間的に早く発生した)長波長側の光の伝搬速度が遅くなり、後の(時間的に遅く発生した)短波長側の光の伝搬速度が速くなる結果、自己急峻化、誘導ラマン散乱、光ソリトン効果といった複数の3次非線形光学効果が生じる。このため、SC光は、波長範囲は広がるものの、図6(2)に示すような多数のスパイク状のスペクトルを有するものとなってしまう。一方、図2(2)に示すように、正常分散特性を示す非線形ファイバを導波路2として使用した場合、スパイクノイズのない高い波長平坦性を有するSC光が得られる。
また、正常分散特性を示す非線形ファイバを導波路2として使用しているので、上記高い波長平坦性が容易に得られる。正常分散特性を示さない非線形ファイバを導波路2として使用すると、高次の非線形光学効果を制御したり調整したりして高い波長平坦性を確保する必要があるが、これを達成することは非常に難しい。
図7は、実施形態に係る多光子励起蛍光顕微鏡の概略図である。図7に示す多光子励起蛍光顕微鏡は、SC光生成光源4と、SC光生成光源4から出射したSC光を対象物Sに照射する光学系5と、SC光の照射により励起された対象物Sが放出する蛍光を検出する検出部6とを備えている。SC光生成光源4は、前述した実施形態の光源であり、パルス発振部1と、偏光制御素子3と、導波路2とを備えたものである。
対物レンズ54は、対象物SにSC光を集光するために配置されている。特に、生体試料であり得る対象物S中の任意の深さの位置にSC光を集光できる対物レンズ54が採用される。
イメージング装置61は、スキャニングミラーユニット53によるスキャニングに同期して検出部6の出力を記憶部(メモリ)に記憶する。各出力は、各集光点から発せられる蛍光の強度信号である。そして、強度信号に応じた濃淡で1フレームの画像を可視化する。また、対物レンズ54が操作されて集光点が変更された場合、別の観察面での観察であるので、別の画像データとして記憶し、他の観察面の画像データと統合することで3次元の観察画像とする。このようなデータ処理が行われるよう、イメージング装置61は、プロセッサとプロセッサによって実行されるプログラムとを備えており、また画像を表示するディスプレイを備えている。
また、検出部6の手前側の光路上には、ピンホール板が配置されることもあり得る。ピンホールは、対物レンズ54による対象物Sにおける焦点と共焦点とされ、いわゆる共焦点レーザー顕微鏡の構成とされる。これにより、深さ方向でのノイズが除去された鮮明な画像が得られる。
多光子励起による蛍光観察が可能かどうかは、多光子励起により蛍光が放出され、その蛍光が顕微鏡による観察(イメージング)を可能する強さとなっているかどうかであり、最終的には、励起光の光子密度によるということになる。実際には、前述したように励起光は対物レンズ54により一点に集光され、その点がイメージングにおける一画素(ピクセル)ということになるので、その点での光子数ないし密度が、多光子励起による蛍光観察が可能な量以上であるかどうかということになる。尚、理論的には三光子以上の励起もあり得るが、二光子励起の場合を採り上げる。
まず、対象物SとしてのEGFPの条件について説明すると、まず、細胞内でのEGFPの濃度(発現濃度)は1×10−5Mとし、EGFPを含む細胞が浸漬された溶液の屈折率は1.47であるとする。また、EGFPの量子効率は0.6であるとする。
一例として、スキャニングミラーユニット53によるXY平面(観察面)のサイズを512×512ピクセルとする。これは、512×512の各点で励起光を集光して二光子励起による蛍光放出を行わせることを意味する。この場合、1ピクセルの大きさは、対物レンズによる集光点でのビーム径に相当しており、直径1μmが想定されている。各ピクセルで表される濃淡の程度(階調)も必要な光子数に影響を与えるが、階調は12ビットであるとする。
この他の光学系5、検出系の条件について示すと、SC光生成光源4から出射した光のうち、30%の光が光学系5により集められてEGFPに照射されるとし、また、検出部6として用いた光電子増倍管の光電変換効率は40%であるとした。
一方、上記の条件で仮に1kWの出力のSC光生成光源4が使用されたと仮定すると、EGFPに照射されて蛍光に遷移して検出部6に捉えられる(即ち電気信号に換算される)光子数は10112個となり、必要個数を上回ることが確認された。この場合の1kWの出力とは、1パルスにおける時間ピーク強度が1kW以上ということであり、且つ二光子励起させる波長において1kW以上ということである。尚、前述したようにSC光の照射径が1μmであり、1ピクセルが1μm角サイズであるとすると、1ピクセルにおいて必要な光子密度は、8192×1012個/m2程度以上ということなる。この場合、1μm径の照射径において10112個の光子が得られていると、光子密度は12882個×1012個/m2程度となり、必要な光子密度が確保されていることになる。
図8及び図9は、実施例1及び参考例の各SC光生成光源について、出射されるSC光のスペクトログラムを示した図である。図8は実施例1のもの、図9は参考例のものを示す。オリジナルのスペクトログラムでは強度が色で示されているが、各図は白黒であるので、強度を図8、図9において各々下側に示す。
一方、図9に示すように、参考例のSC光生成光源から出射されたSC光は、帯域としては広がっているものの、連続したスペクトルではなく、スペクトルの抜けがある。スペクトルの抜けがあると、そのスペクトルで励起される蛍光分子は対象物にできないので、多光子励起蛍光顕微鏡用のSC光としては不向きということになる。
上記説明では、蛍光分子としてEGFPを採り上げたが、他の合成又は天然由来の蛍光分子についても同様に多光子励起蛍光観察が可能である。また、生体試料以外の各種物質を対象物Sとした蛍光観察においても、実施形態のSC光生成光源4は好適に使用され得る。また、蛍光顕微鏡以外にも多光子励起を利用するプロセスは知られており(例えば多光子励起分光計測)、そのような用途にも実施形態のSC光生成光源4は使用することができる。
図1と図10とを対比すると解るように、第二の実施形態のSC光生成光源は、導波路2の出射側にパルス圧縮部7を設けた構成となっている。図11は、第二の実施形態のSC光生成光源の機能、動作を模式的に表した図である。図11の上段は、第二の実施形態においてパルス波形がどのように変換されるのかを模式的に示し、下段はスペクトル波形がどのように変換されるのかを模式的に示す。
上記第一の実施形態の構成は、これとは異なり、自己位相変調のような非線形光学効果により、元々無かった波長の光を新たに生成し、それによって200nm以上の広帯域に亘って抜けの無い連続したスペクトルを得る。この際、必然的に得られたスペクトルは、図8(1)に示すように時間的にも連続したものであり、チャープパルスが得られる。図8(1)に示すパルスは、線形チャープパルスと呼び得る。線形チャープとは、時間経過とともに波長が連続的に変化する光のことを指す。さらに、図8(1)に示すチャープパルスは、波長の変化において極値(極大値又は極小値)を持たないパルスということができる。
図8(1)に示すように、導波路2から出射されるSC光は、1パルスにおいて時刻の早い光ほど長波長であり、時刻の遅い光ほど短波長である。即ち、時刻が進むにつれて光の波長は短波長側にシフトする。このようなチャープパルスは、波長が長くなるにつれて線形的に遅延する群遅延素子によって容易にパルス圧縮できる。図12のプリズムペアユニット71は、このような群遅延を行う素子となっている。二対のプリズム711に対して折り返しミラー712が配設されており、光は、計8回プリズム711中を通過する。
図12に示すように、長波長側の光L2は、4個のプリズム711中の合計の光路長が長く、波長が短くなるにつれて合計の光路長は短くなり、最も短波長の光L1で最も短くなる。このため、より波長の長い光ほど遅延が多く生じ、波長が短い光ほど遅延は小さくなる。このため、プリズム711の媒質の屈折率に応じてプリズム711のサイズや配置間隔を適宜選定すると、プリズム711を8回通過して戻ってきた際にSC光における各波長は、時間的に揃った状態で伝搬するようになり、パルスが圧縮される。
図13は、図8に示すSC光を図11に示すような二対のプリズム711で圧縮した実験の結果を示している。図13(1)は、全波長でのパルスを示し、破線は圧縮前のパルス波形(図8(1)と同じ図)、実線は圧縮後のパルスを示す。また、図13(2)はスペクトル分布を示し、破線は圧縮前のもの、実線は圧縮後のものを示す。
尚、図13(1)の角横軸は時間(ピコ秒)であり、各縦軸は強度(kW)である。また、図13(2)の横軸は波長、縦軸は波長で規格化した波長毎のエネルギー(pJ/nm)を示す。
尚、図13(2)では縦軸は時間積分したエネルギー(pJ)となっており、各波長の光はパルス内で時間積分した量としては変化はないが、パルス幅が短くなっているため、各波長の瞬時値のピークは増加している。増加の仕方は、図13(1)に示す全波長におけるものと同様である。
図8と図14とを比較する良くわかるように、パルス圧縮により、各波長の光がほぼ同じ時刻に重なった状態となっている。この重なりの結果、ピーク強度が大幅に増加している。
即ち、導波路2からの光路上には、偏向ビームスプリッタ713が配置されており、導波路2から出射した偏向ビームスプリッタ713に入射する。偏向ビームスプリッタ713とパルス圧縮部7との間には、1/4波長板714が配置される。上述したように、実施形態のSC光生成光源は偏光制御素子3を備えていて導波路2から出射されるSC光は直線偏光光であるが、導波路2から出射されるSC光が直線偏向光でない場合、導波路2と偏向ビームスプリッタ713との間には、適当な偏光制御素子が配置され、SC光を直線偏光光に変換する。
まず、図16(1)に示すように、パルス圧縮部7として、グレーティング(回折格子)72の対を使用することができる。図16(1)において、SC光のパルスのうち、遅い時刻に発生している短波長側の光L1は、早い時刻に発生している長波長側の光L2に比べ、グレーティング72の対を抜け出るまでの光路長が長い。このため、各グレーティング72の配置角度をSC光の中心波長に対して適宜選定することで、各波長がほぼ同じタイミングとなり、パルス圧縮がされる。
グリズムの場合、グレーティング対に比べて小型化できるメリットがある。但し、グレーティングを使用していることに変わりはないので、回折損失の問題はある。
チャープミラー74は、比較的簡単にパルス圧縮が行えるものの、1個のチャープミラー74で得られる群遅延は一般に−50fs2程度と小さい。このため、この実施形態におけるパルス圧縮部7として用いるには、例えば200回以上反射を繰り返す必要がある。チャープミラー74の反射率は高いものの、このように多数の反射を繰り返す場合には全体として損失が大きくなる欠点がある。
パルス圧縮部7としてファイバを使用する場合のごくシンプルな例は、異常分散ファイバを使用する例である。異常分散ファイバの場合、長波長側の光ほど遅延するので、適宜のGVDを有するファイバを適宜の長さで使用してSC光を通すことで、パルス圧縮を行うことができる。
但し、ファイバを用いてパルス圧縮を行う場合、高エネルギーのSC光の入射によって望まない非線形効果が生じないように注意する必要がある。せっかく広帯域でフラットなSC光を生成したのに、パルス圧縮の際に再び非線形光学効果が発生してスペクトルの抜けや極端な落ち込み等が生じることがあり得るが、これは避けなければならない。この観点では、プリズムペア、グレーティング、グリズム、チャープミラーといった群遅延素子はビーム径がμmオーダーであるファイバに対し、空間系のためビーム径を自由に大きくすることが可能であるため非線形光学効果を生じにくいため設計し易い。
広帯域においてシングルモード伝搬できるLMAのPCF(LMA−PCF)も既に市販されている。本発明の波長帯全域において異常分散を示すLMA−PCFは現在のところ存在していないが、そのようなものが開発されれば使用することができる。中空コアPBFは、コアが空孔となっているため実質的に光非線形性を生じない特徴を有するが、現在主に市販されているものは低分散のものである。但し、十分な分散を有するものが開発されれば、使用が可能である。
2 導波路
3 偏光制御素子
4 SC光生成光源
5 光学系
51 レンズ
52 ダイクロイックミラー
53 スキャニングミラーユニット
531 スキャニングミラー
54 対物レンズ
6 検出器
61 イメージング装置
62 フィルタ
7 パルス圧縮部
71 プリズムペアユニット
711 プリズム
712 折り返しミラー
713 偏光ビームスプリッタ
714 1/4波長板
72 グレーティング
73 グリズム
74 チャープミラー
75 空間光変調器
76 CFBG
77 分散減少ファイバ
78 櫛形配置ファイバ
Claims (22)
- スーパーコンティニウム光を生成して出射させるスーパーコンティニウム光生成源であって、
超短パルス光を発振するパルス光発振部と、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させる導波路と
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
照射面で対象物を多光子励起可能となるようにスーパーコンティニウム光を出射させるものであることを特徴とするスーパーコンティニウム光生成光源。 - 前記パルス光発振部及び前記導波路は、ピーク強度が1kW以上100kW以下であるスーパーコンティニウム光を出射させるものであることを特徴とする請求項1に記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- 850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において3dB以内の波長平坦性を有するスーパーコンティニウム光を出射させるものであることを特徴とする請求項1又は2記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- 前記パルス光発振部は、パルス幅が1ピコ秒以下であって且つ1000nm以上1100nm以下の波長域に中心波長を有する超短パルス光を発振するものであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- 前記導波路は、前記超短パルスレーザー光を1パルス内での波長の経時的変化が連続的であるスーパーコンティニウム光にするものであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- 前記導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域において正常分散特性を示すファイバであることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- 前記超短パルスレーザー光の中心波長が、前記正常分散特性を示すファイバの群速度分散スペクトルのピーク波長に対して±50nmの範囲内であることを特徴とする請求項6記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- 前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるパルス圧縮部を備えたことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- 前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるパルス圧縮部を備えたことを特徴とする請求項6又は7記載のスーパーコンティニウム光生成光源。
- スーパーコンティニウム光を生成して出射させるスーパーコンティニウム光生成源であって、
超短パルス光を発振するパルス光発振部と、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させる導波路と
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させるパルス圧縮部を備えたことを特徴とするスーパーコンティニウム光生成源。 - スーパーコンティニウム光を生成して出射させるスーパーコンティニウム光生成方法であって、
パルス光発振部により超短パルス光を発振するステップと、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を導波路に入射させ、導波路における非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させるステップと
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
照射面で対象物を多光子励起可能となるようにスーパーコンティニウム光を出射させることを特徴とするスーパーコンティニウム光生成方法。 - ピーク強度が1kW以上100kW以下であるスーパーコンティニウム光を出射させることを特徴とする請求項11に記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- 850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において3dB以内の波長平坦性を有するスーパーコンティニウム光を出射させることを特徴とする請求項11又は12記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- 前記パルス光発振部から発振される超短パルス光は、パルス幅が1ピコ秒以下であって且つ1000nm以上1100nm以下の波長域に中心波長を有することを特徴とする請求項11乃至13いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- 前記導波路は、前記超短パルスレーザー光を1パルス内での波長の経時的変化が連続的であるスーパーコンティニウム光にするものであることを特徴とする請求項10乃至14いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- 前記導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域において正常分散特性を示すファイバであることを特徴とする請求項11乃至15いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- 前記超短パルスレーザー光の中心波長が、前記正常分散特性を示すファイバの群速度分散スペクトルのピーク波長に対して±50nmの範囲内であることを特徴とする請求項16記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- 前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させることを特徴とする請求項11乃至15いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- 前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させることを特徴とする請求項16又は17記載のスーパーコンティニウム光生成方法。
- スーパーコンティニウム光を生成して出射させるスーパーコンティニウム光生成方法であって、
パルス光発振部により超短パルス光を発振するステップと、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を導波路に入射させ、導波路における非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させるステップと
を備えており、
導波路は、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう超短パルスレーザー光を変換するものであり、
導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を圧縮して当該スーパーコンティニウム光のピーク強度を増加させることを特徴とするスーパーコンティニウム光生成方法。 - 請求項1乃至10いずれかに記載のスーパーコンティニウム光生成光源を備えた多光子励起蛍光顕微鏡であって、
前記導波路から出射されたスーパーコンティニウム光を対象物上に照射するための光学系と、
前記対象物を当該スーパーコンティニウム光で多光子励起したときに放出される蛍光を検出する検出部とを備えていることを特徴とする多光子励起蛍光顕微鏡。 - 生成されたスーパーコンティニウム光により蛍光物質を多光子励起して蛍光を発生させる多光子励起方法であって、
パルス光発振部により超短パルス光を発振する発振ステップと、
パルス光発振部から発振された超短パルスレーザー光を導波路に入射させ、導波路における非線形光学効果によりスーパーコンティニウム光に変換して出射させる変換ステップと、
出射したスーパーコンティニウム光をパルス圧縮してピーク強度を増加させる圧縮ステップと、
圧縮ステップによりピーク強度を増加させたスーパーコンティニウム光の全部又は一部を蛍光物質に照射して蛍光物質を多光子励起する照射ステップと
を備えており、
変換ステップは、850nm以上1550nm以下の波長域に含まれる少なくとも200nmの波長幅の帯域において連続したスペクトルのスーパーコンティニウム光となるよう導波路により超短パルスレーザー光を変換するステップであることを特徴とする多光子励起方法。
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