JP2017221973A - 重ね接合継手及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
接合継手の品質指標の一つである継手強度には、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断強さ(TSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。光線による接合継手において、特に、CTSは、従来の抵抗スポット溶接と同程度、又は、低下する傾向があり、炭素量の多い高強度鋼板の場合には、CTSが低くなることがあった。
このため、高強度鋼板に光線による接合を行った場合に、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた。
そこで、本発明は、このような実情に鑑み、継手強度に優れ信頼性の向上した重ね接合継手を提供することを課題とする。
重ね接合継手は、剥離方向に接合部に荷重が負荷されると、鋼板と溶融凝固部との溶融境界の近傍に応力が集中し破断に至り易いため、十分なCTS値を確保できないと考えられる。そこで、溶融境界近傍を熱処理することにより、その部分の靭性を向上させることを着想し、そのための熱処理箇所及び熱処理方法について種々調査した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
前記光線による点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、
該溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように、かつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように位置しており、
前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、前記再溶融凝固部より軟化している
ことを特徴とする重ね接合継手。
重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に高パワー密度を有する光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って溶融凝固させて、点状の溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成し、
次いで、該溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないようにかつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように、高パワー密度を有する光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、
さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して前記凝固再加熱部を前記再溶融凝固部より軟化させる
ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。
光線による点状の接合部を有する重ね接合継手において、更に、継手強度を向上させることが望まれていた。重ね接合継手は、剥離方向に接合部に荷重が負荷されると、鋼板と溶融凝固部との境界(溶融境界)の近傍、特に、鋼板合わせ面と溶融境界との交点近傍に応力が集中し、破断に至り易い。
そこで、光線による点状の接合部における溶融境界近傍の応力が集中する部分に熱処理することを検討した。
次に、この溶融凝固部の鋼板との溶融境界の内側に、ビーム径0.4mmの光線を、直径3.0mmの円周に沿って一周再照射して、照射部分を再溶融凝固させて、溶融凝固部の内側にシリンダー状の再溶融凝固部を有するとともに、その周囲に、再溶融凝固部3aの熱により再加熱された凝固再加熱部3bを有する光線による点状の接合部を形成した(図2(a)参照)。
なお、再照射の際には、再溶融凝固部の内側端部が、鋼板合わせ面2cの延長線より鋼板2a側であって、鋼板合わせ面と溶融境界との交点がビッカース硬さの測定点が焼戻し温度範囲に加熱される位置になるように光線の照射条件を調整した。
そして、それぞれの光線による接合部を含む接合継手の板厚方向断面において、鋼板合わせ面近傍位置のビッカース硬さの変化を測定した。
図1、2の(b)にビッカース硬さの変化を概略図で示す。
本発明の接合継手10は、図4の断面図に示すように、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、鋼板20a側から鋼板20aの限られた領域内に光線を照射し、光線による点状の接合部を形成して、複数の鋼板20a、20bを光線による重ね接合をしたものである。
光線による点状の接合部は、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、光線の照射により溶融凝固した点状の溶融凝固部30を有しており、さらに、溶融凝固部30は、内部に該溶融凝固部が再溶融した再溶融凝固部30aと、再溶融凝固部によって溶融凝固部が凝固後に再加熱された凝固再加熱部30bとを有している。なお、図4では、鋼板側の熱影響部は示していない。
ここで、光線による点状の接合部とは、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して点状に形成された溶融凝固部によって鋼板が相互に接合された部分をいう。
光線による点状の接合部に形成される溶融凝固部30は、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して形成された溶融凝固部である。
溶融凝固部30の幅W(光線の照射側から溶融凝固部を平面視したときの溶融凝固部の円相当径)は、継手強度等に応じて調整すればよく、特に限定されるものでないが、5〜12mmが例示される。好ましくは、6〜10mmである。
溶融凝固部30は、接合部を形成する複数の鋼板20a、20bに跨って形成されていれば、光線照射側と反対側の鋼板の外表面まで貫通していても、貫通していなくてもよい。
再溶融凝固部30aは、溶融凝固部30と鋼板との溶融境界40の内側の溶融凝固部30に光線を環状の軌跡に沿って再照射し、照射部分を再溶融凝固させて得られるシリンダー状の形状を有する部分であり、溶融凝固したままの組織となっている。なお、環状とは、輪郭が円形状又多角形状を意味する。円形状とは、再溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。
また、再溶融凝固部30aは、接合継手10の板厚方向において、その重ね合わせ方向の先端部50が重ね合わされた鋼板を貫通しないように形成されている。下板の裏面まで貫通すると、接合部のひずみが大きくなり、凝固割れが発生しやすくなるので、貫通しないように形成する。
図2では、再溶融凝固部3a(30a)の先端部の位置が鋼板合わせ面2c(20c)の延長線より光線照射側(上方)にある場合を示したが、図3に、先端部の位置が鋼板合わせ面2cの延長線より下方にある場合を示す。
凝固再加熱部30bは、光線による点状の接合部の溶融凝固部30に光線を環状に再照射し、再溶融凝固部30aの周囲に溶融境界を含むように形成される部分であり、再溶融凝固部30aより軟化している部分を含むものである。
凝固再加熱部30bは、再溶融凝固部30aからの距離によって熱影響が異なる。再溶融凝固部30aに隣接した部位では、母材の融点以下Ac1点温度以上に再加熱されるため、焼入組織となる。それより離れると、Ac1点温度以下の再加熱温度となり、焼き戻された組織となる。
なお、再溶融凝固部はミクロ組織の観察により判別することができるので、Wcは光線による接合後の接合部の断面から測定することができる。
本発明の接合継手に用いる鋼板は、特に限定されるものでなく、用途に応じた機械特性等が得られる化学成分や組織の鋼板とすればよい。また、本発明の接合継手に炭素含有量を0.10質量%以上の高強度鋼板を適用すると、十字引張強さの向上が顕著であり、このような鋼板を対象とすることが好ましい。
Aピラーの場合、270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。
次に、本発明の重ね接合継手の製造方法について説明する。
まず、(a)複数の鋼板を重ね合わせ、重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って前記領域の中心まで溶融凝固させて、点状の溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成することについて、図5を用いて説明する。
さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して前記凝固再加熱部を前記再溶融凝固部より軟化させることについて説明する。
図6(a)には、再溶融予定箇所に光線70を照射する方法の一例を示しており、光線70の照射予定箇所90を点線で示している。
光線70の照射では、白抜き矢印で示すように略円状に光線を走査する。その際に、光線の走査方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。
光線による点状の接合部の溶融凝固部30のうち鋼板合わせ面20aと溶融境界40との交点60から、少なくとも0.5mmの範囲の領域が焼き戻されるように再加熱するとよい。
光線による接合は、特に限定されるものでないが、リモートレーザ接合とすることが好ましい。リモートレーザ接合は、ロボットアームの先端に取り付けたガルバノミラーにより、光線を接合打点の間を高速で移動させて接合するものであり、接合の作業時間の大幅な短縮が可能になる。また、接合に用いる光線としては、例えば、CO2光線、YAG光線、ファイバー光線、DISK光線、半導体光線などの光線を用いることができる。
表3に、再溶融凝固部の形成条件(熱処理条件)を示す。ビーム径は、集光面での光線の直径である。なお、熱処理では、点状の溶融凝固部の形成と同じリモート接合装置を用いた。
CTSは、JIS Z3137にスポット接合の強度試験方法として記載されている方法を援用した。
2a、20a 鋼板
2b、20b 鋼板
2c、20c 鋼板合わせ面
3、30 光線による点状の接合部の溶融凝固部
3a、30a 溶融凝固部内に形成された再溶融凝固部
3b、30b 溶融凝固部内に形成された凝固再加熱部
40 鋼板と溶融凝固部の間の溶融境界
50 再溶融凝固部の重ね合わせ方向の先端部
60 鋼板合わせ面と溶融境界の交点
70 光線
80a、80b 照射予定箇所
90a、90b 照射予定箇所
X 板厚方向のビッカース硬さの測定位置
L1 鋼板表面と平行方向のビッカース硬さの測定範囲
L2 L1中の溶融凝固部の範囲
C 中心軸
W 溶融凝固部の円相当直径
Wa 再溶融凝固部の外側の円相当直径
Wb 再溶融凝固部の径方向の幅
Wc 鋼板合わせ面と溶融境界の交点から再溶融凝固部までの最短距離
Claims (7)
- 重ね合わされた複数の鋼板で構成され、光線による点状の接合部を有する重ね接合継手において、
前記光線による点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、
該溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように、かつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように位置しており、
前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、前記再溶融凝固部より軟化している
ことを特徴とする重ね接合継手。 - 前記凝固再加熱部のうち、前記鋼板の合わせ面の前記溶融境界から、前記再溶融凝固部に向かって0.5mmの範囲のビッカース硬さの平均値は、Hv390以下であり、かつ、前記再溶融凝固部のビッカース硬さの平均値よりHv70以上低いことを特徴とする請求項1に記載の重ね接合継手。
- 前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が1.0〜3.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重ね接合継手。
- 前記複数の鋼板が、表面処理皮膜を有する鋼板を1枚以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重ね接合継手。
- 複数の鋼板を重ね合わせ、高パワー密度を有する光線を照射して前記複数の鋼板を接合する重ね接合継手の製造方法において、
重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に高パワー密度を有する光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って溶融凝固させて点状の溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成し、
次いで、該溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないようにかつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように、高パワー密度を有する光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、
さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して前記凝固再加熱部を前記再溶融凝固部より軟化させる
ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。 - 前記光線の再照射は、前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が1.0〜3.0mmとなるように行われることを特徴とする請求項5に記載の重ね接合継手の製造方法。
- 前記複数の鋼板に、表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の重ね接合継手の製造方法。
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