JP2018090878A - 熱間プレス成形用鋼板および熱間プレス成形品、ならびに熱間プレス成形品の製造方法 - Google Patents

熱間プレス成形用鋼板および熱間プレス成形品、ならびに熱間プレス成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱間プレス成形後に形成される塗膜との密着性に優れた熱間プレス成形品の製造に用いられる熱間プレス成形用鋼板を提供する。【解決手段】本発明の熱間プレス成形用鋼板は、熱間プレス成形に用いられる鋼板であって、素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、亜鉛系めっき層;およびZn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むリン酸塩の皮膜を有しており、前記リン酸塩の皮膜がZnを含むリン酸亜鉛皮膜の場合、前記リン酸亜鉛皮膜におけるリン酸亜鉛またはその水和物の付着量は、リン酸亜鉛換算で0.40〜5g/m2である。【選択図】なし

Description

本発明は、熱間プレス成形用鋼板および熱間プレス成形品、ならびに熱間プレス成形品の製造方法に関する。詳細には本発明は、例えば各種自動車の車体や部品などのように高い強度が要求される熱間プレス成形品、および当該熱間プレス成形品を製造するための素材として有用な熱間プレス成形用鋼板に関する。
近年、自動車の軽量化のため、自動車の車体や部品などに引張強度が例えば980MPaを超える高強度鋼板が適用されている。一方、鋼板の高強度化に伴って、部品加工時の金型寿命低下、スプリングバックによる部品形状のばらつきなどの問題が増大している。上記問題を解決するため、熱間プレス成形またはホットスタンプと呼ばれる成形方法が開発されている。熱間プレス成形とは、鋼板をAc1変態点(例えば約900℃)以上の温度に加熱してオーステナイト化し、成形し易くした後に高温域でプレス成形し、焼入れする方法である。熱間プレス成形によれば、鋼板の変形抵抗を低減できるため、上述したスプリングバックの問題も生じ難い。更に熱間プレス成形では、プレス成形と同時に焼入れを行うため、所望とする高強度を確保できる。よって、熱間プレス成形は、特に引張強度が1470MPa以上の高強度鋼板の成形方法として広まりつつある。
ところで自動車用部品のうち、高耐食性が求められるサイドメンバ、サイドシル、クロスメンバ、ピラー下部などの部品では、犠牲防食効果を発揮することが必須である。よって、これまでは、耐食性に優れた亜鉛めっき鋼板を素地鋼板として用い、上記亜鉛めっき鋼板に冷間加工を施して自動車用部品を製造してきた。近年では、上記亜鉛めっき鋼板を熱間プレス成形によって成形することで、高強度かつ高耐食性の自動車用部品が製造されるようになっている。
しかしながら、亜鉛めっき鋼板を用いて熱間プレス成形すると、加熱によりめっき層中の亜鉛が酸化し、熱間プレス成形後の鋼板表面には亜鉛の酸化皮膜(酸化亜鉛)が生成する。そのため、熱間プレス成形により得られた成形品の上に、更なる防錆目的で化成処理皮膜や、更にその上に電着塗装などにより塗膜を形成すると、上記塗膜との密着性(塗膜密着性)が低下する。その結果、製品としての価値が低減し、自動車部品として適用できないという問題がある。
そこで、例えば特許文献1には、熱間プレス成形後の塗装後耐食性と塗膜密着性の双方を安定して得ることができる技術が開示されている。詳細には特許文献1には、亜鉛系めっき鋼板を用いて熱間プレス成形を行った後に適度のショットブラストを施すことで、熱間プレス成形品の塗膜密着性が一層安定することが記載されている。また、亜鉛系めっき鋼板を加熱・成形すると、鉄−亜鉛固有相を含む亜鉛系めっき層とその上層に生成した酸化亜鉛層を有する皮膜構造となり、さらに、この酸化亜鉛層の一部を除去することにより、目的とする性能を有する熱間プレス成形品が安定して得られることも記載されている。
特開2004−323897号公報
上記特許文献1は、熱間プレス成形後にショットブラストを施す技術であり、生産工程および生産時間の増加を招いて生産性が低下する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱間プレス成形後、塗装などにより形成される塗膜との密着性に優れた熱間プレス成形品、および上記熱間プレス成形品を製造するための熱間プレス成形用鋼板、ならびに熱間プレス成形品の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の熱間プレス成形用鋼板は、熱間プレス成形に用いられる鋼板であって、素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、亜鉛系めっき層;およびZn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むリン酸塩の皮膜を有しており、前記リン酸塩の皮膜がZnを含むリン酸亜鉛皮膜の場合、前記リン酸亜鉛皮膜におけるリン酸亜鉛またはその水和物の付着量は、リン酸亜鉛換算で0.40〜5g/m2であるところに要旨を有する。なお、リン酸塩の皮膜がリン酸亜鉛の水和物を含む場合のリン酸亜鉛の換算量は、水和物の化学式の式量と水和水が無い化学式の式量の比を水和物付着量に掛け合わせて算出すれば良い。
また、上記課題を解決し得た本発明の熱間プレス成形品は、素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、亜鉛系めっき層;およびZn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む無水リン酸塩を有しているところに要旨を有する。
また、上記課題を解決し得た本発明に係る熱間プレス成形品の製造方法は、上記熱間プレス成形用鋼板を熱間プレス成形するところに要旨を有する。
本発明によれば、塗膜密着性に優れた熱間プレス成形品が得られる。
図1は、塗膜剥離試験で用いたサンプルの概略説明図である。
本発明者らは、上記目的を達成するため、検討を行った。その結果、素地鋼板として、亜鉛系めっき層の上にZn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むリン酸塩の皮膜(以下、「リン酸塩皮膜」と略記する場合がある。)を有する鋼板を用いると、特許文献1のように熱間プレス成形後にショットブラストなどの徐錆工程を余分に行わなくても塗膜密着性に優れた熱間プレス成形品が得られることを見出し、本発明を完成した。
なお、一般に亜鉛系めっき層の上には電着塗装膜などの塗膜が形成され、必要に応じて、当該塗膜の下地層としてリン酸亜鉛皮膜などが形成されている。本発明では、(ア)リン酸塩皮膜に含まれ得る種々の金属のうちZn、Fe、Ca、Mnの金属が熱間プレス後の塗膜密着性の向上に有用であることを見出した点、および(イ)リン酸亜鉛皮膜におけるリン酸亜鉛またはその水和物の付着量を所定範囲に制御することによって優れた塗膜密着性が得られることを見出した点に技術的意義を有する。
本明細書において塗膜密着性とは、亜鉛系めっき層の上に通常施される電着塗装膜などの塗膜との密着性を意味する。亜鉛系めっき層の上には通常、耐食性向上のため、上記塗膜が形成される。必要に応じて、上記塗膜の下地層として、部品成形後にリン酸亜鉛皮膜などの化成処理皮膜が形成されるため、上記化成処理皮膜を有する場合は、上記化成処理皮膜を介した上での上記塗膜との密着性を意味する。塗膜密着性は、特に塩化物イオンを含む腐食環境において顕著に劣化する。その原因は、塗膜に浸潤した水に含まれる溶存酸素と塩化物イオンにより、酸化亜鉛の下に存在する亜鉛系めっき層の腐食が進行するためと考えられている。本発明によれば、後記する実施例の欄で実証したとおり、塩化物イオンを含む苛酷な腐食環境下での塗膜密着性が高められる。
本発明によって塗膜密着性が向上する理由は詳細には不明であるが、以下のように考えられる。
前述したように塗膜密着性が低下する理由としては、熱間プレス成形時の加熱により、亜鉛系めっき層表面の亜鉛が大気雰囲気中の酸素によって酸化されて酸化亜鉛が生成することが知られている。更に本発明者らの検討結果によれば、上記加熱により、素地鋼板中のMnが亜鉛系めっき層の表面に拡散し、酸化して生成するZnMn24などのMn含有酸化物も、やはり塗装後の塗膜密着性を低下させることが判明した。これに対し、本発明のようにリン酸塩皮膜を亜鉛系めっき層の上に設けると、亜鉛系めっき層表面のMn濃度が低下して塗膜密着性が改善した。よって、上記リン酸塩皮膜は、酸化亜鉛およびMn含有酸化物の生成を防止するためのバリア層として有効に作用しており、その結果、Mnの酸化に寄与する酸素の素地鋼板への供給、更には亜鉛系めっき層中の亜鉛の酸化に寄与する酸素の亜鉛系めっき層への供給が遮断、抑制されたと推察される。
まず、本発明の熱間プレス成形用鋼板について説明する。上述したとおり、本発明の熱間プレス成形用鋼板は、素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、亜鉛系めっき層、および所定のリン酸塩皮膜を有する点に特徴がある。
本発明に用いられる素地鋼板(母材鋼板)の種類は特に限定されず、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板のいずれも用いることができる。詳細には、例えば熱間圧延鋼板表面の酸化皮膜を除去した鋼板、冷間圧延鋼板に、更に焼鈍などの熱処理を施した鋼板、上記の熱処理後に表面を洗浄した鋼板などを用いることができる。
上記素地鋼板の化学成分組成は、高強度の熱間プレス成形品が得られる限り、特に限定されないが、例えば、以下のように制御することが好ましい。
C:0.15〜0.4%
Cは、熱間プレス成形により得られるプレス成形品の強度を得るために重要な元素である。上記観点から、C量は0.15%以上であることが好ましく、より好ましくは0.18%以上、更に好ましくは0.20%以上である。一方、C量が過剰になると、プレス成形品の溶接性やプレス成形時の延性を確保することが困難である。上記観点から、C量は、0.4%以下であることが好ましく、より好ましくは0.38%以下、更に好ましくは0.35%以下である。
Si:0%超、3%以下
Siは、焼入れ時に残留オーステナイトを形成させる作用を有する。また、固溶強化によって、延性をあまり劣化させずに強度を高める作用も有する。このような効果を有効に発揮させるためには、Si量は0.5%以上であることが好ましく、より好ましくは1.0%以上、更に好ましくは1.2%以上である。一方、Si量が過剰になると、熱間プレス後の靭性などが劣化する。よって、Si量は3%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下、更により好ましくは1.8%以下である。
Mn:0〜3%
Mnは、必要によって添加される元素である。Mnは焼入れ性を高め、加熱後の冷却中にフェライト、パーライト、ベイナイトの生成を抑制し、高強度の確保に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Mn量は0.5%以上であることが好ましく、より好ましくは0.8%以上、更に好ましくは1.0%以上である。一方、熱間圧延の負荷などを考慮すると、Mn量は3%以下であることが好ましく、より好ましくは2.8%以下、更に好ましくは2.5%以下、更により好ましくは2.1%以下である。
Al:0%超、0.10%以下
Alは、脱酸元素として有用な元素である。上記観点から、Al量を好ましくは0%超、より好ましくは0.01%以上とする。しかしながら、Al量が過剰になるとAl23の生成により延性などが劣化する。よって、Al量は0.10%以下であることが好ましく、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.05%以下である。
B:0〜0.01%
Bは、必要によって添加される元素であり、鋼板の焼入れ性向上に有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、B量は、好ましくは0.0002%以上、より好ましくは0.0003%以上、更に好ましくは0.0005%以上である。一方、B量を過剰になると上記効果が飽和するため、B量は0.01%以下であることが好ましく、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.005%以下である。
本発明に用いられる素地鋼板の基本的な化学成分組成は上記の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物である。上記不可避的不純物としては、例えばP、S、N、O、Hなどの製造上不可避的に含まれる不純物が挙げられる。また、本発明による上記特性を阻害しない程度の微量成分、例えばMg、Ca、Sr、Baの他、Laなどの希土類元素;Zr、Hf、Ta、W、Moなどの炭化物形成元素などが含まれていても良い。
上記素地鋼板は、必要によって、以下に記載のとおり、(a)Ti:0%超、0.1%以下、(b)Cr、Ni、およびCuよりなる群から選択される1種以上:合計で0%超、1%以下などの選択成分を含有することができる。
Ti:0%超、0.1%以下
Tiは、Nを固定し、Bを固溶状態で維持して焼入れ性の改善に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるためには、Ti量は0.04%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましく0.06%以上である。しかしながら、Ti量が過剰になって0.1%を超えると、TiCが多量に形成されて、析出強化により強度は上昇するが延性が低下する。そのため、Ti量は0.1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.09%以下、更に好ましくは0.08%以下である。
Cr、Ni、およびCuよりなる群から選択される1種以上:合計で0%超、1%以下
Cr、Ni、およびCuは、加熱後の冷却中におけるフェライト、パーライトおよびベイナイトの生成を防止し、残留オーステナイトの確保に有効に寄与する元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。このような効果を有効に発揮させるためには、上記元素の合計量は0.01%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.06%以上である。なお、上記元素の合計量が増加するにつれて添加コストが上昇するため、上記元素の合計量は1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.9%以下、更に好ましくは0.8%以下である。
本発明の熱間プレス成形用鋼板は、上記素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、亜鉛系めっき層、および所定のリン酸塩皮膜を有する。
ここで、上記「亜鉛系めっき層、および所定のリン酸塩皮膜」の層は、素地鋼板の少なくとも片面に存在していれば良く、素地鋼板の両面に存在していても良い。耐食性の更なる向上を考慮すれば、素地鋼板の両面に上記「亜鉛系めっき層、および所定のリン酸塩皮膜」の層を有することが好ましい。
詳細には、まず、上記素地鋼板の上(直上)に、亜鉛を主体とする亜鉛系めっき層を有する。亜鉛主体の亜鉛系めっき鋼板を用いることにより、自動車の走行時に飛び石などによって生じる塗膜やめっき層のチッピングに起因する腐食を防止して、チッピングした箇所の耐食性確保に必要な犠牲防食性を確保することができる。
ここで「主体とする」とは、亜鉛をおおむね、75質量%以上含むものを意味し、亜鉛を100質量%含む純亜鉛めっき鋼板も含まれる。亜鉛以外に、Fe、Ni、Alなどの合金元素を含んでいても良く、例えばFe−Zn合金めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Ni−Zn合金めっき鋼板、Al−Zn合金などが挙げられる。
これらのうち上記Al−Zn合金としては、例えば典型的な溶融めっきのように少量(0.05〜0.2%程度)のAlを含むAl−Znめっき鋼板が挙げられる。或は、例えばガルバリウム鋼板(登録商標)(アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板)、ガルタイト鋼板(JIS G3317に規定する溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板であり、ガルファンとも呼ばれる。)などのAl−Zn合金も使用可能である。
上記亜鉛系めっき層におけるZnの付着量(Znめっき付着量)は、塗装後耐食性向上の観点から、片面当たり、30g/m2以上であることが好ましい。より好ましくは40g/m2以上である。但し、Znの付着量が多すぎても上記効果は飽和して経済的に無駄であるため、おおむね、100g/m2以下であることが好ましい。より好ましくは85g/m2以下である。
上記亜鉛系めっき層の上(直上)に所定のリン酸塩皮膜を有する。本発明の鋼板は特にZn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むリン酸塩の皮膜を設けた点に特徴があり、これにより、塗膜密着性が向上する。
ここで「Zn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む」とは、リン酸塩中にこれらの金属が一種または二種以上含まれていれば良く、当該金属の存在形態は特に限定されない。例えばZnの場合、リン酸亜鉛などの化合物として存在しても良いし、当該化合物は無水物として存在しても良いし、Zn単独で存在しても良いし、これらの存在形態が混在していても良く、要するにZnを含むリン酸塩の全てを包含し得る。詳細には、金属の存在形態は、後述するリン酸塩皮膜形成方法(浸漬型、反応型、焼付け型など)によっても相違する。例えば反応型のようにリン酸塩処理液を素地鋼板に吹き付けて反応させてリン酸塩皮膜を形成する場合、リン酸亜鉛の水和物[例えばZn3(PO42・4H2O]が存在し易い。一方、焼付け型のようにリン酸塩処理液を素地鋼板に塗布した後加熱して水分を飛ばして焼付けてリン酸塩皮膜を形成する場合、水分を含まないリン酸亜鉛[例えばZn3(PO42]が存在し易い。いずれの存在形態でも、所望の塗膜密着性向上効果が得られる。Zn以外の、Fe、Ca、Mnについても同様である。
なお、上記リン酸塩皮膜は、少なくともZnを含むことが好ましい。例えば上記反応型によってリン酸塩皮膜を形成する場合、その際、被処理材である亜鉛系めっき鋼板表面の亜鉛がリン酸塩皮膜中に一部含有され易いからである。
リン酸塩の皮膜がZnを含むリン酸亜鉛皮膜の場合、当該皮膜におけるリン酸亜鉛[Zn3(PO42]またはその水和物[Zn3(PO42・4H2O]の付着量は0.40〜5g/m2である。上記付着量が0.40g/m2未満の場合、後記する実施例に記載のとおり、所望とする塗膜密着性が得られない。好ましい付着量は、0.6g/m2以上であり、より好ましくは0.8g/m2以上である。上記付着量の上限は塗膜密着性の観点からは特に限定されないが、5g/m2を超えると皮膜の形成に時間を要し、生産コストが増加するうえ、上記効果も飽和する傾向にあるため、5g/m2以下とする。好ましい付着量は4.0g/m2以下であり、より好ましくは3.0g/m2以下である。
また、リン酸塩の皮膜がFeを含むリン酸鉄皮膜の場合、当該皮膜におけるリン酸鉄またはその水和物の好ましい付着量は0.3〜4.0g/m2である。上記付着量が0.3g/m2未満の場合、所望とする塗膜密着性が得られない。より好ましい付着量は0.5g/m2以上である。上記付着量の上限は塗膜密着性の観点からは特に限定されないが、4.0g/m2を超えると皮膜の形成に時間を要し、生産コストが増加するうえ、上記効果も飽和する傾向にあるため、上限を4.0g/m2以下とすることが好ましい。より好ましい付着量は3.5g/m2以下であり、更に好ましくは3.0g/m2以下である。
また、リン酸塩の皮膜がCaを含むリン酸カルシウム皮膜の場合、当該皮膜におけるリン酸カルシウムまたはその水和物の好ましい付着量は0.2〜3.5g/m2である。上記付着量が0.2g/m2未満の場合、所望とする塗膜密着性が得られない。より好ましい付着量は、0.3g/m2以上である。上記付着量の上限は塗膜密着性の観点からは特に限定されないが、3.5g/m2を超えると皮膜の形成に時間を要し、生産コストが増加するうえ、上記効果も飽和する傾向にあるため、上限を3.5g/m2以下とすることが好ましい。より好ましい付着量は2.5g/m2以下である。
また、リン酸塩の皮膜がMnを含むリン酸マンガン皮膜の場合、当該リン酸マンガン皮膜におけるリン酸マンガンまたはその水和物の好ましい付着量は、リン酸マンガン換算で0.3〜4.0g/m2である。なお、リン酸塩の皮膜がリン酸マンガンの水和物を含む場合のリン酸マンガンの換算量は、水和物の化学式の式量と水和水が無い化学式の式量の比を水和物付着量に掛け合わせて算出すれば良い。上記付着量が0.3g/m2未満の場合、所望とする塗膜密着性が得られない。より好ましい付着量は、0.5g/m2以上である。上記付着量の上限は塗膜密着性の観点からは特に限定されないが、4.0g/m2を超えると皮膜の形成に時間を要し、生産コストが増加するうえ、上記効果も飽和する傾向にあるため、上限を4.0g/m2以下とすることが好ましい。より好ましい付着量は3.5g/m2以下であり、更に好ましくは3.0g/m2以下である。
次に、本発明の熱間プレス成形用鋼板を製造するための好ましい方法について説明する。
まず、素地鋼板を用意する。前述したとおり、素地鋼板の種類は特に限定されず、熱延鋼板、冷延鋼板の両方が用いられる。熱延鋼板の製造方法も特に限定されず、例えば熱間圧延前の加熱温度:約1100〜1300℃、仕上げ圧延温度:約800〜950℃、巻取り温度:約500〜700℃にて製造することができる。冷延鋼板を製造する方法も特に限定されず、例えば熱延鋼板に対して、例えば冷延率3〜70%の冷間圧延を施して製造することができる。
必要に応じて、冷延鋼板に対して、更に焼鈍などの熱処理を行ってもよい。焼鈍により、素地鋼板の硬さを調節でき、製造性、通板安定性などを改善することができる。
素地鋼板の板厚は、熱延鋼板の場合、例えば2.0〜3.5mm;冷延鋼板の場合、例えば0.8〜1.8mmであることが好ましい。
次に、上記素地鋼板に亜鉛系めっき層を形成する。めっき層の形成方法は特に限定されず、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっきを採用することができる。めっき条件は特に問わず、一般的に行われている方法を採用することができる。また、上記めっき後に合金化処理を更に行ってもよい。具体的には、亜鉛系めっき層の種類や膜厚などに応じて、適宜好適なめっき方法を採用すれば良い。
例えば溶融亜鉛めっき層を形成するときの好ましいめっき条件は、めっき槽の浴温度:420〜480℃程度、浸漬時間:1〜10秒程度である。合金化処理も特に限定されないが、例えば大気や窒素などの雰囲気下、470〜580℃で20秒〜10分間保持することが好ましい。上記合金化温度から室温までの冷却条件も特に限定されないが、例えば、10〜50℃/秒程度の平均冷却速度で冷却を行うことが好ましい。電気亜鉛めっきを採用する場合、例えばNi−Znめっきを用いるとウィスカの抑制に有効である。
なお、塗装後耐食性向上の観点から、亜鉛系めっき層におけるZn量の付着量を、好ましくは30〜100g/m2の範囲に制御するためには、例えばめっき時間、めっき層中のZn量、めっき浴からの引き上げ速度、ガスワイピングのガス吹き付け量などを適切に制御することが好ましい。
次に、上記亜鉛系めっき層の上にリン酸塩皮膜を形成する。リン酸塩皮膜の形成方法は特に限定されず、通常の方法を用いることができる。代表的な形成方法として、リン酸塩処理液に素地鋼板を浸漬する方法(浸漬型)、リン酸塩処理液を素地鋼板に吹き付けて反応させる方法(反応型)、リン酸塩処理液を素地鋼板に塗布し、約60℃〜250℃で加熱して水分を飛ばして焼付ける方法(焼付け型)が挙げられるが、本発明ではいずれも採用することができる。
上記反応型の反応条件も特に限定されない。例えば反応時間は、亜鉛系めっき層とリン酸塩処理液との化学反応によってリン酸塩が表面に析出する時間を確保し得るよう、好ましくは約5秒以上、より好ましくは10秒以上である。但し、長時間反応させても生産効率が低下し、リン酸塩皮膜による塗膜密着性向上効果も飽和するため、好ましくは約120秒以下、より好ましくは60秒以下とする。
また、上記浸漬型の浸漬条件も特に限定されず、例えば、リン酸塩処理浴を用意して、その中に鋼板を潜らせて浸漬すれば良い。
以上、本発明の熱間プレス成形用鋼板について説明した。
本発明の熱間プレス成形品は、素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、亜鉛系めっき層;およびZn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む無水リン酸塩を有している。本発明の熱間プレス成形品は、上記鋼板を熱間プレス成形して製造される。
熱間プレス成形の条件は特に限定されず、当該技術分野で用いられる方法を採用することができる。具体的には、素地鋼板のブランクを、その後の熱間プレス成形時の急冷によって所望の部品硬さが得られる温度、一般的には900℃程度まで10分程度で加熱し、プレス機まで搬送して熱間プレス成形を行うことにより、熱間プレス成形品を製造する。
なお、本発明鋼板を用いて熱間プレス成形を行う場合、リン酸塩が分解しない程度の条件で加熱することが必要である。前述したように、加熱中はリン酸塩皮膜によって亜鉛系めっき層表面を高温酸化環境から保護できるが、あまり高温かつ長時間の加熱を行うとリン酸塩が分解し、亜鉛系めっき層中のZnによってリン酸塩中のリンが還元されて揮散してしまうため、塗膜密着性向上効果が低下するからである。具体的には加熱温度によっても相違し、例えば850℃における滞在時間(保持時間)は、おおむね5秒以上、120秒以下であり、好ましくは、おおむね10秒以上、90秒以下である。また、例えば900℃における滞在時間(保持時間)は、おおむね30秒以下であり、0秒、すなわち加熱の最高温度が900℃に到達しているが900℃で所定時間保持しない場合を含む。好ましくは、おおむね5秒以上、20秒以下である。
本発明の熱間プレス成形品は、通常の熱間プレス成形品と同様、耐食性向上の目的で、上記リン酸塩皮膜の上に電着塗装などの塗膜を有する。電着塗装によって形成される塗膜は、塗膜の均一性にも優れている。電着塗装の方法は特に限定されず、例えばカチオン電着塗装などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示すA〜Eの化学成分組成を有する鋼材(残部は、鉄およびP、S以外の不可避的不純物)を溶製し、鋳造してスラブを得た後、加熱温度1250℃、仕上げ圧延温度900℃の条件で熱間圧延を行って板厚2.3mmの熱延鋼板を製造した。この熱延鋼板に冷間圧延を行って板厚1.4mmの冷延鋼板を得た。
このようにして得られた冷延鋼板に溶融亜鉛めっき処理を行い、鋼板の両面に亜鉛系めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。また、一部の試料については、溶融亜鉛めっき処理後、直ちに合金化処理を施して、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
ここで、上記溶融亜鉛めっき処理および合金化処理はいずれも、雰囲気制御が可能で加熱冷却機構と亜鉛めっき浴となる坩堝を備え、めっき処理および合金化処理を一貫工程で実施可能な実験炉を用いて行った。溶融亜鉛めっき処理は、460℃の0.13%Al−Zn浴に3秒間浸漬して行った。また、合金化処理は5%H2−N2(露点−45℃)の雰囲気にて、550℃で20秒間保持して行った。合金化処理の冷却は、Arガスの吹き付けにより行った。また、冷却開始から室温までの平均冷却速度は10〜15℃/secとした。
亜鉛めっき鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板のZn付着量は、ガスワイピングにより調整し、ICP(Inductively Coupled Plasma、誘導結合プラズマ)発光分光分析により測定した。片面あたりのZn付着量は表2に示すとおりである。
上記の方法で製造した溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を50mm×150mmの大きさに切断した後、浸漬処理により、リン酸亜鉛皮膜(Zn3(PO42・4H2O)を形成した。具体的には、日本パーカライジング(株)製パルボンドL3065(PB−L3065)のリン酸処理液(30〜40℃の)浴に浸漬して、浸漬時間を2〜120秒の範囲で調整することによりリン酸亜鉛の付着量を表2の範囲内に制御した。なお、この付着量は水和水込みの付着量から水和水の重量を除いた値である。
比較のため、上記の浸漬処理を行わず、リン酸亜鉛皮膜を有しないものも用意した(表2中、浸漬時間0秒)。
次に、上記の方法で作製した鋼板に対し、熱間プレス成形を模擬して通電加熱方式で加熱した。加熱パターンは、室温から30秒かけて850℃または900℃の到達温度まで昇温した後、表2に示すように上記到達温度にて0〜180秒間(保持時間)保持し、その後N2ガスの吹き付けにより350℃までの範囲を10〜15℃/秒の平均冷却速度で急速冷却した。例えば表2のNo.1は900℃の温度に到達した後、当該温度で保持せずに直ちに急冷した例である。また、表2のNo.12は850℃の温度に到達した後、当該温度(850℃)で120秒間保持してから急冷した例である。
(リン酸塩の分析)
加熱後の鋼板表面をX線回折で分析して無水リン酸塩[詳細にはリン酸亜鉛Zn3(PO42]の有無を確認した。具体的には、理学電機製のX線回折装置RAD−RU300を用い、Co−Kα線を用い、θ―2θ法により測定した。
上記加熱後の各鋼板に対し、アルカリ脱脂洗浄、表面調整、およびリン酸亜鉛処理を行った後、電着塗装を行った。具体的には、上記リン酸亜鉛処理は、日本パーカライジング(株)製のパルボンドL3065(PB−L3065)に2分間浸漬して、リン酸亜鉛の付着量を3g/m2前後に調整した。また、上記表面調整は、上記リン酸塩処理液対応の処理を行った。また、上記電着塗装は、日本ペイント(株)製のカチオン電着塗料(パワーニックスエクセル1220)を用いて電圧170Vにて塗装、180℃で15分焼付けを行い、塗膜の膜厚を15μmに調整した。
(塗膜密着性の評価)
上記のようにして塗膜を形成した各鋼板を、5重量%のNaCl水溶液に、50℃で700時間浸漬した。浸漬の際には、各鋼板の端部をシールし、端部からの腐食や浸漬水の浸潤効果が無視できるようにした。浸漬終了後、図1に示す評価対象について、セロハンテープによる塗膜剥離試験を行い、電着塗装が剥離した部分の剥離面積率を評価した。評価対象の領域は、熱間プレス成形を模擬した上記加熱処理時において均熱が保たれている鋼板長手方向の中央部約100mm×幅方向約40mm(評価面積:40mm×100mm=4000mm2)とした。評価面積(4000mm2)に占める塗膜剥離面積率を画像処理によって評価し、3%以下を合格とした。浸漬の際には、サンプルの端部はシールを行い、端部からの腐食や浸漬水の浸潤効果が無視できるようにした。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2018090878
Figure 2018090878
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表1の鋼種記号Aを用いた表2のNo.3〜5、7、8、13、14、20〜22、25〜27,30〜32、34、35、40、41、47〜49;表1の鋼種記号Bを用いた表2のNo.51〜53;表1の鋼種記号Cを用いた表2のNo.55〜57;表1の鋼種記号Dを用いた表2のNo.59〜61;表1の鋼種記号Eを用いた表2のNo.63〜65はいずれも、リン酸亜鉛の付着量が適切に制御された本発明例であり、加熱後のめっき表層に無水リン酸塩が形成されている。その結果、鋼種にかかわらず、また合金化の有無にかかわらず、いずれの鋼板も塗膜密着性に優れている。
これに対し、下記例は本発明の要件を満足しない比較例であり、以下の不具合を有している。
まず、表2のNo.1、6、9、12、15、18、23、28、33、36、39、42、45、50、54、58、62はいずれも、亜鉛系めっき層の上にリン酸塩皮膜を形成しなかった例である(リン酸亜鉛付着量の欄=0)。その結果、加熱後のめっき表層に無水リン酸塩が形成されないため、亜鉛系めっき層中の亜鉛の酸化などが抑制されず、塗膜密着性が低下した。
また、表2のNo.2、19、24、29、46はいずれも、亜鉛系めっき層の上にリン酸亜鉛皮膜を形成したが、リン酸亜鉛の付着量が少ない例であり、加熱後のめっき表層に無水リン酸塩が形成されないため、塗膜密着性が低下した。
また、表2のNo.10、11、37、38はいずれも、リン酸亜鉛皮膜を有する鋼板を用いたが、900℃での保持時間を長くして加熱処理したため、加熱後に無水リン酸塩が残存せず、塗膜密着性が低下した。
同様に表2のNo.16、17、43、44はいずれも、リン酸亜鉛皮膜を有する鋼板を用いたが、850℃での保持時間を長くして加熱処理したため、加熱後に無水リン酸塩が残存せず、塗膜密着性が低下した。

Claims (3)

  1. 熱間プレス成形に用いられる鋼板であって、
    素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、
    亜鉛系めっき層、および
    Zn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むリン酸塩の皮膜を有しており、
    前記リン酸塩の皮膜がZnを含むリン酸亜鉛皮膜の場合、前記リン酸亜鉛皮膜におけるリン酸亜鉛またはその水和物の付着量は、リン酸亜鉛換算で0.40〜5g/m2であることを特徴とする熱間プレス成形用鋼板。
  2. 素地鋼板の少なくとも片面に、素地鋼板側から順に、
    亜鉛系めっき層、および
    Zn、Fe、Ca、およびMnよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む無水リン酸塩を有していることを特徴とする熱間プレス成形品。
  3. 請求項1に記載の熱間プレス成形用鋼板を熱間プレス成形する熱間プレス成形品の製造方法。
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