JP2017193782A - 燃料ポンプ用焼結軸受およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ燃料ポンプ用焼結軸受1、2であって、この焼結軸受1、2は、アルミニウム−銅合金が焼結された組織を有し、かつ前記焼結軸受の表層部の気孔を内部の気孔より小さくしたことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
(1)アルミニウム配合量と硫化腐食性の関係では、アルミニウムの配合量が多くなるほど耐腐食性は向上する。これは、アルミニウムの配合量が増えると銅への拡散が増進し耐腐食性が向上すると考えられる。
(2)アルミニウム配合量と有機酸腐食性の関係では、アルミニウムの配合量が多くなるほど耐腐食性は低下する。ただし、アルミニウムの配合量が9.0質量%付近から重量変化率が穏やかになる。
(3)アルミニウムの配合量とアルミニウム青銅組織の関係では、アルミニウムの配合量は多くなるほどβ相の割合が多くなる。β相は565℃で共析変態し、α相とγ相になり、アルミニウム配合量が多くなるほどγ相の割合が多くなる。γ相は耐有機酸腐食性、初期なじみ性を低下させるので、銅源として、アルミニウム―銅合金粉末を用い、銅単体の粉末を添加しない場合は、γ相とα相との比を、0<γ相/α相≦0.10とする。
(4)焼結温度と耐腐食性の関係では、焼結温度を高くするとアルミニウムの拡散が増進し耐腐食性が向上する。
(5)添加剤である燐は、焼結過程でのアルミニウムの拡散の促進で、アルミニウム量を減らすことができ耐腐食性と初期なじみを劣化するアルミニウム組織のγ相の析出を削減できることが考えられる。
(6)アルミニウムの配合量と初期なじみ時間および摩擦係数との関係では、アルミニウムの配合量と初期なじみ時間および摩擦係数は比例関係にある。これは、アルミニウムの配合量が増加するとγ相が増加することが考えられる。
40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を粉砕し、粒度調整した。アルミニウム−銅合金粉末の粒径は100μm以下で、平均粒径は35μmである。ここで、本明細書において、平均粒径とは、レーザ回析により測定した粒径の平均値を意味する。具体的には、(株)島津製作所製SALD−3100により、5000粉末をレーザ回析で測定したときの粒径の平均値とする。
銅粉末は、アトマイズ粉、電解粉、粉砕粉があるが、銅にアルミニウムを十分に拡散させるには、樹枝状の電解粉が有効であり、成形性、焼結性、摺動特性に優れる。そのため、本実施形態では、銅粉として電解粉を用いた。また、アルミニウムを銅へ十分に拡散させるためには、粉末形状が異なる電解銅粉を2種類用い、アスペクト比が2以上の電解銅粉の割合W1と2未満の電解銅粉の割合W2との比W2/W1を3〜9とすることが好ましい。アスペクト比が2以上の電解銅粉は、アルミニウムの拡散のためには有効であるが、成形性が悪い。比W2/W1が、3未満であると成形性の面から好ましくなく、一方、9を超えるとアルミニウムの拡散が不十分となるので好ましくない。
燐合金粉末は、7〜10重量%燐−銅合金粉末を用いた。燐は、焼結時の固液相間の濡れ性を高める効果がある。燐の配合量は、0.1〜0.6重量%、具体的には0.1〜0.4重量%が好ましい。0.1重量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、一方、上記の0.6重量%好ましくは0.4重量%を超えると、焼結が進み過ぎてアルミニウムが偏析しγ相の析出が増え焼結体が脆くなる。
黒鉛は、主として素地に分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、焼結軸受に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の向上に寄与する。黒鉛の配合量は、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量%に対して、3〜10重量%が好ましく、例えば3〜5重量%としてもよい。3重量%未満では、燃料ポンプ用焼結軸受として黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5重量%を超えると、例えばアルミニウムの銅への拡散が阻害され始めることが懸念される。黒鉛の添加量が10重量%を超えると、材料強度が低下し、アルミニウムの銅への拡散を阻害するので好ましくない。一般的に黒鉛を4重量%以上添加すると成形することができないが、造粒黒鉛を使用することで成形を可能にした。本実施形態では、黒鉛粉末は、天然黒鉛、又は人造黒鉛の微粉を樹脂バインダで造粒後粉砕し、粒径145メッシュ以下の黒鉛粉末を用いた。
アルミニウム−銅合金粉末は、焼結時にその表面に生成する酸化アルミニウムの皮膜が焼結を著しく阻害するが、焼結助剤としてのフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、アルミニウム−銅合金粉末の焼結温度である850〜900℃で溶融しながら徐々に蒸発し、アルミニウム−銅合金粉末の表面を保護して酸化アルミニウムの生成を抑制することにより、焼結を促進しアルミニウムの拡散を増進させる。フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、焼結時に蒸発、揮散するので、焼結軸受の完成品には殆ど残らない。
α(%)=(ρ1/ρ0)×100
ただし、ρ1:多孔質体の密度、ρ0:その多孔質体に細孔がないと仮定した場合の密度
To/D1およびTb/D1が1/100未満では気孔のつぶれが不十分となり、一方、1/15を超えると気孔がつぶれ過ぎて好ましくない。
[試験条件]
・溶剤:市販ガソリンに300ppm硫黄を添加した。
・温度:80℃
・時間:300時間
・試験方法:浸漬
[試験条件]
・溶剤:濃度2%の有機酸。
・温度:50℃
・時間:100時間
・試験方法:浸漬
[試験条件]
・溶剤:濃度2%の有機酸。
・温度:50℃
・時間:100時間
・試験方法:浸漬
[試験条件]
・PV値:50MPa・m/min
・試料サイズ:内径5mm×外径10mm×幅7mm
・試験時間:30min
[試験条件]
・PV値:50MPa・m/min
・試料サイズ:内径5mm×外径10mm×幅7mm
・試験時間:30min
原料粉末準備工程S1では、焼結軸受1の原料粉末が準備・生成される。原料粉末は、40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を17〜20重量%、7〜10重量%燐−銅合金粉末を2〜4重量%、電解銅粉末を残重量%とする合計100重量%に対して、焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量%、黒鉛粉末を3〜5重量%、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.1〜1重量%添加した。潤滑剤を添加することにより、後述する圧粉体をスムーズに離型することができ、離型に伴う圧粉体の形状の崩れを回避することができる。具体的には、上記の原料粉末Mを、例えば、図10に示すV型混合機10の缶体11に投入し、缶体11を回転させて均一に混合する。
成形工程S2では、上記の原料粉末を圧粉することにより、焼結軸受1の形状をなした圧粉体1’(図13参照)を形成する。圧粉体1’は、焼結温度以上で加熱することにより形成される焼結体1”の密度比αが70%以上で80%以下となるように圧縮成形される。図13では、簡便的に、圧粉体には符号1’、焼結体には符号1”を併記している。
焼結工程S3では、圧粉体1’を焼結温度で加熱し、隣接する原料粉末同士を焼結結合させることによって焼結体1”を形成する。図11に示すメッシュベルト式連続炉15を使用し、メッシュベルト16に圧粉体1’を多量に投入し、焼結体1”を形成する。これにより、安定した品質、製造方法を実現することができる。
サイジング工程S4では、焼結により圧粉体1’と比較して膨張した焼結体1”を寸法整形する。図12にサイジング工程S4の詳細を示す。サイジング加工の金型は、ダイス20、上パンチ21、下パンチ22およびコア23とからなる。図12(a)に示すように、コア23と上パンチ21が上方に後退した状態で、下パンチ22上に焼結体1”をセットする。図12(b)に示すように、最初にコア23が焼結体1”の内径に入り、その後、図12(c)に示すように、上パンチ21により焼結体1”がダイス20に押し込まれ、上下パンチ21、22により圧縮される。これにより、焼結体1”の表面が寸法整形される。サイジング加工により、膨張した焼結体1”の表層の気孔をつぶし、製品内部と表層部に密度差が生じる。
含油工程S5は、製品1(焼結軸受)に潤滑油を含浸する工程である。図14に含油装置を示す。含油装置25のタンク26内に製品1を投入し、その後、潤滑油27をタンク26内に注入する。そして、タンク26内を減圧することにより、製品1の気孔do、db、di(図3参照)内に潤滑油27を含浸する。これにより、運転開始時より良好な潤滑状態を得ることができる。潤滑油としては鉱油、ポリαオレフィン(PAO)、エステル、液状グリース等を使用することができる。ただし、軸受の使用用途に応じて実施すればよく、必ずしも実施する必要はない。
原料粉末準備工程S1では、焼結軸受1の原料粉末が準備される。原料粉末は、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末、好ましくは8〜10重量%アルミニウム−銅合金粉末を90〜97重量%、7〜10重量%燐−銅合金粉末を1〜6重量%とする合計100重量%に対して、黒鉛粉末を3〜5重量%、焼結助剤としてフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量%、成形性を容易にするための潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.1〜1重量%添加した。7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末は、粉砕して粒度調整したものを用いた。第1の実施形態と同様、上記の原料粉末を、例えば、図10に示すV型混合器10の缶体11に投入し、缶体11を回転させて均一に混合する。
成形工程S2では、上記の原料粉末を圧粉することにより、焼結軸受1の形状をなした圧粉体1’(図13参照)を形成する。本実施形態では、アルミニウム源および銅源となる原料粉末として、銅単体の粉末を添加せずに、アルミニウム−銅合金粉末を用いたので、銅単体が偏った部分が略なくなり、その部分による腐食の発生が回避される。これにより、耐腐食性が向上する。また、アルミニウム−銅合金粉末を用いることにより、アルミニウム−銅合金粉の粒一つ一つの耐腐食性が向上し、燃料ポンプ用焼結軸受全体の耐腐食性が向上する。
1’ 圧粉体
1” 焼結体
1a 軸受面
1b 外径面
1c 端面
2 燃料ポンプ用焼結軸受
3 アルミニウム銅合金組織
4 酸化アルミニウム皮膜
5 遊離黒鉛
15 メッシュベルト式連続炉
20 ダイス
21 上パンチ
22 下パンチ
23 コア
40 燃料ポンプ
52 軸
D1 軸受面の内径寸法
db 気孔
di 気孔
do 気孔
Ti 圧縮層
To 圧縮層
Claims (12)
- 8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだモータ式燃料ポンプ用焼結軸受であって、この焼結軸受は、アルミニウム−銅合金が焼結された組織を有し、かつ前記焼結軸受の表層部の気孔を内部の気孔より小さくしたことを特徴とする燃料ポンプ用焼結軸受。
- 前記アルミニウム−銅合金の組織は、α相を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ用焼結軸受。
- 前記アルミニウム−銅合金の組織は、γ相とα相との比γ相/α相を、0<γ相/α相≦0.10としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料ポンプ用焼結軸受。
- 前記アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量%に対して、3〜10重量%の黒鉛が添加されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料ポンプ用焼結軸受。
- 前記燃料ポンプ用焼結軸受は、焼結助剤としての錫が添加されていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料ポンプ用焼結軸受。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料ポンプ用焼結軸受において、アルミニウムの含有量を9〜9.5重量%としたことを特徴とする燃料ポンプ用焼結軸受。
- 8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法であって、この製造方法は、原料粉末としてアルミニウム−銅合金粉、電解銅粉および燐−銅合金粉を用い、少なくとも、原料粉末に焼結助剤が添加された圧粉体を成形する成形工程と、前記圧粉体からアルミニウム−銅合金組織を有する焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を寸法整形するサイジング工程とを含んでいることを特徴とする燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
- 前記焼結助剤として、前記アルミニウム−銅合金粉、電解銅粉および燐−銅合金粉からなる原料粉末の合計100重量%に対して、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムが合計で0.05〜0.2重量%添加されていることを特徴とする請求項7に記載の燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
- 前記アルミニウム−銅合金粉の平均粒径d1と電解銅粉の平均粒径d2との比d2/d1を2〜3としたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
- 前記電解銅粉は、粉末形状が異なるもので構成され、アスペクト比が2以上の電解銅粉の割合W1と2未満の電解銅粉の割合W2との比W2/W1を3〜9としたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
- 8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法であって、この製造方法は、原料粉末として、銅単体の粉末を添加せず、アルミニウム−銅合金粉および燐−銅合金粉を用い、少なくとも、原料粉末に焼結助剤が添加された圧粉体を成形する成形工程と、前記圧粉体からアルミニウム−銅合金組織を有する焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を寸法整形するサイジング工程とを含んでいることを特徴とする燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
- 前記原料粉末としてのアルミニウム−銅合金粉が、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末であることを特徴とする請求項11に記載の燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
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