JP2017190515A - 鋼線およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】破断するまでに大きなエネルギーを吸収することができる鋼線を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.10〜3.00%、S:0.005〜0.015%、N:0.005〜0.013%、およびAl:0.005%以下の化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼線であって、前記鋼線断面におけるフェライトの結晶粒径が9μm以下であり、断面面積率で8%以上の残留オーステナイトを含み、破断までの単位面積当たりの吸収エネルギーが1300J/cm以上である、ことを特徴とする鋼線。
【選択図】なし

Description

本発明は、大きな吸収エネルギーを示す鋼線およびその製造方法に関する。
崖や切通しに接している道路や線路への落石の侵入を防止するために、落石防護ネットが用いられている。落石防護ネットには、落石時に落石の運動エネルギーを吸収して落石を受け止め、落石を静止させることが要求される。
落石防護ネットに用いられる鋼線の破壊に至るまでのエネルギー吸収量は、概ね引張強度と伸びに比例する。伸びが変わらないのであれば引張強度を上げるほど、引張強度が変わらないのであれば伸びが大きくなるほど、鋼線の吸収エネルギーは大きくなる。しかしながら、通常、引張強度をあげると引張強度の上昇率以上に伸びが低下するため、吸収エネルギーは小さくなる。このため、落石防護ネット用の鋼線は軟質で伸びが大きななまし線が多用されてきた。伸びを低下することなく引張強度の上昇を図ることができれば、落石防護ネットの吸収エネルギーは飛躍的に増大する。
鋼材の伸びを低下することなく引張強度の上昇を図る手法として、残留オーステナイトを活用する方法が知られている。即ち、伸び(変形)の途中で残留オーステナイトが次々マルテンサイトに変態し(加工誘起変態)、破断の起点となる脆弱部分を強化して、伸びを確保する方法である。
残留オーステナイトを活用した落石防護に関する技術として特許文献1の技術がある。特許文献1に記載の技術は、主に落石防護柵、落石防護ネット等の落石防止設備を支えるロープでエネルギーを吸収する技術である。
特開2007−191774号公報
しかしながら、特許文献1等の従来の残留オーステナイトを活用する方法で落石防護ネット等の落石防止設備を作製した場合でも、依然として、受け止められる落石エネルギーの大きさが不十分であった。より大きな落石エネルギーを受け止めるためには、落石防護ネット等の落石防止設備自体に用いることが可能な鋼線のエネルギー吸収能を上げることが必要である。
そのため、従来よりも、破断するまでに大きなエネルギーを吸収することが可能な鋼線が求められている。
本発明の要旨は以下のとおりである:
(1)質量%で、
C:0.05〜0.25%、
Si:0.3〜1.0%、
Mn:0.10〜3.00%、
S:0.005〜0.015%、
N:0.005〜0.013%、および
Al:0.005%以下
の化学成分を含有し、
残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼線であって、
前記鋼線断面におけるフェライトの結晶粒径が9μm以下であり、
断面面積率で8%以上の残留オーステナイトを含み、
破断までの単位面積当たりの吸収エネルギーが1300J/cm以上である、
ことを特徴とする鋼線。
(2)質量%で更に、Cr:0.05〜2.00%、Ni:0.05〜2.00%、Cu:0.05〜1.00%、Mo:0.05〜1.00%のうち一種または二種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の鋼線。
(3)質量%で、
C:0.05〜0.25%、
Si:0.3〜1.0%、
Mn:0.10〜3.00%、
S:0.005〜0.015%、
N:0.005〜0.013%、および
Al:0.005%以下
の化学成分を含有し、
残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を、1.0以上の塑性歪を与えて伸線すること、
前記伸線した鋼材を、AC1変態点温度以上且つ(AC1変態点温度+AC3変態点温度)/2以下の加熱温度まで8℃/秒以上の昇温速度で加熱し、前記加熱温度にて15秒〜120秒保持すること、
前記加熱した鋼材を、8℃/秒以上の冷却速度で式(2):
(℃)=550−350C−40Mn−10Cu−17Ni−20Cr
−10Mo+30Al (2)
で示されるM変態点温度を基準として、(M変態点温度+50℃)以下且つ(M変態点温度−50℃)以上の温度まで冷却し、その温度で50〜320秒保持すること、および
前記冷却した鋼材を、室温までさらに空冷すること、
を特徴とする鋼線の製造方法。
本発明によれば、大きな吸収エネルギーを示す鋼線を得ることができる。
本発明は、質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.10〜3.00%、S:0.005〜0.015%、N:0.005〜0.013%、およびAl:0.005%以下の化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼線であって、前記鋼線断面におけるフェライトの結晶粒径が9μm以下であり、断面面積率で8%以上の残留オーステナイトを含み、破断までの単位面積当たりの吸収エネルギーが1300J/cm以上である、ことを特徴とする鋼線を対象とする。
本発明に係る鋼線は、所定の化学成分並びに残部としてFeおよび不可避不純物からなり、断面におけるフェライトの結晶粒径が9μm以下であり、且つ8%以上の残留オーステナイトを含む鋼線である。本発明に係る鋼線は、従来のなまし線に比べて、引張強度と延性のバランスに優れており、大きな吸収エネルギーを示す。本願において、吸収エネルギーとは、鋼線の引張強度試験時における荷重―変位曲線を変位で積分した値である。
本発明に係る鋼線を用いて落石防護ネット用の金網を編むことができる。本発明に係る鋼線を用いて作製した金網を備えた落石防護ネットは、落石の衝突等で特定部位に高い負荷がかかった場合、その部位の鋼線が加工誘起マルテンサイトの生成により強化され、他の部位の鋼線に変形が分散されて、従来よりも大きな吸収エネルギーを示すことができる。また、本発明に係る鋼線は大きな吸収エネルギーを示すため、本発明に係る鋼線を用いて落石防護ネット用の金網を作製する場合、落石防護ネット用の金網を単線で構成することができるので、落石防護ネットを安価に作製することができる。本願において、単線とは、撚り線ではないことを意味する。撚り線は、複数の線を撚り合わせたものである。
以下に、本発明に係る鋼線の組成を説明する。以下の組成の説明において、パーセント表示は、鋼線の全質量を基準とする質量%である。
本発明に係る鋼線は、質量%で、
C:0.05〜0.25%、
Si:0.3〜1.0%、
Mn:0.10〜3.00%、
S:0.005〜0.015%、
N:0.005〜0.013%、および
Al:0.005%以下を含有する。
鋼線は、0.05〜0.25%のCを含む。Cは、残留オーステナイトの生成のため重要な元素で、鋼線が0.05%以上のCを含むことによって十分な量の残留オーステナイトを得ることができ、良好な伸びが得られる。鋼線は、好ましくは0.10%以上のCを含む。鋼線中のC含有量が0.25%を超えると、鋼線が硬くなりすぎ伸びが低下して、金網に成形することが困難になるため、C含有量の上限を0.25%以下、好ましくは0.23%以下とする。
鋼線は、0.3〜1.0%のSiを含む。Siは、変態過程においてBCC相(フェライト)から未変態FCC相(オーステナイト)へのCの濃化を促し、残留オーステナイトの生成を容易にする元素である。鋼線が0.3%以上のSiを含むことによって、残留オーステナイトの生成を促進することができる。鋼線は、好ましくは0.4%以上のSiを含む。鋼線中のSi含有量が1.0%を超えると、スケール剥離性に問題が生じるため、Si含有量の上限を1.0%以下、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.7%以下とする。
鋼線は、0.10〜3.00%のMnを含む。Mnは、拡散型変態であるフェライト変態およびパーライト変態の変態速度を低下させ、残留オーステナイトを生成し易くする効果のある元素である。鋼線が0.10%以上のMnを含むことによって、フェライト粒の粗大化を抑制し十分な量の残留オーステナイトを生成することができる。鋼線は、好ましくは0.20%以上のMnを含む。鋼線中のMn含有量が3.00%を超えると熱間延性の低下を招き製造性が著しく低下するため、Mn含有量の上限を3.00%以下、好ましくは2.50%以下とする。
鋼線は、0.005〜0.015%のSを含む。Sは、MnSを形成しスケール剥離性を向上させる重要な元素である。鋼線が0.005%以上のSを含むことによって、スケール剥離性を向上することができる。鋼線は、好ましくは0.008%以上のSを含む。鋼線中のS含有量が0.015%を超えると、MnSを起点とした破壊が顕著になり延性が低下するため、S含有量の上限を0.015%以下、好ましくは0.012%以下とする。本発明に係る鋼線は高い引張強度を有するが、MnSが多く生成されると引張強度への悪影響が極めて大きいため、鋼線中のS含有量は厳格に制限される。
鋼線は、0.005〜0.013%のNを含む。Nは、Cと同様に、残留オーステナイト生成のために重要な元素である。鋼線が0.005%以上のNを含むことによって、残留オーステナイトを生成させる効果が非常に大きくなる。鋼線は、好ましくは0.008%以上のNを含む。鋼線中のN含有量が0.013%を超えると、溶製が困難になるため、N含有量の上限を0.013%以下、好ましくは0.010%とする。このように、残留オーステナイト生成および溶製の観点から、鋼線中のN含有量は厳格に制限される。
本発明に係る鋼線において、Al含有量はできる限り少ない方がよく、鋼線中のAl含有量を0.005%以下、より好ましくは0.003%以下とする。Alは、Siと同様、未変態オーステナイトへのCの濃化を促し、残留オーステナイトの生成を容易にし得るが、鋼線の吸収エネルギーを大きくすることはできない。また、Alは、製錬時にOと反応して硬質なAlを生成し、伸線時の断線の原因となるため、Al含有量は可能な限り低減する必要がある。本発明に係る鋼線は高い引張強度を有するが、生成し得るAlの引張強度への悪影響が極めて大きいため、鋼線中のAl含有量は厳格に制限される。
好ましくは、鋼線は、質量%で更に、0.05〜2.00%のCr、0.05〜2.00%のNi、0.05〜1.00%のCu、および0.05〜1.00%のMoのうち一種または二種以上を含有する。
Cr、Ni、Cu、およびMoはそれぞれ、鋼の強化元素であり、残留オーステナイトを生成し易くする元素である。Cr、Ni、Cu、およびMoを、それぞれ、鋼線中に好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.5%以上、さらにより好ましくは1.1%以上添加することが好ましい。CrおよびNiについては、過剰の添加はコストを上昇させるので、鋼線中の含有量の上限を2.00%以下とする。CuおよびMoについても、過剰の添加はコストを上昇させるので、鋼線中の含有量の上限を1.00%以下とする。
鋼線の残部は、Feおよび不可避不純物である。
鋼線の断面におけるフェライトの結晶粒径は、9μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。フェライトの結晶粒径の下限は特に限定されるものではないが、例えば1μm程度にすることができる。フェライトの結晶粒径が上記範囲にあることにより、残留オーステナイトを多く生成することができる。また、フェライトの結晶粒径が上記範囲にあることにより、伸びを大きすることもできる。
鋼線は、断面面積率で8%以上、好ましくは9%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは11%以上の残留オーステナイトを含む。残留オーステナイトの上限は特に限定されるものではないが、例えば30%以下にすることができる。残留オーステナイトの断面面積率が上記範囲にあることにより、伸びに優れ、且つ破断までの単位面積当たりの吸収エネルギーが大きい鋼線を得ることができる。
鋼線の、破断までの単位面積当たりの吸収エネルギーは、1300J/cm以上、好ましくは1400J/cm以上、より好ましくは1500J/cm以上、さらに好ましくは1600J/cm以上である。
上記範囲の吸収エネルギーを示す鋼線は、落石防護ネットの作製に好適に用いることができる。
本発明に係る鋼線の引張強度(TS)は、好ましくは500MPa以上、より好ましくは550MPa以上、さらに好ましくは575MPa以上、さらにより好ましくは600MPa以上である。
本発明に係る鋼線の伸び(EL)は、引張強度とのバランスで、吸収エネルギーが大きくなるような伸び(EL)であればよく、好ましくは30%〜70%程度の範囲であることができる。
本発明はまた、質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.3〜1.0%、
Mn:0.10〜3.00%、S:0.005〜0.015%、N:0.005〜0.013%、およびAl:0.005%以下の化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を、1.0以上の塑性歪を与えて伸線すること、前記伸線した鋼材を、AC1変態点温度以上且つ(AC1変態点温度+AC3変態点温度)/2以下の加熱温度に8℃/秒以上の昇温速度で加熱し、前記加熱温度にて15秒〜120秒保持すること、前記加熱した鋼材を、8℃/秒以上の冷却速度で式(2):
(℃)=550−350C−40Mn−10Cu−17Ni−20Cr
−10Mo+30Al (2)
で示されるM変態点温度を基準として、(M変態点温度+50℃)以下且つ(M変態点温度−50℃)以上の温度まで冷却し、その温度で50〜320秒間保持すること、および前記冷却した鋼材を、室温までさらに空冷すること、を特徴とする鋼線の製造方法を対象とする。
以下に、本発明に係る鋼線の製造方法の各構成を説明する。
質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.10〜3.00%、S:0.005〜0.015%、N:0.005〜0.013%、およびAl:0.005%以下の化学成分を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を、伸線して鋼線を得る。好ましくは、鋼材を、落石防護ネットを製網するための線径にまで伸線する。本発明に係る鋼線を用いて作製し得る落石防護ネットの網の構造は、好ましくは菱型金網である。落石防護ネットの網目寸法は、好ましくは30〜80mmである。
伸線は、冷間伸線であり、通常のダイスを用いた乾式伸線やローラーを用いた圧延等により行うことができる。
次いで、伸線した鋼線を、フェライト−オーステナイト2相域に加熱すると、伸線時に導入された高転位密度の部位を核として、フェライトが再結晶する。
フェライト再結晶時の粒径は、核の数が多い程微細になるため、加熱前の伸線歪(塑性歪)は高い方が好ましい。加熱前の塑性歪を1.0以上とすることにより、フェライト粒径の粗大化を抑制しフェライト粒径を十分に細かくすることができ、残留オーステナイトを生成しやすくなり伸びが向上する。そのため、塑性歪の下限を1.0以上、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上とする。塑性歪εは、伸線前の元線径Dと伸線後の線径Dから、式(1):
ε=2×ln(D/D) (1)
により算出される。
伸線後の加熱温度を、AC1変態点温度以上にすることにより、フェライト−オーステナイト2相域にすることができる。
また、伸線後の加熱温度を、(AC1変態点温度+AC3変態点温度)/2以下にすることにより、フェライト粒径の粗大化を抑制し、且つフェライト−オーステナイト2相域中のオーステナイト相の炭素濃度をさらに高めることができる。オーステナイト相の炭素濃度をさらに高めることによって、オーステナイト相が安定化し、冷却時にオーステナイトからフェライトへの変態量が減少して、冷却後の残留オーステナイト量を増加させることができる。一方で、伸線後の加熱温度を、(AC1変態点温度+AC3変態点温度)/2よりも高くすると、加熱時のオーステナイト量は増えるが、冷却時にオーステナイトからフェライトへの変態量が増加して、残留オーステナイト量は大きく減少する。
したがって、加熱温度を、AC1変態点温度以上且つ(AC1変態点温度+AC3変態点温度)/2以下に限定することにより、鋼線の伸びを向上することができる。
なお、伸線時に中間焼鈍を行う場合には、焼鈍時に歪がクリアされるため、ここで規定する塑性歪とは、最終中間焼鈍後の伸線歪である。
塑性歪が1.0以上であっても、昇温速度が8℃/秒未満であると、昇温中にフェライトが再結晶して粗大化し、残留オーステナイトが減少し伸びが減少するため、昇温速度の下限を8℃/秒以上、好ましくは10℃/秒、より好ましくは20℃/秒以上とする。
フェライト−オーステナイト2相域温度での保持により、オーステナイト中へ炭素が濃化して、残留オーステナイトが生成し易くなる。2相域温度に到達後の保持時間が10秒未満であると、オーステナイトへの炭素の濃化が十分でなく伸びが減少するため、下限を15秒以上、好ましくは20秒以上とする。また、2相域温度に長時間保持するとフェライトが成長して粗大化して、残留オーステナイトは十分生成するが、伸びが大きくならず、結果として吸収エネルギーが低くなるため、保持時間の上限を120秒以下、好ましくは100秒以下、より好ましくは90秒以下とする。この2相域温度での加熱処理により、低炭素で微細なフェライト地に高炭素のオーステナイト粒が分散した組織となる。
その後の冷却過程において、未変態オーステナイト中への炭素の濃化に寄与しないパーライト変態をできる限り起こさないような冷却速度で冷却する必要がある。8℃/秒未満の冷却速度ではパーライト変態が生じ、残留オーステナイトが減少し伸びが減少するため、冷却速度の下限を8℃/秒以上、好ましくは10℃/秒以上、より好ましくは20℃/秒以上とする。
2相域温度での加熱処理後の冷却停止温度は、ベイナイト変態が生じる温度域で停止する必要がある。この温度域での保持により、ベイナイトから残留オーステナイトへCが排出され、残留オーステナイトのC濃度が上昇して、残留オーステナイトが安定化する。
ベイナイト変態が生じるような温度でも、温度が高すぎると、ベイナイトから残留オーステナイト相へCが排出されるよりも早く、ベイナイト内部に炭化物が析出してしまうため、冷却停止温度の上限を式(2):
(℃)=550−350C−40Mn−10Cu−17Ni−20Cr
−10Mo+30Al (2)
で示される母相平均濃度から計算されるM変態点温度を基準として、(M変態点温度+50℃)、好ましくは(M変態点温度+40℃)、より好ましくは(M変態点温度+30℃)とする。式(2)において、鋼材に含まれない成分については、ゼロを代入する。
式(2)において、M変態点温度は母相平均濃度から計算されるが、残留オーステナイトのC濃度は平均濃度より高く、式(2)で求められるM変態点温度においても、マルテンサイトは生成しない。しかし、温度が低すぎるとマルテンサイト変態が生じてしまい、伸びが低下するため、冷却停止温度の下限を(M変態点温度−50℃)、好ましくは(M変態点温度−40℃)、より好ましくは(M変態点温度−30℃)とする。
2相域温度での加熱処理後の冷却は、好ましくは、空冷、強制空冷、ソルトバス、及び水冷から選択される1以上の方法により行うことができる。
冷却停止温度における保持時間は、ベイナイトから残留オーステナイトへのCの濃化に必要である。50秒未満では残留オーステナイトへのC濃化が十分に生じず、残留オーステナイトが安定化せず伸びが低下するため、保持時間の下限を50秒以上、好ましくは60秒以上とする。保持時間が320秒を超えると、ベイナイト変態の進行により十分な量の残留オーステナイト量を確保できず伸びが低下するため、保持時間の上限を320秒以下、好ましくは300秒以下、より好ましくは240秒以下とする。
上記の成分および製造方法で製造された鋼線は、8%以上の残留オーステナイト量および9μm以下の断面におけるフェライト粒径を有し、破断までの吸収エネルギーが1300J/cm以上を示す。そのため、前記鋼線は、落石防護ネットに好適に用いられる。
本発明により製造された鋼線は、鋼線中の残留オーステナイトが鋼線変形時に加工誘起変態をすることにより、破断するまでに断面単位面積当たり1300J/cm以上のエネルギーを吸収する。この鋼線を用いて落石防護ネットを作成すれば、大きな落石が道路や線路を塞ぐことを防ぐことが可能となる。
表1に、準備した鋼の化学成分と変態温度を示す。加熱温度の上限である(AC1変態点温度+AC3変態点温度)/2を「参照温度」と記載した。
表1に示した実施例および比較例となる鋼種1〜20を、φ12mm、φ7.5mm、およびφ5.5mmまで熱間圧延したものを、表2の伸線条件で(冷間)乾式伸線した。
伸線した鋼材を熱処理した。表3に熱処理条件を示す。加熱温度と冷却停止温度も重要な熱処理条件因子であるが、成分が変わると、AC1変態点温度、AC3変態点温度、およびマルテンサイト変態開始温度が変わるため、表4に記載した。
所定の温度に加熱保持した鋼材を、空冷及び強制空冷により冷却停止温度まで冷却し、所定時間保持した後、室温まで空冷した。
表4に、鋼種(化学成分)、伸線条件、熱処理条件および冷却停止温度の各条件により製造された鋼線の各種試験結果を示す。残留オーステナイト量を「残留γ」と記載した。
得られた鋼線を樹脂埋めして研磨し、研磨した試験片の横断面をナイタール腐食した。ナイタール腐食した横断面の中心部について500倍の光学顕微鏡写真を撮影し、切断法(JIS規格準拠:JIS G 0551)により、鋼線のフェライト結晶粒径を求めた。鋼線中の残留オーステナイト量は、試験片の横断面の中心部について、コリメーター径φ1.0mmのX線回折装置(Rigaku製、AutoMATE M)を用いて測定した。引張強度(TS)および伸び(EL)は、JIS9A号引張試験片を用い、標点間距離100mm、掴み部の間隔150mm、引張速度1mm/分の定速引張により測定した。吸収エネルギーは、JIS9A号引張試験片を用い、掴み部間隔50mm、引張速度10m/秒で引っ張って破断させ、その時の荷重の時間変化をクロスヘッドの移動量で積分して求めた。
本発明によれば、フェライト結晶粒径が9μm以下、残留オーステナイトが8%以上、および吸収エネルギーが1300J/cm以上の鋼線が得られた。
Figure 2017190515
Figure 2017190515
Figure 2017190515
Figure 2017190515

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.25%、
    Si:0.3〜1.0%、
    Mn:0.10〜3.00%、
    S:0.005〜0.015%、
    N:0.005〜0.013%、および
    Al:0.005%以下
    の化学成分を含有し、
    残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼線であって、
    前記鋼線断面におけるフェライトの結晶粒径が9μm以下であり、
    断面面積率で8%以上の残留オーステナイトを含み、
    破断までの単位面積当たりの吸収エネルギーが1300J/cm以上である、
    ことを特徴とする鋼線。
  2. 質量%で更に、Cr:0.05〜2.00%、Ni:0.05〜2.00%、Cu:0.05〜1.00%、Mo:0.05〜1.00%のうち一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼線。
  3. 質量%で、
    C:0.05〜0.25%、
    Si:0.3〜1.0%、
    Mn:0.10〜3.00%、
    S:0.005〜0.015%、
    N:0.005〜0.013%、および
    Al:0.005%以下
    の化学成分を含有し、
    残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を、1.0以上の塑性歪を与えて伸線すること、
    前記伸線した鋼材を、AC1変態点温度以上且つ(AC1変態点温度+AC3変態点温度)/2以下の加熱温度まで8℃/秒以上の昇温速度で加熱し、前記加熱温度にて15秒〜120秒保持すること、
    前記加熱した鋼材を、8℃/秒以上の冷却速度で式(2):
    (℃)=550−350C−40Mn−10Cu−17Ni−20Cr
    −10Mo+30Al (2)
    で示されるM変態点温度を基準として、(M変態点温度+50℃)以下且つ(M変態点温度−50℃)以上の温度まで冷却し、その温度で50〜320秒間保持すること、および
    前記冷却した鋼材を、室温までさらに空冷すること、
    を特徴とする鋼線の製造方法。
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