JP2017226899A - 水酸化アルカリ製造装置及び水酸化アルカリ製造装置の運転方法 - Google Patents
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Abstract
Description
陰極液を外部から供給しない2室法電解槽では、陰極で生成する水酸化アルカリ水溶液の排出濃度は、アルカリ金属イオンとともに陽極室からイオン交換膜を介して陰極側に透過する膜透過水量によって支配的に決定されるため、任意の水酸化アルカリ排出濃度の調整は、イオン交換膜の透水率特性に応じて陽極液濃度を制御することで膜透過水量を調整することによって行われている。
ところでガス拡散電極を陰極に用いた食塩電解では、理論分解電圧が約0.96V に対して、運転電圧は約2.0Vである。水素発生型陰極を用いた食塩水の電気分解による水酸化ナトリウムの製造では、電気分解反応の理論分解電圧が約2.19Vに対して、電極過電圧やイオン交換膜等の電解槽を構成する材料の導電抵抗が加算される運転電圧は約3.0V程度である。従って省エネルギーという観点からはガス拡散電極を用いる方が有利であるが、運転電圧と理論分解電圧との電圧差は約1.04Vとなり、理論分解電圧差異とその運転電流との関係で熱損失となり電解槽加熱作用となる。
電解槽に供給する塩水の濃度と塩水の流量は、陰極液の濃度を調整するために制御されるため、複数の電解槽の運転電圧がほぼ同一であれば、塩水の温度と流量とを制御することで各電解セルあるいは各電解セルの群を適切な温度に制御できる。しかしこれらの間で運転温度に差異があると、温度調整を優先すると濃度調整が不適切になり、濃度調整を優先に行うと温度調整が不適切になり、合理的な運転ができなくなる。
なお、陽極、イオン交換膜及びガス拡散陰極を装着した電解槽内に電解槽外に通じる通路を形成し、該通路に冷却用媒体を流通させることにより電解槽を構成する導電部材を冷却し、ジュール熱による過度の温度上昇を抑制するガス拡散陰極装着電解槽の冷却構造が提示され、自由対流または強制対流により冷却用媒体を通路内に流通させる冷却方法が提案されている(特許文献3)。しかしこの冷却方法は本発明の課題を解決できる技術ではない。
本発明はこのような事情の下になされたものであり、電解セルあるいは各電解セルの群の間で運転温度の均一化を図り、高い電流効率で運転を行うことができる水酸化アルカリ製造装置及び水酸化アルカリの製造方法を提供することにある。
複数の電解セルと、
該複数の電解セルの各々に設けられ、電解セルを冷却するための冷却媒体が流通するための流通路と、
前記複数の電解セルの各々、または電解セルの群毎に設けられ、前記流通路に流通する冷却媒体の流量を個別に調節できる流量調整部と、
を備えたことを特徴とする。
複数の電解セルの各々に設けられた流通路に冷却媒体を流通させて電解セルを冷却しながら、前記電気分解を行う工程と、
前記複数の電解セルの各々、または電解セルの群毎に前記流通路に流通する冷却媒体の流量を個別に調節する工程と、を含むことを特徴とする。
図1は2室法電解槽である単極式電解槽の単体をなす(1単位である)ユニットセルを示す略解図であり、図2は図1のユニットセルの一部の詳細構造を示す断面図である。ユニットセルは、イオン交換膜1により陽極室(白抜き領域)2と陰極室(黒塗り潰し領域)3とを区画してなる6個の電解セルが積層され、互に隣接する電解セルの陽極室2が共通化されている。
また陰極室3の上部側には、酸素含有ガスの導入口31が形成され、この導入口31には図示しない酸素含有ガスの供給路が接続されている。陰極室3の下部側には、電解反応により生成された水酸化アルカリ水溶液である水酸化ナトリウム水溶液及び過剰酸素を排出する排出口32が形成され、この排出口32には、図示しない水酸化ナトリウム水溶液及び過剰酸素の排出路が接続されている。
各冷却室4の底部及び上面部には、夫々冷却水入口41及び冷却水出口42が形成されている。
冷却水を電解セルに供給するための構成部分を冷却システムと呼ぶとすると、冷却システムは、図3に示すように冷却水タンク51、循環ポンプ52、各々配管により構成される冷却水供給路53及び冷却水回収路54を備えている。冷却水供給路53は、冷却水タンク51から送られる冷却水を各ユニットセルに分配するために4本に分岐されている。4本に分岐された各分岐路には、4個のユニットセルの各々に供給される冷却水の流量を独立して(個別に)調整するための流量調整弁である手動弁V1〜V4が設けられている。また各ユニットセルを構成する6個の電解セルの冷却水出口42に接続された冷却水回収路54は、ユニットセル毎に合流し更にユニットセル毎の4本の合流路が合流して冷却水タンク51に接続されている。
第1のコントローラ63は、図3に示すように冷却水の圧力設定値と電解電流密度との関係を規定した例えば関数発生部63aと、関数発生部63aから出力された圧力設定値と圧力計62にて測定された圧力測定値との偏差に基づいて例えばPID演算により制御量を出力する調節部63bと、を備えている。関数発生部63aは、電解電流密度に基づいて圧力設定値を出力する出力部であるということもできる。関数発生部63aに入力される電解電流密度は、既述の4つのユニットセル(図4の符号Uで示すユニットセル)の全体に流れる電流、即ち直流電源から4つのユニットセルに供給される電流の検出値(電流検出部は図示していない)を一つのユニットセルの電極面積全体(陽極11の面積全体)で割った値である。なお第1のコントローラ63の関数発生部63a及び調節部63bはハード構成であってもソフトウェアであってもよい。関数発生部63をソフトウェアで構成する場合には、例えば冷却水の圧力設定値と電解電流密度との組を複数組メモリに入力し、入力されたデータをプログラムにより補間してグラフが作成される。冷却水の圧力設定値と電解電流密度との関係については作用説明の箇所において詳述する。
冷却水供給路53における圧力調整弁61と圧力計62との間には、熱交換器64が設けられ、熱交換器64の下流側には冷却水温度計65が設けられている。66は第2のコントローラであり、冷却水温度計65の温度検出値と温度設定値(設定温度)とに基づいて、熱交換器64の一次冷却水の供給量を、一次冷却水の流路に設けられた流量調整弁67により調整することにより、各ユニットセルに供給される冷却水の温度が設定温度に調整されるようになっている。
なお、冷却水の流量によっては冷却水の流下によってサイフォンがかかり陰極室3内の区画壁40等への圧が変わったり、冷却水が抜けたりする場合があるため、冷却水回収路54におけるユニットセルよりも高い位置に、サイフォンブレーカー55を付けることが望ましい。
サイフォンブレーカー55については、ユニットセル毎に取り付けた場合(例として図5)と、積層構造体毎に取り付けた場合(例として図6)のどちらでも同様の効果を望むことができる。サイフォンブレーカー55は必要箇所 に付ければよいが、管理面から積層構造体毎に設けることが好ましい。
電解セルの内部温度(陽極室2の温度や陰極の表面温度)と冷却水温度とが近接しすぎると伝熱効率が低下し、電解槽内部温度の均一性は向上するので、電解槽内部温度と冷却水供給温度と温度差は5℃〜60℃が好ましく、10℃〜40℃がより好ましく、10℃〜25℃が更に好ましい。また、陽極室2の温度と冷却水出口42の温度との温度差異は1℃以上が好ましく、3℃以上がより好ましい。
従って運転電圧が高くなって電解セルの温度が上昇しようとするユニットセルに対しては相対的に大きな流量で冷却水が供給され、運転電圧が低くなって電解セルの温度が下がろうとするユニットセルに対しては相対的に小さな流量で冷却水が供給される。このため、ユニットセル間の温度差が小さく抑えられる。
また図9は、6個の電解セルを用い、各電解セル毎に独立して冷却水流量を調整できる試験装置において、電解電流密度と冷却水流量との関係を示すグラフであり、冷却水流量が最大の電解セルと最小の電解セルとについて示している。図8及び図9から、電解電流密度が大きくなるにつれて電解セルの温度が上昇しようとするので、温度上昇を抑えるために冷却作用が働いていることが分かる。
以上のように電解電圧の差異に伴う発熱量の差異を打ち消すように各冷却対象であるユニットセル毎の冷却水入口41の抵抗を調整し、全体の冷却水流量が電解電流密度に対して比例で変化するように冷却水供給圧力を制御する。
電流停止により、電解槽の運転を停止した際に、冷却媒体の供給を継続すると共に、電解槽に対する冷却媒体の供給温度を60℃以下とすることで電解槽の温度を速やかに引き下げ、電解槽停止後の両極間電位差からなる起電力による電解槽構成材料の劣化を抑制することができる。
そしてユニットセルの温度を好適な温度範囲に制御することにより、イオン交換膜の電流効率、耐久性を高めるとともに、陰極で生成する水酸化ナトリウム溶液中の塩化物イオン濃度を低下させることができる。
なお、冷却水の流量を個別に制御する単位としては、既述のユニットセルの単位に限られるものではなく、設備や劣化の状態などに応じて任意の電解セルあるいは電解セルの群の単位であってもよい。
また本発明は、全てのユニットセルが同一電流回路上で運転される装置、即ち共通の直流電源から給電される電流回路上で運転される装置に限らず、ユニットセルごとにあるいは複数のユニットセルからなるグループごとに直流電源が設けられた装置であっても適用できる。
ア)上下に穴をあけて空気が下から入り上に抜ける自然吸排気で空冷する方法
イ)ブロワ―等で強制的に送り込み空冷する方法
ウ)強制的に空気を送り込む方法に水のミストを含ませる方法
エ)水をスプレーする方法
オ)冷却水を通水する方法
が挙げられる。
記載の順番で除熱量が多くなりア)イ)は効果が少なく、ウ)エ)オ)は好ましい例である。ウ)エ)は水の排出を容易にする目的で、電解槽上部から供給し、下部方向に抜く方式が好ましいが、ウ)は供給水量を多くすることが難しく除熱効果も限定される。またエ)は冷却室に水圧がほとんどかからないのでシール構造を簡素にしても水が漏れにくい利点を有する。しかし冷却水が少ないと除熱量が少ないか上部と下部の除熱量に差を生じやすくなり、電解面からの均一な除熱には冷却水を大量に取り扱うため冷却室のシール構造を堅固にする必要がある。方法オ)では十分な冷却水流量により、冷却水入口と出口の温度差を小さくすることができ、電解面からの均一な除熱を行う上では好ましく、電解槽下部からの上部に向けて満液通水とするのが、冷却水流量の増大にも好ましい。
試験に用いた電解セルはクロリンエンジニアズ株式会社製造DCM型電解槽のガス拡散電極法改造型にて実施した。この電解槽は水素発生電極としてステンレスメッシュに活性炭を担持させた電極を用いていたが、ガス拡散電極法改造型への改造時、この電極上にガス室と冷却水室の区画壁を溶接により設置し、陰極室内に冷却構造を形成した。イオン交換膜は旭化成ケミカルズ株式会社製造AciplexF-4403D、陰極のガス拡散電極はペルメレック電極株式会社製GDE-2008、陽極にはペルメレック電極株式会社製DSEを用いた。各電解セル(ユニット)に供給した塩水や冷却水等の運転条件を示すが、電解有効面積当たりとして記載した。この中で電極やイオン交換膜の劣化度の異なる電解セルを6個用意し、各電解セルの電極を直列に接続すると共に各電解セル毎に独立して冷却水を供給できるように構成し、各電解セル(ユニットセル)間で電解電圧に差異が発生する条件を設定した。
他の条件として各ユニットセルへの塩水等の供給条件を表1に示した。なお、冷却無しのユニットセル間最大温度差異の推測は、電解電圧の差異(最も電圧の高いユニットセルと最も低いユニットセルとの差異)から算出される熱収支差異を温度差として算出し、温度上昇に伴う電圧低下分は無視して算出した結果を表1に示した。
実施例1と同じ装置を用いて、供給塩水の流量や濃度等の条件を変更し、電流密度の条件を2通りに設定して実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示した。
冷却システムとしてどのような冷却構造がより好ましいかを確認するため、実施例1と同様の装置であるが、1つのユニットセルを用いて冷却方法の違いによる冷却効果を確認した。下記に示す条件ウ)、エ)、オ)は冷却時の電解槽温度が80℃となる条件で実施した。比較例である条件ア)、イ)は85℃で実施し、その他実施条件と結果を表3に記載した。
実施方法の記号ア)〜オ)は以下の通りである。
ア)上下に穴をあけて空気が下から入り上に抜ける自然吸排気で空冷する方法
イ)ブロワ―等で強制的に空気を送り込み空冷する方法
ウ)強制的に空気を送り込む方法に水のミストを含ませる方法。上から空気と水ミストを入れた
エ)水をスプレーする方法。上から水をスプレーし全面接触させた。
オ)冷却水を下から入れ上に抜いた。
なお、表3において、空気、水、冷却水の流量及び除熱量は、電解有効面積当たりの値として記載してある。
(実施例4と比較例3)
冷却している実施例4の方が電流効率低下の影響が少なく、かつ約運転日数400日以降で電流効率低下がほぼ見られなくなり高性能を維持できた。
2 陽極室
3 陰極室
4 冷却室
11 陽極
12 液保持層
13 陰極(ガス拡散電極)
21 塩水(塩化ナトリウム溶液)の導入口
21a 食塩水の供給路
22 食塩水と塩素ガスの排出口
22a 食塩水及び塩素ガスの排出路
31 酸素含有ガスの導入口
32 水酸化ナトリウム水溶液及び過剰酸素の排出口
40 区画壁
41 冷却水入口
42 冷却水出口
51 冷却水タンク
52 循環ポンプ
53 冷却水供給路
54 冷却水回収路
55 サイフォンブレーカー
61 圧力調整弁
62 圧力計
63 コントローラ
63a 関数発生部
63b 調整部
64 熱交換器
65 温度計
66 第2コントローラ
67 一次冷却水流量調整弁
68 バイパス路
69 冷却水タンク循環路
70 冷却水タンクへの補充冷却水の供給路
71 オーバーフロー
V0〜V6、V 開閉弁(手動弁)
Claims (12)
- イオン交換膜により陽極室と陰極室に区画され、該陽極室に陽極を設置し、該陰極室にガス拡散電極を設置して電解セルを構成し、陽極室に塩化アルカリ水溶液を、陰極室に酸素含有ガスをそれぞれ供給しながら電気分解を行い、水酸化アルカリを製造する装置において、
複数の電解セルと、
該複数の電解セルの各々に設けられ、電解セルを冷却するための冷却媒体が流通するための流通路と、
前記複数の電解セルの各々、または電解セルの群毎に設けられ、前記流通路に流通する冷却媒体の流量を個別に調節できる流量調整部と、
を備えたことを特徴とする水酸化アルカリ製造装置。 - 前記冷却媒体が流通するための流通路は、ガス拡散電極から見て陰極室内を介して対向する壁部側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の水酸化アルカリ製造装置。
- 電流路上で互に並列に接続された電解セルの群であるユニットセルが複数直列に接続されるか、あるいは互に直列に複数の電解セルである複数のユニットセルが接続され、
前記流量調整部は、前記ユニットセル毎に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の水酸化アルカリ製造装置。 - 複数の電解セルの各々の流通路から排出される冷却媒体を回収する回収タンクと、
該回収タンクに回収された冷却媒体を設定温度に再冷却する冷却部と、
該冷却部にて再冷却された冷却媒体を供給する供給機構と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水酸化アルカリ製造装置。 - 冷却媒体として電気伝導度が10マイクロジーメンス以下のイオン交換水を用いることを特徴とする請求項記1ないし4のいずれか一項に記載の水酸化アルカリ製造装置。
- 複数の電解セルの各々の流通路を循環する冷却媒体のpH及び電気伝導度の少なくとも一方を計測する計測部を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の水酸化アルカリ製造装置。
- イオン交換膜により陽極室と陰極室に区画され、該陽極室に陽極を設置し、該陰極室にガス拡散電極を設置して電解セルを構成し、陽極室に塩化アルカリ水溶液を、陰極室に酸素含有ガスをそれぞれ供給しながら電気分解を行い、水酸化アルカリを製造する装置を運転する方法において、
複数の電解セルの各々に設けられた流通路に冷却媒体を流通させて電解セルを冷却しながら、前記電気分解を行う工程と、
前記複数の電解セルの各々、または電解セルの群毎に前記流通路に流通する冷却媒体の流量を個別に調節する工程と、を含むことを特徴とする水酸化アルカリ製造装置の運転方法。 - 電流路上で互に並列に接続された電解セルの群であるユニットセルが複数直列に接続されるか、あるいは互に直列に複数の電解セルである複数のユニットセルが接続され、
前記ユニットセル毎に、前記流通路に流通する冷却媒体の流量を個別に調節する工程を含むことを特徴とする請求項7記載の水酸化アルカリ製造装置の運転方法。 - 複数の電解セルの運転電流密度条件に応じて、当該複数の電解セルに供給する冷却媒体の全体流量を冷却媒体供給圧力の制御によって間接的に調節し、各電解セル毎の前記流通路または電解セルの群ごとの前記流通路に供給する冷却媒体の流量配分を流量調整部によって調節することを特徴とする請求項7または8記載の水酸化アルカリ製造装置の運転方法。
- 複数の電解セルの各々の流通路から排出される冷却媒体を回収する回収タンクに回収する工程と、
該回収タンクに回収された冷却媒体を設定温度に再冷却する工程と、
該冷却部にて再冷却された冷却媒体を供給する工程と、を備えたことを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載の水酸化アルカリ製造装置の運転方法。 - 通電前の電解セルの昇温操作において、前記流通路に供給する冷却媒体の温度を60℃以上とすることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一項に記載の水酸化アルカリ製造装置の運転方法。
- 電流停止により、電解セルの運転を停止した際に、冷却媒体の供給を継続するとともに、冷却媒体の供給温度を60℃以下とすることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか一項に記載の水酸化アルカリ製造装置の運転方法。
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